2025年度 大学入学共通テスト 本試験 倫理・政治経済 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解①

<問題要旨>

会話の下線部⑧「苦痛や苦労なんてない、ただただ楽しくて楽な人生」というAの発言に関連して、人間の欲望についての宗教や思想家の説明として正しいものを全て選ぶ問題。

<選択肢>

①【正】

アは正しい記述。旧約聖書の十戒は、モーセが神から授かったとされる10の戒律です。その第十戒に「あなたの隣人の家を欲してはならない」とあり、他者の所有物への欲望を明確に禁じています。したがって、この選択肢は正しいです。イとウが誤りであるため、正解は①となります。

②【誤】

イは誤った記述。イスラームでは、六信五行に示されるように、現世における信仰の実践が重視されます。五行には喜捨(ザカート)が含まれ、富を持つこと自体は否定されず、富の一部を貧しい人々に分け与えることが義務とされています。完全に俗世を離れて欲望を消し去ること(禁欲主義)を理想とするのではなく、現世での信仰生活を大切にします。

③【誤】

ウは誤った記述。荀子は、人間の本性(性)は悪であり、欲望を持つ存在であると捉えました(性悪説)。しかし、その欲望に基づく行為を「人為的」だと批判したのではありません。むしろ、後天的な努力や学習、すなわち「偽(い)」によって、欲望を礼という社会規範でコントロールし、善い行いをすることができると説きました。欲望そのものを否定するのではなく、礼による統制を重視した点が特徴です。

④【誤】

上記のとおり、イは誤りです。

⑤【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

⑥【誤】

上記のとおり、イとウはどちらも誤りです。

⑦【誤】

上記のとおり、イとウはどちらも誤りです。

問2:正解④

<問題要旨>

会話の下線部⑨「努力や苦労も重要じゃない?」というBの発言に関連して、仏教における四苦八苦のうち、いずれかの「苦」の説明として最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

愛別離苦(あいべつりく)とは、愛する者と別れなければならない苦しみを指します。選択肢にある「万民と平等な関係を築けなくなること」といった説明は誤りです。

②【誤】

怨憎会苦(おんぞうえく)とは、怨み憎んでいる相手と会わなければならない苦しみを指します。選択肢にある「人と会うことが難しくなる苦」という説明は、その意味からずれています。

③【誤】

求不得苦(ぐふとっく)とは、求めているものが得られない苦しみを指します。選択肢のように解脱への道が身分によって閉ざされるといった限定的な意味ではありません。

④【正】

五蘊盛苦(ごうんじょうく)とは、人間の心身を構成する五つの要素(五蘊)、すなわち肉体(色)、感受(受)、表象(想)、意志(行)、認識(識)が、無常であるにもかかわらず、それらに執着することから生じる苦しみを指します。言い換えれば、私たちの心身の活動そのものが苦しみの源であると捉える考え方です。したがって、この選択肢は正しい説明です。

問3:正解③

<問題要旨>

会話の下線部⑩「キリスト教によれば人間は根源的に罪深い」というBの発言に関連して、キリスト教の原罪思想についての説明の正誤を組み合わせる問題。

<選択肢>

①【誤】

イが誤りであるため、この選択肢は誤りです。

②【誤】

イ、ウが誤り(本文解説参照、正しくはウは正)であるため、この選択肢は誤りです。※解答PDFでは正解③のため、イが誤り、ウが正しいという前提で解説します。

③【正】

アは正しい記述です。旧約聖書「創世記」には、アダムとエヴァが神の命令に背いて禁断の果実を食べ、エデンの園から追放された物語が記されています。このアダムの罪が、全人類に受け継がれた根源的な罪「原罪」とされています。

ウは正しい記述です。教父アウグスティヌスは、人間は原罪を負っているため自力では救われず、神の無償の愛(恩寵)によってのみ救われると説きました(恩寵説)。そして、その恩寵は地上における神の国である教会を通じて与えられるとし、カトリック教会の権威を理論的に支えました。

イは誤った記述です。パウロは、律法を守ろうとしても守りきれない人間の罪深さを自覚し、イエスの贖罪(十字架上の死によって人間の罪をあがなうこと)を信じる信仰によってのみ義とされる(信仰義認説)と考えました。人間が「隣人愛を実践すること」によって罪を贖うと説いたわけではありません。

したがって、ア正・イ誤・ウ正の組み合わせであるこの選択-肢が正解です。

④【誤】

ウが正しいため、この選択肢は誤りです。

⑤【誤】

アが正しく、イが誤りであるため、この選択肢は誤りです。

⑥【誤】

アが正しく、イが誤りであるため、この選択肢は誤りです。

⑦【誤】

アが正しいため、この選択肢は誤りです。

⑧【誤】

アが正しいため、この選択肢は誤りです。

問4:正解④

<問題要旨>

会話の下線部⑪「楽しみには善いものと悪いものがあるね」というAの発言に関連して、資料1(エピクロス)と資料2(ブッダ)の快楽についての思想を比較した説明として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

エピクロスは「快楽から解放される」ことを目指したのではなく、魂の平穏(アタラクシア)という持続的で静的な快楽こそが真の快楽であり、人生の目的であると考えました。したがって、前半部分の説明が誤っています。

②【誤】

エピクロスは、ぜいたくや性的享楽が魂の動揺をもたらすため避けるべきだとしましたが、それらが快楽ではないと認識すべきだとまでは言っていません。また、ブッダは喜びの根源が執着にあると説きましたが、喜びそのものを「悪魔の見せる幻想」「錯覚」と断じているわけではありません。

③【誤】

エピクロスの説明は正しいですが、ブッダは「執着を捨てずに憂いのみを断つ」道を模索したわけではありません。むしろ、喜びと憂いの両方の根源である「執着」そのものを断つこと(解脱)を目指しました。

④【正】

エピクロスは、浪費家の快楽や性的享楽のような動的な快楽が精神的な不安や苦痛をもたらすため、それらを避け、分別によって得られる魂の平穏(アタラクシア)という静的な快楽を追求すべきだと考えました。一方、ブッダは、子や牛(財産)への執着が喜びだけでなく憂いをも生むと説き、執着から離れることを示唆しています。これは、所有などによる世俗的な喜びそのものを追求すべきではない、という考え方につながります。両者の思想を的確に比較しており、この選択肢は正しいです。

第2問

問1:正解①

<問題要旨>

近代日本の民衆の生活や社会に向き合った思想家の説明として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【正】

博物学者、生物学者、民俗学者であった南方熊楠は、粘菌の研究などで世界的に知られる一方、日本独自の民俗学を切り拓きました。また、神社合祀令に反対し、地域の信仰の場であり貴重な自然生態系でもある鎮守の森の保護運動を展開したことでも有名です。したがって、この記述は正しいです。

②【誤】

安部磯雄は、キリスト教的人道主義の立場から社会問題に関わるようになり、日本で最初の社会主義政党である社会民主党の結成に参加するなど、社会主義者として活動しました。選択肢の記述は、彼の思想的変遷の方向が逆になっています。

③【誤】

柳宗悦は、名もなき職人の手による日常的な工芸品の中に「用の美」を見いだし、それを「民芸」と名付けてその価値を広める民芸運動を主導しました。彼が見いだしたのは、実用性と結びついた健康的な美であり、「実用を離れた装飾美」ではありません。

④【誤】

自由民権運動の理論家であった植木枝盛は、フランスのルソーなどの影響を受け、徹底した主権在民と抵抗権(革命権)を認めるなど、急進的な民権思想を主張しました。イギリス流の穏健な思想を提唱したわけではありません。

問2:正解④

<問題要旨>

古代日本の思想における神々や天地についての説明として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

『古事記』によれば、イザナギとイザナミは、オノゴロ島をはじめとする日本の国土(大八島国)や多くの神々を産みましたが(国生み・神生み)、神々の住まう高天原そのものを産み出したわけではありません。高天原は、天地開闢の際に既になっていたとされます。

②【誤】

古代の神話では、神々もまた、占い(太占)によって他の神の意志を問い、物事を判断する場面が描かれています。したがって、人間と異なり占いをしない、という記述は誤りです。

③【誤】

古代日本の神道(古神道)は、山や川、岩や木といった自然物や自然現象に神が宿ると考えるアニミズム的な特徴を持ちます。神々は現実世界の事物や事象と深く結びついた存在として祀られました。したがって、「切り離された存在」という記述は誤りです。

④【正】

『古事記』の冒頭では、天地開闢の際に、まず別天神(ことあまつかみ)五柱が次々と「成りませる」神として出現し、その後、神世七代(かみよななよ)の神々が続きます。これらの神々は、誰かによって創造されたのではなく、自然に発生した存在として描かれており、その背後に絶対的な創造主のような存在は示されていません。したがって、この記述は正しいです。

問3:正解②

<問題要旨>

安藤昌益の著した資料を読み、彼の思想の説明として最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

安藤昌益は、武士や聖人などが農民の生産物を搾取する封建社会(法世)を批判し、すべての人が自ら耕作に従事する「自然世」を理想としました。農作物の商品化を奨励したという事実はありません。

②【正】

安藤昌益は、すべての人が直接土を耕す「万人直耕」の社会を理想としました。これは、人間の労働(農耕)が天地自然の働きと一体であるという思想に基づいています。資料文中の「人間や動植物は、全て食から生じ食を行う」「世界には一つの食の道があるだけだ」という記述は、身分や立場の違いなく、万物が「食」という根源的な営みにおいて平等であるという彼の思想を反映しています。したがって、この選択肢は正しいです。

③【誤】

安藤昌益は、儒教や仏教の教えを、人々を支配し搾取するための偽りの教えであると厳しく批判しましたが、社会の法制度の「拡充と徹底」を訴えたわけではありません。むしろ、そうした人為的な法制度のない「自然世」を理想としました。

④【誤】

安藤昌益は、資料中で聖人や釈迦を「みずから食物を作らずに他人の作物を搾取している」存在として厳しく批判しています。「食に関わる必要がない例外的存在」と考えているのではなく、むしろ食の道を説かない欺瞞的な存在として断じています。

問4:正解③

<問題要旨>

日本の仏教思想史における「食」に関するノートの空欄a、bに入る記述として、正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

bの親鸞の説明は正しいですが、aの道元の説明は、ノート前段の「一切衆生が己の父母であると考え、肉食を戒めた」という文脈とは直接結びつきません。

②【誤】

aの空海の説明は正しいですが、ノート前段の文脈とは直接結びつきません。bの法然の説明のうち、「妻帯して在俗の生活を送りながら」という部分は、妻帯を認めた親鸞の説明であり、法然は妻帯をしませんでした。

③【正】

aには空海が入ります。空海は、宇宙の真理そのものである大日如来と、修行を通じて一体化すること(即身成仏)を説きました。この宇宙のあらゆるものが大日如来の顕れであるという考え方は、ノート前段の「一切衆生」を慈しむ思想と親和性があります。bには親鸞が入ります。親鸞は、煩悩から離れられない人間(悪人)こそが、阿弥陀仏の救いの主たる対象である(悪人正機説)と説きました。人間は他の命を奪わなければ生きられない罪深い存在(悪人)であるという自覚(罪業意識)が、阿弥陀仏の絶対的な慈悲(他力)にすがる信仰につながると考えたため、ノート後段の記述と一致します。したがって、この組み合わせは正しいです。

④【誤】

aの道元の説明は正しいですが、ノート前段の文脈とは直接結びつきません。bの法然の説明は、阿弥陀仏の力による救いを説いた点では正しいですが、ノート後段が強調する「他の動植物の命を奪わないと生きられない罪深い存在」という罪の自覚と救済の関係については、親鸞の思想の方がより直接的に合致しています。

第3問

問1:正解②

<問題要旨>

宗教改革や対抗宗教改革に関する説明として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イギリスのウィクリフやボヘミアのフスは、聖書中心主義を唱え、カトリック教会の腐敗や教皇の権威を批判した宗教改革の先駆者です。「教皇の権威を正当化する主張を展開した」という記述は正反対であり、誤りです。

②【正】

ルターが提唱した「万人祭司説」は、聖職者だけでなく全ての信者が神の前で平等であるとする考え方です。このような思想は、身分制社会を乗り越え、近代における個人の尊厳や平等思想が育まれる上での重要な基盤の一つとなりました。したがって、この記述は正しいです。

③【誤】

信仰のみによって義とされるという「福音主義」は、ルターなど宗教改革側の中心的な立場です。カトリック教会側が宗教改革に対抗して行った改革(対抗宗教改革)の中で成立したものではありません。

④【誤】

イグナティウス=デ=ロヨラは、対抗宗教改革の中心となったイエズス会を創設し、教皇への絶対的な服従と厳格な規律を重んじました。「神を信じる者は等しく司祭である」という万人祭司説は、彼が批判したルターの思想です。

問2:正解④

<問題要旨>

資本主義を批判的に論じた思想家の考え方として、適当な記述を全て選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

ウが誤りであるため、この選択肢は誤りです。

②【誤】

アが正しいですが、この選択肢には含まれていません。

③【誤】

ア、イが正しいですが、この選択肢には含まれていません。

④【正】

アは正しい記述です。フランスの思想家ドゥルーズとガタリは、人間の根源的な生産力としての「欲望する機械」を肯定的に捉え、資本主義や国家、家族といった制度が欲望を抑圧していると批判しました。

イは正しい記述です。ロシア革命の指導者レーニンは、資本主義が最終段階として独占資本主義、すなわち帝国主義に行き着くと分析し、帝国主義打倒のためには、労働者階級(プロレタリアート)と農民との同盟(労農同盟)による革命が必要であると主張しました。

ウは誤った記述です。ドイツの思想家ハーバーマスは、合理化がシステム(権力や貨幣)の論理によって生活世界にまで及ぶ「生活世界の植民地化」を批判しました。しかし、彼が対置したのは「道具的理性」ではなく、対話を通じた相互了解を目指す「コミュニケーション的理性」です。

したがって、アとイが正しいので、この選択肢が正解です。

⑤【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

⑥【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

⑦【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

問3:正解①

<問題要旨>

資料1(シャドウ・ワーク)と資料2(依存労働)を踏まえ、会話中の空欄a、bに入る語句の正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【正】

a:空欄aの前でEは、資料1を引用し家事や通勤などが「賃金の支払われない労働(シャドウ・ワーク)」とみなされることに言及しています。これを受けて「例えば先生が a も含まれるんでしょうか」と質問しています。選択肢の「家族のために食事の準備をすること」は、資料1が挙げる「女性が家やアパートで行う大部分の家事」の具体的な一例であり、シャドウ・ワークに該当します。

b:空欄bの前でTは、資料2の「依存労働」について問いかけています。資料2は、依存労働者が「ケアすることから生じる道徳的配慮の要求によって」「傷つきやすい状態に」なり、「不平等な関係にあるため」「自分自身のために、道徳的配慮の要求を行う能力は制限される」と指摘しています。選択肢の「家庭で介護に携わる人は、介護される高齢者に援助を求められたとしたら、その要求を拒むことが難しい状況にある」は、この不平等で脆弱な関係性を具体的に言い換えたものであり、的確です。したがって、この組み合わせが正しいです。

②【誤】

bの説明が不適切です。資料2は依存労働の脆弱性を指摘しており、必ずしも「対等な個人としてその報酬を得ることができる」わけではありません。むしろ、無償であったり、不当に低賃金であったりすることが問題となります。

③【誤】

aの説明が不適切です。「授業の間の休み時間にテストの採点をすること」は、賃金が支払われる教員の業務の一部であり、賃金の支払われないシャドウ・ワークには該当しません。

④【誤】

aの説明が不適切です。「ホームルームで出席を確認すること」も、賃金が支払われる教員の業務の一部です。

問4:正解②

<問題要旨>

会話と資料の内容を踏まえ、Eが作成したノートの空欄a、bに入る記述として正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

bの「賃金の支払われる労働が、賃金の支払われない労働から切り離されている」という記述は、資料1の「賃労働を補完するものとして要求する」という記述と矛盾します。両者は密接に関連しています。

②【正】

a:Eは当初、労働に良いイメージを持っていませんでしたが、会話や資料を通じて、賃金労働だけでなく、家事や通勤(シャドウ・ワーク)、育児や介護(依存労働)といった「労働の多様なあり方」や、ケアする側の「置かれた社会的立場」に気づき、視野が広がったと考えられます。この記述はEの変化を的確に表しています。

b:資料1・2は、通勤、家事、育児、介護といった、直接的には金銭(市場価値)に換算されないが、社会や経済活動を維持するために不可欠な労働の存在を明らかにしています。これは「人間の労働には経済活動以外の側面があるということ」を読み取ることができます。したがって、この組み合わせが正しいです。

③【誤】

aの「人間が労働において平等な関係に置かれているという現状」は、資料2が指摘する依存労働における「不平等な関係」と矛盾します。

④【誤】

aの「賃金の支払われない労働では常にやりがいが度外視される」という記述は、Eが思い出した「文化祭の準備」が「とてもやりがいがあって楽しかった」という発言と矛盾します。やりがいの有無と賃金の有無は必ずしも連動しません。

第4問

問1:正解①

<問題要旨>

教育や人間の知性について論じた思想家の説明として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【正】

デューイは、プラグマティズムを代表する思想家です。彼は、知性を固定的なものではなく、人間が環境との相互作用の中で問題に直面し、それを解決していくための「道具」として捉えました。そして、子どもが具体的な経験や試行錯誤の中から自ら学んでいくこと(問題解決学習)を重視しました。したがって、この記述はデューイの思想を正しく説明しています。

②【誤】

知識の発展を神学的、形而上学的、実証的という三段階で捉えたのは、フランスの社会学者コントです。デューイの思想ではありません。

③【誤】

人間を「シンボルを操る動物(アニマル・シンボリクム)」と定義し、人間は言語や神話、芸術、宗教といったシンボル的文化形式を通じて世界を理解し、独自の文化世界を築くと考えたのは、ドイツの哲学者カッシーラーです。ジェームズの思想ではありません。

④【誤】

ジェームズもプラグマティズムの思想家ですが、この記述は、言語で語りうるものと語りえないものを区別し、検証不可能な形而上学的な命題を無意味としたウィトゲンシュタイン(前期)や論理実証主義の思想に近いものです。

問2:正解⑤

<問題要旨>

充実した人生(ウェルビーイング)と密接に関わる心的状態を論じた人物についての説明として、適当なものを全て選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イが誤りであるため、この選択肢は誤りです。

②【誤】

ア、ウが正しいですが、この選択肢には含まれていません。

③【誤】

ア、イが正しいですが、この選択肢には含まれていません。

④【誤】

上記のとおり、イは誤りです。

⑤【正】

アは正しい記述です。精神科医であった神谷美恵子は、ハンセン病患者の療養施設での経験などから、『生きがいについて』という著作で、人が生きがいを感じるためには「自分には果たすべき使命がある」という感覚が重要であると述べました。

ウは正しい記述です。心理学者のアドラーは、人間は誰しもが劣等感を抱くが、それを克服しようと努力すること(補償)が、その人の成長や目標達成の原動力になると考えました。

イは誤った記述です。心理学者のマズローは、人間の欲求を階層構造で捉え(欲求階層説)、生理的欲求や安全の欲求といった低次の欲求が満たされて、より高次の欲求(承認の欲求や自己実現の欲求)が現れるとしました。「自己実現の欲求といった欲求が満たされてはじめて現れる」という部分が、自己実現の欲求を最高次の欲求としたマズローの説と整合しません。

したがって、アとウが正しいので、この選択肢が正解です。

⑥【誤】

上記のとおり、イは誤りです。

⑦【誤】

上記のとおり、イは誤りです。

問3:正解②

<問題要旨>

社会学者アルヴァックスの記憶についての文章を読み、その内容の説明として最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

資料の筆者(アルヴァックス)は、記憶を個人に限定して考察する心理学のあり方に「とても驚く」と述べており、個人から分析を始めるアプローチを批判しています。したがって、この選択肢は資料の内容と反します。

②【正】

資料には、「私が過去を思い出すのは、他の人々が自分に過去を想起するように促し、他の人々の記憶が自分の記憶を助け、自分の記憶は他の人々の記憶に支えられるからである」とあります。これは、記憶が孤立した個人の脳内にあるのではなく、人が所属する集団(家族、宗教、社会階級など)の「社会的枠組み」の中で、他者との関わりを通じて呼び起こされ、維持されるという考え方を示しています。したがって、この選択肢は資料の内容を的確に要約しています。

③【誤】

資料では「自分の脳の中なのか、それとも自分だけが近づけるどこか心の小部屋の片隅なのかを問うてみても無駄である。なぜなら、過去の思い出は、外部から呼び起こされたものだからである」と述べ、記憶が個人の内部に完結するものではないと主張しています。したがって、この選択肢は資料の内容と反します。

④【誤】

資料では、所属集団から「過去の思い出を再構成する手段を絶えず得られる」とありますが、「いつでも」想起できるとまでは断定していません。主題は、記憶が社会的であるという点であり、想起のタイミングについて保証するものではありません。

問4:正解②

<問題要旨>

地域社会の課題についての文章と会話文を読み、空欄a、bに入る記述として最も適当な組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

aの「まずは地域住民…それが難しい場合に行政」という順序は、文章の「まずは政府や行政が…支援を行う」「しかし、行政の取組みだけでは支援が十分に行き届かないことがある…地域住民が…協力体制を築きながら」という記述の順序と逆になっています。

②【正】

a:Gの「行政が対策するべきことじゃないの?」という主張に対し、Hが文章の内容を踏まえて反論する場面です。文章は、行政の支援だけでは不十分な場合があり、地域住民による協力が必要になる、という趣旨を述べています。「行政の取組みも重要だけど、それでは不十分なこともあり、地域住民も積極的に行動しないといけない」という記述は、この文章の趣旨を的確に要約しており、Gへの応答として適切です。

b:Hの「昔からのやり方に従わなかったり…居心地悪い」という悩みに対し、Gが文章の内容を踏まえて応じる場面です。文章は、異文化との接触が「多文化共生の精神を育んだり」「地域社会固有の文化に参加しやすくなる」契機になると述べています。「地域社会での交流が深まり、社会的なつながりができれば、新しい住民も地域社会の文化を受け入れやすくなる」という記述は、この趣旨に沿っており、Hの悩みをポジティブな視点へ転換させる発言として適切です。したがって、この組み合わせが正しいです。

③【誤】

aの「行政に頼らず、地域住民だけで」という部分は、文章が示す「自治体と協力体制を築きながら」という記述と矛盾します。

④【誤】

bの「交流の機会がなくとも、時間が経てば自然に…慣れる」という部分は、文章が交流や社会的なつながりの構築の重要性を強調している点と矛盾します。

第5問

問1:正解④

<問題要旨>

需要曲線と供給曲線のモデルを用いて、特定の経済事象(駅の利便性向上による家賃高騰)を正しく説明している図と曲線の組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

この問題の解答には、経済学の基本的な原則を適用します。

供給:メモに「市内の賃貸アパートの物件数は増減しないとする」とあるため、供給量は価格(家賃)によらず一定です。これは、グラフ上では垂直な「供給曲線」として表されます。

需要:メモに「借り手は家賃に応じて入居を決める」とあり、通常、家賃が安ければ借りたい人は増え、高ければ減ります。これは、グラフ上では右下がりの「需要曲線」として表されます。

事象:「J市駅に特急が停まるようになり、都心へのアクセスが便利になった」ことで、その市に住みたいと考える人が増えます。これは、どの家賃水準においても需要が増加することを意味し、需要曲線が右側へシフト(移動)する要因となります。

結果:「家賃が高騰した」とあるように、需要曲線が右へシフトした結果、供給曲線との新たな交点(均衡点)は、以前よりも高い家賃の位置に移動します。 以上の分析から、垂直な供給曲線と、右側へシフトする右下がりの需要曲線が描かれ、結果として価格が上昇している図が正しいものとなります。問題の選択肢の中から、この条件に合致する「図」と、需要曲線を表す「曲線」の正しい組み合わせを選ぶ必要があります。正解の選択肢④は、これらの条件を満たす図と曲線の組み合わせを示しています。

問2:正解④

<問題要旨>

GDP(国内総生産)に関する会話の空欄ア、イ、ウに入る語句や記述の、正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

ア、ウが誤りです。

②【誤】

アが誤りです。

③【誤】

ウが誤りです。

④【正】

ア:一人当たりの豊かさは「一人当たりGDP」で測られます。これは「GDP÷人口」で計算されるため、GDPが一定でも人口が減少すれば、一人当たりGDPは「増大」します。よってアはaの「増大」。

イ:GDPは、市場で取引された財・サービスの付加価値の合計です。そのため、市場を介さない活動や価値は原則として算入されません。「気候変動が引き起こした山火事による森林などの自然環境の損失」は、国民の豊かさに大きな影響を与えますが、市場取引ではないためGDPには計上されません。よってイはd。ちなみにcの「再生可能エネルギーを開発するための支出」は、投資としてGDPに算入されます。

ウ:GDPが必ずしも国民の豊かさや福祉を正確に反映しないという限界から、それに代わる新しい指標が考案されてきました。その代表例が、公害による損失や家事労働の価値などを加味して、より福祉の水準を測ろうとするNNW(国民純福祉)です。よってウはfの「NNW」。

以上から、ア:a、イ:d、ウ:fの組み合わせとなり、この選択肢が正しいです。

⑤【誤】

イ、ウが誤りです。

⑥【誤】

イが誤りです。

⑦【誤】

ア、イ、ウすべてが誤りです。

⑧【誤】

ア、イが誤りです。

問3:正解③

<問題要旨>

金本位制、IMF体制、キングストン体制という国際通貨体制の特徴について、表の空欄ア〜エを埋める正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イが誤りです。

②【誤】

イ、ウ、エが誤りです。

③【正】

ア:金本位制の下では、中央銀行が発行する紙幣(銀行券)は、いつでも一定量の金(正金)と交換することが保証されていました。これを兌換紙幣と呼びます。よってアは「兌換」。

イ:IMF体制(金・ドル本位制)では、アメリカのドルだけが金との兌換を保証され、各国の通貨はドルとの固定相場制で結びつけられました。したがって、ドル以外の通貨は金と直接交換できない不換紙幣でした。よってイは「不換」。

ウ:IMF体制は、各国の通貨価値をドルに固定する「固定相場制」でした(ただし、一定範囲での変動は認められていました)。よってウは「固定」。

エ:キングストン体制は、1973年の変動相場制への移行を追認したもので、主要国通貨の為替相場が市場の需給によって決まる「変動相場制」です。よってエは「変動」。

したがって、ア兌換・イ不換・ウ固定・エ変動の組み合わせとなります。(注:問題冊子の選択肢に乱れがある可能性がありますが、上記の組み合わせが正しい内容です。正解番号③に記載された組み合わせがこれと一致すると考えられます。)

④【誤】

ウ、エが誤りです。

⑤【誤】

アが誤りです。

⑥【誤】

ア、エが誤りです。

⑦【誤】

ア、ウが誤りです。

⑧【誤】

ア、イ、ウ、エすべてが誤りです。

問4:正解①

<問題要旨>

日本の輸出割合の推移を示す図と、貿易摩擦に関するメモから、図中の「ア」が示す国・地域と、メモの出来事を古い順に並べた際の3番目を正しく組み合わせる問題。

<選択肢>

①【正】

図の分析:グラフ「ア」は、1980年代には輸出割合が極めて低いものの、1990年代から上昇を始め、特に2001年以降に急増し、近年ではアメリカと並ぶ日本の主要な輸出相手国となっていることを示しています。この経済成長の軌跡は、改革開放政策を進め、2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した「中国」のものです。

メモの年代整理:

d. 1ドル=250円前後の円安は、1985年のプラザ合意以前、1980年代前半の状況です。(1番目)

b. ルーブル合意は、プラザ合意後のドル安の行き過ぎを是正するため、1987年になされました。(2番目)

a. 日米構造協議は1989年から、日米包括経済協議は1993年から始まりました。(3番目)

c. 激しい日米貿易摩擦が沈静化したのは、これらの協議などを経た1990年代後半以降のことです。(4番目)

結論:したがって、3番目にくるメモは「a」です。アが「中国」、3番目が「メモa」という組み合わせであるこの選択肢が正しいです。

②【誤】

3番目にくるメモがbではありません。

③【誤】

3番目にくるメモがcではありません。

④【誤】

3番目にくるメモがdではありません。

⑤【誤】

アはアジアNIESではなく中国です。

⑥【誤】

アはアジアNIESではなく中国です。

⑦【誤】

アはアジアNIESではなく中国です。

⑧【誤】

アはアジアNIESではなく中国です。

問5:正解②

<問題要旨>

所得のジニ係数(図1)と労働組合の組織率(図2)の国際比較データから、読み取れる内容として正しい記述を全て選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

ウが誤りです。

②【正】

イは正しい記述です。図2から、1980年、2019年のいずれにおいても、労働組合の組織率が最も高い2か国はスウェーデンとデンマークです。次に図1を見ると、この2か国は、日本やアメリカと比較して、いずれの年もジニ係数が低くなっています。ジニ係数が低いほど所得格差は小さいことを意味するため、この記述は図から読み取れる事実と合致します。

アは誤った記述です。図1を見ると、4か国すべてにおいて、2019年(薄い灰色)のジニ係数は1980年(濃い灰色)よりも高くなっています。これは所得格差が「拡大」したことを意味し、「縮小」したという記述と矛盾します。

ウは誤った記述です。「所得格差は小さい」という部分が誤りです。図1から、日本のジニ係数は、スウェーデンやデンマークよりも高くなっています。

したがって、正しい記述はイのみであり、この選択肢が正解です。

③【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

④【誤】

上記のとおり、アとウは誤りです。

⑤【誤】

上記のとおり、アとウは誤りです。

⑥【誤】

上記のとおり、ウは誤りです。

⑦【誤】

上記のとおり、アとウは誤りです。

問6:正解②

<問題要旨>

ギグワーカーに関する会話文を読み、空欄ア、イに入る語句の正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イが誤りです。

②【正】

ア:会話では、ギグワーカーに最低賃金法が適用されるかが論点となっています。最低賃金法をはじめとする労働法で保護される対象は、法律上の「労働者」です。ギグワーカーは、企業と雇用契約を結ばない個人事業主(自営業者)として扱われることが多く、労働者性が認められるかが争点となります。文脈上、法の保護対象である「労働者」を入れるのが最も適切です。

イ:会話の最後で、労働問題に関する救済申し立てのあった機関について触れられています。「労働者の代表、使用者の代表、公益の代表で構成される」という三者構成の機関は「労働委員会」です。労働委員会は、不当労働行為の審査や、労働争議のあっせん・調停・仲裁などを行う行政機関です。

したがって、アに「労働者」、イに「労働委員会」が入るこの選択肢が正しいです。

③【誤】

ア、イともに誤りです。国民生活センターは消費者のための機関です。

④【誤】

アが誤りです。

⑤【誤】

ア、イともに誤りです。ギグワーカーが自営業者と見なされることはありますが、会話の文脈(最低賃金法の適用)では、その前提となる「労働者」かどうかが問われているため、「労働者」がより適切です。

⑥【誤】

アが誤りです。

第6問

問1:正解⑤

<問題要旨>

刑事裁判の原則「疑わしきは被告人の利益に」に反すると考えられる行為を、具体例から全て選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イは原則に反しません。

②【誤】

ア、ウが原則に反するため、この選択肢は誤りです。

③【誤】

ア、イが原則に反するため、この選択肢は誤りです。

④【誤】

イは原則に反しません。

⑤【正】

「疑わしきは被告人の利益に」とは、検察官が挙げた証拠を裁判官(や裁判員)が検討した結果、被告人が罪を犯したことについて合理的な疑いが残る場合には、有罪判決を下してはならず、無罪としなければならないという刑事裁判の大原則です。

ア:「合理的な疑いは残るものの、Jである可能性が高いので」有罪判決を下すことは、この原則に明確に反します。

ウ:「犯人がLであることについて合理的な疑いが生じるにもかかわらず」有罪判決を維持することは、この原則に明確に反します。再審において疑いが生じた場合は無罪としなければなりません。

イ:「合理的な疑いを差し挟む余地はないので」有罪判決を下すことは、この原則を正しく適用した例であり、原則に反しません。

したがって、原則に反する行為はアとウであり、この選択肢が正しいです。

⑥【誤】

イは原則に反しません。

⑦【誤】

イは原則に反しません。

問2:正解④

<問題要旨>

国際法における条約と国際慣習法の関係、および日本の領海通航に関する会話の空欄ア、イを埋める問題。

<選択肢>

①【誤】

ア、イともに誤りです。

②【誤】

アが誤りです。

③【誤】

イが誤りです。

④【正】

ア:アメリカが国連海洋法条約の締約国でなくても、領海における他国船舶の無害通航権を認めなければならない理由を問われています。無害通航権のように、多くの国が長期間にわたり法的に義務であると認識して実践してきたルールは、「国際慣習法」として、条約の締約国であるか否かにかかわらず、全ての国を拘束します。国連総会の決議は、一部の例外を除き、一般的に法的拘束力を持ちません。よってアはbが正しいです。

イ:日本が、核兵器を搭載した艦船の領海通航を無害通航とは認めない立場をとっている根拠を問われています。これは、国是である「持たず、作らず、持ち込ませず」の「非核三原則」に基づく独自の政策的解釈によるものです。よってイはdが正しいです。

したがって、アにb、イにdが入るこの選択肢が正しいです。

問3:正解②

<問題要旨>

日本の国内法(法律)と国際法(条約)の関係についての二つの見解を述べた記事の空欄ア、イを埋める問題。

<選択肢>

①【誤】

イが誤りです。

②【正】

ア:記事は、日本が女性差別撤廃条約を批准するために、国内法を改正した例を挙げています。この条約の批准(1985年)に際して行われた重要な法改正が、それまでの父系血統主義を改めて父母両系血統主義を導入した「国籍法」の改正(1984年)です。よってアは「国籍法」。

イ:△△氏は、条約が法律に優位するとの説に疑問を呈し、その根拠として、憲法が条約の国会承認に「イ」の手続きを準用することを挙げています。憲法上、条約の締結には国会の承認が必要ですが(73条3号)、その手続きは法律の制定手続きに準じて行われます。△△氏は、法律と同じように国会の議決を経て成立するのだから、条約が法律に優位するとは言えない、と論じているのです。選択肢の中では、国会の議決手続きである「法律の議決」が最も近いですが、設問の選択肢は「予算の議決」となっています。これは、条約承認案の衆議院での可決後、参議院が異なる議決をした場合に、両院協議会でも意見が一致しないとき、30日以内に参議院が議決しないときは衆議院の議決が国会の議決となる点など(憲法60条2項、61条)、手続きの一部に予算の議決との類似性や関連性があることを指していると解釈されます。設問の意図としては、国会の承認手続きを指すものと考えられます。よってイは「予算の議決」。(注:この部分は法解釈上、複雑な論点を含みます。)

したがって、アに「国籍法」、イに「予算の議決」が入るこの選択肢が正しいです。

③【誤】

ア、イともに誤りです。

④【誤】

アが誤りです。

問4:正解③

<問題要旨>

日本の司法権、特に違憲審査権に関する会話の空欄ア、イを埋める問題。

<選択肢>

①【誤】

アが誤りです。

②【誤】

ア、イともに誤りです。

③【正】

ア:法律などが憲法に違反していないかを審査する違憲審査権は、憲法第81条で「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定められています。この権限は、最高裁判所だけでなく、全ての裁判所(下級裁判所)も行使できると解釈されています。よってアはbが正しいです。

イ:日本の違憲審査制は、具体的な訴訟事件を解決するために必要な限度においてのみ、法律の憲法適合性を判断する「付随的違憲審査制」を採用しています。具体的な事件を離れて、法律そのものの合憲性を抽象的に判断することはできません。よってイはcが正しいです。

したがって、アにb、イにcが入るこの選択肢が正しいです。

④【誤】

イが誤りです。

問5:正解②

<問題要旨>

国際刑事裁判所(ICC)に関するメモを読み、スーダンとロシアの国家元首に逮捕状が出された理由を正しく説明している選択肢を選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

例2の理由が異なります。

②【正】

ICCが管轄権を行使できる条件は、①締約国による付託、②国連安保理による付託、③検察官による捜査開始、の3つです。スーダンもロシアもICCの締約国ではありません。

例1(スーダンのバシール大統領):この事件は、国連安全保障理事会がダルフール情勢をICCに付託する決議を採択したことによって、ICCの捜査・訴追が可能となりました。安保理による付託の場合、関係国がICC非締約国であっても管轄権が及びます。

例2(ロシアのプーチン大統領):この事件では、犯罪行為地国であるウクライナが、自国領域内で起きた犯罪についてICCの管轄権を受諾する旨の宣言をしていたため、検察官が捜査を開始し、逮捕状の発付に至りました。

したがって、この選択肢の説明は正しいです。

③【誤】

例1と例2の理由が逆になっています。

④【誤】

例1の理由が異なります。

問6:正解①

<問題要旨>

日本におけるプライバシーの権利や知る権利に関する記述として、最も適当なものを選ぶ問題。

<選択肢>

①【正】

個人情報保護法は、本人が自身の個人情報について、事業者に対して開示を請求する権利(開示請求権)を認めています。さらに、開示された情報が事実でない場合には、その訂正、追加または削除を請求する権利(訂正等請求権)や、目的外利用や不正取得がされている場合には、利用の停止などを請求する権利(利用停止等請求権)も保障しています。したがって、この記述は正しいです。

②【誤】

プライバシー権を侵害された場合、民法の不法行為に基づき損害賠償を請求できるだけでなく、人格権に基づき、将来の侵害行為の差し止めを請求することも判例で認められています。「差止めを請求することはできない」という部分が誤りです。

③【誤】

特定秘密保護法は、国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿が必要なものを「特定秘密」として指定し、その漏えいを罰する法律です。国民の「知る権利」を保障するどころか、むしろそれを制限する側面があるとして、制定時に大きな議論を呼びました。

④【誤】

通信傍受法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)は、組織犯罪などの重大な犯罪の捜査に限り、裁判所の令状(許可状)など厳格な要件の下で、捜査機関が電話などの通信を傍受(盗聴)することを認めています。「一律に禁じられている」わけではありません。

第7問

問1:正解④

<問題要旨>

選挙制度と執政制度の特徴から、アメリカ、イギリス、ドイツの政治体制を正しく分類する問題。

<選択肢>

①【誤】

ア、イ、ウの組み合わせが誤りです。

②【誤】

ア、イ、ウの組み合わせが誤りです。

③【誤】

ア、イ、ウの組み合わせが誤りです。

④【正】

メモの類型に従って各国を分類します。

・ア(権力が集中的・比例性が低い):権力が集中的になりやすいのは議院内閣制、選挙の比例性が低いのは小選挙区制です。この典型例が、二大政党制が定着している「イギリス」です。

・ウ(権力が分立的・比例性が低い):権力が分立的なのは大統領制、選挙の比例性が低いのは小選挙区制です。この典型例が「アメリカ」です。

・イ(権力が集中的・比例性が高い):権力が集中的なのは議院内閣制、選挙の比例性が高いのは比例代表制です。小選挙区比例代表併用制を採用し、連立政権が常態化している「ドイツ」がこれに該当します。

したがって、ア:イギリス、イ:ドイツ、ウ:アメリカの組み合わせであるこの選択肢が正しいです。

⑤【誤】

ア、イ、ウの組み合わせが誤りです。

⑥【誤】

ア、イ、ウの組み合わせが誤りです。

問2:正解③

<問題要旨>

社会主義の経済体制に関する会話の空欄ア、イを埋める問題。

<選択肢>

①【誤】

アが誤りです。

②【誤】

ア、イともに誤りです。

③【正】

ア:社会主義経済では、資本主義経済における生産手段の私有(私有財産制)が、搾取や格差の根源であると考えられます。そのため、土地や工場といった生産手段は、原則として国家や社会によって所有・管理されます。これを「公有」といいます。よってアは「公有」。

イ:中国は、1970年代末からの改革開放政策のもとで、外国の資本や技術を導入するために、沿岸部の都市などに「経済特区」を設置しました。経済特区では、税制上の優遇措置などがとられ、市場経済の原理が実験的に導入されました。よってイは「経済特区」。ちなみに「人民公社」は、改革開放以前の毛沢東時代に、農業の集団化のために組織されたものです。

したがって、アに「公有」、イに「経済特区」が入るこの選択肢が正しいです。

④【誤】

イが誤りです。

問3:正解④

<問題要旨>

アダム・スミスの思想に関するメモの空欄ア、イを埋める問題。

<選択肢>

①【誤】

ア、イともに誤りです。

②【誤】

イが誤りです。

③【誤】

アが誤りです。

④【正】

ア:アダム・スミスは、主著『国富論』の中で、各個人が自己の利益を追求して経済活動を行えば、まるで「見えざる手」に導かれるように、結果として意図せず社会全体の利益、すなわち「公共の利益」が増進されると説きました。

イ:スミスが生きた18世紀のイギリスで主流だった経済思想・政策は、国家が貿易を管理・統制して、輸出の促進と輸入の抑制によって国内に富(金銀)を蓄積しようとする「重商主義」でした。スミスはこのような国家の介入を批判し、自由な競争(自由放任主義)こそが国を豊かにすると主張しました。

したがって、アに「公共の利益」、イに「重商主義」が入るこの選択肢が正しいです。

問4:正解③

<問題要旨>

核兵器禁止条約をめぐる各国の立場を想定した模擬国連の資料を読み、空欄ア〜オに入る国名と主張の正しい組み合わせを選ぶ問題。

<選択肢>

①【誤】

イの主張が異なります。

②【誤】

ウの国名、イの主張が異なります。

③【正】

国名の特定:

・ア:トラテロルコ条約(ラテンアメリカ非核地帯条約)を推進し、核兵器禁止条約の策定を主導した国は「メキシコ」です。

・ウ:NPT(核拡散防止条約)で核兵器保有を認められている国(核兵器国)で、選択肢にある国は「フランス」です。

・オーストラリアは、アメリカの「核の傘」の下にある国として正しく説明されています。

主張の特定:

・イ(メキシコの主張):核兵器の非人道性を訴え、その廃絶を求めるのが、条約推進国の中心的な論拠です。よってイは「b 核兵器が使用された場合にもたらされる非人道的な被害の大きさ」。

・エ(フランスの主張):核兵器国は、核兵器がもたらす抑止力によって戦争が防がれ、国際平和が維持されていると主張し、核廃絶に反対します。よってエは「a 自国の核兵器保有がもたらす抑止力によって国際平和が保たれる効果」。

・オ(オーストラリアの主張):「核の傘」の下にある国は、核廃絶の理念には賛成しつつも、核兵器国が参加しない条約は実効性がないとして、交渉開始に慎重な立場をとります。よってオは「c 核兵器保有国が条約に参加する見通しがないことによる実効性の低さ」。

結論:問題で問われているのは「イ」と「ウ」の組み合わせです。イはb、ウはフランスとなるため、この選択肢が正しいです。

④【誤】

ウの国名が異なります。

⑤【誤】

イ、ウの主張が異なります。

⑥【誤】

イの主張が異なります。

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