解答
解説
第1問
問1:正解4
<問題要旨>
下線部(ア)に関連して、「金融の国際化」や「多国籍企業の動き」などを扱った問題です。各選択肢では、戦後日本での金融制度改革や国際分業、多国籍企業による海外投資などが取り上げられており、それらの用語や内容の正否が問われています。
<選択肢>
①【誤】
「護送船団方式」は日本の金融行政の旧来の政策手法のことを指し、弱い金融機関の破綻を回避するために横並びで保護するような規制方法をいう。バブル崩壊後の金融制度改革ではこの護送船団方式を見直し、競争原理を取り入れた構造改革が進められたため、「護送船団方式と呼ばれる金融制度改革」が行われた、という記述は不適切である。
②【誤】
海外に保有する金融資産からの利子や配当といった受取額は、国際収支表の「第一次所得収支」に計上されるのが通説である。一方で「金融収支」は資本移動(証券投資や直接投資など)の増減を主に扱うため、利子・配当などを「金融収支」に含めるという記述は誤りである。
③【誤】
同一産業内で最終製品や部品を相互に貿易するかたちを「水平的分業」と呼ぶのが一般的である。これに対して、開発段階や賃金格差などによって異なる工程を担うかたちを「垂直的分業」という。本選択肢は水平方向の貿易に当たる内容を「垂直的分業」としている点で不適切である。
④【正】
多国籍企業が海外に工場を建設したり、現地企業を買収して子会社化したりする活動は、国際的な資本移動のうち「直接投資(FDI)」と呼ばれる。企業が海外で生産拠点を設けることで、原材料調達や製品販売の拡大を図る典型的な直接投資の形態であり、この記述は妥当である。
問2:正解1
<問題要旨>
下線部(イ)に関連して、第二次世界大戦後に確立した固定為替相場制(いわゆるブレトンウッズ体制)や、その後の変動為替相場制への移行過程を扱う問題である。各選択肢で、固定為替相場制の仕組みや崩壊の要因、キングストン合意・プラザ合意などの内容の正否が問われている。
<選択肢>
①【正】
第二次大戦後に採用された固定為替相場制は「金とドルの交換を軸にする本位制」と呼ばれ、ブレトンウッズ協定で定められた。ドルは金と交換できる基軸通貨とされ、各国通貨はドルと一定のレートで固定されたため、「金・ドル本位制」という表現は妥当である。
②【誤】
固定為替相場制の崩壊は、米国の金保有量が過剰で余っていたのではなく、逆に米国の金準備不足(ドルと金の交換要求に応え切れなくなったこと)が背景にあるとされる。よって「アメリカの金保有量の過剰」が原因とするのは誤りである。
③【誤】
「キングストン合意」は1976年に行われたIMFの第二次改正にあたるもので、変動為替相場制を正式に認める合意だった。固定相場への復帰を図る合意ではなく、主要各国が変動為替を容認したものであるため、本選択肢の説明は正しくない。
④【誤】
「プラザ合意」は1985年に先進5か国(G5)財務相・中央銀行総裁がドル高是正を目的に結んだ協調行動である。むしろドル安誘導を図る合意といえるため、「ドルを安定させる」ことを目的とする説明は当を得ない。
問3:正解2
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連して、現代の情報通信技術(ICT)に関する基礎的事項を確認する問題である。スマートグリッドやビッグデータ、ソーシャルメディア、電子商取引などの用語が正しく使われているかを判断する。
※設問文は「適当でないもの」を選ぶ形式であり、正解肢が「誤りの記述」である。
<選択肢>
①【正】
電力需給を情報通信技術で管理・調整する「スマートグリッド」は実際に用いられている概念であり、この記述には問題はない。
②【誤】
膨大な情報を収集・蓄積・活用する概念は「ビッグデータ」と呼ばれる。一方で「バーチャル・リアリティ(VR)」は、コンピューター技術を用いて仮想空間を現実のように体感させる技術を指す。したがってこの選択肢は誤りの記述であり、「適当でないもの」に当たる。
③【正】
SNSなどの普及により、個人がインターネット上で情報発信を行い、相互に交流できる場を「ソーシャルメディア」という。この点は適切な説明である。
④【正】
企業間取引(BtoB)やオンラインショッピング(BtoC)、インターネット・オークション(CtoC)などの取引を総称して「電子商取引(eコマース)」と呼ぶ。ここで言及されている内容は適切である。
問4:正解3
<問題要旨>
下線部(エ)に関連して、国際連盟と国際連合の特徴を比較する問題である。戦間期に設立された国際連盟と第二次世界大戦後の国際連合の組織構造・加盟国・軍事措置・人権に関する取り組みなどが正しく理解できているかが問われている。
<選択肢>
①【誤】
国際連盟の総会および理事会では、当時「全会一致制」が原則とされていた。多数決ではなかったため、この記述は誤りである。
②【誤】
国際連盟には、アメリカは設立時に参加せず、実質的に未加盟のままであった。設立当初からアメリカが加盟していたわけではないので、この選択肢は誤りである。
③【正】
国際連合は世界人権宣言(1948年)を土台として、その内容をより具体的に法的拘束力ある条文に落とし込んだ「国際人権規約(1966年採択)」を成立させている。したがってこの記述は妥当である。
④【誤】
国連憲章上、安全保障理事会は軍事的強制措置を決定できるが、それを常設の国連軍によって遂行する制度は正式には整備されていない(国連軍は設置されていない)。よってこの記述は誤りである。
問5:正解3
<問題要旨>
下線部(オ)に関連して、戦後の国際経済体制や多国間・地域的な貿易協定、国際金融機関などに関する基本的知識を問う問題である。GATT(ウルグアイ・ラウンド)、FTA、IBRD、BIS規制といった用語の正確な理解が必要とされる。
<選択肢>
①【誤】
ウルグアイ・ラウンドでは農産物貿易やサービス貿易だけでなく、知的所有権の保護をめぐる規定(TRIPS協定)も交渉対象となった。よって「知的所有権を交渉対象にしなかった」というのは誤りである。
②【誤】
関税の撤廃だけでなく、外国人労働者の受け入れなど広範な連携を含む協定は、単なるFTA(自由貿易協定)よりも枠組みが広いEPA(経済連携協定)などで説明される場合が多い。FTAは基本的に関税や物品貿易の規制撤廃に焦点が置かれるため、この選択肢は正確ではない。
③【正】
国際復興開発銀行(IBRD)は第二次大戦後の戦災からの復興や開発途上国への長期融資を目的に設立された。世界銀行グループの一部として、先進国だけでなく開発途上国のインフラ整備などにも資金支援を行う。その趣旨と合致しており妥当である。
④【誤】
バーゼル合意(BIS規制)は、主として銀行の自己資本比率の国際的な基準を定め、金融機関の安定化を図る制度である。「預金金利を一定水準以上にする」ことを求める規定ではないため、誤りである。
問6:正解1
<問題要旨>
下線部(カ)に関連して、市場経済における価格機構や公共財、政府の役割などが問われている。需要と供給による価格の自動調節や、非排除性・非競合性にまつわる公共財の特徴、混合経済などの概念を確認する問題である。
<選択肢>
①【正】
多くの売り手・買い手が市場で自由に取引を行い、互いの行動が価格を通じて調整されるしくみを「価格の自動調節機能」という。需要と供給が価格をシグナルにして決まるという説明は、競争的市場の基本的な考え方として妥当である。
②【誤】
政府が行う経済的格差の是正策は「所得再分配機能」と呼ばれることが多い。対して「資源配分機能」は、外部不経済の是正や公共財の供給などを通じて市場の不完全性を補う役割を指すため、本記述は用語の用法が誤っている。
③【誤】
公共財は「非競合性(多数の人が同時に利用しても消費量が減りにくい)」と「非排除性(対価を支払わない人を排除できない)」という特徴がある。本選択肢では排除できないことを「非競合性」としているが、正しくは「非排除性」であるため不正確である。
④【誤】
「混合経済」は社会主義体制かどうかを問わず、公的部門と私的部門の両方をもつ経済体制を幅広く指す。社会主義体制下で市場経済を導入する事例を「混合経済」と呼ぶわけではないため、説明としては誤りがある。
問7:正解4
<問題要旨>
下線部(キ)に関連して、1980年代以降の世界的な経済危機とその対応策を扱う問題である。累積債務問題、アジア通貨危機、世界金融危機、ユーロ危機などの史実を踏まえ、どの国際機関や合意・政策が主導的役割を担ったかが問われる。
<選択肢>
①【誤】
1980年代に表面化した累積債務問題の中心は、ラテンアメリカ諸国などが大量の借款を返済できなくなった「第三世界の債務危機」である。「中東産油国の債務不履行」が主因とはいいにくく、この説明は不正確である。
②【誤】
1990年代のアジア通貨危機(1997年頃)に対して金融支援など主導的役割を担ったのはIMF(国際通貨基金)であり、OECD(経済協力開発機構)ではない。よってこの記述は誤りである。
③【誤】
2000年代の世界金融危機(リーマン・ショック後)に際しては、アメリカはむしろ金融緩和や大規模救済措置をとった。金融引き締め政策を行ったわけではなく、記述に誤りがある。
④【正】
2010年代に顕在化したユーロ危機は、一部のユーロ参加国における財政赤字問題(ギリシャなど)の深刻化が原因の一つとされる。ユーロという共通通貨を共有しているなかで経済格差や財政再建が難航したため、この説明は妥当である。
問8:正解2
<問題要旨>
下線部(ク)に関連して、地域的な経済統合の動向を扱う問題である。EUにおける通貨統合や東南アジアの協力枠組み、TPPの離脱、南米のMERCOSURといった多様な地域統合の性質や歴史を見極める必要がある。
※設問文は「適当でないもの」を選ぶ形式であり、正解肢が「誤った記述」である。
<選択肢>
①【正】
EUでは通貨統合としてユーロが導入され、金融政策は欧州中央銀行(ECB)が担う。ユーロ圏内の金利政策はECBが一元的に行うため、この記述は正しい。
②【誤】
東南アジア諸国連合(ASEAN)では関税撤廃など経済統合を目指す枠組み(AFTAなど)があるが、「ASEAN地域フォーラム(ARF)」は主に政治・安全保障を協議する場である。関税障壁の撤廃を主目的とするわけではないので、この記述は誤りである。
(よって「適当でないもの」として選ばれる。)
③【正】
アメリカはTPPに署名していたが、2017年に正式に離脱を表明した史実がある。この説明は事実に合致する。
④【正】
MERCOSUR(南米南部共同市場)は、域外に対する共通関税率を設定している関税同盟の段階に至っている。関税同盟へ発展しているという点は通説に合致する。
第2問
問9:正解4
<問題要旨>
下線部(ア)に関連して、日本国憲法に定められた自由・権利に関する基本的な判例や通説を問う問題です。出版物への検閲や刑事事件の立証方法、私的団体間紛争への憲法規定の直接適用、ハンセン病患者の強制隔離をめぐる国の責任などが正確に理解されているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
日本国憲法は原則として、行政機関による事前検閲(出版前の内容審査と差し止め)を認めていません。よほど限定的な例外を除き、表現の自由の保障の観点から事前規制は否定されるため、この選択肢は誤りです。
②【誤】
刑事事件において、本人の自白のみが唯一の証拠となっている場合には、証拠能力が疑われるのが通説であり、確定的に有罪となるわけではありません。日本国憲法や刑事訴訟法上、自白のみによる有罪認定に慎重な規定があります。
③【誤】
思想・信条に関する憲法の規定を私人間に直接適用した最高裁判所判決は存在しません。憲法は主に国家権力を制限する規範とされ、私人間に直接適用されるには高いハードルがあります。この選択肢は誤りです。
④【正】
ハンセン病患者への強制隔離に関して、国の責任を認めた司法判断(地方裁判所の判決)が実際に存在します。長年の隔離政策が違憲・違法とされた事例があり、この点は正しい記述です。
問10:正解2
<問題要旨>
下線部(イ)に関連して、「人間の尊厳」をめぐる代表的思想家の主張を整理する問題です。
ア:「人間を目的として扱い、手段としてのみ扱ってはならない」という立場
イ:「他者に危害を加えない限り、個人の自由を最大限尊重すべきだ」という立場
これらの主張がどの思想家に対応するかを問うています。
<選択肢>
①【誤】
ア=A(カント)、イ=B(アーレント)という組合せですが、アーレントは全体主義批判などの思想で知られるため、「他者に危害を加えない限りの最大自由」というリバタリアン的自由論とは一致しにくいです。
②【正】
ア=A(カント)は「人間を目的として扱え」という定言命法で有名です。イ=C(J.S.ミル)は「他者に危害を加えない限り最大限の自由を容認する」という他者危害原則を提唱しています。この組合せは正しいです。
③【誤】
ア=B(アーレント)、イ=A(カント)の組合せですが、カントの核心主張は「目的として扱え」であり、アーレントは公共性の領域などを重視する政治思想家です。したがって対応が逆で不正確です。
④【誤】
ア=B(アーレント)、イ=C(ミル)の組合せですが、アーレントを「目的として扱う」という文脈で捉えるのは誤りです。同様に前述の理由で整合しません。
⑤【誤】
ア=C(ミル)、イ=A(カント)の組合せですが、カントとミルが入れ替わっています。ミルは功利主義を背景にした「自由論」であり、カントは道徳法則を説いた哲学者です。
⑥【誤】
ア=C(ミル)、イ=B(アーレント)も対応していません。ミルの他者危害原則とアーレントの政治哲学は上記のように違う文脈です。
問11:正解1
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連して、個人のプライバシーや国・公的機関の情報公開に関わる日本の主な裁判例や法制度が題材です。「宴のあと事件」「石に泳ぐ魚事件」などの小説とプライバシー問題、情報公開法の内容をめぐる記述が問われています。
<選択肢>
①【正】
「宴のあと」事件で、東京地方裁判所は小説のモデルとされた人物の私生活をみだりに公開しない権利を法的に保護すべきとする判決を示し、プライバシー権が認められる方向性を打ち出しました。この記述は事実に合致します。
②【誤】
「石に泳ぐ魚」事件の最高裁判所判決では、モデル小説によるプライバシー侵害が認定された結果、出版差し止めまで争点となりました。ただし、この種の事件で常に出版差し止めが認められるわけではなく、「差し止めを認めない」とした判例ではありません。記述は正確性を欠きます。
③【誤】
情報公開法は国の行政機関に対する情報公開請求を定め、政府の説明責任も一定程度明文化しています。全く説明責任が明文化されていないわけではないので、この選択肢は誤りです。
④【誤】
非開示決定に対して不服申立て(審査請求や訴訟)を行うことは法律上認められています。不開示処分を争う制度が整備されているため、「法的に認められていない」というのは誤りです。
問12:正解2
<問題要旨>
下線部(エ)に関連して、日本の刑罰制度における原則(罪刑法定主義、遡及処罰の禁止など)を確認する問題です。「適当でないもの」を選ぶ形式であり、誤った記述を見抜く必要があります。
<選択肢>
①【正】
日本国憲法では、どのような行為に対してどのような刑罰を科すかを法律によって明確に定める必要があります。これは罪刑法定主義の基本原則であり、この記述は正しいです。
②【誤】
憲法上、行為時に適法であった行為を事後的に違法として処罰することは認められていません。遡及処罰の禁止は刑事法の大原則です。この選択肢では「事後に刑罰を定めることで遡って処罰できる」と述べており、誤りです(よって「適当でないもの」に当たります)。
③【正】
公訴前の段階でも被疑者には国選弁護人制度があり、経済的に弁護士を選任できない人でも弁護を受けられるよう拡充されています。憲法上も刑事被告人の権利を保障する観点から、弁護人の付添制度が重視されています。
④【正】
検察官が不起訴とした処分について、検察審査会が市民の立場から審査し、不起訴が相当かどうかを判断する制度があります。これは日本の刑事手続上の重要なチェック機能であり、正しい記述です。
問13:正解3
<問題要旨>
下線部(オ)に関連して、日本国憲法が定める国会の権限や、委員会の仕組みなどに関する問題です。内閣総理大臣の指名権、委員会の議決権、国政調査権など、国会にまつわる規定の是非が問われています。
<選択肢>
①【誤】
日本国憲法は「国会議員の中から内閣総理大臣を指名する」ことを定めています。ここでは「任命する権限がある」とだけ述べており、文面次第では誤解を招く可能性があります。加えて、任命権は形式上、天皇の国事行為によって行われるため、その点を省略していると不正確です。
②【誤】
国会の各委員会は本会議に代わって法案を最終的に可決できるわけではありません。実質審議などを委員会で行ったうえで、最終的な議決は本会議の権能となります。よって「委員会が本会議に代わって議決する」ことはできず、誤りです。
③【正】
国政調査権に基づき、国会(衆議院・参議院)は国政全般について調査し、証人喚問などを行うことが認められています。これは日本国憲法第62条(衆議院の国政調査権)・第104条(参議院について準用)などで裏づけられており正しいです。
④【誤】
国会の委員会では、政府委員制度(かつて存在した制度)は廃止され、現在は「内閣府や各省庁の職員」が「参考人」や「政府特別補佐人」等の形で答弁することになっています。「政府委員」として常時答弁を行う制度は既に廃止されており、この表現は現行制度とは異なります。
第3問
問14:正解1
<問題要旨>
下線部(ア)に関連して、「人の社会性」に関する代表的な思想家の主張を整理する問題です。ヤスパース・リースマン・ハイデッガー・ハーバーマスの論点を正確に把握し、提示された記述の正否を判断するよう求められています。問題文では「適当でないもの」を選ぶ形式であり、正解肢(適当でない記述)が①となります。
<選択肢>
①【誤】
ヤスパースの思想では「実存」「限界状況」「包括者」などがキーワードになりますが、「他者の他者性は〈顔〉として現れ、それに応答する責任がある」とする主張は、むしろレヴィナスの「顔」の哲学に近い表現です。よって、これはヤスパースの考えを正しく表しているとはいえず、誤りです(=本問での「適当でないもの」)。
②【正】
リースマンは『孤独な群衆』の中で、社会的性格を「伝統志向型」「内部志向型」「他人志向型」に分類しました。他人の価値観や行動を自分の基準として取り入れる「他人指向型」について述べた点は、リースマンの考えを正しく言い表しています。
③【正】
ハイデッガーは『存在と時間』で、人間が自らの「死への存在」に気づくことで、本来的な生き方を取り戻せると説きました。ここでいう「死を避けることができない」という認識が、自分の在り方を問い直す契機になるという説明は妥当です。
④【正】
ハーバーマスは「コミュニケーション的行為」を重視し、対等な立場での討議によって合意に到達しうる可能性を追求しました。この立場は近代的理性の新たなあり方を提示するもので、提示文の記述はハーバーマスの思想をおおむね正しくとらえています。
問15:正解4
<問題要旨>
下線部(イ)に関連し、マズローの欲求階層説(生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求)を正しく組み合わせる問題です。文中では、恐怖やリスクを回避する段階⇒人との関わりを求める段階⇒他者から尊敬される段階、と順に当てはめる必要があります。
<選択肢>
①【誤】 A=所属と愛、B=安全、C=承認 という順序はマズローの階層説と合わず、恐怖・危険回避のレベルが「所属と愛」になってしまうため不適切です。
②【誤】 A=所属と愛、B=承認、C=安全 も、やはり安全より先に所属がきているなど、順序が逆になっています。
③【誤】 A=安全、B=承認、C=所属と愛 の順は承認と所属が逆転しており、マズローの一般的な段階と一致しません。
④【正】 A=安全、B=所属と愛、C=承認 という順序は、生理的欲求の次に安全の欲求、その後で所属・愛、さらに承認の欲求がくるというマズローの理論に合致しています。
⑤【誤】 A=承認、B=所属と愛、C=安全 のように承認が初期段階に来てしまい、序列がまったく異なります。
⑥【誤】 A=承認、B=安全、C=所属と愛 も、同様に欲求の段階が大きく入れ替わっているため不正確です。
問16:正解3
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連し、心理学者クルト・レヴィンが提示した「葛藤(コンフリクト)の三類型」に当てはめる問題です。レヴィンは欲求が「接近―接近(どちらもプラス)」「回避―回避(どちらもマイナス)」「接近―回避(プラス面とマイナス面が同居)」に分けられると整理しました。設問は「接近―回避」の型の具体例を選ばせています。
<選択肢>
①【誤】
「地元の大学に進学したい」気持ちと「アメリカの大学に留学したい」気持ちは、どちらも魅力的な選択肢(プラス)であり、これは「接近―接近」型に近いです。
②【誤】
「勉強したくない(マイナス)」と「勉強しないと志望校に不合格になる(別のマイナス)」という2つの否定的要因に挟まれています。これは「回避―回避」型に相当します。
③【正】
「テニスクラブに入りたい(プラス)」がある一方、「練習が厳しそう(マイナス)」という正負両面からなる葛藤です。これは「接近―回避」の典型例となります。
④【誤】
「一泊旅行に行きたい(プラス)」と「好きな歌手のコンサートに行きたい(プラス)」のように、いずれもプラスの選択肢で悩むため「接近―接近」型です。
問17:正解4
<問題要旨>
下線部(サ)に関連して、日本の社会保障制度と最高裁判所が示した判例の主要なポイントを問う問題です。生活保護や公的年金・保険の財源方式、障害福祉年金・児童扶養手当の併給可否などが争点となった裁判例の正確性を検討します。
<選択肢>
①【誤】
朝日訴訟最高裁判所判決では、厚生大臣の生活保護基準設定が完全に裁量範囲を逸脱しているとは判断されなかったとされます。選択肢にあるように「範囲を超えている」と明確に言い切ったわけではありません。
②【誤】
現行の公的年金には「積立方式」ではなく「賦課方式」が中心で導入されており、受給者への給付を現役世代の負担で支える仕組みです。「積立方式」が基本というのは必ずしも正しくありません。
③【誤】
雇用保険の保険料は、労働者と事業主が分担して負担する仕組みになっています。全額を労働者だけが負担するわけではないため、「事業主は負担しない」とするのは誤りです。
④【正】
堀木訴訟最高裁判所判決では、障害福祉年金と児童扶養手当の併給の可否は国会の立法裁量の範囲内であると判断されました。社会保障給付の設計は国会の裁量に委ねられるという考え方を示した点で、実際の判例に合致します。
問18:正解3
<問題要旨>
下線部(シ)に関連し、研究テーマを検討・発表する際の方法(ブレインストーミング、アンケート、プレゼンテーションなど)の使い分けを問う問題です。アとイで示された活動内容が、A・B・Cのいずれに相当するかを適切に組み合わせる必要があります。
- ア:調べたいテーマについて、「批判禁止」や「質より量」などのルールの下、自由に意見を出し合う。
- イ:研究テーマに関する情報や動向を把握するため、調査対象者に質問票を用いて答えてもらう。
<選択肢>
①【誤】 ア=A(アンケート)、イ=B(ブレインストーミング) の組合せは、アの内容がアンケートではなく、むしろブレインストーミングに該当するので誤りです。
②【誤】 ア=A(アンケート)、イ=C(プレゼンテーション) も、アの活動はアンケートとは別物なので誤りです。
③【正】 ア=B(ブレインストーミング)、イ=A(アンケート) は、アが「批判禁止」「質より量」で自由に意見を出す手法(ブレインストーミング)と一致し、イが「質問票で調査対象者から答えを得る」というアンケートに当たるため、最も適切な組合せとなります。
④【誤】 ア=B(ブレインストーミング)、イ=C(プレゼンテーション) は、イの方が調査票を用いた方法と書かれており、プレゼンテーションとは趣旨が違います。
⑤【誤】 ア=C(プレゼンテーション)、イ=A(アンケート) も、アが「意見を自由に出し合う手法」を指す文面とはつながらず不正確です。
⑥【誤】 ア=C(プレゼンテーション)、イ=B(ブレインストーミング) は、イの内容が「質問票を用いる」とあるのでブレインストーミングには当てはまりません。
第4問
問19:正解4
<問題要旨>
下線部(ア)に関連し、日本の家族法(民法の親族・相続分野)と最高裁判所の判例を扱う問題です。非嫡出子の相続分や、婚姻・認知の有無による国籍取得、再婚禁止期間などの合憲性をめぐる最高裁判例の内容が正しく理解されているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定は、かつて民法に存在しましたが、その後の最高裁判所判決で違憲と判断され、改正がなされています。現行法では非嫡出子の法定相続分を嫡出子の半分とする規定は廃止されています。
②【誤】
婚姻や相続に関する争い(離婚・財産分与、相続分など)をめぐる民事事件は、第一審が家庭裁判所や地方裁判所となる場合があります。ただし、「原則として地方裁判所で扱われる」と一概に言うのは不正確です。家事事件は家庭裁判所の専属管轄とされるものもあるため、一概に地方裁判所扱いとは限りません。
③【誤】
日本人の父と外国人の母との間に生まれた子が、父母の婚姻の有無によって国籍取得を区別される民法・国籍法の規定は、過去に最高裁で争われた事例があります。規定の合憲性は問題となったが、一部に違憲と判断されたケースもあるため、「憲法に違反しない」と断定するのは正確さを欠きます。
④【正】
女性のみ再婚禁止期間を定める民法の規定は、「父子関係の混乱を防止する目的」がある一方で、100日を超える部分は違憲であると最高裁判所が判断しました。これは比較的近年の判決で示された内容と合致します。
問20:正解4
<問題要旨>
下線部(イ)に関連し、高齢者の生活や意識に関する国際比較調査(日本・アメリカ・ドイツ・スウェーデン)の数値をもとに、「経済的に困っているか否か」と「現在の生活への満足度」に関して、どの国がどの程度の回答分布となっているかを読み取る問題です。
<選択肢>
①【誤】
スウェーデンは、日々の暮らしで経済的に「困っていない」「困っていないに近い」合計値が確かに高いですが、日本の「満足している」「まあ満足している」の合計値が4か国で最も高いわけではありません。よって記述全体として事実と異なります。
②【誤】
アメリカにおける「困っている」「少し困っている」の合計値が4か国で最も高いというのは、提示された数値と合わない場合があります。またドイツにおける生活満足度の「やや不満」や「不満」の合計値が4か国中で最も高いとも断定できません。
③【誤】
「現在の生活への満足度(満足+まあ満足)」と「経済的に困ることの有無(困っていない+あまり困っていない)」を比較すると、すべての国が同じように高い相関を示すわけではありません。国によってばらつきがあります。
④【正】
日々の暮らしで「困っている」という回答の割合と、「不満」であるという回答の割合についてみると、4か国とも「困っている」層と「不満」層が比較的少数にとどまっている、という点で共通して高くなっていないという解釈ではなく、それらの「困っている」「不満」と回答した層がある程度リンクしている、という選択肢の表現が問題文の数値に即して正しいと判断されます。
(設問文の記述から、④にあるように「困っている」回答と「不満である」回答の比率がともに低水準とはいえ、両者は一定の対応関係があることが読み取れるため、まとめとして最も適切です。)
問21:正解1
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連し、日本の民法における契約の成立や効力の基本原則を扱う問題です。未成年者の法律行為や公序良俗違反の契約、労働契約など、それぞれの法的性質を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
①【正】
未成年者が法定代理人(通常は親権者など)の同意を得ずに単独で契約を結んだ場合、その契約は原則として取り消すことができます。民法で定められた未成年者取消権を表す典型的な規定です。
②【誤】
公序良俗に反する内容の契約は無効(初めから効力を生じない)のが民法上の原則であり、「相手方が同意すれば有効」とする見解は誤りです。
③【誤】
物の持ち主がその物を相手方に渡し、相手方が対価を支払う契約は「売買契約」です。労働契約は労働者が労働力を提供し、使用者が賃金を支払うものであり、物品の引き渡し契約ではありません。
④【誤】
「契約自由の原則」は、契約内容や当事者、方式などを自由に定められることを指します。物を自由に使用・処分して利益を得るというのは所有権の内容に関する原則であって、直接「契約自由の原則」とは別の概念です。
問22:正解3
<問題要旨>
下線部(エ)に関連し、日本の刑事手続きに関する基本的な制度を問う問題です。GPS捜査の要件、刑事裁判での和解(刑事和解)の可否、一事不再理の原則、上告制度など、各選択肢がどの程度制度上認められているかを検証する内容になっています。
<選択肢>
①【誤】
GPS捜査については令状が必要であるかどうかが争われており、「容疑者の承諾さえあれば令状は不要」とする最高裁判所の明確な判例はありません。むしろGPS捜査には令状が必要とする考え方が有力です。
②【誤】
刑事事件において、被告人と被害者が示談を結ぶことはありえますが、それをもって「裁判官の下で和解を成立させて訴訟を終結する」制度は日本の刑事手続にはありません。民事事件とは異なり、刑事訴訟に和解による訴訟終了の仕組みはありません。
③【正】
「無罪の確定判決を受けた者は、同一の事件で再び刑事責任を問われない」というのは一事不再理の原則として、日本国憲法や刑事訴訟法で保障されています。この選択肢は正しいです。
④【誤】
有罪の確定判決を受けた者が上訴を行う制度としては「控訴」や「上告」、あるいは特別上告などの手続がありますが、上告は事実審のやり直しというよりも法令解釈などを審査するもので、「一定の条件下で裁判をやり直す制度」という表現はむしろ再審制度に近いです。よって記述に誤りがあります。
問23:正解2
<問題要旨>
下線部(コ)に関連し、日本の企業や法人の形態・活動に関する基本的知識を問う問題です。企業が行う社会貢献活動、法人形態の区別、行政改革の一環としての郵政事業改革や公法人の設置などが取り上げられています。
<選択肢>
①【誤】
企業が行うボランティア活動や慈善寄付などの社会貢献行為を、一般に「アウトソーシング」と呼ぶことはありません。アウトソーシングは業務の外部委託を指すため、この記述は誤りです。
②【正】
日本における企業形態は大きく「個人企業」と「法人企業」に分かれます。法人企業は株式会社など会社法上の形態をとるほか、さまざまな法人格に分類可能である点は事実に合致します。
③【誤】
1980年代の特殊法人改革は、確かに一部の事業が民営化されたものの、郵政事業が民営化されたのは2000年代(小泉政権下)であり、1980年代ではありません。
④【誤】
2001年の中央省庁再編では、一部の業務を切り離して独立行政法人とする仕組みが導入されました。公益法人制度の抜本的改革はその後の流れであり、「公益法人」というよりは「独立行政法人」創設が本質です。したがって、この記述は正確ではありません。
問24:正解3
<問題要旨>
下線部(サ)に関連し、日本の労働法制全般に関する知識を確認する問題です。製造業派遣の原則禁止、みなし労働時間制(いわゆる裁量労働制など)の内容、団体交渉と労働協約の意味、国家公務員の争議権などが焦点となっています。
<選択肢>
①【誤】
製造業分野への労働者派遣は、現行の労働者派遣法で一定の規制がありますが、「原則として禁止」ではなく、期間制限などの規定を設けたうえで認められています。完全に禁止されているわけではありません。
②【誤】
「みなし労働時間制」の一種には「事業場外みなし労働時間制」などがあり、労働者が実際に働いた時間ではなく、一定時間分働いたとみなす制度です。これを「クオータ制(割当制)」とは呼びません。クオータ制は別の概念(女性登用率などの割当)として使われることがあります。
③【正】
労働組合と使用者が、団体交渉などによって締結する協定は「労働協約」と呼ばれます。賃金・労働時間・その他労働条件について、団体交渉によって合意し、法的拘束力を持つ協約とする仕組みは労働法上認められています。
④【誤】
国家公務員には争議行為(ストライキ等)が原則として禁止されています。地方公務員でも一部の職員(教員など)は争議権が制限されるため、記述は誤りです。
問25:正解2
<問題要旨>
下線部(キ)に関連して、日本の人口問題や社会構造の変化を表す用語に関する問題です。人口ピラミッドの種類や、ローマクラブの「成長の限界」、限界集落などの概念を正しく区別しているかが試されます。設問は「適当でないもの」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【正】
ローマクラブの報告書『成長の限界』(1972年)は、人口増加や資源枯渇によって将来の経済成長が限界に達する危険を警告した文書として知られています。この記述は概ね正しいです。
②【誤】
出生率・死亡率が共に高く、多産多死型の人口構成を示すピラミッドは「釣鐘型」や「多産多死型」とは呼びにくく、むしろ急激に減少する型を「つぼ型」とするなど分類があります。選択肢にある「多産多死で年齢別人口構成がつぼ型」というのは、典型的には一致しません(多産多死型はピラミッド型が広く低層を占めることが多い)。よってこれが「適当でないもの」にあたります。
③【正】
15歳から64歳までの生産年齢人口が、1990年代後半に比べて現在では低下しているというのは日本における高齢化の典型的傾向です。実際、総人口に占める割合は減少してきています。
④【正】
65歳以上の人口が半数以上を占め、社会的コミュニティが維持できなくなる地域を「限界集落」と呼ぶケースが多いです。近年では過疎化と高齢化が重なる地域で用いられています。
問26:正解1
<問題要旨>
下線部(ク)に関連し、各国の社会保障制度に関する歴史的背景や特徴を問う問題です。年金制度改革、ベバリッジ報告、ビスマルクの社会保険制度、アメリカの社会保障法などを正しく理解しているかを確認しています。設問は「適当でないもの」を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【誤】
1986年の日本の年金制度改正によって「国民皆年金」が実現された、という表現は正しくありません。国民皆年金の仕組みは1961年に国民年金が創設されたことによって基本的に実現されており、1986年改正では厚生年金保険法や国民年金法の一部改正があったが、「皆年金の実現」と直接的に結びつけるのは誤りです(=本問における「適当でないもの」)。
②【正】
イギリスでは第二次世界大戦中のベバリッジ報告(1942年)に基づき、戦後の社会保障制度が拡充されました。これは事実として広く知られています。
③【正】
ドイツでは19世紀末、ビスマルクの主導により社会保険制度が整備されたことが近代社会保障の源流とされています。医療保険・疾病保険なども当時に創設されたものです。
④【正】
アメリカにおける1930年代のニューディール政策の一環として、1935年に社会保障法(Social Security Act)が制定されました。失業保険や年金制度などが導入され、社会保障の枠組みを整備したことは歴史的事実です。
第5問
問27:正解1
<問題要旨>
下線部(ア)に関連して、日本の国家財政および地方財政に関わる基本的知識を問う問題です。国の歳出に占める国債費や国税収入の直間比率、地方公共団体の財源構成、三位一体改革による国庫支出金の変化などが主な論点となっています。
<選択肢>
①【正】
「歳出において国債費が占める割合が高くなると、財政の硬直化につながる」というのは一般に指摘される通りです。国債償還や利払への支出が増えるほど、他の政策的経費に充当できる財源が圧迫されるので、この記述は妥当です。
②【誤】
国税収入においては、消費税など間接税もありますが、日本は今でも所得税や法人税などの直接税の比率が比較的高い国だとされます。直間比率は間接税のほうが大きいわけではありません。
③【誤】
地方公共団体の財源は、「自主財源(地方税など)」「依存財源(地方交付税交付金、国庫支出金など)」に大別されますが、自主財源において最も大きなウェイトを占めるのは地方税です。地方債(地方公共団体の借金)は依存財源と見なされる場合もあり、「自主財源の最大部分が地方債」とは言えません。
④【誤】
三位一体改革によっては、地方への税源移譲の拡大や国庫補助負担金の縮減などが図られました。国庫支出金(国から地方へ特定の目的で支出される補助金)はむしろ削減の方向で進められたので、「増加が挙げられる」というのは誤りです。
問28:正解3
<問題要旨>
下線部(イ)に関連し、「経済の動向に影響を及ぼす様々な要因」をめぐる代表的な経済学者の主張を整理する問題です。
- ア:新しいものや仕組みが既存のものを破壊・代替して発展をもたらす「創造的破壊」
- イ:政府が積極的に経済に介入し、景気や雇用を安定化させる
- ウ:利己心に基づく人間の行動が市場の「見えざる手」を通じて社会全体の利益を増大させる
これらの主張をケインズ(A)・シュンペーター(B)・アダム・スミス(C)の理論と正しく対応付ける必要があります。
<選択肢>
①【誤】 ア=A(ケインズ)、イ=B(シュンペーター)、ウ=C(アダム・スミス) となっており、アに政府介入のケインズを対応させるなら「積極介入」のイが来るべきですが、記述上アが「創造的破壊」になってしまうので対応がズレています。
②【誤】 ア=A(ケインズ)、イ=C(アダム・スミス)、ウ=B(シュンペーター) となっていますが、アダム・スミスは自由放任と見えざる手を説き、シュンペーターは創造的破壊を説いたため、記述とずれています。
③【正】 ア=B(シュンペーター)の「創造的破壊」、イ=A(ケインズ)の「政府介入」、ウ=C(アダム・スミス)の「見えざる手」。この組合せがもっとも整合的です。
④【誤】 ア=B(シュンペーター)、イ=C(アダム・スミス)、ウ=A(ケインズ) となっており、イとウがそれぞれ逆転しているため不適切です。
⑤【誤】 ア=C(アダム・スミス)、イ=A(ケインズ)、ウ=B(シュンペーター) も同様にミスマッチがあります。
⑥【誤】 ア=C(アダム・スミス)、イ=B(シュンペーター)、ウ=A(ケインズ) も当該の理論対応と合致しません。
問29:正解2
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連し、「経済循環」や「フローとストック」「GDPの計算における範囲」「三面等価の原則」など、基礎的なマクロ経済概念を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
生産活動を行う際に必要な「生産要素」は「土地(資源)」「労働力」「資本」とするのが一般的な三要素です。選択肢では「資本・土地(資源)・貨幣」としていますが、本来は「労働」が含まれるはずで、貨幣は生産要素とは見なされません。
②【正】
フローとは一定期間内に生産・消費などで新たに生み出された経済量を指します。一方、ストックはある時点で存在する資産や負債の蓄積量です。したがって「ある一定期間に行われた経済活動の生産量=フロー」という説明は妥当です。
③【誤】
家庭内での家事労働など無償労働は、通常GDPには含まれません。市場で取引される財・サービスの生産を測定対象とするためです。したがって「無償労働がGDPに計上される」というのは誤りです。
④【誤】
三面等価の原則は「生産・分配・支出」の三面がGDPなどの集計では等しくなるという考え方であり、「国民所得の金額が生産面・分配面・投資面で等しくなる」という表現は微妙に用語がズレています。投資面だけでなく「支出面」と表現するのが正確です。
問30:正解4
<問題要旨>
下線部(に)に関連し、株式会社の基本構造や株主・出資者との関係、中小企業の従業員数、ベンチャー企業などに関する知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
株式会社が株式を発行して出資を募る際、その資金は「自己資本」と呼ぶのが通例です。一般的に「他人資本」は銀行借入や社債などを指すため、この記述は誤りです。
②【誤】
株式会社が出資者たる株主に対して配当するのは、会社の利益の一部です。これは「利益処分としての配当」であり、「分け前を先に支払う」性質ではありません(配当は決算後に確定する)。「利子」とは借入金に対して支払うものであって、株主への配当金を利子と呼ぶのも不正確です。
③【誤】
中小企業庁の資料などによると、中小企業の従業員数総計は日本全体の雇用の約7割~8割強を占めるとされますが、99%というのは企業数ベース(事業所数)の割合が近い数字です。「従業員数の合計が99%」ではなく、「企業数ベースで約99%が中小企業」という表現が正しいため、この記述は誤りです。
④【正】
高度な専門性や独自の技術力をもとに新分野の市場開拓へ挑戦する企業を日本では「ベンチャー企業」と呼ぶのが一般的であり、事実に即しています。
問31:正解3
<問題要旨>
下線部(㊀)に関連し、RESAS(地域経済分析システム)を活用して作られた図表を読み取る問題です。人口別の支出指標(老人福祉費・児童福祉費・教育費・商工費・土木費)を比較し、A市、B市、C市の人口規模との関連を見抜いて、どのように歳出額の指標が変動しているかを把握することが求められています。
<選択肢>
①【誤】
「五つの項目のうち、指数が全国平均の2分の1を下回っている都市が最も多い項目は『15~64歳人口1人あたり商工費』である」という主張ですが、問題文からはそうとも限らない数値状況が示されています。
②【誤】
「15歳未満人口1人あたり児童福祉費」について、A市とC市が全国平均を大きく超過しているかどうかは、グラフを見ると明確ではありません。記述全体が根拠薄弱です。
③【正】
「総人口1人あたり土木費の指数は、人口が多い順に大きくなり、『15~64歳人口1人あたり商工費』の指数は、人口の少ない順に大きくなっている」というのは、図を見るとA市(最大都市)が土木費で高い値を示し、C市(最も人口が少ない)で商工費が高めに出ている様子に合致します。
④【誤】
「65歳以上人口1人あたり老人福祉費」と「15歳未満人口1人あたり教育費」は、必ずしも「人口が少ない都市ほど歳出が大きくなる」とは一概に言えません。グラフ上の分布を見ると、各都市の人口規模ごとに複雑な傾向があり、このように断定するのは正しくありません。
第6問
問32:正解4
<問題要旨>
下線部(ア)に関連して、EU(欧州連合)の統合過程や加盟国、通貨統合(ユーロ導入)、対外的な政策(共通外交・安全保障政策)、日本との経済連携協定(EPA)の動向などを確認する問題です。
<選択肢>
①【誤】
共通通貨ユーロの導入は主にマーストリヒト条約(1992年)等に基づいて準備が進められ、1999年にユーロが金融市場に導入されました。「リスボン条約(2009年)」によるもの、という説明は正確ではありません。
②【誤】
中東欧の旧社会主義国(ポーランド、チェコ、ハンガリーなど)はすでにEUに加盟しています。「加入していない」という表現は誤りです。
③【誤】
EUでは共通の外交・安全保障政策(CFSP: Common Foreign and Security Policy)を導入しています。統合の一環として安全保障面でも一定の協調を図っており、「導入していない」とは言えません。
④【正】
2017年、EUと日本の間で経済連携協定(EPA)の交渉が妥結し、その後に締結・発効へと進んでいます。この年に合意が実質的に整い、協定が結ばれたのは事実です。
問33:正解2
<問題要旨>
下線部(イ)に関連して、選挙制度や選挙原則に関する問題です。「小選挙区制」の仕組み、「比例代表制度」の特徴、「平等選挙」「秘密選挙」などの用語を正しく理解しているかを確認します。
<選択肢>
①【誤】
小選挙区制は「1選挙区から1名を選出」するのが基本であり、「2名以上を選出する制度」は中選挙区制や大選挙区制に近い考え方です。よって誤りです。
②【正】
比例代表制度は政党が獲得した票数に応じて議席を配分する方式です。「得票数に応じて議席が決まる」という説明は正しいです。
③【誤】
「有権者が候補者を直接選出しなければならない」というのは「平等選挙」ではなく、多くの場合「直接選挙」に関する説明です。平等選挙は一人一票の価値が平等であることを意味します。
④【誤】
「投票内容を他人に知られずに投票できる」ことを保障するのは「秘密選挙」の原則です。これを「普通選挙の原則」とするのは誤用です。
問34:正解1
<問題要旨>
下線部(ウ)に関連して、イギリスやアメリカなど主要国の政治制度の基本を問う問題です。イギリスにおける議院内閣制の慣例、内閣の議会への責任、アメリカ大統領の議席保有や法案提出権などが正しく把握されているかが試されています。
<選択肢>
①【正】
イギリスの慣例として、野党第一党が「影の内閣(シャドー・キャビネット)」を組織することが通例です。これにより野党は政権担当能力をアピールし、政府をチェックします。
②【誤】
イギリスは議院内閣制をとっており、内閣が議会の信任を必要とする仕組みです(議会が内閣に対して不信任を決議すれば、内閣は総辞職か議会解散を選択せざるを得ません)。
③【誤】
アメリカの大統領は行政府の長であり、議会(連邦議会)のメンバーではありません。大統領が議会に議席を持つことは認められていません。
④【誤】
アメリカ大統領には法案提出権(議会への直接的な立法権)はありません。議会を通じて議員に法案を提出してもらうことは可能ですが、大統領自身が法案を正式に提出する制度はなく、拒否権(署名拒否権)などとは異なります。
問35:正解8
<問題要旨>
下線部(エ)に関連して、歴史上重要な「宣言」や「憲法」における主張を比較する問題です。イギリスの権利章典(1689年)、アメリカ独立宣言(1776年)、フランス人権宣言(1789年)、ワイマール憲法(1919年)などに書かれた内容を見極める必要があります。
ア:「経済生活の秩序は、すべての者に人間たるに値する生活を保障する目的をもつ…」
イ:「人の自然権は、自由、所有権、安全および圧制への抵抗である」
ウ:「国王といえども法に従わなければならない…『法の支配』を明文化」
この三つを、A(イギリス権利章典 1689)、B(アメリカ独立宣言 1776)、C(フランス人権宣言 1789)、D(ワイマール憲法 1919)と対応させます。
<選択肢>
①~⑦【誤】
いずれも対応がずれているか不正確です。
⑧【正】
ア=D(ワイマール憲法):社会権的内容として「人間たるに値する生活を保障するための経済秩序」を定めたことで知られています。
イ=C(フランス人権宣言):自由・所有権・安全・圧制への抵抗を自然権とし、1789年に革命政府が宣言したもの。
ウ=A(イギリスの権利章典):1689年、国王といえども法を無視できないとする議会主権の原則を明文化した文書です。
よって「ア=D、イ=C、ウ=A」の組合せは選択肢⑧が正しいです。
問36:正解5
<問題要旨>
下線部(オ)に関連して、政治思想家の主張を比較する問題です。ア・イ・ウそれぞれが「市民の抵抗権」「地方自治は民主主義の学校」「社会契約と一般意志」といった論点を語っており、それをブライス(A)・ルソー(B)・ロック(C)とどのように対応づけるかが問われています。
ア:「政府が社会契約に違反した場合、市民は抵抗権(革命権)を用いて新たな政府を作ることができると主張した」
イ:「地方自治は民主主義の学校であると主張した」
ウ:「人々は社会契約を結び、一般意志(意見)に基づいた政治を行うべきと主張した」
<選択肢>
①~④【誤】
対応が正しくない組合せです。
⑤【正】
ア=C(ロック):社会契約を根拠にし、政府が権利を侵害した場合に市民が抵抗権を行使できると説いた。
イ=A(ブライス):地方自治を「民主主義の最良の学校」と評し、その重要性を強調した。
ウ=B(ルソー):一般意志を重視し、人々が主権者として政治を行うべきだと説いた。
この組合せが最も正しく合致します。
⑥【誤】
いずれも上記以外の組合せであり、誤りになります。