解答
解説
第1問
問1:正解⑤
<問題要旨>
タンパク質の立体構造とアミノ酸の性質に関する知識を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、側鎖の種類が異なりますが、アミノ基とカルボキシ基をもつ基本構造は共通しています。
②【誤】
ペプチド結合は、隣り合うアミノ酸のアミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)の間で、水分子(H2O)が取れて形成されます。側鎖間ではありません。
③【誤】
タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)は、DNAの塩基配列という遺伝情報によって決定されます。
④【誤】
αヘリックスやβシートなどの二次構造は、主鎖のカルボニル基(-CO)の酸素原子と、アミノ基(-NH)の水素原子との間の水素結合によって形成されます。
⑤【正】
三次構造は、二次構造などをもつ一本のポリペプチド鎖が、側鎖間の相互作用(疎水性相互作用、水素結合、イオン結合、ジスルフィド結合など)によってさらに折り畳まれた構造です。
問2:正解③
<問題要旨>
酵素の反応速度に対する阻害剤(競争的阻害・非競争的阻害)の影響を考察する問題です。
<選択肢>
①【誤】
阻害剤が存在すると、酵素の働きが抑えられるため、反応速度は阻害剤がないとき(曲線a)よりも必ず小さくなります。
②【誤】
基質濃度を十分に高くしたとき、阻害剤がない場合の最大速度($V$)に達する曲線bは、競争的阻害の特徴です。
③【正】
曲線bは「競争的阻害」を示します。阻害剤が酵素の活性部位に結合するため、基質濃度を上げると基質が阻害剤を追い出して活性部位に結合できるようになり、最大速度は阻害剤なしの場合と一致します。
④【誤】
曲線cは「非競争的阻害」を示します。阻害剤が活性部位以外の場所に結合して酵素の立体構造を変化させるため、基質濃度をいくら上げても最大速度は元の値まで回復しません。
問3:正解⑤
<問題要旨>
実験結果(グラフ)から、温度とpHの変化が酵素反応速度に与える影響を計算する問題です。
<選択肢>
グラフより、以下の相対速度を読み取ります。
- 35℃、pH 7 のときの速度:160
- 25℃、pH 5 のときの速度:20
この比を求めると、$160 \div 20 = 8$ となります。したがって、8倍です。
第2問
問1:正解④
<問題要旨>
細胞の分化とゲノム情報の保持に関する基礎知識です。
<選択肢>
①【誤】
多細胞生物のほぼ全ての細胞は、受精卵がもつすべての遺伝情報(ゲノム)を等しく保持しています。
②【誤】
細胞の形や機能が異なるのは、もっている遺伝子が違うからではなく、働く(発現する)遺伝子の組み合わせが異なるためです。
③【誤】
特定の組織で働く遺伝子も、他の組織の細胞内に存在していますが、発現が抑制(オフ)されています。
④【正】
分化した細胞が、再び未分化な状態に戻り、個体を形成する能力(分化全能性)を保持している例は、植物の組織培養などで広く知られています。
問2:正解②
<問題要旨>
転写調節因子(調節タンパク質)による遺伝子発現の制御に関する問題です。
<選択肢>
①【誤】
プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合する領域であり、アミノ酸配列の情報は含みません。
②【正】
特定の遺伝子の発現は、プロモーター付近にある調節領域に、特定の転写調節因子が結合することで促進または抑制されます。
③【誤】
転写調節因子自体もタンパク質であり、その合成はDNAの塩基配列に基づいて制御されています。
④【誤】
分化した細胞であっても、環境の変化や刺激に応じて、特定の遺伝子の発現が調節されることがあります。
問3:正解②
<問題要旨>
実験1の「眼の分化」に関するデータから、分化に必要な条件を論理的に導き出す考察問題です。
<選択肢>
実験1の結果を整理すると以下のようになります。
- 物質X(−)・遺伝子A発現(−)→ 分化しない
- 物質X(+)・遺伝子A発現(−)→ 分化しない
- 物質X(−)・遺伝子A発現(+)→ 分化しない
- 物質X(+)・遺伝子A発現(+)→ 分化する
この結果から、「物質Xが存在すること」と「遺伝子Aが発現していること」の両方が揃ったときのみ、細胞は眼へと分化することがわかります。選択肢②がこの論理に合致するため正解です。
問4:正解③
<問題要旨>
ホメオティック遺伝子(ホメobox遺伝子群)の役割に関する知識問題です。
<選択肢>
①【誤】
ホメオティック遺伝子は、動物の「前後軸」に沿った体の部位(頭・胸・腹など)を決定するもので、右側か左側かを決めるものではありません。
②【誤】
植物のクローン形成(組織培養)に関連する用語ではありません。
③【正】
ホメオティック遺伝子は、ショウジョウバエなどの研究で発見された、体の各節が「どのような形(足、羽、触覚など)になるか」を決定する調節遺伝子群です。
④【誤】
眼のレンズ(水晶体)の形成を直接支配する単一の仕組みを指す言葉ではありません。
問5:正解①
<問題要旨>
誘導の連鎖(眼の形成過程)に関する発生の基礎知識を問う問題です。
<選択肢>
脊椎動物の眼の形成では、まず脳の一部が突出して「眼胞」ができ、それが表皮に接することで表皮を「水晶体」へと分化させます。
①【正】
リード文にある通り、眼胞(眼杯)からの働きかけ(誘導)によって、接した表皮が水晶体に変化します。
②・③・④【誤】
誘導の方向が逆であったり、関与する組織が異なっていたりするため、発生学的な事実と矛盾します。
問6:正解④
<問題要旨>
アポトーシス(プログラムされた細胞死)が形態形成に果たす役割を問う問題です。
<選択肢>
①・②・③【誤】
これらは細胞の分裂や分化、移動による変化であり、細胞が死ぬことで形を作る現象ではありません。
④【正】
脊椎動物の指の形成過程では、最初はヘラのような形をしていますが、指と指の間の細胞がアポトーシスによって死滅することで、独立した指の形が作られます。
第3問
問1:正解①
<問題要旨>
ヒトの眼の遠近調節(ピント合わせ)のメカニズムに関する知識問題です。
<選択肢>
①【正】
遠くを見るときは、毛様筋が弛緩し、その結果チン小帯が引っ張られて水晶体が薄くなります。
②【誤】
近くを見るとき、毛様筋は収縮します。
③【誤】
瞳孔の大きさは虹彩によって調節されますが、これは光量の調節でありピント調節ではありません。
④【誤】
「水晶体が厚くなる」のは、近くを見るときです。
問2:正解④
<問題要旨>
網膜上の視細胞(桿体細胞と円錐細胞)の分布特性に関する問題です。
<選択肢>
①・②【誤】
色は円錐細胞で感知し、暗所での光は桿体細胞で感知します。
③【誤】
黄斑の中心部(中心窩)には、色を識別する円錐細胞が最も高密度に集まっています。
④【正】
黄斑の中心から離れた周辺部には、弱い光に反応する桿体細胞が多く分布しています。
問3:正解②
<問題要旨>
光受容の化学的プロセス(ロドプシンの変化)に関する問題です。
<選択肢>
①【誤】
ロドプシンは桿体細胞に含まれる光受容タンパク質です。
②【正】
ロドプシンに光が当たると、結合しているレチナールが「11-シス型」から「全トランス型」へと構造変化(光異性化)を起こし、神経信号へと変換されます。
③【誤】
光を受けると細胞内のイオンチャネルが閉じ、過分極が起こることで信号が伝わります(脱分極ではありません)。
④【誤】
レチナールはビタミンAから合成されるため、ビタミンA欠乏は夜盲症の原因となります。
問4:正解③
<問題要旨>
視野と視神経の交差(視交叉)に関する空間的な理解を問う問題です。
<選択肢>
ヒトの視神経は、網膜の「鼻側(内側)」からの繊維だけが視交叉で反対側の脳へ向かい、「耳側(外側)」からの繊維は同側の脳へ向かいます。
左目の鼻側網膜(左視野の端を捉える)の情報は右脳へ行くため、結果として「左側の視野」の情報はまとめて「右脳」で処理される仕組みになっています。この解剖学的構造に合致するのは③です。
問5:正解②
<問題要旨>
暗順応の仕組みをグラフから読み取る問題です。
<選択肢>
暗い部屋に入った直後は何も見えませんが、時間が経つにつれて視細胞の感度が上がり、見えるようになります。
①【誤】
円錐細胞の感度上昇は数分で飽和します。
②【正】
桿体細胞は円錐細胞よりも感度が上がるのに時間がかかりますが、最終的な到達感度は桿体細胞の方がはるかに高くなります。グラフで2段階の曲線になるのはそのためです。
第4問
問1:正解③④
<問題要旨>
S字型の個体群成長曲線と環境収容力に関する知識を問う問題です。
<選択肢>
③【正】
個体群密度が高くなると、食物の不足や老廃物の蓄積により、死亡率が上昇したり出生率が低下したりします(密度効果)。
④【正】
その環境で維持できる最大の個体数を「環境収容力」と呼びます。グラフの平坦な部分はこれに達した状態です。
問2:正解③
<問題要旨>
種間競争とニッチの重複に関する考察問題です。
<選択肢>
①・②【誤】
同じ資源を奪い合う2種(ニッチが重なる種)を混ぜると、一方が絶滅するか(競争的排除)、生活の場を分ける(棲み分け)ことが起こります。
③【正】
2種を混合飼育した際に、単独飼育時よりも個体数が減る場合、種間競争が起こっていると判断できます。
問3:正解⑥
<問題要旨>
生物間の相互作用(相利共生・片利共生・寄生)の定義を確認する問題です。
<選択肢>
①【誤】
双方が利益を得るのは「相利共生」です。
⑥【正】
一方が利益を受け、他方が不利益(被害)を受ける関係を「寄生」と呼びます。
第5問
問1:正解④
<問題要旨>
自然選択の仕組み(生存競争と適応)に関する基礎知識です。
<選択肢>
①・②・③【誤】
個体が自ら意識して変化したり、環境に合わせて一斉に変化したりするわけではありません。
④【正】
集団内に存在する遺伝的な変異のうち、たまたま環境に対して有利な(生き残りやすい、または子を多く残せる)形質を持つ個体が、次世代に占める割合を増やしていくプロセスが自然選択です。
問2:正解②⑥
<問題要旨> 「中立説」と「分子時計」の考え方に基づき、分子レベルの進化の特徴を問う問題です。
<選択肢(解答番号21)>
②【正】
木村資生が提唱した「中立説」では、分子レベルでのDNA塩基配列やアミノ酸配列の変化の多くは、自然選択に対して有利でも不利でもない「中立」なものであるとしています。これらは「遺伝的浮動(偶然)」によって集団に広まります。
<選択肢(解答番号22)>
⑥【正】
「分子時計」の考え方です。中立な変異は、長い年月で見るとほぼ一定の速度で蓄積されるため、異なる種の間でアミノ酸配列の違いを比べることで、それらの種がいつ頃共通祖先から分かれたか(分岐年代)を推定する目安となります。
問3:正解⑤
<問題要旨>
共進化の具体例を識別する問題です。
<選択肢>
⑤【正】
ハチ鳥のくちばしの形と、その鳥が蜜を吸う花の形が、互いに適応し合って進化するような現象を共進化と呼びます。
問4:正解①
<問題要旨>
系統樹の分岐から共通祖先を読み取る問題です。
<選択肢>
系統樹において、枝が分かれている節(分岐点)が現在に近いほど、それらの種はより近い共通祖先を持っており、近縁であると言えます。
第6問
問1:正解④
<問題要旨>
生態系におけるエネルギーの移動原則に関する問題です。
<選択肢>
エネルギーは炭素などの物質とは異なり、生態系内を循環しません。太陽から供給されたエネルギーは、食物連鎖を通じて移動し、最終的には全ての個体の呼吸などによって「熱」として系外へ放出され、失われます。
問2:正解②
<問題要旨>
窒素循環における硝化菌の役割を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
窒素固定は、大気中の窒素($N_2$)をアンモニウムイオンに変えることです。
②【正】
硝化菌(亜硝酸菌・硝酸菌)は、アンモニウムイオンを亜硝酸イオン、さらには硝酸イオンへと酸化する働きをします。植物は主にこの硝酸イオンの形で窒素を吸収します。
問3:正解⑤
<問題要旨>
生物濃縮が起こる条件と結果に関する問題です。
<選択肢>
⑤【正】
PCBやDDTのように、脂肪に溶けやすく分解されにくい物質は、食物連鎖の下位から上位へ行くほど、体内の濃度が指数関数的に高まっていきます。これを生物濃縮と呼びます。
問4:正解①
<問題要旨>
キーストーン種の影響力に関する問題です。
<選択肢>
①【正】
捕食者であるヒトデを除去すると、その獲物であった種が爆発的に増えて他の種を駆逐し、結果として生態系の多様性が低下したという実験が有名です。このように、個体数は少なくても全体のバランスを保つのに不可欠な種をキーストーン種と呼びます。
問5:正解①
<問題要旨>
地球温暖化と炭素のバランスに関する問題です。
<選択肢>
①【正】
化石燃料(石炭・石油など)は、過去の生物が固定した炭素の塊です。これを燃焼させることは、地中に埋まっていた炭素を短期間で二酸化炭素として大気中に放出することになり、炭素循環のバランスを崩して温暖化を促進します。

