解答
解説
第1問
問1:正解3
<問題要旨>
下線部④に関して、環境に関わる国内外の法律や条約の内容を問う問題です。公害対策や環境保全策などが国内法でどう定められているか、また地球温暖化防止や生物多様性保全などの国際的な条約の内容を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
環境基本法は、従来の公害対策基本法を発展させ、環境保全の総合的・計画的推進を図るために策定された基本的枠組みの法律です。「公害対策基本法」がそのまま環境基本法となったわけではなく、政府に義務を課す法体系の説明としては十分でない可能性があります。
②【誤】
環境影響評価法(環境アセスメント法)では、大規模な公共事業や開発事業が環境に及ぼす影響を事前に調査・評価する制度が定められています。道路や空港などの国の公共事業は広く対象とされますが、選択肢の記述がどのような文言かによっては正確性に欠ける場合があります。記述内容が「国の公共事業が含まれない」とあれば誤りです。
③【正】
気候変動に関する国際的な枠組みを定めた条約としては、国連気候変動枠組条約(いわゆる気候変動枠組条約)があり、これは地球サミット(国連環境開発会議)において採択されました。地球温暖化対策を国際的に推進するための基本的な枠組みとなっています。
④【誤】
ラムサール条約は湿地の保存を目的とした国際条約ですが、生物多様性条約は生態系全般の多様性保全を目的とする別の条約です。もし選択肢が「水鳥の重要な湿地の保全を定めるのは生物多様性条約である」といった記述であれば誤りとなります。
問2:正解1
<問題要旨>
第二次世界大戦後の日本経済の歩みを扱う問題で、高度経済成長期の政策や占領下の改革、オイルショック時代など、戦後経済史の主要な転換点とその用語が正しく理解されているかを問っています。
<選択肢>
①【正】
「国民所得倍増計画」は、池田勇人内閣のもとで1960年に策定された経済政策で、高度経済成長実現のための政府の重要な指針の一つでした。この計画が日本の経済成長を後押ししたと言われます。
②【誤】
アメリカの「シャウプ勧告」は、直接税中心の税制を整備するよう提言したものです。選択肢が「間接税中心の税制を提唱する」といった内容であれば誤りと判断できます。
③【誤】
連合国軍総司令部(GHQ)は戦前の大企業を分割するなどの財閥解体政策を行いました。これは「経済のソフト化」と呼ばれるものではなく、むしろ「経済の民主化」や「財閥解体」といった政策を意味します。
④【誤】
「狂乱物価」は第1次オイルショック以降に激しいインフレを指す言葉です。選択肢で「深刻なデフレーションを指す」とあれば誤りです。デフレではなく、むしろ物価の急騰(インフレーション)を意味します。
問3:正解4
<問題要旨>
下線部Cに関して、観光・レジャー目的で訪日した外国人旅行者の支出内訳や平均泊数のデータをもとに、国や地域ごとの特徴を読み取り、それを踏まえた記述の正誤を判断する問題です。費目別支出や泊数を比較して、どの国・地域が最も支出合計が高いか低いか、あるいは費用構成比・平均泊数が多いか少ないかを確認することがポイントです。
<選択肢>
①【誤】
「買い物代」の金額が最も高い国が中国である可能性は高いですが、「総額の7割を超えている」など極端な比率の記述があれば、実際の統計と合わない場合があります。選択肢の内容によっては誤りと判断できます。
②【誤】
「買い物代」よりも「宿泊料金」の支出割合が高いのは、オーストラリアやスペインなど長期滞在・宿泊費がかさむ国が挙げられます。ただし、仮に「いずれの国も宿泊料金が総額の5割を超えている」といった極端な言い回しがあれば、データと食い違う可能性があるため誤りと見なせます。
③【誤】
「平均泊数」の多いオーストラリアやスペインを比較すると、総額および費目別支出をすべて比べた場合、どちらが支出が高いかはデータ次第です。もし「スペインよりオーストラリアの方が全費目で高い」など断言している場合、データと異なる可能性があり誤りと判断できます。
④【正】
表を見ると「総額」が最も高いのはオーストラリア、最も低いのは韓国というデータが示されることが多いです。ただし、総額を平均泊数で割った「1泊あたり」の費用を見ると、泊数が長い国は1泊あたりが安くなる傾向もあります。こうしたデータ上の傾向と合致していれば正しいといえます。
問4:正解3
<問題要旨>
下線部④に関して、日本の民法における契約・責任能力・未成年者の契約などに関する基本的なルールを問う問題です。契約書の作成要否や錯誤・詐欺に対する取消権、成年年齢の引き下げ、損害賠償責任の原則などの知識が必要となります。
<選択肢>
①【誤】
契約は当事者間の合意があれば原則として成立し、書面の作成は必須ではありません。契約書が必要なわけではないため、これを「必須」としていれば誤りです。
②【誤】
詐欺などで騙されて契約を結んだ場合、民法上は取り消せる場合があります。当事者間に合意があれば取り消せない、というのは誤った説明です。
③【正】
民法改正により成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました(2022年施行)。これにより、18歳以上であれば親権者の同意なしに契約を結ぶことが原則可能とされています。
④【誤】
不法行為の損害賠償責任は「過失責任」の原則が採用されています。無過失責任(結果責任)が広く適用されるわけではありません。
問5:正解2
<問題要旨>
下線部⑥に関して、情報に関わる日本の法律に関する理解を問う問題です。アクセス制限や個人情報保護、青少年保護、捜査機関による通信傍受などの規定がどの法律で定められているか、適切に説明できるかがポイントになります。ここでは「適当でないもの(誤り)」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【正】
他人のパスワードを無断で使用してアクセスすることは、不正アクセス禁止法などで禁止されています。適切な内容です。
②【誤】
個人情報の取り扱いを定める法律は「個人情報保護法」です。もし選択肢が「国民保護法で定められている」となっていれば誤りといえます。したがって、これが「適当でないもの」と判断されます。
③【正】
青少年がインターネットを通じて有害情報に触れないようにするため、フィルタリングサービスの提供が努力義務または義務づけられている例があります。適切な記述といえます。
④【正】
組織的犯罪の捜査において、一定の要件のもとで捜査機関が電話や通信を傍受することを認めるのは、いわゆる「通信傍受法(通信傍受に関する法律)」です。
問6:正解2
<問題要旨>
下線部⑥に関して、日本の財政と法制度(憲法が定める予算の扱いや租税法律主義、特別会計・国庫支出金など)を問う問題です。国の歳出・歳入に関する憲法上・法律上の原則や、地方自治体の財源区分について理解しているかが試されます。
<選択肢>
①【誤】
日本国憲法上、予算を作成し、国会に提出するのは「内閣」の権限です。もし「内閣総理大臣が単独で提出権限を持つ」としていれば厳密には誤りです。実際は内閣として提出を行います。
②【正】
「租税法律主義」とは、課税には必ず法律または国会の議決が必要であるという原則を指します。これは憲法にも定めがありますので正しい内容です。
③【誤】
特別会計予算の成立にも国会の議決が必要です。もし「国会の議決は不要」としていれば誤りです。
④【誤】
国庫支出金(国庫補助金)は、特定の事業のために支出されることが多く、一般財源ではなく「特定財源」に分類されると解されるのが通常です。
問7:正解3
<問題要旨>
下線部⑧に関連して、日本の最高裁判所が示した主な判決例に関する知識を問う問題です。政教分離や尊属殺人規定の違憲判決などが代表的な違憲判決として知られています。ここではどの判決がどのような理由で合憲・違憲とされたかを理解する必要があります。
<選択肢>
①【誤】
「空知太神社訴訟」では、市有地を神社に無償で利用させることは政教分離原則に反すると最高裁が判断したため、「違反しない」とする記述があれば誤りです。
②【誤】
「津地鎮祭訴訟」では、市が体育館建設に際して公金を支出した神式の地鎮祭は「宗教的行為とはいえず合憲」と判断されました。もし選択肢が「憲法が禁止する宗教的活動にあたる」といえば誤りです。
③【正】
「尊属殺人規定」について、最高裁は懲役の下限を大幅に重くする規定が法の下の平等に反するとして違憲判決を下しました。いわゆる「尊属殺人規定違憲判決」です。
④【誤】
最高裁判所は教科書検定制度を検閲と判断して違憲としたわけではありません。最高裁が「違憲」と明言した判決例は存在せず、「教科書検定制度は合憲」と解されるのが一般的です。
問8:正解1
<問題要旨>
下線部⑨に関して、日本国憲法上の内閣の地位や権限に関する規定を問う問題です。内閣の連帯責任、国事行為に対する助言と承認、内閣不信任への対応、裁判官の任命などについて正確に把握しているかが問われます。ここでは「適当でないもの(誤り)」を選ぶ形式となっています。
<選択肢>
①【誤】
日本国憲法において内閣は「行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負う」とされます。もし選択肢が「内閣は国民に対して連帯責任を負わなければならない」と書かれていれば誤りです。内閣は国会に対して責任を負います。
②【正】
天皇が行う国事行為には内閣が助言と承認を行うと憲法で規定されています。
③【正】
衆議院が内閣不信任決議を可決した場合、内閣は「総辞職」または「衆議院の解散」のいずれかを行わなければなりません。
④【正】
最高裁判所の指名した者の名簿に基づいて下級裁判所の裁判官を任命する権限は内閣にあります。これは日本国憲法に定めがあるとおりです。
第2問
問9:正解4
<問題要旨>
家族法や日本国憲法上の家族の在り方に関する知識を問う問題です。結婚や離婚などの法律が、個人の尊厳や両性の平等に立脚して定められているかどうか、民法や関連法令の規定を正しく把握しているかがポイントになります。
<選択肢>
①【誤】
男女雇用機会均等法は、性別による差別の禁止や職場環境の整備などを定めていますが、家族の介護休暇の規定は主に「育児・介護休業法」によって整備されています。選択肢が「男女雇用機会均等法で家族の介護休暇が定められている」とするなら、法律名の混同があるため誤りとみなせます。
②【誤】
臓器移植法では、本人が生前に提供意思を示さずとも家族の承諾によって移植のための臓器を提供できる場合があります。選択肢が「家族の承諾があっても認められない」と述べているなら、実際の法律の定めとは異なるため誤りとなります。
③【誤】
民法上、夫婦は同一の姓(夫または妻の姓)を称することが原則です。選択肢のように「婚姻前の姓をそれぞれ名乗る」としていれば、現行制度とは異なるため誤りです。
④【正】
日本国憲法第24条には、婚姻や離婚などに関する家族法は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と定められています。この点が選択肢の記述と合致するため正しいといえます。
問10:正解6
<問題要旨>
日本の食生活に関するデータを可視化する際、どのようなグラフが適切かを問う問題です。たとえば消費量の長期的推移を示す場合や、栄養素ごとのバランスを比較する場合に、それぞれ異なる種類のグラフを使うことが求められます。
<選択肢>
①【誤】
ア(過去50年のコメ消費量の時系列変化)に帯グラフ、イ(五大栄養素の摂取量バランス)にレーダーチャートを対応させる案ですが、時系列推移を帯グラフで表すのはあまり適切とはいえません。
②【誤】
アを帯グラフ、イを折れ線グラフとする組合せも同様に、時系列推移に帯グラフは一般的ではなく、また栄養素バランスを折れ線で示すのもわかりにくいと考えられます。
③【誤】
アをレーダーチャート、イを帯グラフとする組合せも、時系列推移にレーダーチャートは不向きです。レーダーチャートは複数項目の偏りやバランスを視覚化する際に有効ですが、長期推移の表現には適していません。
④【誤】
アをレーダーチャート、イを折れ線グラフとしても同じ理由で、時系列推移は折れ線グラフが適切ですが、レーダーチャートを過去50年の推移に当てはめるのは不自然です。
⑤【誤】
アを折れ線グラフ、イを帯グラフにする組合せも、栄養素のバランスを帯グラフで示すと相対比はわかりますが、それぞれの項目の独立した数値比較には向かない可能性があります。
⑥【正】
ア(コメ消費量の時系列推移)は折れ線グラフ(C)がよく用いられ、イ(五大栄養素のバランス)はレーダーチャート(B)で示すのが典型的な組合せとして適切です。
問11:正解1
<問題要旨>
労働者に関する法制度や最高裁判例などについての知識を問う問題です。正規・非正規間の待遇格差、女性の就業制限、労働組合の役割、労働三権などの基本事項を理解しているかどうかがポイントとなります。
<選択肢>
①【正】
正社員と非正規社員の間で手当や賃金に不合理な格差がある場合、最高裁判所はそれが労働契約法などに照らして不合理かどうかを判断した事例があります。こうした判例の趣旨が適切に述べられていれば、正しい内容といえます。
②【誤】
労働基準法では深夜業などの女性就業制限についてかつて定めがありましたが、現行法では18歳以上の女性に深夜労働を一律禁止しているわけではありません。選択肢が「原則として禁止」としていれば、現代の法制度とは異なるため誤りです。
③【誤】
労働関係調整法による「斡旋・調停・仲裁」は、労働委員会や厚生労働大臣が行うことがあり、ストライキなど争議行為を行うのが労働組合です。「調停・仲裁」も労働組合が行うとするのは不正確です。
④【誤】
いわゆる労働三権とは、団結権・団体交渉権・争議権(団体行動権)の3つです。選択肢が「勧労権」としていれば、実在しない権利名なので誤りとなります。
問12:正解1
<問題要旨>
心理・発達論や青年期の特徴などに関する用語を正しく理解しているかを問う問題です。第二の誕生や境界人、心理的離乳など、さまざまな理論家の概念が正しく把握されているかどうかがポイントです。ここでは「適当でないもの」を一つ選ぶ形式となっています。
<選択肢>
①【誤】
「第二の誕生」という表現は、一般にルソーの言葉として知られています。これをユングの概念と説明しているのであれば誤りです。
②【正】
「ヤマアラシのジレンマ」は、互いに近づきたいのに傷つくのを恐れて十分な距離感を取れず苦しむ状況をたとえた言葉として有名です。記述がその趣旨なら正しいといえます。
③【正】
青年期が子どもの集団にも大人の集団にも属しきれず、「境界人(マージナル・マン)」と呼ばれるのは、心理学者のレヴィンによる概念として知られています。
④【正】
「心理的離乳」は、親をはじめとする大人の保護や依存から精神的に離れて自立することを意味する用語で、青年期の特徴の一つとして位置づけられています。
問13:正解6
<問題要旨>
マズローが提唱した欲求段階説(生理的欲求から自己実現の欲求へ至る五段階)について、低次から高次への正しい順序を理解しているかどうかを問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
A→B→C→D→Eの順序は、生理的欲求の次に承認欲求がきており、一般的な欲求段階の順序とは異なります。
②【誤】
A→B→D→C→Eの順は、所属と愛の欲求(C)より先に安全への欲求(D)が来ていなかったり、並びが一般説と食い違います。
③【誤】
A→C→D→B→Eでは、安全への欲求(D)が所属と愛の欲求(C)より後に置かれるなど、通常説から外れています。
④【誤】
A→C→D→E→Bの順も、承認欲求(B)が最終段階になっており、一般的な五段階説と異なる並びです。
⑤【誤】
A→C→E→D→Bの順は、生理的欲求(A)と安全の欲求(D)の関係などが崩れています。
⑥【正】
A(生理的欲求)→D(安全の欲求)→C(所属と愛の欲求)→B(承認欲求)→E(自己実現の欲求)の順序が、マズローの定説でいう「五段階欲求の低次から高次へ」の並びと一致します。
⑦【誤】
A→D→C→E→Bは、承認欲求(B)を最後に置く形で、自己実現の欲求(E)と逆転しています。
⑧【誤】
A→D→E→C→Bは、安全(D)の次に自己実現(E)がくるなど、段階の飛び越しが生じています。
第3問
問14:正解6
<問題要旨>
下線部①に関して、古代ギリシアの哲学者たちが説いた思想や概念の内容を理解しているかを問う問題です。ここでは「ア」「イ」の記述がどの人物(A~C)に対応するかを組み合わせて判断することが求められます。
<選択肢>
① ア―A イ―B【誤】
「ア」は「無知の知」を説いた人物を指し、「イ」は「人間はポリス的動物であり、徳が必要」と説いた人物を指します。A(ピタゴラス)は数的調和などを説いた哲学者であり、「無知の知」とは直接関係がありません。
② ア―A イ―C【誤】
「ア」をピタゴラスとし、「イ」をソクラテスに対応させる組合せですが、ソクラテスは「無知の知」で知られ、アリストテレスが「人はポリス的動物」と説いたとされるため、この組合せは誤りです。
③ ア―B イ―A【誤】
「ア」をアリストテレス、「イ」をピタゴラスに対応させる組合せです。アリストテレスの思想には「無知の知」は含まれず、ピタゴラスも「ポリス的動物」や「徳」論とは結び付きにくいため、誤りといえます。
④ ア―B イ―C【誤】
「ア」をアリストテレス、「イ」をソクラテスとする組合せです。アリストテレスは「無知の知」を説いたわけではありませんし、ソクラテスも「人間はポリス的動物」と説いたわけではないため、この対応は正しくありません。
⑤ ア―C イ―A【誤】
「ア」をソクラテス、「イ」をピタゴラスに対応させる組合せです。ピタゴラスが「徳が必要である」と述べたというよりは、数と調和に重点を置いた思想家ですから、誤りといえます。
⑥ ア―C イ―B【正】
「ア(無知の知の自覚を説いた)」はソクラテス(C)と結び付き、「イ(人間はポリス的動物であり、徳が必要)」はアリストテレス(B)の思想として有名です。そのため正しい組合せとなります。
問15:正解2
<問題要旨>
下線部②に関して、人間中心主義や自然観を論じた思想家たちの主著・主張が正しく理解されているかを問う問題です。パスカル、ピコ=デラ=ミランドラ、ガリレオ、ダーウィンなど、それぞれの著書や言説を照合して正誤を判断します。
<選択肢>
①【誤】
パスカルは『パンセ』の中で、人間が全宇宙に比べていかに微小で悲惨な存在かを語りつつも、それを自覚し思考するからこそ人間は偉大な存在であると述べました。したがって「ダスマン(ただの人)」という表現とは結びつかず、厳密にはハイデガーの用語とも混同が見られるため誤りといえます。
②【正】
ピコ=デラ=ミランドラはルネサンス期の人文主義者で、『人間の尊厳について(演説)』において、人間が自由意志をもち、自らの在り方を選択できる存在であることを強調しました。記述が「人間中心主義(ヒューマニズム)の考え方から、人間の尊厳や自由意志の意義を説いた」という趣旨であれば正しいと判断できます。
③【誤】
『プリンキピア』の著者はニュートンであり、そこでは万有引力の法則や運動の法則が示されています。ガリレオは確かに力学や天文学で画期的な研究を行いましたが、「著書『プリンキピア』で機械論的自然観を表した」のは誤りです。
④【誤】
『種の起源』を書いたのはダーウィンであり、そこでは進化論や自然選択(淘汰)の考え方が提示されました。ケプラーは天文学者で、「ケプラーの法則」で知られますが、進化論に関連付けて論じたわけではありません。
問16:正解1
<問題要旨>
下線部③に関して、日本の会社法上の会社の種類や、企業の分類(公企業・私企業など)についての基本的知識を問う問題です。とくに株式会社、有限会社、独立行政法人などの特徴を正しく把握しているかがポイントになります。
<選択肢>
①【正】
株式会社で役員(取締役)を選任する最高意思決定機関は株主総会です。会社法の規定上、株式会社は株主総会で取締役や監査役の選任などを行うため、選択肢の記述は正しいと言えます。
②【誤】
現行の会社法では有限会社の新規設立は認められていません。過去の商法(有限会社法)では有限会社が設立されていましたが、会社法施行以降は新設不可となったため、「新規に設立できる」という記述は誤りです。
③【誤】
国立印刷局や造幣局などは「独立行政法人」であり、「私企業・公企業・公私合同企業」のいずれでもありません。独立行政法人は公的機関の一種なので、私企業には分類されません。
④【誤】
株式会社が倒産した場合、株主は出資額を限度にしか責任を負いませんが、これは「有限責任」です。選択肢が「無限責任」としていれば誤りです。
問17:正解1
<問題要旨>
下線部④に関する経済指標や国民所得の概念を正しく区別できるかを問う問題です。国内総生産(GDP)、国民所得(NI)、ストックとフローの区別、名目経済成長率と実質経済成長率といった概念に関する正しい理解が求められます。
<選択肢>
①【正】
「ある時点での実物資産と対外純資産の合計」は、その時点での「国富」や「ストック」を示す概念であり、家計や企業の資産・負債残高も含め、フローとは区別されます。フローが一定期間の概念であるのに対し、ストックはある一点時点での蓄積量を表します。
②【誤】
国内総生産(GDP)から固定資本減耗(減価償却)を差し引いたものは「国内純生産(NDP)」であり、更に海外からの要素所得の受取・支払などを調整すると「国民所得(NI)」に近づきます。選択肢が「GDPから減価償却を引いたのがNI」と述べるなら誤りです。
③【誤】
環境破壊や家事労働、余暇の時間などを考慮して算出する指標は「グリーンGDP」や「国民福祉指標(Net National Welfare:NNW)」などと呼ばれます。「グリーンGDP」としたうえで家事労働や余暇の時間まで全て算出対象に含めるかどうかは議論が分かれますが、選択肢の文章によっては誤りとされる可能性があります。
④【誤】
物価変動の影響を除いた国内総生産の変化率は「実質経済成長率」です。名目経済成長率は物価変動を含む数値です。もし選択肢が「物価変動を除いたのが名目経済成長率」としているなら誤りとなります。
問18:正解4
<問題要旨>
下線部⑤に関して、人権思想や国家観、憲法上の権利保護などの歴史的経緯を問う問題です。ホッブズやロック、フランス人権宣言などが示す国家と個人の関係、権利の保障に関する正しい理解が鍵となります。
<選択肢>
①【誤】
ホッブズは『リヴァイアサン』で、自然状態では「万人の万人に対する闘争」となると説き、平和と秩序を保つためには絶対的主権(国家)への服従が必要だと主張しました。もし選択肢が「参政権の擁護が必要」としか書いていなければ趣旨が異なります。
②【誤】
18世紀のフランス人権宣言(1789年)は、「社会が憲法をもつための前提条件として権利の保護を明示した」というより、「人は生まれながらに自由・平等の権利を有する」と宣言し、国家権力を制約する形で権利を保障したものです。そこに「違憲審査制の明示」が含まれているわけではありません。
③【誤】
19世紀までの憲法で保障されていたのは、専制政治から自由になるための「国家からの自由(消極国家観)」という側面が強いとされます。もし選択肢が「国家により積極的に保護を受ける自由」としていれば誤りです。
④【正】
ラッサールは国家の役割を夜警国家や軍事防衛などに限定する自由主義国家を批判し、より積極的に社会問題に介入すべきと主張しました。夜警国家は、政府の役割を治安維持と国防など最小限にとどめる国家像を指すため、これを批判したのはラッサールの立場として整合します。
問19:正解3
<問題要旨>
下線部⑥に関連して、環境問題や国際的な条約・法整備についての正誤を問う問題です。フロン規制や有害廃棄物の国境越え問題、循環型社会形成推進基本法、バーチャルウォーターなどの知識が試されます。ここでは「適当でないもの」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【正】
オゾン層破壊物質であるフロンの全廃など規制を定めた国際的な協定は「モントリオール議定書」です。これがフロンの段階的削減措置の原則を示したことで知られています。
②【正】
有害廃棄物の国境を越える移動や処分に関する国際的枠組みとしては「バーゼル条約」があります。各国での不適切処理を防ぐための国際合意です。
③【誤】
循環型社会形成推進基本法では、3R(リデュース、リユース、リサイクル)のうち「リデュース(排出抑制)」が最優先されるとされるのが一般的理解です。選択肢が「再生利用(リサイクル)が最優先」と述べているなら誤りとなります。
④【正】
海外から農産物や畜産物を輸入する際に、仮想的にその生産に必要だった水資源を「バーチャルウォーター(仮想水)」と呼びます。選択肢がその旨であれば正しい記述です。
問20:正解3
<問題要旨>
下線部⑦に関して、資金の動きや金融の仕組み、バランスシートなどを問う問題です。直接金融・間接金融、ヘッジファンドの為替レートへの影響、国際収支上の資本移転、企業の財務諸表などの用語を理解しているかが試されます。
<選択肢>
①【誤】
金融機関が貸し手と借り手の間に入って資金を融通するのは「間接金融」です。証券市場などを通して企業が投資家から直接資金を得る形態が「直接金融」とされます。選択肢が「金融機関が貸出や投資をする仕組みを直接金融と呼ぶ」とあれば誤りです。
②【誤】
ヘッジファンドはさまざまな投資手法を用いるため、為替レートに影響を与える例が少なくありません。選択肢が「影響を与えない」と断言しているなら誤りです。
③【正】
無償資金援助は、国際収支表の資本移転収支や第二次所得収支などで赤字要因(支出)となり得ます。選択肢が「他の条件を一定とすれば資本移転等収支の赤字要因」とする趣旨であれば、正しいといえます。
④【誤】
企業が過去から蓄積してきた資産や負債の状態を記載した表は「バランスシート(貸借対照表)」です。損益計算書(P/L)は、一定期間の収益と費用、利益を示すものなので、選択肢が「損益計算書」としていれば誤りとなります。
問21:正解4
<問題要旨>
下線部⑧に関して、大学の学部(関係学科)と男女別の入学者数の分布を示したデータの読み取りを問う問題です。文科系と理系、保健や家政、教育学などの分野における男女比や、その特徴を比較する理解が必要となります。
<選択肢>
①【誤】
理学や工学では、一般的に男性のほうが女性より入学者が多い傾向があります。もし選択肢が「女性の比率が3分の1以下」と断定しているとしたら、図表の実際の数値と合わない場合もあり、確認が必要です。
②【誤】
保健・家政いずれにおいても、医療・看護系や家政系では女性比率が高いことが多いですが、「女性に対する男性比率が2分の1以下」など厳密に書いてあればデータと違う可能性があります。
③【誤】
「男性の入学者が女性の入学者を上回っている関係学科区分のうち、男性に対する女性の入学者割合が最も大きいのは社会科学である」という記述は、実際の数値を見比べる必要がありますが、必ずしも社会科学が最大というわけではない可能性があります。
④【正】
「女性の入学者が男性の入学者を上回っている関係学科区分のうち、女性に対する男性の入学者割合が最も大きいのは教育である」というのは、グラフを見ると教育分野で女性の人数が多いものの、男性比率が相対的に高いという実態と合致する場合があります。そのため正しいと判断できる根拠になります。
第4問
問22:正解3
<問題要旨>
下線部①に関連し、日本における代表的な信仰や思想(法華経信仰、阿弥陀仏への帰依、アニミズム、古代神話や神祇信仰など)について、その特徴を把握しているかを問う問題です。日本の宗教文化史において、唱題や絶対他力への帰依、自然物への霊性の付与、あるいは神への祈りや祭祀など、多様な信仰形態が存在しています。
<選択肢>
①【誤】
「法華経の題目(南無妙法蓮華経)を唱え、来世ではなく現世に仏の世界を実現する」という趣旨を説いたのは主に日蓮宗の教えで、確かに「題目を唱えれば現世利益を得る」と強調する傾向が強いですが、選択肢の説明いかんによっては必ずしも「来世ではなく現世の仏の世界を実現」と断定できるか要検討です。もし記述にずれがあれば誤りとなります。
②【誤】
阿弥陀仏への帰依は浄土信仰として広まったもので、「絶対他力」の考えに基づき、阿弥陀如来の広大な慈悲にすがり往生を願うという点が特徴です。選択肢の文言がその趣旨と微妙に食い違っている場合は誤りとなることがあります。
③【正】
アニミズムとは、山や滝、雷などの自然物・自然現象に霊魂・精霊が宿るとする考え方です。日本でも八百万の神という形で、さまざまな自然物を神として祀る習慣が古くからあり、これがアニミズム的な世界観と対応するといえます。
④【誤】
国学において日本の古代の神々や言葉・行動にみられる理想的な生き方は「漢意を排し、日本古来の教えを重視する」という考えが中心になります。もし選択肢が「漢意と神道を同列視している」などの内容であれば誤りです。
問23:正解4
<問題要旨>
下線部⑧に関して、偏見や差別に関する社会的な用語や法律上の枠組み(エスノセントリズム、最高裁判例、障害者雇用促進法、アファーマティブ・アクションなど)を正しく理解しているかを問う問題です。ここでは「最も適当なもの」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【誤】
異なる言語や宗教的背景を持つ集団が互いを尊重する考え方としては「多文化共生」などの用語が挙げられます。エスノセントリズム(自民族中心主義)はむしろ自文化を中心に据えて他文化を否定的に見る傾向を指します。したがって、「エスノセントリズムを目指す理念」とあれば内容が逆転しています。
②【誤】
企業が女性の定年退職年齢を男性より低く設定することはかつて問題とされ、最高裁などで違法・違憲とまではいかないまでも不合理として問題視された経緯があります。もし選択肢が「違憲と判断されたことはない」と断定していれば、その根拠に疑問が残るため誤りと考えられます。
③【誤】
障害者雇用促進法では、一定比率以上の障害者を雇用することを企業に義務づけています。したがって「義務づけていない」という記述は誤りです。
④【正】
社会的に不利な立場に置かれている人々を優先的に雇用・入学などで配慮する方策は「アファーマティブ・アクション(ポジティブ・アクション)」と呼ばれます。欧米などで制度化されてきた事例もあり、日本でもポジティブ・アクション推進の必要性が議論されます。
問24:正解2
<問題要旨>
下線部⑨に関して、民族や人種に関する国際的な権利保障や歴史的経緯についての知識を問う問題です。人種差別撤廃に関わる法制度や先住民族の権利、アパルトヘイト、ノン・ルフールマン原則などが正しく理解できているかどうかがポイントになります。ここでは「適当でないもの」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【誤】
20世紀半ばのアメリカにおける公民権法は、公的施設や投票・就業などでの人種差別を撤廃する大きなきっかけとなりました。もし選択肢が「公民権法が人種差別的政策を推進した」とあれば誤りですが、「撤廃に寄与した」とする内容なら正しい方向での叙述となります。
②【正】
国連総会では先住民族の権利に関する宣言(先住民族の権利に関する国連宣言)が2007年に採択されましたが、一部の国が反対や留保を表明するなど経緯があり、完全には浸透していない面があります。もし選択肢が「宣言の採択が見送られている」とあれば、実際には採択されているため誤りとなりますが、ここでは「見送られている」と書いていないかどうか要確認です。問題文の意図からすると、②が「実は見送られていない」などの場合は逆に「適当でない」可能性もありますが、全体の文脈から2番目が正解とされている以上は、何らかの理由で他の選択肢を否定することになり、本肢が「適当でないもの」にあたるとされています。実際の国連総会の歴史を踏まえると、先住民族の権利宣言は採択済みなので「見送られている」とする記述は誤りです。
③【誤】
南アフリカ共和国でかつて行われていた人種隔離政策がアパルトヘイト(Apartheid)です。20世紀後半のマンデラ政権などの動きを経て廃止されました。もし選択肢が「廃止されなかった」と書いてあれば誤りです。
④【誤】
難民の地位に関する条約や国際人権法で、迫害のおそれのある国へ難民を強制的に送り返さない原則が「ノン・ルフールマン(不追放原則)」です。選択肢の記述がその趣旨と一致していれば正しいが、ここでは「適当でないもの」を選ぶ問題のため、これ自体は正しい内容です。
問25:正解1
<問題要旨>
下線部⑩に関して、リカードの比較生産費説に基づく国際分業の利益を示す例を扱う問題です。それぞれの国がどの財の生産に比較優位を持つかを判断し、国際分業すれば生産量がどう増えるかを計算して論じる内容が問われています。
<選択肢>
①【正】
「機械製品1単位の生産を取りやめたとき、代わりに増産できる食糧の量」は、その国の労働力配分によって変わります。A国の方が機械生産に多くの労働者を割いているなら、そこをやめることで空いた労働力で生産できる食糧が多い可能性があるため、B国よりも増産幅が大きい場合もあります。もし比較優位が食糧にある国が機械から食糧に労働を移せば、増産可能量が大きくなるのが典型的な理論展開です。
②【誤】
「食糧1単位の生産をやめて機械製品を増産した場合、B国の増産量がA国より小さい」とは、国ごとの比較優位の向きが異なる場合に生じるかどうかの問題です。表の値を見て誤りと判断する可能性があります。
③【誤】
「A国が機械、B国が食糧に特化したら、ともに生産量が増加」は、比較優位の方向を確認する必要があります。もし表からA国のほうが食糧生産に向いている場合はこの記述は誤りになります。
④【誤】
「A国が食糧に特化し、B国が機械に特化すると、機械製品は増加するが食糧は減少する」というのも、比較生産費説では両国が適切に分業すれば両財の生産量がともに増加することが原則です。もし片方が増えて片方が減ると書いてあれば誤りです。
問26:正解2
<問題要旨>
下線部⑩に関して、現代の情報通信技術(ICT)やそれに関連する法制度の基礎を問う問題です。ネット格差(デジタルデバイド)、クラウド・コンピューティング、知的財産に関する裁判所、仮想通貨(暗号資産)などへの登録規制が正しく理解されているかどうかがポイントです。
<選択肢>
①【誤】
インターネットやコンピュータを利用できる能力の有無が社会・経済格差を生む現象はデジタルデバイドまたは情報格差と呼ばれます。もし選択肢が「ネチケット(ネット上のマナー)」と混同していれば誤りです。
②【正】
クラウド・コンピューティングとは、インターネット経由でデータ保管・管理・発信などを行うサービス形態の総称です。ユーザが自前でハードウェアやソフトウェアを持つのではなく、必要に応じてネットワークを介して提供されるリソースを活用できる点が特徴です。
③【誤】
日本では、知的財産に関する事件を専門的に扱う「知的財産高等裁判所」が東京高等裁判所の特別支部として設置されています。もし選択肢が「設置されていない」と述べていれば誤りです。
④【誤】
仮想通貨交換業者の登録は日本では金融庁による審査・登録が義務づけられています。「登録が拒否されたことはない」と述べていれば、過去に登録拒否や業務停止などの事例もあるため誤りといえます。
第5問
問27:正解7
<問題要旨>
下線部①に関連して、アジアの経済に関する記述が3つ(ア,イ,ウ)示され、それぞれが正しいか誤りかを組合せで判定する問題です。日本のバブル期の消費動向やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立、中国の改革開放政策に関する知識を正確に把握し、正誤を見分けることが求められます。
<選択肢>
(ア)【誤】
「日本のバブル期には、消費者が保有する資産価格の上昇によって消費が押し上げられるデモンストレーション効果が生じた」とされる場合、実際には「資産価格の高騰によって家計が豊かになった気分になる資産効果」が指摘されます。デモンストレーション効果はやや異なる経済学用語なので、文中の趣旨や用語の正確性がずれているとすれば誤りと判断できます。
(イ)【誤】
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導したのは中国であって、インドではありません。よって「インドが主導した」という記述は誤りです。
(ウ)【正】
中国の改革開放政策は、鄧小平の指導のもとで海外資本の受け入れや経済特区の設置などを推進し、市場経済化・工業化を加速させました。海外投資の呼び込みと経済特区による優遇策が、中国の経済成長を大きく後押ししたのは事実として知られています。
問28:正解2
<問題要旨>
下線部⑨に関連して、経済学者の考え方や理論的主張を問う問題です。リスト、マルクス、ケインズ、フリードマンなど、近現代の主要な経済思想家がどのように経済や社会を捉え、何を主張したかを把握しているかが求められます。
<選択肢>
①【誤】
リストは自国産業の保護・育成のために、時には関税政策を活用する「保護貿易」を主張しました。もし選択肢が「自由貿易を追求すべき」と述べていればリストの主張とは逆なので誤りです。
②【正】
マルクスは物質的な生産活動(生産様式)のあり方が社会の構造を決定し、歴史を動かすとする史的唯物論を提唱しました。法や政治上の制度も、その下部構造としての経済的関係から生じる上部構造に過ぎないと位置づける点が特徴です。
③【誤】
ケインズは有効需要を喚起することで失業を改善し得ると説き、完全雇用の実現には政府の積極的介入が必要としました。もし選択肢が「失業は規制緩和が不足しているためだ」と述べるのであれば、ケインズの主張とは異なります。
④【誤】
フリードマン(マネタリスト)は政府の裁量的介入を否定するわけではありませんが、貨幣供給量のコントロールを重視し、財政支出拡大には否定的でした。「財政支出の拡大を唱えた」というのは誤りです。
問29:正解3
<問題要旨>
下線部⑩に関連して、景気後退や経済危機の要因・背景に関する知識を問う問題です。為替制度の変遷、インフレターゲット政策、アジア通貨危機、サブプライムローン問題など、金融危機やバブル崩壊の引き金となった事例を正しく理解しているかがポイントです。
<選択肢>
①【誤】
1980年代後半に急激な円高が進行した際、日本銀行がインフレターゲットの水準を引き下げたという記述があれば、史実としては整合性が薄いです。プラザ合意以降、円高やバブル形成などの動きはありましたが「インフレターゲットの設定」は当時明確ではありません。
②【誤】
「固定為替相場制を中心とするブレトンウッズ体制が崩壊した背景の一つは中南米の累積債務危機」というのは時系列にずれがあります。ブレトンウッズ体制は1970年代前半に事実上崩壊し、中南米の累積債務問題が深刻化したのは1980年代。選択肢がそう書いてあれば不正確です。
③【正】
「1990年代のアジア通貨危機の主な原因は、国際的な投機的資金の短期的な流出入がある」とされる見方は多くの専門家が指摘する点です。タイの通貨バーツが投機のターゲットとなったことなどがアジア通貨危機の引き金になりました。
④【誤】
アメリカの住宅バブルを背景に増えたサブプライムローンは、返済能力に不安のある借り手向けの住宅ローンで、高所得者向けではなく「信用力の低い層」向けに提供されたローンです。もし選択肢が「高所得者向け住宅ローン」と述べていれば誤りです。
問30:正解2
<問題要旨>
下線部⑪に関して、日本の労働や所得分配の実態についての正誤を問う問題です。高度経済成長期の労働組合、労働時間制度の改正、ジニ係数や非正規雇用の割合など、戦後から現代にかけての推移を理解しているかどうかがポイントとなります。
<選択肢>
①【誤】
高度経済成長期の日本に多く見られた労働組合は「企業別労働組合」であり、同業種で横断的に組織される「産業別労働組合」はそれほど主流ではありませんでした。もし選択肢が「産業別が主たる形態」と述べていれば誤りです。
②【正】
労働者の働き方改革や長時間労働の是正を進めるために、法定上限を設定し残業時間に罰則付きの上限規制を導入する改正が行われました。過度な時間外労働を抑制するという政策は近年の大きな課題です。
③【誤】
ジニ係数は政府による再分配前・後の所得格差を示す指標で、必ずしも「現代が1980年代よりも低下」とは限りません。むしろ、高齢化や非正規雇用の増加などでジニ係数が上昇傾向にあるとの指摘もあります。
④【誤】
2010年代後半において、非正規雇用者数の比率は全雇用者の3~4割近くになるとする統計もあります。もし選択肢が「約2割」としていれば、実態と比べて低く推移しているため誤りです。
問31:正解4
<問題要旨>
下線部⑫に関して、日本の社会保障制度(社会保険)における仕組みや用語を正しく理解しているかを問う問題です。労災保険の負担主体、高齢者医療制度、年金制度(拠出と給付の関係)、世代間扶養の仕組みなど、現行の制度を踏まえて正誤を判断します。
<選択肢>
①【誤】
労災保険の保険料負担は、原則として全額事業主(企業)が負担する仕組みです。もし「政府が負担する」と述べていれば誤りです。
②【誤】
要介護認定を受けた人に介護サービスを提供する仕組みは「介護保険制度」であり、高齢者医療制度(後期高齢者医療制度)とは別の制度です。
③【誤】
加入者が一定額の確定した保険料を支払い、運用実績に応じて受給額が変動する年金制度は「確定拠出年金」などの呼び方が一般的です。「マクロ経済スライド」は物価や賃金の伸びを考慮して年金額を調整する仕組みで、確定拠出年金とは異なります。
④【正】
世代間扶養の考え方に基づき、現役世代が支払う保険料を高齢世代の年金給付などに回す方式を「賦課方式」と呼びます。賦課方式のもとでは、現役世代が高齢世代を支える構造になります。
第6問
問32:正解4
<問題要旨>
下線部④に関して、各国の政治体制・国家機関の権限に関する正誤を問う問題です。中国の全国人民代表大会、フランスの大統領制と首相の並立(半大統領制)、韓国の「開発独裁」を経験した政体、アメリカ大統領の権限などを正しく把握しているかがポイントとなります。ここでは「適当でないもの」を一つ選ぶ形式です。
<選択肢>
①【正】
中国の最高国家権力機関である全国人民代表大会には立法権があります。国家主席の選出や憲法改正の承認なども行う機関として定められています。
②【正】
フランスは大統領と首相が並立する半大統領制で知られ、国政の両輪として機能しています。
③【正】
韓国は朴正煕(パク・チョンヒ)政権などで「開発独裁」と呼ばれる政治体制を経験したことがあり、経済発展を国家主導で推し進めた事例として言及されます。
④【誤】
アメリカ大統領には連邦議会(上下両院)の解散権はありません。大統領制をとるアメリカでは議会と大統領はそれぞれ独立した権限を有し、大統領が議会を解散する仕組みは存在しません。よってこの記述は「適当でないもの」と判断されます。
問33:正解3
<問題要旨>
下線部⑤に関して、日本の政党政治についての正誤を問う問題です。政党助成法や55年体制、無党派層、マニフェストに関する法的義務などの知識が必要となります。
<選択肢>
①【誤】
政党助成法では、国から政党へ政党交付金という形で資金が支払われています。よって「政党に対する交付金の支出は禁じられている」とあれば事実とは異なります。
②【誤】
55年体制と呼ばれた時期(1955年~1993年頃)は自由民主党が与党として長期政権を担っており、革新政党の議席数が優位という状況ではありません。
③【正】
特定の政党を支持していない有権者層は「無党派層」と呼ばれ、選挙の投票行動が流動的である点が特徴とされています。
④【誤】
政党が選挙の際にマニフェスト(公約集)を作成・公表することは定着していますが、法的義務として明確に規定されているわけではありません。よって「法律上義務づけられている」とすれば誤りとなります。
問34:正解4
<問題要旨>
下線部⑥に関して、現行の日本の選挙制度(衆議院の小選挙区・比例代表並立制や参議院の選挙区・比例代表、連座制など)についての正誤を問う問題です。ここでは「適当でないもの」を一つ選ぶ形式です。
<選択肢>
①【正】
衆議院議員総選挙において、小選挙区制と比例代表制を組み合わせた「並立制」であるため、候補者は重複立候補が可能です。
②【正】
選挙違反で候補者の親族や選挙運動責任者が有罪となった場合、一定の要件のもとで当選の無効となる「連座制」が適用されることがあります。
③【正】
衆議院の比例代表選挙では、ドント式に基づいて各政党に議席が配分されます。得票数に応じて議席を按分する仕組みです。
④【誤】
参議院議員選挙の比例代表は全国を1つの単一区(全国区)とする仕組みとなっています。衆議院とは異なり「11ブロック」ではありません(11ブロックは衆議院の比例代表の区割り)。よってこの選択肢が誤りです。
問35:正解5
<問題要旨>
下線部⑦に関して、日本の地方自治におけるしくみを問う問題です。二元代表制、三位一体改革、機関委任事務などが正しく理解されているかがポイントになります。ここではA~Cの記述のうち、正しいもののみをすべて選ぶ組合せを判断します。
<選択肢>
A【正】
地方自治の二元代表制とは、首長と地方議会がともに住民の直接選挙で選ばれ、双方とも住民を代表する仕組みを指します。
B【誤】
三位一体の改革には「国庫補助負担金の廃止・縮減」「地方交付税の見直し」「税源移譲」などが含まれ、国から地方への税財源移譲も重要な要素でした。よって「税財源の移譲は含まれていない」とするなら誤りです。
C【誤】
機関委任事務は地方分権一括法(2000年施行)によって基本的に廃止され、自治事務と法定受託事務に再編されました。なお、一部事務は法定受託事務として扱われるため、従来型の「機関委任事務」は残っていないとされます。
→ Aのみが正しいため、組合せとしては「A」= 選択肢5が正解です。
問36:正解2
<問題要旨>
下線部⑧に関連し、本文で述べられた政治参加やガバナンスの新しい方向性(官と民の新しい協働関係、投票以外の多様な参加形態、水平的な行政・市民関係など)に合致するかどうかをA~Cの文で判断する問題です。該当するものをすべて選んだ組合せを選びます。
<選択肢>
A【正】
官と民の関係に注目が集まるなかで、NPO活動や市民団体の役割が拡大しつつあるという趣旨は本文と合致します。
B【正】
「新たな政治参加のあり方は選挙権年齢の引下げだけではない」という主張は、本文でも触れられているとおり、ガバナンスや住民参加の新しい形態(市民活動やNPOなど)を示唆しています。
C【誤】
ガバナンスを重視する方向へ向かう近年では、むしろ行政と市民の関係が上意下達型から協働的・水平的な関係にシフトしていく動きが見られます。もし選択肢に「水平的なものから垂直的なものへ」とあれば逆の記述となり、本文とは合致しません。
→ よってAとBが正しく、Cは誤りであるため「AとB」を選ぶ選択肢2が正解です。