2025年度 大学入学共通テスト 本試験 地理総合 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解②

<問題要旨>

世界地図で示された、食や健康に関する指標の分布から、その指標が何であるかを特定する問題です。各指標の地理的な偏りを理解しているかが問われます。

<選択肢>

①【誤】

栄養不足人口の割合は、経済レベルや食料生産・分配の状況と関連が深いです。一般的にアフリカのサハラ以南や南アジアで高く、ヨーロッパや北米などの先進国で低い傾向にあります。図の分布と大まかな傾向は似ていますが、全ての国が一致するわけではなく、より合致する選択肢を検討する必要があります。

②【正】

この図は穀物の輸入依存度を示しています。アフリカや中東の乾燥地域の国々、また人口が急増しているいくつかの発展途上国では、国内の食料生産が需要に追いつかず、穀物の輸入依存度が「高位」になります。一方で、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、フランスといった国々は、大規模な商業的穀物農業が盛んな穀物輸出国であるため、輸入依存度は「低位」となります。この傾向が、図の分布とおおむね一致します。

③【誤】

1人1日当たりカロリー摂取量は、食生活の豊かさを示す指標の一つです。北米やヨーロッパなどの先進国で高く、経済的に困難を抱える発展途上国で低い傾向にあります。図に示された分布(アフリカなどで「高位」)とは高低が逆になるため、誤りです。

④【誤】

平均寿命は、医療水準や公衆衛生、栄養状態などを反映します。先進国で高く、発展途上国で低い傾向が顕著です。これも図に示された分布とは高低が逆になるため、誤りです。

問2:正解①

<問題要旨>

地図で示された4地点の自然環境と、それに結びつく農業の特徴について、その正誤を判断する問題です。世界の気候区分や土壌、代表的な農産物に関する知識が求められます。

<選択肢>

①【正】

アはロシアの首都モスクワ周辺で、冷帯湿潤気候に属します。この地域は冷涼ですが、夏には気温が上昇し、年間を通じて降水があります。南に広がるロシア平原には肥沃な黒土(チェルノーゼム)が分布しており、小麦やライ麦、じゃがいもなどの栽培が盛んです。したがって、この記述は正しいです。

②【誤】

イはアラビア半島で、大部分が砂漠気候です。「1年中乾燥」「オアシスや灌漑」という記述は正しいですが、この地域で伝統的に栽培されるのは、乾燥に強いナツメヤシなどです。「アブラヤシ」は、高温多湿な熱帯雨林気候(東南アジアなど)で栽培される作物であるため、誤りです。

③【誤】

ウはアフリカ中央部のコンゴ盆地周辺で、熱帯雨林気候に属します。熱帯雨林気候は年間を通じて高温多雨であり、「雨季と乾季が明瞭」ではありません。雨季と乾季が明瞭なのは、その周辺に広がるサバナ気候の特徴です。したがって、気候に関する記述が誤りです。

④【誤】

エは南アフリカ共和国のケープタウン周辺で、地中海性気候に属します。地中海性気候は、夏に乾燥し、冬に雨が多くなります。記述は「冬より夏の降水量が多い」となっているため、気候の特徴が逆であり、誤りです。「ブドウ」の栽培は地中海式農業として正しいですが、気候の記述が合いません。

問3:正解①

<問題要旨>

各国の食文化を背景に、コーヒーと茶の消費量のデータから国名を特定する問題です。各国の伝統的な飲料文化に関する知識が問われます。

<選択肢>

①【正】

イギリスは、世界的に見ても紅茶の消費量が非常に多い国です。17世紀に東インド会社によってもたらされて以降、独自の紅茶文化が発展しました。一方で、近年はコーヒーショップの普及などによりコーヒーの消費も増えています。図を見ると、①は茶の消費量が突出して多く、コーヒーの消費量も一定量あることから、イギリスであると判断できます。

②【誤】

②は茶の消費が多く、コーヒーの消費が少ない国です。茶の原産国であり、緑茶や烏龍茶など多様な茶文化を持つ中国が該当すると考えられます。

③【誤】

③はコーヒー、茶ともに消費量が少ない国です。候補の中では、コーヒーの生産国ではあるものの、国民一人当たりの伝統的な飲用習慣としては他の国ほどではないインドネシアが該当する可能性があります。

④【誤】

④はコーヒーの消費が突出して多く、茶の消費が少ない国です。エスプレッソに代表されるような、独自のコーヒー文化が根付いているイタリアが該当すると考えられます。

問4:正解②

<問題要旨>

イモ類の食品ロスに関する統計表を読み解き、その要因について述べた文章の中から、適当でないものを選ぶ問題です。食品ロスの内容は、先進国と発展途上国で異なることを理解しておく必要があります。

<選択肢>

①【正】

表を見ると、生産・収穫段階のロスはヨーロッパ(20.0%)が南・東南アジア(6.0%)より著しく高いです。先進国では、流通・小売段階で求められる見た目や規格の基準が厳しく、基準に満たない農産物が収穫段階で廃棄されることが多いため、この記述は妥当です。

②【誤】

この記述は不適当です。南・東南アジアの貯蔵段階ロスが高い(17.9%)要因として、「高温湿潤な環境」や「貯蔵施設が不足」することは妥当です。しかし、「イモ類の収穫時期が短期に集中し」という部分が、この地域の主要なイモ類(キャッサバ、タロイモなど)の実態と異なります。熱帯地域で栽培されるこれらのイモ類は、一年を通じて収穫できるものが多く、収穫時期が特定の短期間に集中するわけではありません。したがって、この記述は適当ではありません。

③【正】

卸売・小売段階のロスは、いずれの地域でも発生しています。需要を予測して商品を仕入れる小売業では、販売機会の損失を防ぐために多めに仕入れ、売れ残ったものが廃棄されることがあります。これは地域を問わず見られるロスの要因であり、妥当な記述です。

④【正】

表を見ると、消費段階のロスはヨーロッパ(9.8%)が南・東南アジア(1.8%)より高いです。これは、先進国における消費者の食べ残しや、購入したものの使わずに賞味期限・消費期限切れで廃棄されることが多いことを示しています。フードバンクは、こうした余剰食品を福祉施設などに寄付する活動であり、ロス削減の有効な取り組みです。したがって、この記述は妥当です。

第2問

問1:正解②

<問題要旨>

新旧の地形図を比較し、土地利用の変化や地形の特徴を読み取り、それに関する記述の正誤を判断する問題です。地形図の読図スキルが求められます。

<選択肢>

a【正】

1919年の地形図を見ると、現在の豊橋公園の場所には「陸軍兵営」や「練兵場」の文字が見え、軍事施設があったことがわかります。現在の地形図では同所が「豊橋公園」となっており、軍用地が公園に転用されたことが読み取れます。したがって、この記述は正しいです。

b【正】

飽海町の北から豊川にかけての地域は、1919年の地形図では水田(湿田)の記号が多く見られます。現在の地形図でも、周辺が市街化する中で水田や畑地が残っており、大規模な宅地開発が進んでいません。川沿いの低地が開発されずに残っている状況から、大雨の際に水を一時的に貯める「遊水地」としての機能を持っているという推測は妥当です。したがって、この記述は正しいです。

c【誤】

現在の地形図で、国道1号の標高を確認します。東新町交差点付近の標高点(三角点ではない)は「8.8」メートルです。そこから西へ進んだ神明町や駅前大通には「10.0」メートルの標高点があります。したがって、東新町から瓦町(西側)へ向かう道は下り坂ではなく、緩やかな上り坂です。したがって、この記述は誤りです。

以上のことから、a正、b正、c誤の組み合わせである②が正解となります。

問2:正解④

<問題要旨>

豊橋市の製造業に関する資料(分布図、解説カード)と会話文を照らし合わせ、内容に誤りを含む発言を選ぶ問題です。資料を正確に読み取り、内容を吟味する能力が求められます。

<選択肢>

①【正】

レオンの発言。豊橋市の製造業従業者総数は約3.6万人。分布図を見ると、1000人以上のメッシュ(濃いグレー)が臨海部に2つあります。これらのメッシュだけで市内の従業者総数の1割以上(3600人以上)を占める、という指摘は、特定の地区への工業集積の度合いを示すものとして、図の見た目からも妥当な読み取りです。

②【正】

コハクの発言。カードに示された「三河湾臨海地区」と「二川・谷川地区」は、いずれも従業者数500人以上のメッシュ(濃いグレーと中間のグレー)が複数集まっているか、連続して分布しています。これは図から読み取れる事実であり、妥当な発言です。

③【正】

レオンの発言。関連する工場や企業が特定の場所に集まること(工業集積)で、部品の輸送コストや情報のやり取りにかかるコストが削減できるというメリット(集積の利益)があります。これは工業立地の基本的な考え方であり、妥当な発言です。

④【誤】

ミイコの発言。「これらの二つのいずれの地区も、主要道路に隣接しているので、道路の利便性が最も大きな立地要因である」と断定している点が誤りです。内陸部の「二川・谷川地区」は国道に近く、道路交通の利便性が重要でしょう。しかし、港に面した「三河湾臨海地区」は、写真や「海外自動車メーカーの流通基地」という記述から、港湾を利用した海上輸送が極めて重要な立地要因であることがわかります。両地区をひとまとめにして道路が「最も大きな」要因だとするこの発言は、誤りを含みます。

問3:正解⑤

<問題要旨>

東三河地域の農業の変化に関する資料を読み解き、1960年と2006年の作物別収穫量の変化を示した地図(ア~ウ)と、作物名(キャベツ、米、サツマイモ)を正しく組み合わせる問題です。地域の地理的条件と農業の変化を結びつけて考える力が必要です。

<選択肢>

ア【米】

アは、1960年には地域全体で広く栽培されていたものの、2006年には収穫量が大きく減少している作物です。これは、食生活の変化や減反政策などにより、国内で生産量が減少傾向にある米の動向と一致します。

イ【キャベツ】

イは、1960年にはほとんど生産されていなかったのが、2006年に豊川用水が整備された平野部(特に渥美半島など)で収穫量が爆発的に増加しています。これは、用水整備と大消費地への輸送網の発達により、野菜栽培(近郊農業)が盛んになったことを示しています。愛知県のキャベツ生産は全国トップクラスであり、この変化はキャベツに該当します。

ウ【サツマイモ】

ウは、1960年から2006年にかけて収穫量が減少していますが、米ほど急激ではありません。サツマイモは比較的やせた土地でも栽培可能ですが、より収益性の高い作物への転換などにより生産が減少したと考えられます。

以上のことから、ア=米、イ=キャベツ、ウ=サツマイモの組み合わせである⑤が正解です。

問4:正解①

<問題要旨>

東三河地域と他府県との旅客流動に関する統計表を読み解き、県名(K)と交通手段(キ)を特定する問題です。地理的な位置関係と交通手段の特性を考慮して推論する力が問われます。

<選択肢>

①【正】

まず、県名JとKを特定します。東三河地域は愛知県東部に位置し、静岡県と長野県の両方に接しています。表を見ると、K県との旅客数はキだけで1,826万人と、他のどの地域よりも圧倒的に多くなっています。隣接し、東海道新幹線や東名高速道路などで強く結ばれている静岡県との間の流動が、長野県との流動より遥かに多いと考えるのが自然です。したがって、Kが静岡県、Jが長野県です。

次に、交通手段カとキを特定します。隣接する静岡県との間で1,826万人という膨大な旅客数を記録しているキは、日常的な移動で頻繁に利用される自家用自動車などを含む「自動車」と考えられます。一方、カは「鉄道」となります。

したがって、K=静岡、キ=自動車の組み合わせである①が正解です。

第3問

問1:正解①

<問題要旨>

日本列島周辺のプレートテクトニクスと、それに伴う火山・地震活動に関する基本的な知識を問う問題です。

<選択肢>

①【正】

図を見ると、東北地方の活火山は、太平洋岸から一定の距離を置いた内陸部に、南北に列をなして分布しています。これは、東から日本海溝に沈み込んでいく太平洋プレートが、大陸プレートである北アメリカプレートの下で溶けてマグマを生成し、地表に火山を形成するためです。この火山列は火山フロント(那須火山帯)と呼ばれ、記述の内容は完全に正しいです。

②【誤】

中国・四国地方に活火山が少ないのは事実ですが、地震は頻発します。プレート境界で発生する海溝型地震のほか、内陸の活断層が動くことによる直下型地震も発生します(例:1995年兵庫県南部地震)。「直下型地震も発生しない」という記述が明確に誤りです。

③【誤】

九州地方の火山活動は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことによって生じています。プレート同士が「離れつつある」場所(広がる境界)ではなく、「狭まる境界」で起こる現象です。したがって、記述は誤りです。

④【誤】

東シナ海には水深の浅い大陸棚が広がっていますが、南西諸島に沿っては沖縄トラフという水深2000mを超える深い海盆があります。この周辺では地震も発生し、津波を引き起こす可能性は十分にあります。過去にも八重山地震津波(明和の大津波)など、巨大な津波被害の記録があります。「津波が生じることはない」という断定は誤りです。

問2:正解⑥

<問題要旨>

地図上の3都市(a:秋田周辺、b:仙台周辺、c:那覇周辺)の気候特性を推測し、それぞれの月別降水日数のグラフ(ア~ウ)と正しく結びつける問題です。日本の気候の地域差(特に日本海側と太平洋側の違い)の理解が重要です。

<選択肢>

ア【c:那覇】

グラフ「ア」は、年間を通じて月々の降水日数が10~15日程度と多く、季節による変動が比較的小さいことを示しています。これは、梅雨や台風の影響で夏に雨が多く、冬も曇りや雨の日が少なくない亜熱帯の那覇(c)の気候パターンに合致します。

イ【b:仙台】

グラフ「イ」は、夏(特に6月~9月)に降水日数が多くなり、冬は少なくなるパターンです。これは、夏の南東季節風や梅雨、台風の影響で降水が多く、冬は北西季節風の風下側になるため晴天が多い、日本の太平洋側の気候の特徴をよく表しており、仙台(b)に該当します。

ウ【a:秋田】

グラフ「ウ」は、冬(11月~2月)にかけて降水日数が著しく多く、20日近くに達する一方、夏は比較的少ないという特徴があります。これは、冬にシベリアからの冷たく湿った北西季節風が日本海で水分を補給し、奥羽山脈にぶつかって大量の雪を降らせる日本海側の気候パターンを示しており、秋田(a)に該当します。

したがって、ア=c、イ=b、ウ=a の組み合わせである⑥が正解です。

問3:正解③

<問題要旨>

地すべり地の土地利用と、地すべりの発生メカニズムおよびその対策に関する知識を問う問題です。

<選択肢-カ>【棚田】

資料の3D画像は、山間の傾斜地に水田が階段状に広がっている様子を示しています。このような、傾斜地を有効利用するために作られた水田を「棚田」と呼びます。地すべりによってできた比較的緩やかな斜面は、棚田として利用されてきた歴史があります。

<選択肢-キ>【上昇】

地すべりは、地面内部の特定の層(すべり面)が、多量の水分を含むことによって滑りやすくなり発生します。大雨や雪解け水によって地下水の量が増え、地下水位が「上昇」したときに、すべり面が不安定になり、地すべりが起こりやすくなります。資料の模式図にある「集水井工」や「排水トンネル工」は、まさにこの地下水を排出して地下水位を下げるための対策工法です。

したがって、カ=棚田、キ=上昇 の組み合わせである③が正解です。

問4:正解③

<問題要旨>

地形図を読み取り、津波災害とその防災施設(避難場所、津波避難タワー、自然災害伝承碑)の役割について正しく理解しているかを問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

Aの学校はBの公共施設より標高が高いですが、津波避難場所としての適性は標高だけで決まるものではありません。建物の構造(津波の力に耐えられるか)や、地域で正式な避難場所に指定されているかどうかが重要です。この地形図だけでは、AがBより「適している」と断定することはできません。

②【誤】

Cは谷の奥に位置しています。津波が谷のような狭い地形に進入すると、エネルギーが集中して津波の高さが増すこと(遡上高が大きくなること)があります。しかし、「海岸からCに向かうほど大きな値となる」とは限りません。一般に浸水深は海岸線に近い場所で最大になることが多く、遡上するにつれて減衰する場合もあります。断定的な記述であり、不適当です。

③【正】

Dにあるのは「津波避難タワー」の地図記号です。これは、津波の浸水が想定される区域のうち、近くに高台などの避難場所がない低地において、緊急的・一時的に避難するための施設です。特に、高台までの移動に時間がかかる高齢者や障害者などの利用が想定されています。記述の内容は、津波避難タワーの設置目的を正しく説明しており、最も適当です。

④【誤】

Eに「自然災害伝承碑」があることは、この地域が過去に災害に見舞われたことを示しています。F付近にその記号がないからといって、将来の津波のリスクが低いということにはなりません。海岸からの距離や標高を考えれば、F付近も津波の危険がある地域と考えられます。記号の有無で避難の必要性を判断するのは危険であり、誤りです。

第4問

問1:正解①

<問題要旨>

世界の様々な自然環境に適応した高床式住居の写真と、その地域の気候を示すグラフを結びつける問題です。住居形態と気候との関連性を理解する力が求められます。なお、この問題は訂正があり、訂正後の図を用いて回答する必要があります。

<選択肢>

ア【A】

写真アは、建物の下の地面がむき出しになったピロティ構造の集合住宅です。これは、建物の熱が地面に伝わって永久凍土が溶け、地盤が不安定になるのを防ぐための工夫で、シベリアなどの凍土地帯に見られます。グラフAは、気温の年較差が約50℃と非常に大きく、冬は極寒になる大陸性の気候を示しており、凍土地帯の特徴と一致します。

イ【B】

写真イは、急な角度の屋根を持つ木造の高床式住居です。急な屋根は、雪が多く積もる地域で、雪の重みで家屋が倒壊するのを防ぐための工夫です。グラフBは、冬である1月の降水量(降雪を含む)が特に多くなっており、日本海側のような多雪地帯の気候を示しています。

ウ【C】

写真ウは、水の上に建てられた高床式住居です。これは、東南アジアなどの熱帯地域で、満潮や洪水による浸水を避け、地面からの湿気や害虫を防ぎ、風通しを良くするための工夫です。グラフCは、気温の年較差が非常に小さく、年間を通じて降水量が多い、熱帯雨林気候の特徴を示しています。

したがって、ア=A、イ=B、ウ=C の組み合わせである①が正解です。

問2:正解②

<問題要旨>

日本とブラジル、ベトナムとの間の人的交流に関する統計と文章を読み解き、正しい組み合わせを選ぶ問題です。各国の歴史的、経済的な関係性を理解しているかが問われます。

<選択肢>

【日本国籍をもつ居住者数】

資料1の下のグラフEとFは、ブラジルまたはベトナムにおける日本人の居住者数です。グラフEは2000年から2020年にかけて減少しており、これは歴史的な移住者の子孫(日系人)は多いものの、近年の日本からの移住者が減少傾向にあるブラジルにおける日本人居住者数と判断できます。グラフFは同期間に急増しており、これは近年の日本企業の進出が著しいベトナムにおける日本人居住者数(駐在員など)と判断できます。

【ブラジルに関する文章】

文章カは「日本企業の進出が盛ん」とあり、近年の経済関係の深化を示しているため、ベトナムに関する記述です。文章キは「両国の政策を背景に多くの日本人が移住した」「日本に関連した祭り」とあり、戦前からの国策移民の歴史を持つブラジルと、そこで形成された日系人社会に関する記述です。

【組合せ】

したがって、「ブラジルにおける日本国籍をもつ居住者数」のグラフはE、「ブラジルに関する文章」はキとなります。この組み合わせである②が正解です。

問3:正解④

<問題要旨>

各国の映画市場における自国映画と外国映画のシェアを示したグラフを読み解き、それに関する記述として適当でないものを選ぶ問題です。文化のグローバル化とローカル化について考察する力が求められます。

<選択肢>

①【正】

セネガルのグラフを見ると、アメリカ映画よりもフランス映画のシェアが著しく高くなっています。セネガルはかつてフランスの植民地であり、現在もフランス語が公用語であるなど、旧宗主国との文化的なつながりが強いことが背景にあると考えられ、妥当な記述です。

②【正】

インド、トルコ、韓国といった新興国では、自国で制作された映画のシェアが非常に高くなっています。これは、それぞれの国で独自の映画産業が発展し、国内の観客に強く支持されていることを示しており、妥当な記述です。

③【正】

韓国は、映画『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞に代表されるように、自国の映像作品をコンテンツとして積極的に海外へ輸出しています。音楽(K-POP)なども含め、文化産業の振興に国を挙げて取り組んでおり、妥当な記述です。

④【誤】

「英語話者の割合が高い国ほどアメリカ合衆国の影響は大きい」という記述を検証します。カナダ(公用語が英語・フランス語)ではアメリカ映画のシェアが非常に高いですが、インド(準公用語が英語)では、自国映画のシェアが圧倒的で、アメリカ映画の影響は限定的です。このインドの例から、英語話者の割合とアメリカ映画のシェアは必ずしも比例しないことがわかります。したがって、この記述は不適当です。

問4:正解④

<問題要旨>

携帯電話の普及率の推移を示したグラフから、国名(サ~ス)を特定する問題です。各国の経済発展レベルや地理的条件と、情報通信技術の普及(リープフロッグ現象など)との関係を理解しているかが問われます。

<選択肢>

サ【シンガポール】

グラフ「サ」は、最も早く普及が進んだ国を示しており、1995年以前に人口100人あたり契約数が20を超え、2005年頃には100を超えています。これは、国土が狭くインフラ整備が容易で、所得水準も高い都市国家シンガポールの特徴と一致します。

シ【アメリカ合衆国】

グラフ「シ」は、日本と似たペースで普及が進んでいますが、人口100人あたり契約数が100を超えるまでにはやや時間がかかっています。先進国ですが、広大な国土を持つアメリカ合衆国の普及パターンと考えられます。

ス【ケニア】

グラフ「ス」は、普及の開始が2005年過ぎと最も遅いですが、一度普及が始まると非常に速いペースで契約数が伸びています。これは、固定電話網の整備が不十分なまま、携帯電話・スマートフォンが一気に普及する「リープフロッグ(蛙飛び)現象」の典型例であり、アフリカ諸国で近年見られるケニアの状況と一致します。

したがって、アメリカ合衆国=シ、ケニア=ス、シンガポール=サの組み合わせである④が正解です。

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