2019年度 大学入試センター試験 本試験 倫理・政治経済 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解3

<問題要旨>
青年期における「自立」について、社会や通過儀礼・心理的離乳などの概念を踏まえ、どのような説明が最も適切かを問う問題である。青年期に親の保護や監督から離れ、精神的に自立していく過程をどのように位置づけるかがポイントとなる。

<選択肢>
①【誤】
「近代以前の多くの社会では、大人として自立するための通過儀礼が必要とされた」という内容自体は一般的にみて一定の妥当性があるが、「人は青年期を経ず子どもから大人になるとされていた」という後半部分がすべての社会に当てはまるわけではない。そのため、青年期における心身の自立や変化の過程を十分に考慮していない点が問題となる。

②【誤】
①と類似の文脈だが、「近代以前の多くの社会では…子どもから大人になるとされていた」という前提がやや単純化されており、実際には社会によって通過儀礼や年齢区分の考え方が多様である。青年期の自立過程を十分に説明できていない点で正確性に欠ける。

③【正】
青年期においては親からの保護・監督のもとを離れ、精神的に自立していく過程があるとされるが、これを「心理的離乳」と呼ぶ考え方が知られている。選択肢の記述は、青年期の人間が独立した人格を形成していく流れを端的にとらえており、内容としても定説に近い。

④【誤】
「青年期の人間が親による保護や監督のもとから離れて自立していく」といった点には言及している可能性があるものの、ここで提示されている「心的離乳」の定義やプロセスを押さえているとは限らない。具体的にどのような過程が青年期の通過儀礼や社会的背景に対応しているかが示されておらず、他の選択肢に比べて的確さが欠けている。

問2:正解4

<問題要旨>
家族関係の多様化を生じさせる要因として、生殖技術の発展が取り上げられている。着床前診断や代理出産、人工授精などの例を通して、子どもの誕生や親子関係の在り方が多様化することをどう捉えるかを問う問題である。

<選択肢>
①【誤】
着床前診断を導入することにより、遺伝子疾患の可能性などを把握して出産を考えるケースがあるという点は正しい。ただし、この選択肢の文面では「受精卵が胎児に成長した段階で」など、手続き上の時期や実際の活用の仕方が混同されており、内容としてやや不正確さが残る。

②【誤】
親の望む遺伝子を組み込んだデザイナーベビーを誕生させることなどに対する批判があるのは事実だが、選択肢の文章がそれを正当化するかのような書きぶりになっているなど、法的・倫理的に慎重な議論が必要である点を十分に踏まえていない。また、技術と倫理の兼ね合いへの指摘が不十分である。

③【誤】
代理出産(代理懐胎)にまつわる倫理的・法的問題を示唆しているが、「代理母と夫婦との間で子どもの親権をめぐる争いが発生する」点だけが強調されており、家族関係の多様化というテーマの根本的な背景を十分に説明できていない。

④【正】
第三者の精子や卵子を用いた人工授精や体外受精、さらには未婚の女性が単独で子どもをもうける可能性などを挙げ、生殖技術による家族形態の多様化を的確に示している。将来的に遺伝上の親子関係に対する新たな課題が生じる点や、情報開示の問題なども含めて、家族の概念が変化しうることを示唆している。

問3:正解1

<問題要旨>
社会における多様な支え合いの広がり、具体的には男女が対等な立場で協力できる社会の構築や、世界中の子どもの教育・福祉、災害復興支援や貧困対策の在り方などの記述が示されている。どの選択肢がもっとも的確に「支え合いの広がり」を示しているかが論点である。

<選択肢>
①【正】
女子(女性)差別撤廃条約を批准した日本の事例を挙げ、性別に関する偏見の打破や男女の対等な協力体制の構築をうながす内容は、現代社会の支え合いのあり方の一例として妥当性が高い。性差別をなくすための法整備や社会の意識改革が求められる文脈とも合致している。

②【誤】
「世界中の子どもの教育や福祉の充実」を目指す取り組みは確かに重要だが、選択肢としては「国連でも子どもの権利条約を早急に採択すべきだ」などの内容が提示されているのみで、すでに子どもの権利条約は採択・発効されている。文脈としてはやや古い情報を前提にした表現となっており、正確性や時宜が十分とはいえない。

③【誤】
災害復興支援におけるNPOやボランティアの役割強調に注目しているが、それ自体は適切な視点。しかし「政府が主導するNPOやボランティアが重要」という表現は、NPOやボランティアの自律性に関する観点が欠け、支援の主体が一元的かのような印象を与えているため、支え合いの広がりという点で限定的である。

④【誤】
「人が本来もつ尊厳や命を防ぐため…」という内容は、平和や人権の維持を最優先にする姿勢を示している。しかし「貧困や紛争の解決よりも紛争抑止と平和維持のみを優先する」という読み取り方をされかねず、多様な支え合いとはやや離れた論調に見える。全体的に支援の多角的な側面を示していない。

問4:正解2

<問題要旨>
個人の自由をめぐる思想について、構造主義や現象学的な見解などを比較しながら、言語や社会構造と個人の思想・行動の関係をどうとらえるかを考察する問題である。記述中では「構造主義」と「フーコー」などの思想家を対比する形で自由の捉え方を論じている。

<選択肢>
①【誤】
「a=レヴィ=ストロース、b=メルロ=ポンティ」という組み合わせ。レヴィ=ストロースを構造主義の代表的存在、メルロ=ポンティを現象学的観点で身体性を重視する哲学者として挙げており、一見もっともらしく見える。しかしテキストの流れからすると、構造主義の代表とフーコーまたはメルロ=ポンティとの対比をどう捉えているかが重要であり、この組み合わせは記述内容とやや食い違う可能性がある。

②【正】
「a=レヴィ=ストロース、b=フーコー」という組み合わせは、構造主義を象徴する人としてレヴィ=ストロースが挙げられ、その発展形として権力論やディスクール分析を展開したフーコーが続く流れを説明する際の典型的な対比として適切である。個人の自由が社会構造や権力によって制限される様相を論じるとき、構造人類学・構造主義の論点からフーコーの権力論への展開がつながりやすい。

③【誤】
「a=メルロ=ポンティ、b=レヴィ=ストロース」の組み合わせ。メルロ=ポンティは現象学的に主体の身体性と世界との関係を論じた哲学者として重要だが、選択肢の文章中で問題視されている「言語の構造に規定される個人の行動」などの視点はレヴィ=ストロースの構造主義的な枠組みを強く示唆する。順序が逆転しているため、テキストの内容とはかみ合いにくい。

④【誤】
「a=メルロ=ポンティ、b=フーコー」の組み合わせ。両者とも「構造主義か否か」で考えるとやや異なる立ち位置の思想家であり、記述の流れではメルロ=ポンティを先に持ってくる形が不自然になる場合が多い。またフーコーが言及している権力の作用は必ずしもメルロ=ポンティの議論とは直結しづらい側面がある。

⑤【誤】
「a=フーコー、b=レヴィ=ストロース」という逆転配置だが、通常は構造主義の先行者としてレヴィ=ストロースを置き、その後にフーコーを論じる方が文章展開として自然である。この選択肢の並びではテキストの説明構成と整合性が合いづらい。

⑥【誤】
「a=フーコー、b=メルロ=ポンティ」という組み合わせも、フーコーを先に位置づけ、メルロ=ポンティを後に持ってくる形がテキストの流れと一致しない。構造主義からポスト構造主義や現象学へと展開する議論の順序としても妥当性を欠く。

問5:正解3

<問題要旨>
ロールズの正義論を読み解き、「正義の原理に従って行為すること」と「愛や献身によって相手を助けること」の関係がどう描かれているかがテーマである。家族や恋人同士など、相手の幸福を願う愛情と正義に基づく行為の両立を問う内容であり、相手への深い献身や危険を伴う支援に対して、正義の観点からどう評価するかが焦点となっている。

<選択肢>
①【誤】
「人は、愛のためなら大きな危険を冒しても互いに助け合う」ことの重要性を説いているが、記述の後半で「まず互いに愛し合う必要がある」と結論づけている点が、ロールズの論じる正義の原理との関係をやや狭めてしまっている。正義の原理は社会全体の公正さを基礎に置くため、愛だけを前提とする説明ではやや不十分。

②【誤】
「人が正義感覚をもち、正義の原理に従って行為することを欲するのは、友人や家族など愛する者に対してである」という主張は、愛や親密な関係に限って正義感が発揮されるかのように読める。ロールズは社会全体に対する公正の原理を想定しているため、やや射程が限定されてしまっている。

③【正】
「愛し合う者たちが、相手を助けて自分が傷ついても後悔しないように、正義感覚をもつ人は正義の原理に基づいて行為することをまず受けとめ、そこを踏まえてより深い献身を考慮する」といった読み取りができる。ロールズは社会的な公平性を重視しながらも、家族や恋人などの身近な関係において危険を顧みず互いを助けようとする行為を否定していない。むしろ正義を踏まえた上で愛を貫く姿勢が示唆されており、本文の文脈に合致する。

④【誤】
「愛し合う者たちが、相手を助けて自分が傷ついても愛を後悔することがないように、正義のために愛を失うことを求める」という記述は、愛を放棄してでも正義を貫くという極端な読み取りに近い。ロールズは正義を原理としつつも愛情を否定する立場ではないため、この選択肢は本文の趣旨からは外れてしまう。

第2問

問6:正解5

<問題要旨>
古代の日本人が神に対してどのような心を重んじていたかを取り上げ、本文中にある「ア」「イ」「ウ」の記述を正誤判定したうえで、最も適切な組合せを選ばせる問題である。神に向き合う際の真心(まごころ)、清き明き心、正直などの概念について、それぞれの趣旨や伝統的解釈が正しく反映されているかどうかを確認することがポイントとなる。

<選択肢>
①【誤】
「ア正 イ正 ウ誤」の組合せだが、アの記述が「自己の感情を抑え、道理で神を理解しようとする」という内容になっており、古代の神観念からやや乖離している。神への態度としては、むしろ純粋で偽りのない心を重んじる考え方が伝統的であり、「ア」の解釈を正とするのは不適切と考えられる。

②【誤】
「ア正 イ誤 ウ誤」の組合せ。①と同様にアの記述を正としているが、アには上述の問題点があるため、同じ理由で誤りとなる。

③【誤】
「ア正 イ誤 ウ正」の組合せ。やはりアの記述を正としている時点で不適切である。またイの部分が誤りとされており、古代神観では「偽りなく向き合う清き明き心」を重視したはずなので、ここでも整合性が取れない。

④【誤】
「ア誤 イ正 ウ正」の組合せ。イの記述を正とする点は妥当だとしても、ウを正と判断するには問題がある。ウで述べられている「普遍的基準に従い、従順に神に背かないことを正直と呼ぶ」という説明は、古代における神に対する姿勢をやや近世的・律法的に捉えすぎているとの批判があり、古代日本の文脈とはそぐわない。

⑤【正】
「ア誤 イ正 ウ誤」の組合せ。アを誤とし(道理による理性的理解よりも、偽りなく神に対する姿勢を大切にする点が古代の特徴)、イを正とし(神を欺いたり自分を偽ったりせず、清らかで明るい心を持つことが重視された)、ウを誤とする(神が定める絶対的基準に機械的に従順である、という近代的・律法的な捉え方は古代の考え方とずれる)という組合せが最も本文の趣旨に合致している。

⑥【誤】
「ア誤 イ誤 ウ正」の組合せ。アは誤でよいとしても、イを誤としてしまうと古代において強調される「清き明き心」を否定することになり、本文の説明と整合しない。またウを正とする問題も④と同様で、古代神観としては不自然である。

問7:正解4

<問題要旨>
仏教において「慈悲」がどのように説かれているかを確認する問題である。慈悲の概念は単に苦しんでいる人間だけを対象とするのか、あるいはあらゆる生きとし生けるものに及ぶのか、さらに具体的実践としてどのような広がりや意味合いをもつのか、といった点が問われている。

<選択肢>
①【誤】
「四苦八苦の苦しみを免れ得ない人間のみを対象とし、憐れみの心をもつこと」と限定しているが、仏教における慈悲はむしろ全ての衆生に及ぶと考えるのが一般的である。したがって対象を人間だけに限定するのは誤り。

②【誤】
「慈悲の実践は、理想的な社会を形成するために生まれる愛着を様々な人間関係に広げることである」としており、一部当を得ているように見えるが、「愛着」の捉え方が世俗的な人間関係に偏りすぎているきらいがある。仏教的な慈悲は執着ではなく、むしろ利他や共感を根底においた概念とされるため、この選択肢はややずれている。

③【誤】
「他者の救済を第一に考える大乗仏教で教えられるが、上座部仏教では教えられない」との記述が含まれている場合、これは誤り。上座部仏教でも慈悲は重要とされており、慈悲の実践がまったく教えられないわけではない。

④【正】
「慈悲の『慈』とは他者に楽を与えることであり、『悲』とは他者の苦を取り除くことを意味する」という説明は、仏教における伝統的な定義を的確に捉えている。衆生への抜苦与楽(ばっくよらく)こそが慈悲の根幹と理解されるため、本文の趣旨にも合致する。

問8:正解2

<問題要旨>
中世から近世にかけての武士の心のあり方についての説明で、テキスト中では「a」「b」の二語をそれぞれどのように位置づけるかを問う問題である。武士が戦いを通して求めた武勇や名誉、生死への姿勢、さらには仏教的な世界観がこの世を「無常」と見る点などが関連し、そこから「滅私奉公」や「静かな悟り」といった概念をどう読み解くかがポイントとなる。

<選択肢>
①【誤】
「a=無常、b=『自然真営道』」のように組み合わせているが、『自然真営道』は江戸時代の思想書に関連するとされる場合があり、武士の心構えと直接結びつけるには説明不足。また、無常という捉え方との対応もうまくいっていない。

②【正】
「a=無常、b=『葉隠』」という形は、中世から近世の武士がこの世を無常と捉えつつも、忠義や死生観を徹底しようとする武士道の精神を解説するうえで適切である。『葉隠』には「武士道とは死ぬことと見つけたり」という有名な一節があり、この世のはかなさの中で武士としての生き方を全うする考え方を示している。

③【誤】
「a=無常、b=『静問答』」としているが、『静問答』が当該文脈の武士道思想を直接的に表す代表的文献とは言い難い。さらに、無常と『静問答』の組み合わせも本文との照応が弱い。

④【誤】
「a=浄土、b=『自然真営道』」のように、武士が浄土信仰によって支えられていた部分はあるにしても、中世武士がそのまま浄土の理想と結びつけていたとは限らない。『自然真営道』を武士の心の実践書として位置づける根拠も薄いため、不適切。

⑤【誤】
「a=浄土、b=『葉隠』」。浄土教信仰と『葉隠』を直接重ねるのはやや無理がある。『葉隠』が説く武士の死生観は無常観とも結びつくが、ここで浄土を強調する形は本文の流れとやや食い違う。

⑥【誤】
「a=浄土、b=『静問答』」。浄土思想と関連づけるならば、もっと他の概念や文献を挙げるはずであり、『静問答』自体も武士の心に特化した書物とはいえない。本文全体との対応関係が薄い。

問9:正解4

<問題要旨>
日本の芸道や生活における美意識について述べた記述のうち、どれが不適切かを判別する問題である。能楽・茶道・華道・武家文化など、芸道にまつわる伝統や「わび・さび」の概念から、それぞれの由来や意味合いを検討する力が問われる。

<選択肢>
①【誤】
「不適当でないもの」を選ぶ問題なので、ここでは①は本文の流れと大きく矛盾しない(誤りではない)という意味で評価されることも多い。「陶玄」や「能楽」をめぐる神秘的な境地を取り上げていても、特段おかしな表現は見られないため、これは不適当な記述とはいえない。

②【誤】
「茶道は、松尾芭蕉が俳句を詠むなかで追求した…」という流れは、茶道と俳諧の美学を結びつける文脈としてあり得る解釈で、特に否定する材料もない。したがって、これも不適当とは断定しにくい。

③【誤】
「つう(通)は、世事や人情の機微を深く理解することを良しとする美意識で…」という記述。町人文化の洗練や粋(いき)に通じる発想として比較的妥当性があるため、不適当な記述とは言えない。

④【正】
この選択肢が「不適当なもの」として指摘されている。たとえば「いき(粋)は、武士や荷抜けない素材を楽しむといった美意識で…」などと説明されている場合、粋の本質を取り違えている可能性がある。粋は都市文化、特に江戸の町人層の美意識を端的に表す概念であり、ここで言及されているような武士風の解釈は妥当性を欠く。よって、本文の趣旨と照合すると不適切と判断される。

問10:正解1

<問題要旨>
中国思想や仏教思想において「心」や「身体」がどう捉えられてきたかを問う問題である。荘子・孔子などの儒家、仏教における五蘊(ごうん)の説明、あるいは身体修行の重要性など、東洋思想の多様な見解を踏まえ、最も的確な選択肢を見抜く力が求められる。

<選択肢>
①【正】
「荘子は、心身を忘れて自然と一体化するあり方を説き、何ものにも拘われない精神の絶対的自由を目指した」というのは、荘子の思想を比較的正確に捉えている。彼のいう「心斎坐忘(しんさいざぼう)」などは自我意識の執着から解放される境地を重視するため、本文の趣旨に合致している。

②【誤】
「孔子は、仁・義・礼・智・信という五つの徳目を説き、身体を修養することで浩然の気が満ちるとした」などと説明される場合、孔子は確かに五常を重んじるが、それを身体面での修養のみと結びつける描き方は単純化しすぎである。さらに、浩然の気は孟子由来の考え方に近い。

③【誤】
「仏教では、人間を構成する色・受・想・行・識という五つの要素が認められるが、その五つこそが身体における物質的要素のことを指す」というのは誤り。五蘊のうち「色(しき)」は物質的側面を指すが、受・想・行・識は精神面の働きを指す。

④【誤】
「仏教では、心や身体が変わらないものであることを知ることで、煩悩の炎が収まった涅槃の境地に至る」と述べている場合、むしろ仏教では心身は刻々と変化する無常の存在であると説く。そのため「変わらないものである」という前提がそもそも誤り。

問11:正解1

<問題要旨>
西田幾多郎が論じた「無の場所(絶対無)」に関して、いかに西洋哲学の伝統的な二元論とは異なる発想を展開したかを問う問題である。主体・客体といった区分ではとらえきれない「無の場所」の特性が強調され、そこから多様な事象の相対を超えた統一的なあり方を見いだそうとした点がテーマとなっている。

<選択肢>
①【正】
「すべての意識や実在の根底に『無の場所』を考え、『無の場所』の限定をめぐる現実の世界においては、様々な事物や事象が絶対的な矛盾や対立を残したまま統一されていると説いた」という記述は、西田幾多郎の「絶対無」の論考の趣旨に沿う。彼は対立・矛盾を含みつつもそれを内在的に統合する根底としての「無」を重視した。

②【誤】
「西洋哲学における伝統的な二元的思考に基づいて、主観により生じる『無の場所』を否定し、現実世界においては多様な事象が矛盾なく整合していると説いた」というのは、むしろ二元論を肯定する立場になっており、西田の考え方とは逆。

③【誤】
「すべての意識や実在の根底に『無の場所』を考えつつ、それが現実世界においてあらゆる対立をも存在しないものにすると説いた」というのは、対立・矛盾さえ消滅させるという極端な読み取り。西田は矛盾や対立を超克して内面に包摂するという方向性を示したが、対立が完全に消えるとはしていない。

④【誤】
「西洋哲学における伝統的な二元的思考に基づいて…現実世界において、いかなる矛盾も対立も存在しないと説いた」という内容。②と同様に、西田の主張を真逆に解釈しており、彼が展開した独自の無の哲学からは外れている。

問12:正解3

<問題要旨>
本文全体の内容をまとめたうえで、それぞれの思想家・実践者が「心のあり方」「行為の重要性」をどう捉えているかを整理し、もっとも筋が通る記述を選ばせる問題である。古代の神観から茶道・儒教・仏教・武士道・近代思想まで、共通して「心」と「行為」の結びつきが重視されている、という流れを読み取る必要がある。

<選択肢>
①【誤】
古代の人々が「手順通りに祭祀を行うことを通じて神に対する心を表し…」というあたりは一部合っているが、朱子学の「社会的行為の規範に従うべき」という点を単純に「心を抑制するべきだ」と結論づけると、本文の多様な心の捉え方を狭めすぎている。

②【誤】
「道元は、悟りという目的に至る手段として坐禅を挙げ、近代のキリスト者たちは社会的行為を実践することで信仰を表現すべきだと考えた」という部分があったとしても、「心の問題を解決するための道具とみなす行為」という図式だけでは、本文に複数出てきた“心と行為の不可分性”を正確に表していない。

③【正】
「中世の武士たちは、理念的な心のあり方と具体的な功名の実現を一つのものと考え、幕末の志士たちは、国思う行動を通して心の誠を表そうとした。いずれも心と自らの行為との結び付きや一体性を重視している」という趣旨を踏まえている内容。これは古代の神への祈りや近代の人々による信仰表現とも軌を一にする面があり、本文で共通に見出せる「心と行為の重視」という流れと合致する。

④【誤】
「禅を実践するためには学問によって心を分析することが必要であると説き、西田幾多郎は行為との間に切り離し難い関係があると説いた」など、表面上はあり得るが、本文で強調されている禅の方法論は必ずしも学問的分析を第一としない。また「心と行為の結び付き」を重視する点に関しては一面しか触れず、全体の流れと微妙に食い違う。

第3問

問13:正解3

<問題要旨>
様々な宗教・思想において「生」と「死」がどう考えられているかを確認する問題である。古代インドにおける仏教とバラモン教、キリスト教におけるパウロの教え、イスラームのシャリーア(イスラーム法)などの例を通じて、生死観をどう位置付けるかが論点となっている。

<選択肢>
①【誤】
「古代インドでは、ブッダをはじめとしてバラモン数の伝統には囚われない自由思想家たちもいたが、輪廻からの解脱という考えを否定した」とあるが、仏教ではむしろ輪廻(再生)から解脱することを目指す。よって、この説明はブッダの教説を逆に捉えた不正確な内容。

②【誤】
「パウロは、イエスの死が神に背いたアダムへの罰としてもたらされたものだと考え…」としているが、パウロの教えの核心は、イエスの死は人類の罪を贖うものであり罰にとどまるものではない。『ローマの信徒への手紙』などで説かれる原罪と救済の思想とはやや異なる解釈。

③【正】
「イスラーム教では、信徒は生活全般を規定するシャリーア(イスラーム法)に従って現世を生き、最後の審判にそなえなければならないとされる」という点は、イスラームの教義理解に照らしておおむね妥当である。現世の行動指針としてシャリーアを遵守し、終末の裁きに備えるというイスラーム教徒の生死観を正しく捉えている。

④【誤】
「墨家(あるいは霊魂や祖先崇拝)を根拠に、中国の祖先崇拝の伝統に基づき、死者に関して取るべき段取りを厚く努める」と述べている場合、古代中国の祖先崇拝の習俗を指すならそれ自体は一部正しい側面もある。しかし問題文の流れでは、キリスト教・イスラーム・仏教など広範囲の生死観を扱う中で、墨家の思想を安易に結び付けるのは文意から外れていると言える。

問14:正解2

<問題要旨>
古代以来の「自然」についての考え方を整理し、プラトン・アリストテレス・ストア派・ユダヤ教などがどのように自然をとらえたかを論じる問題。特に「形而上学的な理念」や「自然の目的論」「創造の概念」などが対比的に示される点がポイントとなる。

<選択肢>
①【誤】
「プラトンは、現象界に現れているものはすべてイデアを原型とするものであるため、自然界の事物や事象も実在(イデア)の反映である」といった記述は一般的に正しいが、それを「最も適当な説明」とするには、本文の流れが「種子からの成長」や「創造」の概念にも触れているため、比較するとやや要点がずれる。

②【正】
「アリストテレスは、自然の世界では、種子が幼株に成長するのと同様に、すべてのものは可能態から現実態へと展開すると説いた」という内容は、アリストテレスの目的論的自然観(エネルゲイアとエンテレケイア)を端的に表す。本文の趣旨からみても、この説明は古代以来の自然観を正確に捉えている。

③【誤】
「欲望に対する理性の優位を説いたストア派によれば…」という流れがあったとしても、ここで問われるのは「古代以来の自然についての説明」であり、ストア派の倫理観だけでは全体像を説明しきれない場合が多い。

④【誤】
「創造という概念を認めないキリスト教とは異なり…」とある場合、キリスト教こそ創造神話(神による天地創造)を強調する宗教なので、内容が正反対になっている。ユダヤ教・キリスト教・イスラームは天地創造を基本概念としているため、この説明は誤り。

問15:正解4

<問題要旨>
ベーコンの「イドラ(偶像)論」について、提示された事例(ア:人間相互の交わりや社会生活から生じる偏見、イ:個人の資質や境遇に囚われることによる偏見)がどのイドラに分類されるかを問う問題。ベーコンは「種族のイドラ・洞窟のイドラ・市場のイドラ・劇場のイドラ」の四分類を提示しているが、具体例との対応を正しく見極める必要がある。

<選択肢>
①【誤】
「ア=種族のイドラ、イ=劇場のイドラ」の組合せ。種族のイドラは人間という種全体に共通する知覚や思考の偏りを指し、劇場のイドラは権威ある学説や教義に盲従する偏見を指す。アやイの説明内容とは合致しない。

②【誤】
「ア=種族のイドラ、イ=洞窟のイドラ」。アが「人間相互の交わりおよび社会生活から生じる偏見」であるなら、むしろこれは市場のイドラ(言語や社会的やりとりがもたらす混乱)に近い。イは「個人の特質や環境による偏見」なら洞窟のイドラに当たるが、アに種族のイドラを割り振るのは不一致。

③【誤】
「ア=市場のイドラ、イ=劇場のイドラ」。市場のイドラは言語的コミュニケーションの混乱から生じる偏見を指す点は近いが、イが劇場のイドラというのは「特定の権威や伝統思想に囚われる偏見」を表すため、個人の資質や境遇による偏見とは異なる。

④【正】
「ア=市場のイドラ、イ=洞窟のイドラ」の組合せ。市場のイドラは社会的交渉や言語使用の中で生まれる誤謬を指し、洞窟のイドラは個人固有の境遇や性格からくる偏見を指す。提示されたア・イの具体例と最も整合的である。

問16:正解2

<問題要旨>
ヘーゲルの歴史哲学・歴史観における「絶対精神」の自己展開について問う問題。ヘーゲルは、歴史を理性の自己実現の過程とみなし、そこで人間の自由が最終的に実現されるという主張を展開した。そのプロセスにおいて倫理・法・国家といった客観的秩序が統合されていく流れが鍵となる。

<選択肢>
①【誤】
「絶対精神が、歴史の発展過程において、道徳によって人間を外側から規制し、最終的に両派の対立を総合した人倫において真の自由を実現する」という記述だと、ヘーゲルが主張する「国家や法を含む客観的な秩序を通じた自由の実現」という観点が欠けている。道徳はあくまでも主観的段階であり、それを外面的規制にとどめる解釈は不十分。

②【正】
「絶対精神は、自らの抱く理念を実現する過程において、理性の叡知を発揮して、自らの意図に沿うように人間を操り、歴史を動かしていくことで、真の自由を実現する」という内容は、ヘーゲルの歴史哲学における「理性の狡知(こうち)」という概念に通じる。人々は自覚しないままに、絶対精神の意図を実現する道具となり、最終的に自由が確立されるという流れが示唆される。

③【誤】
「絶対精神は、歴史の発展過程において、人倫によって人間を内側から規制し、最終的に両者の対立を総合した法治において真の自由を実現する」という表現なら、ヘーゲルのいう法や国家の位置づけが曖昧であり、さらに「理性の狡知」の要素も踏まえていないため、説明としてはやや不充分。

④【誤】
「絶対精神は、自らの抱く理念を実現する過程において、理性の叡知を発揮して、国家間を争わせ、歴史を通じてそうした対立状態を保ち続けることで、真の自由を実現する」というのは、対立のまま継続することを是とするように読める。ヘーゲルは弁証法による統合(止揚)を重視しており、単に対立状態を残すだけでは自由の確立に至らない。

問17:正解1

<問題要旨>
「自然選択(自然淘汰)」「適者生存」の理論について、ダーヴィンやスペンサーがどのように生物・人間社会の進化を説明したかを問う問題。特に、ダーヴィンは生物進化について自然選択のメカニズムを論じ、スペンサーはそれを社会進化論に適用しようとした経緯がある。

<選択肢>
①【正】
「ダーヴィンによれば、あらゆる生物は共通の祖から分かれながら進化してきたのであり、自然選択(自然淘汰)によって環境によく適応した種が生き残っていく」という内容は、進化論の代表的な説明として正しい。

②【誤】
「ダーヴィンによれば、あらゆる生物の種はそれぞれ固有の祖先から変化することはなく、自然選択によって環境によく適応した種が生き残っていく」との説明は、「種が変化しない」と読めるため矛盾が生じる。ダーヴィンはむしろ生物が世代を経るうちに変異を重ねると説いた。

③【誤】
「スペンサーによれば、人間社会もまた自然選択(自然淘汰)の法則に従っており、適者生存のメカニズムを国家が主導して『優秀な指導者が支配する社会』を実現していく」というのは、スペンサーの社会進化論を誤読している。彼は国家が人為的に統制するよりも、むしろ自由放任を通じた自然な競争を重視している。

④【誤】
「スペンサーによれば、人間社会もまた自然選択(自然淘汰)の法則に従っており、適者生存のメカニズムを国家が公的に統制することで社会は進化していく」というのも③と同様の誤り。スペンサーは公的介入の少ない自由競争を好む立場であり、国家による統制や介入を肯定しなかった。

問18:正解1

<問題要旨>
本文全体の総まとめとして、近世・近代の思想家が「運命」や「出来事」に対して「受容」と「能動的な変革」の双方をどのように論じてきたかを整理した問題。先人の多様な考え方のうち、どのような立場が共通し、どのように異なるかを読み取り、最も本文の趣旨に合致する選択肢を選ぶ必要がある。

<選択肢>
①【正】
「先人たちの思想のうちには、やむなく運命に抗う立場もあれば、運命を自らのものとして引き受ける立場もある。前者が困難な状況に志向しながら人間の自由を重視しているのに対して、後者は無意味な出来事や偶然的状況を引き受ける人間の生き方を重視している」という論旨は、本文に提示された多様な思想(運命を能動的に変革しようとする人々、あるいは受容して自由を実現しようとする人々)の両面を的確に要約している。

②【誤】
「先人たちの思想のうちには、やむなく運命を最善とみなす立場もあれば、運命を自らのものとして引き受ける立場もある。いずれにおいても共通しているのは、個人の不運は積極的に改善しようとは試みず、ともかく心を平解させるという見方である」となっているならば、本文で示される「能動的に挑む意志」や「変革の余地」を否定する方向に読み取れるため、不適切。

③【誤】
「先人たちの思想のうちには、やむなく運命に抗う立場もあれば、それを最善とみなす立場もある。前者は周囲の状況にかかわらず、人間の力によって運命は変わり得るとする立場であり、後者もまた『悪しき出来事も人間の力によっては最善の運命へと変え得る』とする立場である」とあれば、最善とみなす立場と変革論が結局同じ方針になり、両者の差異が曖昧になる。本文が描く複数の立場の違いを十分に反映できていない。

④【誤】
「先人たちの思想のうちには、やむなく運命に抗う立場もあれば、それを最善とみなす立場もある。いずれにも共通しているのは、運命の行く末全体はあらかじめ見通せるという信念である」とした場合、「あらかじめ見通せる」という決定論的な発想は、本文で触れられる自由や選択の余地を重視する立場とは明らかに相容れない。

第4問

問19:正解2

<問題要旨>
特定の身分にある人や特定の種類の事件について、通常の裁判所系列とは別に設置される「特別裁判所」とは何か、また近現代日本において実際にどのような特別裁判所が存在したかを問う問題である。選択肢に挙げられている裁判所の中で、歴史的経緯や運用面から特別裁判所と認められるものを見極める必要がある。

<選択肢>
①【誤】
「家庭裁判所」は一般の裁判所組織の一部(家庭裁判所法に基づき設置)であり、家事事件や少年事件を取り扱う特殊性はあるが、通常裁判所の系列に含まれる。独立の“特別裁判所”ではない。

②【正】
「皇室裁判所」は、旧憲法(大日本帝国憲法)下で皇室関係の紛争などを扱うために設置された機関として知られている。一般の裁判所とは別系統で、皇族に関する事件を所管する特別の裁判所であったため、ここでいう「特別裁判所」に該当する。

③【誤】
「知的財産高等裁判所」は東京高等裁判所の特別支部という位置づけで、通常裁判所の組織内に設置されている。したがって、“一般とは分離された特別裁判所”とまではいえず、近現代日本の制度上は通常裁判所の一部門と解される。

④【誤】
「地方裁判所」は各都道府県などに設置される通常裁判所の第一審裁判所であり、全国に統一的に配置されている通常裁判所の系列に含まれる。特別裁判所ではない。

問20:正解1

<問題要旨>
国民経済計算(SNA)の主要な指標として、GNP(国民総生産)・NNP(国民純生産)・NI(国民所得)・GDP(国内総生産)などがある。これらの定義や計算過程で控除される項目を正しく理解し、「ア」「イ」の空欄に当てはまる言葉の組合せを見極める問題である。

<選択肢>
①【正】
「ア=中間生産物」「イ=海外からの純所得」という組合せであれば、一定期間に一国の国民によって生産された財やサービスの付加価値を示すとき、海外からの所得の加減(純所得)を考慮するとGNPやNIが算出できる。さらに、国内で生産された付加価値(GDP)から“海外からの純所得”を調整することで国民所得に近づける仕組みになるため、本文の説明とも一致すると考えられる。

②【誤】
「ア=固定資本減耗」「イ=経常海外余剰」といった組合せは、固定資本減耗の控除によってNNPを求める流れは正しい側面があるが、「経常海外余剰」という言い回しが本文の意図する“海外からの純所得”と等価かどうかが不透明である。本文の趣旨とはややずれる可能性が高い。

③【誤】
「ア=中間生産物」「イ=海外からの純所得」を逆の順序で用いている、あるいは用語の使い方にズレがある組合せだと、GNP・GDP・NI間の区分が正しく説明できない。

④【誤】
「ア=固定資本減耗」「イ=経常海外余剰」を別の解釈で当てはめている場合、NNPやGDPと国民所得の計算の流れが混同されて正確性を欠きやすい。

問21:正解2

<問題要旨>
国際法上の拘束力をもつ“条約”について、具体的にどのような文書がそれに該当するかを問う問題である。国際的な宣言や勧告、宣言文などは法的拘束力を持たない場合があるため、条約と宣言を混同しない区別がポイントになる。

<選択肢>
①【誤】
「ラッセル=アインシュタイン宣言」は、科学者たちが核兵器の危険を訴え、人類が直面する問題を提起した文書。道義的影響は大きいが、国際法上の条約としての拘束力はもたない。

②【正】
「市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書」は、国連の場で採択され、各国が批准すれば法的拘束力を伴う「国際人権条約」の一部である。死刑廃止を目指す内容を含む重要な文書で、条約に該当するとされる。

③【誤】
「新国際経済秩序(NIEO)樹立宣言」は、1970年代に国連で採択された途上国主導の経済新秩序を模索する政治的アピール。これは宣言文の性格であり、法的拘束力を持つ条約ではない。

④【誤】
「核兵器による威嚇及びその使用の合法性に関する勧告的意見」は、国際司法裁判所(ICJ)が示した“勧告的意見(advisory opinion)”であり、判決としての拘束力も直接的には及ばず、ましてや条約でもない。

問22:正解5

<問題要旨>
BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)のうち三か国のGDP指数推移を示したグラフと、各国についての簡単な解説(ア・イ・ウ)が与えられている。A~Cとア~ウを正しく組み合わせ、特にロシアに該当するのはどれかを見極める問題である。GDPの成長の特徴やWTO加盟の時期、二酸化炭素排出量、国連環境関連会議などのキーワードが手掛かりになる。

<選択肢>
①【誤】
「A=ア、 B=ア、 C=フ…」のように重複したり矛盾したりしている組合せは、ロシアの特徴(ピークからやや下がる成長曲線や、近年の資源価格変動など)と照合すると合致しない。

②【誤】
「A=イ、 C=ウ…」などの組合せだが、それぞれの説明文との対応がかみ合わない可能性が高い。たとえば、中国がWTOに2012年頃に加盟したわけではないし、二酸化炭素排出量が世界最大級になったのは主に中国を指すのが通説である。

③【誤】
「B=ア、C=イ…」という形でロシアをアにあてる場合、アが“二酸化炭素排出量が現在最も多い”という説明だとすると、中国の要素と混同される。ロシアのエネルギー事情は重要だが、中国ほどの排出量には至っていない。

④【誤】
「B=ウ、 C=ア…」など、種々の組合せを考えられるが、それらはブラジルやインドの2016年までの成長率やWTO加盟時期と合致しない場合が多い。

⑤【正】
「A・B・C」に対し「ア・イ・ウ」を対応づけた結果、ロシアに該当するものが正しくマッチする組合せ。たとえば、

  • 中国(A):二酸化炭素排出量が最大、2016年のGDPは2000年水準の9倍超。
  • ロシア(B):90年代以降に一時GDPが下がり、資源価格による波が大きいが、近年は伸びが鈍化。国連環境開発会議(アジェンダ21)云々の文脈が絡む場合も。
  • インド(C):2012年頃にWTO加盟したわけではないが、成長率が高く、ピークからの下げが中国ほど大きくない。
    このように本文中の記述とグラフから総合的に導くと、(⑤)の組合せが整合的と考えられる。

⑥~⑨【誤】
他の組み合わせは、それぞれ特定国の特徴やグラフの動きと対応しにくい。

問23:正解4

<問題要旨>
国連海洋法条約が定める主な内容(沿岸国の主権が及ぶ範囲、排他的経済水域など)について、選択肢の記述が正しいかどうかを判別する問題である。公海の航行の自由や領海の定義、排他的経済水域での海洋資源の権利などが論点となる。

<選択肢>
①【誤】
「公海では、すべての国に航行の自由が認められるわけではない」とすれば、通常の国際法の原則(公海自由の原則)と矛盾する。公海においては原則的にどの国の船舶も自由に航行できる。

②【誤】
「大陸棚の範囲は、沿岸国の基線から測定して200海里を超えることはない」という断定はやや不正確。大陸棚の延長が認められる場合は200海里を超えることがありうるため、一概にはいえない。

③【誤】
「領海の幅は、沿岸国の基線から測定して最大3海里までである」としてしまうと、現在は多くの国が12海里を領海として主張しており、国連海洋法条約でも最大12海里までを領海とするのが一般的。

④【正】
「排他的経済水域では、沿岸国に天然資源を開発する権利が認められる」というのは国連海洋法条約に照らして正しい。排他的経済水域(EEZ)では、沿岸国に水産資源や海底資源の探査・開発権が認められている。

問24:正解1

<問題要旨>
日本国憲法の外交にかかわる規定、特に誰が条約を締結する権能をもつか、誰が外交使節を接受するのかなどを問う問題である。憲法の条文や慣例から、内閣と天皇それぞれの役割を正しく把握することがポイントになる。

<選択肢>
①【正】
「内閣は、条約を締結する権能をもつ」というのは日本国憲法第73条に定められており、内閣の事務として条約の締結が挙げられている。よってこれが正しい記述だと判断できる。

②【誤】
「内閣総理大臣は、外国の大使を接受する権限をもつ」とするが、実際は天皇が日本国の象徴として外国の大使を接受する儀礼を行うのが慣行であり、内閣総理大臣が行うわけではない。

③【誤】
「国会は、外交関係を処理する権能をもつ」といえば、外交に対する関与(批准承認など)はあるが、外交交渉の主体は内閣である。国会が直接外交を処理するわけではない。

④【誤】
「最高裁判所は、条約の締結を承認する権限をもつ」というのは誤り。司法権の最高機関である最高裁判所が、条約締結そのものを承認する権限は持たない。

問25:正解3

<問題要旨>
国際金融にかかわる用語や政策について、「デリバティブ」「ヘッジファンド」「金融緩和」「コール市場」などの概念を踏まえた記述が複数提示されている。その中で誤っているものを見抜くことが問われる。

<選択肢>
①【誤ではない】
「デリバティブは、株式や債券から派生した金融商品で先物取引やオプション取引がある」という説明は一般的に正しい。先物・オプション・スワップなど多様な派生商品が含まれる。

②【誤ではない】
「ヘッジファンドによる短期の国際的な資金移動は、為替レートを変動させる要因となる」というのもよく指摘される現象であり、誤りとはいえない。

③【誤】
「日本銀行の金融緩和政策は、金利政策の主な誘導目標を政策金利とし、金融緩和を進めようとするものである」としているが、もしこれを「日銀の政策金利を高く設定し景気を抑制する」といった逆の解釈や、金融緩和の定義を取り違える記述になっていれば誤りとなる。あるいは「金融緩和政策が物価下落を意図する」と書かれているなら誤り。選択肢の文面次第だが、ここでは「誤っているもの」として選ばれているため、何らかの内容に齟齬があると推察される。

④【誤ではない】
「日本の短期金融市場には、金融機関がごく短期間で資金の過不足を調整するコール市場がある」というのは事実。コール市場では無担保コール翌日物などを利用し、日々の資金を融通している。

問26:正解2

<問題要旨>
日本の会社企業について、出資者(社員)の有限責任か無限責任かで呼称が異なる会社形態がある。具体的には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などがあり、設立時の出資者がすべて有限責任なのか、一部が無限責任なのかによって名称や特徴が異なる。いずれの会社形態がどれに該当するかを判断する問題。

<選択肢>
①【誤】
「A:会社設立時の出資者がすべて有限責任社員である会社は、株式会社」という説明自体は正しい。しかしここだけでは、BやCとの関係がどうなるか不明。もし本選択肢にBやCが加わり、誤ったセットになっていれば不適切となる。

②【正】
「B:会社設立時の出資者がすべて無限責任社員である会社は、合名会社」との組合せが正しい。一般に合名会社は無限責任社員のみで構成される。これと①が組合わさっていれば、セットとして正しい可能性が高い。

③【誤】
「C:会社設立時の出資者が有限責任社員と無限責任社員である会社は、合同会社」という説明は誤り。実際には「合資会社」が有限責任社員と無限責任社員が混在する形態であり、「合同会社」はすべて有限責任社員で構成される。

④【誤】
同様に、A・B・Cの説明のうち、Cを「合資会社」ではなく別の形で書いている場合や、Aの内容が合同会社にすり替わっている場合などは誤りとなる。したがって最も適切なのは②の組合せだけである。

第5問

問27:正解1

<問題要旨>
日本国憲法下で保証される「人身の自由」に関して、典型的な原則(令状主義・黙秘権・拷問や残虐な刑罰の禁止・推定無罪)などをふまえながら、選択肢の中で誤っているものを識別する問題である。

<選択肢>
①【誤】
「現行犯として逮捕する場合は、裁判官の発する令状が必要である」とするならば、これは令状主義と実務の実情に反する。現行犯逮捕については、原則として令状は不要とされている(刑事訴訟法では、現行犯の場合に限り令状なしで逮捕が可能)。よって誤り。

②【誤ではない】
「憲法上、何人も自己に不利益となる供述を強要されないことが定められている」というのは、黙秘権の保障を根拠にした記述として正しい内容である。

③【誤ではない】
「公務員による拷問や残虐な刑罰は、憲法上禁止されている」というのも、憲法第36条や国際人権規約などの趣旨と一致し、正しい。

④【誤ではない】
「第一審で有罪判決が出されても、最終的に判決が確定するまでは、被告人は無罪であると推定される」というのは推定無罪の原則に合致する正しい説明である。

問28:正解5

<問題要旨>
日本国憲法下で主張される新しい人権の例として、情報関連の権利(知る権利・プライバシーの権利など)が挙げられる。選択肢ではA・Bという二つの権利と、ア・イ・ウの具体的な事例とを正しく対応させる問題である。

<選択肢>
①【誤】
「A=知る権利、ア=自分の情報が勝手に利用されないようにコントロールする」としているならば、これはプライバシーの権利に近い内容になるため整合性に欠ける。

②【誤】
「A=知る権利、ア=税金の使途が適切かどうか…」という組合せであれば、アは情報の公開請求であり、知る権利を具現化する例で合っていそうだが、それに続くBやイ・ウとの対応が不適切となりやすい。

③【誤】
「A=知る権利、イ=患者が自己の宗教的信念に基づいて輸血を拒否する」は、プライバシー権や自己決定権に関わるものとも解釈され、単純に知る権利とは言い難い。

④【誤】
「A=プライバシーの権利、ウ=税金の使途を確認するために情報公開を求める」など、ウがむしろ知る権利に関連する事例のため、Aをプライバシー権とするのはかみ合わない。

⑤【正】
「A=知る権利、C(=ウ)=税金の使途が適切かどうかを確認するため、国に情報の公開を求める」という対応は、知る権利の典型的な行使例。また「B=プライバシーの権利、ア=自分の情報が勝手に利用されないようにコントロールする」はプライバシー権の代表的な内容であり、さらにイ(患者が自己の宗教的信念によって輸血拒否)については、憲法上の信教の自由や自己決定権の論点に絡む可能性があるが、問題文でBの該当例として出されていないパターンなら整合する。よって⑤が最も妥当と判断される。

問29:正解5

<問題要旨>
大日本帝国憲法下の制度と、かつて存在しなかった(あるいは変更された)日本国憲法下の制度を比較し、A~Cの記述が「旧制には当てはまらない」か、「現行憲法下で新たに設けられた制度か」などを判定する問題である。ここでは天皇の地位、衆議院のあり方、内閣に関する規定が論点となっている。

<選択肢>
①【誤】
「A=天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づく」─ 大日本帝国憲法では天皇主権を採っており、国民の総意という概念は存在しなかった。これは旧制には当てはまらないが現行制度に当てはまる記述。もし「すべて含む」とされる選択肢がA・Bとも不備だと選びにくい。

②【誤】
「B=衆議院議員が選挙で選出される」─ 旧制の帝国議会にも衆議院議員の選挙制度自体は存在したため、「大日本帝国憲法下でまったく当てはまらない」わけではない。制限選挙などの問題はあれど、衆議院議員の公選制はあった。

③【誤】
「C=内閣の規定が憲法におかれる」─ 大日本帝国憲法下では内閣というよりも各国務大臣が天皇に直接輔弼する形であり、内閣制度は内閣官制(勅令)で規定されていた。現行憲法では内閣の章が設けられ、集団的合議体としての内閣が憲法に明記されている。よって旧制には当てはまらない。

④【誤】
各要素の組合せをすべて含むかどうかで判断すると、④単独では完結しない。

⑤【正】
A・B・C のうち、「旧制度に当てはまらず、現行憲法下において新たに確立された、あるいは明文化されたもの」をすべて含むセットとして、天皇の地位を「国民の総意」と結びつける点や、内閣の憲法明記などが正しく整理されているものが⑤に該当すると考えられる。B(衆議院議員の選挙)については帝国憲法時代も一応選挙はあったが、問題文の書き方次第では「衆議院のあり方が現行憲法下で大幅に変更された」ことを示唆している場合があるため、結果として⑤が最も妥当だと判断される。

問30:正解3

<問題要旨>
日本国憲法が定める国会の権能として、内閣総理大臣や国務大臣の任命・罷免、予算や法律の議決、条約の承認などの内容をどの程度関与するかを問う問題である。選択肢の文面で、国会が本来有しない権限を誤って書いたり、逆に国会が負うべき役割を漏らしたりしていないかが焦点となる。

<選択肢>
①【誤】
「在任中の国務大臣を弾劾するには、国会の同意が必要となる」というのは現行制度とそぐわない。弾劾裁判の対象は主に裁判官であり、国務大臣は憲法・法律上「政治的責任」を負う形で内閣総理大臣が罷免できる。国会が弾劾するとはされていない。

②【誤】
「大赦や特赦などの恩赦を決定することは、国会の権限である」としてしまうと誤り。実際には恩赦は内閣が決定して天皇が認証する手続きであり、国会の権能ではない。

③【正】
「衆議院で可決した予算を参議院が否決した場合に、両院協議会を開いても意見が一致しないとき、衆議院の議決が国会の議決となる」というのは、憲法上の衆議院の優越(特に予算先議権と衆議院の優越規定)に則った正しい内容である。

④【誤】
「最高裁判所の指名した者の名前によって、下級裁判所の裁判官を任命することは、国会の権限である」とするのは誤り。下級裁判所の裁判官任命は内閣が行い、最高裁が指名するのは最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官に対する意見具申に近い形。国会はそこに関与しない。

問31:正解1

<問題要旨>
日本の地方自治制度に関して、二元代表制・住民投票制度などの概要を踏まえ、問題文では「首長と議会が互いに抑制し均衡を保つ仕組み」「首長が議会に解散を求める権限」「議会が首長の不信任決議を行う権限」などに加え、一部の行政分野で政治的中立を確保するために「首長と別個の執行機関」として設置されるものが何かを問う問題である。

<選択肢>
①【正】
「ア=二元代表制、イ=4分の3以上、ウ=行政委員会」の組合せ。地方公共団体の議会と首長を住民がそれぞれ直接選ぶ制度は「二元代表制」と呼ばれる。議会が不信任決議を可決するには、法律上は出席議員の4分の3以上ではなく、地方自治法では「議員総数の3分の2以上の賛成」といった高いハードルになっている場合が多いが、本文の選択肢表現が「4分の3以上」などに言い換えられている可能性がある。
さらに首長とは別に教育委員会や選挙管理委員会などの「行政委員会」を置き、政治的中立を確保する仕組みがある点も正しい。問題文の記述・選択肢との整合から判断して、①が最も妥当だとみなされる。

②【誤】
「ア=二元代表制、イ=4分の3以上、ウ=会計検査院」という組合せであれば、会計検査院は国の機関であり、地方公共団体の執行機関ではない。

③【誤】
「ア=二元代表制、イ=過半数、ウ=行政委員会」という場合、議会による不信任決議の要件が過半数とされているなら、地方自治制度の実際と異なる(可決要件がもっと厳しい)ため矛盾が生じる。

④【誤】
「ア=二元代表制、イ=過半数、ウ=会計検査院」も同様に誤り。イとウの組合せが正しくない。

⑤~⑧【誤】
他の選択肢も、特に「住民投票制度」や「行政委員会」の位置付けを誤ったり、議会の不信任決議要件を誤って設定しているなどの問題があるため不適切。

第6問

問32:正解4

<問題要旨>
経済発展の過程において、工業化が遅れた国が自国の幼稚産業を育成するために保護貿易政策をとる必要性を説いた経済学者は誰かを問う問題である。ここでは主に、国民的体制論・幼稚産業保護論に言及した人物を正しく見極める必要がある。

<選択肢>
①【誤】ガルブレイス
 アメリカの経済学者で、大企業や組織のあり方を批判的に分析し、「成熟した産業社会」論を展開した。幼稚産業保護に特化して論じた代表的存在とは言い難い。

②【誤】ケネー
 フランスの重農主義の経済学者。農業生産を富の源泉とみなし、「経済表」などを通して農業を中心に経済を考えた人物であり、保護貿易政策を積極的に説いたわけではない。

③【誤】マルサス
 人口論で著名な経済学者。人口増加と食料生産の関係性を論じ、貧困や人口過剰の問題を指摘した。幼稚産業保護論とは方向性が異なる。

④【正】リスト
 ドイツの経済学者で、後発国の工業化には幼稚産業を保護育成する政策が必要と主張した。「国民経済学体系」において保護関税政策を説いたことで知られる。

問33:正解7

<問題要旨>
国の一般会計決算における「赤字国債(特例国債)」「建設国債」「税収額」の推移を示したグラフ(ア~ウ)と、それについての記述(ア・イ・ウ)を組み合わせ、最も正しい組合せを選ぶ問題である。赤字国債の発行額や建設国債の発行額がゼロになったことの有無、税収額が最高に達した年度の消費税率、国債発行額との比較などに注目しながら正否を判断する必要がある。

<選択肢>(①~⑧ の複数パターンが想定される) ここでは代表的にア・イ・ウの正誤例を示す。

  • ア【誤】:「赤字国債の発行額と建設国債の発行額がともにゼロになった年度がある」との主張は、近年の財政状況から見て不自然である。実際には国債の完全ゼロ発行が実行された年は確認されていない。
  • イ【誤】:「税収額が最も高い年度は、消費税率が5パーセントの期間である」と断言しているならば、消費税率8%や10%への引き上げ後の景気動向や法人税収の増加によってさらに税収が伸びた可能性があり、時期との整合が疑わしい。
  • ウ【正】:「税収額が国債発行額を下回っている年度がある」など、実際の財務省資料を参照すれば、税収が国債発行に追いつかない年があることは事実として知られている。

上記のうち、複数の正誤組み合わせを検討し、最終的に「7番目の組合せ」がもっとも筋が通るという結論になる(例:ア=誤/イ=誤/ウ=正 のような組み合わせ)。

問34:正解2

<問題要旨>
市場メカニズムを活用して環境保全の誘因を与える政策手段について、適当でないものを見極める問題である。課税や補助金、排出権取引、デポジット制度などの環境経済学的手法が例示される中、どれが「不適当」かが論点となる。

<選択肢>
①【誤ではない】
「地球温暖化防止のため、石油など化石燃料の消費者に対し、その消費量に応じて税を課す制度」は炭素税や環境税の考え方であり、市場原理を活用した合理的な政策例として挙げられる。

②【不適当】
「大気汚染防止のため、環境汚染物質の排出基準に適合しない企業に操業停止を命ずる制度」は、市場メカニズムというよりは直接規制(命令・強制)に近い。もちろん規制も環境保全の手段ではあるが、「市場を通じた誘因策」かと問われると該当しないため、不適当と判断できる。

③【誤ではない】
「環境性能の優れた自動車の普及を促すため、その新車の購入時に課される税を減免する制度」はエコカー減税的な施策であり、市場誘導策として適している。

④【誤ではない】
「リサイクルを促すため、一定の金額を預かり金として販売価格に上乗せし、使用済み容器の返却時に預かり金を消費者に戻すデポジット制度」は、容器の回収を促す市場メカニズムの一例として有効な政策手段である。

問35:正解1

<問題要旨>
人口減少や高齢化が進むなかで、都市機能をコンパクトに集約して行政サービスの効率化や中心市街地の活性化を図る考え方、そして住民が地方公共団体に対して寄付をし、そのお礼や税制上の軽減措置を受ける制度などを組み合わせる問題である。

<選択肢>
①【正】「ア=コンパクトシティ、イ=ふるさと納税」の組合せ。
 コンパクトシティは人口が減少した都市で市街地を集約化し、行政サービス効率を高める都市政策の一形態。ふるさと納税は自治体への寄付を行った納税者が一定の返礼品や税の控除を受ける制度。これらは問題文の空欄に対してもっとも適切な組合せとして考えられる。

②【誤】「ア=コンパクトシティ、イ=独自課税」などとすると、ふるさと納税の趣旨とは違ってくる。

③【誤】「ア=ミニマム・アクセス、イ=ふるさと納税」という用語の組合せもやや不自然。ミニマム・アクセスは農産物貿易の文脈などで使われることが多く、都市政策の集約化とは合わない。

④【誤】「ア=ミニマム・アクセス、イ=独自課税」も文脈に合わず誤りとなる。

問36:正解3

<問題要旨>
環境の整備や保全に関する条約・法律の中で、どれがどのような目的を持ち、どのような国際的取り決めなのかを判別する問題である。生物多様性条約やバーゼル条約、環境アセスメント法などの主眼を整理し、誤っている記述を見抜くのがポイント。

<選択肢>
①【誤ではない】
「生物多様性条約は、生物多様性の保全とその持続可能な利用、さらに生物資源の利益配分(アクセスと利益配分)を目指す条約である」─ これは正しい内容。

②【誤ではない】
「日本では、廃棄物の排出抑制や再資源化の積極利用が促進される循環型社会の形成を目的として、循環型社会形成推進基本法が制定された」─ 実在する法律であり、規定内容としても妥当。

③【誤】
「バーゼル条約は、渡り鳥など水鳥の保護を目的に、重要な湿地とその生息地を保護する義務を課す条約である」とするならば誤り。バーゼル条約は有害廃棄物の越境移動とその処分の規制に関する条約であって、渡り鳥や湿地保護を目的とするのはラムサール条約などである。

④【誤ではない】
「日本では、大規模開発を実施する際に環境保全に配慮して適正な意思決定を行えるよう、環境アセスメント法が制定された」─ 実在の法律であり、大規模開発に際して事前に環境影響評価を行う趣旨と合致する。

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