解答
解説
第1問
問1:正解4
<問題要旨>
会社法や企業形態に関する基礎的な知識を問う問題。株式会社・合名会社・合資会社・合同会社などの日本の会社形態、および株主総会や持株会社といった制度上の特徴を正しく理解しているかどうかがポイントとなる。
<選択肢>
①【誤】
「株式会社では、株主一人あたり一票の議決権を持つ」とあるが、実際には「一株につき一票の議決権を持つ」が原則である。したがって、選択肢の内容は会社法の原則と異なる。
②【誤】
大企業と中小企業の生産性や賃金の格差を指して「混合経済」という用語は一般に用いられない。「混合経済」は公的部門と私的部門が併存する経済体制を指す言葉であり、この選択肢の説明とは異なる。
③【誤】
持株会社(ホールディングスカンパニー)は、かつては独占禁止法で原則禁止とされていたが、1990年代後半に解禁され、現在では設立が可能である。よって「原則として禁止されている」というのは誤り。
④【正】
日本の会社法で認められている代表的な会社形態は、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類。会社法において新規設立が可能な会社の類型として正しい。
問2:正解1
<問題要旨>
社会参加や社会貢献に関する用語や概念についての正誤を問う問題。障害者や高齢者の社会参加の考え方、企業の社会貢献の意味、国際協力機構(JICA)の活動などに関する基礎的理解が求められる。
<選択肢>
①【誤】
企業が芸術・文化活動の支援を行うことは、一般に「メセナ活動」と呼ばれることが多い。一方、「ディスクロージャー」は企業情報の開示を指す用語であり、ここでの説明には当てはまらない。
②【正】
高齢者や障害者も含め、すべての人が社会に参加・共存できる社会を目指す考え方は「ノーマライゼーション」と呼ばれる。
③【正】
日本では障害者雇用促進法によって、一定以上の障害者雇用率を企業に義務づけている。法的拘束力をもつ制度として正しい。
④【正】
国際協力機構(JICA)は、開発途上国の課題解決に貢献する事業として青年海外協力隊を派遣している。公式に行われている代表的な国際協力事業である。
問3:正解3
<問題要旨>
「技術革新」に関する歴史的・経済的な知識を問う問題。特定の時代に起こった産業革命や、情報技術がもたらした社会の変化、エネルギー源の転換などについての理解が求められる。
<選択肢>
①【誤】
50年から60年の長期波動は「コンドラチェフの波」とされることが多い。「ジュグラーの波」はおおむね10年周期前後の中期波動を指すため、期間の説明が異なる。
②【誤】
情報技術革新によって容易に情報にアクセスできる社会を、一般に「情報化社会」などと呼ぶ。「大量消費社会」は消費需要の拡大に着目した社会像を表すため、この選択肢の表現は不適切。
③【正】
18世紀後半にイギリスで始まった産業革命は、技術革新による工場制機械工業への転換を促し、生産体制が大きく変化した歴史的事実と合致する。
④【誤】
20世紀後半のエネルギー革命では、日本の主要エネルギー源は従来の石炭から石油へと移行した。選択肢の「水力から石炭へ転換」とは時系列がずれており、誤りである。
問4:正解3
<問題要旨>
日本の産業構造の変化を時代背景とともに問う問題。高度経済成長期やプラザ合意後など、具体的な時代の特徴を踏まえながら、第一次産業から第三次産業へと就業構造が移り変わっていく流れを確認する必要がある。
<選択肢>
①【誤】
朝鮮特需(1950年代前半)の頃は、まだ第一次産業従事者の割合が非常に高く、第二次産業よりも低いとはいえない。当時は工業化が急速に進む以前であり、農業などに従事する人が多かった。
②【誤】
プラザ合意後の円高で工場などの生産拠点が海外移転した例は多いが、それは主に「製造業」(第二次産業)の空洞化に関わる話である。ここで第一次産業が国外に移転するというのは現実的ではない。
③【正】
高度経済成長期(1950年代後半〜1970年代前半)には、都市部での労働力不足が起こり、農村から都市へ人口が集中する「過疎・過密」問題などが生じた。これは歴史的事実として正しい。
④【誤】
平成不況の時期(1990年代以降)、経済のサービス化や情報化が進む中で第三次産業従事者の比率はむしろ上昇する傾向にあった。選択肢のように「低下傾向にあった」は誤りである。
問5:正解2
<問題要旨>
日本の雇用制度に関する正誤を問う問題。終身雇用・年功序列・企業別組合といった日本的雇用慣行、雇用保険や労働基準監督署などの社会保険・労働法制の基本を理解しているかどうかがポイントとなる。
<選択肢>
①【正】
労働条件の最低基準を順守させるための行政機関として、労働基準監督署が設置されているのは正しい。労働基準法で定められた要件の確認や監督を行う。
②【誤】
日本的雇用慣行として典型的に挙げられるのは「終身雇用」「年功序列型賃金」「企業別労働組合」などであり、「成果主義の賃金体系」は従来の日本的慣行というよりも近年の一部企業での導入例にとどまる。したがって、ここで挙げられる「日本的雇用慣行」の内容として適切とは言いがたい。
③【正】
雇用保険は失業時の所得補償や職業訓練などのサービス給付を受けることができる社会保険制度であり、この記述に誤りはない。
④【正】
労働組合が正当な手続きを踏んで団体交渉を申し入れた場合、使用者が正当な理由なくこれを拒否するのは、不当労働行為として禁止されている。
問6:正解1
<問題要旨>
金融に関する基本的な概念を問う問題。信用創造の仕組み、直接金融と間接金融の違い、金利決定要因、金融自由化の時期などの正確な理解が試される。
<選択肢>
①【正】
銀行が当初の預金をもとに貸し出しを繰り返すことで「信用創造」が起こり、結果として当初の預金額を上回る預金通貨が生まれる。このメカニズムは一般的に正しい説明である。
②【誤】
企業や政府、自治体などが債券(国債・社債など)を発行して資金を集める方法は「直接金融」に分類される。よって、「間接金融」とは言えない。
③【誤】
他の条件が一定で資金需要が増加すれば、資金を求める動きが強くなる分、金利は上がりやすい傾向にある。したがって「利子率が下がる」という説明は誤りである。
④【誤】
日本版金融ビッグバンは1990年代後半に実施された政策で、1980年代のバブル経済期以前ではなく、むしろバブル崩壊後の金融自由化促進策として進められたものである。
問7:正解4
<問題要旨>
日本の地域が抱える課題や取り組みに関する知識を問う問題。文化的・歴史的景観の保護やナショナルトラスト、住民投票条例、オンブズマン制度など、地方自治と住民参加の仕組みを正しく理解しているかが試される。
<選択肢>
①【正】
特定の歴史的・文化的価値を有する景勝地の景観について、法的保護に値する利益が認められた判例(橋の浦景観訴訟など)がある。よって趣旨としては妥当。
②【正】
ナショナルトラスト運動は市民の資金で土地などを買い取り、自然や歴史的建造物を保護しようとする活動を指す。英国などで発展し、日本でも同様の活動が見られる。
③【正】
公共事業の是非を住民の意思で直接問うための住民投票条例を制定し、投票を実施した自治体が存在した事例はある。
④【誤】
地方自治体へのオンブズマン(オンブズパーソン)の設置は、法律上の義務とはされておらず、自治体の判断に委ねられている。したがって「法律で義務づけられている」という表現は誤り。
問8:正解4
<問題要旨>
地域活性化に関して、都市規模別にどのような政策が期待されているかを読み取り、その傾向を把握する問題。福祉・医療の充実や新産業の創出、人材育成・防災対策など、地域の特色や規模に応じたニーズの違いを比較する力が求められる。
<選択肢>
①【誤】
「福祉・医療の充実」と回答した人の割合が大都市・中都市・小都市・町村で40%を上回るという説明だが、資料によっては町村の方が大都市を上回る数値を示しているなど、個別の数値比較で食い違いが生じる可能性がある。
②【誤】
「大都市」「中都市」「小都市」のどこにおいても「防犯・防災対策の充実」の方が「地域に雇用を生み出す新産業の創出」より割合が低いという記述は、グラフの結果と矛盾している場合がある。
③【誤】
「大都市」「中都市」「小都市」「町村」における「防犯・防災対策の充実」や「人材育成のための特色ある教育の充実」の比率について、大都市が最も高いかどうか、町村が最も低いかどうかは、提示された資料とは一致しない説明が含まれることがある。
④【正】
小都市や町村では「地域に雇用を生み出す新産業の創出」の期待が比較的高く、同時に「福祉・医療の充実」を求める声もあるが、図表を見ると新産業創出への期待が福祉・医療への期待を上回る傾向が見られることがある。この選択肢は図の読み取りとして適切と言える。
第2問
問9:正解2
<問題要旨>
アメリカ合衆国における大統領選挙や連邦議会の構成など、基本的な政治制度についての正確な理解を問う問題。大統領制特有の選挙人制度や、連邦議会の権限・仕組みを中心に見極める必要がある。
<選択肢>
①【誤】
アメリカの大統領の当選回数には、憲法修正第22条により「2期まで」と制限が設けられている。よって「制限は設けられていない」というのは誤り。
②【正】
大統領の選出は、州ごとに選出された大統領選挙人による間接選挙が行われるが、その選挙人自体は有権者による投票で選ばれる。一般投票で選ばれた選挙人が大統領を決定する仕組みが現行の制度である。
③【誤】
大統領が承認(署名)を拒否した法案についても、連邦議会は両院の3分の2以上の賛成で再可決(大統領の拒否権を覆す)することができる。再議決する権限が認められていないわけではない。
④【誤】
連邦議会の下院は各州の人口比例で議員数が配分され、上院が各州2名ずつの構成となる。選択肢のように「下院が各州2名ずつ」で構成されるわけではない。
問10:正解2
<問題要旨>
日本の選挙制度に関する基本的な理解を問う問題。戸別訪問の可否、連座制による当選無効の制度、比例代表制や大選挙区制と小選挙区制の特徴などを正しく把握しているかがポイント。
<選択肢>
①【誤】
日本の公職選挙法では、選挙期間中に候補者が投票依頼のため自由に戸別訪問することは原則禁止されている。従って「自由に戸別訪問できる」というのは誤り。
②【正】
主要な選挙運動関係者が選挙違反を行った場合に、候補者の当選が無効になる「連座制」が法律で定められている(公職選挙法の規定)。不正を厳しく取り締まる制度として機能している。
③【誤】
比例代表制では小選挙区制に比べて、得票率に応じて議席が割り当てられるため、多党化(小党分立)が起こりやすいと指摘されるのが一般的である。選択肢の逆の見解なので誤り。
④【誤】
大選挙区制は一つの選挙区から複数の当選者を選ぶ方式が多く、小選挙区制より死票(落選候補に投じられた票)が少なくなる傾向にあるとされる。選択肢の説明は事実と逆である。
問11:正解3
<問題要旨>
日本の地方自治制度に関する問題。住民が首長や議会をチェックする仕組み、国地方係争処理委員会の活動状況、地方自治体の首長の権限など、地方自治法の基礎的な理解が問われる。
<選択肢>
①【誤】
地方自治法には、一定数以上の住民の署名を集めて住民監査請求を「監査委員」に行う制度(住民監査請求)がある。首長に直接監査を請求する手続きとはされていないので、文面どおりでは誤りといえる。
②【誤】
国地方係争処理委員会は、具体的な案件について開催された例があるため、「一度も開催されたことはない」というのは誤り。
③【正】
地方自治法では、地方公共団体の長(知事や市町村長)が議会を解散できる規定がある。議会が不信任決議を可決した場合など、特定の要件を満たすと首長には解散権が認められている。
④【誤】
日本国憲法には第8章に「地方自治」の規定が設けられている。大日本帝国憲法には地方自治の詳細な条文はなかったが、日本国憲法では地方自治の原則が明確に定められている。
問12:正解1
<問題要旨>
青年期の発達に関する心理学や教育学の基本的概念を問う問題。第二次性徴やマージナルマンといった用語の正しい理解、また青年期特有の心理的特徴を区別できているかどうかが重要。
<選択肢>
①【誤】
「第二の誕生」という表現は、一般にルソーが青年期の変化を表す際に用いた言葉として知られている。一方、マズローは欲求段階説などで有名だが「第二の誕生」という用語を青年期の変化に使ったわけではない。
②【正】
青年期のはじまりに顕著になる身体的変化が「第二次性徴」と呼ばれ、思春期の代表的特徴として挙げられる。
③【正】
青年期は子どもにも大人にもはっきり所属しにくい中間的な状態であり、これをレヴィンは「マージナルマン(境界人)」と表現した。
④【正】
青年期には、親や社会の価値観と対立する「第二反抗期」と呼ばれる段階があるとされることが多い。
問13:正解4
<問題要旨>
日本国憲法に定められた国会や国会議員に関する規定の正誤を問う問題。国会の会期中の不逮捕特権、免責特権、弾劾裁判所、さらに天皇の国事行為に対する助言と承認がどの機関に属しているかを正しく理解できているかがカギ。
<選択肢>
①【正】
国会議員には、法の定める場合を除いて会期中に逮捕されない不逮捕特権が認められている(憲法第50条)。
②【正】
国会議員には、院内で行った発言や表決について院外で責任を問われない免責特権が認められている(憲法第51条)。
③【正】
国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するための弾劾裁判所を設置する(憲法第64条)。これにより不適任とみなされた裁判官を辞めさせる権限をもつ。
④【誤】
天皇の国事行為に対して「助言と承認」を行うのは内閣であり(憲法第3条・第7条など)、国会ではない。よって「国会が助言と承認を行う」とするのは誤り。
第3問
問14:正解3
<問題要旨>
心理学における防衛機制の概念を扱った問題。欲しかった物が買えなかったという不満を、それぞれどのような思考パターンで処理するか(防衛機制の種類)を識別する必要がある。
<選択肢>
①【誤】 A=退行,B=置き換え
「退行」は、心理的に幼い段階に戻ること。文脈では「食べたかったのになあ」という不満を、幼児的行動に戻る形で発散しているわけではない。一方、Bの「置き換え」は不満を別の対象に向けることで妥当だが、Aとセットで考えると適切ではない。
②【誤】 A=退行,B=投影(投射)
「投影(投射)」は、自分の内面の感情を他者が持っているようにみなすこと。Bの発言「別の欲しいもの(マンガ)を買う」で現れているのは自分の欲求を他の物に向ける置き換えであり、投影とはいえない。
③【正】 A=合理化,B=置き換え
Aの「甘いものを買わずに済んだのはかえって健康に良かったかも」という自己正当化が「合理化」に当たる。一方、Bの「代わりにマンガを買おう」は不満の対象を別の品物に切り替えて欲求を満たそうとする「置き換え」なので、最も適切な組合せといえる。
④【誤】 A=合理化,B=投影(投射)
Bの発言は、投影ではなく明らかに別の対象を探す行動であり、「投影(投射)」とは対応しない。
問15:正解7
<問題要旨>
契約が有効に成立するための条件(当事者の合意、契約内容の理解、未成年の法定代理人同意の有無など)と、具体的事例(ア・イ・ウ)を見比べて、どれが有効となるかを判断する問題。
<選択肢>
①【誤】 アとイとウ
ア(15歳の未成年者が保護者の同意なしに新聞販売店と雇用契約)とイ(20歳だが契約内容を誤認した可能性)も含むため、すべてが有効とはいえない。
②【誤】 アとイ
未成年者のア、あるいはイにおいて契約内容を正しく理解していない恐れがあるため、両方とも有効とはいえない。
③【誤】 アとウ
アは保護者の同意がなく未成年の契約であり無効となる可能性が高い。よってアとウの組合せは不適。
④【誤】 イとウ
イは有料情報サイトだと知らずに契約を結んだ描写があり、契約内容を正しく理解できていない可能性がある。契約成立要件が不十分の恐れがあるため両方有効とはならない。
⑤【誤】 ア
未成年のアは保護者の同意を得ていないので有効となりにくい。
⑥【誤】 イ
イは契約内容を十分理解せずに結んだと思われる記述があり、条件を満たすかが不明確。
⑦【正】 ウ
ウの事例(22歳の成人が口頭でアパートの賃貸契約)においては、成年であり契約内容も認識できる立場のため、書面の有無にかかわらず合意が成立すれば契約は有効となる。
⑧【誤】 有効に成立するものはない
ウが有効に成立し得るため、すべて無効とはいえない。
問16:正解1
<問題要旨>
日本における公害や健康被害の補償制度など、環境関連の法律や判例について問う問題。公害健康被害補償法、大気汚染防止法などの概要と、企業の責任や住民の権利に関する知識を確認する。
<選択肢>
①【正】
公害健康被害補償法は、一定の公害による健康被害を受けた人を補償するため、汚染者負担の原則に基づく補償を行う制度として定められている。
②【誤】
公害対策として総量規制を導入する際、地方自治体が独自に総量規制を定めてきた例も見受けられた。選択肢が「総量規制を導入する条例を制定した地方自治体はなかった」とするのは誤り。
③【誤】
大気汚染防止法では、企業が汚染により健康被害を生じさせた場合、故意・過失の有無にかかわらず「損害賠償責任を負わない」とはされていない。状況により責任を負い得るため、この選択肢は誤り。
④【誤】
大阪空港公害訴訟の最高裁判決では、騒音被害が争点となったが、個人の「環境権」を具体的に法的権利として認めたわけではない。裁判所は環境権の法的確立を明文で認めなかったとされる。
問17:正解4
<問題要旨>
日本国内の世界遺産の登録区分(自然遺産・文化遺産・複合遺産)を問う問題。示された写真(ア:富士山、イ:知床、ウ:屋久島)それぞれが、どの登録区分かを正しく区別できるかがカギとなる。
<選択肢>
①【誤】 アとイとウ
ア(富士山)は文化遺産として登録されており、自然遺産ではない。
②【誤】 アとイ
アが文化遺産であるため自然遺産には該当しない。
③【誤】 アとウ
アが文化遺産であり、ウ(屋久島)は自然遺産。この組み合わせは誤り。
④【正】 イとウ
イ(知床)とウ(屋久島)は共に自然遺産として登録されており、正しい組合せ。
⑤【誤】 ア
富士山は文化遺産なので、単独で自然遺産とはいえない。
⑥【誤】 イ
イ(知床)単独ではウ(屋久島)を含まないため不十分。
⑦【誤】 ウ
ウ(屋久島)単独でもイを含まないため不十分。
⑧【誤】 いずれも自然遺産には区分されない
イとウは自然遺産に区分されるため、この記述は誤り。
問18:正解3
<問題要旨>
世界の人口問題に関する知識を問う問題。人口減少社会・少子高齢化問題・国際機関の取り組み・クラブ・オブ・ローマの報告などに関する正確な理解が求められる。
<選択肢>
①【誤】
日本では近年、出生数より死亡数が多い「自然減」に転じており、人口が減少し続ける傾向にある。「人口減少社会になっていない」というのは誤り。
②【誤】
中国ではかつて「一人っ子政策」を掲げていたが、近年は政策緩和も進んでいる。そのため「現在でも政府が『一人っ子政策』の廃止を表明していない」というのは時代的にずれている面がある。
③【正】
UNFPA(国連人口基金)は、人口爆発を抑制するための啓発活動や、開発途上国への支援を行っている機関として広く知られている。
④【誤】
ローマクラブの「成長の限界」報告(いわゆる「ローマ・レポート」)では、人口増加に伴う食糧不足などが懸念されたが、選択肢にある「ペアリッジ報告」という表現はあまり一般的ではない。また、その内容との齟齬も見られる。
問19:正解2
<問題要旨>
日本における資源のリサイクルや廃棄物処理、循環型社会形成推進基本法などの法律内容に関する問題。3R(リデュース・リユース・リサイクル)の優先順位や製品廃棄後の生産者責任の考え方などを理解しているかどうかが問われる。
<選択肢>
①【誤】
循環型社会形成推進基本法では「3R」のうち、廃棄物の抑制(リデュース)が最も優先される考え方が一般的。再生利用(リユース・リサイクル)が最優先とは限らない。
②【正】
生産者責任の考え方が導入されており、製品が廃棄物化した後も一定の責任を生産者が負う仕組みがある。例えば家電リサイクル法や容器包装リサイクル法などでメーカー側の責任が定められている。
③【誤】
容器包装リサイクル法や家電リサイクル法は、高度経済成長期ではなく、1990年代後半や2000年代にかけて制度化されたものであり、「高度経済成長期」に制定されたというのは誤り。
④【誤】
建設資材の再資源化を促進する建設リサイクル法もすでに制定されている。よって「いまだ制定されていない」というのは誤り。
問20:正解1
<問題要旨>
日本の行政機構や行政改革に関する知識を問う問題。内閣府の設置や中央省庁再編、憲法上の内閣の責任などを理解している必要がある。
<選択肢>
①【正】
内閣府の「再就職等監視委員会」は国家公務員の天下り等を監視するために設置され、法令違反の有無を調査する権限がある。これにより厳格な再就職規制を行う仕組みとなっている。
②【誤】
2000年代前半に行われた中央省庁再編では、複数の省庁を統合した「一府十二省庁」体制が発足(2001年)。ここで設置されたのは「内閣府」であり、記述どおりの表現と完全には合致しない点が見られる。
③【誤】
憲法上、予算案の作成は内閣が担うとされており、各議院の議員が「予算を作成」するという規定はない。したがって「議員も作成できる」という記述は誤り。
④【誤】
内閣は行政権の行使に関して、国会(立法府)に対して連帯して責任を負うが、国民に対して直接連帯責任を負う形とはされていない。選択肢の文言が誤っている可能性が高い。
問21:正解1
<問題要旨>
本文で述べられている「データの収集・蓄積技術の進展」「データを意志決定に活かす能力」「統計データを国民の共有財産とみなし整備を進める政府の姿勢」などに関する正誤を問う問題。A~Cの記述が本文の趣旨と合致するかを判断する必要がある。
<選択肢>
①【正】 AとBとC
A:近年、データの自動収集・蓄積技術は大きく飛躍している。本文に「ICチップなどを用いて自動的にデータが収集・蓄積される」とある。
B:収集・蓄積したデータから有用な情報を見出すには、まとめたり比較したりする能力が求められると本文で言及されている。
C:政府が「統計データを国民の共有財産と位置づけ、整備を進めている」との記述も本文にある。
②【誤】 AとB
Cの内容も本文で触れられているため、AとBだけでは不十分。
③【誤】 AとC
Bの「比較や組み合わせによる情報の活用」についても本文で重要性が説かれているので、Bを除外するのは不自然。
④【誤】 BとC
Aの内容(自動収集・蓄積技術の進歩)も本文で言及されており、Aを外すのは不適切。
⑤【誤】 A
BやCの記述も本文にあるので単独では不十分。
⑥【誤】 B
AやCの要素も本文にあるため不十分。
⑦【誤】 C
AやBも本文で触れられているため不十分。
⑧【誤】 正しい記述はない
A、B、Cすべてが正しい記述なので、この選択肢は誤りとなる。
第4問
問22:正解2
<問題要旨>
本文中の下線部(a)にある「コミュニケーション」の概念を踏まえ、それがどのような場面で重視され、どのような形態や留意点を伴うかを問う問題。文化的背景の違いによるコミュニケーション障壁、インフォームド・コンセントや情報社会における規範、公共性を意識した合意形成など、多様な文脈でのコミュニケーションの在り方を正しく理解しているかがポイント。
<選択肢>
①【誤】
「文化的に異なる相手の文化を優劣で評価することを“文化相対主義”という」は不正確。むしろ自文化を基準に他文化を否定する態度を「エスノセントリズム(自文化中心主義)」と呼ぶ。一方、「文化相対主義」は他文化を尊重しようとする立場であり、本選択肢にあるような態度とは逆である。
②【正】
医療の現場で医師と患者が専門的知識や情報を共有するには、患者が自らの意思で医療行為を受けるかどうかを判断する「自己決定権」を確保する必要がある。そのためにインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)が欠かせないという指摘は正しい。
③【誤】
インターネット上でのコミュニケーションにおいて匿名性が悪用される犯罪などの問題があるのは事実だが、ここでいう「情報社会の秩序維持のためデジタル・デバイドの解消が求められる」という論旨はややずれている。「デジタル・デバイド」はICT利用環境の格差を指す用語であり、「匿名性の悪用」と直接的に結びつくとは限らない。
④【誤】
公共的な合意形成のコミュニケーションで「自由な立場で対等に話し合う」態度はもちろん重要だが、それを特に「道徳的理性」と呼ぶかどうかは議論がある。本選択肢の言い回しでは、ハーバーマスの「公共性と討議民主主義」などを想起させるが、やや要件を抽象的に述べすぎており、必ずしも明確な正しさを示すとは言えない。
問23:正解4
<問題要旨>
高齢者に対する日本の社会保障制度について問う問題。介護保険制度や後期高齢者医療制度、在宅高齢者向けの介護サービスなどが正しく理解されているかを確認する。A・B・Cそれぞれの記述の正誤を見極め、適切な組合せを選ぶ必要がある。
<選択肢(A・B・Cの内容)>
A【誤】
「介護保険の給付費用の財源は、40歳以上の被保険者が支払う介護保険料のみで賄われている」とあるが、実際には公費負担(国・都道府県・市町村による負担)も含まれる。よってAは誤り。
B【正】
「医療保険制度とは別に、後期高齢者を対象とした制度が実施されている」は事実。75歳以上の高齢者は後期高齢者医療制度に加入し、国民健康保険や被用者保険とは別枠の医療保険を利用する。
C【正】
「在宅高齢者を支える介護サービスの一つに、ホームヘルパーの派遣がある」という記述は正しく、実際に介護保険のサービスとして提供されている。
よって、BとCが正しく、Aが誤りであるので「BとC」が正解。
問24:正解8
<問題要旨>
下線部(c)に関連したロボットの利用を調査・比較する方法を問う問題。文中では国ごとのロボットに対するイメージや利用経験を把握し、その背景となる歴史・文化の理解を深める手順が述べられている。ここでは(A)~(C)に入る語句の組合せを正しく見極める必要がある。
<選択肢>
①~⑦【誤】
「A=ロールプレイ」「B=ディベート」など様々な組合せが示されているが、本文の内容とは合致しない。
例:Aでは国ごとの傾向把握のための「共通質問項目」を使って各国の結果を比較するとあるので、「アンケート」が妥当。Bでは具体的なロボット利用経験を詳しく聞き取るので「インタビュー」。Cでは図書館職員に文献の相談をするなどの記述があるので「レファレンス・サービス」と解釈できる。
⑧【正】
「A=アンケート、B=インタビュー、C=レファレンス・サービス」の組合せは、上記本文の文脈(共通項目を使って広く情報を集め→利用経験を聞き取る→図書館等で文献を紹介してもらう)に合致する。
問25:正解4
<問題要旨>
日本の伝統的な文化や思想、また歴史上の思想家による概念や用語を正しく理解しているかを問う問題。神仏習合・漢意・誠・モンスーン地域論など、代表的な用語や主張との整合を確認する。
<選択肢>
①【誤】
「神や他人を欺かず偽ることのない心のありよう」を「漢意」というのは不正確。一般に「漢意(かんい)」は唐風文化の受容などを指す言葉として用いられることが多く、この選択肢の説明には当てはまらない。
②【誤】
「自然物や自然現象すべてに精霊が宿る」という信仰は日本古来のアニミズム的傾向であり、それを「神仏習合」とは呼ばない。神仏習合は神道と仏教の融合現象のことを指す。
③【誤】
伊藤仁斎は朱子学を批判的に吟味し、独自に「仁」や「誠」の哲学を展開したが、古い儒教の原典を否定することで「誠」を論じたとは言いづらい。むしろ『論語古義』などで孔子の本質を重視した学問を展開した人物である。
④【正】
和辻哲郎は『風土』の中で、モンスーン地帯に位置する日本人の精神性として、自然を受容し忍従する文化的特徴を論じている。これは季節風(モンスーン)の影響を含む自然条件と結びついた日本文化の特性を分析したものとして知られる。
問26:正解5
<問題要旨>
ロボットが普及・進歩するなかで、新たに提起される課題とその対策例を問う問題。A・Bで示された具体的な課題(個人情報や創作物の権利など)に対し、選択肢のア(知的財産権の保護)・イ(ポジティブ・アクション)・ウ(情報セキュリティ対策)から最も適切な対応を結びつける必要がある。
<選択肢>
- A=ア / B=イ … など、いくつかの組合せがあるが、本文で示されたAおよびBの内容と合わない場合は誤り。
A(利用者の特性や好みに応じて情報を自動収集・提供するロボットにおける個人情報の流出リスク)
→ これは「情報セキュリティ対策」の問題であり、ア(知的財産権保護)やイ(ポジティブ・アクション)とは無関係。よってAにはウが合致する。
B(AI搭載ロボットがほとんど人の関与なしに創作した作品の諸権利帰属を明確にする必要)
→ これは「知的財産権の保護」にかかわる問題。よってBにはアが合致する。
したがって「A=ウ,B=ア」の組合せが正しい。これは選択肢の「5番」が該当する。
第5問
問27:正解1
<問題要旨>
経済思想の歴史や各学派が唱える主張を理解し、その影響を判別する問題。アダム・スミスの自由競争思想やリストの保護貿易論、マルクスの労働力商品論、ケインズの有効需要理論といった代表的な経済思想を正しく把握しているかが問われる。
<選択肢>
①【正】
アダム・スミスは『国富論』の中で自由放任主義(レッセ=フェール)に基づく「小さな政府」を主張した思想家の一人とされる。これは「見えざる手」による市場調整を前提にしており、近代経済学の源流の一つといえる。
②【誤】
リストの経済学は、発展途上国(当時のドイツなど)にとって自国産業を育成するため、保護貿易政策をとる必要があると説く「幼稚産業保護論」が特徴である。したがって「自由貿易が必要」とするだけの内容ではなく、選択肢の説明とはずれている。
③【誤】
マルクスの社会主義思想では、資本主義社会は労働が商品化(労働力が売買される)されていると捉える。選択肢にある「労働者階級の労働力が商品化されていないという考えに基づく」というのは逆であり、誤り。
④【誤】
ケインズは「有効需要の原理」に基づき「大きな政府」による経済政策を正当化するが、彼はそれによって「資本主義を否定しよう」としたわけではない。むしろ資本主義を修正し、危機を回避しようとする考え方に基づいており、選択肢の表現は誤解を含んでいる。
問28:正解2
<問題要旨>
一国全体の経済活動を捉える指標や、その動き(経済成長率や物価変動、GDPなど)について正しく理解しているかを問う問題。名目経済成長率と実質経済成長率の違いや、物価変動の原因などがポイントとなる。
<選択肢>
①【誤】
GDP(国内総生産)は「国内で生産された付加価値の合計」を測る指標であり、「一国の国民が生み出した付加価値の合計」という定義には近いが、海外で生産した付加価値は含まれず、また外国人が国内で生産した付加価値は含まれる。表現の仕方によっては誤解を招くが、選択肢の文言はやや曖昧であるため誤りの可能性が高い。
②【正】
実質経済成長率は、名目経済成長率から物価要因(インフレやデフレ)を除いて算出したものであり、物価変動の影響を取り除いた「実質的な」成長を示す指標。これは一般的に正しい説明である。
③【誤】
物価の変動は需要要因・供給要因のどちらからも生じ得る。たとえば需給のバランスが崩れた場合や、生産コストの変化などが影響するため、「供給側から生じることはない」とするのは明確に誤り。
④【誤】
一国全体の豊かさを測る指標である「国富」(実物資産や対外純資産の合計)はストック概念であり、選択肢にあるように「フローに分類される」わけではない。ストックとフローを混同しているので誤り。
問29:正解2
<問題要旨>
リカードの比較生産費説を用いた国際分業の利点について、表を参考に考える問題。A国・B国それぞれのリンゴ・半導体の生産に必要な労働者数を比較し、両国が特化して貿易することで生産量が増える(比較優位)のかどうかを読み取る必要がある。
<選択肢>
①【誤】
「A国は労働者1人あたりのリンゴ生産量と半導体生産量がB国よりも大きい」という文言だが、表を見ると、リンゴ1単位に必要な労働者はA国12人・B国11人、半導体1単位に必要な労働者はA国13人・B国10人となっており、B国のほうが必要労働者数が少なく生産効率が高いようにも読める。よって①は正しいとはいえない。
②【正】
「A国が半導体の生産をやめてリンゴを増産した場合、B国より大きな増産が可能」という趣旨は、A国がリンゴ生産の比較優位をもつとすれば筋が通る。比較生産費を見ても、A国にとってリンゴの方が相対的に有利であることがうかがえる。
③【誤】
B国がリンゴをやめて半導体に特化した場合に、A国が得る代替生産量と比較して「A国よりも小さい」とする表現が適切かどうかは疑わしい。B国はリンゴより半導体の方が有利な可能性があり、選択肢の結論と合致しない。
④【誤】
「A国が半導体に特化し、B国がリンゴに特化」となっているが、表を踏まえると逆の方が比較優位的に効果的である。選択肢④は表のデータと逆方向の組合せであり誤り。
問30:正解4
<問題要旨>
日本や世界で発生した経済危機・混乱の例を挙げ、それに関する記述が正しいかどうかを問う問題。バブル経済の破綻や開発途上国の累積債務問題、アジア通貨危機、EU離脱問題など、大きな経済混乱が起こった背景と影響を正しく理解しているかを確認する。
<選択肢>
①【誤】
日本が戦後に初めてマイナス成長を経験したのは、石油危機(1974年)やバブル崩壊後(1990年代以降)などであって、「バブル崩壊後の不況期が第二次世界大戦後初のマイナス成長」という書き方は正確ではない。
②【誤】
1980年代に表面化した開発途上国の累積債務(ラテンアメリカ諸国など)の問題で、一次産品価格の高騰が原因となったかは疑わしい。むしろ石油輸出国への利払い負担、資金の逆流などが大きい要因である。
③【誤】
1990年代のアジア通貨危機では、ヘッジファンドなどの投機的資金によりタイなどの通貨が急落したが、中国の通貨が暴落したというわけではない。むしろ中国は通貨切り下げを管理下で行っていた経緯もあり、この表現は不正確。
④【正】
欧州連合(EU)からの離脱をめぐり、イギリスで国民投票が実施され(いわゆるブレグジット)、結果が離脱支持となったことで世界経済に不安定化の懸念が広がり、日本の株式市場でも急落が見られた。これは実際に起きた出来事として正しい。
問31:正解3
<問題要旨>
日本の経済政策や社会政策における法制度・特徴について問う問題。特例国債(赤字国債)の発行、社会保障制度、公害対策基本法、消費者基本法といった立法の時期・目的に関して正誤を見極める必要がある。
<選択肢>
①【正】
景気が悪化して税収不足に陥った場合、財政法で禁じられている赤字国債を特例的に発行することが認められる(特例公債法の成立など)。よってこの説明はおおむね正しい。
②【正】
国民の生活を守るために、社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生といった各制度を柱とする社会保障制度が整備されている。これは正しい。
③【誤】
「都市・生活型公害の深刻化を背景に、1990年代に公害対策基本法が制定」というのは事実と異なる。公害対策基本法は1967年に制定されており、1990年代には「環境基本法」(1993年)が成立している。よってここが不正確。
④【正】
消費者の権利を守るため「消費者基本法」が2000年代に制定された(旧「消費者保護基本法」の改正により2004年に施行)。消費者の権利尊重と自立支援を基本理念とする法律である。
第6問
問32:正解2
<問題要旨>
下線部(a)の「開発途上国」に関する記述を正誤判定する問題。なかでも、開発段階が特に低い「後発開発途上国(LDC)」の指定機関、単一の一次産品に依存した輸出構造、援助や貿易促進の国際枠組み、関税面での優遇措置などを正しく理解しているかが問われる。
<選択肢>
①【誤】
「後発開発途上国(LDC)」を指定する国際機関は、国連(UN)による基準が一般的で、世界銀行が公式に指定するわけではない。したがって表現として適切とは言えない。
②【正】
開発途上国では輸出向けの一次産品に頼る「モノカルチャー経済」が見られるケースが多い。これは輸出の多角化が進んでいない状態を指しており、記述のとおりである。
③【誤】
南北格差を是正するため、主に途上国支援や貿易促進に取り組む枠組みとしては、国連貿易開発会議(UNCTAD)や世界貿易機関(WTO)などが代表的である。OECDは先進国が中心となっている組織であり、「南北格差の是正に向けた貿易促進」を主目的とする機関という表現は誤解を招く。
④【誤】
開発途上国からの輸入に対して有利な待遇(関税の減免など)を与える制度は一般に「特恵関税制度(GSP)」と呼ばれる。選択肢にある「リスケジュール(リスケ)」や「リスクシェアリング」は全く別の概念であり、誤りである。
問33:正解1
<問題要旨>
下線部(b)に関連する国際交渉や外交上の合意について問う問題。先進国と開発途上国の対立構図や、包括合意の未達成状況、国連総会採択の条約が実際に発効しているかどうか、日中間の国交正常化、さらに人間の安全保障の概念などが論点となる。
<選択肢>
①【正】
ドーハ・ラウンド(WTO交渉)では、先進国と途上国との利害対立が大きく、包括的な合意に至っていない現状が続いている。この説明は事実に近い。
②【誤】
包括的核実験禁止条約(CTBT)は1996年に国連総会で採択されたが、すべての「発効要件国」が批准しておらず、いまだに発効していない。したがって「必要要件を満たして発効した」というのは誤り。
③【誤】
日中間の国交正常化自体は1972年の日中共同声明が大きな契機であり、1978年の日中平和友好条約はその後の追加的な関係強化の取り決め。よって「1978年が国交正常化の実現」という表現は厳密には誤りとなる。
④【誤】
日本の外交方針には「人間の安全保障」の考え方が取り入れられており、国際協力の重要な理念の一つとされるため、「含まれていない」は誤り。
問34:正解3
<問題要旨>
パリ協定の下線部(c)に関連し、温室効果ガスの排出量データ表(1990年~2013年)を読み取り、削減目標の仮定を置いた場合にどの国が目標を達成し得るか、あるいは各国の増減率がどう変化するかを考察する問題。
<選択肢>
①【誤】
「いずれの国も1990年比で20%削減を目標と仮定した場合、2013年に達成したのはロシアのみ」というが、ドイツも1990年→2013年で20%以上の削減の可能性があり、この記述は誤り。
②【誤】
「いずれの国も2000年比で20%削減を目標と仮定した場合、ドイツが達成した」というが、ドイツは2000年→2013年でおよそ7~8%程度の減少であり、20%を達成するには至らない。
③【正】
「1990年→2000年の比較で、ドイツの排出削減量はイギリスより多く、カナダの排出量増加率は日本より大きい」という点が表データに合致する。実際にドイツは1990年1215→2000年1003と大きく減少、イギリスは800→714で減少幅が小さい。カナダは526→663、日本は1211→1300で、カナダの方が増加幅が大きい。
④【誤】
「2005年→2013年の比較で、減少量最大はイギリス、増加量最大は日本」とあるが、ロシア(2221→2291)も増加しており、その幅(70)が日本(36)より大きいため、この選択肢は誤り。
問35:正解1
<問題要旨>
下線部(d)「地球規模の環境問題」に関する代表的な国際条約や会議の知識を問う問題。オゾン層保護のモントリオール議定書、国連開発計画(UNDP)やバーゼル条約、ストックホルム会議など、名称と目的が正しく一致しているかを確認する。
<選択肢>
①【正】
ウィーン条約のもとで採択されたモントリオール議定書では、オゾン層を破壊する特定フロンなどの段階的全廃が合意されている。これは正しい。
②【誤】
UNDP(国連開発計画)は「地球規模の環境問題の具体化」を主目的とした機関ではなく、開発支援全般がその中心的役割である。
③【誤】
バーゼル条約は「有害廃棄物の越境移動」に関する国際的な規制や処分方法のルールを定める条約であり、「砂漠化への対処」を目的とした条約ではない(砂漠化対処はUNCCD)。
④【誤】
気候変動枠組条約が採択された会議は、1992年の「リオ(地球サミット)」であり、1972年のストックホルム国連人間環境会議ではない。
問36:正解3
<問題要旨>
下線部(e)で示された「組織の意思決定」に関する問題。日本国憲法上の条約承認や内閣の会議、国連安全保障理事会や国連総会での決議方法など、意思決定の仕組みを正しく理解できているかがポイントとなる。
<選択肢>
①【正】
日本国憲法では条約の締結に国会の承認が必要とされ(憲法第61条)、また衆議院の優越規定により衆議院が可決した条約承認案を参議院が一定期間内に否決・可決しなかった場合などは衆議院側の議決が国会の意思となる。
②【正】
日本の内閣は「合議体」として閣議を開き、ここで意思決定が行われる。閣議の主宰は内閣総理大臣である。
③【誤】
国連安全保障理事会の決議には、常任理事国(5か国)の拒否権があり、全会一致を必要とするものではない。原則として理事国15か国中9か国以上の賛成、かつ常任理事国の反対(拒否権行使)がない場合に採択される。よって「全会一致を必要とする」は誤り。
④【正】
国連総会では「一国一票」の原則で採決が行われ、多数決により決議される。これは一般的に正しい。