2024年度 大学入学共通テスト 追試験「物理基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2024年度 大学入学共通テスト 追試験「物理基礎」の解答・解説です。第1問が小問集合(16点)、第2問が力学(18点)、第3問がエネルギーと電気(16点)で、50点満点です。
設問ごとにアコーディオンを開くと、<問題要旨><考え方>と計算の流れが読めます。間違えた設問だけを開いて確認してください。
第1問 小問集合(潜熱・自由端反射・気柱の共鳴・豆電球の回路)
熱・波動・電気から4問。問2の自由端反射は「壁の向こうへ突き抜けた分を、そのまま折り返して足す」と作図が速いです。問4は回路の形をほどいて「並列部分+直列」に整理するのが先決。
問1:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
容器に入れた水を冷却し続けたところ、温度が下がり続けた後、一定時間だけ変化せず、その後また低下しました。温度が変化しなかった間に水が熱をどうしていたか(ア)と、状態変化に伴って出入りする熱の名称(イ)を答えます。
<考え方>
冷却し続けているのに温度が下がらないのは、水が氷になる(凝固する)ときに熱を外へ放出しているからです。この状態変化のときに出入りする熱を潜熱といいます。
ア:温度が変化しない間 = 凝固(液体 → 固体) 冷却は続いているのに温度が下がらない → 水が熱を放出して、それが冷却分を打ち消している → 放出 イ:状態変化に伴って出入りする熱 = 潜熱 (比熱は「1 g の温度を1 K 上げるのに必要な熱」で 状態変化とは別の量)
問2:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
x 軸の正の向きに速さ 0.1 m/s で進む三角形の波(t = 0 で x = 0.2〜0.6 m、頂点 0.2 m)が、x = 1.0 m の自由端で反射します。t = 6.0 s での波形を選びます。
<考え方>
6.0 秒で波は 0.6 m 進みます。自由端反射は「壁の向こうへはみ出した部分を、壁について折り返し、符号はそのままで足す」と作図できます。
t = 6.0 s で波は 0.1 × 6.0 = 0.6 m 進む [反射がなかったとしたら] 三角形は x = 0.8 〜 1.2 に移動 頂点は x = 1.0 で高さ 0.2 m [自由端反射の作図] 自由端の向こう(x > 1.0)にはみ出した部分を x = 1.0 について折り返し、符号はそのままで足す はみ出した部分:x = 1.0(0.2 m)から x = 1.2(0)へ下る辺 これを折り返すと x = 0.8(0)から x = 1.0(0.2 m)へ上る辺 [重ね合わせ]x = 0.8 〜 1.0 で もとの波:0 → 0.2 m へ上る 折り返し:0 → 0.2 m へ上る 合成 :0 → 0.4 m へ上る → x = 0.8 から x = 1.0 にかけて 0 から 0.4 m まで直線的に上がる波形 ⑤
問3:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
太さが同じで長さが 6 cm, 8 cm, 12 cm の開管と閉管について、はじめて共鳴が起きたときの振動数を記録しました。長さ 12 cm の開管と同じ振動数が記録された管を選びます。
<考え方>
はじめて共鳴する振動数=基本振動の振動数です。開管は f = v/(2L)、閉管は f = v/(4L)。閉管は同じ長さの開管の半分の振動数になる、と覚えておくと速いです。
基本振動の振動数(音速を v とする) 開管(両端が開く):f = v/(2L) 閉管(一端が閉じる):f = v/(4L) 基準:12 cm の開管 f = v/(2 × 12) = v/24 各選択肢 ① 6 cm の開管 :v/(2×6) = v/12 … 2倍 ② 6 cm の閉管 :v/(4×6) = v/24 … 一致 ○ ③ 8 cm の開管 :v/(2×8) = v/16 ④ 8 cm の閉管 :v/(4×8) = v/32 ⑤ 12 cm の閉管:v/(4×12) = v/48 → 6 cm の閉管 (閉管は同じ長さの開管の半分の振動数。 つまり「長さが半分の閉管」=「もとの開管」)
問4:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
同じ豆電球ア〜エと電池を図3 のように接続すると、すべての豆電球が点灯しました。明るさについての3つの文 (a)〜(c) から正しいものをすべて選びます。
<考え方>
回路をほどくと「ア」と「イ+ウ(直列)」が並列で、その全体に「エ」が直列です。豆電球はすべて同じなので、明るさは流れる電流の大きさで決まります。並列部分は抵抗の比の逆比で電流が分かれます。
豆電球の抵抗をすべて R とする 回路の構造 ア(R)と「イ+ウ(2R)」が並列 その並列部分に エ(R)が直列 並列部分の合成抵抗 R × 2R/(R + 2R) = 2R/3 全体を流れる電流 I(=エ を流れる電流) 並列の分岐は抵抗の逆比 ア :I × 2R/(R+2R) = (2/3)I イ・ウ:I × R/(R+2R) = (1/3)I 各豆電球の電流 エ = I,ア = (2/3)I,イ = ウ = (1/3)I (a) アとイは同じ明るさ (2/3)I ≠ (1/3)I → 誤り (b) イはウよりも明るい 直列なので同じ電流 → 同じ明るさ → 誤り (c) エが最も明るい エの電流 I が最大 → 正しい ○ → 正しいのは (c) だけ
第2問 A 力学(投げ下ろした小球の位置・速度・加速度)
校舎の階段から小球を投げ下ろす探究活動。y 軸を鉛直下向きにとっているので、投げ下ろしの向きが正になります。グラフの形(一定・直線・放物線)を見分けるだけの素直な2問です。
問1:正解 ⑥(配点3)
<問題要旨>
時刻 t = 0 から小球A が地面に到達するまでの、位置 y_A、速度 v_A、加速度 a_A のグラフが図2 の (ア)(イ)(ウ) です。それぞれがどれに対応するかを答えます。
<考え方>
投げ下ろしは等加速度運動なので、加速度は一定(水平な直線)、速度は時間の1次式(斜めの直線)、位置は時間の2次式(放物線)になります。グラフの形を見分けるだけです。
投げ下ろし(y 軸は鉛直下向きが正) a_A = g (一定) v_A = v₀ + gt (t の1次式) y_A = v₀t + (1/2)gt²(t の2次式) 図2 の形 (ア) 水平な直線(一定) → a_A (イ) 正の値から始まる直線 → v_A (t = 0 で v₀ > 0 なので原点を通らない) (ウ) 下に凸の曲線(放物線) → y_A → (ア) = a_A,(イ) = v_A,(ウ) = y_A
問2:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
t = 0 に、3階から小球A を速さ v₀ で鉛直下向きに投げると同時に、4階から小球B を初速度 0 で自由落下させました。時刻 t での位置の差 y_A − y_B と t の関係を表すグラフを選びます。
<考え方>
2つの式を書いて引き算するだけです。加速度の項((1/2)gt²)は両方に共通なので、引き算で消えてしまうところがポイントです。
y 軸は鉛直下向きが正、原点は屋上 小球A(3階から v₀ で投げ下ろし) y_A = y_A0 + v₀t + (1/2)gt² 小球B(4階から自由落下) y_B = y_B0 + (1/2)gt² 差をとる y_A − y_B = (y_A0 − y_B0) + v₀t (1/2)gt² が消えて t の1次式になる A は B より下の階(3階)にあるので y_A0 > y_B0 → 切片は正 v₀ > 0 → 傾きも正 → 正の切片から一定の傾きで増える直線 ②
第2問 B 力学(斜面上ではたらく摩擦力)
板を傾けていって物体がすべり出す──摩擦の基本がひととおり詰まっています。「静止摩擦力は sinθ に比例、動摩擦力は cosθ に比例」という対比を押さえておくと、問4がそのまま解けます。
問3:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
板の上に物体を置いて板をゆっくり傾けたところ、角度 θ が θ_c を超えたときに物体がすべり始めました。物体と板の間の静止摩擦係数を求めます。
<考え方>
すべり出す直前は「斜面方向の重力の成分=最大静止摩擦力」。垂直抗力は N = mg cosθ_c です。
すべり出す直前(θ = θ_c) 斜面方向:重力の成分 mg sinθ_c 斜面に垂直:垂直抗力 N = mg cosθ_c 最大静止摩擦力 = μN = μ mg cosθ_c つり合いの限界 mg sinθ_c = μ mg cosθ_c μ = sinθ_c/cosθ_c = tanθ_c
問4:正解 ②,③(配点3,3)
<問題要旨>
θ を 0 から徐々に大きくしていったとき、(解答番号8)θ が θ_c より小さい間の静止摩擦力の大きさ、(解答番号9)θ が θ_c を超えてすべり下りているときの動摩擦力の大きさが、θ とどういう関係になるかを答えます。
<考え方>
静止摩擦力は「必要なだけ生じる力」なので、つり合いから決まります。一方、動摩擦力は μ′N で決まる値なので、垂直抗力を通して θ に依存します。この違いが答えの分かれ目です。
[解答番号8]静止している間(θ < θ_c) 斜面方向のつり合い 静止摩擦力 = mg sinθ → sinθ に比例する (静止摩擦力は「すべらないために必要なだけ」 生じる力。μN で決まるのは最大値のほう) [解答番号9]すべり下りている間(θ > θ_c) 動摩擦力 = μ'N = μ' mg cosθ → cosθ に比例する (θ が大きくなると、静止摩擦力は増え、 動摩擦力は減る、と向きが逆になる)
問5:正解 ⑧(配点3)
<問題要旨>
θ を θ_c より大きくして板を固定し、物体を静かに置くとすべり下りました。高さ h だけすべり下りる間に動摩擦力が物体にした仕事の大きさ(ア)と、高さ h だけすべり下りたときの物体の速さ(イ)が、θ とどう関係するかを答えます。
<考え方>
高さ h を下るときの斜面に沿った距離は h/sinθ。動摩擦力の大きさ μ′mg cosθ と掛け合わせると、cosθ/sinθ = 1/tanθ が出てきます。速さはエネルギーの引き算から求めます。
斜面に沿ってすべる距離 L = h/sinθ ア:動摩擦力がした仕事の大きさ W = μ'mg cosθ × h/sinθ = μ'mgh × cosθ/sinθ = μ'mgh / tanθ θ が大きい → tanθ が大きい → W は小さい → θ が大きいほど、小さい イ:エネルギーの関係 (1/2)mv² = mgh − μ'mgh/tanθ v² = 2gh(1 − μ'/tanθ) θ が大きい → μ'/tanθ が小さい → v² は大きい → θ が大きいほど、大きい (重力がした仕事 mgh は θ によらないのに、 摩擦が奪う分だけが θ で変わる、という構図)
第3問 A エネルギー(火力発電と原子力発電のしくみ)
発電のしくみを問う知識問題です。「エネルギー保存則を破る選択肢は必ず誤り」という視点を持っておくと、迷わず切れます。
問1:正解 ①(配点3)
<問題要旨>
化石燃料を使った火力発電に関する3つの文 (a)〜(c) から、正しいものをすべて選びます。
<考え方>
(c) は「入れた熱エネルギーより大きい電気エネルギーが取り出せる」という主張で、エネルギー保存則に真っ向から反します。こういう選択肢は読んだ瞬間に切れます。
(a) 化石燃料がもつ化学エネルギーを利用している 燃焼させて熱エネルギーに変えている → 正しい ○ (b) CO₂ は排出されない 化石燃料の燃焼では CO₂ が発生する → 誤り (c) 熱エネルギーより大きな電気エネルギーを つくり出すことができる → エネルギー保存則に反する。誤り (実際の火力発電の効率は 40〜60 % 程度) → 正しいのは (a) だけ
問2:正解 ⑥(配点3)
<問題要旨>
図1 のボイラーを原子炉に置き換えると原子力発電のしくみになります。原子炉内で起きている現象(ア)、そのとき放出されるもの(イ)、それが連続的に起こる現象の名称(ウ)を答えます。
<考え方>
ウランやプルトニウムの原子核が分裂するときに中性子が飛び出し、それが次の分裂を引き起こす──この繰り返しが連鎖反応です。「電離」は原子から電子が離れる現象で、原子核の話ではありません。
ア:ウランやプルトニウムの原子核が起こすのは 核分裂(原子核が2つ以上に分かれる) (電離は原子から電子が離れる現象で、 原子核そのものは変わらない) イ:核分裂のときに飛び出すのは中性子 電荷をもたないので他の原子核に近づきやすく、 次の核分裂を引き起こせる ウ:核分裂が次々に連続して起こる現象 = 連鎖反応 (化学反応は原子核が変わらない反応なので不適)
第3問 B 電気エネルギー(電気自動車の充電と回生ブレーキ)
kW と kWh の使い分けがテーマ。「kW は電力(1秒あたりのエネルギー)」「kWh は電力量(電力×時間)」で、グラフの面積が電力量になります。身近な題材ですが、単位を混同すると全滅するので落ち着いて。
問3:正解 ⑥,⑧(配点2,2)
<問題要旨>
電圧 200 V、電力 3.0 kW で電気自動車を充電するときに流れ込む電流(解答番号13)と、一定の電力 3.0 kW で容量 60 kWh のバッテリーを充電率 0 % から 100 % まで充電するのに要する時間(解答番号14)を求めます。
<考え方>
電力 P = 電圧 V × 電流 I。単位を W にそろえるのを忘れないこと。時間のほうは「電力量 ÷ 電力」で、kWh ÷ kW = h(時間)と単位がそのまま答えになります。
[解答番号13]P = VI より I = P/V = 3.0 kW / 200 V = 3000 W / 200 V = 15 A (3.0 kW = 3000 W に直すのを忘れない) [解答番号14] 必要な電力量 = 60 kWh 供給する電力 = 3.0 kW 時間 = 60 kWh ÷ 3.0 kW = 20 h → 20 時間 (kWh ÷ kW = h。単位がそのまま答えになる)
問4:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
容量 60 kWh の電気自動車を充電率 35 % から急速充電しました。図2(供給電力の時間変化)の灰色部分の面積が電力量を表すとして、30 分間で充電した電力量(エ)と、この間の充電率と時間の関係のグラフ(オ)を選びます。
<考え方>
グラフの面積=電力量。電力は 90 kW から 30 kW へほぼ直線的に減っているので、平均をとって台形の面積で見積もれます。30 分 = 0.5 時間に直すのを忘れないこと。
エ:図2 の灰色部分の面積 電力は 90 kW から 30 kW へほぼ直線的に減少 平均の電力 ≒ (90 + 30)/2 = 60 kW 時間 = 30 分 = 0.5 時間 電力量 ≒ 60 kW × 0.5 h = 30 kWh (30 分を 0.5 時間に直すのを忘れない) オ:充電率のグラフ 充電率は 35 % から増えていく 増え方(傾き)は供給電力に比例するので、 電力が減るにつれて傾きもゆるくなる → 35 % から始まり、上に凸で増える曲線 (b) ((a) は充電が進まないので不適、 (c) は傾きが増えていくので電力の変化と逆)
問5:正解 ③,⑨(配点3)
<問題要旨>
質量 2.0×10³ kg の自動車が回生ブレーキをかけながら、高低差 1.0×10² m の坂道を一定の速さで下りました。力学的エネルギーの減少分の 20 % が電気エネルギーに変換されたとして、変換されたエネルギー E を有効数字2桁で求めます。
<考え方>
一定の速さで下るので運動エネルギーは変わらず、力学的エネルギーの減少分はそのまま位置エネルギーの減少分 mgh です。その 20 % を取るだけ。最後に有効数字2桁へ丸めます。
一定の速さで下る → 運動エネルギーは変化しない → 力学的エネルギーの減少分 = 位置エネルギーの減少分 mgh = 2.0×10³ × 9.8 × 1.0×10² = 2.0 × 9.8 × 10⁵ = 1.96×10⁶ J その 20 % が電気エネルギーに変換される E = 0.20 × 1.96×10⁶ = 3.92×10⁵ ≒ 3.9×10⁵ J → 解答番号16 = 3,解答番号17 = 9 (この設問は両方正解のときだけ3点が与えられる)
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

