2021年度 大学入学共通テスト 本試験 地学基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解4

<解説>
地震は海溝沿いで大規模に発生すると、海底の隆起や沈降が起こり、それに伴って津波が生じることが広く知られている。これに対し、マグニチュードは地震が放出するエネルギーの規模を示す指標であり、揺れの強さの指標とは区別される。また、緊急地震速報では、通常は先に到達するP波を検知して大きな揺れをもたらすS波の到着予測を行うため、「S波を観測してP波の到着を予測する」という説明は誤りである。さらに、地盤の性質によって揺れの大きさは異なるため、同じ距離であっても地震動の大きさは変わる。よって、海溝沿いの巨大地震によって海底が変動し、津波が発生するという選択肢がもっとも適切と考えられる。

問2:正解4

<解説>
地球は自転によって赤道方向にわずかにふくらんだ回転楕円体の形をしている。そのため、同じ緯度差(1度)に対しても、極に近い部分と赤道に近い部分では子午線の弧の長さが異なる。一般に、極付近ほど子午線の曲率半径が大きくなるため、1度あたりの弧の長さも大きいとされる。この理由を「地球が赤道方向にふくらんだ回転楕円体であるから」と組み合わせた選択肢が正しいと考えられる。

問3:正解2

<解説>
流水中で礫や砂・泥が動き出すかどうかは、水の流速と粒子の大きさ・密度などの関係によって決まる。流速10 cm/s(毎秒10センチメートル程度)は比較的ゆるやかな流れであり、粒径が大きい礫(たとえば直径が10 mm程度)を動かすには不十分と考えられる。一方、より小さな泥や細かい砂ならばこの流速で動き始める可能性はあるが、大きな礫は静止したまま堆積するのが通常である。したがって、「流速10 cm/sの流水下では、粒径10 mmの礫は堆積する」という説明が最も適切といえる。

問4:正解3

<解説>
蛇行河川では、時間の経過とともに流路が湾曲の外側へ移動し、もとの流路の内側部分には砂やシルトなどの堆積物がたまっていく。こうした内側の堆積地形は「ポイントバー」と呼ばれ、さらに流路が離れると地表付近では植物などの有機物が堆積して土壌化が進むこともある。問題文中の地点Xは、当初は比較的粗い砂や礫が主体の堆積物が見られ、その後、流路の移動とともに細かい土粒子や植物由来の堆積物が上部に重なる形で地層が変化していく。最終的に、下から砂や礫、続いて細粒物質、最上部に植物由来の層という順序で重なるパターンが典型的である。

問5:正解4

<解説>
花こう岩(粗粒の鉱物がはっきり見える深成岩)、石灰岩(塩酸をかけると発泡することが特徴的な堆積岩)、チャート(非常に緻密で硬いシリカ質の岩石)、それ以外の火成岩や変成岩などを識別する際は、まず肉眼やルーペで粒の大きさや鉱物の有無を観察する(方法b)。次に質量と体積を測定して密度を調べ、粗粒かつ重い岩石なのか、軽い堆積岩なのかを大まかに判断する(方法c)。最後に塩酸をかけて発泡の有無を確認し、炭酸塩を主成分とする岩石を判定する(方法a)という手順が合理的である。こうした順序で各試料を区別すると効率的に正確な判定ができる。

問6:正解2

<解説>
枕状溶岩のように水中で溶岩が急冷される場合、外側(表面付近)は直接水に触れて冷却速度が速くなる。その結果、外側は結晶が細かく、内部ほどゆっくり冷却され結晶がやや大きくなる傾向がある。問題文で「表面に近い部分aは内部bよりも冷却速度が…」とある場合、表面付近が冷えやすいので「速い」、そして結晶が細かくなることを指摘する記述が適切といえる。

問7:正解2

<解説>
マグマの粘性は温度やSiO₂含有量に大きく左右される。玄武岩質マグマは温度が高くSiO₂が少なめで粘性が低く、逆に流紋岩質マグマはSiO₂が多くて粘性が高い。安山岩質マグマはこれらの中間的な性質を示し、温度は玄武岩質よりやや低く、粘性は中程度となる。問題文の表から、安山岩質の溶岩がおおむね1000℃程度で、玄武岩質よりは粘性が高く、流紋岩質ほどではない特性を示していることが読み取れる。そのため、「1000℃の安山岩質の溶岩」が条件に合致すると考えられる。

第2問

問8:正解2

<解説>
台風が近づくと、中心付近の気圧が低下し、その低気圧の“吸い上げ効果”によって海面は平常時より上昇しやすくなる。問題文では「1hPaの気圧低下によって海面が1cm上昇する」と仮定されているため、18時から21時にかけて名古屋港付近で気圧が一定量低下すれば、その分だけ海面の上昇量が見積もられる。観測上、台風の進路や等圧線の分布から名古屋港での気圧低下が相応に大きいと考えられ、その値を基に導かれる海面上昇量がもっとも妥当な値となる選択肢が適切だといえる。

問9:正解1

<解説>
表に示された各地点での海面変化量(下層部(a)の効果のみを考慮)を比較すると、大阪港は台風中心からの位置関係などにより、最初(18時)の段階では平常時より大きく低下しているが、後(21時)にはやや回復傾向を示している。一方、名古屋港は台風の進路上に近く、時間とともに吸い上げの影響が大きくなって顕著な上昇が記録されている。御前崎港はこれらの中間的な位置にあたるため、上昇量は名古屋ほど大きくないがプラスの値となっている。こうした変化のパターンを対応づけた結果、表のX・Y・Zがそれぞれ大阪港・名古屋港・御前崎港に対応する組合せが最も適切と考えられる。

問10:正解3

<解説>
地球温暖化に伴う雲量の変化は、さまざまなフィードバックをもたらすと考えられている。雲が増えると、太陽光をより多く反射して地表に届く量を減らし、地表の温度上昇を抑制する場合がある(負のフィードバック)。一方で、雲は地表から放出される赤外放射を吸収・再放出する働きもあるため、温室効果を増幅させる(正のフィードバック)可能性がある。そのため、「雲量が増加する」と同時に「赤外放射の温室効果も増加する」という二方向の作用が起こり得ることが指摘されており、問題文で示された組合せとしては、両方とも「増加」とする見方が妥当だと考えられる。

問11:正解1

<解説>
地球の平均気温は、大気中の温室効果ガスによって宇宙空間に放出されるはずの放射エネルギーが一部閉じ込められることで、実際よりも高く保たれていると考えられている。仮に温室効果が全く働かなかった場合、地球は赤外放射をそのまま宇宙に逃がしてしまい、平均気温が大きく低下すると推定される。実際にはさまざまな試算があるものの、温室効果がないと地球の平均気温は0℃前後やそれ以下になるとも考えられており、そのような説明がもっとも妥当な記述となる。

第3問

問12:正解2

<解説>
恒星はその生涯の中で、原始星期から主系列星期、さらに赤色巨星や白色矮星などへと変化していく。太陽は現在、水素を核融合反応の主な燃料として安定的にエネルギーを生み出す段階にある。これは一般に「主系列星」と呼ばれ、太陽はその段階に分類されると考えられる。

問13:正解2

<解説>
ビッグバン理論によれば、宇宙初期は非常に高温で、電子と陽子(あるいは水素の原子核)が結合できない状態が続いていた。その後、時間の経過とともに温度が下がり、誕生から約38万年が経過した頃に電子と原子核が結合して中性の水素原子が形成されたと考えられている。この現象は「宇宙の晴れ上がり」とも呼ばれ、現在観測される宇宙背景放射の起源とも関連が深い。

問14:正解4

<解説>
天体の画像(左図)に渦を巻いたような構造が見られる場合、中心部にバルジ(球状の盛り上がり)と明瞭な渦状腕をもつ「渦巻銀河」である可能性が高い。問題文の図にも明確に渦を巻いた形状が示されており、散開星団や球状星団、惑星状星雲とは異なる大規模構造が写し出されていることから、渦巻銀河と判断するのが適切である。

問15:正解1

<解説>
見かけの等級は、天体の明るさが大きいほど数値が小さくなる性質をもつ。また、同じ天体でも、観測時期によって見える大きさや明るさが変化する場合がある。問題文では天体Pを基準として、その面積や明るさの変化を比較し、天体Xの等級を推定する手順が示されている。2月15日時点の天体Xは面積が大きい(見かけの明るさが強い)ため、基準(20.0等)よりも等級が数値的に小さくなり、その具体的な値として最も適切なのは「18.5」だと考えられる。

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