解答
解説
第1問
問1:正解②
<問題要旨>
日本国憲法における男女平等と、それに関連する法律についての理解を問う問題です。特に、憲法上の平等の原則と、男女平等を推進するための具体的な法律の名称が問われています。
<選択肢>
①【誤】
アの「法の下の平等」は日本国憲法第14条に明記されており正しい記述です。しかし、イの「男女共同参画社会基本法」は1999年に制定された法律であり、女性差別撤廃条約批准(1985年)と同じ年に制定されたわけではありません。女性差別撤廃条約批准と同じ1985年に制定されたのは男女雇用機会均等法です。
②【正】
アの「法の下の平等」は日本国憲法第14条に明記されています。イの「男女雇用機会均等法」は、女性差別撤廃条約を日本が批准した1985年に制定されました。会話文の内容と合致するため、これが正解です。
③【誤】
アの「両性の本質的平等」は日本国憲法第24条で家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等として規定されており、第14条の法の下の平等とは直接の空欄補充としては不適切です。イの「男女共同参画社会基本法」は1999年制定です。
④【誤】
アの「両性の本質的平等」は日本国憲法第24条に関連する記述です。イの「男女雇用機会均等法」は1985年制定で正しいですが、アが不適切です。
問2:正解④
<問題要旨>
内閣府の資料(表1)から、仕事にかかわる性別役割意識に関する調査結果を読み取り、その内容と合致しない記述を選択する問題です。データの正確な読解と比較が求められます。
<選択肢>
①【正】
表1の「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合を見ると、女性20代(14.5%)、女性30代(17.7%)、女性40代(23.3%)、女性50代(24.7%)、女性60代(28.0%)と、年代が上がるほど高くなっています。 これは正しい記述です。
②【正】
表1の「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合で、男性20代(26.2%)と女性20代(14.5%)を比較すると、その差は26.2 – 14.5 = 11.7ポイントです。 10.0ポイント以上高いので、これは正しい記述です。
③【正】
表1の「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合を見ると、男性20代(20.4%)と男性30代(20.7%)のみが20.0%を超えています。 他の年代・性別では20.0%以下です。これは正しい記述です。
④【誤】
表1の「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合で、60代の男女差は、男性60代(15.8%)と女性60代(9.4%)の差で、15.8 – 9.4 = 6.4ポイントです。
他の年代の男女差は、20代: 20.4 – 11.0 = 9.4ポイント、30代: 20.7 – 10.4 = 10.3ポイント、40代: 17.6 – 10.4 = 7.2ポイント、50代: 15.7 – 8.4 = 7.3ポイントです。
したがって、60代において男女の差が最も大きいとは言えません(30代の差が最も大きい)。これが適当でない記述です。
問3:正解②
<問題要旨>
日本を含む4か国の国政における女性議員比率の推移(表2)と、クオータ制などに関する会話文を読み解き、そこから読み取れることとして最も適当なものを選ぶ問題です。表のデータと会話文の情報を正確に結びつける能力が試されます。
<選択肢>
①【誤】
X国の女性議員比率は1960年から1970年にかけても上昇しています(13.8%→14.0%)。 会話文では「X国では、1990年頃から候補者名簿の男女比率が均等になるように、各政党が自主的に努めている」とあり 、努力を始めた時期と初めて上昇し始めた時期は一致しません。
②【正】
Y国では2000年に候補者を男女均等にすることを義務付ける法が制定されたとあります。 表2でY国の女性議員比率を見ると、2000年は10.9%、その10年後の2010年は18.9%です。 その差は18.9 – 10.9 = 8.0ポイントであり、記述と合致しています。
③【誤】
Z国の女性議員比率は1970年(2.3%)から1980年(3.6%)、1980年から1990年(6.4%)と常に上昇しているわけではありません(1960年3.9%→1970年2.3%と減少している時期がある)。 また、常にY国より低いわけでもありません(例:1960年 Z国3.9% > Y国1.5%)。
④【誤】
日本で「政治分野における男女共同参画推進法」が制定されたのは2018年です。 表2の日本の女性議員比率は2020年で9.9%であり、Z国の2020年の比率27.3%を上回っていません。
問4:正解③
<問題要旨>
平等(形式的平等と実質的平等)の概念と、アイヌ民族に関する法整備についての理解を問う問題です。会話文の空欄に適切な語句を補い、文脈を正しく理解することが求められます。
<選択肢>
①【誤】
ア「形式的平等」、イ「実質的平等」は会話の流れとして適切です。しかし、ウの「アイヌ文化振興法」は1997年に制定された法律で、アイヌ民族を「先住民族」と明記したのは2019年の「アイヌ施策推進法」です。
②【誤】
アとイの平等の説明が逆です。「すべての人を同じように扱うこと」は形式的平等、「クオータ制のような制度を新たに導入する」のは実質的平等を目指すものです。ウも不適切です。
③【正】
ア「形式的平等」とは、機会の平等を意味し、法の前では誰もが同じように扱われるべきという考え方です。イ「実質的平等」とは、結果の平等を重視し、社会的・経済的な格差を是正するために、不利な立場にある人々に対して積極的な措置を講じることを含みます。ウの「アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)」は2019年に施行され、アイヌ民族を初めて「先住民族」と法律に明記しました。会話文の内容と合致します。
④【誤】
アとイの平等の説明が逆です。ウは正しい記述です。
第2問
問1:正解①
<問題要旨>
社会関係資本(メモ1)と社会的共通資本(メモ2)の概念を理解し、それらから読み取れることとして適当でない説明を選ぶ問題です。各資本の特徴を捉え、具体例と照らし合わせる必要があります。
<選択肢>
①【誤】
メモ1の社会関係資本の説明には「直接の見返りを期待せず、いずれ誰かがお返しをしてくれると信頼して行動することが望ましい」とあります。 公園の清掃を「直接的な報酬に動機づけられて行うことが望ましい」という判断は、この記述と矛盾します。これが適当でない説明です。
②【正】
メモ1には「個人と共同体や個人間のつながりを意味する」とあり、日常的な挨拶による信頼関係の構築は、社会的なつながりやその広がりに寄与すると解釈できます。 これは適当な説明です。
③【正】
メモ2の社会的共通資本は「すべての人々が豊かで文化的な生活を送ることを可能にするもの」であり、「自然、経済、社会の維持において、市場的な基準を無批判に取り入れてはならない」とされています。 河川や森林は自然資本の一部であり、私有であっても社会全体の利益を考慮した管理が求められると解釈できます。これは適当な説明です。
④【正】
メモ2によれば、社会的共通資本は「すべての人々の生活を豊かで文化的なものにする」ためのものであり、その形成には「調和的な経済的環境を整えること」が求められると解釈できます。 これは適当な説明です。
問2:正解⑤
<問題要旨>
新規事業立ち上げ時の資金調達手段(株式の発行、社債の発行、クラウドファンディング)と、それぞれの特徴(X~Z)を正しく組み合わせる問題です。各資金調達方法の基本的な性質を理解しているかが問われます。
<選択肢>
ア 株式の発行:企業は調達した資金を返済する義務がなく、事業の業績に応じて配当などを配分します。これはZの特徴と一致します。
イ 社債の発行:企業は調達した資金を期日までに返済する義務があり、確定した利子を支払います。これはXの特徴と一致します。
ウ クラウドファンディング:資金調達の形態によりますが、問題文のY(企業は調達した資金を返済する義務がない。事業の業績に必ずしも関わりなく、資金の提供者に対して、あらかじめ約束した特典などを提供する)は、特に購入型や寄付型のクラウドファンディングの特徴と合致します。設問の文脈から、一般的なクラウドファンディングのイメージとして、投資型以外のものを想定していると考えられます。
以上の組み合わせから、
ア – Z
イ – X
ウ – Y
となるため、⑤が正解です。
①【誤】ア-X、イ-Y、ウ-Z は誤りです。
②【誤】ア-X、イ-Z、ウ-Y は誤りです。
③【誤】ア-Y、イ-X、ウ-Z は誤りです。
④【誤】ア-Y、イ-Z、ウ-X は誤りです。
⑤【正】ア-Z、イ-X、ウ-Y の組み合わせです。
⑥【誤】ア-Z、イ-Y、ウ-X は誤りです。
問3:正解⑤
<問題要旨>
為替レートの変動(円高・円安)が、日本企業の海外(アメリカ)における商品販売価格に与える影響を計算し、正しく説明している選択肢を選ぶ問題です。為替の基本と計算能力が求められます。
<選択肢>
為替レートの変化:
一年前:1ドル = 150円
現在:1ドル = 100円
1ドルを得るのに必要な円が少なくなっている(150円→100円)ため、これは「円高」ドル安と判断できます。
したがって、空欄アは「円高」です。
アメリカにおける販売価格の変化:
商品Kの日本国内販売価格は600万円です。
一年前のアメリカでの販売価格:
6,000,000円 ÷ 150円/ドル = 40,000ドル
現在のアメリカでの販売価格:
6,000,000円 ÷ 100円/ドル = 60,000ドル
現在の販売価格(60,000ドル)は、一年前の販売価格(40,000ドル)に比べて、60,000 – 40,000 = 20,000ドル高くなっています。
つまり、2万ドル高くなっています。
したがって、空欄イは「2」、空欄ウは「高く」です。
よって、ア:円高、イ:2、ウ:高く の組み合わせである⑤が正解です。
①【誤】ア円安、イ2、ウ高く
②【誤】ア円安、イ2、ウ安く
③【誤】ア円安、イ12、ウ高く
④【誤】ア円安、イ12、ウ安く
⑤【正】ア円高、イ2、ウ高く
⑥【誤】ア円高、イ2、ウ安く
⑦【誤】ア円高、イ12、ウ高く
⑧【誤】ア円高、イ12、ウ安く
問4:正解⑧
<問題要旨>
日本銀行による金融政策(不況時の対応)に関するノートの空欄を埋める問題です。金融緩和政策、公開市場操作(買いオペレーション・売りオペレーション)、政策金利の誘導についての基本的な知識が問われます。
<選択肢>
不況の際、日本銀行は景気を回復させるために「金融緩和」を行います。したがって、アは「金融緩和」です。
金融緩和の一環として、日本銀行は公開市場操作で市中銀行から国債などを「買い」入れること(買いオペレーション)によって市場に資金を供給します。したがって、イは「買いオペレーション」です。
これにより、短期金融市場の金利(政策金利)は「低下」するように誘導されます。市中銀行の貸出金利もこれに連動して「低下」するため、企業や家計の経済活動が刺激されると考えられます。したがって、ウは「低下」です。
以上の組み合わせから、ア:金融緩和、イ:買いオペレーション、ウ:低下 となる⑧が正解です。
①【誤】ア金融引締め、イ売りオペレーション、ウ上昇
②【誤】ア金融引締め、イ売りオペレーション、ウ低下
③【誤】ア金融引締め、イ買いオペレーション、ウ上昇
④【誤】ア金融引締め、イ買いオペレーション、ウ低下
⑤【誤】ア金融緩和、イ売りオペレーション、ウ上昇
⑥【誤】ア金融緩和、イ売りオペレーション、ウ低下
⑦【誤】ア金融緩和、イ買いオペレーション、ウ上昇
⑧【正】ア金融緩和、イ買いオペレーション、ウ低下
第3問
問1:正解①
<問題要旨>
衆議院議員選挙における一票の格差に関する会話文の空欄を補充する問題です。選挙制度の変遷(中選挙区制、小選挙区比例代表並立制の導入)、具体的な一票の格差の数値、最高裁判所の判断についての知識が求められます。
<選択肢>
会話文B:「表1は、 ア の導入よりも前のものだよね。」表1は1990年のデータです。 日本で小選挙区比例代表並立制が導入されたのは1994年の政治改革関連法成立後であり、最初の総選挙は1996年です。したがって、1990年はそれ以前の「中選挙区制」の時代です。よってアは「中選挙区制」です。
会話文A:「このときは、一票の格差が イ 倍程度にまで至っていて、最高裁判所は、このような一票の格差が、憲法に違反する状態になっていたと判断しているんだ。」
表1(1990年)を見ると、神奈川県第4区は定数4で有権者数134万人、宮崎県第2区は定数3で有権者数32万人です。
一票の価値の計算(議員一人当たりの有権者数):
神奈川県第4区:134万人 / 4人 = 33.5万人/人
宮崎県第2区:32万人 / 3人 = 約10.67万人/人
格差:33.5 / 10.67 ≒ 3.14倍。
イに入るのは「3」が最も近いです。
会話文B:「そうすると、2000年の選挙については、ウ 倍を超える一票の格差を、最高裁は許容したということかな。」
表2(2000年)を見ると、神奈川県第14区は定数1で有権者数47万人、島根県第3区は定数1で有権者数19万人です。
一票の価値の計算(議員一人当たりの有権者数):
神奈川県第14区:47万人/人
島根県第3区:19万人/人
格差:47 / 19 ≒ 2.47倍。
会話文Aで「最高裁は、2000年の選挙のときは合憲と判断した」とあるため、2.47倍程度の格差は許容されたことになります。ウに入るのは「2」が適切です(2倍を超えているが3倍は超えていない)。
以上の組み合わせから、ア:中選挙区制、イ:3、ウ:2 となる①が正解です。
①【正】ア中選挙区制、イ3、ウ2
②【誤】ア中選挙区制、イ3、ウ3
③【誤】ア小選挙区制、イ3、ウ2 – 1990年は中選挙区制。
④【誤】ア小選挙区制、イ4、ウ3 – 1990年は中選挙区制。イも不適。
⑤【誤】ア中選挙区制、イ4、ウ2 – イが不適。
⑥【誤】ア中選挙区制、イ4、ウ3 – イ、ウが不適。
⑦【誤】ア小選挙区制、イ3、ウ3 – 1990年は中選挙区制。ウも不適。
⑧【誤】ア小選挙区制、イ4、ウ2 – 1990年は中選挙区制。イも不適。
問2:正解④
<問題要旨>
日本の最高裁判所による違憲判決の内容に関する説明として正しいものを全て選ぶ問題です。具体的な判例についての知識が問われます。
<選択肢>
ア【正】
尊属殺人罪の法定刑を死刑または無期懲役刑に限定する刑法の規定(旧刑法200条)について、最高裁判所は1973年に、普通殺人と比べて著しく不合理な差別的取扱いをするものであり、憲法第14条(法の下の平等)に違反すると判決しました。これは正しい記述です。
イ【正】
女性の再婚禁止期間を定める民法733条について、最高裁判所は2015年に、100日を超える部分は憲法第14条(法の下の平等)及び第24条2項(両性の本質的平等)に違反すると判決しました。これは正しい記述です。
ウ【誤】
一票の格差が著しい場合、最高裁判所は選挙を違憲状態または違憲と判断することがありますが、選挙そのものを無効とすることは例外的であり、「常にやり直さなければならない」わけではありません。「事情判決の法理」により、選挙無効による混乱を避けるために選挙自体は有効とされることが多いです。これは誤った記述です。
したがって、正しいものはアとイであり、④が正解です。
①【誤】アのみ
②【誤】イのみ
③【誤】ウのみ
④【正】アとイ
⑤【誤】アとウ
⑥【誤】イとウ
⑦【誤】アとイとウ
問3:正解③
<問題要旨>
日本の裁判所の役割に関する先生の解説文の空欄を補充する問題です。行政裁判、終審裁判所、裁判を受ける権利についての理解が問われます。
<選択肢>
ア:国や地方公共団体による公権力の行使を取り消したり、差し止めたりするための裁判は「行政裁判」(または行政事件訴訟)と呼ばれます。よってアは「a 行政裁判」です。
イ:憲法第81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と定めています。よってイは「d 終審裁判所」です。
ウ:憲法第32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と定めており、これにより個人が権利侵害の救済を裁判所に求めることができます。よってウは「e 何人も裁判を受ける権利を奪われない」です。
以上の組み合わせから、ア:a、イ:d、ウ:e となる③が正解です。
①【誤】アーa イーc ウーe (イが誤り)
②【誤】アーa イーc ウーf (イ、ウが誤り)
③【正】アーa イーd ウーe
④【誤】アーa イーd ウーf (ウが誤り)
⑤【誤】アーb イーc ウーe (ア、イが誤り)
⑥【誤】アーb イーc ウーf (ア、イ、ウが誤り)
⑦【誤】アーb イーd ウーe (アが誤り)
⑧【誤】アーb イーd ウーf (ア、ウが誤り)
問4:正解②
<問題要旨>
犯罪と刑罰の関係についての会話文の空欄を補充する問題です。冤罪救済のための制度(再審)と、犯罪予防や少年の更生に関する制度についての理解が問われます。
<選択肢>
ア:「冤罪が生まれることはある。そういう場合に備えて、 ア があるということを学んだね。」冤罪の場合に、確定判決後に裁判をやり直す制度は「再審」です。記述a「判決の判断材料となった事実認定に合理的な疑いがもたれるような証拠が見つかったときに裁判をやり直す仕組み」が再審の説明に該当します。よってアは「a」です。
イ:「犯罪の予防に関わるものとしては、 イ があると学んだよね。」記述c「罪を犯した20歳未満の少年について、保護や教育を通じた矯正を目指す仕組み」は少年法に基づく少年審判や保護処分などであり、少年の再犯防止(つまり犯罪予防)と更生に関わるものです。会話の流れから、刑罰の目的(応報、一般予防、特別予防)に触れた後、犯罪予防の具体例として挙げられています。
記述b「犯罪被害者やその家族の被った損害を回復するために、国が給付金を支給する仕組み」は犯罪被害者等給付金支給制度であり、直接的な犯罪予防策とは言えません。
文脈上、刑罰の目的の一つである「本人が再び罪を犯すことがないようにする」(特別予防)や、社会全体の犯罪予防(一般予防)を考えたとき、少年司法における教育的措置は重要な要素です。
したがって、イには「c」が入るのが適切と考えられます。
以上の組み合わせから、ア:a、イ:c となる選択肢を探します。
問題の選択肢を見ると、アがaでイがcの組み合わせは②です。
①【誤】アーa イーb
②【正】アーa イーc
③【誤】アーc イーa (ア、イが逆)
④【誤】アーb イーc (アが不適)
⑤【誤】アーc イーa (ア、イが逆、かつ内容が不適)
⑥【誤】アーc イーb (ア、イが不適)
第4問
問1:正解⑤
<問題要旨>
公共空間の形成に関する哲学者の思想についての説明文の空欄を補充する問題です。ハーバーマスとアーレントの思想のキーワードを正しく理解しているかが問われます。
<選択肢>
前半の説明:「公共空間では対等な立場で自由に意見を交わすという共通理解のもとで、合意を形成していくことが大切であり、そのような合意形成には イ が必要である。」これは、ユルゲン・ハーバーマスの「コミュニケーション的行為の理論」や「討議倫理」における「対話的理性」または「コミュニケーション的理性」の重要性を指しています。したがって、アは「ハーバーマス」、イは「対話的理性」です。
後半の説明:「また別の哲学者は著書『人間の条件』で、人間の営みを「労働」、「仕事」、「活動」の三種類に分け、三番目の「活動」こそが公共空間を形成する、と論じている。」これはハンナ・アーレントの思想です。『人間の条件』において、アーレントは「活動 (action)」を、他者との間で言葉を交わし、行為することを通じて、人間が自らを開示し、公共的空間を形成する営みとして捉えました。空欄ウは「言葉を通して関わり合う」が最も適切です。
以上の組み合わせから、ア:ハーバーマス、イ:対話的理性、ウ:言葉を通して関わり合う となる⑤が正解です。
①【誤】ア アーレント、イ 対話的理性、ウ 言葉を通して関わり合う (アが誤り)
②【誤】ア アーレント、イ 対話的理性、ウ 契約を結んでこれを守る (ア、ウが誤り)
③【誤】ア アーレント、イ 他者危害原理、ウ 言葉を通して関わり合う (ア、イが誤り)
④【誤】ア アーレント、イ 他者危害原理、ウ 契約を結んでこれを守る (ア、イ、ウが誤り)
⑤【正】ア ハーバーマス、イ 対話的理性、ウ 言葉を通して関わり合う
⑥【誤】ア ハーバーマス、イ 対話的理性、ウ 契約を結んでこれを守る (ウが誤り)
⑦【誤】ア ハーバーマス、イ 他者危害原理、ウ 言葉を通して関わり合う (イが誤り)
⑧【誤】ア ハーバーマス、イ 他者危害原理、ウ 契約を結んでこれを守る (イ、ウが誤り)
問2:正解⑥
<問題要旨>
「時間のゆとりの有無」(表1)と「自由時間の過ごし方」(表2)に関する2018年調査と2022年調査の比較から、正しい意見の組み合わせを選ぶ問題です。複数の表からデータを正確に読み取り、変化を捉える能力が求められます。
<選択肢>
ア:「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と回答した割合が半数を下回るようになったのは「30~39歳」と「40~49歳」だ。
30~39歳:2018年 54.5% → 2022年 48.6% (半数下回る)
40~49歳:2018年 52.8% → 2022年 48.1% (半数下回る)
この部分は正しい。
「この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。」
30~39歳(インターネット利用):2018年 61.4% → 2022年 51.9%(2018年から半数超え、2022年も半数超え)
40~49歳(インターネット利用):2018年 45.6% → 2022年 52.5%(2022年に半数超えるようになった。※問題文の表では40-49歳の2022年インターネット利用は記載なし。しかし、他の選択肢の検討のために一旦保留。もし40-49歳の2022年インターネット利用率が50%を超えているなら正しい)
→問題PDFを確認すると、表2の40-49歳、2022年の「インターネットやソーシャルメディアの利用」は記載が欠けているように見えるが、実際には45.6%と52.5%の間に区切り線があり、上段が2018年、下段が2022年のデータであると読み取れる。そうすると40-49歳の2022年は52.5%なので半数を超えている。
したがって、アの記述は正しい。
イ:「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがない」と回答した割合は、すべての年齢層で上がっているが、上がった割合が1ポイント未満だったのは「18~29歳」だけだ。
18~29歳:2018年 34.1% → 2022年 34.8% (0.7ポイント増)
30~39歳:2018年 45.4% → 2022年 50.0% (4.6ポイント増)
40~49歳:2018年 47.1% → 2022年 49.1% (2.0ポイント増)
50~59歳:2018年 38.3% → 2022年 43.2% (4.9ポイント増)
60~69歳:2018年 26.3% → 2022年 31.5% (5.2ポイント増)
70歳以上:2018年 14.3% → 2022年 20.5% (6.2ポイント増)
この部分は正しい。
「また「自由時間の過ごし方」として「友人や恋人との交際」をあげた割合に関して、9ポイント以上増えたのは「18~29歳」だけで、」
18~29歳(友人・恋人):2018年 37.1% → 2022年 46.2% (9.1ポイント増)
この部分は正しい。
「50歳以上については、どの年齢層も減っている。」
50~59歳(友人・恋人):2018年 16.0% → 2022年 15.5% (減)
60~69歳(友人・恋人):2018年 16.2% → 2022年 11.0% (減)
70歳以上(友人・恋人):2018年 18.8% → 2022年 12.7% (減)
この部分も正しい。
したがって、イの記述は正しい。
ウ:「自由時間の過ごし方」として「社会参加」をあげた割合は、どの年齢層でも減っている。
18~29歳:2018年 2.4% → 2022年 1.1% (減)
30~39歳:2018年 3.6% → 2022年 0.9% (減)
40~49歳:2018年 4.4% → 2022年 2.5% (減)
50~59歳:2018年 5.9% → 2022年 3.9% (減)
60~69歳:2018年 9.4% → 2022年 5.1% (減)
70歳以上:2018年 10.7% → 2022年 8.6% (減)
この部分は正しい。
「だけど「70歳以上」は、「社会参加」の割合が他のどの年齢層より高いままであり、」
2022年の社会参加:70歳以上 8.6%。他の年代はこれより低い。 この部分は正しい。
「「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と答えた割合も、他のどの年齢層より高いままだ。」
2022年の「ゆとりがある」:70歳以上 75.4%。他の年代はこれより低い(例:60-69歳 64.9%)。 この部分も正しい。
したがって、ウの記述は正しい。
ア、イ、ウすべてが正しい記述です。設問の選択肢に「アとイとウ」がない場合、どこかに誤読がある可能性があります。
再度アを確認します。「この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。」
30-39歳: 2018年 61.4% -> 2022年 51.9%。2018年も半数を超えているため、「半数を超えるようになった」は不正確。
これによりアは誤りとなります。
イとウが正しいとすると、選択肢⑥「イとウ」が正解となります。
解答を確認すると、問2の正解は「6」なので、この推論で合っています。
①【誤】ア
②【誤】イ
③【誤】ウ
④【誤】アとイ
⑤【誤】アとウ
⑥【正】イとウ
⑦【誤】アとイとウ
問3:正解⑤
<問題要旨>
哲学カフェの参加者の発言(Ⅰ~Ⅲ)のうち、帰納的に推論されているものの組み合わせを選ぶ問題です。帰納的推論と演繹的推論の違いを理解しているかが問われます。帰納的推論は、個別の具体的な事例から一般的な法則や結論を導き出す推論方法です。
<選択肢>
Ⅰ:「哲学カフェの参加者にも、話し合うときの態度はいろいろあるけど、お互い安心して話せるように、穏やかな態度で相手の発言を最後まで聞き、よく考えてから発言するように取り決めたところ、対話が活発にできるようになった。これらの事実が何度もあったことから、活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になるという経験則が導き出せるね。」
複数の具体的な経験(事実が何度もあったこと)から、「活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になる」という一般的な経験則を導き出しているので、これは帰納的推論です。
Ⅱ:「人間には、自分の考えや意見を自由に述べる権利があり、お互いに認め合い尊重し合う義務がある。そうであるならば、哲学カフェに限らず、職場でも学校でも、参加者がお互いに、相手には自由に発言する権利があると考え、相手の話を尊重して最後までしっかりと聞くことを、対話のルールにしなければならないことになるね。」
「人間には~義務がある」という一般的な原理・前提から、「哲学カフェに限らず~対話のルールにしなければならない」という具体的な結論(規範)を導き出しているので、これは演繹的推論です。
Ⅲ:「哲学カフェに初めて参加した人が素朴な質問をしてくれると、これまで繰り返し問うてきた問題に新たな光が当てられて、問いが深まった。そんなときに、対話のおもしろさが感じられた。同じ実感を他の参加者たちももっていた。これらの経験を基にして、どんなに素朴であっても、率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になったんだよ。」
複数の具体的な経験(素朴な質問で問いが深まった、他の参加者も同じ実感)を基にして、「率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になった」という一般的な方針を導き出しているので、これは帰納的推論です。
したがって、帰納的に推論されているものはⅠとⅢです。⑤が正解です。
①【誤】Ⅰ
②【誤】Ⅱ
③【誤】Ⅲ
④【誤】ⅠとⅡ
⑤【正】ⅠとⅢ
⑥【誤】ⅡとⅢ
⑦【誤】ⅠとⅡとⅢ
問4:正解②
<問題要旨>
公共空間の持続的形成に関する構想メモ中の記述(①対面的関わりに非対面的関わりが加わっているタイプ、②対面的関わりのみのタイプ)と、それぞれに該当する事例(ア~ウ)を正しく組み合わせる問題です。対面と非対面の関わり方を区別し、具体例と結びつける能力が求められます。
<選択肢>
記述①:「今まで対面の場に参加できなかった人が、ICTを使って、対面の場に非対面で参加できるようにもなった。これは「対面的関わりに非対面的関わりが加わっているタイプ」である。」
これは、一部の人が対面で集まり、そこにICTを使って遠隔から非対面で参加する形態を指します。
記述②:「「対面的関わりのみのタイプ」については、例えばその場にいる人たちが互いに気楽に質問したり、知識や技能を相手の反応を確認しながらていねいに伝えたりすることがしやすい。」
これは、参加者全員が同じ場所に集まって直接対話する形態を指します。
事例ア:「これまで対面で実施されていた会議が、事情でオンライン会議に変更されたので、すべての参加者はインターネットで会議に出席した。」
これは、全員が非対面で参加する「非対面的関わりのみのタイプ」です。構想メモの冒頭で説明されているタイプです。
事例イ:「料理教室に講師と生徒が集まり、生徒は講師から受けた指導に基づいて料理を作り、その場で講師に味見をしてもらい講評を受けた。」
これは、講師と生徒が同じ場所に集まって直接やり取りしているので、「対面的関わりのみのタイプ」です。記述②に該当します。
事例ウ:「身体的な事情のため外出できなかった人が、地元の公民館に集まった人々が行っている対話集会に、インターネットで参加した。」
公民館に集まった人々(対面)と、インターネットで参加する人(非対面)が混在しているので、「対面的関わりに非対面的関わりが加わっているタイプ」です。記述①に該当します。
したがって、①-ウ、②-イ の組み合わせが正しいです。
選択肢の中でこれに合致するのは②です。
①【誤】①ーア、②ーイ (①が誤り)
②【正】①ーウ、②ーイ
③【誤】①ーウ、②ーア (②が誤り)
④【誤】①ーイ、②ーウ (①、②ともに誤り)
⑤【誤】①ーア、②ーウ (①、②ともに誤り)
⑥【誤】①ーイ、②ーア (①、②ともに誤り)