2018年度 大学入試センター試験 本試験 倫理・政治経済 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解1

<問題要旨>
この問題は,青年期における自己形成の過程を扱い,ハヴィガースト(Havighurst)が提示した「発達課題」と,オルポート(Allport)が提示した「成熟した人格」の条件に関する理解を問うものです。青年がどのような課題に取り組むべきか,あるいは成熟した人格とは何を意味するのかについて,理論を正しく把握しているかがポイントとなります。

<選択肢>
①【正】
ハヴィガーストの「発達課題」には,青年が親との関係を再検討し,親の価値観を自分の中に取り込む過程が含まれると整理されることがあります。とくに「親からの精神的自立」を図る一方で,親との情緒的な結びつきを一切否定するのではなく,青年期において改めて親の価値観を内面化・再評価する面も指摘されるため,この選択肢はハヴィガーストの議論として大筋で正しい内容といえます。

②【誤】
ハヴィガーストの発達課題には「職業の選択や経済的自立の準備」「異性や友人との成熟した関係を築くこと」が挙げられますが,選択肢②のように「他者と“洗練された”人間関係を築きあげる」ことを強調しすぎるのは,原典の表現とはやや異なります。ハヴィガーストが示すのは「友人関係や異性関係を成熟させる」ことであり,それを「洗練された関係」と形容する表現は必ずしも定義どおりではありません。また,職業決定や経済的独立の準備に関しても,他の選択肢や文脈と照合するとややズレがあると考えられます。

③【誤】
オルポートは「自分以外への関心を広げる」ことや「現実や自己を客観的にみる」ことを成熟の条件として挙げてはいます。しかし,選択肢③のように「広げればそれが直接,成熟した人格になるための基準になる」という言い方は,オルポートの議論を単純化しすぎています。オルポートの理論では,自己の独自性の確立や社会的関心の広がりなど複数の要件が重視されるため,この文言だけでは不十分と判断できます。

④【誤】
オルポートは成熟した人格の特徴として「包括的な人生哲学をもつ」「自分なりの価値観や人生観を確立する」などを挙げていますが,「ユーモアの感覚をもつこと」が直接的な必須条件とはされていません。たしかにオルポートは「自己を客観視し,安定した価値観や人生観をもつ」ことの一環として「ユーモアを解する余裕」も示唆していますが,選択肢④の表現だと,あたかも「独自の人生哲学とユーモアさえあれば成熟だ」という短絡的な読み方にもつながり,やや不正確です。

問2:正解7

<問題要旨>
この問題は,社会的・人道的活動を行った人物を,その理念や具体的活動の特徴から正しく組み合わせる問題です。労働環境改善に尽力した人物,インドを拠点に貧困者や孤児などを支援した人物,人種差別と闘い黒人の公民権(人権)を勝ち取る運動を展開した人物を見極め,それぞれ誰に当てはまるかを判断します。

<選択肢>
① ア=エンゲルス イ=ガンディー ウ=キング牧師
② ア=エンゲルス イ=ガンディー ウ=ラッセル
③ ア=エンゲルス イ=マザー・テレサ ウ=キング牧師
④ ア=エンゲルス イ=マザー・テレサ ウ=ラッセル
⑤ ア=オーウェン イ=ガンディー ウ=キング牧師
⑥ ア=オーウェン イ=ガンディー ウ=ラッセル
⑦ ア=オーウェン イ=マザー・テレサ ウ=キング牧師
⑧ ア=オーウェン イ=マザー・テレサ ウ=ラッセル

①【誤】
エンゲルスはマルクスとともに社会主義理論を発展させ,労働者階級の解放を説いた人物ですが,「工場を所有しながら実際に労働環境改善のモデル実験を試みた」というロバート・オーウェンのような活動形態とは異なります。

②【誤】
ガンディーはインド独立運動の指導者として非暴力・不服従を唱えましたが,貧困者の救済活動で孤児院やホスピスを設立するような活動を指導的に行ったわけではありません(もちろん弱者救済も説きましたが,母体としての大規模社会事業はマザー・テレサなど別の人物が顕著)。また,「ウ=ラッセル」は反戦平和運動などで知られますが,黒人の公民権運動とは結びつきが薄いです。

③【誤】
エンゲルスはインドでの孤児救済などを手掛けたわけではありませんし,マザー・テレサの活動内容をエンゲルスが行ったとは言えません。

④【誤】
同様に,ウ=ラッセルは哲学者バートランド・ラッセルを指す場合が多く,黒人差別と闘ったキング牧師(マーティン・ルーサー・キングJr.)の活動とは趣を異にします。

⑤【誤】
オーウェン(Robert Owen)は労働環境を劇的に改善しようとした実業家・社会改良家ですが,イ=ガンディーだと貧困者や孤児といった社会的弱者の救済活動を象徴する人物像と合致しません。

⑥【誤】
イ=ガンディー,ウ=ラッセルの組合せも,それぞれの活動分野(インド独立運動とイギリスの哲学者)で黒人公民権運動に該当しないため不一致です。

⑦【正】
ア=オーウェン(Robert Owen)は,イギリスの実業家として労働環境の改善や共同体構想などに尽力した人物です。イ=マザー・テレサは,インドを拠点に貧しい人々,孤児や病人などへの救済活動を徹底した修道女として知られています。ウ=キング牧師(Martin Luther King Jr.)は,アメリカで非暴力的手段による黒人公民権運動を主導し,人種差別撤廃に尽力した人物です。この組合せがもっとも妥当です。

⑧【誤】
イ=マザー・テレサ,ウ=ラッセルという組合せは,ラッセルが人種差別撤廃を目指した公民権運動の中心人物ではないため誤りです。

問3:正解1

<問題要旨>
この問題は,マズロー(A. H. Maslow)が考案した「欲求の階層説」についての理解を問うものです。生理的欲求や安全の欲求がまず満たされ,次に所属と愛の欲求,さらには自尊の欲求へと進み,最終的には自己実現へと向かうという段階的な構造が正しく理解できているかがポイントとなります。

<選択肢>
① ア=正 イ=正
 アでは,他者との親密な関係や愛情・所属の欲求が満たされたあとに承認(自尊)の欲求が生じる,という流れを説明しています。これはマズローの理論でいえば下位の欲求が満たされると次の高次欲求が生起するという段階的特徴に合致します。
 イでは,生理的欲求や安全の欲求が満たされて初めて自己実現の欲求が芽生えるという内容で,これもマズローの序列を正しく捉えています。よって両方が正しい組合せとなります。

② ア=正 イ=誤
 アが正しいのは①と同様ですが,イが誤りとするのは,マズローの段階的な説明と一致しないか,あるいは順番を取り違えている内容を含む場合です。実際のマズロー理論と合致しないため不適切です。

③ ア=誤 イ=正
 アが誤り,イが正しい,という組合せは,アの記述がマズローの段階をはき違えている場合を想定します。しかし本来アの記述は正しいため,この組合せは不適切です。

④ ア=誤 イ=誤
 アもイも誤りとしてしまうと,マズローの欲求段階説の根本と合わなくなるため,やはり不適切です。

問4:正解3

<問題要旨>
この問題は,ノーベル平和賞を受賞した国境なき医師団の医師(国境なき医師団創設に関わった人物)の人道主義について述べた文章をもとに,人道援助の原則や政治的介入との関係をどのように理解すべきかを問う内容です。政治が機能不全に陥った際に人道支援が必要とされる一方,その支援が政治利用されてはならないという中立性の問題が強調されます。

<選択肢>
①【誤】
「人道主義が政治の失敗の責任を引き受けることができる」という表現は,人道団体が政治責任を肩代わりするかのようにも読めます。しかし本文では「政治の役割や責任の放棄を免罪するために人道援助を使ってはならない」という考えが示されており,それを積極的に「政治の失敗を引き受ける」とは捉えていません。

②【誤】
「国際人道法に基づく政治的・法的枠組を整えれば,人道活動は政府の影響を受けずに完全に行える」というのは楽観的すぎる解釈です。実際には紛争地域などでの活動は政治の影響が生じやすく,本文中でも「支援が政治的に利用されてしまう可能性」を危惧しています。

③【正】
本文では,人道支援は「交戦国や政治勢力の思惑で利用されない中立性」を守らなくてはならず,かつ支援対象者へのアクセスを法的・実質的に確保する必要があると述べています。つまり「法が整備されても政治的・軍事的な介入によっては支援が妨げられる」危険を示唆しつつも,人道支援の原則(中立・独立・公平)が維持されるべきだという論旨と一致します。

④【誤】
「国際人道法の枠組を拒否されたとしても,やむを得ない」という表現は,人道支援をあきらめる(あるいは許容する)ようにも読めます。しかし本文では,むしろ政治が失敗したときこそ人道援助の必要性が増すと主張しており,「支援をあきらめる」姿勢は示されていません。

問5:正解4

<問題要旨>
この問題は,アマルティア・セン(A. Sen)の「ケイパビリティ(潜在能力)アプローチ」に基づく福祉の考え方について問うものです。センは,単なる所得や財貨の分配ではなく,各人が自分の能力を発揮し自由に活動を選択できる状態こそが重要であり,それを可能にするための社会的・経済的支援が必要だと説いています。

<選択肢>
①【誤】
「個人の才能としての潜在能力を最大限に引き出す」点はセンの主張に近い面がありますが,ここでは「財や所得の豊かさという福祉の目標を実現しなければならない」とあるため,福祉の内容を「財貨の豊かさ」に偏って捉えている印象が強いです。センはむしろ「財そのもの」より「それを活用できる状態(ケイパビリティ)」を重視します。

②【誤】
「生き方の幅としての潜在能力を改善し,それを自由に実現できるようにする」という点はセンの考えに近いものの,ここでは「財や所得の豊かさという福祉の目標を実現しなければならない」という部分が依然として主目標に据えられています。センの理論では所得や財が重要な手段であっても,それ自体が最終目的ではないため,ややずれがあります。

③【誤】
「個人の才能を伸ばすこと」はセンの議論と合致しますが,「財貨による目的への分配が十分に考慮されないままでよい」と読める表現は,センのいう「公正な自由選択のための支援」(例えば教育や医療へのアクセス)を軽視しているおそれがあります。適切な分配が行われず,ケイパビリティが活かせないなら真の意味での福祉が成立しにくいからです。

④【正】
「生き方の幅としての『潜在能力』を改善し,各人が自分の達成できる状態・活動をより自由に選択できるようにする」ことを福祉の目標とし,「財はその目的のために分配されなければならない」という点はセンの主張に合致します。センは,単にモノやお金を増やすだけではなく,人々がそれを使ってどんな生き方を自由に選びとれるか(ケイパビリティ)を重視しているからです。

第2問

問6:正解1

<問題要旨>
この問題は,日本の神話や伝承で語られる「神」の捉え方に関して,どのような特徴や性格づけがなされてきたかを確認するものです。神が自然現象の背後に宿ると考えられたり,人間の生活に深く関わるものとして崇敬の対象となったりする日本固有の信仰形態を踏まえ,最も適当な説明を導くことが求められます。

<選択肢>
①【正】
「神は特定の形をもつのではなく,人間にさまざまな畏敬の念を抱かせる存在で,ときに人間の理解を超える不思議な現象を伴う」などの考え方は,日本の神観に通じています。自然界のあらゆる事象に神が宿るとされる多神教的な観点,あるいは人の祈りや生活に密接に寄り添う神観が示されるため,この選択肢は日本の伝承の捉え方と合致します。

②【誤】
神が「苔草を育むだけでなく,懺悔をすることで人間を救う」といった記述がある場合,むしろキリスト教的な救済観や特定宗教での“悔い改め”を神が働きかけるように描く要素が混在しています。日本神話では,神に対する祈りや祭祀はあっても,悔悛行為それ自体が神の内面に直接作用するという表現はあまり見られず,不適切といえます。

③【誤】
「疫病の流行を神の呪いと捉え,災いを払うための教え」が強調されるのは,一面では古代日本の信仰に存在する要素ですが,その場合でも“神”が一方向に人間を脅かすだけでなく,豊穣や安寧をもたらすという多面的な性格を有しています。選択肢③の表現だけでは一面的であり,「いかなる状況にも効力をもたらさない教え」と読み取れてしまうため,行きすぎた捉え方といえます。

④【誤】
「神が人間の住む世界から隔離され,まったく関与しない」とするのは,一神教的な超越神のイメージに近い解釈です。日本の伝承における神は,自然界や共同体の内部に生きる存在とされることが多く,農業や祭りなどを通して人間と深く交わってきました。よって,この選択肢は日本神話の特徴と相容れません。

問7:正解1

<問題要旨>
この問題は,仏教の「八正道」についての正しい理解を問うものです。八正道は苦しみの原因を断ち,中道を歩むための具体的な行いを「正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定」の八つに整理して示した教えです。それぞれが「邪」を退けて「正」を実践する道筋となっており,正確に把握できているかが問われます。

<選択肢>
①【正】
「快楽と苦行の両極端を避け,中道を生きる修行法」という八正道の定義は仏教の根本的な概念です。また,各正道の中の「正業」とは,悪しき行為をやめて正しく行為することを意味し,これも仏教の倫理観と一致します。よって適切な説明です。

②【誤】
「八正道が中道を生きる修行法」という点はよいのですが,正業を「人の行為と輪廻の関係を正しく認識すること」とするのはややずれがあります。正業は行為そのものを正しく行うことであり,輪廻そのものとの対応づけを直接担うのは「正見」などの知見部分にも関わってきます。

③【誤】
「六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道である」とまとめるのは誤りです。六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)は大乗仏教の実践徳目として知られますが,八正道は原始仏教から説かれる基本的実践項目です。両者を混同するのは適切ではありません。

④【誤】
「六波羅蜜の教えに由来する修行法が八正道であり,その“正業”は人の行為と輪廻の関係を正しく認識することを指す」というのは,③と同様に六波羅蜜と八正道を混同しています。さらに正業を認知面の問題として扱ってしまっている点も不正確です。

問8:正解2

<問題要旨>
この問題は,「日蓮」の教説や布教活動・国家観などに関する説明のうち,どれが適切でないかを判断する問題です。日蓮は法華経を至上経典と捉え,法華経の信仰を通じて国家の安泰をも期待しましたが,その内容をどのように理解するかがポイントとなります。

<選択肢>
①【誤(適切でない説明が①かどうか精査が必要)】
「個人の救済だけでなく,正しい仏法による国家の実現を重視し,為政者への布教を試みることで現実社会を仏国土とする」という趣旨は,日蓮の立場に近い部分があります。法華経をもとに国家のあるべき姿を論じた日蓮が,為政者に積極的に進言したことは事実です。これだけでは誤りとはいえません。

②【正(“適切でない”説明である=誤り記述として正解)】
「国難の到来を防ぎ,国土安穏を実現するために,宗派間での融和を図ることが必要だと考え,他宗に協力を呼びかけた」という趣旨は,むしろ日蓮の実像とは異なります。日蓮は他宗を厳しく批判し,法華経以外の教えを盛んに退けたことが知られます。融和よりも法華経信仰の排他的な立場をとったため,この内容は日蓮の言動を誤って伝えている可能性が高いです。

③【誤】
「法華経には,釈迦入滅後も末法に至るまで法が連綿と続くことが説かれていることに着目し,末法の世であっても救済は達成され得ると主張した」というのは,日蓮が強調した末法思想と法華経至上の考え方に近い面があります。したがって,この部分自体は日蓮の信念の要点に合致します。

④【誤】
「法華経には,人々の救済に関する菩薩行が描かれていることに着目し,その姿に自分をそえるようにと教えを説いた」という記述も,日蓮が個人に向けて法華経の実践を呼びかけた姿勢と一定程度合致します。特に『法華経』普賢菩薩勧発品などで菩薩行が説かれることを基盤に,他者救済のために修行すべしという主張を行いました。

問9:正解4

<問題要旨>
この問題は,近世日本において学問がいかに発展したかを題材とし,「出版業の盛り上がり」「儒学の多様化」「塾や講義のあり方」などを解説する文章を読み,そこに登場する人物や学派を正しく組み合わせる力が問われます。本文における論考や固有名詞(貝原益軒・本居宣長・安藤昌益・富永仲基・新井白石・荻生徂徠 など)の思想背景を理解し,記述と合致するかを判断します。

<選択肢>
①【誤】
a=貝原益軒,b=安藤昌益,c=新井白石 という組合せは,本文中の「aが出版等を通じて幅広く書籍を著した」「bが独自の学を唱えた農民中心思想」「cが幕政に加わった儒者」と照合すると,一部の位置づけが噛み合わない可能性が高いです。

②【誤】
a=貝原益軒,b=安藤昌益,c=荻生徂徠 の組合せも,それぞれの著書や思想の特徴と合うか精査が必要ですが,徂徠が重視したのは「経世済民のための政治論・古文辞学」であり,単に塾講義を重んじた人物とは違う一面があります。

③【誤】
a=貝原益軒,b=富永仲基,c=新井白石 などのパターンは,富永仲基が「出定後語」などで仏教批判を行いつつ理性を重視した側面,白石は幕府の政治顧問として施策に関わった側面を文中の内容と対応させる必要がありますが,まだ整合性に難があるといえます。

④【正】
a=貝原益軒,b=富永仲基,c=荻生徂徠 という組合せは,本文の流れ(たとえば貝原益軒が和文で初学者向けに『養生訓』や『大和本草』など広く著したこと,富永仲基が仏教を含む思想の歴史的変遷を批判的に考察したこと,荻生徂徠が塾をひらいて会読を重視した「古文辞学」を興したこと)と符合するため,もっとも妥当です。

問10:正解4

<問題要旨>
ここでは,先哲たちが「人間の欲望」についてどのように捉えているかをまとめた記述を読み,「仏陀(ブッダ)」「プラトン」「朱熹(しゅき)」の各主張を正しく組み合わせる問題です。それぞれが欲望の根源や制御の必要性を論じており,哲学・思想史の素養が問われます。

<選択肢>
ア(ブッダについて)
イ(プラトンについて)
ウ(朱熹について)

①~⑥の組合せの中で,該当の三者の言説を正確に対応づけるのがポイントです。

①【誤】
ア=正,イ=正,ウ=誤 という判定ですが,ブッダ,プラトン,朱熹の三者ともが「欲望から離れられない理由」や「欲望にまつわる理性・気質」などに言及しているため,必ずしもウだけが誤りとは限りません。

②【誤】
ア=正,イ=誤,ウ=正 とする場合,プラトンが欲望に関して説いた「理性的部分による制御」「魂の三分説」の捉え方が誤っているかが争点となります。選択肢全体の記述内容と照合すると不整合があります。

③【誤】
ア=正,イ=誤,ウ=誤 という割り切りも,ブッダと朱熹の説明が同時に正しくない,という展開は文章の意図と合わないでしょう。

④【正】
ア=誤,イ=正,ウ=正 の組合せとしては,たとえば「ブッダが言う『人間が欲望を離れられない根本原因が,自己という不変の存在を正しく把握していないからである』」といった説明がズレている(または簡略化に誤りが含まれる)一方で,プラトンや朱熹の説明に関してはテキスト中の表現と合致する,という状況が考えられます。欲望のあり方を「理性的部分と気質的部分が乖離することで不正が生じる」(プラトン)と捉えたり,「先天的にそなわった理によって情欲を制する必要がある」(朱熹)という捉え方を正しいと評価できるため,④が妥当といえます。

⑤【誤】 / ⑥【誤】
それぞれ組合せが異なりますが,ア・イ・ウ三者の議論を読み解いた際に,欲望に関する記述の正誤が合致しないので,適切とはいえません。

問11:正解3

<問題要旨>
この問題は,三宅雪嶺という人物が「伝統的な道徳や文化の重要性」をどのように唱えたかに関して最適な説明を選ぶものです。三宅雪嶺は日本近代においてナショナリズムを論じつつも,欧化政策に対する批判や東洋文化の価値を強調する姿勢をとりました。それを踏まえ,四つの選択肢のうちどれがもっとも的確に特徴づけているかを見極めます。

<選択肢>
①【誤】
「天皇制国家主義の立場から教育勅語の道徳を重視し,忠と孝を国民徳の中心に据えるべきだと主張した」は,国粋主義の一側面を誇張した表現に近いですが,三宅雪嶺本人が直接“教育勅語”の条文を核心に据えたというわけではなく,さらに「天皇制国家主義」の色合いが強すぎて事実と異なる部分があります。

②【誤】
「自己の内面を見つめる必要を説く人格主義の立場から,東洋の古典を積極的に採用すべきだと主張した」は,内省的な人格主義に重点を置く点で,むしろ別の思想家(例えば倉田百三など)の立場にも近く,三宅雪嶺の“欧化政策への批判”や“日本固有の伝統文化擁護”と結びつくかは不明瞭です。

③【正】
「欧化の傾向を批判し,日本固有の風土や文化に即して西洋文明を取捨選択すべきだとする国粋保存主義を提唱した」という表現は,まさに三宅雪嶺が主宰した『日本人』や志賀重昂らと取り組んだ国粋主義論の要旨にあたります。西洋文化の無批判な導入に警鐘を鳴らし,日本人固有の伝統や道徳を重んじるべきだという立場を示したのが三宅雪嶺の特徴です。

④【誤】
「天皇の名のもとでこそ国民の平等が実現されるとし,超国家的な立場から国家の改造を主張した」は,むしろ社会主義的ないし革新的国体論を思わせる内容です。三宅雪嶺は決して超国家的な視点から天皇の権威を相対化しようとしたわけではなく,国粋主義の基盤に立っていたため,この表現とは相容れません。

問12:正解2

<問題要旨>
この問題は,本文末で述べられている「日本の先人たちにとって,教えを説くという営みがどのように位置づけられていたか」について,最も適切な記述を選ぶものです。そこでは,先人たちが自己の努力や役割をどのように意識し,社会実現へと向かっていったかが問われています。

<選択肢>
①【誤】
「教えを説くという営みが“もっぱら役割の大きさに対する自覚”にすぎず,従う者に徳を与えるかどうかに注目していた」というのは,本文で語られる先人たちの姿勢とは大きく異なります。先人たちは自分の役割や立場を自覚するだけでなく,そこに責任や自省を伴わせ,さらに教えを受ける側の主体的な成長も念頭においていました。

②【正】
「教えを説くに際して,自らを見つめ直し,自己の役割を模索しながら,各々の立場を見いだしていった。その結果,人々を導く方法や発揮される多様な才覚に差異はあるが,よりよい人生や社会の実現を目指す意志があった」という要旨は,本文の内容とよく一致します。先人たちは一方的に教義を押しつけるのではなく,自分自身のあり方を探究し,他者の成長や社会改革に向けて多様な実践を行ったという主張を要約しているといえます。

③【誤】
「有力者や教育活動に集中し,自己を犠牲にしてでも人々や社会のために尽くそうとした」という強調だけでは,本文が指摘する「先人たちが自分の立場や努力の在り方を慎重に見定めた」というニュアンスが抜け落ちます。自己犠牲を前面に出すより,自らの生き方や役割を吟味しつつ,周囲を導こうとした面に重点があるのが本文です。

④【誤】
「自分を厳しく問い直して自己の卑小さを克服することに努めた結果,神仏や師に全面依拠する姿勢に収斂した」という描写は,神仏や師への全面的帰依を強調する点で,修行僧や特定宗教者の在り方を彷彿とさせるものの,本文が述べる“先人たちの社会実践”と結びつきが強いわけではありません。むしろ先人たちの多様な行動は,各々が主体的に立場を確立しようとする部分が重視されています。

第3問

問13:正解1

<問題要旨>
下線部③で取り上げられたパウロ(新約聖書における使徒パウロ)の人間観および救済論についての説明を問う問題です。パウロは,人間は罪深い存在であり,善を望みながらも悪を行ってしまうという自己矛盾を抱えていると説きます。その上でキリストによる救い(信仰と恩恵)と隣人愛の実践が必要であるという思想を提示しています。

<選択肢>
①【正】
人間は善を望んでいながらも,欲望や罪によって悪を行ってしまうが,そこから救われる道はキリストの信仰に基づく赦しと,隣人愛の実践にある――という趣旨はパウロ神学の中心的教えと合致します。

②【誤】
「神との契約を結ぶ」といった旧約的表現(ユダヤ教の文脈)が強調されすぎているうえ,キリスト教における「信仰による救い」「恩恵による義認」の要素が明確でなく,隣人愛の実践が強調されていない部分もあり,パウロの本来の思想からはやや外れます。

③【誤】
「罪のない本来の自己を再発見してそれを受け入れる」という表現は,人間が本来罪がないと捉えるようにも読めます。しかしパウロの人間観ではむしろ,人間は自力で罪を克服できない存在であり,キリストの贖罪に依存しなければならないため,内容がずれています。

④【誤】
「苦しむ人々を癒したキリストに従い,善行を積むことによって神から義とされる」という表現は,パウロが強調する「信仰義認」(人間の業ではなく神の恩恵と信仰によって義とされる)を薄め,善行中心の捉え方に寄りすぎています。パウロの核心的メッセージからは外れます。

問14:正解4

<問題要旨>
ロック(John Locke)の社会思想に関する設問です。ロックはイギリス経験論哲学者・政治思想家として,社会契約説を提唱し,国家の権力を分立させる必要性や抵抗権の概念を示しました。本問では,国家権力をどのように制限するか,あるいは自由と権力の関係性をいかに考えたかを正しく理解しているかが問われます。

<選択肢>
①【誤】
「個人の権利を国家の一般意志に服従させる」という表現は,むしろルソー的(一般意志)な社会契約説に近い響きをもっています。ロックは国家と個人の権利が相互に契約関係にあると考え,国王も一般意志の体現者とはみなしません。

②【誤】
「知識や理論は,人間が環境によって適応していくための道具である」とするのはプラグマティズム的発想に近く,ロック本来の政治論と直結するわけではありません。また,“我々は能動的知性を用いて社会を改革し,理想的な民主主義を実現できる”という記述はロックの構想を単純化しすぎています。

③【誤】
「各人が利己心にしたがって自由に利益を追求すれば,社会全体の利益が増大する」という考え方はアダム・スミス的な市場原理観に近く,その“神の見えざる手”を思わせます。一方ロックは自然権と社会契約の枠内で権力への制約を説き,単なる利己心が自動的に公共善をもたらすわけではないと考えました。

④【正】
ロックは国家権力の専横を防ぐため,立法権・執行権(行政権)などの分立を提唱し,それぞれが独立性を保ちながら相互に抑制し合う仕組みが必要だと説きました。これが近代的な権力分立の先駆的な理論とされるゆえんです。

問15:正解4

<問題要旨>
西洋における自然観の変化に関して,ア(コペルニクス・ニュートン)とイ(ニュートン・カントなど),ウ(カーソン等)の説明を組み合わせる問題です。ここでは科学革命の中心的存在であるコペルニクスやニュートンが果たした役割,そして近現代における環境への警鐘を鳴らした思想が取り上げられています。

<選択肢>
①~③,⑤~⑥はいずれもア・イ・ウの内容の正誤が噛み合わない形になりがちですが,④はア=誤,イ=正,ウ=正 などの対応が成立しうる組み合わせです。

①【誤】
ア=正,イ=正,ウ=誤としているが,カーソン(Rachel Carson)は『沈黙の春』で農薬汚染の環境破壊を警告しており,その指摘は正しい方向性と言えるため,ウが誤りに振り分けられるのは不自然です。

②【誤】
ア=正,イ=誤,ウ=正などの場合,ニュートンが「万有引力の法則を確立した」ことを誤りとする理由が成り立ちません。

③【誤】
同様にアとイを逆にしたりウの評価を変えたりする組合せは,本文中の科学史的評価と噛み合わないでしょう。

④【正】
アの「コペルニクスは“知は力なり”という信念から学問を支配の手段と考えた」とする記述部分は厳密にはフランシス・ベーコン由来の言葉であるため,コペルニクスの説明としてやや誤りがある(あるいは短絡している)。一方イで述べられる「ニュートンがすべての物体の運動を力学的法則で統一的に説明した」のは正しく,ウで述べられる「カーソンが農薬による環境破壊と人間への影響を警告した」点も正しい。結果としてアのみ不適切でイ・ウが正しいという組合せが④となります。

問16:正解4

<問題要旨>
「遊び」の社会的性格について論じた文章(カイヨワの『遊びと人間』)を踏まえたうえで,遊びには競争やルール,技能の要素があり,“単なる個人的娯楽”で終わるものではないという趣旨を理解しているかを問う問題です。

<選択肢>
①【誤】
「遊びには技の遊びと競争の遊びがあるが,おおむね個人的娯楽とも言える」という後半が本文の趣旨とずれます。本文では,競技要素や観客の存在などが重要な意味をもっており,単なる“個人の楽しみ”ではなく社会的かつ相互的な構造があると説かれます。

②【誤】
「ヨーヨーやけん玉のような道具を使う遊びは一人でも遊べるため,競争や観客がいなければただの娯楽である」という言い方では,遊びの競技性や社会性を軽視しすぎています。本文は,競争や技能を共有し合う可能性に注目しており,“一人だから単なる娯楽”とは限りません。

③【誤】
「技の遊びと競争の遊びがあり,おおむね個人的娯楽とも言えるが,競争要素が加わると高度な成果を生みやすい」というのは,競争要素を評価している点だけは一部合っていますが,“そもそも遊びは個人的娯楽に留まる”と結論づけるのは文章の論旨と異なります。

④【正】
「ヨーヨーやけん玉のような道具を使って一人で遊ぶことができても,そこには競争や観客を想定する仕組みが組み込まれ得るため,単なる個人的娯楽ではない」というのは,本文の説く社会的側面と一致します。遊びとは参加者や潜在的な観客,ルールなどが絡み合い,複数者の関係性を前提とする側面があるという観点をよく表しているからです。

問17:正解2

<問題要旨>
複数の宗教や聖典が,人々の生き方に指針を示してきた点についてまとめている文章を踏まえ,「仏教」「イスラーム」「ユダヤ教とキリスト教」「ホメロスやギルガメシュ叙事詩」などを比較し,その特徴を把握しているかを問う問題です。

<選択肢>
①【誤】
「ブッダの言行がスッタニパータにまとめられており,人々が生まれつきの自分の身分にふさわしい活動をするよう勧めた」というのは,むしろヒンドゥー教のヴァルナ(種姓)観に近い要素を混同しています。ブッダは出身身分にとらわれない解脱の道を説いたため,この記述は不適切です。

②【正】
「イスラーム教では,啓典(聖典)のうちもっとも根本的な位置づけを担うのがクルアーンであり,ムスリムの日常生活全般を種々の面で規定している」というのは正しい理解です。クルアーンは信仰や礼拝だけでなく,生活規範や法規にも関わる重要な根拠であり,ムスリムにとって行動規範の源となっています。

③【誤】
「ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』は神話的世界観を描写するが,登場人物の道徳の指針とされるような啓典として読まれてきた」というのは,古代ギリシアの叙事詩の性格を取り違えています。叙事詩には神々が登場しますが,イスラームのクルアーンやユダヤ教・キリスト教の聖書のように“宗教的な戒律”を直接示す立場とは異なります。

④【誤】
「ユダヤ教やキリスト教の聖書では,預言者イザヤが王国のあり方を賞賛し,民衆に神の言葉を伝える姿が描かれており,彼の言行は信仰の模範とされている」という説明は,イザヤ書の内容と部分的に重なる要素もありますが,問題文と直接対応しているかは不明です。また,これだけではイスラームと対比される記述とも結びついておらず,問題文の焦点とは外れています。

問18:正解3

<問題要旨>
「遊びは不要か」という問いを中心に,宗教改革やカルヴィニズムの労働観が根付いた社会では遊びが軽視されがちだった,しかし近代以降は遊びの持つ自由や創造性,人間の社会的活動や共同体形成における重要性が再認識された,という流れを踏まえた文章の内容を総括する問題です。

<選択肢>
①【誤】
「遊びは成人社会にとって不要とみなされてきたが,労働や気分転換という観点からむしろ大人こそに重要である」という要旨は,一部正しい面もありますが,近代における遊びの社会的機能(宗教や倫理観などとの関係)について十分触れられていません。

②【誤】
「生産活動としての労働を重んじる価値観のもと,遊びは軽視された。20世紀に入り,宗教や社会思想の変化により重要性が増した」というのは確かに流れの一部を捉えていますが,「遊びを社会的活動として理解する」という視点がやや薄く,本文が強調する人間精神の自由や創造性との関連性が十分説明されていません。

③【正】
「遊びは成人社会にとって不要だとみられがちだったが,実は人間精神の自由かつ創造的側面の源泉となり得るだけでなく,社会的活動を理解するうえでも重要であると再評価されてきた」というのは本文の要旨と合致します。近代~20世紀にかけて宗教的価値観が変化し,社会学的にも“遊びの持つ意味”が見直されたことが本文で強調されているからです。

④【誤】
「生産活動を重んじる価値観により遊びが軽視されてきたが,20世紀に入ると人間の社会的活動が実用的目的から離れ,遊びが再評価された」という説明は大筋で近い部分もあるものの,“人間の精神的自由や創造性”との関連が希薄です。また本文が述べる歴史的議論を十分にカバーしているか不透明な点があります。

第4問

問19:正解4

<問題要旨>
この問題は,近代国家の役割に関する二つのキーワード(空欄Aと空欄イ)をどう組み合わせるかを問うものです。本文では,国家が担うべき範囲や公的サービスの在り方が議論されており,とくに人々の自由を広く保障する「夜警国家」の概念と,国家による統制や介入を抑制する仕組みの重要性が論及されています。その流れから,Aとイに当てはまる語句を正しくマッチさせる必要があります。

<選択肢>
①【誤】
A=「福祉国家」,イ=「国家の権力に対する統制上の制約をなくす仕組み」。
 「福祉国家」は国民生活の厚い保障を志向する国家観を示す語ですが,イの文言「統制上の制約をなくす」というのは,むしろ国家の権力を大幅に容認する方向性につながり,福祉国家の理念ともずれている可能性が高いです。

②【誤】
A=「福祉国家」,イ=「人々に対する国家の介入を制約する仕組み」。
 「福祉国家」は国民の生活保障における国家介入を積極的に正当化する思想面が強いとされます。それに対し,イでいう「国家の介入を制約する仕組み」は,国家がむしろ小さな役割にとどまる方向を重視する文言なので,福祉国家との組合せとは矛盾しがちです。

③【誤】
A=「夜警国家」,イ=「国家の権力に対する統制上の制約をなくす仕組み」。
 「夜警国家」とは,治安維持や国防など最小限の役割に限定された国家観を指しますが,それに対してイが「国家の権力に対する統制上の制約をなくす」というのは逆方向の発想です。夜警国家はむしろ権力を制限する考え方と親和性が高いため,このセットは整合しません。

④【正】
A=「夜警国家」,イ=「人々に対する国家の介入を制約する仕組み」。
 夜警国家は自由放任(レッセ・フェール)の立場に近く,国家権力を最小限にとどめ,人々に対する強制や介入を極力抑えることを重視します。したがって,「人々に対する国家の介入を制約する仕組み」という文言と整合し,本文の文脈とも合致します。

問20:正解3

<問題要旨>
この問題は,日本国憲法が保障する「基本的な人権」を複数の観点から整理し,下線部にあたる語句(ア・ウなど)をどのように当てはめるかを問うものです。具体的には,憲法上の自由権,社会権,参政権,請求権などの権利を相互に区別する理解が求められます。

<選択肢>
①【誤】
ア=「生存権」,イ=「財産権」,ウ=「国家賠償請求権」。
 ここで示される三つの権利の配置が,問題文にある「表現の自由」や「人の活動に対する国の干渉を排除する」「裁判を受ける権利」などとの対比と噛み合わない可能性が高いです。

②【誤】
ア=「生存権」,イ=「国家賠償請求権」,ウ=「財産権」。
 社会権の一つである生存権をアに置き,国家賠償請求権をイに置くと,本文でいう「表現の自由」や「裁判を受ける権利」をどこに位置づけるのか不明瞭になりやすいです。

③【正】
ア=「財産権」,イ=「生存権」,ウ=「国家賠償請求権」。
 問題文では,「表現の自由」のような自由権がある一方,生活の保障を国に求める社会権として「生存権」がイに当てられ,さらに「裁判を受ける権利」や「請求権」の一つとして「国家賠償請求権」がウに配置される流れが考えられます。これがもっとも自然な構成です。

④【誤】
ア=「財産権」,イ=「国家賠償請求権」,ウ=「生存権」。
 社会権の代表例として生存権がイではなくウに位置づくのは,本文中での配置と整合しにくいです。

問21:正解3

<問題要旨>
アメリカとイギリスの政治制度の違いについて,空欄アとウに当てはまる語句の組合せを問う問題です。アメリカでは大統領制,イギリスでは議院内閣制の仕組みが採用されており,大統領と議会の関係・内閣と議会の関係が異なる点が焦点となります。

<選択肢>
①【誤】
ア=「教書送付」,イ=「弾劾」,ウ=「厳格」。
 大統領制で大統領が議会に働きかける権限として“教書送付権”はある一方,議院内閣制のコアには「不信任決議」「内閣の議会解散権」などが重要です。“弾劾”と“厳格”というワードの当てはめが合わないケースです。

②【誤】
ア=「教書送付」,イ=「弾劾」,ウ=「穏やか」。
 同様に,イギリスの議院内閣制でキーワードとなるのは「不信任決議」や「下院解散」などであり,“弾劾”は米国でも議会に認められていますが,イギリスの制度の主要メカニズムとは言い難いです。

③【正】
ア=「法案提出」,イ=「不信任決議」,ウ=「厳格」。
 アメリカでは大統領が法案提出権をもたないとされることも多く(議会に法案提出のイニシアチブがある),ただし近年は大統領が議員を通じて法案を提出させる形をとるなど,教書送付等を通じて事実上法案策定に影響を及ぼします。一方イギリス議会は内閣に対する不信任決議を発動でき,内閣は下院解散を行うなど両者の関係が相互牽制される仕組みです。結果として米国は立法府と行政府が厳格に分立しており,イギリスはそれに比べれば緩やかな融合とも言えます。問題文との対応から③が最も妥当です。

④【誤】
ア=「法案提出」,イ=「不信任決議」,ウ=「穏やか」。
 ウを「穏やか」とするか「厳格」とするかの差異が重要ですが,本文の論旨では「アメリカは厳格な権力分立,イギリスは比較的緩やかな権力分立」として対比しているため,ウに「穏やか」を入れるのはアメリカ側に当てはまらない説明となり不適切です。

問22:正解4

<問題要旨>
ここでは,下線部C「法とは何か」という説明に関し,複数の選択肢から最も妥当な解釈を選ぶ問題です。形式や内容を重視する立場から,法がどのように制定され,政府や国民を拘束する仕組みかが論点となります。

<選択肢>
①【誤】
「法に違反すると刑罰などの制裁が伴う点に特徴がある」というのは,一面では刑法的側面を指すにとどまり,民法や行政法など多方面の法令の拘束力をきちんと捉えていない可能性があります。また,それだけでは下線部Cの趣旨を十分に説明していません。

②【誤】
「法は主権者である国王や権力者が出す命令であり,国民は従わなければならない」というのは,近代立憲主義にそぐわず,絶対王政的・命令説に近い発想です。本文の流れでは立憲制における法の正当性を扱うので,この選択肢は古い支配観を連想させ,不適切です。

③【誤】
「議会の制定した法に基づいて行政が行われなければならないという形式面を重視する考え方である」は,立憲主義や議会主義の特徴の一端を示唆しており,部分的には正しそうですが,下線部Cが指す内容を限定しすぎる可能性があります。法を形式的に見るだけでなく,実質的に人々の権利を保障する機能にも焦点があるのが現代的な捉え方です。

④【正】
「個人の権利を守るため,国王や権力者といえども法に従わなければならない」とするのは近代立憲主義・法の支配を示す根幹の考え方です。権力を制限し,国民の自由・権利を守るために法が存在するという観点が下線部Cの説明にもっとも合致します。

問23:正解2

<問題要旨>
需要曲線と供給曲線が交差して市場が均衡する価格P₀から,政府が価格の上限をP′に規制した場合,取引される財の数量がどう変化するかを問う問題です。図表ではP′がP₀より低い位置に設定され,その結果,需要量と供給量の差が生じる可能性があることがポイントとなります。

<選択肢>
①【誤】
「取引される財の数量はQ₀になる」とするのは,P₀での均衡数量Q₀をそのまま維持できるという前提ですが,価格を上限規制してP′に下げたら,需要は増え供給は減少し,結果としてQ₀を超えた需要があっても供給が足りず,取引数量が変化します。

②【正】
「取引される財の数量はQ₁になる」――図示を見ると,P′(上限価格)のもとでは需要曲線がQ₂に向かい,供給曲線はQ₁で交わる状況が生じます。実際の取引量は少ないほう(供給側のほう)に制約されるため,Q₁に落ち着く可能性が高いです。需要超過が起こっても,供給量がQ₁しか出てこないため,取引量はQ₁に確定するという論理です。

③【誤】
「取引される財の数量はQ₂になる」とするのは,需要曲線で読む数量だけを考えた場合ですが,供給不足が考慮されていません。現実には供給できる量を上回る取引は成立しないため,Q₂まで数量は増えません。

④【誤】
「取引される財の数量は0になる」は極端で,実際には上限価格が低すぎなければ取引が全くなくなるわけではありません。

問24:正解4

<問題要旨>
図中にローレンツ曲線(45度線・曲線A・曲線B)が描かれ,それぞれが示す所得の累積分布から不平等度合いを読み取る問題です。45度線から離れるほど不平等が大きくなるため,曲線の位置でどの程度の格差が生じているかを判断します。

<選択肢>
①【誤】
「Aの所得分布で示される不平等の度合いは,Bよりも大きい」とする場合は,Aの曲線がBよりも45度線から遠い位置を描いていることを意味します。問題文の図示から,どちらがより乖離しているか注視しますが,選択肢④が正解のため①は誤りです。

②【誤】
「Bで示される所得分布では,所得の高い方から上位20%までの人々が全体の80%以上を占める」は,ローレンツ曲線の読み取りとして極端な格差を示す表現です。本文の図と照合すると,そこまで大きな偏りを直接読み取れる根拠は薄いと考えられます。

③【誤】
「Bで示される所得分配では,すべての人の所得が同じ割合で増えるので45度線の所得分布に近づく」とあるが,もしBが45度線に近いなら不平等度は小さいはずです。しかし,Bが実際にAと比べてどちらがどこまで近いかは図表から判断が必要で,この選択肢だけでは誤りとされます。

④【正】
「Aで示される所得分布では,所得の低い方から80%までの人々が全体の所得の50%以上を占めている」――これは図に示された具体的な読み取り例(たとえば曲線Aが45度線に比較的近い場合)を表していると考えられます。問題文でも「45度線に近いほど平等」「曲線が外に広がるほど不平等」と説明されているため,Aのほうが分配が平等に近い分布であることを読み取ることが可能です。

問25:正解3

<問題要旨>
エネルギー関連の記述(スマートグリッドや原子力発電の運転差止め,消費者の自由化,風力発電のメリットなど)に関して,誤っているものを選ぶ問題です。技術面や法的措置,エネルギー産業の実態などに注意しながら,どれが明らかに不正確な説明かを判断します。

<選択肢>
①【正】
「スマートグリッドは情報通信技術を使って需給を細かく制御する機能をもつ電力網である」という説明は一般的に認知されている概念であり,誤りではありません。

②【正】
「日本では運転差止めを命じる裁判所の仮処分決定に基づいて,原子力発電所で運転が中断されたケースがある」という話は,実際に行われた事例があります。一定の事実に即しています。

③【誤】
「日本では,一家庭ごとの電力の小売は自由化されていないが,工場など大口需要家については自由化されている」という表現は過去の状況に近く,現在は家庭向け含む全面自由化(2016年~)が進んでいるため,現状とは明確に異なります。問題文が“現行の制度状況”を前提にしているなら,これが誤りと判断されます。

④【正】
「風力発電は風を利用して発電するため,燃料を必要とせず気象条件に左右されるが,二酸化炭素排出を抑えられるメリットがある」といった形で説明されるのが一般的であり,文中の表現は大きな誤りとは考えにくいです。

問26:正解4

<問題要旨>
日本の安全保障をめぐる法制度や政策について述べた選択肢のうち,正しいものを選ぶ問題です。防衛装備移転三原則や安全保障関連法など,近年の法整備の状況や自衛隊の活動範囲に関わる論点がポイントとなります。

<選択肢>
①【誤】
「2014年に政府が決定した防衛装備移転三原則によれば,武器や関連技術の輸出は全面的に禁止されている」というのは誤りです。武器輸出三原則の緩和が行われているため,全面禁止ではなく一定の要件下での輸出可能性が残されます。

②【誤】
「自衛隊の最高指揮監督権は防衛大臣が有する」という説明は,実際には自衛隊の最高指揮監督権は内閣総理大臣にあるとされます。防衛大臣は防衛行政の担当閣僚ですが,最終的権限は首相に帰するため,この選択肢は不正確です。

③【誤】
「2015年に成立した安全保障関連法によれば,日本と密接な関係にある他国に対する攻撃によって日本の存立が脅かされ,国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合でも,武力行使は禁じられている」というのは,むしろ集団的自衛権の限定容認が認められた法律改正の趣旨と逆です。一定の条件下で武力行使が可能になりました。

④【正】
「安全保障に関する重要事項を審議する機関として,国家安全保障会議を内閣に設置している」というのは2013年に発足した日本版NSC(国家安全保障会議)の設置を指し,現行制度として正しい説明です。

第5問

問27:正解1

<問題要旨>
本文では,経済政策における「効率性」と「公平性」を両立させることが難しい点を指摘したうえで,それをどう調整するか(ア)と,所得保障に関わる新たな制度設計(イ)とを関連づけて述べています。アは経済学で言う「何かを得るために何かを諦める」関係を示す概念,イは国民全体へ一定額を給付する仕組みなどを指すと考えられ,その組合せがどれかを見極める問題です。

<選択肢>
①【正】
ア=「トレード・オフ」,イ=「ベーシック・インカム」という組合せは,効率性を追求すれば公平性に問題が生じるという「トレード・オフ」と,すべての人へ一律に給付を行う「ベーシック・インカム」を対応づけており,本文の趣旨に沿っています。

②【誤】
ア=「プライマリー・バランス」,イ=「ユニバーサル・デザイン」という組合せは,プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の改善を指し示す用語と,ユニバーサル・デザイン(高齢者や障がい者にも利用しやすい設計思想)の組合せであり,本文で扱う「効率と公平の両立」とは直接的につながりにくいです。

③【誤】
ア=「トレード・オフ」,イ=「ユニバーサル・デザイン」の組合せは,前半は適切に「トレード・オフ」をあてているものの,イが「ユニバーサル・デザイン」では所得保障や給付金制度の説明とは合致しにくいです。

④【誤】
ア=「プライマリー・バランス」,イ=「ベーシック・インカム」の組合せは,前半が財政健全化の用語,後半が給付制度を示す用語ですが,本文中でアにあたるのは効率と公平を両立させる際の“相反関係”を示す概念であり,プライマリー・バランスではありません。

問28:正解4

<問題要旨>
ここでは,国家間格差に関連する施策や国際会議などを挙げながら,先進国と発展途上国のあいだに存在する所得・貿易・開発援助上の問題を検討しています。フェアトレードや南北問題をめぐる会合(国連貿易開発会議=UNCTAD)などがその例で,どれが最も正しく説明されているかを選びます。

<選択肢>
①【誤】
「国連総会において,先進国の資源ナショナリズムの主張を盛り込んだ新国際経済秩序樹立宣言が採択された」というのは,むしろ1970年代に発展途上国側が資源ナショナリズムなどを背景に,新国際経済秩序(NIEO)樹立を提案した歴史的経緯と異なります。先進国ではなく途上国が中心となりました。

②【誤】
「国連貿易開発会議は,南南問題の解決を主目的として設立された」は誤りです。UNCTADは南北問題の是正を意図し,発展途上国の開発や貿易振興を議論する場として始まりました。「南南問題」(途上国同士の格差)は主要テーマではありません。

③【誤】
「日本の政府開発援助は,必ず返済しなければならない」というのは誤りです。政府開発援助(ODA)は有償資金協力(円借款)だけでなく,無償資金協力や技術協力も含まれます。返済義務があるのは円借款など有償部分のみです。

④【正】
「現地生産者や労働者の生活改善や自立を目的に,発展途上国の原料や製品を適切な価格で購入するフェアトレードが提唱されている」は妥当な説明です。フェアトレードは不当な安値による搾取を抑え,生産者の公正な収入確保を目指す仕組みとして広く知られています。

問29:正解1

<問題要旨>
与えられた表では,一次エネルギー供給量(百万トン)とその内訳(石炭・原油・天然ガス・原子力・水力・その他)が国ごとに示されています。AとBのどちらが中国あるいはアメリカか,CとDのどちらが日本あるいはフランスかを見極め,最も適切な組合せを判断する問題です。

<選択肢>
①【正】
A=中国,B=アメリカ,C=日本,D=フランスとする組合せは,

  • Aは一次エネルギー供給量が3000超と大きく,石炭の比率が高い → 中国に該当
  • Bは2000を超える一次エネルギー供給量で,石炭や石油比率が高め → アメリカに該当
  • Cは一次エネルギー供給量が1000以下で原子力比率が高く,化石燃料への依存度も大 → 日本
  • Dはさらに小規模かつ原子力の割合がかなり大きい → フランス
    この対応が最も適切です。

②【誤】
A=中国,B=アメリカ,C=フランス,D=日本という並びだと,日本とフランスの原子力比率や供給量の大小が入れ替わり,不整合が生じます。

③【誤】
A=アメリカ,B=中国,C=日本,D=フランス などにすると,中国とアメリカの位置づけが逆転し,石炭比率の大きい方が米国とされるなどおかしくなります。

④【誤】
A=アメリカ,B=中国,C=フランス,D=日本 という組合せも,同じようにエネルギー配分が合致しません。

問30:正解1

<問題要旨>
下線部Cでは社会保障制度に関する記述が取り上げられています。ILO(国際労働機関)が掲げた「社会的保障の拡大」(フィラデルフィア宣言)など,社会保障の理念や歴史を踏まえつつ,複数の選択肢のうち最も適切なものを選ぶ問題です。

<選択肢>
①【正】
「ILOは,フィラデルフィア宣言で社会保障の範囲の拡大に貢献した」というのは歴史的に事実です。フィラデルフィア宣言(1944年)では世界の労働者に対する生存権保障の理念や社会保障の普及がうたわれています。

②【誤】
「個人が就労している時期に納めた保険料によって,自らの年金受給を賄う方式」は日本における厚生年金などの仕組みの一部で当たりますが,“賦課方式”や“積立方式”など詳細が混在するため,一般的に「個人がすべて自己完結する」わけではありません。そこを強調しすぎた表現は不正確といえます。

③【誤】
「日本の社会保障費の中で最も大きな割合を占めている項目は生活保護費である」は事実と異なります。日本の社会保障給付費の構成で最も割合が大きいのは年金(社会保障給付の中でも公的年金)です。生活保護費は全体の中では小さいです。

④【誤】
「ドイツの宰相ビスマルクは『ゆりかごから墓場まで』をスローガンに,社会保障制度を整備した」のはイギリスの社会政策に関わる伝統的キャッチフレーズであって,ビスマルク自身は「疾病保険法」「災害保険法」「養老保険法」などを創設しましたが,そのスローガンがビスマルク由来とされるのは誤りです。

問31:正解4

<問題要旨>
ここでは表で示されている「各国の教育費支出がGDP比で公的負担と私的負担に分かれ,全人口に占める20歳未満人口比率」との関係について,OECD平均と比較してどうなっているかを読み解く問題です。公的負担が高いか低いか,私的負担が高いか低いか,そして20歳未満人口比率がどうかを組み合わせて判断します。

<選択肢>
①【誤】
「公的負担がOECD平均以上の国はすべて,全人口に占める20歳未満人口比率がOECD平均を上回っている」というのは表を見る限り当てはまりません。日本やフランスなどの数値を照らし合わせても,必ずしも一致しないのがわかります。

②【誤】
「私的負担がOECD平均以下であり,公的負担がOECD平均以上である国は,全人口に占める20歳未満人口比率がOECD平均を上回っている」は,一定のパターンとして成り立つか検証が必要ですが,表中の実データでは該当しない国があります。

③【誤】
「私的負担がOECD平均以上の国はすべて,全人口に占める20歳未満人口比率がOECD平均を下回っている」という決めつけも,表では確認できません。たとえば韓国の私的負担率が高い一方で20歳未満人口比率がどうかを見ると,常に下回るわけではない場合が考えられます。

④【正】
「公的負担がOECD平均以下であり,私的負担がOECD平均以上である国は,全人口に占める20歳未満人口比率がOECD平均を下回っている」という条件を当てはめると,例えば日本などのケースが該当することが示唆されます。日本は公的負担がやや低く,私的負担がやや高く,さらに若年人口比率も低いという傾向が表から読み取れます。これが表中のデータと合致するため,正解です。

第6問

問32:正解3

<問題要旨>
この問題は,下線部③で示された「男女の賃金格差」や「管理職に占める女性の割合」などの国際比較データをもとに,各国の社会制度や働き方,司法の地位にある女性比率などを総合的に読み解かせる内容です。表には「男性の賃金を100とした場合の女性の賃金」「管理職に占める女性の割合」「閣僚に占める女性の割合」「最高裁判所裁判官に占める女性の割合」が示されており,それを手がかりに選択肢の国際事情を判断します。

<選択肢>
①【誤】
「任期4年で3選禁止の国家元首がおり,二大政党制が定着しているこの国は,閣僚に占める女性の割合が最も高い」
 これはアメリカを想起させる表現ですが,アメリカの表では管理職割合や閣僚割合の高さが飛び抜けているわけではありません。むしろ閣僚中の女性比率は表を見る限りフランスが高めであり,内容が整合しません。

②【誤】
「半大統領制をとり,国連安全保障理事会の常任理事国であるこの国は,管理職に占める女性の割合が最も低い」
 半大統領制はフランスが典型ですが,管理職女性比率の低さという点では表と一致しません。フランスは賃金格差も小さめであり,選択肢の文言とは矛盾します。

③【正】
「議院内閣制をとり,実質的な権限をもたない大統領もいるこの国は,最高裁判所裁判官に占める女性の割合が2番目に低い」
 議院内閣制で大統領が名目上の元首として存在し,実権は首相にあるのはドイツを想起させます。表中を見ると,ドイツの最高裁判所裁判官に占める女性比率は,4か国中で上位ではなく2番目に低いと読めるデータに合致します。

④【誤】
「連邦国家ではなく,議院内閣制下の下で一党優位の時期が長く続いたこの国は,男性の賃金を100とした場合の女性の賃金が2番目に高い」
 これは日本を連想させるかもしれませんが,日本の女性賃金水準(男性=100とした場合)は表で下から数えた方が早い値(72)なので,当てはまりません。

問33:正解2

<問題要旨>
国会の種類(特別会・緊急集会・臨時会)と,それらの召集要件(衆議院解散後の総選挙の日から30日以内に召集,議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合など)を正しく対応づける問題です。選択肢のA~C(会議名)とア~ウ(条件)を見極めて組み合わせる必要があります。

<選択肢>
①【誤】
A=特別会-ア,B=緊急集会-イ,C=臨時会-ウ の組合せですが,特別会は衆議院の解散による総選挙後30日以内に召集される,緊急集会は衆議院解散中に参議院で国政の緊要な措置をとるための場であり,イやウとどう対応させるか慎重に見る必要があります。

②【正】
A=特別会-ア,B=緊急集会-ウ,C=臨時会-イ という形で対応すると,

  • 特別会(A)は「衆議院解散後の総選挙の日から30日以内に召集」(ア)。
  • 緊急集会(B)は「衆議院の解散中に内閣の要求によって開かれる」(ウ)。
  • 臨時会(C)は「内閣の決定またはいずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求によって召集」(イ)。
     これが憲法の規定と合致します。

③【誤】
A=特別会-イ,B=緊急集会-ア,C=臨時会-ウ のように組み替えても,特別会の要件と臨時会の要件が混同されるため不整合です。

④【誤】 / ⑤【誤】 / ⑥【誤】
いずれもA~Cとア~ウの対応を誤っているか,特別会・緊急集会・臨時会の召集根拠を取り違えています。

問34:正解3

<問題要旨>
下線部Cで示されている「実質的な男女平等の実現」に向けた積極的改善措置(ポジティブ・アクション)について,日本の法制度上,形式的には性差別になるような措置でも一定の条件を満たせば許容される例があることを問う問題です。どの記述がその許容される措置にあたるかを見極めます。

<選択肢>
①【誤】
「労働者の募集にあたり,応募条件から性別の条件を外す」はむしろ男女雇用機会均等法上で当然の配慮であり,“形式的な性差別に当たるが許容される”という類型ではなく,本来差別があってはならない場面です。

②【誤】
「女性労働者の定年年齢を男性労働者と同じ年齢に設定する」は,男女の定年が同じになるのは法的にも基本的に推奨される平等措置であり,特段“形式的には差別を含む”ような例には当たりません。

③【正】
「女性労働者の割合が低い職種について,採用の基準を満たす者の中から女性を優先して採用する」は,ポジティブ・アクションの典型例で,一見すると性別による差別にもみえますが,“社会的に女性が著しく少ない分野で機会を増やす”ための特別措置として一定条件下で認められる可能性があります。

④【誤】
「同じ内容の労働に従事する男性労働者と女性労働者の賃金を,同じ額とする」は,性差による賃金格差を解消するための一般的に当然の原則であり,形式的な性差別としては扱われないので本問の論点とはずれます。

問35:正解3

<問題要旨>
本問は,就労形態の多様化に対応する日本の法律(A~C)と,それぞれの法が持つ規定(ア~ウ)を正しく対応づける問題です。具体的には,労働者派遣法,パートタイム労働法,高年齢者雇用安定法などの法律名と内容がどれに当たるかを考察します。

<選択肢>
①【誤】
A=労働者派遣法-ア,B=パートタイム労働法-イ,C=高年齢者雇用安定法-ウ
 ア(正社員よりも週の所定労働時間が短い労働者の労働条件を改善する)
 イ(制度当時は対象業務が限定されていたが,後の改正で対象業務範囲が拡大)
 ウ(定年の引上げや継続雇用制度の導入)
 上記を照合すると,労働者派遣法は業務範囲が段階的に拡大されてきた経緯がある(イ),パートタイム労働法は週の所定労働時間が短い労働者の待遇改善(ア),高年齢者雇用安定法は定年後の雇用確保(ウ)なので,この組合せではAとBが逆などの不整合が生じます。

②【誤】
A=労働者派遣法-ア,B=パートタイム労働法-ウ,C=高年齢者雇用安定法-イ も同様にア・イ・ウの内容との整合がとれません。

③【正】
A=労働者派遣法-イ,B=パートタイム労働法-ア,C=高年齢者雇用安定法-ウ が正しい組合せです。

  • 労働者派遣法(イ):制度当初は対象業務が限定されていたが,改正で対象範囲が拡大
  • パートタイム労働法(ア):正社員より短い労働時間の労働者の待遇改善をめざす
  • 高年齢者雇用安定法(ウ):定年引上げや継続雇用制度を導入して働く機会を確保

④【誤】 / ⑤【誤】 / ⑥【誤】
それぞれA~Cの法令とア~ウの説明内容が一致していないため不適切です。

問36:正解2

<問題要旨>
「日本で最高裁判所により違憲とされた法制度」についての選択肢から,どれが誤りかを問う問題です。具体的には,議員定数配分(いわゆる一票の格差)や参議院議員の被選挙権年齢,婚外子の相続分差異,国籍に関する規定などが挙げられ,うち最高裁が違憲判決を出した例を正しく把握しているかが問われます。

<選択肢>
①【誤】
「衆議院議員一人当たりの有権者数の格差が最大で約5倍となる議員定数の配分を定める」
 いわゆる一票の格差問題で最高裁が違憲状態と判断した例はありますが,「明確に違憲」と断ずるケースと「違憲状態」とするケースがあるため,この選択肢だけでは判断要素が乏しいが,問題の正解が②である以上,①は誤りではなく別の扱いかもしれません。

②【正】
「参議院議員の被選挙権年齢を衆議院議員の被選挙権年齢より高く定める」
 実際には憲法15条や44条に照らして参議院が30歳以上,衆議院が25歳以上とされており,これが最高裁で違憲と判示された事例は確認されていません。もしこの選択肢で「違憲とされた法制度についての記述」といいつつ誤りを問う設問なら,これは“最高裁が違憲としたことはない”ため,誤りです。

③【誤】
「婚外子の相続分を,婚内子の相続分の2分の1とする」
 民法の規定で婚外子相続分差別がありましたが,2013年に最高裁で違憲とされた判決が言い渡されました。これは実際に違憲判決が出ています。

④【誤】
「外国籍の両親から出生した婚外子に,出生後に日本国民である父から認知されても父母の婚姻がなければ日本国籍を認めないこと」
 国籍法の規定が争われ,最高裁で違憲とされた判例(2008年)が知られています(嫡出子との区別が問題視された)。

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