2026年度 大学入学共通テスト 追試験 公共・政治経済 解答・解説

2026年度 大学入学共通テスト 追試験「公共・政治経済」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次

解答

解説

2026年度大学入学共通テスト追試験の「公共,政治・経済」は、大問6つ・設問32問、満点100点、試験時間60分で、すべて必答です。配点は第1問12・第2問13・第3問19・第4問18・第5問19・第6問19で、前半2問が「公共」の主題、後半4問が政治・経済の各分野という配分になっています。

第1問は生徒が授業でまとめた「自由」のノートを素材に、自由権と社会権の違い、表現の自由、裁判制度を扱います。第2問は「公正な社会をどのように実現するか」の探究学習で、雇用形態別・男女別の所得分布表から格差を読み取り、貧困対策の構想を検討します。第3問は「公と私をめぐる諸問題」のグループワークとして市場の需給調整・財政・公共財と、違憲判決や生存権・公私二元論を扱い、第4問は新聞記者によるEU特別授業を受けた会話からEUの財政・金融制度やエネルギー貿易、国際法・情報公開・環境法を問います。第5問は自国の利益と地球全体の利益という論点で主権・関税のゲーム理論・巨大企業・人権条約・人道危機を、第6問は「超高齢社会の日本の課題」として年金制度とGPIFの運用、高齢者の犯罪と消費者保護、選挙制度を扱います。なお第1問・第2問は「公共,倫理」および単独科目「公共」と共通の問題です。

この回の特徴は、知識だけで即答できる設問と、資料の数値に立ち返らないと決まらない設問がはっきり分かれていることです。つまずきやすいのは、第3問問5の勤労権と労働基本権、第5問問6の「保護する責任」の主体、第6問問2の金利と債券価格・為替の向きのように、正しい語をひとつ入れ替えただけの選択肢です。さらに第6問問4は、分子を同じにしたまま分母を入れ替えると割合の増減が逆になる作りで、割合と実数、分母と分子を確かめる姿勢がそのまま得点に表れます。第5問問2の利得表と第3問問1の需給曲線は、感覚で選ばず4通りの数値を書き出してから選択肢に当てるのが確実です。

第1問 「自由」をめぐる憲法と思想(配点12)

生徒AとBが授業で学んだ「自由」をノートにまとめる設定。近代憲法における自由権と法の下の平等の保障から、20世紀の社会権の登場、さらに権利の保障のあり方の展開までがノートに整理され、そこから自由権と社会権の区別、自由と責任・理性の関係、表現の自由の限界、裁判に関する法制度が問われる。

問1:正解 ③(解答番号1/配点3)

<問題要旨>

ノートは、近代憲法が自由権と法の下の平等の保障に主眼を置いたのに対し、20世紀に入って社会的・経済的弱者を保護し実質的平等を達成するため、国家の積極的な施策を求める社会権が主張されるようになった流れをまとめている。空欄アには社会権の特徴を表す言い方、空欄イには日本国憲法が保障する社会権の具体例が入り、その組合せを選ぶ。

<考え方>

「国家からの自由」は国家の介入を排除する自由権、「国家による自由」は国家の積極的な関与を求める社会権を指す言い方であり、この対比に戻れば空欄アは決まる。空欄イは「などの社会権も保障されている」と続くので、社会権に分類される権利を選ばなければならない。生存権・教育を受ける権利・勤労の権利・労働基本権が社会権であるのに対し、国家賠償請求権は救済を求める請求権(受益権)に属し、分類が異なる。

<選択肢>

ア=国家による自由【正】

社会権は、社会的・経済的弱者を保護して実質的平等を達成するために国家の積極的な施策を求める権利なので、その特徴から「国家による自由」と呼ばれる。「国家からの自由」は信教の自由などの自由権を指す言い方で、国家の関与を排除する方向を意味するため、ノートが社会権の特徴として述べている内容とは向きが逆になる。

イ=労働基本権【正】

労働基本権(団結権・団体交渉権・団体行動権)は憲法28条が保障する社会権である。国家賠償請求権は、公務員の不法行為によって受けた損害の賠償を国や公共団体に求める権利で、裁判を受ける権利などと同じ請求権(受益権)に分類され、社会権の例として挙げることはできない。分類の近い権利名を差し替える型の誤りである。

正解【③】

社会権は国家の積極的な関与を求める「国家による自由」であり、その具体例として挙げられるのは請求権ではなく労働基本権である。

問2:正解 ⑤(解答番号2/配点3)

<問題要旨>

自由と責任の関係をまとめたメモ1と、自由と理性の関係をまとめたメモ2が示され、三つの事例a〜cをどちらに振り分けるかの組合せを選ぶ。メモ1は「特定の社会的状況の下に置かれながらもその状況を超えて生き方を自由に選べるが、選択の結果には全面的に責任を引き受けなければならない」、メモ2は「欲求や感情にしたがうのではなく、理性でそれらを抑制し、自律的な意志に基づいて行動することが根本的な自由である」という内容である。

<考え方>

メモ1は実存主義の自由と責任の考え方、メモ2はカントの自律としての自由の考え方に対応する。したがって、周囲の状況や期待を超えて自分で選び、その結果を自分で引き受けている事例はメモ1に入り、目の前の欲求を理性で抑えて義務に従った事例はメモ2に入る。三つの事例をこの二つの基準で振り分ければ組合せは一つに定まる。

<選択肢>

a=メモ1【正】

学期末試験の準備をやめてゲームで遊ぶという選択を自分で行い、試験に通らず卒業できなくなった結果として退学するところまで引き受けている。状況を超えて自由に選び、その結果に全面的に責任を負うというメモ1の構図に合う。

b=メモ2【正】

カラオケに行きたいという欲求が生じたうえで、先に交わした約束を守ることは義務だと考えて誘いを断っている。欲求や感情を理性で抑制し、自律的な意志に基づいて行動した例なのでメモ2に当たる。

c=メモ1【正】

就職すべきだという周囲の声という社会的状況に置かれながら、それを超えて海外放浪を選び、帰国後に就職するまで苦労するという結果を引き受けている。メモ1の内容に合致する。

正解【⑤】

欲求を理性で抑えて義務に従ったbだけがメモ2に当たり、状況を超えて選び結果を引き受けたaとcがメモ1に入る。

問3:正解 ①(解答番号3/配点3)

<問題要旨>

表現の自由をめぐる先生と生徒の会話。政権与党の政策への批判を政府が不適当な表現として事前に発表禁止することは日本国憲法が明文で禁止する行為に当たるという指摘(空欄ア)と、外国人や特定の民族などの排斥をあおる差別的言動について2016年に解消法が制定されたという指摘(空欄イ)の、語句の組合せを選ぶ。

<考え方>

空欄アは「日本国憲法が明文で禁止する」「発表を事前に禁止」という手がかりで決まる。表現物の発表前に公権力が内容を審査して発表を禁じることは検閲であり、憲法21条2項が明文で禁止している。空欄イは「外国人や特定の民族などの排斥をあおる差別的言動」という定義が会話文にそのまま書き込まれているので、その定義に当たる語を当てればよい。

<選択肢>

ア=検閲【正】

公権力が表現物の発表前に内容を審査し、不適当と判断したものの発表を禁止することが検閲で、憲法21条2項が明文でこれを禁じている。「秘密選挙」は誰に投票したかを秘密にする選挙原則であり、発表の事前禁止とは全く別の事柄なので、会話の内容と対応しない。

イ=ヘイトスピーチ【正】

外国人や特定の民族などの排斥をあおる差別的言動はヘイトスピーチであり、2016年にヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が制定された。「ポピュリズム」は大衆の情動に訴える政治手法を指す語で、差別的言動そのものを意味する語ではない。

正解【①】

発表の事前禁止は憲法が明文で禁じる検閲であり、排斥をあおる差別的言動はヘイトスピーチで、2016年の解消法がこれに対応する。

問4:正解 ④(解答番号4/配点3)

<問題要旨>

違憲審査権が裁判所に付与されていることを受け、日本における裁判に関する法制度の記述として最も適当なものを選ぶ。違憲審査の方式、裁判員の権限、弾劾裁判所の設置場所、下級裁判所の種類が問われている。

<考え方>

裁判所の組織と権限の基本に戻れば一つずつ判定できる。違憲審査は具体的な事件の解決に必要な範囲で行う付随的審査制であり、裁判員は事実認定と量刑の両方に関わり、弾劾裁判所は国会に設置され、下級裁判所は高等・地方・家庭・簡易の4種である。とくに機関の入れ替えと権限の切り縮めが仕掛けられているので、主体と権限の範囲を確認する。

<選択肢>

①【誤】

日本の違憲審査は、具体的な事件の裁判に付随してその解決に必要な限りで行われる付随的審査制である。事件とかかわりなく法律の合憲性を審査する抽象的審査制(憲法裁判所型)ではないので、審査の方式が置き換えられている。

②【誤】

裁判員の参加する裁判では、裁判員は裁判官とともに有罪・無罪の判断(事実認定)だけでなく、有罪の場合の量刑の判断にも加わる。「量刑の判断は行わず」として権限を狭めている点が誤りである。

③【誤】

弾劾裁判所は国会に設置される機関で、衆参両議院の議員によって組織される。訴追を行う裁判官訴追委員会も国会に置かれる。最高裁判所に設けられているとするのは機関の入れ替えである。

④【正】

裁判所法により、下級裁判所として高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所が置かれている。最高裁判所とこれらの下級裁判所によって司法権が構成される。

正解【④】

下級裁判所が高等・地方・家庭・簡易の4種であることは裁判所法の定めどおりで、他の三つは審査方式・裁判員の権限・弾劾裁判所の設置機関をそれぞれ入れ替えている。

第2問 公正な社会の実現と所得格差(配点13)

生徒AとBが「公正な社会をどのように実現するか」をテーマに探究学習を進める設定。先生の問題提起に始まり、雇用形態別・男女別の所得分布表の読み取り、貧困と非正規雇用をめぐる会話、そして現金給付とワークシェアリングという二つの構想の検討へと進み、用語の理解と統計の読み取りの両方が問われる。

問1:正解 ①(解答番号5/配点3)

<問題要旨>

先生の問題提起を読み、空欄に入る語句の組合せを選ぶ。人は生まれ育った共同体の一員としてその価値観を身につける点を重視する政治哲学者サンデルが、共同体で共有されている何を実現することが公正な社会の基盤になると述べたか(空欄ア)と、『人間の発達課題と教育』で青年期の発達課題を論じ、行動の指針としての価値観や倫理体系を身につけることを課題の一つに挙げた教育学者は誰か(空欄イ)が問われる。

<考え方>

サンデルはコミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的な論者で、共同体が共有する「共通善」の実現を重視する立場に立つ。もう一方の「原初状態」は、正義の原理を導くためにロールズが想定した仮想的な出発点であり、共同体で共有されている価値ではないので空欄アには入らない。空欄イは著書名で決まり、『人間の発達課題と教育』はハヴィガーストの著作である。

<選択肢>

ア=共通善【正】

サンデルは、人が共同体の一員としてその価値観を身につける点を重視し、共同体で共有される共通善の実現を公正な社会の基盤と考える。「原初状態」は自分の境遇を知らない無知のヴェールの下に置かれた仮想の状態を指すロールズの概念であり、共同体で共有されている価値という説明と合わない。

イ=ハヴィガースト【正】

『人間の発達課題と教育』を著し、乳幼児期から老年期までの発達課題を段階ごとに整理して、青年期の課題として行動の指針となる価値観や倫理体系の獲得を挙げたのはハヴィガーストである。リースマンは『孤独な群衆』で他人指向型の社会的性格を論じた社会学者であり、発達課題論の人物ではない。

正解【①】

共同体が共有する価値としての共通善を重んじるのがサンデルであり、発達課題として価値観や倫理体系の獲得を挙げたのはハヴィガーストである。

問2:正解 ③(解答番号6/配点4)

<問題要旨>

2022年の雇用形態別・男女別の所得分布を百分比で示した表が与えられ、表から読み取ったこととして正しいものをX〜Zのうちから選び、あわせてメモの空欄アに入る語句をa「同一労働同一賃金」・b「終身雇用制」から選ぶ。表は正規雇用者・非正規雇用者それぞれの男女について、99万円以下から1,000万円以上までの各所得階層の割合を示している。

<考え方>

まず百分率と「割」の単位をそろえることが出発点で、1割は10パーセントである。X〜Zはいずれも複数の階層を足し合わせるか、全階層に反例がないかを確かめる形になっているので、「いずれの層も超えていない」といった言い切りには反例を一つ探す。メモの空欄は「ヨーロッパ諸国のように」「雇用形態や性別による所得の差の是正に向けて」という文脈から、雇用形態間の待遇差を埋める施策を選ぶ。

<選択肢>

X【誤】

非正規雇用者の男性の200〜299万円の層が44.0パーセントで4割以上であるという前半は表と一致する。しかし後半が成り立たない。正規雇用者の男性には200〜299万円が14.9パーセント、300〜399万円が19.5パーセント、400〜499万円が18.4パーセント、500〜599万円が13.8パーセントと、1割(10パーセント)を超える層がいくつも存在するので、「いずれの所得の層も1割を超えているところはない」には反例が複数ある。

Y【正】

299万円以下の非正規雇用者の女性は3.1+33.9+49.5で86.5パーセントとなり8割以上、299万円以下の非正規雇用者の男性は1.8+19.2+44.0で65.0パーセントとなり6割台である。前半・後半ともに表の数値と一致する。

Z【誤】

900万円以上の正規雇用者の男性は2.9+5.6で8.5パーセントであり、1割(10パーセント)に届かない。「1割を超えている」とする前半が成り立たないので誤りである。8.5という数字をそのまま8.5割のように受け取ると正しく見えてしまうため、割合の桁を取り違えやすい作りになっている。

ア=同一労働同一賃金【正】

メモは、ほぼ同じ時間働いていても雇用形態によって所得の分布が異なること、非正規雇用者が正規雇用者と同じ仕事をしていることもあること、時給換算すると非正規雇用の方が賃金が低く設定されていることが多いことを並べている。この差の是正に向けてヨーロッパ諸国で進められてきたのは、同じ仕事には同じ賃金を支払う同一労働同一賃金である。終身雇用制は一つの企業で定年まで雇用を続ける日本型雇用慣行であり、雇用形態や性別による所得差の是正策ではなく、むしろ正規と非正規の格差を生む前提の側にある。

正解【③】

複数階層を合算して検算できるYだけが表と一致し、雇用形態による待遇差の是正策として入るのは同一労働同一賃金である。

問3:正解 ⑤(解答番号7/配点3)

<問題要旨>

貧困と雇用形態をめぐる生徒と先生の会話を読み、空欄に入る語句の組合せを選ぶ。年間所得が全国民の所得の中央値の半分に満たない人の割合を表す指標(空欄ア)、1999年の改正で対象とする業務の範囲が拡大された法律(空欄イ)、1990年代半ばから2000年代前半の不況のときに新卒で正規雇用に就きにくかった世代の呼び名(空欄ウ)が問われる。

<考え方>

空欄アは会話文に定義が書き込まれているので、その定義に当たる指標名を選ぶ。等価可処分所得の中央値の半分という貧困線を下回る人の割合は相対的貧困率であり、絶対的貧困率は生存に必要な最低限の水準を絶対的な基準として測るもので定義が違う。空欄イは年号で決まり、1999年の改正で派遣対象業務が原則自由化されたのは労働者派遣法である。空欄ウは時期で決まり、1990年代半ばから2000年代前半に就職活動を迎えた世代が就職氷河期世代である。

<選択肢>

ア=相対的貧困率【正】

所得の中央値の半分という、その社会の所得分布に相対的な基準で測るので相対的貧困率である。絶対的貧困率は一定額に満たない所得かどうかなど、社会の分布とは無関係な絶対的水準で測る指標であり、会話文が示す定義と合わない。

イ=労働者派遣法【正】

1999年の労働者派遣法改正で、派遣が認められる業務が限定列挙から原則自由(一部の禁止業務を除く)へ改められ、対象業務の範囲が大きく広がった。最低賃金法は賃金の下限を定める法律であり、派遣などの業務範囲を定めるものではない。

ウ=就職氷河期【正】

バブル崩壊後、1990年代半ばから2000年代前半にかけて新卒採用が絞られた時期に就職活動を迎えた世代が就職氷河期世代である。第一次ベビーブームは1947年から1949年ごろに生まれた世代(団塊の世代)を指し、時期が数十年ずれる。

正解【⑤】

中央値の半分という基準は相対的貧困率、1999年に対象業務が拡大されたのは労働者派遣法、当該時期に新卒だった世代は就職氷河期世代である。

問4:正解 ④(解答番号8/配点3)

<問題要旨>

公正な社会の実現に向けた二つの構想が示される。構想1は貧困状態に陥ることを防ぐため国民に一定の現金を給付するもので、所得制限のある施策が支援の対象とならない人に不公平感を生むことを踏まえて空欄アの方策をとるとし、申請をしなくても給付があるようにすれば社会保障の仕組みを簡素化できるとする。構想2はワークシェアリングを本格的に導入するもので、仕事を分け合うために空欄イの方法をとるとする。空欄に入る記述X〜Zの組合せを選ぶ。

<考え方>

それぞれの構想が空欄の前後で何を条件としているかを押さえる。構想1は「所得制限のある施策」を避け「申請をしなくても給付がある」という条件なので、対象を限定せず全員に給付する仕組みが入る。構想2は「仕事を分け合う」「雇用される人の数を維持または増やす」「長時間労働の対策にもなる」という条件なので、一人あたりの労働時間を短くする方法が入る。残るXは対象を限定した現物の支援なので、どちらの空欄にも入らない。

<選択肢>

X(所得の低い家庭の子どもに無償または安価で食事を提供する)【誤】

対象を所得の低い家庭に限定した現物の支援であり、「所得制限のある施策は不公平感を生む」ことを避けるという構想1の条件に反する。仕事を分け合う方法でもないので、構想2にも入らない。

Y(すべての人に最低限度の所得を保障する)【正】

所得制限を設けず全員を対象に一定の現金を給付する考え方で、申請なしの給付による仕組みの簡素化、支給される金額によって財政支出の規模と人々の労働意欲が左右されるという構想1の記述ともつながる。空欄アに入る。

Z(労働者一人あたりの労働時間を短縮する)【正】

一人あたりの労働時間を短くして仕事を分け合うのがワークシェアリングの方法であり、雇用される人の数の維持・増加、長時間労働の抑制、個人の所得が低くなる場合があるという構想2の記述と対応する。空欄イに入る。

正解【④】

所得制限を設けない全員への現金給付がY、仕事を分け合うために労働時間を短縮するのがZで、対象を限定した現物給付のXはどちらにも入らない。

第3問 公と私をめぐる市場・財政と憲法(配点19)

生徒Xと生徒Yが「公と私をめぐる諸問題」をテーマにグループワークを行い、前半で私的な経済活動を支える市場の働きと政府の経済活動、後半で政治分野における公と私のかかわりを話し合います。需給曲線の図、公共財についてのメモ、最高裁の裁判例、公私二元論を論じた資料が素材で、経済理論と憲法の両方から出題されます。

問1:正解 ⑤(解答番号9/配点3)

<問題要旨>

右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線を描いた図を与え、市場の働きを説明するメモの空欄3か所を埋めさせる設問です。図には均衡価格P₁と、それより低い価格P₂、数量Q₁(均衡)・Q₂・Q₃が目盛られており、P₂のときの需給の不一致の向きと大きさ、その後の価格調整による需要量の変化を答えます。

<考え方>

価格が与えられたら、需要量は需要曲線上で、供給量は供給曲線上で読むという原則に戻ります。P₂は均衡価格P₁より低いので、需要曲線上の需要量はQ₃、供給曲線上の供給量はQ₂となり、需要量が供給量を上回る超過需要(品不足)が生じます。その大きさは需要量から供給量を引いたQ₃−Q₂です。超過需要があると価格はP₁へ向かって上昇し、右下がりの需要曲線の上では価格上昇は需要量を減らし、同時に供給量を増やします。

<選択肢>

ア=多く【正】

P₂は均衡価格P₁より下にあるので、需要曲線上の需要量Q₃が供給曲線上の供給量Q₂を上回ります。「少なく」となるのは価格が均衡価格より高く売れ残り(超過供給)が生じる場合で、P₂には当てはまりません。

イ=Q₂【正】

超過需要の大きさは需要量から供給量を引いた値、すなわちQ₃−Q₂です。Q₁は需要量と供給量が一致する均衡時の数量であって、P₂における供給量ではないので、差の計算に用いることはできません。

ウ=減少【正】

品不足によって価格がP₂からP₁へ上昇すると、需要曲線が右下がりである以上、需要量は減ります。メモがこの直後に「供給量をその反対の方向に変化させる」と続けているため、供給量の増加と逆向き、つまり需要量は減少でなければ文がつながりません。

正解【⑤】

P₂では需要量Q₃が供給量Q₂を上回り、その差Q₃−Q₂を埋めるように価格が上昇して需要量が減るという筋道になるため、⑤の組合せが正しくなります。

問2:正解 ①(解答番号10/配点3)

<問題要旨>

政府の経済活動と財政の機能をめぐる議論を受けて、不況期に財政が景気を安定化させることに関する記述として最も適当なものを4つの中から選ばせる設問です。

<考え方>

財政の景気安定化には、政府が意図的に歳出や税を動かす裁量的財政政策(フィスカル・ポリシー)と、累進課税や社会保障が景気に応じて自動的に働く自動安定化装置(ビルト・イン・スタビライザー)の2つの経路がある、という整理に戻します。不況期には、前者では減税と政府支出の増加が、後者では所得の減少に伴う税収の自動的な減少と失業給付などの社会保障給付の自動的な増加が、それぞれ景気の落ち込みを和らげます。どちらの経路についても「向き」を取り違えている記述を落とせば決まります。

<選択肢>

①【正】

不況期に増税をせずに政府支出を増やせば有効需要が拡大し、景気は回復に向かいます。不況期の裁量的財政政策の姿そのままで、政策の向きが正しい記述です。

②【誤】

政府支出を減らせば有効需要はさらに縮小し、不況を深めてしまいます。好況期の引き締め策を不況期の対応として述べており、政策の向きが逆転しています。

③【誤】

累進課税の下で不況期に減るのは所得であり、それに伴って税収は自動的に「減る」のが自動安定化装置の働きです。税収が増えるとしている点で向きが逆であり、税収の増加はむしろ景気を冷やす方向に働きます。

④【誤】

税収が自動的に減るという前半は正しいものの、不況期に失業や所得の減少が増えれば社会保障給付は自動的に「増える」はずです。後半で給付が減るとしており、自動安定化装置が景気を支える仕組みを逆にしています。

正解【①】

不況期の財政政策は減税と政府支出の増加が基本であり、それを述べた①だけが向きの正しい記述になっています。

問3:正解 ⑦(解答番号11/配点3)

<問題要旨>

市場の機能の限界と政府の役割を説明するメモを与え、公共財の2つの特徴(ア・イ)と、民間企業だけが公共財を供給した場合の供給量の水準(ウ)について、それぞれ2択の記述・語句から組合せを選ばせる設問です。メモは公共財がフリーライダーを生じさせることに触れています。

<考え方>

公共財の定義である非競合性と非排除性の2点に戻します。非競合性とは、ある人が消費しても他の人が消費できる量が減らないこと、非排除性とは、対価を支払わない人の利用を妨げられないことです。非排除性があると対価を払わずに便益を受けるフリーライダーが生じ、企業は費用を回収できないため供給する誘因を失います。したがって市場に任せると、社会的に望ましい水準より供給が少なくなります。

<選択肢>

ア=b(多くの人々が同時に利用できる)【正】

公共財の非競合性の説明です。aの「ある人が利用したら他の人は利用できない」は、市場で取引される私的財がもつ競合性の説明であり、公共財の特徴としては正反対になっています。

イ=d(対価を支払わない人も利用できる)【正】

公共財の非排除性の説明で、メモが直後に「公共財はフリーライダーを生じさせる」と続けることと整合します。cの「対価を支払わない人は利用できない」は排除が可能だという意味なので、フリーライダーが生じる理由になりません。

ウ=e(過小)【正】

非排除性のためフリーライダーが生じ、企業は費用を回収できず供給の誘因を失うので、市場に任せた供給量は最適な水準より少なくなります。fの「過大」は、公害のように外部不経済を伴う財について生産が過剰になる場合の話で、公共財の供給不足とは方向が逆です。

正解【⑦】

非競合性(b)と非排除性(d)を備える公共財は、市場に任せると最適水準より過小に供給される(e)ため、⑦の組合せが正しくなります。

問4:正解 ④(解答番号12/配点3)

<問題要旨>

日本の最高裁判所の裁判例のうち、違憲の判断が示された事件をア〜ウからすべて選ばせる設問です。在外国民の投票を比例代表選挙に限っていた公職選挙法の規定、強制不妊手術の根拠となった旧優生保護法の規定、障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁止していた児童扶養手当法の規定の3件が挙げられています。

<考え方>

違憲判断が出たかどうかは事件ごとの結論で決まるので、判例を一件ずつ照らし合わせます。目安になるのは、選挙権のような参政権そのものの制限や、身体への不可逆的な侵害に対して最高裁が厳しい判断を示してきた一方、社会保障の給付内容の設計については立法府の広い裁量を認めてきたという傾向です。

<選択肢>

ア【正】

在外日本人選挙権訴訟です。2005年の最高裁大法廷判決は、在外国民の投票を衆議院と参議院の比例代表選挙に限っていた公職選挙法の規定について、選挙権の行使を正当な理由なく制限するものであるとして違憲と判断しました。

イ【正】

旧優生保護法による強制不妊手術をめぐる訴訟です。2024年の最高裁大法廷判決は、特定の障害をもつ者などに不妊手術を強制する根拠となった旧優生保護法の規定が、憲法13条および14条1項に違反すると判断しました。

ウ【誤】

堀木訴訟です。1982年の最高裁判決は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁じる規定について、憲法25条の生存権をどのように具体化するかは立法府の広い裁量に委ねられているとして合憲と判断しました。違憲判断が示された事件ではないので、ここに含めてはいけません。

正解【④】

違憲判断が示されたのは在外国民の選挙権制限(ア)と旧優生保護法の強制不妊手術の規定(イ)の2件であり、堀木訴訟は合憲判断なので、④が正しくなります。

問5:正解 ③(解答番号13/配点3)

<問題要旨>

「憲法は、全体として、福祉国家的理想のもとに……すべての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障する」という最高裁判決を引用した会話文を与え、ここでいう生存権が具体化された例(ア)と、勤労権が立法を通じて具体化された例(イ)を、それぞれ2択から選ばせる設問です。

<考え方>

引用文が生存権と勤労権を並べて区別している点に沿って、どちらの権利の具体化かで振り分けます。生存権(憲法25条)は健康で文化的な最低限度の生活の保障であり、その中核をなす立法が生活保護法です。勤労権(憲法27条)は働く機会の保障であり、国が就職の機会を提供する職業安定法などがこれを具体化します。労働組合を通じて使用者と交渉する権利は憲法28条の労働基本権であって、27条の勤労権とは別の条文の権利です。

<選択肢>

ア=b(生活の困窮により保護を必要とする者に生活費を支給する)【正】

生活保護制度であり、憲法25条の生存権を直接に具体化した立法です。aのコメの国内生産者への補助金は農業政策・産業政策であって、国民一般に最低限度の生活を保障する施策ではないため、生存権の具体化例にはなりません。

イ=c(求職者に公共職業安定所、いわゆるハローワークを通じた職業紹介を行う)【正】

職業安定法に基づく職業紹介であり、働く機会を国が提供するという意味で憲法27条の勤労権を立法で具体化したものです。dの「労働者に労働組合を通じた使用者との交渉権を与える」は憲法28条の労働基本権(団体交渉権)の話で、勤労権と労働基本権という別の条文の権利を入れ替えた、言葉のすり替えになっています。

正解【③】

生存権の具体化は生活保護による生活費の支給(b)、勤労権の具体化は公共職業安定所を通じた職業紹介(c)なので、③の組合せが正しくなります。

問6:正解 ②(解答番号14/配点4)

<問題要旨>

公私二元論と、それに対するフェミニズムからの批判を論じた資料(前田健太郎『女性のいない民主主義』)を与え、資料から読みとれる内容として正しいものをア〜ウからすべて選ばせる設問です。資料は、公的領域の活動が政治的な権力行使の対象となる一方で私的領域の活動は政治的な介入の対象から除外されると述べ、この公私区分が男女の性別役割分業と対応してきたとするフェミニズムの批判を紹介しています。

<考え方>

資料の文言だけで判定します。記述が資料のどの一文に対応するかを確かめ、資料が述べていないことや、資料の記述を反転させたものを落とせば決まります。とくに公私二元論とフェミニズムは公私区分を肯定する立場と批判する立場という対立関係にあるので、両者を「共通する考え方」でくくる記述には警戒します。

<選択肢>

ア【誤】

資料は、私的領域における活動は「政治的な介入の対象から除外される」と明記しています。公的領域と私的領域の双方が政治的な権力行使の対象になるとするのは、公と私を分けるという公私二元論の出発点そのものを取り違えた記述です。

イ【正】

資料の末尾は、この公私区分の下では「女性が男性による家庭内暴力にさらされても、それは政治の争点にはならない」と述べています。私的領域における女性の抑圧が政治の争点にならないという記述は、これと一致します。

ウ【誤】

フェミニズムは公私区分が女性の抑圧を生んできたと批判する立場であり、公私二元論はむしろ私的領域から政治を退かせる立場です。私的領域への政治的介入を優先すべきという考え方が両者に共通するとするのは、対立する2つの立場を同じものにしてしまっています。

正解【②】

資料の記述と一致するのはイだけで、アは私的領域の扱いを反転させ、ウは対立する立場を同一視しているため、②が正しくなります。

第4問 EU情勢の特別授業と日本への示唆(配点18)

新聞記者JによるEU(欧州連合)を中心とするヨーロッパ情勢の特別授業を受けた生徒X・Y・Zの会話が素材です。EUへの主権の一部移譲、ギリシャ財政危機、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー資源の貿易の変化、国際法とEU外交、情報公開、環境に関する法令と裁判例が、下線部ごとに問われます。

問1:正解 ③(解答番号15/配点3)

<問題要旨>

国家の主権の一部がEUへ移譲されてきたという会話を受けて、EUにおける財政政策に関する制度の記述をア・イから、金融政策に関する制度の記述をウ・エから選び、その組合せを答えさせる設問です。

<考え方>

EUの統合は分野によって深さが違う、という点に戻します。通貨統合は進んでおり、共通通貨ユーロを導入した国は金融政策の権限を欧州中央銀行(ECB)に移し、ECBが域内の政策金利などを一元的に決めています。これに対し課税や歳出という財政の権限は各加盟国に残されており、財政赤字や政府債務に上限を課す財政規律のルールはあっても、EUが一元的に財政政策を決めるわけではありません。会話文でギリシャ財政危機に際して加盟国間の財政の健全度の差が問題となり全体での合意が容易でなかったと述べられていること自体が、財政が各国別であることの裏づけになります。

<選択肢>

ア【誤】

欧州委員会による一元的な財政政策はとられていません。欧州委員会は財政規律の監視や勧告を行いますが、課税や歳出の決定権は各加盟国にあり、EUの機関と加盟国の役割を入れ替えた記述です。

イ【正】

EUでは財政政策の権限が各加盟国に残されています。だからこそギリシャ財政危機の際に加盟国間で財政の健全度に大きな差が生じ、対応策をめぐる全体での合意が難しくなりました。

ウ【正】

共通通貨ユーロを導入している国(ユーロ圏)では、金融政策の権限が欧州中央銀行に移譲され、政策金利などが域内で一元的に決定されています。

エ【誤】

ユーロを導入した国が各国別の金融政策をとることはできません。同一の通貨を使いながら各国が別々に金利を動かすことは制度上ありえず、財政と金融のどちらが統合されているかを取り違えています。

正解【③】

財政政策は各加盟国が担い(イ)、金融政策はユーロ圏について欧州中央銀行が一元的に担う(ウ)ので、③の組合せが正しくなります。

問2:正解 ④(解答番号16/配点3)

<問題要旨>

EUがギリシャに対して金融の面での支援を行ったという話題を受けて、日本における金融政策に関する記述として最も適当なものを4つの中から選ばせる設問です。

<考え方>

政策金利の引下げが限界に達した後に日本銀行がとった非伝統的金融政策の中身を押さえます。2013年からの量的・質的金融緩和は2%の物価安定目標を掲げてデフレからの脱却をめざしたもので、2016年にはマイナス金利政策が導入され、金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナスの金利が適用されました。残りの選択肢は、制度の内容そのものや政策の狙いが入れ替えられています。

<選択肢>

①【誤】

ペイオフは金融機関が破綻した際に預金の保護額に上限を設ける預金保険の制度であり、公的資金の注入を禁じるものではありません。実際に日本では破綻処理や資本強化のために金融機関への公的資金の注入が行われてきました。制度の内容のすり替えです。

②【誤】

バーゼル合意は国際的に活動する銀行の自己資本比率を規制する銀行監督のルールであり、中央銀行の政策目標を定めるものではありません。銀行への金融規制と中央銀行の金融政策を混同しています。

③【誤】

量的・質的金融緩和は物価上昇率2%の目標を掲げ、デフレからの脱却をめざして行われた政策です。インフレーションの抑制がめざされたとするのは、政策の狙いを正反対にしています。

④【正】

日本銀行は2016年、非伝統的金融政策の一環としてマイナス金利政策を導入し、金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナスの金利を適用しました。

正解【④】

非伝統的金融政策の下でマイナス金利が導入されたという事実を述べた④だけが、制度の内容と政策の狙いの双方で正しい記述です。

問3:正解 ④(解答番号17/配点3)

<問題要旨>

EU全加盟国のロシアからの主要エネルギー資源別の輸入量変化率を示した表1と、EU全加盟国の天然ガス(LNGを含む)の輸入量変化率を国・地域別に示した表2を与え、2つの表を読んだ会話文の空欄2か所を埋めさせる設問です。いずれも2021年から2023年への変化率で、表1は原油−90%、石油製品−91%、天然ガス−83%、LNG+38%、天然ウラン+45%、石炭−100%、表2はロシア−71%、ノルウェー+10%、北アフリカ諸国−7%、アメリカ+197%となっています。

<考え方>

空欄アは、表1の数値に反例があるかどうかで決まります。原油・石油製品・天然ガス・石炭が大きく減った一方で、LNGは+38%、天然ウランは+45%と増えています。増えた資源が現に存在するのですから、EUの経済制裁による輸入制限はロシア産エネルギー資源のすべてに一律に及んだわけではありません。空欄イは、表2でアメリカからの輸入が約200%増えた背景を説明する位置にあるので、アメリカ側で天然ガスの供給余力が増えた事情を述べた記述が入ります。

<選択肢>

ア=b(選択的に)【正】

表1でLNGが+38%、天然ウランが+45%と増加している以上、輸入制限の対象は資源ごとに選ばれていたと考えられます。aの「例外なく」では、増加しているこの2つの資源が反例となって、会話文が説明しようとしている「LNGや天然ウランの輸入が増加している」理由と矛盾してしまいます。

イ=d(アメリカで頁岩(シェール)層に埋蔵されている天然ガスの採掘技術が発達して、生産量が増加している)【正】

シェールガスの生産量の増加がアメリカの輸出余力を生み、表2の+197%という急増を供給の面から説明できます。

イ=c(EU加盟国とアメリカとの間にリスボン条約が締結されて、双方の間でモノの移動の自由が確保されている)【誤】

リスボン条約はEUの組織や意思決定の仕組みを定めた2009年発効のEUの基本条約であり、EU加盟国とアメリカとの間で結ばれた条約ではありません。条約の当事者と内容の両方を取り違えています。

正解【④】

増加した資源があることから制限は選択的(b)であり、アメリカからの急増はシェールガスの生産増(d)で説明できるので、④の組合せが正しくなります。

問4:正解 ①(解答番号18/配点3)

<問題要旨>

国際法やEUとしての外交についての会話を受けて、国際法に関する記述として最も適当なものを4つの中から選ばせる設問です。

<考え方>

国際法の2つの法源(条約と国際慣習法)と、国際社会には統一的な立法機関が存在しないという基本的な性格に戻します。条約は国家間の文書による合意を指す総称で、名称は多様です。国際法の主体は主権国家が中心で、国際機関や個人が主体と認められるのは限られた範囲にとどまります。公海自由の原則は国際慣習法として発展し、国連海洋法条約によって成文化されました。

<選択肢>

①【正】

条約とは国家間の文書による合意を指し、実際には条約という名称のほか、協定・規約・憲章・議定書・宣言などさまざまな名称が用いられています。名称が違っても国家間の文書による合意であれば条約として扱われます。

②【誤】

国際法の主体は主権国家が中心であり、国際機関や個人が主体と認められるのは限られた範囲です。国家と国際機関の位置づけを入れ替えた記述になっています。

③【誤】

公海自由の原則が成文化されたのは国連海洋法条約です。ラムサール条約は水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全に関する条約であり、扱う対象がまったく異なります。条約の名称のすり替えです。

④【誤】

国連総会の決議には原則として法的拘束力がなく、国連憲章が総会を国際法の統一的な立法機関と定めた規定もありません。国際社会に統一的な立法機関が存在しないという国際法の基本的な性格に反しています。

正解【①】

条約が名称を問わず国家間の文書による合意を指すことを述べた①だけが正しく、他は主体・条約名・機関の権限が入れ替えられています。

問5:正解 ③(解答番号19/配点3)

<問題要旨>

統合が進むにつれて情報公開の重要性が高まるという話題を受けて、日本における情報公開について生徒が話し合う会話文の空欄2か所を埋めさせる設問です。会話では、地方公共団体の情報公開条例と中央省庁の行政文書を対象とする情報公開法の前後関係、外国人や法人にも認められる情報公開請求権、不開示決定に対する不服申立て、特定秘密保護法の運用が話題になります。

<考え方>

空欄アは条例と法律の時期の前後を問うもので、直後のYの発言「各地方公共団体で条例が先行して制定された後に法律が制定される場合もある」が答えを指しています。情報公開の分野はまさにこの型で、地方公共団体の情報公開条例が先に広がり、国の情報公開法は1999年に制定されました。空欄イは、行政が保有する情報の公開を求める根拠となる権利を選ぶもので、秘匿性の高い情報の漏洩を処罰する特定秘密保護法との緊張関係で問題になる権利を考えます。

<選択肢>

ア=制定された後に【正】

日本では地方公共団体の情報公開条例が先に広がり、中央省庁の行政文書を対象とする情報公開法は1999年に制定されました。「制定される前に」とすると、条例が先行して法律が後にできる場合もあると述べる直後のYの発言と時期の前後が食い違ってしまいます。

イ=知る権利【正】

知る権利は、国民が国政に関する情報を受け取り、政府に対して情報の公開を求める権利として表現の自由を根拠に主張されてきた権利で、秘匿性の高い情報の漏洩を処罰する特定秘密保護法との関係で運用上の配慮が求められます。アクセス権はマスメディアに対して紙面や放送時間の提供を求める権利であり、政府の情報公開とは相手方も内容も異なるので当てはまりません。

正解【③】

条例が先行して情報公開法が制定され、特定秘密保護法では国民の知る権利への配慮が求められるので、③の組合せが正しくなります。

問6:正解 ②(解答番号20/配点3)

<問題要旨>

ヨーロッパでの環境に関する法令や裁判例という話題を受けて、日本の法令や裁判例に関する記述として最も適当なものを4つの中から選ばせる設問です。環境影響評価法、循環型社会形成推進基本法、大阪空港訴訟、鞆の浦景観訴訟が題材になっています。

<考え方>

環境法の基本的な仕組みは、事業の実施前に環境への影響を予測・評価する環境影響評価(環境アセスメント)と、製品が廃棄・リサイクルされる段階まで生産者に責任を負わせる拡大生産者責任の2つです。裁判例については、大阪空港訴訟と鞆の浦景観訴訟がそれぞれ何を認め何を認めなかったかを取り違えないことが要点になります。

<選択肢>

①【誤】

環境影響評価法は、開発事業の実施前に環境への影響を調査・予測・評価し、その結果を公表させる制度です。「事前ではなく事後的に」としているのは、この制度の要である事前手続という性格を反転させています。

②【正】

循環型社会形成推進基本法は、生産者が製品の使用後の廃棄やリサイクルの段階まで一定の責任を負うという拡大生産者責任の考え方を取り入れています。

③【誤】

大阪空港訴訟の1981年の最高裁大法廷判決は、過去の損害についての賠償は認めたものの、夜間の飛行差止めを求める請求については訴えを却下し、差止めを認めませんでした。判決の結論が逆になっています。

④【誤】

鞆の浦景観訴訟の2009年の広島地裁判決は、周辺住民の景観利益を法律上保護される利益として認め、湾の埋立て免許の交付差止めを認めました。認めなかったとするのは判決の結論を逆にした記述です。

正解【②】

拡大生産者責任を取り入れた循環型社会形成推進基本法について述べた②だけが正しく、他は制度の性格や判決の結論が反転させられています。

第5問 自国の利益と地球全体の利益(配点19)

生徒Xと生徒Yが、自国の利益と地球全体の利益の関係という論点から国際政治・経済の課題を議論する会話文が素材です。主権国家間の衝突、関税の選択をゲーム理論で分析する利得表、巨大企業と消費者の関係、条約による人権保障、人道危機と内政不干渉の原則が、下線部ごとに問われます。

問1:正解 ③(解答番号21/配点3)

<問題要旨>

排他的に自国の利益を優先する主張が主権を有する国家間の衝突の可能性を高めるという会話を受けて、主権に関する記述として最も適当なものを4つの中から選ばせる設問です。

<考え方>

主権の2つの側面(対内的な最高性と対外的な独立性)と、国家の三要素の内容に戻します。主権は国内では領域内のすべての人と物を統治する最高の権力であり、対外的には他国の支配を受けない独立を意味します。国家の三要素は領域・国民・主権であり、この3つのいずれかが欠けている記述は落とせます。

<選択肢>

①【誤】

近代の主権概念は、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝といった普遍的権威から国王が自立していく過程で確立したものです。国王の行為を宗教的権威によって規制する教会の権力として成立したとするのは、主権が何から独立するための概念だったのかを逆にしています。

②【誤】

市民革命の時期に選挙権を得たのは主に一定の財産をもつ成人男性であり、すべての成人男女に選挙権を認める普通選挙制が確立したのは20世紀のことです。国民主権の獲得と普通選挙制の確立という時期の異なる出来事を同時のものにしています。

③【正】

主権を有する国家は、国内的には領域内のすべての人々を統治する最高権力をもち(対内的最高性)、対外的には他国から独立しています(対外的独立性)。主権の2つの側面を正しく述べた記述です。

④【誤】

国家の三要素は領域・国民・主権です。領域と政府と主権を挙げて「国民」を落としており、三要素の構成要素を入れ替えています。

正解【③】

対内的な最高性と対外的な独立性という主権の二側面を正しく述べた③が正解で、他は成立の経緯・時期・三要素の内容が改変されています。

問2:正解 ⑤(解答番号22/配点4)

<問題要旨>

A国とB国が事前に交渉できず相手の選択がわからない状況で「低関税」か「高関税」を同時に選び、両国が自国の得点の最大化だけをめざすという前提と、両国の得点を示した利得表を与え、そこから導かれる内容として正しいものをア〜ウからすべて選ばせる設問です。

<考え方>

利得表の4通りをすべて書き出し、数値で比べます。組合せは(A国=低関税・B国=低関税)でA国8点・B国8点、(A国=低関税・B国=高関税)でA国3点・B国7点、(A国=高関税・B国=低関税)でA国7点・B国3点、(A国=高関税・B国=高関税)でA国4点・B国4点です。判定は「相手の選択を固定したうえで自国の得点を比べる」という手順で一つずつ行います。

<選択肢>

ア【正】

A国の得点は8点・3点・7点・4点の4通りで、最大の8点はA国が低関税を選び、かつB国も低関税を選んだときにしか生じません。A国だけが低関税を選んでもB国が高関税なら3点にとどまるので、B国も低関税を選ぶ必要があります。

イ【誤】

B国が低関税を選ぶとき、A国の得点は低関税なら8点、高関税なら7点で、低関税の方が高くなります。高関税の方が高くなるとするのは数値の大小が逆です。なお、B国が高関税のときには低関税の3点より高関税の4点が高くなるので、条件を「B国が高関税の場合」と取り違えると引っかかります。

ウ【正】

A国が高関税を選ぶと予想する場合、B国の得点は低関税なら3点、高関税なら4点です。両国は自国の得点の最大化だけをめざすという前提なので、B国は高関税を選びます。

正解【⑤】

利得表の数値で確かめるとアとウが成り立ち、イだけが得点の大小を逆にしているので、⑤が正しくなります。

問3:正解 ③(解答番号23/配点3)

<問題要旨>

現代の巨大企業について生徒が作成したメモを与え、下線部㋐「寡占」の用語の説明をa〜cから、下線部㋑「事実上の標準」に当てはまる事例をd・eから選んで組合せを答えさせる設問です。メモは、法的な強制力をもつ規格がある場合には企業の製品などに必ず適用されるとも述べています。

<考え方>

寡占・多角化・多国籍企業化という似た用語を、それぞれが何を指すかで切り分けます。寡占は少数の企業が特定市場の大半を占める状態です。「事実上の標準」(デファクトスタンダード)は、市場競争の結果として私企業の規格が標準の地位を得たものであり、公的機関が定めて強制力をもつ規格(デジュリスタンダード)とは成り立ち方が異なります。メモ最終段落の「法的な強制力をもつ規格」という一文が、この対比を示す手がかりになります。

<選択肢>

㋐=b(数社の企業で特定の市場の大半を支配すること)【正】

寡占の定義そのものです。aの「従来と異なる産業にも進出すること」は多角化・コングロマリット化、cの「国境を越えて企業活動を展開すること」は多国籍企業化の説明で、いずれも市場の集中度を表す寡占とは別の概念です。

㋑=d(文書作成ソフトウェアが乱立していたが、徐々に一つのソフトウェアに利用が集中して、ほかのソフトウェアの利用が大幅に減少した)【正】

市場での利用の集中によって私企業の規格が標準の地位を得た例であり、事実上の標準に当たります。

㋑=e(独自規格の端子を採用していたスマートフォンを販売する企業が、ある国際機関が定めた端子の採用を強いられることとなった)【誤】

公的な機関が定めた規格が強制力をもって適用された例で、メモ最終段落の「法的な強制力をもつ規格」に当たります。市場競争の結果として標準になる事実上の標準とは、標準が決まる経路が逆です。

正解【③】

寡占は少数企業による市場の支配(b)、事実上の標準は市場での利用の集中による標準化(d)なので、③の組合せが正しくなります。

問4:正解 ②(解答番号24/配点3)

<問題要旨>

依存効果の実際の例を調べるために生徒が集めた、最近買った商品の購入理由4つを与え、依存効果の例として最も適当なものを選ばせる設問です。

<考え方>

依存効果は、ガルブレイスが指摘した、消費者の欲望が消費者自身の内側から生じるのではなく企業の広告や宣伝によってつくり出されるという現象です。したがって決め手は「買うつもりがなかったのに、企業の働きかけによって欲しくなったか」であり、値下がり・補助金・習慣といった価格や慣行を理由とする購買は、欲望が新たにつくられたわけではないので当てはまりません。

<選択肢>

①【誤】

もともと欲しかった商品を値下がりを機に買った例で、欲望は消費者の側にすでにありました。価格が下がって需要量が増えたという通常の価格効果であり、企業が欲望をつくり出したわけではありません。

②【正】

買うつもりのなかった商品を、魅力的な広告をみて欲しくなって購入した例です。企業の宣伝活動によって欲望そのものが生み出されており、依存効果に当てはまります。

③【誤】

政府の補助金で価格が下がったことによる購買であり、企業の広告とは無関係な価格要因です。しかも働きかけの主体が企業ではなく政府になっており、依存効果の枠組みから外れています。

④【誤】

習慣としていつも買っている商品を値上がりしても買った例で、需要が価格に反応しにくいことを示すにとどまります。宣伝によって新たな欲望がつくられたわけではありません。

正解【②】

広告によって、買う意思のなかった商品への欲望がつくり出された②が、依存効果の例に当たります。

問5:正解 ②(解答番号25/配点3)

<問題要旨>

人権が国内法だけでなく条約によって国際的に保障されている側面もあるという会話を受けて、ア〜ウの人権条約のうち日本が批准していないものをすべて選ばせる設問です。女性差別撤廃条約(1979年採択)、死刑廃止条約(1989年採択)、障害者権利条約(2006年採択)の3つが挙げられています。

<考え方>

主要な人権条約について、日本が批准したかどうかと批准の年を押さえます。日本は女性差別撤廃条約を1985年に批准し、これに合わせて男女雇用機会均等法を制定し国籍法を父母両系主義に改めました。障害者権利条約は2014年に批准し、これに先立って障害者差別解消法などの国内法を整備しました。一方、死刑制度を存置している日本は、死刑の廃止を締約国に義務づける条約を批准していません。

<選択肢>

ア【誤(批准している)】

女性差別撤廃条約は1979年採択で、日本は1985年に批准しています。批准に向けて男女雇用機会均等法の制定や国籍法の父母両系主義への改正といった国内法の整備が行われました。批准していないものには当たりません。

イ【正(批准していない)】

死刑廃止条約(自由権規約第二選択議定書)は1989年に採択されましたが、死刑制度を存置している日本はこれを批准していません。

ウ【誤(批准している)】

障害者権利条約は2006年採択で、日本は2014年に批准しています。批准に先立って障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定など、国内法の整備が進められました。批准していないものには当たりません。

正解【②】

日本が批准していないのは死刑廃止条約(イ)だけであり、女性差別撤廃条約と障害者権利条約はいずれも批准済みなので、②が正しくなります。

問6:正解 ④(解答番号26/配点3)

<問題要旨>

人道危機に対処しようとする国際社会にとって内政不干渉の原則との関係が大きな障壁になるという会話を受けて、人道危機に関する国際的な取組みや議論について述べたア〜ウのうち正しいものをすべて選ばせる設問です。

<考え方>

国連平和維持活動(PKO)の原則、人道的介入をめぐる議論、「保護する責任」論の3つを区別します。PKOは紛争当事国の同意、加盟国による自発的な人員の提供、中立性を原則としてきました。人道的介入は、深刻な人権侵害を止めるために他国が武力を用いることを正当化する主張として1990年代に唱えられました。「保護する責任」論は、人々を保護する第一義的な責任は当該国家にあり、それが果たされないときに国際社会がその責任を引き受けるという順序で組み立てられており、責任を負う主体の順序が入れ替えられていないかを確かめます。

<選択肢>

ア【正】

PKOは、関係国の同意を前提に、国連加盟国が自発的に提供した人員によって編成され、紛争当事者のいずれにも偏らない中立的な立場で活動することを原則としてきました。

イ【正】

人道的介入は、内戦などで住民が深刻な危機にさらされた場合に国際社会が必要な介入を行いうるとして、外国の国家による武力行使を正当化する理由として主張されてきました。

ウ【誤】

「保護する責任」論では、危機にある人々を保護する第一義的な責任は当該国家の政府にあり、それが果たされないときにその責任が国際社会に移るとされます。第一義的な責任を国際社会に置き、果たされないときに当該国家へ移るとするのは、責任を負う主体の順序を逆にしています。

正解【④】

PKOの原則(ア)と人道的介入の主張(イ)は正しく、「保護する責任」論の主体の順序を逆にしたウが誤りなので、④が正しくなります。

第6問 超高齢社会の日本の課題(配点19)

生徒Xと生徒Yが「超高齢社会の日本の課題」をテーマに、思いついた課題をカードに書き出し、経済・社会・政治の3つの群に分類する探究活動を行います。年金制度とGPIFによる年金積立金の運用、高齢者による犯罪と高齢者の消費者被害、世代間の政治的影響力の格差という、分類された課題ごとに設問が並びます。

問1:正解 ④(解答番号27/配点3)

<問題要旨>

厚生労働省のWebページをもとに作成した年金制度のメモを与え、受給開始年齢(ア)と、国民年金の別称(イ)、会社員や公務員が上乗せで加入する年金の名称(ウ)を埋めさせる設問です。メモには20歳から60歳になるまでの40年間の保険料納付、2025年度の保険料月額17,510円、学生の納付猶予制度、保険料の労使折半といった記述が並びます。

<考え方>

公的年金の二階建て構造に戻します。国民年金は20歳から60歳になるまでの40年間保険料を納め、原則として65歳から受給します。国民年金は基礎年金とも呼ばれ国民皆年金制度の土台であり、会社員や公務員はこれに上乗せされる厚生年金に加入し、その保険料は事業主と被保険者が半分ずつ負担します(労使折半)。メモ冒頭の「60歳になるまでの40年間」は保険料を納める期間であって受給開始年齢ではない、という区別が要点です。

<選択肢>

ア=65【正】

国民年金(老齢基礎年金)の受給開始年齢は原則65歳です。「60」はメモ冒頭にある保険料の納付終了年齢と同じ数字なので紛れやすいのですが、保険料を納め終える年齢と年金を受け取り始める年齢は別です。

イ=基礎年金【正】

国民年金は基礎年金とも呼ばれ、全国民が加入する国民皆年金制度の土台をなします。

ウ=厚生年金【正】

会社員や公務員が基礎年金に上乗せして加入するのは厚生年金で、その保険料は事業主と被保険者の労使折半です。イとウを入れ替えて「イ=厚生年金/ウ=基礎年金」とすると、土台と上乗せの関係が逆になり、労使折半という記述とも合わなくなります。

正解【④】

受給開始は原則65歳、土台が基礎年金、上乗せで労使折半なのが厚生年金なので、④の組合せが正しくなります。

問2:正解 ⑥(解答番号28/配点3)

<問題要旨>

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金積立金を国内外の証券市場で管理・運用していることをめぐる会話文の空欄3か所を埋めさせる設問です。年金財政の方式(ア)、金利が下がったときの債券価格の動き(イ)、円高・ドル安になったときのドル建て資産の円での評価額の動き(ウ)が問われます。

<考え方>

3つともいずれの「向き」かを決める問題なので、それぞれの原理に戻します。年金財政には、自分の納めた保険料を積み立てて将来の自分の給付に充てる積立方式と、現役世代の保険料をその時点の受給世代の給付に充てる賦課方式があり、日本は事実上後者です。債券は満期までに受け取る利息が決まっているため、市場金利が下がると既に発行された債券の相対的な有利さが増して価格は上がります。円高・ドル安とは1ドルと交換できる円が少なくなることなので、ドル建て資産を円に換算した金額は小さくなります。

<選択肢>

ア=賦課【正】

現役世代が納めた保険料を、その時点で年金を受け取る世代への給付に充てる仕組みなので賦課方式です。「積立」方式は自分の納めた保険料を自分の給付の財源として積み立てる方式で、会話文がいう世代間の原資の移転を説明できません。

イ=上がる【正】

債券は満期までに受け取る利息の額が決まっているため、市場金利が下がると既発債の相対的な有利さが増し、価格は上昇します。金利と債券価格は逆方向に動くという関係です。

ウ=減少【正】

円高・ドル安とは1ドルと交換できる円が少なくなることなので、ドル建ての債券や株式を日本円に換算した評価額は小さくなります。「増加」となるのは円安・ドル高のときで、為替の動きと評価額の関係が逆です。

正解【⑥】

賦課方式であること、金利低下で債券価格は上昇すること、円高でドル建て資産の円換算額は減少することという3つの向きがそろうのは⑥です。

問3:正解 ③(解答番号29/配点3)

<問題要旨>

年金問題と国民経済の関係についての会話文の空欄3か所を埋めさせる設問です。証券が「ある時点までに蓄積された貸付けや投資の証明書」であること(ア)、GDPが一国の経済活動の規模を示す指標であること(イ)、国民所得を雇用者報酬・財産所得・企業所得に分ける見方(ウ)が問われます。

<考え方>

ストックとフローの区別、および三面等価の3つの面に戻します。ストックはある時点までに蓄積された量、フローは一定期間に生じた量です。証券のように「ある時点までに蓄積された」ものはストック、GDPのように一定期間に生み出された付加価値の合計はフローです。三面等価は生産・分配・支出の3つの面をいい、国民所得を雇用者報酬・財産所得・企業所得に分けるのは分配面からみた見方です。

<選択肢>

ア=ストック【正】

会話文が「ある時点までに蓄積された貸付けや投資の証明書」と述べているとおり、証券は一時点の残高を表す金融面のストックです。

イ=フロー【正】

GDPは一定期間に新たに生み出された付加価値の合計であり、期間についての量を表す実物面のフローです。

ウ=分配【正】

国民所得を雇用者報酬・財産所得・企業所得に分けるのは分配面からみた国民所得で、利子や株式配当の所得は財産所得に分類されます。「支出」面は民間消費・民間投資・政府支出・経常海外余剰などに分ける見方であり、会話文に挙げられた内訳とは合いません。

正解【③】

証券はストック、GDPはフロー、雇用者報酬などへの内訳は分配面という対応になるので、③の組合せが正しくなります。

問4:正解 ③(解答番号30/配点3)

<問題要旨>

警察が検挙した被疑者の年齢別人数を14〜17歳・18〜64歳・65歳以上の積み上げ棒グラフで2002年から2022年まで示した図と、同じ期間の日本の65歳以上人口を折れ線で示した図を与え、2008年と2022年を比べて減少しているもの(ア)と、2022年の刑法改正により2025年に生じた刑罰の変更(イ)を、それぞれ2択から選ばせる設問です。

<考え方>

2つのグラフを突き合わせ、割合の分母が何かを区別して計算します。図から2008年は検挙人数の総数が約34万人、65歳以上の検挙人数が約5万人で、総数に占める割合は約14%です。2022年は総数が約17万人、65歳以上が約4万人で、割合は約23%へ上がっています。一方、65歳以上人口は2008年の約2,800万人から2022年の約3,600万人へ増えており、65歳以上人口に占める65歳以上の検挙人数の割合は約0.17%から約0.11%へ下がります。分子を同じにしても、分母を検挙総数にとるか65歳以上人口にとるかで増減が逆になる点が要点です。刑罰については、2022年の刑法改正で懲役刑と禁錮刑を一元化した拘禁刑が新設され、2025年6月に施行されました。

<選択肢>

ア=b(65歳以上人口に占める65歳以上検挙人数の割合)【正】

分母の65歳以上人口が約2,800万人から約3,600万人へ増える一方、分子の65歳以上の検挙人数はおおむね5万人から4万人へ減っているので、この割合は約0.17%から約0.11%へ減少します。

ア=a(検挙人数の総数に占める65歳以上検挙人数の割合)【誤】

分母の検挙人数の総数が約34万人から約17万人へほぼ半減する一方、分子の65歳以上はあまり減っていないため、この割合は約14%から約23%へ増加します。減少しているとするのは逆で、割合の分母を取り違えると陥る誤りです。

イ=c(懲役刑と禁錮刑に代わって、拘禁刑が新設された)【正】

2022年の刑法改正で、刑務作業を義務づける懲役刑と義務づけない禁錮刑を一本化した拘禁刑が新設され、2025年6月に施行されました。受刑者の特性に応じた処遇によって再犯防止のための措置を充実させることが導入の趣旨です。

イ=d(拘禁刑に代わって、懲役刑と禁錮刑が新設された)【誤】

新設されたのは拘禁刑であり、廃止されたのが懲役刑と禁錮刑です。新旧の刑罰を入れ替えており、どちらが先にあった制度かという前後関係が逆になっています。

正解【③】

減少するのは分母を65歳以上人口にとった割合(b)であり、2025年に施行されたのは拘禁刑の新設(c)なので、③の組合せが正しくなります。

問5:正解 ⑥(解答番号31/配点4)

<問題要旨>

高齢者の消費者被害に関連して、消費者契約法・クーリング・オフ制度・成年後見制度という3つの法制度と、その内容を述べたa〜cの記述との組合せとして正しいものを選ばせる設問です。

<考え方>

3つの制度を、対象となる取引・要件・期間で切り分けます。消費者契約法は、事業者の不当な勧誘(不実告知など)によって誤認して結んだ契約の取消しを認める一般的なルールで、取消権の行使期間は追認できるときから1年・契約締結時から5年です。クーリング・オフは特定商取引法などが訪問販売など特定の取引に限って認める無条件解除の制度で、期間は書面交付から8日間などと短く定められています。成年後見制度は、判断能力が不十分な人を保護するために家庭裁判所が後見人などを選任する民法上の制度です。

<選択肢>

ア=消費者契約法 ― c【正】

事業者が消費者に誤認を生じさせて契約を締結させた場合などに、締結から5年などの期間内であれば契約を取り消せるとする制度です。取引の種類を限定せず消費者契約全般に及ぶ点が、対象を限定するクーリング・オフとの違いです。

イ=クーリング・オフ制度 ― b【正】

対象が訪問販売などの契約に限られるかわりに、契約の締結から8日間などの期間内であれば理由を問わず無条件で契約を解除できる制度です。対象の限定と期間の短さがこの制度の特徴です。

ウ=成年後見制度 ― a【正】

病気や加齢などにより判断能力が十分でない人のために、その人が契約を締結するのを助けたり代理したりする人を選任できる制度です。いったん結んだ契約の効力を後から覆す制度ではなく、契約の場面で本人を支える仕組みという点で他の2つと性格が異なります。

正解【⑥】

消費者契約法が誤認による契約の取消し(c)、クーリング・オフが期間内の無条件解除(b)、成年後見制度が後見人などの選任(a)に対応するので、⑥が正しくなります。

問6:正解 ①(解答番号32/配点3)

<問題要旨>

日本における選挙の問題をまとめたメモを与え、一票の格差の改善のために2022年に新しい議員定数の配分方式が導入された選挙の種類(ア)と、世代別の選挙区を作る制度の利点と課題(ウ)を、それぞれ選択肢から選ばせる設問です。メモには、世代間の政治的影響力の格差を改善する案として、1「選挙で投票できる年齢の引下げ」、2「世代別の選挙区の導入」、3「投票を棄権した者に対する罰則の導入」の3つが並び、それぞれに利点と課題の空欄が置かれています。

<考え方>

空欄アは配分方式の説明から決まります。各都道府県の人口をある定数で割り、得られた答えの小数点以下を切り上げて定数とする方式はアダムズ方式で、2016年の法改正を経て2022年から衆議院小選挙区の定数配分に適用されました。空欄ウは、メモの1〜3のうち2(世代別選挙区)の利点と課題を入れる位置にあるため、利点も課題も世代別選挙区に固有のものでなければなりません。選択肢には1と3に対応する記述も並べられているので、どの案についての利点と課題かで振り分けます。

<選択肢>

ア=a(衆議院議員)【正】

人口を一定の数で割って小数点以下を切り上げる配分方式はアダムズ方式で、2022年から衆議院小選挙区の議員定数の配分に導入されました。参議院は合区や選挙区定数の増減によって一票の格差に対応してきており、この方式は用いられていません。

ウ=c(若年世代の投票率が低くても若年世代が選んだ者を必ず確保できるようになるが、世代の違いを政治的に強調しすぎることになり、世代間対立を選挙制度によって煽ることになりかねない)【正】

世代別の選挙区を設ければ、その世代から議員が必ず選ばれるという利点と、世代の線引きを制度に組み込むことで対立を深めるという課題が同時に生じます。利点も課題もいずれも世代別選挙区に固有の内容です。

ウ=d(若年世代も含め投票率が上昇することが期待されるが、投票に行くことは義務でなく権利であるという考え方も強く、一つの意見の表明として投票に行かないという選択が制約されかねない)【誤】

棄権を制約することの是非を論じており、メモの3「投票を棄権した者に対する罰則の導入」の利点と課題です。世代別の選挙区とは論点が異なります。

ウ=e(若年世代の有権者の数を増加させることができるが、若年世代の人口は高齢世代の人口に比べて少ないので、有権者の増加数は限定的である)【誤】

有権者の数が増えるかどうかを論じており、メモの1「選挙で投票できる年齢の引下げ」の利点と課題です。世代別選挙区は有権者の数を増やす制度ではないので当てはまりません。

正解【①】

アダムズ方式が導入されたのは衆議院議員の選挙(a)で、世代別選挙区の利点と課題を述べたのはcなので、①の組合せが正しくなります。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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