2024年度 大学入学共通テスト 追試験 倫理・政治経済 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解2

<問題要旨> 下線部❶に関わって、古代ギリシアの思想家が「言葉(ロゴス)」をどのように用い、真理の探究や人々への説得をどのように位置づけたかを問う問題である。ソフィストやソクラテスなどの思想家が、弁論術(レートリケー)や真理探究をめぐってどのような立場をとったかを確認しながら、記述が史実や通説に合致しているかを判断する必要がある。

<選択肢> ①【誤】
「ソフィストの弁論術は聴衆の背後にある真実を覆い尽くすことを目的としていたうえで、多くの人々に積極的に伝えることが重視された」という記述は、史実のソフィスト観と合わない。ソフィストたちは、必ずしも「真実」を積極的に隠そうとしたり、逆に伝えようとしたりしていたわけではない。彼らは主に弁論術を用いた説得技術の教授を行い、真理よりも弁論の有効性を重んじたという見方が一般的である。この選択肢は「真実を覆い尽くす」と「多くの人々に伝える」の両方の主張がかみ合わず、内容も不自然であるため誤りといえる。

②【正】
ソフィストたちが各都市で教えた弁論術や知識は、人々に向けて説得を行う技術として大きく広まった。真理探究そのものを目的とするかどうかは議論があるが、彼らは「説得によって人々を動かす」ことが重要で、そのために言葉を洗練させ、市民を導いていったという歴史的背景がある。「都市(ポリス)の公共的な場で言葉を用い、多くの人々を説得する」という点が、当時のソフィストの活動を捉えるうえでも比較的整合的である。

③【誤】
「ソクラテスは、人々と対話するうちに、自分が人より善や神事に詳しいと思うようになった」とあるが、これは一般的な理解とは反対である。ソクラテスは対話によってむしろ自分の無知を自覚し、「自分は何も知らない」という姿勢をより強くしていったとされる。この記述はソクラテス像とかみ合わないため誤りと判断できる。

④【誤】
「神の言葉によって『ソクラテス以上の知者はいない』とされ、そこから人間が真実を追求することは無益だと自覚することが重要だと説いた」というが、史実のソクラテスはむしろ「自分は無知である」と自覚しつつも、絶えず真実(善や徳)を追い求める態度こそ大切だと説いた。したがって、「真実を追求することの無益さを説いた」というのは真逆の内容であるため誤りとなる。

問2:正解6

<問題要旨> 下線部❷に関連して、諸宗教や思想の場面において「言葉」がどのような役割を果たすのかを問う問題。選択肢として提示されたア・イ・ウ・エの文を読み比べ、それぞれがどんな宗教・思想や言葉の使い方を示しているかを検討し、正しい組み合わせを判断する必要がある。

<選択肢のア・イ・ウ・エ(本文中の要旨)>

  • ア:たとえば老子のいう「道」は人間の感覚で捉えられず、名づけられないゆえに「無」と表現される、といった趣旨。
  • イ:たとえば旧約聖書の預言者のように、神の言葉を媒介する存在が人々に神意を伝えた、といった趣旨。
  • ウ:たとえばバビロン捕囚などの歴史的背景を踏まえて、人々が神の啓示による救済を期待するようになった、といった趣旨。
  • エ:たとえばイスラームにおいて、信仰をあらわす行為として「信仰告白」や「五行」があり、それを言葉で表す意味が重要だという趣旨。

問題文から判断すると、アとイとエなど、正しくまとめられる文の組み合わせを探る形になる。

<選択肢> ① アとイ
【誤】二つの要素ではイスラームなどに関する記述が欠けており、全体を正しく説明しているとはいえない。

② アとエ
【誤】預言者の活動に関する部分(イ)が抜けているため、複数の宗教・思想を説明するうえで不十分となる。

③ イとウ
【誤】老子思想の「無」という概念(ア)やイスラームの信仰告白(エ)が欠けており、記述の要点をカバーしきれていない。

④ ウとエ
【誤】老子の「道」の説明(ア)や預言者による神の言葉(イ)の要素が抜け落ちており、複数の宗教的立場を網羅していない。

⑤ アとイとウ
【誤】イスラームの信仰告白や行為(エ)の視点が不足しており、やはり全体像が欠けている。

⑥ アとイとエ
【正】老子思想(ア)、旧約聖書的な神の言葉を伝える預言者(イ)、イスラームの信仰告白など(エ)が含まれ、複数の宗教・思想における言葉の働きを押さえている。したがって、選択肢のなかでも最も的確といえる。

⑦ アとウとエ
【誤】預言者の活動に関するイが抜けている。

⑧ イとウとエ
【誤】老子の「無」という概念(ア)が抜けている。

⑨ アとイとウとエ
【誤】設問の流れでは不要な要素まで含まれる場合もあり、四つすべてを合わせる必要性は指摘されていない。問題文の意図からも過剰といえる。

問3:正解3

問3:正解3

<問題要旨> 下線部❸について、引用された『荘子』の文章(資料1・2)の内容を整理し、「逍遙遊」「無用の用」「万物斉同」「心斎坐忘」など、荘子の特徴的な概念がどれに当たるかを判断する問題。資料1・2の文意から、「役に立たない(無用)」と思われるものの中にこそ大きな意義(用)がある、という荘子の主張を見極めることが問われている。

<選択肢> ア:逍遙遊
イ:無用の用
ウ:万物斉同
エ:心斎坐忘

問題文では、資料1では「広大な地面の中にこそ…」「無用が有用になる」との話が示唆され、資料2では「役に立たないはずの大木が…自由に成長し…」といった文意から「無用こそが却って大きな可能性をもつ」という荘子的発想が読み取れる。

① 資料1―ア 資料2―ウ
【誤】資料1が「逍遙遊」を直接示すわけではなく、資料2が「万物斉同」を説く内容ともいえない。

② 資料1―ウ 資料2―ア
【誤】資料1で強調されているのは大地や無用の認識についてであり、「万物斉同」の観点はそこまで前面に出ていない。また、資料2も「逍遙遊」とは言いづらい。

③ 資料1―イ 資料2―ウ
【正】資料1では「無用が分からないならば有用について語れない」「そこに残りつつも役に立たない地面が…」などといった内容から、「無用の用」を示唆する。一方、資料2では大木の話を通じて万物のそれぞれの在り方を認め、境界を超えて安らかに生きるというイメージが重ねられ、「万物斉同」の趣旨が読み取れる。両資料の内容に最も合致する組み合わせである。

④ 資料1―イ 資料2―エ
【誤】資料2を「心斎坐忘」とする根拠は見当たらない。大木の話はむしろ、万物の平等性をめぐる話と読める。

⑤ 資料1―エ 資料2―イ
【誤】資料1を「心斎坐忘」とするのは不自然であり、資料2を「無用の用」とするのも順序が逆になるうえに文意とも一致しない。

⑥ 資料1―エ 資料2―ウ
【誤】資料1が「心斎坐忘」だと判断する記述は薄い。

⑦ 資料1―ア 資料2―エ
【誤】いずれも文章の内容を正しく結びつけた根拠が乏しい。

⑧ 資料1―ウ 資料2―エ
【誤】「万物斉同」と「心斎坐忘」の組み合わせは、資料1・2の文脈からは外れている。

⑨ 資料1―エ 資料2―ア
【誤】同様に、両資料の具体的記述とは合致しない。

問4:正解1

<問題要旨> 下線部❹に関連して、引用された資料1(『新約聖書』よりイエスの言葉)と資料2(『スッタニパータ』より釈尊の言葉)を踏まえ、「神の国(あるいは涅槃など)はどう理解されるか」「そこに至るためには何が必要か」といった点を会話のなかで問う問題である。イエスや釈尊の教えを、当時の人々の生き方と照らして、どのように把握できるかを判断する。

<選択肢> a・b の組合せで示された内容について、「神の国」「輪廻の流れ」といった語りがどのように説明されているかがポイントになる。


a 「資料1にある神の国は、人間によって『福音』だと理解されている。当時の人々にとって身近な出来事の中で、神の国や理想像を思い描く場面がある。」
b 「この二つの教えの内容を踏まえると、神の国についても涅槃についても、人々がそれを身近に感じられる契機となりうる。」
【正】イエスの「からし種」のたとえは、人々が小さな種から神の国の広がりをイメージしやすいように説いたとされる。一方、釈尊の「激流を前に…」の説話では苦しみを抜け出す具体的な道筋を示し、人々が涅槃を目指すことを説く。その両方とも、人間が日常の延長で理想へ近づく可能性を示すものとして解釈でき、会話中のa・bそれぞれに合致する。


a 「資料1にある神の国は、人間の『試練』の場だと理解されている。」
b 「自らの修行によって激流を乗り越えれば、神の国や涅槃を実感できる。」
【誤】イエスのたとえでは「神の国」は試練の場というよりも、成長や広がりをイメージさせる対象として語られている。したがって、a の部分は正しくない。


a 「資料1にある記述は、輪廻における一切の苦からの解放を得る場として神の国が説かれる。」
b 「神の国や涅槃は、困難を克服した後に到達できるものと捉える。」
【誤】「神の国」と「輪廻の苦からの解放」は同一視されないのが通常の理解である。キリスト教において輪廻は前提とされていないため、a は不正確。また、資料1の「からし種」のたとえから直ちに「困難克服の後に到達する」とは読み取りにくい。


a 「資料1にある神の国は、解脱としてブランマーン(梵)と合一した境地である。」
b 「神の国の理想像を、現実的な状況で起こりうる出来事と考える。」
【誤】a について、神の国のイメージを「梵我一如(ブラフマンとの合一)」に重ねるのはヒンドゥー思想的な解釈であって、新約聖書の文脈とは異なる。よって誤り。

第2問

問5:正解4

<問題要旨> 近世日本の儒学者たちが、それぞれどのような思想背景や活動を展開し、社会に対してどのような評価を下したかを問う問題である。選択肢に挙げられる藤原惺窩・熊沢蕃山・林羅山・新井白石など、江戸時代を中心とする儒学者の事績を史実に即して読み解き、記述の正誤を判断する必要がある。

<選択肢> ①【誤】
「初めは僧侶であった藤原惺窩が、仏教の世間的あり方を否定したうえで、儒学者になってもなお平安を説いた」という趣旨だが、藤原惺窩は確かに僧籍出身ではあるものの、仏教全般を一律に否定したわけではない。また「僧侶をやめてもなお世間的安定を説いた」という説明も史実を単純化しており、やや齟齬があると考えられるため不適切である。

②【誤】
「熊沢蕃山が、貧しい民衆の救済を目的に山林を伐採し、新田開発を積極的に推進した」とあるが、熊沢蕃山は『大学或問』などで農業や政治のあり方を論じたが、単に山林を伐採して新田開発を進めたというよりは、農政の政策論を唱えつつ民本主義的視点で封建体制を批判した部分が大きい。したがって、この選択肢の説明はやや一面的で、正確とはいえない。

③【誤】
「林羅山が、朱子学の墨守を余儀なくされてかたくなな姿勢になり、また統治者に近侍して人々を統制する学説を主張した」との趣旨だが、林羅山は江戸幕府に仕え、朱子学の立場を重んじたことは確かである。しかしそれを「人々の生活を形だけの道徳で統制しようとした」と断じるのは解釈が偏っており、資料の説明と完全に合致しない。

④【正】
「新井白石が、朱子学の立場を重んじながらも西洋の情勢を視野に入れ、キリスト教世界との比較を通じて日本のあり方を考察した」というのは、比較的よく知られた史実に合致する。新井白石は『西洋紀聞』などで海外情報を集め、幕政への政策提言も行ったことで知られる。この点は選択肢の説明と整合的であり、最も適切といえる。

問6:正解2

<問題要旨> 日本思想における自然観や世界観がどのように形成されてきたのかを問う問題。選択肢として「ア」「イ」の文言が提示され、それぞれが日本的伝統のなかで自然・霊的世界をどう捉えていたかを判定することが求められる。

<選択肢> ① ア【正】 イ【正】
【誤】両方を正しいとする立場だが、イの文言には問題があるため、この組み合わせは成立しない。

② ア【正】 イ【誤】
【正】アの「里山や海辺が死者の霊魂が他界に通じる場と考えられた」という観点は、日本の伝承や信仰(たとえば他界信仰など)にも照らして正しいといえる。一方、イの「天上の世界である高天原は地上とは断絶し、田畑や家屋のような人間的営みが存在しない」とする主張は、神話上の描写などから必ずしも「隔絶されている」とは断定しがたく、単純化しすぎで誤りとみなせる。

③ ア【誤】 イ【正】
【誤】アが誤りだとする根拠は薄く、イだけ正しいとする説明も前述の理由から成り立たない。

④ ア【誤】 イ【誤】
【誤】両方を誤りとするのは、日本の他界観や高天原の捉え方としては妥当性に欠ける。

問7:正解5

<問題要旨> 日蓮が説いた仏教の教えを踏まえ、「現世における理想世界の実現を目指した仏教者としての日蓮」がどのように活動や思想を展開したかを問う問題。ア・イ・ウの三つの説明文を吟味し、それらが実際の日蓮の行動原理や経典理解に合致するかを判断する。

<選択肢> ① ア
【誤】アだけを採用すると、日蓮が国難克服のために実践を行った全体像を示すには不足している。

② イ
【誤】イだけでは、日蓮に関して史実として疑問の残る部分があるうえ、文脈上も不十分である。

③ ウ
【誤】ウだけを採用する形も、日蓮の現実社会への働きかけという側面を十分に説明できていない。

④ アとイ
【誤】イの内容が、日蓮の教えや史実と合致しない部分があるため、正しい組み合わせにはならない。

⑤ アとウ
【正】アにある「日蓮が各種の経典を踏まえて国難を打ち立てる方途を論じた」という点は、史実の日蓮が幕府や時の権力層に対して国を護る教えを説いたことと合致する。またウの「『法華経』こそが最高の経典であり、国家安寧を願う人々を救済するために教えを広めた」という趣旨も、日蓮の中心的な活動と一致する。この二つを合わせることで、日蓮の現世救済への実践姿勢が捉えられる。

⑥ イとウ
【誤】イに疑問の残る部分があり、日蓮の実践の本質を外している可能性がある。

⑦ アとイとウ
【誤】イの問題点を含んでしまうため、三つすべてを合わせるのも不適切といえる。

問8:正解1

<問題要旨> 引用された資料から「秩序」という概念をめぐって、宇宙にすでにある秩序と人間が創り出す秩序とがどのように関係しているかを、会話文中の a・b・c・d の補充を通じて考察する問題である。どの選択肢の組み合わせが資料の内容および会話の展開に適合しているかを判断することが求められる。

<選択肢> ① a―ウ b―ア c―イ d―エ
【正】宇宙の秩序と人間の秩序がそれぞれ対立するものでなく、相互に影響を及ぼし合うという趣旨が会話や資料に見られる。a は「宇宙の秩序に言及する箇所」、b と c は「人間が取り込む・創り出す秩序」の話題、d は「それらをつなぐ手掛かり」などと結びつけられており、全体が自然に通じる組み合わせになっている。

② a―ウ b―ア c―エ d―イ
【誤】c と d の対応が逆転しており、会話の流れで説明しにくい不整合が生じる。

③ a―エ b―フ c―ア d―ウ
【誤】そもそもフという選択肢が本文に存在するか不明瞭であり、加えて他の組み合わせも論旨からずれている。

④ a―エ b―イ c―ア d―ウ
【誤】こちらも会話の文脈から見て、b・c の対応がずれており、人間が生み出す秩序と宇宙の秩序をつなぐ流れを正しく反映していない。

第3問

問9:正解1

<問題要旨> 下線部①に関連して、フランシス・ベーコンが『ノヴム・オルガヌム』において提示した「イドラ(偶像)」の概念をふまえ、どのような先入観・偏見が具体例として該当するかを問う問題である。ベーコンは人間の認識を妨げる偏見を「種族のイドラ」「洞窟のイドラ」「市場のイドラ」「劇場のイドラ」に分類した。本問では選択肢に示された事例をそれぞれどのイドラにあてはめるかを判断する必要がある。

<選択肢> ①【正】
「新しいもの好きな個人が、新しいものはすべて素晴らしいと思い込みがちになる」という例は、その人固有の経験や個人的傾向(洞窟のイドラ)に基づく偏りを示している。洞窟のイドラは個人の性癖や嗜好、育った環境に起因する先入観を指すため、記述と合致する。

②【誤】
「友人の言だから間違いない」と思い込む誤りを「種族のイドラ」としているが、むしろ個人的な対人関係の偏りに基づく判断(洞窟のイドラ)に近い側面がある。したがって、ここで「種族のイドラ」として分類するのは不適切である。

③【誤】
「皆が言っているから正しい」という考え方は、多数派の意見に無批判に従う誤りであり、市場(マーケット)のイドラに近い。「言語が不適切な使用をされることによる誤り」という説明とも合致しにくいため、ここでは当てはまらない。

④【誤】
「占いが当たったからといって絶対だと思い込む」のを「劇場のイドラ」としているが、劇場のイドラとは権威ある学説や流行思想を盲信する誤りなどを指す場合が多い。占いへの盲信の例を安易に「劇場のイドラ」とするのは正確性を欠く。

問10:正解4

<問題要旨> 下線部②に関連して、キルケゴールが「自己の実存」についてどう論じたかを問う問題。キルケゴールは主体的真理や実存的飛躍、あるいは信仰による自己の深まりなどを論じ、客観的真理とは異なる主体的・内面的なあり方を重視した。提示された選択肢のうち、キルケゴールの思想を適切に表現しているかが鍵となる。

<選択肢> ①【誤】
「神と自己を認める宗教的存在を経て社会的存在を乗り越えた先に、美的・倫理的段階を総合する」との趣旨だが、キルケゴールの段階論(美的・倫理的・宗教的)を正しく踏まえきれていない記述が見られ、抽象的な表現でありながら核心を外している。

②【誤】
「自己の肉体が物体ではなく、意識をもつ身体として生きる世界を体感する」という趣旨だけでは、キルケゴールが説く主体的真理や実存の飛躍を十分に表していない。身体性の意義を述べるだけでは不十分であり、具体的な実存の主張に合致しない。

③【誤】
「死や勇敢な状況に直面した際の経験を通じて自己を超える超越者に出会い、愛はかかる戦いである」といった表現は、ニーチェや他の思想との混同があるようにも見え、キルケゴール独自の「主体的真理」の捉え方とは異なる。

④【正】
「理性上の抽象的真理とは異なり、『私にとって真理である』ような主体的真理の重要性を説いた」という趣旨が、キルケゴールの実存論的思考を最も的確に示している。彼は客観的・普遍的真理よりも、主体的・内面的な自己のあり方を大切にした点で特徴的だからである。

問11:正解2

<問題要旨> 下線部③に関連して、ホルクハイマーとアドルノが主張する「近代合理性」や「啓蒙の弁証法」への批判を要約し、提示されたア・イ・ウの三文を正しく組み合わせる問題。彼らは、合理性が人間の主体性を奪い、自然や社会を支配する道具的手段となることを警戒した。選択肢は、ア・イ・ウのどれが誰の主張を説明しているか、また何が誤りなのかを見極めることが必要となる。

<選択肢> ① ア正 イ正 ウ誤
【誤】ウが誤りの設定だとすると、合理性や批判理論に関する本来の文脈とずれる可能性が高い。

② ア正 イ誤 ウ正
【正】アの「人間が自由な主体となるために理性を行使してきたが、かえって主体性が逆転し拘束されている」という趣旨は、ホルクハイマーとアドルノの「道具的理性」批判に近い。イが誤りとされる理由としては、近代科学の進展を一面的に肯定する内容などが彼らの批判対象と合致しづらい点がある。ウが「既存社会を合理的に組織するあり方を批判した」という主張は、彼らの啓蒙批判と共鳴するため、正しいといえる。

③ ア正 イ正 ウ誤
【誤】選択肢①と類似の組み合わせであり、イを正とする根拠が乏しく、問題文の意図から外れる。

④ ア誤 イ正 ウ正
【誤】アを誤りとする根拠が明確でなく、道具的理性批判に関わる彼らの思想を十分に説明していない。

⑤ ア誤 イ正 ウ誤
【誤】同様に、アを誤りと断ずる記述は不自然である。

⑥ ア誤 イ誤 ウ正
【誤】アを誤りに設定するのが不合理で、問題文との対応も取りづらい。

問12:正解2

<問題要旨> 下線部④に関連して提示された資料1(パース『プラグマティズム』)と資料2(子ども哲学に関するテキスト)を基に、「哲学対話の目的」や「個人と集団での思考・対話の意義」をまとめる問題。選択肢として a に入る記述・b に入る記述を正しく組み合わせ、それぞれが資料の主張と会話の流れに適合しているかを判断する。

<選択肢> ① a―ア b―ウ
【誤】a を「個人として考えるときに自分自身と対話する」という表現、b を「多様な価値観の対立を調整する」という方向性でウにあてはめても、資料の内容との対応が十分でない。

② a―ア b―エ
【正】a の「人間は個人として思考するときにも自分自身と対話する」点と、b の「哲学対話を通じて多様な意見を尊重し合い、意見をより強固にしていく」という点が、資料1・2が論じる哲学対話の目的によく合致する。すなわち、内面的な自己対話(a)と集団的な合意形成や思考の深化(b)の両面が、正しく対応している。

③ a―ア b―オ
【誤】オの文意が「合意形成を円滑に実現するために、同じ意見を持つ参加者を中心に対話の場を作る」という内容で、むしろ多様な対話を促す考え方とそぐわない。

④ a―ア b―カ
【誤】カの文言が示すのは「意見をまとめることが新しい自分を作る」というやや限定的な表現であり、資料の主張をカバーしきれていない。

⑤ a―イ b―ウ
【誤】a をイとする場合、「人間はどこまでも一人だけで思考する存在」という含みが強く、資料の“対話的”な趣旨にそぐわない。

⑥ a―イ b―オ
【誤】いずれも対話観や合意形成の説明と噛み合いにくい。

⑦ a―イ b―カ
【誤】同上。a と b いずれも資料の内容とずれる。

⑧ a―エ b―カ
【誤】a としてエを採用すると、「さらに集団として対話を通してより高次の人格を備える」という文意になり、個人としての内面対話の要素が薄れてしまうため不適切。

第4問

問13:正解2

<問題要旨> 下線部⑥(会話中では④と示されている)に関連して、心理学における「適応機制」の説明例を提示し、その中から最も適切なものを選ばせる問題である。ベースとなる概念には、たとえば「投射(投影)」「昇華」「置き換え(転移)」「逃避」「退行」などがあり、それぞれがどのような具体例として示されているかを見きわめる必要がある。

<選択肢> ①【誤】
「うまくいかなかった原因を相手に押しつけて言い訳をし、自分が相手を嫌っていたと気づかない」のを「昇華」とするのは不適切。むしろ、ここで描かれているのは「投射(投影)」に近い内容であり、「昇華」とは欲求不満を社会的に望ましい形に転化することを指すので合致しない。

②【正】
「うまくいかなかったとき、他人に八つ当たりして欲求不満を行動に転化する」のを「近道反応(または置き換え)」と呼ぶ。これは心理学の基本的な適応機制の一例で、直接の原因ではない対象に不満をぶつける八つ当たり行動がここに該当する。

③【誤】
「社会的価値のあるものへ欲求を置き換える」ことは、一般に「昇華」と呼ばれる。ここを「投射」というのは誤用であり、「投射」とは自分の内面の感情や欠点を他者に帰属させるメカニズムを指す。

④【誤】
「自分は間違っていないはずだ、と子どものように抵抗する」のを「失敗反応」と呼ぶのは不自然。心理学的な用語において「失敗反応」は別の文脈で使われる場合が多く、ここでの例には合致しない。

問14:正解2

<問題要旨> 下線部⑨(会話中では⑥に相当)に関係して、終末期医療におけるホスピスやリビング・ウィルなどの制度・施策を正しく説明しているかを問う問題。ア・イ・ウの内容を正誤組み合わせの形で確認し、終末期医療の概念が正しく把握されているかを判断する。

<選択肢> ア:病気に伴う身体的・精神的苦痛を取り除く緩和ケアを、終末期の患者に提供する施設としてホスピスがある
【正】ホスピスは、治癒を目的としない終末期ケアを重視する医療施設の一形態として、患者の苦痛緩和などを行う場であるため、これは正しい。

イ:生命維持治療や苦痛緩和の処置などについて、終末期にどうするかをあらかじめ意思表示しておく文書をリビング・ウィルという
【正】リビング・ウィル(生前の意思表示)は患者自身が「どのような延命処置を望むか」をあらかじめ明確にしておく文書であり、イも適切な説明である。

ウ:終末期の患者を苦痛から解放するため、患者の要請があれば致死薬を投与する行為は、どの国や地域でも法的に認められていない
【誤】オランダやベルギーなど一部の国では医師による安楽死(致死薬投与)が法的に認められている。この記述が「どこも認めていない」と断言するのは誤りとなる。

以上から、アとイが正、ウが誤となるのが正解である(選択肢2)。

問15:正解4

<問題要旨> 下線部⑦に関連し、哲学者 G.E.M.アンスコムの議論(「二重結果原理」など)をもとに、「原因とはどのようなものか」や「意図の判断」がどのように位置づけられるかを確認する問題。提示されたア・イ・ウの文を組み合わせ、その正誤を判別する形式となっている。

<選択肢> ①【誤】
ア・イ・ウの組み合わせにおいて、ここではアとイが両方正しいなどという前提が説明文と合致しない場合が多い。

②【誤】
同様に、アが正・イが誤・ウが正という組み合わせも本文の要旨と齟齬が生じる場合がある。

③【誤】
ア正・イ正・ウ誤というパターンも、アンスコムの意見と資料の内容を十分に踏まえきれていない。

④【正】
「アが誤」「イが正」「ウが正」といった組み合わせが、アンスコムの人間行為や意図に関する議論と対応する。具体的には、アが提示している定義や立場が資料から外れているか、または一面的な理解に陥っているのに対し、イとウが資料の論旨をカバーしていると判断できる。この構成が最も自然といえる。

(※実際の本文では、ホルクハイマーやアドルノに関していた論点にも類似の整理があるが、本問ではアンスコムに焦点が当てられているようである。)

問16:正解3

<問題要旨> 行為の是非や意図をどう考えるかについて、二重結果原理の板書や会話を参照しながら、「どのような条件下で行為が許容されるか」「意図と結果の関係をどう判断するか」を問う問題。選択肢の中に、二重結果原理を誤解したり単純化したりした記述が混在しているため、最も筋の通ったものを探る必要がある。

<選択肢> ①【誤】
「二つの行為の意図が違っていても、結果が同じならば片方だけが許されて他方が許されないことはない」というのは二重結果原理を単純化し過ぎており、実際には意図の差が判断上重要な意味をもつ。

②【誤】
「女性を積極的に管理職へ登用する制度は、男性の昇進を妨げる意図はないから二重結果原理で正当化できる」とする内容。これだけで二重結果原理の条件をすべて満たしていると断定するのは飛躍があり、問題文の文脈とも合致しにくい。

③【正】
「つらい治療を避けられる(良い結果)」と「治療を避ければ死期が早まる(悪い結果)」を同時に生じさせるとしても、二重結果原理の条件(たとえば良い結果が悪い結果を意図的に狙ってはいないこと、悪い結果が避けられない副作用であること等)を満たせば、許容される場合があるという考え方。問題文にもあるように、複数の結果を秤にかけて判断することが二重結果原理の核心である。

④【誤】
「人の意図ははっきり分からないかもしれないが、それでも行為を正当化できるかを判断する基準に疑いはない」とするのは、二重結果原理をあまりに絶対的に捉えすぎている。実際の倫理議論では、意図の判定は難しく、その正当性には多くの検討が必要となる。

第5問

問17:正解6

<問題要旨> 下線部①に関連して、日本の政府統計をもとに「非金融資産・金融資産・正味資産」などの用語を整理し、提示された表(資産・負債項目)に当てはまる語句を正しく組み合わせる問題である。ノート中の空欄ア・ウには、経済指標を表す用語(フローかストックか、対外純資産か外貨準備かなど)と、最終的な資本の形態(総資産、正味資産など)をあてはめることが要求される。

<選択肢> (問題文では①~⑧まで示されていると想定)

①【誤】
「フロー/イ/対外純資産/ウ/総資産」のような組合せだが、非金融資産・金融資産を合わせたものが「総資産」ならば、それが「フロー」とはかみ合わない。さらに「対外純資産」は海外との貸借関係を示す用語であり、表の文脈とはややずれている。

②【誤】
「フロー/イ/外貨準備/ウ/正味資産」という形をとっても、外貨準備は国の外貨建て資産の一部に過ぎず、非金融資産と金融資産の合計や正味資産との関係を説明できない。

③【誤】
「フロー/イ/外貨準備/ウ/総資産」のような組合せの場合、「フロー」は期間的な指標であるのに対し、ここではストック概念を扱っている。正味資産や総資産がストックなので、フローとストックの混同が生じる。

④【誤】
「フロー/イ/対外純資産/ウ/正味資産」という組合せは、やはりフロー指標とストック指標を混在させている点が問題となる。さらに対外純資産は国家全体の海外との資産・負債差を示す別文脈であり、政府統計の総資産・正味資産との結び付きが薄い。

⑤【誤】
「ストック/イ/対外純資産/ウ/総資産」という組合せだと、確かにストックという概念は合致するものの、対外純資産の範囲が大きく異なり、ノートの説明(非金融資産+金融資産=総資産、総資産-負債=正味資産)に沿わない。

⑥【正】
「ストック/イ/外貨準備/ウ/正味資産」という形ならば、まず「ストック」は資産・負債の残高を示す概念であり、期間ではなくある時点で計測される量である点で表に合致する。また、金融資産の一部として外貨準備が含まれる場合があり得るが、ノート文脈では必ずしも直接「外貨準備」とは書かれていなくても、対外的な金融資産の一要素として想定できる。さらに総資産から負債を差し引いたものが正味資産(あるいは純資産)となる記述が表にも合う。したがって、最も妥当といえる。

⑦【誤】
「ストック/イ/外貨準備/ウ/総資産」という組合せをとると、非金融資産と金融資産の合計=総資産という流れは合うが、「負債を除いた残りが正味資産である」というノートの説明が反映されない。このため不十分である。

⑧【誤】
上記いずれにも当てはまらない組合せである場合、ノートの説明と齟齬を生じる可能性が高い。

問18:正解2

<問題要旨> 下線部②に関連して、「循環型社会」を形成するための具体策を示した図が提示される。その図の空欄ア・イ・ウに当てはまる行為や活動例を、さらに a・b・c の説明(ペーパーレス化など)と組み合わせて、最も適切な形を選ぶ問題である。生産・消費・リサイクル・廃棄などを経た資源循環のイメージを踏まえ、各空欄に該当する施策や取り組みを考慮して判断する。

<選択肢> (問題文では①~⑥などの組み合わせが示されていると想定)

①【誤】
アを「生産工程の効率化」、イを「サーマルリサイクル」、ウを「適正処分」、さらに a・b・c の例をずれた形で対応させるパターンかもしれないが、ペーパーレス化やフリーマーケット活用と結びつきにくい。

②【正】
アの「天然資源の投入抑制」、イの「サーマルリサイクル(熱回収)」、ウの「最終処分(埋め立て)」を図にあてはめると、一連の循環の流れが自然に成立する。さらに a「電子メールの活用によるペーパーレス化」、b「着なくなった子供服を他者に譲渡」、c「ペットボトルの再生繊維化」などの活動例も、それぞれリデュース・リユース・リサイクルに該当し、図との関係が適切といえる。

③【誤】
同じくア・イ・ウの位置づけや a・b・c の対応が合わないもの。たとえば b と c を逆にすると、循環型社会としてのロジックが崩れる。

④【誤】
a・b・c の内容がどれもリデュース・リユース・リサイクルに当てはまるのが基本であるが、それを誤って配置すると、図の流れを正しく反映できない。

⑤【誤】
アとイを逆にすると、天然資源の抑制や再利用の順序が狂ってしまい、図の流れと噛み合わない。

⑥【誤】
同様に、いずれかの行為と活動記述の対応に矛盾が生じるため、正解とはならない。

問19:正解3

<問題要旨> 下線部③に関連して、財政再建や国債発行などの経済政策に関する記事文面が提示され、そこに空欄ア・イがある。アには「特例国債を発行して消費需要を刺激する」か「歳出削減と増税で財政健全化をめざす」かなどの文章が入り、イには「国内」「国外」などの語句が入る。組み合わせとして最も筋の通った文章を完成させるのが課題である。

<選択肢> (問題文では①~④の選択があると想定)

①【誤】
アを「特例国債を発行して行う所得税減税により消費需要を強力に刺激」、イを「国内」とすると、記事の内容が財政再建重視よりも景気対策優先となる。文脈から見て必ずしも合致しない可能性が高い。

②【誤】
アを「歳出削減と増税により基礎的財政収支を黒字化」、イを「国外」とするのは、記事中の論旨から外れやすい。国債や財政の議論で「国外」に言及するなら、対外公債や外債が話題になるが、提示された文脈とは合わない。

③【正】
アに「歳出削減と増税により基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化」と入れ、イに「国内」をあてはめると、記事内容で述べられる「日本国内での財政健全化策」がしっかり整合する。要旨としては「国債を無制限に出すのではなく、歳出削減と増税という形で財政再建を進める」考え方を主張する識者がいる、という流れに合致すると考えられる。

④【誤】
アを「特例国債を発行して行う所得税減税で消費需要を刺激」、イを「国外」と組み合わせる場合、記事の文脈がずれ、国内景気対策と国外情勢が混在して論旨が破綻しかねない。

問20:正解7

<問題要旨> 下線部④に関連して、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)などの多国間交渉とWTO(世界貿易機関)の多国間主義との関係について述べた会話文が提示される。空欄ア・イ・ウには、具体的な国名や経済体制(計画経済・ブロック経済など)や「貿易量が増加するか減少するか」の論点が入り、流れを読み取って最適な組合せを選ぶ。

<選択肢> (問題文では①~⑧まである想定)

①【誤】
「ア=アメリカ、イ=計画経済、ウ=増加/少」などのパターンは、対話文の流れからして米国が計画経済を推進しているわけではなく、不自然。

②【誤】
「ア=アメリカ、イ=ブロック経済、ウ=増加/多」なども、米国とブロック経済を結びつけるのはある程度歴史上の例もあるが、現代の文脈でFTA・EPAの文脈と合致するとは限らない。

③【誤】
「ア=アメリカ、イ=ブロック経済、ウ=増少」など多岐にわたる組み合わせの違いがあるが、会話中の「第二次世界大戦が起こった一因ともいわれるイ」の部分がブロック経済を指すなら、イ=ブロック経済は一見合いそうだが、そのあとの文脈との整合性を要確認。

④【誤】
「ア=シンガポール、イ=計画経済、ウ=増加/少」のような組み合わせも、シンガポールが計画経済というわけではなく、会話文で述べるシンガポールの市場経済とは齟齬が生じる。

⑤【誤】
「ア=シンガポール、イ=ブロック経済、ウ=増加/多」のパターンも、増加と多の意味づけが会話文の意図するところと外れている可能性が高い。

⑥【誤】
「ア=シンガポール、イ=ブロック経済、ウ=増大/少」のような形では、増大と少が混在し論旨が分裂するおそれがある。

⑦【正】
会話中で「第二次世界大戦が起こった一因ともいわれるイ」とあるくだりは、一般に保護主義の高まりやブロック経済化を指す場合が多い。よってイ=ブロック経済が自然。それに続いてアには「シンガポール」のようなFTAやEPAの先進的な締結国を挙げ、ウには「増加」あるいは「減少」の対比を会話文で設定していると読み取れる。結果的に「ア=シンガポール、イ=ブロック経済、ウ=増加」等の組み合わせが最も自然かつ会話の筋が通る。

⑧【誤】
他の組み合わせではイがブロック経済ではないなど、会話文で言及する歴史的背景と食い違いが生じる。

問21:正解6

<問題要旨> 下線部⑤に関連して、日本が経済協力・経済連携をどのように進めているかを取り上げる問題。空欄アには主な地域経済連合(EFTA・MERCOSUR・ASEANなど)の名称が入り、空欄イにはODA(政府開発援助)や国際医療活動などの説明文(d, e など)が入る。いずれを組み合わせると文意が通るかを確認する必要がある。

<選択肢> (おそらく①~⑥が提示されている想定)

①【誤】
ア=EFTA、イ=「内閣総理大臣の指揮監督下で国際的に活動する医師団による技術協力」などの場合、日本がヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)との協力ばかりを強調する形となり、メモ文中の「日本と諸外国の交流」と合致しづらい。

②【誤】
ア=EFTA、イ=「日本のODA(政府開発援助)を行う国際協力機構を通した技術協力や無償資金協力」の組み合わせも、文脈上「EPAを結んだ」という説明には必ずしもつながりにくい。

③【誤】
ア=MERCOSUR、イ=「医師団による技術協力」であっても、日本と南米共同市場との連携実績は限定的な面があるため、メモ文の広い文脈にそぐわない可能性がある。

④【誤】
ア=MERCOSUR、イ=「ODA(政府開発援助)」の組み合わせも同様に、テキスト中の説明が言及する「日本の周辺アジア地域との連携強化」を踏まえると若干ズレが生じる。

⑤【誤】
ア=ASEAN、イ=「内閣総理大臣指揮の医師団」という形は、ASEANとの経済連携協定は現実に複数存在するが、医師団活動の話との結びつけがやや唐突でメモ文の内容とは噛み合わない。

⑥【正】
アに「ASEAN」を当て、イに「日本のODA(政府開発援助)を行う国際協力機構を通じた技術協力や無償資金協力など」を入れると、記述にある「日本が経済連携を推し進める相手として複数国・地域がある」「先進国による発展途上国への援助をめぐって日本は一定の役割を担っている」という文脈と合致する。特に日本はASEAN諸国とのEPA締結を重ね、ODAを通じた協力関係を深めてきたため、メモ文の内容とも整合的である。

――以上の理由により、選択肢⑥が最適となる。

問22:正解3

<問題要旨> 下線部⑥に関連して、外国人との共生社会づくりでの課題を取り上げた問題。会話文で言及される空欄アには「デジタル・デバイド」か「バリアフリー」などの用語が入り、空欄イには「外国人労働者に社会保険が適用される」か「適用されない」かなどが示される。最も論理的に整合する組み合わせを探る。

<選択肢> (問題文では①~④と想定)

①【誤】
ア=デジタル・デバイド、イ=外国人労働者にも労働者災害補償保険が適用される(c)の組み合わせ。たしかに情報格差の問題と労災保険の適用は別個に考えられるため、会話文が想定する「市民講座で学んだ○○」がデジタル・デバイドなのかどうか要検討だが、文脈によっては不自然かもしれない。

②【誤】
ア=デジタル・デバイド、イ=外国人労働者には労働基準法が適用されない(d)というのは、実際には労働基準法など多くの労働法規は外国人労働者にも適用されるため、不正確な内容となる。

③【正】
アに「バリアフリー」を置き、イに「外国人労働者にも労働者災害補償保険(労災保険)が適用される」(c)をあてる組み合わせならば、会話文で「文字や言語による情報伝達を分かりやすくする」=バリアフリーの概念と結びつけられるし、外国人労働者も日本国内の法律により労災保険などの社会保険が適用される事実とも合致する。

④【誤】
ア=バリアフリー、イ=外国人労働者には労働法規が適用されない(d)とするなら、現行の法制度に反しており誤りである。

第6問

問23:正解3

<問題要旨> 下線部①(日本国憲法における天皇)に関して、提示されたア・イ・ウの記述が天皇の地位・権能をどのように説明しているかを問う問題である。日本国憲法では、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(第1条)と規定され、国事行為を行う際には内閣の助言と承認が必要(第3・7条など)。また、指名や認証など天皇が行う国事行為に関する条文がどのように整理されているかを確認して、正しい組合せを導く。

<選択肢> ① ア【誤】
「天皇は、国会の指名に基づいて、最高裁判所の長官を任命する」というのは憲法第6条に準拠した国事行為であり、ここは正しい。ただし、これが単独で問題文の選択肢としてどう扱われているか、他の文との組合せがポイントとなる。

② イ【誤】
「天皇は、憲法改正の発案や国民投票への発議を行い、その投票が有効多数ならば、国民の名で直ちに交付を行う」などという表現は正確性に難がある。憲法改正は国会の発議 → 国民投票 → 天皇が公布という流れであり、天皇が改正の是非を左右するわけではない。誤解を生じやすいため注意を要する。

③ ウ【正】
「天皇は、国政に関する権能を有しておらず、内閣の助言と承認に基づき国事行為を行う」というのは、第3条・第4条の規定に則った正確な説明である。天皇が行う行為はあくまで形式的・儀礼的であり、政治的機能を有するわけではない。

④ アとイ【誤】
アとイを両方正しいとする組合せにも問題がある。イの内容が憲法改正時の手続に関して誤った印象を与える可能性が高い。

⑤ アとウ【誤】
アに関する部分を正しいかどうか吟味したうえで、ウは正しいとしてもアが誤りであれば組合せとして成立しない。

⑥ イとウ【誤】
イが誤りなので、ウと組み合わせても不適切。

⑦ アとイとウ【誤】
同様に、イが誤りなので三つ合わせても不適切。

以上を踏まえると、「ウ」のみが正しく、問題文のパターンからすると③ウが正しい記述であり、それだけを選ぶ選択肢が正解となる。

問24:正解6

<問題要旨> 下線部②(PKO への部隊派遣人数)に関連し、メモ文に示された「紛争当事者」や「部隊派遣数ランキング」などから、空欄アには派遣された国・地域名(ソマリアかルワンダか)が、空欄イには「1990年・2002年・2022年」などの年があてはまる。そのうえで表1~3を見比べ、どの国が上位に来ているか、何年時点のデータかを整合的に組み合わせる必要がある。

<選択肢> ① ア=ソマリア、イ=1990年
【誤】ソマリア内戦が顕在化したのは1990年代初頭だが、PKOとの関わり方やランキング表の人数などとも突き合わせると、メモ中の記載と合うかどうか疑わしい。

② ア=ソマリア、イ=2002年
【誤】2002年時点にソマリア関連のPKO人数がどの程度だったか、表の上位国にソマリアが含まれるかが問題。必ずしも合致しない可能性が高い。

③ ア=ソマリア、イ=2022年
【誤】2022年時点でのPKO派遣国ランキングにソマリアが上位というのは不自然である(ソマリアは派遣先であっても、自国が派遣する側としてトップクラスになることは考えにくい)。

④ ア=ルワンダ、イ=1990年
【誤】ルワンダ内戦が激化したのは1990年代半ば(94年のジェノサイドなど)であり、PKO部隊が本格的に派遣されたのもその頃。数字との整合性が疑われる。

⑤ ア=ルワンダ、イ=2002年
【誤】同様に、メモの「2015年のPKO協力法改正」後の状況や南スーダンからの撤退などを踏まえると、2002年時点のデータがメモ文に直結しているのか明確でない。

⑥ ア=ルワンダ、イ=2022年
【正】近年、ルワンダはアフリカ地域で比較的大規模にPKO部隊を派遣している国の一つとして知られ、表の人数ランキングで上位にくることがある。メモの「2022年」も、最近のデータを表した可能性が高い。従って、この組合せが最も自然と考えられる。

問25:正解4

<問題要旨> 下線部③(日本の国会における制度)について、衆議院・参議院の設置目的や運営方法をどの程度厳密に守っているかを問う問題。国会の機能には法律案の審議、予算の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名などがあり、国会内部では委員会制度が設けられている。どの選択肢が日本国憲法と国会法の定めに合致するかを判断する。

<選択肢> ①【誤】
「衆議院と参議院に設置されている委員会は、法律案の審議のため必ず公開しなければならない」という規定はない。委員会は非公開になる場合もあり、一律に「必ず公開」は誤り。

②【誤】
「法律や命令の制定時に、その法律や命令が憲法に適合するかどうかを審査する憲法審査会は、衆議院と参議院に設置されている」と言っても、憲法審査会の具体的機能は発議などに関するもので、法律や命令を個別に合憲性判断する機関ではない。合憲性判断は最終的に裁判所の権限である。

③【誤】
「国会に対して政策の先端を探る研究会を内閣府に任せることができる」とするような内容は問題文と無関係か、誤解を招く。

④【正】
「衆議院及び参議院に委員会を設け、そこで法律案や条約、予算などの審査を行い、証人の出頭や記録の提出を要求することができる」という内容は実際の委員会制度に合致する。委員会には、必要に応じて証人喚問や文書提出要求を行える権限が認められており、これが国会審議を支える重要な仕組みである。

――よって、④が正解となる。

問26:正解4

<問題要旨> 下線部④に関連して、日本における差別解消のための関連法や施策の現状を問う問題。部落差別やヘイトスピーチ、アイヌ民族、障害者差別など、特定の集団に対する差別を解消するための立法や取り組みが進められてきた。どの選択肢が日本国内で実際に施行されている法律や措置を正しく示しているかを確認する。

<選択肢> ①【誤】
「部落差別が一連の対策によって完全に解消されたため、部落差別解消推進法が廃止された」というのは事実と異なる。部落差別解消推進法はまだ近年に施行され、解消が完了したわけではない。

②【誤】
「特定の民族や国籍の人々への差別的言動が強まる中、ヘイトスピーチ対策法(ヘイトスピーチ解消法、ヘイトスピーチ規制)を制定しなかった」というのは誤り。実際にはヘイトスピーチ解消法が2016年に施行されている。

③【誤】
「アイヌ文化振興法に代わって制定されたアイヌ民族支援法(アイヌ民族推進法)は、法律として初めてアイヌを先住民族と明記したものではない」との記述は事実誤認。2019年のアイヌ施策推進法でアイヌを先住民族と明記したことが大きな意義であった。

④【正】
「障害者雇用促進法で、職場における労働者の雇用義務が定められ、国および公共団体には義務づけられる」という内容は概ね事実に合致する。さらに民間企業にも一定数以上の従業員がいる場合は障害者雇用の義務が課される。ヘイトスピーチやアイヌ民族に関しては別の法律が整備されている。

――以上の理由により、④が正解。

問27:正解5

<問題要旨> 下線部⑥(人権保障の国際条約)に関連して、ア~ウの文が「世界人権宣言」や「国際人権規約」などに対してどのように位置づけられているかを問う問題。日本における批准状況や、国連における人権保障の歴史などを読み解き、もっとも正しい記述の組合せを選ぶ必要がある。

<選択肢> ① ア【誤】
「国連において、世界人権宣言の内容をより具体化して法的拘束力をもたせるものとして、国際人権規約が採択された」は正しいが、それが単独で提示されるかどうかが問題。

② イ【誤】
「国内法において、女性差別の撤廃などの予約条項が採択されなかったため、人種差別の撤廃については未だ条約締結していない」というのは事実に合わない。日本は人種差別撤廃条約を締結しており、留保があるかどうかは別問題である。

③ ウ【誤】
「日本は、国際人権規約の批准を長く拒んできたが、現在は未締結のままである」という内容であれば事実誤認。日本は国際人権規約をすでに批准している。

④ アとイ【誤】
両方が正しいわけではない。イに誤りが含まれるなら、この組み合わせも不適切。

⑤ アとウ【正】
アの「世界人権宣言を基盤として国際人権規約が採択された」こと、ウの「日本は国際人権規約の批准を通じて等しい教育の無償化(第13条)を進めているが、現在は高校無償化を実施済み」等が正しく言及されているなら、組合せとして適切である。
(※具体的な記述は問題文に拠るが、一般的にはア:国連で世界人権宣言を具体化→国際人権規約の採択、ウ:日本は各種人権条約を批准している、という流れが多い。)

⑥ イとウ【誤】
イが誤りなので、ウと合わせても不適当。

⑦ アとイとウ【誤】
イが誤りであるため不適切。

問28:正解3

<問題要旨> 下線部⑦(「南北問題」と「南南問題」)に関連して、ア・イ・ウの文章がそれぞれどういう内容かを確認し、どの部分が「南北問題」の説明か、「南南問題」の説明かを判断する問題。

  • 「南北問題」:先進国(北)と発展途上国(南)の経済格差・資源争奪など
  • 「南南問題」:新興工業経済地域(NIES)など発展が進む国と、最貧国(LDC)との間で格差が生じる問題

<選択肢> ① ア【誤】
「南北問題の歴史的背景として、南において植民地時代にモノカルチャー経済が形成された」とあり、それは正しいが、文章後半に他の記述がついてくるはず。単独でアを選ぶと不十分。

② イ【誤】
「南北問題についての開発支援は国連開発計画(UNDP)が発足し~」といった記述がイに含まれるなら、その一方で「南南問題」の説明がなされていない可能性がある。

③ ウ【正】
「南南問題が生じた背景として、新興工業経済地域(NIES)と後発発展途上国(LDC)との格差が拡大する」というのはまさに南南問題の核心。もしアとイが「南北問題」の説明を行い、ウが「南南問題」を取り上げる形ならば、この選択肢が正解となる。

④ アとイ【誤】
両方が正しい場合でも、ウを除外してしまうことで「南南問題」の説明を取りこぼす可能性がある。

⑤ アとウ【誤】
イを外してしまうと文章全体の流れが合わない。

⑥ イとウ【誤】
アを外すと「南北問題」の説明が漏れる可能性が高い。

⑦ アとイとウ【誤】
誤りの記述が混在する可能性があり、問題文の意図からは外れる。

第7問

問29:正解2

<問題要旨>
下線部⑦(知的財産権の意義)に関する会話文で、空欄アとイにそれぞれ対応する記述(a・b・c・d)が当てはめられている。著作物などの創作物を保護する際に、どのような権利の意義を重視するか、またその目的や効果(経済的メリット・文化的発展など)をどのように位置づけるかが問われる。

<選択肢> ①【誤】
(ア=a、イ=c)の組合せをとると、アに「ふつうの消費では希少財が減らない性質」といった内容がきてしまい、著作権保護を正しく示す文脈と整合しない。さらにイ=「プライバシー配慮で著作者の権利を保護する」としても本旨から外れる。

②【正】
(ア=a、イ=d)の組合せ。アは「ある公が消費しても他の人が利益を享受できる公的性質」を示唆しつつも、著作物の場合は市場取引を介すれば権利者に正当な利益が戻る性質を言及している。イに「文化発展という公益を促進する手段として著作権を保護する」旨が入り、人の創作意欲を高め社会的効果をもたらすという流れに合致する。

③【誤】
(ア=b、イ=c)のような組み合わせをとると、アが「市場取引を介することで利益を享受できる性質」という面を強調しながら、イに「プライバシー保護」を絡めてしまい、著作権保護の文脈とはずれた部分が生じる。

④【誤】
(ア=b、イ=d)など、別の組合せも会話文の流れとはかみ合わない可能性が高く、知的財産権の意義や文化的発展の観点からも適切とは言えない。

問30:正解8

<問題要旨>
下線部②(企業の生産拠点が海外移転した場合のA国輸出・輸入への影響)に関する問題。メモに示された a~d の効果(輸出代替・輸入代替・逆輸入など)と空欄ア・イ・ウ・エに「増・減」「黒字化・赤字化」などを当てはめ、最終的にA国の貿易収支がどう変動するかを考察する必要がある。

<選択肢>
(問題文では①~⑧でア・オ・カ・力…などを組み合わせている想定)

①~⑦【誤】
いずれも輸出代替効果・輸入転換効果・逆輸入効果などの大小関係や、貿易収支が黒字化か赤字化かの整合を欠く。また、メモ文の e・f が示す「どの効果が大きいかで貿易収支が増減する」点と噛み合わないものが多い。

⑧【正】
メモ中の空欄アを「減」、オを「少」、力を「赤字化」、カを「黒字化」などの組合せで整理するならば、輸出代替よりも輸入転換のほうが大きくなる場合は貿易収支が赤字化、逆に輸出代替が大きくなれば黒字化、という判断が成立する。最終的に「e:輸出代替効果>輸入転換効果 → 貿易収支オ(少)→黒字化」「f:輸入転換効果>輸出代替効果 → 貿易収支力(赤字化)」が理屈に合う形で説明できる。

――これらを総合すると、選択肢8が妥当といえる。

問31:正解6

<問題要旨>
下線部③(ベンチャー企業に関連する日本の制度)で、ア・イ・ウのうちどれが正しいかを問う問題。会社法改正によって新規設立条件が緩和されたり、大学の研究成果を活かして起業する動きが広がってきた文脈などがあり、その内容を踏まえて組み合わせを判断する必要がある。

<選択肢>
① ア【誤】
「会社法が施行され有限会社の新規設立が緩和された」というのは事実に近いが、ベンチャー企業の設立が容易になった点だけでは全体の文脈をカバーしきれない。

② イ【誤】
「大学の研究成果を応用して新商品を出す動きがある」は正しいが、それだけでベンチャー企業関連の制度整備全般を説明しているとは言い難い。

③ ウ【誤】
「ベンチャー企業に資金調達が難しい課題があり、新興株式市場で対応された」というのは正しい趣旨だが、単独では日本の制度全体をカバーするわけではない。

④ アとイ【誤】
両方が合わさっても、資金調達や新興株式市場などの点(ウ)が欠落する。

⑤ アとウ【誤】
大学の研究成果を応用したベンチャー企業の説明(イ)が不足する。

⑥ イとウ【正】
大学の研究成果を活かし、新商品を出すベンチャーが増えている点(イ)と、資金調達のために新興株式市場の整備が進められた点(ウ)の両方が、日本のベンチャー企業の文脈と合致する。したがってこれら2つを合わせるのが最も適切である。

⑦ アとイとウ【誤】
アの内容を加えてしまうと不要な記述や微妙な誤差が混じり、設問が求める本質とはずれる。

問32:正解3

<問題要旨>
下線部④(イノベーション支援策)に関して、会話文にある空欄ア・イへ「広域連合(や特区)」や「テクノクラート(やリスキリング)」などを当てはめ、産業活性化を促進するための具体的手段を論じている。どの組合せが最も自然かを判断する問題である。

<選択肢>
① ア=広域連合、イ=リスキリング
【誤】
「広域連合」は自治体連携の文脈で使われる場合が多いが、ここでの会話文はイノベーション特区などを念頭に置いている可能性が高い。さらにイに「リスキリング」がきても、会話文の流れと必ずしも噛み合わない。

② ア=広域連合、イ=テクノクラート
【誤】
同様に、「広域連合」で特区に近い話がすべてカバーできるとは限らない。テクノクラートは技術官僚を指す言葉だが、会話中で「職業技能の学び直し」を言及する部分に当てはまるかどうか疑わしい。

③ ア=特区(特別区域)、イ=リスキリング
【正】
会話文でXが「一定の地域に限定して規制の特例措置を認める」と述べているのは「特区」のイメージに近い。一方Yが「職業技能の学び直しが必要になる」という話をしているところで「リスキリング」という語を当てると自然に繋がる。よってこの組合せがもっとも適切。

④ ア=特区(特別区域)、イ=テクノクラート
【誤】
テクノクラートは官僚エリート層などを指す場合が多く、会話文で言及される「社会の技術革新への対応」としてはやや別方向。リスキリングの方が適切である。

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