解答
解説
第1問
問101:正解2
<問題要旨>
憲法第14条が定める差別の禁止規定と、日本が女性差別撤廃条約を批准した年に制定された法律との組合せを問う問題です。憲法第14条は「法の下の平等」を明記しており、人種・信条・性別などによる差別を禁じています。また、日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准し、それに伴って同年に男女の雇用における機会の平等を目的とする法律が制定されました。
<選択肢>
①【誤】 「法の下の平等」は憲法第14条の内容として正しいものの、1985年に制定されたのは「男女雇用機会均等法」ではなく、ここでは「男女共同参画社会基本法」としているため年代が一致しません。「男女共同参画社会基本法」は1999年に制定された法律です。
②【正】 憲法第14条の「法の下の平等」と、1985年に制定された「男女雇用機会均等法」の組合せは歴史的事実と合致します。
③【誤】 憲法第14条ではなく、憲法第24条が「両性の本質的平等」を定めています。よって憲法第14条の内容として「両性の本質的平等」をあてはめるのは不適切です。
④【誤】 ③と同様、「両性の本質的平等」は憲法第24条の規定であり、憲法第14条とは結びつきません。また1985年に制定された法も「男女雇用機会均等法」であって、「両性の本質的平等」を掲げたものではありません。
問102:正解4
<問題要旨>
仕事や家庭に関わる性別役割意識について、年代別・男女別の調査結果を読み取らせる問題です。表から「男性は家庭より仕事を優先すべき」という考え方や「同程度の実力なら男性を先に昇進させるべき」という考え方に対し、どの年代・性別がどの程度肯定的であるかを比較し、各選択肢の主張が表の数値と合っているかどうかを見極めます。
<選択肢>
①【誤】 「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」という設問への肯定的な回答割合が、女性20代から女性60代にかけて年代が上がるほど一貫して高くなっている、という記述は表の数値と一致しません。実際には年代によって上昇・下降があり、必ずしも直線的に増えてはいません。
②【誤】 男性20代の肯定的回答割合より男性30代の方が高くなっているデータが示されています。よって「男性20代が男性30代より10ポイント以上高い」というのは誤りです。
③【誤】 「同程度の実力なら、まず男性を昇進させるべき」という設問への肯定的回答で、男性30代や男性40代が20%を超えるというような数値にはなっていません。
④【正】 「同程度の実力なら、まず男性を昇進させるべき」という設問への肯定的回答割合を男女60代同士で比較すると、ほかの年代と比べて男女差が最も大きくなっています。表の数値とも符合します。
問103:正解2
<問題要旨>
日本を含む複数国(X国・Y国・Z国)における女性議員比率の推移と、各国で行われてきた候補者の男女比に関する制度(クオータ制など)との関係を問う問題です。表の数値の変化や各国の施策導入の時期を照らし合わせ、どの選択肢が事実に即しているかを判断します。
<選択肢>
①【誤】 X国では1960年代から女性議員比率が漸増しており、特定の時期が「初めての上昇開始」には当たりません。また「候補者名簿の男女比を均等化する努力を始めたこと」だけをもって、上昇開始を明確に区切る史実とは言えない面があります。
②【正】 Y国では2000年代に政党の候補者数を男女同数に近づける法制度を導入し、それから一定期間が経過すると女性議員比率は有意に上昇しています。表の数値を見ても、法律制定前後で女性議員比率が大きく伸びている点と合致します。
③【誤】 Z国ではクオータ制を導入していませんが、1960年以降常に日本より高い比率を維持しているとは限りません。またY国より低いかどうかも、時期によっては逆転している可能性があります。
④【誤】 日本では2018年に「候補者男女均等法」が成立しましたが、それによってただちにZ国を上回るまで女性議員比率が上昇した史実は示されていません。
問104:正解3
<問題要旨>
「形式的平等」と「実質的平等」の違いを踏まえて、差別是正のためにどのような仕組み(例:クオータ制)を導入すべきか、さらに先住民族であるアイヌの人々に関する近年の法整備を踏まえて、多様性を尊重する社会づくりについて考えさせる問題です。2019年に成立したアイヌ施策関連の法律や、その後に設置された施設などの具体例を会話文から読み取り、空欄を埋める形で判断します。
<選択肢>
①【誤】 「形式的平等」を「ア」、 「実質的平等」を「イ」に当てはめる方向は正しいが、2019年の新法は「アイヌ文化振興法」ではありません。「アイヌ文化振興法」は1997年に成立した法律です。
②【誤】 「ア」に実質的平等、「イ」に形式的平等を置き換えると、会話文の内容と逆になってしまいます。また2019年の新法も「アイヌ文化振興法」ではありません。
③【正】 「ア」に形式的平等、「イ」に実質的平等を入れると、会話文の「同じ扱いをするだけでは差が埋まらないため、追加的施策が必要」という趣旨と合致します。また2019年のアイヌ関連新法は「アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)」として制定され、会話文とも整合します。
④【誤】 「ア」に実質的平等、「イ」に形式的平等を入れているため、会話文の展開にそぐわない配置になります。さらに2019年の新法を「アイヌ施策推進法」とする点は合っていても、前後の内容と矛盾する組合せです。
第2問
問105:正解1
<問題要旨>
メモ1(社会関係資本)とメモ2(社会的共通資本)の記述を踏まえ、それぞれが示す考え方に照らして「不適切」な説明を選ばせる問題です。社会関係資本(信頼関係や規範、ネットワークなど、人々のつながりに基づく資本)と社会的共通資本(自然・経済・文化を維持し、誰もが豊かに暮らせるよう市場外の基盤を整える概念)の違いを理解し、各選択肢がメモ1・メモ2の趣旨を正しく反映しているかを見極めることが求められます。
<選択肢>
①【誤】
メモ1・メモ2の内容を取り違えており、社会関係資本と社会的共通資本の双方で想定される役割や具体例をうまく説明できていません。公園の維持や信頼関係の醸成といった記述が、双方の概念と矛盾する形で結びつけられており、「不適切」と判断されます。
②【正】
メモ1(社会関係資本)では、人々が相互に信頼関係を築くことが社会的なつながりを生み出すという内容が示されています。この選択肢の説明は、メモ1にある「信頼を基盤として社会的つながりを形成する」考え方と整合します。
③【正】
メモ2(社会的共通資本)では、自然や経済、公共インフラなどの基盤を整備する必要性が強調されています。ここでは「河川や森林の管理に社会的な基準を考慮する必要がある」という説明があり、これはメモ2の趣旨と合致します。
④【正】
メモ2にある「すべての人が文化的生活を営めるように基盤を整える」という考え方と一致しています。経済的な環境整備を含め、社会的共通資本の概念を示唆する内容となっており、メモ2と矛盾しません。
問106:正解5
<問題要旨>
企業が新規事業を立ち上げる際の資金調達方法として、「株式の発行(ア)」「社債の発行(イ)」「クラウドファンディング(ウ)」のそれぞれが、出資者・投資家との関係においてどのような返済義務や利益還元の仕組みを伴うかを問う問題です。表のX・Y・Zが示す「事業者側の返済義務や、資金提供者が受け取るリターンの違い」を正しく組み合わせる必要があります。
<選択肢>
①【誤】
「ア=X、イ=Y、ウ=Z」の組合せは、株式発行を返済義務のあるものとして扱うなど、X・Y・Zの定義と整合しません。
②【誤】
「ア=X、イ=Z、ウ=Y」は、社債発行に返済義務がないとする点がX・Zの説明と矛盾します。
③【誤】
「ア=Y、イ=X、ウ=Z」は、株式発行をY(返済義務がないうえ事業内容を特段明示しなくても特典を渡す)とするのは、実際の株式の配当仕組みと一致しません。
④【誤】
「ア=Y、イ=Z、ウ=X」は、社債発行がZ(配当的な仕組み)になっており、債券の本来の返済義務の有無と反します。
⑤【正】
「ア=Z、イ=X、ウ=Y」は、
- 株式の発行(ア)がZ(返済義務なし・業績に応じた配当)、
- 社債の発行(イ)がX(返済義務あり・金利を支払う)、
- クラウドファンディング(ウ)がY(返済義務はないが特典などをあらかじめ提供)
という対応で、各資金調達方法の特徴と合致します。
⑥【誤】
「ア=Z、イ=Y、ウ=X」は、社債をY(返済義務がない形)とする点で誤りがあります。
問107:正解5
<問題要旨>
海外で自社製品を販売する際、為替レートが変動した場合の販売価格の変化を考察する問題です。日本国内価格が一定でも、円高・円安の方向によって現地通貨建ての販売価格が「高くなる」か「安くなる」かが異なるため、円相場の動きを正確に把握する必要があります。問題文では 1ドル=150円 から 1ドル=100円 に変わったケースを例に、アメリカでの販売価格がどう変化するかを判断します。
<選択肢>
①【誤】
「ア=円安、イ=2、ウ=高く」としているため、為替が150円→100円に動いた事例を円安と見なしている点で不適切です。実際は円高に当たります。
②【誤】
「ア=円安、イ=2、ウ=安く」としており、やはり円が安くなったとする前提が問題文の事実と矛盾します。
③【誤】
「ア=円安、イ=12、ウ=高く」は、同様に円安の前提が誤りです。また 12 という値幅にも合いません。
④【誤】
「ア=円安、イ=12、ウ=安く」も円安前提のため、実際の円高という事実と食い違います。
⑤【正】
「ア=円高、イ=2、ウ=高く」として、150円→100円へ円高が進行したことを正しく捉えています。その結果、アメリカでのドル建て販売価格が以前より2万ドル(=20,000ドル)ほど高くなるという点とも符合します。
⑥【誤】
「ア=円高、イ=2、ウ=安く」では、円高の方向は正しいものの、米国販売価格が「安く」なるというのは実際の計算結果と逆です。
⑦【誤】
「ア=円高、イ=12、ウ=高く」は、ドル価格が12万ドル上昇するほどの差異にはなりません。6,000,000円の商品を換算しても 2 万ドルの増加にとどまります。
⑧【誤】
「ア=円高、イ=12、ウ=安く」は、円高という方向はあっても販売価格が「安く」なるわけではありません。さらに 12 という数値も不適切です。
問108:正解8
<問題要旨>
日本銀行が金融政策を通じて短期金利に影響を与え、企業の資金調達や経済活動にどのような変化をもたらすかを問う問題です。不況局面で景気を刺激するために日本銀行が行う代表的な手段(買いオペレーションによる金融緩和など)と、金利が「上昇」するか「低下」するかの結果を組み合わせて判断します。
<選択肢>
①【誤】
「金融引締め・売りオペレーション・金利上昇」は、景気を抑制する局面の典型であり、不況対策として緩和策を用いる説明には合致しません。
②【誤】
「金融引締め・売りオペレーション・金利低下」は、売りオペで市場から資金を吸収しながら金利が下がる設定は矛盾が生じます。
③【誤】
「金融引締め・買いオペレーション・金利上昇」は、買いオペは一般に市場へ資金を供給する手段であり、引締めとは逆方向です。
④【誤】
「金融引締め・買いオペレーション・金利低下」は、買いオペ自体は緩和方向ですが「金融引締め」という文言と食い違います。
⑤【誤】
「金融緩和・売りオペレーション・金利上昇」は、売りオペは市場から資金を回収する仕組みなので金融緩和と矛盾します。
⑥【誤】
「金融緩和・売りオペレーション・金利低下」は、売りオペレーションでは基本的に資金を吸収するため、金利を下げる意図の緩和策とは合致しません。
⑦【誤】
「金融緩和・買いオペレーション・金利上昇」は、買いオペレーションで資金を市場に供給しながら金利が上昇するというのは整合性がありません。
⑧【正】
「金融緩和・買いオペレーション・金利低下」は、不況時に景気を下支えするため日本銀行が市場に資金を供給(買いオペ)し、金利を下げて企業や家計の融資を促す典型的な政策手段として最も整合します。
第3問
問109:正解1
<問題要旨>
衆議院議員選挙における一票の格差是正をめぐり、選挙区の定数や有権者数の変遷データを読み取りながら、制度(小選挙区制か中選挙区制か)や過去の判決で問題となった格差倍率(2000年時の最大格差がどの程度だったか、2014年の格差はどうだったか)を組み合わせて答えさせる問題です。選択肢では「ア(どの制度か)」「イ(2000年の格差)」「ウ(2014年の格差)」の組合せを正しく判断する必要があります。
<選択肢>
①【正】
「ア=小選挙区制、イ=3、ウ=2」という組合せは、1990年代後半に導入された衆議院の小選挙区制を踏まえ、2000年の最大格差が約3倍前後、2014年の最大格差がおおむね2倍台だったことと整合しています。
②【誤】
「イ=3、ウ=3」としているため、2014年の最大格差まで3倍程度あったことになり、実際のデータをもとにした会話の内容とは一致しません。
③【誤】
「イ=4、ウ=2」としているため、2000年の格差倍率を4倍と読み取らせる組合せですが、資料や会話の指摘とは食い違います。
④【誤】
「ア=小選挙区制」は合っていても、「イ=4、ウ=3」では2000年・2014年両方の格差が実際より大きい数値になっています。
(⑤~⑧は「ア=中選挙区制」とするため、小選挙区制を採用している点と明らかに食い違います)
問110:正解4
<問題要旨>
最高裁判所が行う違憲立法審査権に関して、具体的にどのような基準で法律を違憲と判断するのかを問う問題です。提示された選択肢(ア・イ・ウ)は「立法内容が過度に差別的かどうか」「民法の婚姻に関する期間制限が合理的かどうか」「一票の格差が選挙制度として違憲に当たるかどうか」を扱っており、それらの記述が「合憲」「違憲」いずれの判断に該当するかを正しく対応付けます。
<選択肢>
①【誤】
いずれかの文言が、本来合憲ないし違憲と判断された内容とは整わず、組合せとして不整合が生じています。
②【誤】
同様に、ア・イ・ウのいずれかが最高裁の実際の判例趣旨と異なる配置でまとめられており、記述全体が噛み合いません。
③【誤】
こちらもア・イ・ウそれぞれの合憲・違憲の判断を取り違えていて、全体の組合せが誤っています。
④【正】
たとえば「苛烈な差別的刑罰規定は違憲」「女性の再婚禁止期間を100日を超えて制限する部分は違憲」「一票の格差が著しく合理性を欠くほど拡大すれば違憲状態になる」など、最高裁判決で示された実例を正しくまとめており、記述同士の対応が整合します。
⑤~⑦【誤】
それぞれ部分的に誤った対応付けを含んでいて、最高裁が判例で示している解釈とは合いません。
問111:正解3
<問題要旨>
裁判所が扱う訴訟の種類(行政裁判や民事裁判など)および、裁判所が最終的に憲法適合性を判断する「終審裁判所」の役割、さらに「裁判を受ける権利」などの憲法上の保障を踏まえて、会話文中の空欄を埋める問題です。選択肢では「ア」に入る裁判の例示(a:行政裁判、b:裁判員裁判など)、「イ」に入る裁判所の名称(c:特別裁判所、d:終審裁判所)、「ウ」に入る記述(e:何人も裁判を受ける権利を奪われない、f:最高裁判官は国民審査に付される)が組み合わされています。
<選択肢>
①【誤】
「ア=a、イ=c、ウ=e」の組み立てでは、最高裁判所を「特別裁判所」と呼んでいる点が合わず、憲法上「終審裁判所」とされる最高裁とは整合しません。
②【誤】
「ア=a、イ=c、ウ=f」でも、同じくイが「特別裁判所」になり、最高裁の位置付けとの食い違いが生じます。
③【正】
「ア=a、イ=d、ウ=e」の組合せは、行政裁判(ア=a)という裁判例をまず挙げ、その最高審が終審裁判所(イ=d)であり、さらに憲法で定める裁判を受ける権利(ウ=e)を示す形で、会話文の流れと符合します。
④【誤】
「ア=a、イ=d、ウ=f」とすると、ウに「最高裁判官は国民審査に付される」という内容を入れることになり、会話文全体の「裁判を受ける権利」についての説明とはズレます。
⑤~⑧【誤】
b(裁判員裁判)やc(特別裁判所)などの組合せが入り込み、本文の趣旨と噛み合わなくなります。
問112:正解2
<問題要旨>
日本の刑事司法制度で、罪を犯した者を厳正に処罰するだけでなく、被害者や社会へ対する補償、さらに再犯防止や少年の保護教育など多角的な目的があることを踏まえて、会話文の空欄を埋める問題です。選択肢としては「ア」と「イ」の位置にそれぞれ該当する制度や仕組み(a:再審開始の要件、b:被害者支援の補償制度、c:少年法での保護教育など)を当てはめます。
<選択肢>
①【誤】
「ア=a、イ=b」の場合、被害者支援よりもまず再審の話題が先に挿入されるが、会話の内容上「犯罪被害者の救済」や「加害者が犯行に至る経緯」について触れている文脈とは合致しづらいです。
②【正】
「ア=b、イ=a」の組合せは、会話文で言及されている「被害者やその家族が被った損害を補償するための制度」に触れたうえで、「再審が行われる条件」に話題を移している流れと一致します。実際に国が金銭的援助を行う被害者支援制度と、合理的疑いがあれば裁判をやり直す仕組みの説明とが、文脈的にも妥当です。
③【誤】
「ア=c、イ=a」の場合、少年法の保護教育が先に挙げられ、すぐに再審の要件が続く形で、会話文の流れ(被害者の救済をまず話題にしてから、誤判対策を論じる)と食い違います。
④~⑥【誤】
いずれも「加害者側の再犯防止策」「少年法の保護教育」などを挿入する箇所が不適切だったり、被害者の救済や再審制度と取り違えていたりして、会話内容と齟齬をきたします。
第4問
問113:正解5
<問題要旨>
公共空間の形成に関する授業で、「コミュニケーション的行為の理論」を提唱した人物、そして「人間の条件」を著した人物が論じたそれぞれの考えを踏まえ、空欄(ア・イ・ウ)に当てはまる組合せを問う問題です。会話文中では、コミュニケーションによる合意形成を重視する理論と、人間の活動を「労働・仕事・活動」という三つに区分して公共空間の意義を論じる考え方が対比的に示されています。
<選択肢>
①【誤】
「ア」をアーレント、「イ」を対話的理性、「ウ」を言葉による関わりとする組合せですが、文中で「コミュニケーション的行為の理論」の著者として言及されている人物がハーバーマスである点と食い違います。
②【誤】
「ア」をアーレント、「イ」を対話的理性、「ウ」を契約に基づく支え合いとしているため、アーレントの『人間の条件』が強調する「言葉による活動」とは異なる方向になります。
③【誤】
「ア」をアーレント、「イ」を他者を苦参(苦悶)原理などとする説明は、そもそもアーレントの理論と結び付けられていません。また「コミュニケーション的行為の理論」をハーバーマス以外に当てはめている点で不整合です。
④【誤】
「ア」をアーレントとしつつ、「イ」を他者を苦参原理に結びつける組合せも、文中で示されるアーレントの考えやハーバーマスの対話理論との対応がとれていません。
⑤【正】
「ア」をハーバーマス、「イ」を対話的理性、「ウ」を言葉を通して関わり合う、とする組合せは、
- コミュニケーション的行為の理論=ハーバーマス
- 対話による合意形成=対話的理性
- アーレントの説く「活動」=言葉による政治的関わり合い
という内容に沿っており、会話文での説明と最も整合します。
⑥【誤】
「ア」をハーバーマスに当てている点は合っていても、「ウ」を契約に基づく支え合いとしているため、アーレントの「言葉による活動」と食い違います。
⑦【誤】
「ア」をハーバーマスとしても、「イ」を他者を苦参原理とするため、コミュニケーション的行為における対話的理性の概念が損なわれます。
⑧【誤】
「ア」をハーバーマス、「イ」を他者を苦参原理、「ウ」を契約に基づく支え合いとする組合せは、双方とも文中の理論説明とは矛盾します。
問114:正解6
<問題要旨>
2018年調査と2022年調査の比較データ(表1「時間のゆとりの有無」、表2「自由時間の過ごし方」)を読み取り、年齢階層ごとの変化を正しく捉えた意見を3つ(ア・イ・ウ)のうちどれが正確かを問う問題です。各意見では「どの年齢層でゆとりが増減したか」「どの種類の自由時間の過ごし方が増加・減少したか」などを述べていますが、実際の表1・表2から整合性を判断する必要があります。
<選択肢>
①【誤】
「ア」が挙げる数値の増減と表1・表2の該当年齢層の実際の数値が一致しません。加えて自由時間の過ごし方の変化についての説明に食い違いがあります。
②【誤】
「イ」が示す増減の幅が表1のデータとずれています。具体的にどの年齢層がどの程度伸びたかという指摘と、友人や恋人との交際が増加した年齢層の説明に不備が見られます。
③【誤】
「ア」と「ウ」両方を正しいとしている場合、実際のデータ上で矛盾が生じます。社会参加の増減傾向とゆとり回答の変化の説明が噛み合いません。
④【誤】
「イ」と「ウ」を正しい組合せとしているものの、表1・表2から読み取れるデータ上では、どちらかが不正確な部分を含んでいます。
⑤【誤】
「ア」と「イ」を共に誤った記述としているため、残った「ウ」を正しいとみなす組合せですが、「ウ」の説明にも実際の数値変化と矛盾する点があります。
⑥【正】
「ア」と「イ」を正しい読み取りと判断し、「ウ」を誤りとする組合せは、実際の表1・表2の数値(ゆとりがあると回答した割合やインターネット利用率の増加など)に合致します。ア・イの意見はそれぞれ特定の年齢層やコロナ禍による影響を言及し、データと符合していますが、「ウ」に述べられた社会参加の変化については表2と整合しません。
⑦【誤】
「ア」「イ」「ウ」すべてが正しいとの前提でまとめているため、明らかに表1・表2の数値と食い違う部分を含んでしまいます。
問115:正解5
<問題要旨>
哲学対話(哲学カフェ)に参加した人々の発言をI・II・IIIとして示し、「対話の力」を高める上でどの発言が帰納的に推奨されるかを問う問題です。ここでは、お互いの意見を落ち着いて聞き合う姿勢や、相手の発言を最後まで受け止めて考察する大切さなどが強調されており、それにそぐわない発言は除外されます。
<選択肢>
①【誤】
I・II・IIIのうち、どれかを安易に排除していたり、対話の在り方に反する内容を含んでいます。
②【誤】
Iの内容を誤って解釈しているため、IIやIIIとの調和が破綻している選択です。
③【誤】
IIの「人間には考えを自由に述べる権利がある」という点とI・IIIの姿勢が噛み合っていません。
④【誤】
IIIの発言を強調しすぎて、IやIIで示される対話の基本原則を軽視するまとめ方になっています。
⑤【正】
I(穏やかに最後まで相手を聞く姿勢)とII(お互いの意見表明を尊重する権利と義務)とIII(素朴な質問の重要性)をいずれも肯定的に捉える組合せで、哲学カフェの対話の本質に合った発言として総合的に推奨されます。
⑥【誤】
I・IIのどちらかを否定し、IIIのみを正しいとする組合せで、対話全体を重んじる姿勢とは言えません。
⑦【誤】
IIのみを強調するあまり、IやIIIの発言の有用性を反映しきれていません。
⑧【誤】
Iの対話姿勢を退けてしまい、IIやIIIとも関連づけられない不十分なまとめです。
⑨【誤】
IIIの素朴な質問を取り上げず、I・IIだけを正しいとするため、発言内容が片寄っています。
問116:正解2
<問題要旨>
オンライン会議や遠隔コミュニケーション(非対面)と、対面で直接会議に参加する方法(対面時間)を組み合わせて公共空間を形成する事例について問う問題です。構想メモの中で示される(a)(b)(c)(d)と、それぞれに対応する後の事例文(ア~ウ)の組合せを検討し、もっとも筋が通るものを選ばせています。
<選択肢>
①【誤】
(a)(b)(c)(d)の割り振りと事例文(ア)(イ)(ウ)の内容が混在し、当初から対面でしか実施できなかった場面と、オンラインでの参加が追加された場面を取り違えています。
②【正】
構想メモにある「別々の場所にいる人でもICTを使うことで対面の場に集まることなく議論できる」という説明や、「以前は参加できなかった人がオンラインで関われるようになった」という事例を、ア・イ・ウの記述とうまく対応づけています。その結果、対面と非対面が組み合わさった公共空間形成の一例として最も整合します。
③【誤】
事例文のうちアを本来の(b)部分に当てはめるなど、メモと事例を不適切に結びつけているため、論理的なつながりが崩れています。
④【誤】
(a)や(c)に割り当てるはずの事例が、誤った順序でア・イ・ウに当てはめられており、「対面からオンラインに切り替わった」事実などが正しく反映されていません。
⑤【誤】
メモの「非対面的関わりの場が増加しているタイプ」という説明と、事例の内容がかみ合わず、オンライン参加できる人の描写を誤って解釈しています。
⑥【誤】
メモでは対面のやり取りが追加される場面を挙げているのに、ここでの事例文ではオンライン化のみを前提としており、組合せが成り立ちません。