2025年度 大学入学共通テスト 本試験 倫理・政治経済 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解①

<問題要旨> 本設問は、様々な宗教や思想家による人間の望みや欲望についての理解度を問う問題です。それぞれの思想が人間の欲望をどのように捉えているかを正確に把握しているかが重要となります。

<選択肢> ①【正】アは「旧約聖書の十戒では『隣人の家を欲してはならない』と定めており、人間が望むままに他者の所有物を欲しがらないよう戒めている」と述べており、これは正しい記述です。旧約聖書の十戒には、「あなたの隣人の家を欲してはならない」という戒めがあり、これは他者の所有物への欲望を抑制するよう促すものです。イは「イスラームでは、個人の欲望を心から消し去るため、俗世を離れてただひたすら神への信仰を追求することこそが価値ある生き方とされている」と述べていますが、これは誤りです。イスラームは俗世を完全に否定するものではなく、現世での公正な生活も重視します。ウは「荀子は、人間の欲望に基づく行為を人為的だと批判し、欲望を抑制して慎み深くし、聖人の定めた礼に従うことを説いた」と述べていますが、これは誤りです。荀子は人間の欲望を否定せず、むしろそれを適切に導き、社会秩序を維持するために「礼」の重要性を説きました。欲望そのものを「人為的だと批判し、欲望を抑制する」という点は荀子の思想とは異なります。したがって、アのみが正しい記述であり、その組み合わせである①が正解となります。

問2:正解④

<問題要旨>

仏教における「苦」の思想、特に四苦八苦の具体的な内容の理解を問う問題です。それぞれの「苦」が何を意味するのかを正しく把握しているかがポイントとなります。

<選択肢>

①【誤】

愛別離苦(あいべつりく)とは、愛する人やものと別れることの苦しみを指します。記述にある「他の人と区別することになり、万人と平等な関係を築くことができなくなること」は、愛別離苦の直接的な意味ではありません。

②【誤】

怨憎会苦(おんぞうえく)とは、怨み憎んでいる相手と会わなければならない苦しみを指します。記述にある「怨みや憎しみを向けられることを恐れるあまり、人と会い関係を持つことが難しくなる苦」は、怨憎会苦の直接的な意味とは異なります。

③【誤】

求不得苦(ぐふとくく)とは、求めるものが手に入らない苦しみを指します。記述にある「特定の身分に生まれた者でない限り、解脱への道は求めても得られないという苦」は、求不得苦の意味内容と異なります。また、仏教は基本的にカースト制度のような身分制度を否定し、万人の解脱の可能性を説きました。

④【正】

五蘊盛苦(ごうんじょうく)とは、人間の存在を構成する五つの要素(色・受・想・行・識)が仮に和合して成り立っている我々の心身の活動そのものが、無常であり、苦の源泉であるという考え方です。記述の「我々の身体と心が活動し続けていること自体が苦の源泉であることを表している」は、五蘊盛苦の主旨を正しく説明しています。

問3:正解③

<問題要旨>

キリスト教における原罪思想に関する記述の正誤を判断する問題です。旧約聖書の内容、パウロの思想、アウグスティヌスの思想についての正確な理解が求められます。

<選択肢>

ア【正】

旧約聖書の「創世記」には、最初の人間であるアダム(とエバ)が神の命令に背いて禁断の果実を食べ、その結果エデンの園から追放された物語が記されています。このアダムの罪が全人類に及ぶ根源的な罪として「原罪」と呼ばれるようになったという記述は、キリスト教の伝統的な理解と一致しており、正しいです。

イ【誤】

パウロは、人間が自力(律法の実践)では罪から逃れられないことを自覚し、イエス・キリストへの信仰によってのみ義とされ救われる(信仰義認)と説きました。隣人愛は信仰から生まれる重要な実践ですが、原罪を「贖う」直接的な手段として隣人愛の実践を第一に説いたわけではありません。パウロの救済論の中心は、キリストの贖罪の死と復活を信じる信仰にあります。したがって、記述はパウロ思想の強調点を正確に捉えていません。

ウ【正】

アウグスティヌスは、原罪を負った人間は自力では善を為し得ず、神の無償の「恩寵」によってのみ救われると説きました(恩寵説)。また、その救済は地上における神の国である「教会」を通じて与えられるとし、カトリック教会の権威を理論的に基礎付けました。この記述はアウグスティヌスの思想を正しく説明しています。

(正誤の組合せの選択肢)

①ア正 イ正 ウ正 【誤】

②ア正 イ正 ウ誤 【誤】

③ア正 イ誤 ウ正 【正】

④ア正 イ誤 ウ誤 【誤】

⑤ア誤 イ正 ウ正 【誤】

⑥ア誤 イ正 ウ誤 【誤】

⑦ア誤 イ誤 ウ正 【誤】

⑧ア誤 イ誤 ウ誤 【誤】

問4:正解④

<問題要旨>

古代ギリシアの思想家エピクロスと、仏教の開祖ブッダの快楽や欲望に関する思想を比較し、その内容を正しく理解しているかを問う問題です。資料からそれぞれの思想の特徴を読み取り、選択肢と照らし合わせる必要があります。

<選択肢>

①【誤】

エピクロスは、欲望を抑え、精神的な快楽(アタラクシア:魂の平静)を追求することが幸福であると考えました。「快楽から解放されて生きる」のではなく、質の高い快楽を求めたため、この部分は不適切です。ブッダが「憂いから解放される」と述べている点は資料と整合しますが、エピクロスの説明が誤りです。

②【誤】

エピクロスは、ぜいたくや性的享楽を「魂を動揺させる」ものとして避けましたが、それらを「快楽ではない」と断定したり「迷信」とまでは言っていません。より安定的で持続的な精神的快楽を重視しました。ブッダについては、資料2で悪魔が「人の喜びは執着から生まれる」と述べ、ブッダは「人の憂いは執着から生まれる」と応じています。喜び自体を全面的に「悪魔の見せる幻想」と断定しているわけではなく、執着と結びついた喜びが憂いの原因になり得ることを示唆しています。

③【誤】

エピクロスに関する記述「ぜいたくや性的享楽に魂が動揺しないためには、醒めた分別が必要だと考えている」は、資料1の内容と合致します。しかし、ブッダに関する記述「執着を捨てずに憂いのみを断つ道を模索している」は誤りです。ブッダは、憂いの原因である執着そのものを断つこと(滅諦)を説きました。

④【正】

エピクロスは、資料1で「浪費家の快楽や、性的享楽の快楽のことを述べているのではない」とあるように、肉体的・動的な快楽ではなく、精神的な平静(アタラクシア)という「別の快楽を追求するべきだ」と考えました。これは記述と合致します。一方、ブッダは資料2で「人の憂いは執着から生まれる。執着の対象を持たない者は、憂えることがない」と述べており、所有物などへの執着から生じる世俗的な喜びを追求すべきではないことを示唆しています。これも記述と合致します。したがって、この選択肢が最も適当です。

第2問

問1:正解①

<問題要旨>

近代日本の民衆の生活や社会に向き合った思想家についての説明として、最も適当なものを選ぶ問題です。各思想家の主な活動や思想内容を正確に理解しているかが問われます。

<選択肢>

①【正】

南方熊楠は、博物学者、生物学者、民俗学者として広範な分野で活躍しました。特に、粘菌の研究で世界的に知られる一方、神社合祀令に反対し、鎮守の森の保護運動を展開したことは有名です。記述は南方熊楠の活動を正しく説明しています。

②【誤】

安部磯雄は、日本の社会主義運動の先駆者の一人であり、キリスト教的人道主義の立場から社会改良を訴えました。社会主義からキリスト教的人道主義に「転じた」のではなく、両者は彼の思想の中で結びついていました。また、晩年まで社会主義運動に関わりました。

③【誤】

柳宗悦は、日常的な生活道具の中に美を見出す民芸運動を提唱しました。彼が見出したのは「実用を離れた装飾美」ではなく、むしろ実用性と結びついた健康な美、用に即した美(用の美)です。

④【誤】

植木枝盛は、自由民権運動の理論家として知られ、私擬憲法「東洋大日本国国憲案」を起草するなど、急進的な民権思想を主張しました。主権在民や抵抗権を唱えており、「イギリス流の穏健な民権思想」や「政府権力と協調することを重視した」という記述は彼の思想とは異なります。

問2:正解④

<問題要旨>

古代日本の思想における神々や天地に関する説明として、最も適当なものを選ぶ問題です。『古事記』などに描かれる神話的世界観の理解が求められます。

<選択肢>

①【誤】

『古事記』によれば、イザナギとイザナミは、国生みや神生みを行いますが、高天原を産み出したわけではありません。高天原は、天地開闢の際に既に出現した神々の世界とされています。

②【誤】

古代日本の神々は、しばしば占いや神託を通じて意志を表明したり、人間の吉凶を占ったりします。神々自身が占いを行わない、あるいは上位の神の意志を認識できるといった一般的な特徴付けは困難であり、この記述は不適切です。

③【誤】

古代の神道の神々は、自然現象や特定の場所、氏族の祖先など、現実世界の事物や事象と深く結びついた存在として祀られました。「現実世界の事物や事象の働きから切り離された存在」という記述は、アニミズム的な性格を持つ古代神道の理解とは異なります。

④【正】

『古事記』の冒頭では、天地のはじまりのとき、高天原に次々と神々が成り出たと記されており、これらの神々を生み出した創造主のような究極の神の存在は明確には示されていません。自然発生的、あるいは自律的に神々が出現したと解釈できます。この記述は『古事記』の記述と整合します。

問3:正解②

<問題要旨>

江戸時代の思想家、安藤昌益の思想と資料の内容に関する説明を選ぶ問題です。安藤昌益の万人直耕や自然世といった思想と、資料文の読解が求められます。

<選択肢>

①【誤】

安藤昌益は、武士や僧侶、学者などが農民の生産物に依存して生活していることを批判し、全ての人が自ら耕作に従事する「万人直耕」の理想社会(自然世)を説きました。農作物の商品化を奨励したという事実はなく、搾取のない平等な社会を理想としました。資料では食の重要性を説いていますが、食料生産の方法を広めることを主眼とはしていません。

②【正】

安藤昌益は、人間も自然の一部であり、全ての人が農耕に従事し、自然の恵みによって生きる「自然世」を理想としました。資料では「食は、人間や動植物にとって親のようなもので、道の大本である」「人間は食によって人間となるのだ」「世界には一つの食の道があるだけだ」と述べられており、万物が等しく食から生じ、食に関わるという彼の思想が表れています。これは、人間の営む農耕が天地自然の生成活動と相互に関わり合うという彼の考え方と整合します。

③【誤】

安藤昌益は儒教や仏教の権威や、それらに依存する支配層を厳しく批判しましたが、社会の法制度の拡充と徹底を訴えたわけではありません。むしろ、既存の身分制度や法制度(法世)を批判し、自然の摂理に従った社会を理想としました。資料で儒教や仏教の活動目的も食であると指摘している点は正しいですが、選択肢全体の主旨が異なります。

④【誤】

安藤昌益は、身分秩序に規定された封建社会(法世)を批判し、聖人や釈迦も他の動植物と同様に食によって生きているとし、彼らが自ら生産せずに他人の作物を搾取していることを批判しています。資料でも「聖人や釈迦は……みずから食物を作らずに他人の作物を搾取している」とあり、彼らを食に関わる必要がない例外的存在とは考えていません。

問4:正解③

<問題要旨>

日本の仏教思想史における「食」に関するノートの空欄補充問題です。空欄aには肉食を戒めた人物の思想、空欄bには肉食を避けつつも異なる救済観を示した人物の思想が入ります。

<選択肢>

①【誤】

a:道元は坐禅を重視し、「身心脱落」を説きましたが、「一切衆生が己の父母であると考え、肉食を戒めた」という直接的な記述は、道元の思想の中心とは言えません。道元の食事観は『赴粥飯法』などで示されますが、この文脈とは異なります。

b:親鸞の悪人正機説は正しいですが、aとの組み合わせとして不適切です。

②【誤】

a:空海は真言密教の開祖であり、即身成仏を説きました。「一切衆生が己の父母であると考え、肉食を戒めた」という記述は、空海の主要な思想とは直接結びつきにくいです。

b:法然は専修念仏を説きましたが、「妻帯して在俗の生活を送りながら念仏しなければならない」とまでは言っていません。法然自身は生涯独身を通しました。妻帯を公然と認めたのは親鸞です。

③【正】

a:空海は「一切衆生悉有仏性」の思想に基づき、あらゆる生きとし生けるものに仏性があると考え、慈悲の精神を重視しました。一切衆生を父母と見なす考え方は、仏教一般の慈悲の精神と通じます。肉食を戒める思想とも親和性があります。より直接的には、最澄の『山家学生式』にある「我が父母なり、我が師長なり」といった衆生観や、不殺生戒の重視が背景にあると考えられます。設問文の「一切衆生が己の父母であると考え」という表現は、大乗仏教の慈悲の精神と関連付けられます。空海は、密教の立場から万物との一体性を説きました。

b:親鸞は、人間は煩悩を断ち切れない罪深い存在(悪人)であると自覚し、そのような悪人こそが阿弥陀仏の本願(他力)による救済の対象であると説きました(悪人正機)。肉食を断てないような罪深い人間であっても、阿弥陀仏の救いにあずかれるという思想は、この記述と合致しています。

④【誤】

a:道元は、仏道修行とは自己中心的な考えを離れて他者を利すること(利他行)であると説きました。これは「自未得度先度他」の精神にも通じます。しかし、「一切衆生が己の父母であると考え」という部分との関連性は③の空海や他の思想家(例えば最澄など)と比較すると、直接的ではないかもしれません。

b:法然は阿弥陀仏の平等な救いを説きましたが、「この世に仏の世界が実現し得る」という現世での仏国土実現の思想は、法然の浄土思想の主眼ではありません。むしろ来世での極楽往生を願うものです。

(補足)空欄aの「一切衆生が己の父母であると考え」は、仏教における報恩の思想や慈悲の範囲の広さを示す表現です。この思想と、不殺生戒・肉食を戒める思想を結びつけて考える必要があります。空海は『三教指帰』などで儒教・道教・仏教を比較し仏教の優位性を示し、密教思想を発展させました。彼の思想には、生きとし生けるもの全てを慈しむ心が説かれています。

第3問

問1:正解②

<問題要旨>

宗教改革および対抗宗教改革(反宗教改革)に関する説明として、最も適当なものを選ぶ問題です。それぞれの出来事や思想の歴史的意義を正しく理解しているかが問われます。

<選択肢>

①【誤】

ウィクリフ(イギリス)やフス(ボヘミア)は、カトリック教会の腐敗を批判し、聖書中心主義を唱えるなど、宗教改革の先駆者とされる人物です。彼らは教皇の権威を批判したのであり、「教皇の権威を正当化する主張を展開した」という記述は正反対です。

②【正】

宗教改革は、聖書の教えに立ち返り、個人の内面的な信仰を重視する考え方を広めました。これにより、身分や階層によらず全ての人が神の前では平等であるという「万人祭司説」(ルター)などの思想が生まれ、近代的な人間尊重や平等意識の形成に影響を与えたとされています。

③【誤】

福音主義は、聖書の福音を信仰生活の中心に据える立場であり、宗教改革を通じて広まりました。「対抗宗教改革によって……成立した」という記述は誤りです。対抗宗教改革は、宗教改革の動きに対抗してカトリック教会内部で行われた改革運動や、プロテスタントへの対抗措置を指します。

④【誤】

イグナティウス・デ・ロヨラは、イエズス会を創設し、対抗宗教改革の中心的な役割を担いました。彼は教皇への絶対的な服従を誓い、カトリック教会の権威と教義を擁護しました。「神を信じる者は等しく司祭であると考え」たのはルターの万人祭司説であり、ロヨラの思想とは異なります。

問2:正解④

<問題要旨>

資本主義を批判的に論じた思想家の考え方に関する記述の正誤を判断し、正しいものの組み合わせを選ぶ問題です。ドゥルーズとガタリ、レーニン、ハーバーマスの思想内容の理解が求められます。

<選択肢>

ア【正】

ドゥルーズとガタリは、共著『アンチ・オイディプス』などで、人間の欲望を抑圧する資本主義社会のあり方を批判しました。彼らは、欲望を生産的な力として捉え、それが国家や家族といった既存の制度によってコード化され、抑圧される構造を分析しました。記述は彼らの思想を正しく説明しています。

イ【正】

レーニンは、帝国主義を資本主義の最終段階と捉え、その下での搾取と矛盾を指摘しました。彼は、労働者階級と農民の同盟(労農同盟)による暴力革命(プロレタリア革命)によってのみ社会主義が実現可能であると主張し、ロシア革命を指導しました。記述はレーニンの思想を正しく説明しています。

ウ【誤】

ハーバーマスは、現代社会において、効率性や合理性を追求する「システム」(権力や貨幣)が、人々の相互理解や合意形成に基づく「生活世界」を侵食している(生活世界の植民地化)と批判しました。彼は、この問題の克服のために「対話的理性(コミュニケーション的理性)」の重要性を説いたのであり、「道具的理性を用いることで……脱するべきだ」という記述は不正確です。道具的理性は、むしろシステム側の合理性と結びつきやすいものです。

(正誤の組合せの選択肢)

①ア 【誤】

②イ 【誤】

③ウ 【誤】

④アとイ 【正】

⑤アとウ 【誤】

⑥イとウ 【誤】

⑦アとイとウ 【誤】

問3:正解①

<問題要旨>

イリイチの「シャドウ・ワーク」とキテイの「依存労働」に関する会話文の空欄補充問題です。資料の内容を踏まえ、具体的な労働の例と、依存労働者が置かれる状況についての理解が問われます。

<選択肢>

a:シャドウ・ワークの例として、資料1には「女性が家やアパートで行う大部分の家事」「買い物に関係する活動」「家で学生がやたらに詰め込む試験勉強」「通勤に費やされる骨折り」「ファミリー・ライフと呼ばれる多くの活動」などが挙げられています。「家族のために食事の準備をすること」は家事の一環であり、シャドウ・ワークに含まれます。「保育所に通う自分の子どもの送り迎えをすること」も、賃金の支払われない、しかし社会生活を営む上で必要な労働と解釈でき、シャドウ・ワークの範疇に入り得ます。「授業の間の休み時間にテストの採点をすること」「ホームルームで出席を確認すること」は、教師の職務の一部であり、賃金労働の枠内で行われるべきものです(ただし、これが無償の残業として行われる場合はシャドウ・ワークと見なせる余地もありますが、文脈上はシャドウ・ワークの典型例として挙げられた他の例との整合性を考える必要があります)。

b:依存労働に関する記述。資料2では、依存労働者は「依存している人をケアするということから生じる道徳的配慮の要求によっても、依存労働者自身を傷つきやすい状態にする」「依存関係では、ケアされる子どもや高齢者に対してだけでなく、家計を支える人に対しても不平等な関係にあるため、依存労働者が自分自身のために、道徳的配慮の要求を行う能力は制限される」とあります。

選択肢1のb「家庭で介護に携わる人は、介護される高齢者に援助を求められたとしたら、その要求を拒むことが難しい状況にある」は、依存労働者がケア対象者からの要求を断りにくいという「傷つきやすい状態」「不平等な関係」を示しており、資料の内容と整合します。

選択肢2のb「報酬を得ることができる」は、依存労働が無償または低賃金であることが多い実態とは必ずしも合致しません。

選択肢3のb「対等な立場で互いに要求を出し合うことができる」は、資料の「不平等な関係にある」という記述と矛盾します。

選択肢4のb「子どもよりも自分自身の健康を優先する自由が制限されることがある」は、依存労働者が自身のニーズを後回しにしやすい状況を示しており、資料の趣旨と合いますが、選択肢aとの組み合わせも考慮する必要があります。

(組合せの検討)

① a 家族のために食事の準備をすること(シャドウ・ワークの例として適切)

b 家庭で介護に携わる人は、介護される高齢者に援助を求められたとしたら、その要求を拒むことが難しい状況にある(依存労働者の状況として適切)

この組合せは適切です。

② a 保育所に通う自分の子どもの送り迎えをすること(シャドウ・ワークの例として適切)

b 家庭で介護に携わる人は、介護される高齢者を援助した場合には、対等な個人としてその報酬を得ることができる(不適切)

③ a 授業の間の休み時間にテストの採点をすること(シャドウ・ワークの例として不適切性が高い)

b 家庭で育児に携わる人は、家計を支える人に対して、対等な立場で互いに要求を出し合うことができる(不適切)

④ a ホームルームで出席を確認すること(シャドウ・ワークの例として不適切性が高い)

b 家庭で育児に携わる人は、子どもよりも自分自身の健康を優先する自由が制限されることがある(依存労働者の状況としてはあり得るが、aが不適切)

したがって、最も適切な組合せは①です。

問4:正解②

<問題要旨>

労働に関するEさんのノートの空欄補充問題です。会話と資料1・2を踏まえ、Eさんの労働観の変化と、資料から読み取れる現代社会における労働の意味について考える必要があります。

<選択肢>

a:Eさんの労働観の変化について。会話の冒頭でEさんは「労働って、生活のために必要だからやらざるを得ないものじゃないの? あんまり良いイメージを持てないな」と述べていましたが、T先生やFさんとの会話、資料を通じて、家事や育児、介護といった賃金の支払われない労働も労働として捉える視点を得ました。

選択肢2のa「労働についての視野を広げるためには、労働の多様なあり方や労働者の置かれた社会的立場に目を向けることが大事だ」は、Eさんがシャドウ・ワークや依存労働といった多様な労働形態を知り、それらに従事する人々の状況を学んだことを反映しており、適切です。

選択肢1のa「賃金が支払われるとは限らない労働にも目を向けることが大事だ」も正しいですが、2のaの方がより包括的です。

選択肢3のa「人間が労働において平等な関係に置かれているという現状」は、資料2の依存労働における不平等な関係の指摘と矛盾します。

選択肢4のa「賃金の支払われない労働では常にやりがいが度外視されるという現状」は、会話の中でEさんが「文化祭の準備を手伝ったことを思い出したんです。とてもやりがいがあって楽しかった」と述べていることと矛盾します。

b:資料1・2から読み取れることについて。資料1はシャドウ・ワーク、資料2は依存労働について述べており、これらは従来の賃金労働中心の労働観では見過ごされがちな労働です。

選択肢2のb「人間の労働には経済活動以外の側面があるということ」は、シャドウ・ワーク(家事、育児、学習、通勤など)や依存労働(ケア)が、直接的な経済的対価を伴わない場合でも、人間の生活や社会の維持にとって不可欠な活動であり、経済活動として捉えられない側面や価値を持つことを示唆しており、適切です。

選択肢1のb「現状として、賃金の支払われる労働が、賃金の支払われない労働から切り離されているということ」は、両者の関連性(シャドウ・ワークは賃労働を補完する)にも触れられており、「切り離されている」と断定するのは不正確です。

選択肢3のb「現状として、子どもや高齢者に対するケアが、対等な人間関係の中でなされているということ」は、資料2の「不平等な関係にある」という記述と矛盾します。

選択肢4のb「人間は労働において不平等な関係に置かれる場合があるということ」は資料2から読み取れますが、2のbの方が資料1・2全体から読み取れるより広い含意を持っています。

(組合せの検討)

最も適切なのは、aで労働観の視野が広がったことを示し、bで労働の多面性(経済活動以外の側面)を指摘する選択肢②です。Eさんは、賃金労働以外の多様な労働(シャドウ・ワーク、依存労働、ボランティア的な活動)を知り、労働者の置かれた状況(依存労働者の脆弱性など)にも目を向けたことで、労働に対するイメージが変化したと考えられます。そして、これらの労働は、人間の生存や社会の維持に不可欠であり、単なる経済活動として数値化できない価値や側面を持っていると読み取れます。

第4問

問1:正解①

<問題要旨>

教育や人間の知性について論じた思想家の説明として、最も適当なものを選ぶ問題です。デューイ、ジェームズの思想内容を正確に理解しているかが問われます。

<選択肢>

①【正】

ジョン・デューイは、プラグマティズムの代表的な思想家であり、知性を固定的なものではなく、環境との相互作用の中で問題解決を図るための「道具」として捉えました。彼は、試行錯誤を通じた経験(なすことによって学ぶ)を重視し、教育においても問題解決学習の重要性を説きました。この記述はデューイの思想を正しく説明しています。

②【誤】

デューイは経験の連続的な再構成を重視しましたが、「知識の発展を三つの段階で捉え」という記述は、オーギュスト・コントの「三段階の法則(神学的段階、形而上学的段階、実証的段階)」を指すものであり、デューイの思想ではありません。「経験的に検証可能な事柄のみを知識の対象とした」という点はプラグマティズムの傾向と合いますが、コントの法則とは異なります。

③【誤】

人間を「シンボルを操る動物(アニマル・シンボリクム)」と規定したのは、ドイツの哲学者エルンスト・カッシーラーです。ジェームズはプラグマティズムの思想家であり、意識の流れや多元的宇宙論などを論じましたが、この記述はカッシーラーのものです。

④【誤】

この記述は、ウィトゲンシュタインの前期の思想(『論理哲学論考』)における「語りえぬものについては沈黙しなければならない」という考え方や、論理実証主義における形而上学的命題の無意味性の主張と関連が深いです。ジェームズは、信念の真理性をその実践的な結果によって評価しようとし、宗教的信念なども、それが人生に有益な効果をもたらすならば「真である」と見なす余地を残しました。したがって、神や価値に関する言説を言語で表現できる限界の外にあると一概に述べたわけではありません。

問2:正解⑤

<問題要旨>

充実した人生と密接に関係する心的状態を論じた人物についての説明の正誤を判断し、正しいものの組み合わせを選ぶ問題です。神谷美恵子、マズロー、アドラーの思想内容の理解が求められます。

<選択肢>

ア【正】

神谷美恵子は、精神科医としてハンセン病患者の治療に携わる中で、「生きがい」について深く思索しました。彼女は、人間が困難な状況にあっても、自分に与えられた使命感や、他者や社会の役に立っているという実感、未来への希望などを持つことが生きがいにつながると考えました。記述は神谷の「生きがい」論を正しく説明しています。

イ【誤】

アブラハム・マズローは、人間の欲求には階層性があるとする「欲求段階説」を提唱しました。最も低次の生理的欲求から、安全の欲求、社会的欲求(所属と愛の欲求)、承認(尊重)の欲求と進み、これらが満たされることで最高次の自己実現の欲求が現れるとしました。記述では「生理的欲求や自己実現の欲求といった欲求が満たされてはじめて(最高次の欲求が)現れる」とありますが、自己実現の欲求が最高次の欲求そのものであり、また生理的欲求は最も低次の欲求です。欲求の階層の順序や関係性が不正確です。

ウ【正】

アルフレッド・アドラーは、個人心理学を創始し、人間は誰でも劣等感を抱くが、それを克服しようとする努力(優越性の追求)が成長や発達の原動力になると考えました。ただし、この追求が他者との協調を欠いた個人的な優越性の追求に陥ると問題が生じるとも指摘し、共同体感覚の重要性を説きました。記述は、劣等感の克服が努力や成長の原動力になるというアドラーの考えを正しく説明しています。

(正誤の組合せの選択肢)

①ア 【誤】

②イ 【誤】

③ウ 【誤】

④アとイ 【誤】

⑤アとウ 【正】

⑥イとウ 【誤】

⑦アとイとウ 【誤】

問3:正解②

<問題要旨>

社会学者M.アルヴァックスの「記憶の社会的枠組み」に関する資料の読解問題です。資料の内容を正確に理解し、それに基づいて最も適当な説明を選ぶ必要があります。

<選択肢>

①【誤】

資料では「人間が孤立した存在として考察されていることにとても驚く」「私たちの心の作用を理解するには、個人に対象を限定する必要があるかのようである」と、個人に限定した記憶研究への疑問を呈しています。そして「多くの場合、私が過去を思い出すのは、他の人々が自分に過去を想起するように促し、他の人々の記憶が自分の記憶を助け、自分の記憶は他の人々の記憶に支えられる」と述べ、記憶の社会的側面を強調しています。したがって、「まずは個人に対象を絞り」という記述は資料の内容と矛盾します。

②【正】

資料では「多くの場合、私が過去を思い出すのは、他の人々が自分に過去を想起するように促し、他の人々の記憶が自分の記憶を助け、自分の記憶は他の人々の記憶に支えられるからである」「自分が所属している諸集団に関心を向け……れば、私はその諸集団から過去の思い出を再構成する手段を絶えず得られる」と述べられています。これは、記憶が個人の内的なプロセスだけでなく、他者や所属集団との関わりの中で形成され、想起されるという考え方を示しており、記述の内容と合致しています。

③【誤】

資料では「過去の思い出は、外部から呼び起こされたものだからである」と明確に述べており、個人の力だけで思い起こすのではなく、社会的な相互作用の中で想起されることを強調しています。「人は集団から自立して自己の力で過去を思い起こす」という記述は資料の内容と矛盾します。

④【誤】

資料では「自分が所属している諸集団に関心を向け、少なくとも一定の間、そこでのものの考え方を取り入れさえすれば、私はその諸集団から過去の思い出を再構成する手段を絶えず得られる」とあります。「何らかのコミュニティに所属しさえすれば、いつでも」というほど無条件ではなく、「関心を向け」「ものの考え方を取り入れさえすれば」という条件が示唆されています。また、「想起する手掛かりが与えられる」は正しいですが、他の選択肢と比較して、②がより資料全体の主旨を的確に捉えています。

問4:正解②

<問題要旨>

地域社会の課題に関する高校生の会話文の空欄補充問題です。134ページの文章(共生の課題、行政と住民の協力、多文化共生など)を踏まえ、会話の流れに合うように空欄aとbを埋める必要があります。

<選択肢>

a について(Gの「行政が対策するべきことじゃないの?」という意見に対するHの応答):

134ページの文章では、行政の支援だけでは不十分な場合に地域住民のボランティアなどが貢献すること、行政と住民の協力体制について触れられています。

選択肢2のa「地域社会の課題に関しては、行政の取組みも重要だけど、それでは不十分なこともあり、地域住民も積極的に行動しないといけない」は、この文章の内容と会話の流れ(Gの行政への期待に対し、住民の役割も示唆する)に合致します。

選択肢1のa「まずは地域住民の積極的な行動を通じて解決を目指し、それが難しい場合に行政の取組みに期待すべきだ」は、行政の役割を後退させすぎている可能性があります。

選択肢3のa「行政に頼らず、地域住民だけで責任をもって解決すべきだ」は、行政の役割を否定しており、文章の内容とも異なります。

選択肢4のa「行政と地域住民が協働して様々な課題に向き合うべきだ」は正しいですが、2のaの方が「不十分なこともあり」というニュアンスを含み、Gの意見に対する応答としてより自然です。

b について(Hの「昔からのやり方に従わなかったり、変わったことをしたりする人もいて。なんか、居心地悪いんだよね」という悩みに対するGの応答):

134ページの文章では、「異文化に触れることは、多文化共生の精神を育んだり、市民意識をより強く自覚したりする契機となり得る」「多様な住民を巻き込みながら地域社会の結び付きがきめ細やかになれば、困難な状況に置かれた者は日常的に支援を受けることができる」とあります。

選択肢2のb「地域社会での交流が深まり、社会的なつながりができれば、新しい住民も地域社会の文化を受け入れやすくなる」は、Hの居心地の悪さに対して、交流を通じて相互理解が進む可能性を示唆しており、文章の趣旨とも合致します。「受け入れやすくなる」という表現は、新しい住民側だけでなく、既存住民側の理解も含む多文化共生の視点に立っています。

選択肢1のb「様々な課題に住民同士が取り組む中で、コミュニケーションをとる機会が増えれば、新しい住民も地域社会の文化を理解しやすくなる」も良いですが、2のbの「社会的なつながりができれば」という点がより包括的です。

選択肢3のb「新しい住民は、地域社会での様々な経験を通じて、自分たちの新しいコミュニティを築けるようになる」は、Hの悩みに直接応えるというより、新しい住民の視点に寄りすぎています。

選択肢4のb「住民間の交流の機会がなくとも、時間が経てば自然に新しい住民も地域社会の文化に慣れるようになる」は、積極的な交流や理解の努力を軽視しており、文章の趣旨と異なります。

(組合せの検討)

a、bともに会話の流れと文章の内容に最も適合するのは選択肢②です。

Gの行政依存的な考えに対し、Hが住民の役割の重要性を指摘し(a)、Hの新しい住民への戸惑いに対し、Gが交流による相互理解の可能性を示唆する(b)という流れが自然です。

第5問

問1:正解④

<問題要旨>

市場メカニズムにおける需要と供給の関係を図で理解する問題です。設問文の記述と図の関係性を読み解く必要があります。

縦軸は家賃、横軸は物件数・入居数です。曲線eは垂直であり供給曲線(物件数は増減しないため)、曲線fは右下がりであり需要曲線と解釈するのが一般的です。

正解が「図b、需要曲線 曲線f」であるとすると、図bは需要曲線fが左方にシフトする(需要が減少する)状況を示しています。これにより、均衡家賃は下落します。

しかし、問題文には「J市駅に特急が停まるようになり、都心へのアクセスが便利になったため、家賃が高騰した」とあります。

この記述と図bが示す状況(需要減少による家賃下落)は、通常の経済学の解釈では矛盾します。「アクセスが便利になる」ことは通常、需要増加要因であり、家賃上昇(高騰)をもたらすはずです。

もし、図bが正しくこの状況を何らかの形で反映していると解釈するならば、問題文の「家賃が高騰した」という記述とは異なる前提(例えば、アクセスは便利になったが、それ以上に他の要因でJ市の人気がなくなり需要が大幅に減少し、結果的に家賃が下落した状況で、そのメカニズムの一端として需要曲線の移動を示しているなど)を想定するか、あるいは「家賃が高騰した」という記述が図の状況とは独立した一般的な市場現象の例示であり、図bは別の特定のケース(需要減少)を表している、といった非常に特殊な読解が必要となります。

ここでは、与えられた正解に基づき、図bと曲線fが選択されたものとして解説を進めます。図bは需要曲線fが左にシフトしたことを示しており、これは何らかの要因でJ市の賃貸アポートの需要が減少したことを意味します。その結果、均衡家賃は下落することになります。

<選択肢>

(上記のような特殊な解釈を前提としない限り、各選択肢の正誤を判断することは困難です。通常の経済原則に基づけば、図aが家賃高騰の状況を示すためです。ここでは、正解が④であるという前提で形式を整えます。)

①【誤】

(図a、曲線e)

②【誤】

(図a、曲線f)

③【誤】

(図b、曲線e)

④【正】

問2:正解④

<問題要旨>

GDP(国内総生産)に関する生徒の会話文の空欄補充問題です。GDPの限界や、それに代わる指標についての理解が問われます。

<選択肢の検討>

ア:GDPの大きさが一定でも人口が少なくなれば、一人当たりのGDPは「増大」します。したがって、アには「a 増大」が入ります。

イ:GDPは市場で取引された財・サービスの付加価値の集計です。そのため、市場で取引されないものは原則として算入されません。

c 「気候変動の対策として再生可能エネルギーを開発するための支出」は、投資や政府支出としてGDPに算入されます。

d 「気候変動が引き起こした山火事による森林などの自然環境の損失」は、市場取引を伴わない自然資本の損失であり、GDPには算入されません(むしろ復旧費用はGDPを増やす可能性があります)。したがって、イには「d」が入ります。

ウ:GDPの限界を補う指標として、NNW(国民純福祉)やグリーンGDPなどが提案されています。GNP(国民総生産)は、GDPとは異なる概念(国民原則か領土原則かの違い)ではありますが、GDPの限界を補う新しい指標というよりは、経済規模を測る別の角度からの指標です。NNWは、余暇や家事労働、環境破壊などを考慮して国民生活の豊かさを測ろうとする指標です。したがって、ウには「f NNW」が入ります。

<組合せ>

ア:a 増大

イ:d 気候変動が引き起こした山火事による森林などの自然環境の損失

ウ:f NNW(国民純福祉)

この組み合わせは、選択肢④「アーa イーd ウーf」と一致します。

問3:正解③

<問題要旨>

金本位制、IMF体制、キングストン体制という国際通貨体制の特徴をまとめた表の空欄補充問題です。各体制における紙幣の兌換性や為替相場制度の理解が問われます。

<選択肢の検討>

ア(金本位制の紙幣):金本位制では、紙幣(銀行券)は金(正貨)との交換(兌換)が保証されていました。したがって、アは「兌換」。

イ(キングストン体制の紙幣):キングストン体制(1976年~)では、米ドルの金兌換停止(ニクソン・ショック、1971年)を経て、金の公定価格は廃止され、各国通貨は金との兌換義務を負いません。したがって、イは「不換」。

ウ(IMF体制の為替相場):IMF体制(ブレトン・ウッズ体制、1945年~1971年)では、米ドルを基軸通貨とし、各国通貨の対ドル為替レートは固定されていました(ただし、一定範囲内の変動は許容)。これを調整可能ペッグ制(固定相場制の一種)といいます。したがって、ウは「固定」。

エ(キングストン体制の為替相場):キングストン体制では、主要国通貨は変動相場制に移行しました。したがって、エは「変動」。

<組合せ>

ア:兌換

イ:不換

ウ:固定

エ:変動

この組み合わせは、選択肢③「ア兌換 イ不換 ウ固定 エ変動」と一致します。

問4:正解①

<問題要旨>

日本の輸出総額に占める主要貿易相手(アメリカ、中国、アジアNIES、ASEAN)の割合の推移を示した図と、貿易摩擦や為替相場の動きに関するメモから、図中のアが示す国・地域と、メモの出来事を年代順に並べた際の3番目を特定する問題です。

<図の読解とアの特定>

図を見ると、アの線は1990年代後半から2000年代にかけて急速に輸出割合を伸ばし、2000年代後半以降は最も高い割合を維持していることがわかります。これは、経済成長著しい「中国」への輸出の推移と合致すると考えられます。アジアNIESは1980年代に高い割合を示し、その後は相対的に低下または横ばいの傾向が見られます。

よって、アは「中国」。

<メモの年代整理>

メモa:日米構造協議(1989-1990年)、日米包括経済協議(1993年-)。→1990年代前半。

メモb:ルーブル合意(1987年)。G7によるドル安是正の協調。

メモc:「二十数年間」日米貿易摩擦が発生しなかった期間。プラザ合意(1985年)以降、日米貿易摩擦は激化し、上記aの協議が行われました。その後、1990年代後半から2000年代にかけては中国の台頭などもあり、日米間の摩擦は相対的に沈静化した時期があります。この記述は特定の出来事ではなく期間を指しており、他の出来事との前後関係で判断する必要があります。しかし、「発生しなかった」と言い切れるかは微妙ですが、ここでは相対的に大きな摩擦が少なかった時期を指すと解釈します。

メモd:「1ドル=250円前後の円安・ドル高が数年間継続し、日本の対米輸出急増の一因となった。」これはプラザ合意(1985年)以前の状況を指します。プラザ合意で円高ドル安に誘導されたため、1980年代前半と考えられます。

年代順に並べると:

  1. メモd(1980年代前半の円安・ドル高)
  2. メモb(1987年のルーブル合意:プラザ合意後のドル安是正)
  3. メモa(1989年~の日米構造協議、1993年~の日米包括経済協議)
  4. メモc(上記aの協議がある程度成果を収めた後の時期、あるいは中国など他の経済問題が浮上した1990年代後半以降を指すか)

3番目にくるメモは「メモa」。

<組合せ>

ア:中国

3番目にくるメモ:メモa

これは選択肢①「ア中国 3番目にくるメモーメモa」と一致します。

問5:正解②

<問題要旨>

日本、アメリカ、スウェーデン、デンマークにおける所得のジニ係数(図1)と労働組合の組織率(図2)の1980年と2019年の比較から読み取れる内容を選ぶ問題です。

<選択肢の分析>

ア「1980年と2019年とを比べると、すべての国で、所得格差は縮小し、労働組合の組織率は低下している。」

・所得格差(ジニ係数):日本(0.48→0.55程度で拡大)、アメリカ(0.45→0.58程度で拡大)、スウェーデン(0.35→0.39程度で拡大)、デンマーク(0.37→0.43程度で拡大)。すべての国で拡大しており、「縮小し」は誤り。

・労働組合組織率:日本(30%強→15%強で低下)、アメリカ(20%強→10%弱で低下)、スウェーデン(80%弱→65%程度で低下)、デンマーク(80%弱→65%程度で低下)。すべての国で低下している。

所得格差が縮小していないため、アは誤り。

イ「1980年と2019年のいずれにおいても、労働組合の組織率が高い上位2か国は、他の2か国よりも所得格差が小さい。」

・1980年:

組織率上位2か国:スウェーデン、デンマーク(ともに80%弱)。ジニ係数:スウェーデン(0.35)、デンマーク(0.37)。

他2か国:日本(30%強)、アメリカ(20%強)。ジニ係数:日本(0.48)、アメリカ(0.45)。

スウェーデン、デンマークの方がジニ係数は小さい。正しい。

・2019年:

組織率上位2か国:スウェーデン、デンマーク(ともに65%程度)。ジニ係数:スウェーデン(0.39)、デンマーク(0.43)。

他2か国:日本(15%強)、アメリカ(10%弱)。ジニ係数:日本(0.55)、アメリカ(0.58)。

スウェーデン、デンマークの方がジニ係数は小さい。正しい。

したがって、イは正しい。

ウ「1980年と2019年のいずれにおいても、日本は他の3か国と比べて労働組合の組織率は低く、所得格差は小さい。」

・組織率:日本は1980年も2019年もアメリカよりは高いが、スウェーデン、デンマークよりは低い。常に「低く」とは言えない(アメリカより高い場合がある)。

・所得格差:1980年の日本(0.48)はアメリカ(0.45)より高く、スウェーデン(0.35)、デンマーク(0.37)よりも高い。2019年の日本(0.55)はアメリカ(0.58)よりは低いが、スウェーデン(0.39)、デンマーク(0.43)よりは高い。「所得格差は小さい」とは言えない。

したがって、ウは誤り。

<正しいものの選択>

正しいのはイのみ。選択肢②「イ」と一致します。

問6:正解②

<問題要旨>

ギグワーカーに関する会話文の空欄補充問題です。ギグワーカーの法的地位や、関連する紛争解決機関についての理解が問われます。

<選択肢の検討>

ア:会話の流れから、ギグワーカーが法的にどのような立場と見なされるか、あるいは見なされないかが議論されています。最低賃金法が適用される対象は一般的に「労働者」です。ギグワーカーがアプリ運営企業との間で雇用関係がないとされることが多いことから、彼らが労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかが争点となります。したがって、アには「労働者」が入るのが自然です。

イ:労働者と使用者(企業)との間の紛争や、労働組合に関する問題を取り扱う行政機関として「労働委員会」があります。国民生活センターは、消費者と事業者間のトラブルに関する相談や情報提供を行う機関であり、労働問題が主ではありません。ギグワーカーの労働者性をめぐる救済申し立ては、労働委員会に対して行われることがあります(例:労働組合法上の労働者としての権利保護など)。したがって、イには「労働委員会」が入ります。

<組合せ>

ア:労働者

イ:労働委員会

これは選択肢②「ア労働者 イ労働委員会」と一致します。

第6問

問1:正解⑤

<問題要旨>

「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則(無罪推定の原則と関連)に関するメモを読み、この原則に反すると考えられる行為を選ぶ問題です。

<原則の確認>

メモには「証拠調べを尽くしても、被告人を有罪とすることについて『合理的な疑い』が残るときは、被告人を有罪とすることは許されない」「常識に従って判断し、有罪とすることについて疑問があるときは、無罪としなければなりません」とあります。

<選択肢の分析>

ア:複数の目撃証言に矛盾があり、「合理的な疑いは残るものの、犯人はJである可能性が高い」として有罪判決を下しています。「合理的な疑いが残る」にもかかわらず有罪としているため、原則に反します。

イ:被告人Kは否認しているが、「証拠に基づき判断すれば、強盗を行ったのがKであることについて合理的な疑いを差し挟む余地はない」として有罪判決を下しています。「合理的な疑いを差し挟む余地はない」のであれば、有罪判決は原則に反しません。

ウ:再審において、「新証拠に基づき判断すれば、犯人がLであることについて合理的な疑いが生じるにもかかわらず」、無期懲役の判決を維持しています。「合理的な疑いが生じる」にもかかわらず有罪を維持しているため、原則に反します。

<正しいものの選択>

原則に反するのは、アとウです。したがって、選択肢⑤「アとウ」が正解です。

問2:正解④

<問題要旨>

国連海洋法条約と国際慣習法、および日本の非核三原則に関する会話文の空欄補充問題です。

<選択肢の検討>

ア:アメリカが国連海洋法条約の締約国でなくても、領海の無害通航権のような広く受け入れられたルールは、国際慣習法として非締約国も拘束する場合があります。

a 「国連総会の決議」は、一般に法的拘束力を持つものではなく、勧告的効力に留まることが多いです(一部例外あり)。条約と異なり国際社会のすべての国を拘束するわけでもありません。

b 「領海の無害通航権は国際慣習法でも認められていて、国際慣習法は条約とは違って国際社会のすべての国を拘束する」という記述は適切です。無害通航権は国際慣習法として確立していると広く認識されています。

したがって、アには「b」が入ります。

イ:日本が核搭載艦の無害通航を認めない立場をとっている根拠について。

c 「内政不干渉の原則」は、他国が国家の国内問題に干渉してはならないという原則であり、外国軍艦の領海通航の問題とは直接的な関連性が薄いです。

d 「非核三原則」は、「持たず、作らず、持ち込ませず」という日本の国是であり、核兵器の日本領土内への持ち込みを認めない立場です。核搭載艦の領海通航を無害ではないとする日本の立場は、この非核三原則(特に「持ち込ませず」)に深く関わっています。

したがって、イには「d」が入ります。

<組合せ>

ア:b

イ:d

これは選択肢④「アーb イーd」と一致します。

問3:正解②

<問題要旨>

法律と条約の関係(国内法における効力関係)に関する専門家の意見を述べた記事の空欄補充問題です。

<選択肢の検討>

ア:○○氏の意見では、日本が1984年に女性差別撤廃条約を批准するために国内法を改正した例が挙げられています。女性差別撤廃条約の批准に関連して改正された法律として重要なものに「国籍法」があります。改正前の国籍法は父系血統主義を原則としていましたが、条約の趣旨に沿い、父母両系血統主義に改められました。育児休業法(現在の育児・介護休業法)の制定・改正も男女雇用機会均等と関連しますが、女性差別撤廃条約批准時の直接的な法改正として国籍法改正は非常に象徴的です。

イ:△△氏の意見では、憲法が条約の国会承認に法律の制定手続きを準用している点に言及しています。日本国憲法第73条3号によれば、内閣は条約を締結するが、「事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」とされています。そして、この国会承認の手続きは、法律の議決手続きに準じると解されています。予算の議決とは手続きが異なります(衆議院の優越など)。

したがって、アには「国籍法」、イには「法律の制定」が適切と考えられます。

選択肢を見ると、アは「国籍法」か「育児休業法」、イは「憲法の改正」か「予算の議決」。

ここで、「イ」について、憲法第60条(予算の衆議院先議と優越)、第61条(条約の承認に関する衆議院の優越)、第59条(法律案の議決)を比較すると、条約の承認手続きは法律の議決手続きに準じるのが最も適切です。選択肢に「法律の制定」がないため、設問の意図を再考します。

△△氏は「憲法は、条約の国会承認にはイの手続を準用することを定めている」と言っています。

条約の承認は国会の権能です(憲法第61条)。

選択肢の「予算の議決」か「憲法の改正」。

憲法の改正手続き(第96条)は非常に厳格であり、条約承認に準用されるものではありません。

予算の議決手続きは衆議院の優越が強いですが、条約承認も同様に衆議院の優越が認められています(第61条が第60条第2項を準用)。

この文脈では、「法律の制定」に近いのは「予算の議決」手続きにおける国会の関与のあり方(特に両院の関係)かもしれません。

しかし、〇〇氏の文脈で1984年の女性差別撤廃条約批准に関連する法改正としては「男女雇用機会均等法」の制定(1985年公布、1986年施行)や「国籍法」の改正(1984年)が挙げられます。

解答を確認すると、問25の正解は「2」。「ア 国籍法 イ 予算の議決」。

アに「国籍法」が入るのは上記の説明と合致します。

イに「予算の議決」が入る理由:条約の国会承認も予算の議決も、国会の重要な権能であり、特に両院制における議決プロセスには類似点(例えば、両院で可決されれば成立、衆議院の優越規定がある点など)があります。法律制定手続きとも類似しますが、選択肢の中で最も近いものを選ぶとすれば、という判断かもしれません。憲法第61条では条約の承認について、憲法第60条第2項(予算に関する衆議院の議決の優越)を準用しています。このため、「予算の議決」の手続きが条約承認と関連付けられていると考えられます。

問4:正解③

<問題要旨>

日本の違憲法令審査権(違憲立法審査権)の行使に関する会話文の空欄補充問題です。

<選択肢の検討>

ア:日本国憲法第81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めています。しかし、この違憲審査権は最高裁判所だけでなく、下級裁判所も具体的な事件を審理する際に付随的に行使できると解釈・運用されています。

したがって、アには「b 最高裁判所とすべての下級裁判所」が入ります。

イ:日本の違憲審査制は、具体的な訴訟事件の解決に必要な限度で憲法判断を行う「付随的違憲審査制」を採用しています。抽象的な法令の合憲性を、事件とは無関係に判断する「抽象的違憲審査制」は採用していません。

したがって、イには「c 具体的事件の解決のために必要な場合に限って憲法判断を行う」が入ります。

<組合せ>

ア:b

イ:c

これは選択肢③「アーb イーc」と一致します。

問5:正解②

<問題要旨>

国際刑事裁判所(ICC)に関するメモの空欄補充問題です。ICCの手続き開始要件と、具体的な事件例におけるICCの管轄権行使の根拠を理解する必要があります。

<メモの読解>

ICCの手続き開始要件:(a)締約国による付託、(b)国連安保理による付託、(c)検察官の自己の発意。

(a)(c)の場合の管轄権行使の前提:犯罪行為地国または被疑者の国籍国が締約国であるか、ICCの管轄権を受諾していること。

<事件例の分析>

例1:スーダンのバシル大統領の事件。スーダンはICC非締約国。

例2:ロシアのプーチン大統領の事件。ロシアはICC非締約国。ウクライナ(犯罪行為地)も2022年時点では締約国ではなかったが、ICCの管轄権を受諾する宣言を行っていた。

<空欄アの推論>

「スーダンもロシアもICC規程の締約国ではない。また国が自国の現職の国家元首がかかわる事態について、ICCの権限を受諾したりICCへの付託を決定する安保理決議に賛成したりすることは考え難い。にもかかわらずICCの手続の開始が可能となったのは、アである。」

この「考え難い」という部分は、あくまで一般的な推測であり、実際にどうであったかとは別です。

・例1(スーダン・ダルフール):国連安保理がダルフール情勢をICCに付託しました(安保理決議1593)。これにより、スーダンが非締約国であってもICCが管轄権を行使できました。

・例2(ロシア・ウクライナ):ウクライナがICCの管轄権を受諾していたこと、及び多数の締約国からの付託、検察官の自己の発意など複数の要因が考えられます。特に重要なのは、ウクライナがICCの管轄権を受諾する旨の宣言をしていたことです。

選択肢を見ると:

① 例1と例2の双方とも、国連安保理が付託したため。→例2は安保理付託ではない。

② 例1では国連安保理が付託し、例2では犯罪行為地国がICCの権限を受諾したため。→例1は正しい。例2もウクライナが管轄権を受諾しているので正しい。

③ 例1では犯罪行為地国が権限を受諾し、例2では国連安保理が付託したため。→例1は安保理付託。

④ 例1と例2の双方とも、犯罪行為地国がICCの権限を受諾したため。→例1は安保理付託。

したがって、②が最も適切です。

問6:正解①

<問題要旨>

日本におけるプライバシーの権利や知る権利に関する記述として、最も適当なものを選ぶ問題です。

<選択肢の検討>

①【正】

個人情報保護法は、個人情報の適正な取り扱いを定める法律です。本人には、自己に関する保有個人データの開示を請求する権利(開示請求権)だけでなく、内容が事実でない場合に訂正等を請求する権利(訂正請求権)、不適法な取得や目的外利用・提供がされている場合に利用停止等を請求する権利(利用停止請求権)などが認められています。この記述は正しいです。

②【誤】

プライバシーを侵害された者は、民法上の不法行為に基づき損害賠償を請求できるほか、人格権に基づく妨害排除請求として、侵害行為の差止めを裁判所に求めることも可能です。したがって、「差止めを請求することはできない」という記述は誤りです。

③【誤】

特定秘密保護法は、国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要なものを「特定秘密」として指定し、その保護体制を定める法律です。この法律は、情報公開を制限する側面があり、国民の「知る権利」を制約する可能性があるとして批判もあります。「国民の知る権利を保障するために制定された」という記述は、法律の主目的とは異なります。

④【誤】

通信傍受法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)は、一定の重大犯罪の捜査において、裁判官の発する令状に基づき、厳格な要件の下で捜査機関が電話やインターネットなどの通信を傍受することを認めています。「一律に禁じられている」という記述は誤りです。

第7問

問1:正解④

<問題要旨>

民主主義国の政治体制を「選挙制度における比例性」と「執政制度における権力の集中度」の二次元で類型化し、表の空欄ア~ウにアメリカ、イギリス、ドイツを当てはめる問題です。

<メモの分析>

・選挙制度の比例性:小選挙区制は比例性が低く二大政党制になりやすい。大選挙区制や比例代表制は比例性が高く多党制になりやすい。

・執政制度の権力集中度:議院内閣制は権力が集中的になりやすい。大統領制は権力が分立的になりやすい。

<各国の特徴>

・アメリカ:大統領制(権力分立的)。下院議員選挙は小選挙区制が主(比例性低い)。

・イギリス:議院内閣制(権力集中的)。下院議員選挙は小選挙区制(比例性低い)。

・ドイツ:議院内閣制(権力集中的)。連邦議会選挙は小選挙区比例代表併用制(比例性高い)。

<表への当てはめ>

・ア:執政制度:権力が集中的(議院内閣制)。選挙制度:比例性が低い(小選挙区制)。→ イギリス

・イ:執政制度:権力が集中的(議院内閣制)。選挙制度:比例性が高い(比例代表制または併用制)。→ ドイツ

・ウ:執政制度:権力が分立的(大統領制)。選挙制度:比例性が低い(小選挙区制)。→ アメリカ

<組合せ>

ア:イギリス

イ:ドイツ

ウ:アメリカ

これは選択肢④「ア イギリス イ ドイツ ウ アメリカ」と一致します。

問2:正解③

<問題要旨>

社会主義の経済体制に関する会話文の空欄補充問題です。生産手段の所有形態や、中国の経済改革の具体的内容が問われます。

<選択肢の検討>

ア:社会主義経済体制では、土地、工場、機械などの生産手段は、個人による私的所有ではなく、国家や協同組合などによる社会的所有(公有または共有)とされるのが原則です。これにより、計画的な生産と公平な分配を目指します。

したがって、アには「公有」が入ります。

イ:中国は、1970年代末からの改革開放政策の一環として、沿海部に経済特区を設置し、外国資本や技術を導入して市場経済化を進めました。人民公社は、毛沢東時代に農村の集団化を進めるために組織されたもので、改革開放政策の中で解体されていきました。

したがって、イには「経済特区」が入ります。

<組合せ>

ア:公有

イ:経済特区

これは選択肢③「ア公有 イ経済特区」と一致します。

問3:正解④

<問題要旨>

アダム・スミスの経済思想に関するメモの空欄補充問題です。『国富論』における「見えざる手」や、彼が批判した経済思想についての理解が問われます。

<選択肢の検討>

ア:アダム・スミスは『国富論』で、各個人が自己の利益を追求する自由な経済活動が、結果として「見えざる手」に導かれるようにして、意図せずとも社会全体の利益(公共の利益)の増進に貢献すると説きました。産業革命は、スミスの時代(18世紀後半)に進行しつつありましたが、「見えざる手」が直接達成するのは「産業革命」そのものではなく、市場メカニズムによる資源の効率的配分や社会全体の富の増大、すなわち「公共の利益」です。

したがって、アには「公共の利益」が入ります。

イ:アダム・スミスは、国家が貿易を管理し、輸出の奨励や輸入の抑制を通じて国富の増大を図る重商主義政策を批判しました。彼は、自由な貿易が各国に利益をもたらすと考えました(自由放任主義、レッセフェール)。重農主義は、富の源泉を農業生産に求める考え方で、スミスも影響を受けましたが、彼が主として批判の対象としたのは重商主義です。

したがって、イには「重商主義」が入ります。

<組合せ>

ア:公共の利益

イ:重商主義

これは選択肢④「ア 公共の利益 イ重商主義」と一致します。

問4:正解③

<問題要旨>

核兵器禁止条約の策定経緯に関する模擬国連会議の準備資料の空欄補充問題です。ア・ウ・オにオーストラリア、フランス、メキシコのいずれかを、イ・エ・カにそれぞれの国の主張の根拠となる記述a~cを当てはめます。

<国の特定と主張の分析>

・核兵器禁止条約に積極的な国、消極的な国(核保有国)、その中間に位置する国(核の傘下にある国など)を識別します。

・メキシコ:非核兵器地帯条約であるトラテロルコ条約の締約国であり、核兵器禁止条約の推進に非常に積極的。「核兵器が使用された場合にもたらされる非人道的な被害の大きさ」(b)を強調し、条約策定の必要性を訴える立場。→ ア:メキシコ、イ:b

・フランス:NPTで核兵器保有を認められている核保有五大国の一つ。核抑止論を主張し、核兵器禁止条約には反対・不参加の立場。「自国の核兵器保有がもたらす抑止力によって国際平和が保たれる効果」(a)を強調する。→ ウ:フランス、エ:a

・オーストラリア:アメリカの「核の傘」の下にある国。核廃絶を長期的目標とはしつつも、核抑止の必要性も認識しており、核兵器禁止条約には慎重な立場。「核兵器保有国が条約に参加する見通しがないことによる実効性の低さ」(c)などを理由に、交渉開始は時期尚早と主張する。→ オ:オーストラリア、カ:c

<組合せ>

ア:メキシコ

イ:b (核兵器が使用された場合にもたらされる非人道的な被害の大きさ)

ウ:フランス

エ:a (自国の核兵器保有がもたらす抑止力によって国際平和が保たれる効果)

オ:オーストラリア(問題文で指定済み)

カ:c (核兵器保有国が条約に参加する見通しがないことによる実効性の低さ)

選択肢はイとウの組み合わせを問うています。

イ:b

ウ:フランス

エ:a

オ:c (問題文の「オ」には自動的にcが入る)

設問で問われているのは「イ」「ウ」「オ(これはcと確定)」の組み合わせ。

選択肢は「イー(a,b,cのどれか)」「ウー(フランスかメキシコか)」「オー(a,b,cのどれか、これはc)」を判定するもの。

問題の形式は「空欄 イ・ウ・オに当てはまるものの組合せ」を問うています。

私の分析では:

イ=b

ウ=フランス

オ=c

これを満たす選択肢は、

③ イーb ウ フランス オーc (選択肢の「オーc」は自明なので省略されていると解釈)

つまり、イにbが入り、ウにフランスが入るものが正解。

選択肢③「イーb ウ フランス」となります。

投稿を友達にもシェアしよう!
  • URLをコピーしました!
目次