解答
解説
第1問
問1:正解②
<問題要旨>
医療現場におけるトリアージ(治療優先順位の決定)を題材に、功利主義と義務論という二つの倫理的な考え方の基本的な特徴を理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
イの「欲求」が誤りです。義務論は、個人の欲求ではなく、人間が生まれながらに持つ普遍的な権利や尊厳を重視します。
②【正】
功利主義は、社会全体の幸福が最大になることを目指す考え方で、「最大多数の最大幸福」を原理とします。したがって、アには「最大多数」が入ります。一方、義務論は、行為の結果よりも動機や規則を重視し、すべての人が持つべき普遍的な権利や個人の「尊厳」を無条件に尊重する立場です。したがって、イには「尊厳」が入ります。
③【誤】
アの「無差別」が誤りです。功利主義は、より多くの命を救うという結果を重視するため、助かる見込みのある人を優先するなど、無差別ではなく特定の基準で判断します。また、イの「欲求」も誤りです。
④【誤】
アの「無差別」が誤りです。功利主義の立場は、救える命の総数を最大化することを目的とするため、無差別に扱うわけではありません。
問2:正解④
<問題要旨>
日本国憲法の基本的人権の保障につながった、近代西欧の思想(法の支配、権力分立、天賦人権思想)と、それらを示す歴史的な文書(権利の章典、アメリカ独立宣言、フランス人権宣言)を正しく結びつけることができるかを問う問題です。それぞれの文書が持つ多面的な性格や歴史的なつながりを理解する必要があります。
<選択肢>
①【誤】
組み合わせが誤っています。
②【誤】
アとX、ウとYはそれぞれ典型的な組み合わせですが、本問の意図とは異なります。各文書の持つ思想の多面性を考慮する必要があります。
③【誤】
組み合わせが誤っています。
④【正】
まず、イ「市民の自由を守るために政治権力を分立する」 という考え方は、カードZの内容(フランス人権宣言が権力分立の重要性を明記)と明確に対応します。これにより、正解は②か④に絞られます。
次に、アとウ、カードXとYの組み合わせを考えます。
・ア「権力者といえども法に従わなければならない」 について、カードY(アメリカ独立宣言)は、イギリス国王による法を無視した統治を非難し、人民の同意に基づく政府の樹立を正当化する内容です。これは、権力は法によって制限されるべきだという「法の支配」の理念の表れと捉えることができます。
・ウ「人は生まれながらに人権を有している」 について、カードX(イギリス権利の章典)は、臣民が「古来から」有する権利と自由を国王に認めさせたものです 。これは、人が生まれながらに持つ権利という思想の歴史的源流であり、後の天賦人権思想へと発展していく重要な一歩と解釈できます。
以上のことから、ア-Y、イ-Z、ウ-Xという組み合わせが成立します。
⑤【誤】
組み合わせが誤っています。
⑥【誤】
組み合わせが誤っています。
問3:正解③
<問題要旨>
地方自治における条例制定プロセスと、条例による規制と基本的人権(表現の自由、営業の自由、新しい人権)との関係を理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
イとウが誤りです。看板や広告の規制は、レストランの商業活動に関するものであるため「営業の自由」の問題です。また、環境権の憲法上の根拠としては「幸福追求権」が主に挙げられます。
②【誤】
イとウが誤りです。「労働基本権」は労働者の権利であり、広告規制とは直接関係ありません。「請願権」は国や地方公共団体に要望を述べる権利であり、環境権の直接の根拠ではありません。
③【正】
ア:行政が政策などを決定する際に、案を公表して広く市民から意見を募集する手続きを「パブリック・コメント」といいます。
イ:レストランが看板や広告を出すことは商業活動の一環であり、これを規制する条例案は、憲法で保障される経済的自由権の一つである「営業の自由」を制約する可能性があります。
ウ:良好な景観を守る権利などの環境権は、憲法に明文の規定はないものの、憲法第13条の「幸福追求権」などを根拠に主張されています。会話文の「環境権そのものは、ウや生存権を根拠に主張されている」という記述に合致します。
④【誤】
ウが誤りです。「請願権」は、国や地方公共団体に要望を述べる権利であり、環境権という実体的な権利そのものの根拠として主張されることは一般的ではないため、不適切です。
⑤【誤】
ア、イ、ウすべてが誤りです。「マニフェスト」は政党や候補者が選挙に際して公表する政権公約のことです。
⑥【誤】
ア、イ、ウすべてが誤りです。
⑦【誤】
アとウが誤りです。
⑧【誤】
アとイが誤りです。
問4:正解②
<問題要旨>
民法における契約の原則(契約の拘束力)と、特定商取引法に定められたクーリング・オフ制度について、正確な知識を持っているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
発言βが誤っています。
②【正】
発言αは正しいです。一度有効に成立した契約は、当事者を法的に拘束します(契約の拘束力)。したがって、単に「もっと安い店を見つけた」という自己都合の理由で、一方的に契約をやめる(返品・返金要求)ことは原則としてできません。
発言βは誤っています。クーリング・オフ制度は、一定期間内であれば、消費者が事業者側の同意を必要とせず、無条件で一方的に契約の解除ができる制度です。「事業者の同意を条件に」という部分が明確な誤りです。
③【誤】
発言αは正しいですが、発言βも正しいとしており、誤りです。
④【誤】
発言αは正しいですが、発言βも正しいとしており、誤りです。
第2問
問1:正解⑥
<問題要旨>
青年期に見られる心理的・社会的特徴と、人生の節目で行われる「通過儀礼」とを区別し、正しく分類できるかを問う問題です。
<選択肢>
①~⑤【誤】
XとYの分類が誤っています。
⑥【正】
Xは「人生の節目に行われる行事」、すなわち通過儀礼に関する記述です。ア~ウのうち、通過儀礼そのものの説明に当たるのは、ウ「一定の儀式を経ることで、社会的な地位や社会的役割が与えられる」です。
Yは「精神的な自立を実現する時期」、すなわち青年期(思春期)の心理的・社会的特徴に関する記述です。ア「大人としての責任や社会的義務が、部分的に猶予される」(エリクソンの言うモラトリアム)や、イ「親や年長者の考え方や、社会的権威に反抗する」(第二反抗期)は、この時期に見られる特徴です。
したがって、Xにウが、Yにアとイが該当します。
問2:正解⑨
<問題要旨>
国民負担率と老後の備えに関する二つの統計資料を読み解き、会話文の情報をヒントに、特定の国(アメリカ)を特定する問題です。社会保障制度の国際比較に関する知識も必要とされます。
<選択肢>
①~⑧【誤】
国名または記号の組み合わせが誤っています。
⑨【正】
まず、各国の社会保障モデルから国民負担率を推測します。スウェーデンは高福祉・高負担、アメリカは低福祉・低負担(自己責任重視)、日本は中福祉・中負担のモデルです。
表1の国民負担率を見ると、Y(54.5%)が最も高くスウェーデン、X(32.3%)が最も低くアメリカ、Z(47.9%)が中間の日本と判断できます。
次に、会話文Aの「国民負担率が3か国のなかで最も低かった国(X)では、『預貯金』『債券・株式の保有、投資信託』と『老後も働いて収入が得られるように職業能力を高める』という回答の比率が、最も高くなっている」という発言に注目します。
表2を見ると、「債券・株式の保有、投資信託」と「老後も働いて…」の比率が3か国中で最も高いのは国ウです。また「預貯金」の比率も国ウは45.7%と高い水準にあります(最も高いのはアだが、他の2項目でウが突出して高い)。このことから、会話文が指す国はウであるとわかります。
したがって、国民負担率が最も低いX国(アメリカ)は、表2のウに対応します。
問3:正解②
<問題要旨>
公的年金制度における積立方式と賦課方式の仕組み、長所・短所を正確に理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
エが誤りです。賦課方式で給付水準を維持するには、現役世代の負担を「増やす」必要があります。
②【正】
メモの左側は、自分が支払った保険料を将来自分が受け取る「積立方式」です。この方式は、インフレーション(持続的な物価の上昇)が起こると、将来受け取る年金額の実質的な価値が「減少」する(目減りする)という弱点があります。よって、ウは「減少」です。
メモの右側は、現役世代の保険料で高齢者世代の年金を賄う「賦課方式」です。よって、イは「賦課」です。この方式は、少子高齢化によって支え手である現役世代の人口が減ると、給付水準を維持するためには一人当たりの保険料負担を「増やす」必要が生じます。よって、エは「増やす」です。
③【誤】
ウとエが誤りです。
④【誤】
ウが誤りです。
⑤【誤】
イ、エが誤りです。メモの右側は賦課方式の説明です。
⑥【誤】
イが誤りです。
⑦【誤】
イ、ウ、エすべてが誤りです。
⑧【誤】
イ、ウが誤りです。
問4:正解⑧
<問題要旨>
社会保障や労働、市民の社会参加に関連する重要なキーワードの知識を問う問題です。
<選択肢>
①~⑦【誤】
いずれかの語句の組み合わせが誤っています。
⑧【正】
ア:貧困や失業など、生活上の困難に陥った際に、最低限の安全や生活を保障する社会的な仕組みを「セーフティネット(安全網)」と呼びます。
イ:社会保険の中で、保険料を事業主のみが全額負担するのは「労災保険(労働者災害補償保険)」です。雇用保険や健康保険は労働者と事業主が分担して負担します。
ウ:1995年の阪神・淡路大震災では、多くの市民が自発的に被災地支援に駆けつけ、その後の市民活動の大きな契機となりました。このことから、1995年は日本の「ボランティア元年」と呼ばれています。
第3問
問1:正解①
<問題要旨>
近代刑法における基本原則である「罪刑法定主義」と、そこから派生する「遡及処罰の禁止」について、その意義を正しく理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【正】
ア:どのような行為が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が科されるかを、あらかじめ法律で明確に定めておかなければならないという原則を「罪刑法定主義」といいます。これにより、国民は自らの行為が処罰の対象になるかを予測できます。よってアはa「罪刑法定主義」です。
イ:罪刑法定主義の考え方から、行為の時点では犯罪でなかった行為を、後から作った法律で処罰することは許されないという「遡及処罰の禁止」の原則が導かれます。日本国憲法第39条で保障されています。よってイはc「遡及処罰の禁止」です。
②【誤】
イが誤りです。「残虐な刑罰の禁止」は憲法36条で定められていますが、文脈に合いません。
③【誤】
アが誤りです。「過失責任主義」は、故意または過失がなければ不法行為責任を負わないという民事上の原則であり、刑法の罪刑法定主義とは異なります。
④【誤】
アとイの両方が誤りです。
問2:正解③
<問題要旨>
近代議会における議員の地位(全国民の代表)と、それを保障するための議員特権(不逮捕特権、免責特権)に関する理解を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
アが誤りです。議院による除名は、議員の身分を失わせる手続きであり、命令委任の禁止とは直接関係しません。
②【誤】
アとイの両方が誤りです。免責特権は会期中・会期外を問いません。
③【正】
ア:議員は選挙区の代表ではなく「全国民の代表」として、選挙区の有権者の指示に拘束されずに活動するという「命令委任の禁止」の考え方からは、有権者が議員を直接辞めさせる「解職請求(リコール)」の制度が国会議員には認められていないことが説明できます。よってアはbです。
イ:国会議員の特権のうち、国会の会期中は、院の許可なく逮捕されないという特権は「不逮捕特権」です。これは、会期中の議員の活動を保障するためのものです。よってイはcです。
④【誤】
イが誤りです。
問3:正解②
<問題要旨>
日本国憲法が定める「司法権の独立」について、その具体的な内容を正しく理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
裁判官の罷免は、①公の弾劾(国会の弾劾裁判所)、②最高裁判所裁判官の国民審査、③心身の故障による場合、のいずれかによります。内閣に裁判官の罷免権はありません。
②【正】
憲法第76条3項は「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と定めており、裁判官の職権の独立(他の権力からの干渉を受けないこと)を保障しています。
③【誤】
憲法第76条2項は、行政機関が終審として裁判を行うことを禁止しています。公正取引委員会の審決(行政判断)に不服がある場合は、裁判所に訴えを起こすことができ、最終的な判断は裁判所が下します。
④【誤】
最高裁判所の長官は内閣の指名に基づき天皇が任命し、その他の裁判官は内閣が任命します。この内閣の任命に際して、国会の同意は必要とされていません。(ただし、任命後の国民審査で罷免される可能性はあります。)
問4:正解⑧
<問題要旨>
20世紀以降の資本主義の歴史的変遷(福祉国家の形成と新自由主義の台頭)に関する基本的な知識を問う問題です。
<選択肢>
①~⑦【誤】
いずれかの語句の組み合わせが誤っています。
⑧【正】
ア:20世紀に入り、世界恐慌などを経て、政府が経済に積極的に介入し、完全雇用や社会保障の充実を目指す「福祉国家」が形成されました。これにはケインズ経済学が理論的支柱となりました。
イ:1970年代の石油危機後、福祉国家政策は財政赤字やインフレ(スタグフレーション)を招いたと批判され、政府の介入を減らし、市場原理を重視する「新自由主義(ネオ・リベラリズム)」が台頭しました。
ウ:新自由主義は、政府による計画よりも、市場メカニズム(見えざる手)の方が効率的に資源を配分するという、市場メカニズムへの強い「信頼」を背景に持っています。
問5:正解③
<問題要旨>
アダム・スミスが提唱した租税の四原則の一つ「中立性の原則」と、公害などの「外部不経済」に対する税の役割について理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
アが誤りです。「公平の原則」は、担税力に応じて公平に課税すべきという原則です。
②【誤】
アとイの両方が誤りです。
③【正】
ア:税が個人の貯蓄・投資意欲や企業の経済活動を歪めず、できるだけ影響を与えないようにすべきという原則は、租税の「中立性の原則」です。
イ:ある企業が生産活動で汚染物質を排出し、社会に損害を与えている場合(外部不経済)、その損害コストを企業が負担していないと、生産コストが社会全体で見た場合のコストよりも過小になります。そのため、企業は利益を最大化しようとすると、社会的に望ましい水準よりも「多く」生産してしまう傾向があります。
④【誤】
イが誤りです。
⑤【誤】
アが誤りです。「簡素の原則」は、納税者にとって分かりやすく、徴税コストが安い税制であるべきという原則です。
⑥【誤】
アとイの両方が誤りです。
問6:正解①
<問題要旨>
ジニ係数のグラフを読み取り、所得再分配の効果の変化を把握するとともに、所得税の累進課税制度が再分配に与える影響を理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【正】
ア:所得再分配の効果は、「当初所得のジニ係数」(●の線)と「再分配所得のジニ係数」(■の線)の差の大きさで測ることができます。この差は、2002年時点よりも2021年時点の方が大きくなっています。これは、所得再分配の効果がより「大きい」ことを意味します。
イ:日本の所得税は、所得が高いほど高い税率が適用される「累進課税制度」を採用しています。所得格差を是正する再分配効果を高めるためには、高所得者層に対する税率、すなわち最高税率を「引き上げる」ことが一つの方法となります。
②【誤】
イが誤りです。最高税率を引き下げると、再分配効果は弱まります。
③【誤】
アが誤りです。グラフから、再分配効果は大きくなっていることが読み取れます。
④【誤】
アとイの両方が誤りです。
第4問
問1:正解②
<問題要旨>
フィンテックの代表例である仮想通貨(暗号資産)と、日本銀行券が持つ法定通貨としての性質を対比させ、それぞれの特徴を理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
イが誤りです。日本銀行券には発行量の上限が法律で定められているわけではありません。
②【正】
ア:ブロックチェーン技術を基盤とし、インターネット上で不特定多数の間で取引される電子的な通貨は「仮想通貨(暗号資産)」と呼ばれます。
イ:日本銀行券は、法律によって国内での決済に無制限に使用できることが定められています。この法的な裏付けを「強制的な通用力」といい、これが通貨の価値を安定させる一因となっています。仮想通貨にはこの強制通用力がありません。
③【誤】
アが誤りです。ブロックチェーンで取引されるのは仮想通貨であり、現金通貨ではありません。
④【誤】
アが誤りです。
問2:正解④
<問題要旨>
企業の財政状態を示す貸借対照表(バランスシート)の基本的な仕組みを理解し、具体的な取引がどのように記録されるかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
負債の増加も同時に記録する必要があります。
②【誤】
資産の増加も同時に記録する必要があります。
③【誤】
この取引は純資産には影響しません。
④【正】
貸借対照表は、左側に「資産」(資金の運用形態)、右側に「負債」(他人資本)と「純資産」(自己資本)を記載し、左右の合計額が必ず一致する(バランスする)ように作られています。
企業が「銀行から3,000万円の資金を借り入れ」ると、借入金という「負債」が3,000万円増加します(イに記入)。
その資金で「設備投資を行った」場合、機械や建物などの「資産」が3,000万円増加します(アに記入)。
この結果、資産と負債が同額増加し、貸借対照表の左右のバランスは保たれます。
⑤【誤】
負債の増加を記録する必要があり、純資産には影響しません。
⑥【誤】
資産の増加も記録する必要があります。
⑦【誤】
この取引は純資産には影響しません。
問3:正解③
<問題要旨>
家計の資産運用に関する知識として、預金保護の仕組み(預金保険制度)と、既発債の利回り計算について問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
イが誤りです。
②【誤】
アとイの両方が誤りです。「貸金業法の上限金利」は、お金を借りる際の金利規制であり、預金の保護とは関係ありません。
③【正】
ア:日本の金融機関に預けられた預金は、「預金保険制度」によって、万が一その金融機関が破綻した場合でも、預金者一人当たり元本1,000万円とその利息までが保護されます。これが銀行預金のリスクを小さくしている要因です。よってアはbです。
イ:額面100万円、利率1.2%の1年後満期の債券を満期まで保有すると、100万円の元本と12,000円の利子、合計1,012,000円を受け取れます。この債券をある価格で購入して10%の利回りを得るには、購入価格をX円とすると、「(受取額 – 購入価格) / 購入価格 = 利回り」なので、「(1,012,000 – X) / X = 0.1」となります。これを解くと、1.1X = 1,012,000 となり、Xは約920,000円となります。よってイはc「92万円」です。
④【誤】
イが誤りです。
問4:正解④
<問題要旨>
路線バスの人手不足という社会課題に対し、デジタル技術の活用法と、限られたリソースの中での路線維持策を論理的に考える問題です。
<選択肢>
①【誤】
アとイの組み合わせが目的と手段として不適切です。
②【誤】
アが不適切です。aは利用客の利便性向上策であり、運転手の技能向上には直接つながりません。
③【誤】
イが不適切です。人手不足の中で増便することは困難です。
④【正】
ア:「運転経験が少ない人の運転技能の向上を支援する」という目的のためには、bの「急発進および急ブレーキを検知するセンサーをバスに取り付けて、そこから得られた数値を記録し、運転者にAIがアドバイスする」という方法が適しています。客観的なデータに基づいて運転技術を改善できます。
イ:「人手不足が続く場合に、既存のバス路線網を廃止しないために」は、限られた運転手で運行を継続する必要があります。そのためには、dの「現状の便数から乗客数が一定以下の時間帯のバスを減便する」という、非効率な部分を削減する対応が現実的な策として考えられます。
問5:正解①
<問題要旨>
日本の地方公共団体(地方自治)に関する制度や原則について、基本的な知識を問う問題です。
<選択肢>
①【正】
オンブズパーソン(オンブズマン)制度は、市民からの申し立てに基づき、行政の活動を監視し、権利侵害の救済や制度改善勧告などを行う仕組みです。法律による義務付けはありませんが、条例によってこの制度を導入している地方公共団体があります。
②【誤】
道州制は、現在の都道府県を廃止・再編し、より広域的な行政体である「道」や「州」を設置する構想です。議論はありますが、日本で導入している地方公共団体は現在ありません。
③【誤】
住民投票の結果に法的拘束力を持たせるかどうかは、その根拠となる条例の定めによります。全ての住民投票の結果が議会や長を法的に拘束するわけではありません。
④【誤】
地方公共団体が制定する条例は、法律の範囲内であることが必要ですが、議会での議決と、その地方公共団体の長による公布によって成立します。総務大臣などの国の機関の認可は原則として不要です。
問6:正解①
<問題要旨>
日本の行政機関の役割や制度について、正確な知識を持っているかを問う問題です。
<選択肢>
①【正】
内閣府は、内閣総理大臣がリーダーシップを発揮しやすいように、各省庁の所管にまたがる重要政策の企画立案や総合調整を担う機関として設置されています。各省より上位というわけではありませんが、内閣の直属機関として強い調整機能を持っています。
②【誤】
国家公安委員会は、警察行政の民主的管理と政治的中立性を確保するために内閣府に置かれる行政委員会ですが、独立行政法人ではありません。
③【誤】
各省庁の幹部職員の人事を一元的に管理するのは、2014年に内閣官房に設置された「内閣人事局」です。人事院は、公務員の身分保障や労働基本権制約の代償措置などを担う、内閣からの独立性が高い機関です。
④【誤】
政府委員制度は、官僚が国会で大臣の代わりに答弁する制度でしたが、国会審議の活性化と政治主導の確立を目指す改革の一環として、2001年に廃止されました。
第5問
問1:正解⑦
<問題要旨>
日本の人口と労働力に関する統計グラフから、複数の情報を正確に読み取る能力を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
イとウも正しい記述です。
②【誤】
アとウも正しい記述です。
③【誤】
アとイも正しい記述です。
④【誤】
ウも正しい記述です。
⑤【誤】
イも正しい記述です。
⑥【誤】
アも正しい記述です。
⑦【正】
ア:総人口(●)は2010年頃から減少傾向にありますが、65歳以上の労働力人口(灰色の棒グラフ部分)は2020年にかけて一貫して増加しています。したがって、この記述は正しいです。
イ:2000年の労働力人口(65歳未満+65歳以上)は、グラフから約6700万人。2020年は約6900万人です。この間、65歳未満(斜線棒)は約300万人減少していますが、65歳以上(灰色棒)は約500万人増加しています。増加分が減少分を上回っており、この記述は正しいです。
ウ:生産年齢人口(■)は1995年頃から減少に転じています。一方、65歳未満の労働力人口(斜線棒)は、1995年から2000年にかけては微増または横ばいです。したがって、生産年齢人口が減少している期間に65歳未満の労働力人口が増加した(または横ばいであった)期間が存在するため、この記述は正しいです。
以上より、ア、イ、ウはいずれも正しい記述です。
問2:正解⑤
<問題要旨>
女性の就業率を示すグラフ(M字カーブ)と、非正規雇用を選択した理由に関する表を組み合わせ、女性の働き方の変化と課題を考察する問題です。
<選択肢>
①~④、⑥【誤】
アまたはイの記述、あるいはその組み合わせが不適切です。
⑤【正】
ア:資料1の2017年のグラフを見ると、正規の職員・従業員(薄い灰色の部分)の割合は、「25~29歳」でピークを迎え、その後は年齢階級が上がるにつれて低下していく傾向が明確に読み取れます。これは、出産・育児期を境に正規職を離れる女性が依然として多いことを示唆しています。したがって、記述bは正しいです。
イ:資料2を見ると、非正規雇用を選択した理由として、全ての年齢層で最も割合が高いのは「自分の都合のよい時間に働きたいから」です。これに対応する企業の取り組みとして、dの「勤務地や勤務時間を限定して雇用する『限定正社員制度』の導入を進める」ことは、働く時間や場所に制約のある人々のニーズに応えるものであり、妥当な策と考えられます。
問3:正解①
<問題要旨>
日本の社会支出の内訳を示すグラフを、注釈と日本の社会保障制度に関する基礎知識を基に読み解く問題です。
<選択肢>
①【正】
まず、問題文の条件「ア・エは『保健』か『失業…』」「イ・ウは『家族』か『高齢』」を確認します。
次に、注釈「2020年は…『失業・積極的労働市場政策』の増加率が最も高かった」に注目します。グラフで2019年から2020年にかけての棒の伸び率が最も大きいのはエなので、エが「失業・積極的労働市場政策」と確定します。すると、アは残りの「保健」となります。
次に、日本の社会支出は高齢者関連(年金など)が最も大きく、次いで医療(保健)関連が大きいという知識を使います。グラフでは、イの区画は大きく、ウの区画は小さいです。アが「保健」なので、それより大きいイが「高齢」、小さいウが「家族」と判断するのが妥当です。
したがって、アは「保健」、ウは「家族」の組み合わせが正しくなります。
②【誤】
ウが誤りです。ウは「家族」です。
③【誤】
アが誤りです。アは「保健」です。
④【誤】
アとウの両方が誤りです。
問4:正解①
<問題要旨>
夫婦同氏制の合憲性が争われた最高裁判決の資料を読み、この問題の社会的背景と、氏の変更によって生じる具体的な不利益を理解しているかを問う問題です。
<選択肢>
①【正】
ア:夫婦同氏制を定めた民法の規定により、婚姻時に氏を変更するのは95%以上が女性です。特に、社会進出が進み、「婚姻後も就労する女性」が増えたことで、仕事上の実績や人間関係が旧姓と結びついている場合に、氏の変更による不利益が大きな社会問題として認識されるようになりました。
イ:氏を変更することによる具体的な不利益として、岡部裁判官の個別意見でも示唆されているように、パスポート、運転免許証、銀行口座、各種資格証明などの名義変更の手間や、キャリア上「変更前の人物と同一人物であるか」の証明が困難になるなどの問題が挙げられます。
②【誤】
イが誤りです。親子関係は戸籍で証明されるため、氏の変更が直接的に婚内子との親子関係の識別に困難を生じさせるわけではありません。
③【誤】
アが誤りです。問題の主な当事者は、氏の変更を強いられることの多い女性です。
④【誤】
アとイの両方が誤りです。
問5:正解③
<問題要旨>
日本国憲法第25条が保障する生存権と、それに関する代表的な判例(朝日訴訟、堀木訴訟)についての正確な知識を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
朝日訴訟において、最高裁判所は原告の訴えを退け、生活保護基準が憲法に違反するとは判断しませんでした。最高裁は、何が「健康で文化的な最低限度の生活」にあたるかの判断は、厚生大臣の専門技術的な裁量に委ねられるべきだとしました(プログラム規定説)。
②【誤】
堀木訴訟においても、最高裁判所は朝日訴訟の判例を踏襲し、国の立法措置については広い裁量権を認め、児童福祉年金と障害福祉年金の併給禁止は、その裁量の範囲を逸脱するものではないとして、合憲と判断しました。
③【正】
日本国憲法第25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めて生存権を保障しています。そして、この憲法の理念を具体的に実現するための法律として「生活保護法」などが制定されています。
④【誤】
日本国憲法は生存権の理念を定めていますが、その具体的な内容や基準(生活保護基準など)は法律に委ねられており、憲法の条文自体で具体的に定めているわけではありません。
問6:正解①
<問題要旨>
日本の選挙における投票率向上のための課題として、選挙運動のルールと投票制度に関する知識を問う問題です。
<選択肢>
①【正】
ア:公職選挙法では、多くの選挙運動が規制されていますが、その中でも有権者の自宅などを個別に訪問して投票を依頼する「戸別訪問による選挙運動」は、買収や利益誘導の温床になりやすいとして現在も全面的に禁止されています。
イ:選挙期日に仕事や旅行などで投票所に行けない有権者が、選挙人名簿に登録されている市区町村以外の滞在先の選挙管理委員会で投票できる制度を「不在者投票制度」といいます。
②【誤】
イが誤りです。「期日前投票制度」は、登録されている市区町村の役所などで、投票日の前日までに投票する制度です。
③【誤】
アが誤りです。「インターネットを利用した選挙運動」は、2013年の公職選挙法改正により解禁されています。
④【誤】
アとイの両方が誤りです。
第6問
問1:正解②
<問題要旨>
為替相場の変動(円安ドル高)が、企業の海外投資や輸出入の採算にどのような影響を与えるかを具体的に理解しているかを問う問題です。
<選択-肢>
①【誤】
自国通貨(円)がドルに対して下落する(円安ドル高)と、ドル建て資産の円換算額は増加します。したがって、受け取ったドル建ての元本と利子を円に換算すると、受取額は「増加」します。
②【正】
アメリカに生産拠点を設立するための費用(土地、建物、設備など)はドルで支払われます。円安ドル高のため、同じドル額の投資をするにも、より多くの円が必要になります。したがって、自国通貨(円)で見た投資額は「多く」なります。
③【誤】
利用料を米ドルで支払う場合、円安ドル高なので、支払うために必要な円の額は「増加」します。
④【誤】
米ドル建てで自動車を輸入している場合、円安ドル高になると、円換算での仕入れ価格(コスト)が上昇します。国内の販売価格を据え置くと、1台当たりの利益は「減少」します。
問2:正解③
<問題要旨>
国際関係における「安全保障のジレンマ」の概念を読み取り、その緊張を緩和・回避するための方法として適切なものを選択する問題です。
<選択肢>
①【誤】
自国の意図が防衛目的であっても、ミサイルの配備増強は相手国に脅威と受け取られ、相手国の軍拡を招き、結果として緊張を高める「安全保障のジレンマ」の典型例です。
②【誤】
戦闘機の性能向上も、相手国からは攻撃能力の向上とみなされ、安全保障のジレンマを悪化させる可能性があります。
③【正】
安全保障のジレンマは、互いの不信感から生じます。したがって、緊張を回避するためには、メモの最後にあるように、コミュニケーションを通じて「信頼醸成」を進めることが重要です。「軍事情報を相互提供する制度」は、軍事活動の透明性を高め、互いの意図への疑念を払拭し、信頼を構築することに繋がるため、緊張回避策として適切です。
④【誤】
合同演習の打切りは、それまでの協力関係を断ち切る行為であり、不信感を増大させ、軍事的緊張を高める方向に作用する可能性があります。
問3:正解③
<問題要旨>
日本の国際収支統計のグラフを読み解き、各項目の特徴と、その変動要因を正しく結びつけることができるかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
アが誤りです。第一次所得収支に計上されるのは投資額そのものではなく、その収益です。
②【誤】
アとイの両方が誤りです。
③【正】
まず、グラフのA, B, Cを特定します。日本の国際収支では、海外への投資から得られる配当や利子である「第一次所得収支」が恒常的に大きな黒字を計上しています。グラフで常にプラス圏で大きな値を示しているAが「第一次所得収支」です。2011年の東日本大震災後、原発停止に伴う化石燃料の輸入急増で「貿易収支」が大幅な赤字に転じました。この動きと一致するBが「貿易収支」です。残ったCが「サービス収支」です。
ア:A(第一次所得収支)の黒字の源泉は、b「日本企業による対外直接投資の投資収益」や証券投資収益です。
イ:B(貿易収支)が2011年以降に赤字化した最大の要因は、c「エネルギー資源の輸入額」の増加です。
④【誤】
イが誤りです。
問4:正解②
<問題要旨>
第二次世界大戦後の国際通貨体制の歴史的な変遷(ブレトン・ウッズ体制の成立から変動相場制への移行、プラザ合意など)を時系列に正しく並べ替える問題です。
<選択肢>
①【誤】
c→d の順が逆です。
②【正】
各出来事の発生年を整理すると以下のようになります。
a. 世界恐慌による金本位制の終焉(1930年代)
b. ブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制・固定相場制)の確立(1944年)
d. ニクソン・ショック(1971年)を経て、変動為替相場制へ移行(1973年)
c. プラザ合意(ドル高是正のための先進国協調介入)(1985年)
e. 共通通貨ユーロの導入(1999年現金導入は2002年)
したがって、b, c, dを古いものから順に並べると、b→d→c となります。
③【誤】
c→b、c→d の順が逆です。
④【誤】
c→b、d→b の順が逆です。
⑤【誤】
d→b の順が逆です。
⑥【誤】
d→b、d→c の順が逆です。
問5:正解①
<問題要旨>
医薬品へのアクセスにおける先進国と発展途上国の格差という問題に対し、ポスターが掲げる「社会的公正を重視した」解決策として「誤っているもの」を特定する問題です。
<選択肢>
①【誤】
「医薬品に関する知的財産権の厳格な運用を義務づける」ことは、製薬会社の特許権を強く保護することになります。その結果、安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造・販売が困難になり、薬の価格が高止まりするため、発展途上国の人々の医薬品へのアクセスをむしろ阻害する可能性があります。「社会的公正」を重視する観点からは逆行する政策です。
②【正】
発展途上国が共同で医薬品を購入すれば、購入量が増えるため価格交渉力が強まり、より安価に医薬品を調達できる可能性があります。これはアクセス改善に繋がります。
③【正】
特許が切れた医薬品(後発医薬品)は安価に製造できます。発展途上国でこれを大量生産する技術を導入すれば、安価な医薬品の安定供給に繋がり、アクセス改善に貢献します。
④【正】
「メディスン・パテント・プール」のように、特許権を管理する国際的な仕組みを作り、ライセンス料を支払うことで発展途上国での安価な製造を許可する取り組みは、特許制度と医薬品アクセスの両立を目指すものであり、有効な解決策の一つです。
問6:正解①
<問題要旨>
企業の社会的責任(CSR)やESG投資の考え方を踏まえ、教育格差という社会課題の解決に企業が貢献し、それを投資家が後押しする形として最も適切なものを選択する問題です。
<選択肢>
①【正】
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)への配慮を投資先の決定に組み込む手法です。「発展途上国の教育改善に携わる企業」は、S(社会)の側面で高く評価されるべき活動をしています。投資家である「人々が」そうした企業の「株式を積極的に購入する」ことは、まさにESG投資の実践であり、市場を通じて企業の社会貢献活動を後押しし、教育格差という課題解決に繋がる可能性があります。
②【誤】
これは政府開発援助(ODA)であり、企業の活動や投資家の行動ではありません。
③【誤】
これは非営利組織(NPO/NGO)の活動であり、企業の活動や投資ではありません。
④【誤】
これは大学など研究機関の活動であり、直接的にはESG投資の文脈とは異なります。