解答
解説
第1問
問1:正解①
<問題要旨>
地方自治体の組織と運営に関する基本的な知識を問う問題です。首長と議会の関係(二元代表制)、被選挙権の年齢要件、直接請求の種類と手続きについて理解しているかがポイントです。
<選択肢>
①【正】
地方自治では、住民が首長(知事や市町村長)と議会議員をそれぞれ直接選挙で選びます 。この二つの機関が互いに抑制・均衡の関係に立ちながら自治を運営する仕組みを二元代表制と呼びます 。したがって、記述は正しいです。
②【誤】
地方自治体の議会の議員の被選挙権は、満25歳以上です 。満18歳以上は選挙権(投票する権利)の年齢要件です。
③【誤】
副知事・副市町村長の解職の直接請求は、リコール(解職請求)と呼ばれる住民の権利の一つです 。イニシアティブ(住民発案)は、一般に条例の制定・改廃を請求する権利を指します。
④【誤】
副知事・副市町村長の解職を直接請求する場合、その請求先(署名簿の提出先)は選挙管理委員会です 。この記述自体は正しいですが、設問は「最も適当なもの」を選ばせるものであり、①が二元代表制の定義として最も明確かつ基本的な正解であるため、①が正解となります。(※注:この選択肢の記述内容は手続き上正しいですが、①が地方自治の根幹をなす制度の定義として最も適当です。)
問2:正解④
<問題要旨>
日本の公務員に関連する法制度についての正誤を判断する問題です。ア(人事制度)、イ(労働基本権)、ウ(国家賠償請求権)の3つの記述の組み合わせを選びます。
<選択肢>
ア【誤】
一般職の国家公務員の幹部人事を一元管理しているのは、内閣に設置された「内閣人事局」です 。人事院は、公務員試験の実施、給与に関する勧告(人事院勧告)、不利益処分の審査などを行う中立的な第三者機関です。
イ【正】
公務員は「全体の奉仕者」(憲法第15条)という立場であり、その職務の公共性にかんがみ、労働基本権(団結権、団体交渉権、争議権)の一部が制約されています。特に争議行為(ストライキなど)は、国家公務員法や地方公務員法により禁止されています 。
ウ【正】
日本国憲法第17条は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」と定めています 。これは国家賠償請求権を保障する規定です。
以上のことから、正しいのはイとウです。したがって、その組合せである④が正解です 。
問3:正解③
<問題要旨>
参議院比例代表区で用いられる非拘束名簿式とドント式(および、比較対象としての奇数で割る方式)について、具体的な数値例を用いて当選者を正しく計算できるかを問う問題です。
<選択肢>
まず、各党の総得票数(政党名得票+個人名得票)を計算します 。 ・0党:10万 + (65万 + 5万) = 80万票 ・P党:20万 + (13万 + 8万) = 41万票 ・Q党:30万 + (5万 + 4万) = 39万票
【カ、キの計算(ドント式)】
ドント式(総得票数を1, 2, 3…で割る)で、定数3を配分します 。
0党 ÷ 1 = 80万(1議席目:0党)
P党 ÷ 1 = 41万(2議席目:P党)
0党 ÷ 2 = 40万(3議席目:0党) 結果:0党が2議席、P党が1議席。 非拘束名簿式のため、各党内で個人名得票の多い順に当選者が決まります 。 ・0党(2議席):R候補 (65万)、U候補 (5万) → R候補、U候補 が当選。 ・P党(1議席):S候補 (13万)、V候補 (8万) → S候補 が当選。 当選者は、R候補、S候補、U候補です。 「当選者は、R候補、 カ 、 キ である」 とあるため、カとキはS候補とU候補のいずれかです。 「気付いたこと(1)」 で「落選したV候補(8万票)は当選した カ (U候補・5万票) よりも多くの票を得ている」という文脈が成り立つため、カ=U候補 です 。 よって、キ=S候補 となります。
【クの計算(奇数割)】
総得票数を奇数(1, 3, 5…)で割る方式で、定数3を配分します 。
0党 ÷ 1 = 80万(1議席目:0党)
P党 ÷ 1 = 41万(2議席目:P党)
Q党 ÷ 1 = 39万(3議席目:Q党) 結果:0党、P党、Q党が各1議席。 個人名得票の多い順に当選者が決まります 。 ・0党(1議席):R候補 (65万) が当選。 ・P党(1議席):S候補 (13万) が当選。 ・Q党(1議席):T候補 (5万) が当選。 当選者は、R候補、S候補、T候補です。 「当選者は R候補、 キ 、 ク となる」 とあり、上で キ=S候補 と確定しているので、ク=T候補 となります。
【まとめ】
カ=U候補、キ=S候補、ク=T候補 この組合せである③が正解です 。
問4:正解⑤
<問題要旨>
国政選挙における「一票の格差」を縮小(是正)するために採られ得る対応を選ぶ問題です。サ、シ、スの3つの記述の正誤を判断します。
<選択肢>
サ【正】
議員定数1人あたりの人口が少ない選挙区(一票の価値が重い選挙区)を合区し、定数を合区前の合計より減らすこと(例:鳥取・島根の合区)は、議員1人あたりの人口を増やし、他選挙区との格差を縮める(価値を軽くする)対応です 。
シ【誤】
人口に関わらず各都道府県に議席を配分する方法は 、人口の少ない都道府県の「一票の価値」を重くすることになり、人口比例の原則から外れ、格差を拡大させる要因となります。
ス【誤】
議員定数1人あたりの人口が少ない選挙区(一票の価値が重い選挙区)の議員定数を「増やす」と 、議員1人あたりの人口はさらに少なくなり、一票の価値はさらに重くなって格差が拡大します。格差是正には、このような選挙区の定数を「減らす」必要があります。
したがって、正しいのはサのみです。よって、⑤が正解です 。
問5:正解④
<問題要旨>
国連PKOの予算分担率(表1)と人員派遣数(表2)に関する二つの表から読み取れる内容として、最も適当なものを選ぶ問題です。
<選択肢>
①【誤】
表1 より、2019年のPKO予算分担率上位5か国(米、中、日、独、英)の分担率を合計します。 27.9% + 15.2% + 8.6% + 6.1% + 5.8% = 63.6% これは80%以上ではありません 。
②【誤】
国際連合安全保障理事会の常任理事国(米、中、英、仏、露)の分担率を表1 から合計します。 アメリカ(27.9%) + 中国(15.2%) + イギリス(5.8%) + フランス(5.6%) + ロシア(3.0%) = 57.5% これは70%以上ではありません 。
③【誤】
表1(2019年 予算分担率) と 表2(2020年 人員派遣数) を比較すると、中国が予算で2位、人員で10位と、両方で上位10か国に入っています。したがって、記述は誤りです 。
④【正】
表2 を確認します。 1990年11月末時点:上位10か国(計8,675人)のうち、アジア・アフリカ以外の国(カナダ、フィンランド、オーストリア、ノルウェー、アイルランド、イギリス、スウェーデン)の合計は6,213人です。これは全派遣数(10,304人)の半数(5,152人)を超えています。 2020年3月末時点:上位10か国(計46,322人)はすべてアジア・アフリカの国です。これは全派遣数(82,670人)の半数(41,335人)を超えています。 したがって、記述は正しいです 。
問6:正解②
<問題要旨>
南北問題やODA(政府開発援助)の歴史と内容に関する知識を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
新国際経済秩序(NIEO)樹立宣言が採択されたのは、1974年の国連資源特別総会です 。国連環境開発会議(地球サミット)は1992年に開催されました。
②【正】
1970年代、インフラ整備中心の援助が貧困層の生活改善に直結しないとの反省から、衣食住、保健、教育など、人間が生存する上で最低限必要な「人間の基本的ニーズ(BHN: Basic Human Needs)」の充足を重視する援助が提唱されるようになりました 。
③【誤】
日本のODA供与額(支出総額ベース)は、1990年代の多く(1991年~2000年)で世界第1位でした 。最高順位は2位ではありません。
④【誤】
開発援助委員会(DAC)は、OECD(経済協力開発機構)の下部機関です 。国際通貨基金(IMF)は、国際金融と為替相場の安定を目的とする機関です。
問7:正解③
<問題要旨>
企業、NGO、ボランティア団体など、政府以外のアクターによる開発協力や社会貢献活動に関する用語の知識を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
コンプライアンスは「法令遵守」を意味します 。慈善的な寄付活動は「フィランソロピー」や「CSR(企業の社会的責任)」の一環と呼ばれます。
②【誤】
開発途上国の産品を適正・公正な価格で買い取り販売する取組みは「フェアトレード(公正貿易)」です 。マイクロクレジットは、貧困層向けの無担保小口融資制度です。
③【正】
特定非営利活動促進法(NPO法、1998年施行)は、ボランティア団体などの公益的な活動を行う民間非営利団体が、簡易な手続きで法人格を取得できるようにした法律です 。
④【誤】
専門家の派遣事業は、知識や技術を伝える「技術協力」に分類されます 。有償資金協力(円借款)は、インフラ整備などのために低利・長期の条件で資金を貸し付けるものです。
問8:正解②
<問題要旨>
社会と人間の関わりに関する思想家(アリストテレス、佐久間象山)の記述について、正誤を判断する問題です。
<選択肢>
X【正】
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、人間は他者との共同生活(ポリス)の中で初めてその本性を完成させることができる存在であると考え、人間を「本性的にポリス的動物(社会的動物)」であると表現しました 。
Y【誤】
佐久間象山は幕末の思想家で、「東洋の道徳、西洋の芸術(技術)」という「和魂洋才」の先駆けとなる思想を唱えました 。儒教の「孝」を重視しましたが、それを「宇宙万物の根本原理」と捉えたという記述は、朱子学の「理」の概念と混同させるものであり、佐久間象山の主要な主張として適当ではありません。
したがって、Xは正、Yは誤です。よって、②が正解です 。
第2問
問1:正解①
<問題要旨>
下線部「科学的なものの見方や考え方、課題探究の方法」 に関連して、研究や議論で用いられる様々な手法の定義を問う問題です。
<選択肢>
①【正】
帰納法は、調査や観察から得られた個々の具体的な事実(事例)を集め、それらに共通する一般的な法則や原理を見つけ出す思考方法です 。記述は帰納法の正しい定義です。
②【誤】
演繹法は、一般的な原理や法則(大前提)から、個々の具体的な結論を導き出す思考方法です 。記述の「二つの対立する考え方から、より発展した考え方によって一つにまとめていく方法」は、ヘーゲルの弁証法(止揚)の説明に近いです。
③【誤】
ブレインストーミングは、集団でアイデアを自由奔放に出し合う集団発想法です 。記述の「現地に出掛けて情報を収集する方法」は、フィールドワーク(実地調査)の説明です。
④【誤】
ロールプレイは、特定の役割を演じることで、その立場を体験的に学習する方法(役割演技法)です 。記述の「肯定側と否定側に分かれて討議する方法」は、ディベート(討論)の説明です。
問2:正解⑧
<問題要旨>
心理学者マーシャによるアイデンティティ・ステイタス(A:達成, B:モラトリアム, C:早期完了)の分類 と、具体的な青年の事例(ア~エ) を正しく対応させる問題です。
<選択肢>
・A アイデンティティ達成:「危機」(悩みや思索)を経験し、現在は「関与」(積極的な行動)をしている状態 。 ・B モラトリアム:「危機」の最中であり、「関与」は曖昧である状態 。 ・C 早期完了:「危機」を経験せず(親の意見などに疑問を持たず)、そのまま「関与」している状態 。
事例の分析:
ア:親の言う通りバレエダンサーを目指し、疑問を感じたことがない(=「危機」未経験)。毎日練習に励んでいる(=「関与」あり) 。→ C 早期完了
イ:将来のことはその時に考えればよいと、今を楽しんでいる(=「関与」なし) 。→ D アイデンティティ拡散(設問対象外)
ウ:進路に悩んだ(=「危機」経験あり)。地域活性化事業に取り組み、大学でも研究している(=「関与」あり) 。→ A アイデンティティ達成
エ:将来について真剣に悩んでいる(=「危機」の最中)。色々試しているがまだ分からない(=「関与」曖昧) 。→ B モラトリアム
したがって、Aーウ、Bーエ、Cーア の組合せが正しいです。 この組合せは ⑧ です 。
問3:正解③
<問題要旨>
下線部「自分を守る心の働き」 、すなわちフロイトなどが提唱した「防衛機制」の例として適当でないものを選ぶ問題です。防衛機制は、不安や緊張から無意識的に自己を守ろうとする心理的な働きです。
<選択肢>
①【適当である】
自分の「頑固さ」を認めず、相手(先輩)が「頑固だ」と非難しています 。これは、自分が受け入れがたい感情や欲求を他人が持っているかのように思う「投射(投影)」という防衛機制です。
②【適当である】
失恋の満たされない気持ち(衝動)を、社会的に価値のある楽曲制作に振り向けています 。これは「昇華」という防衛機制です。
③【適当でない】
成績が伸びない原因(勉強方法)を考え、先生に相談してやり方を変えています 。これは、問題に意識的・合理的に向き合い解決しようとする「適応機制」の一種(合理的解決)であり、無意識的な心の働きである「防衛機制」とは区別されます。
④【適当である】
「腹を立てている」という本心とは裏腹に、「過度に親切」という正反対の行動をとっています 。これは、受け入れがたい衝動と正反対の行動をとる「反動形成」という防衛機制です。
問4:正解④
<問題要旨>
下線部「企業における働き方等」 に関連して、企業に関する基本的な用語や制度についての知識を問う問題です。
<選択肢>
①【誤】
M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の「合併と買収」を意味します 。研究・開発は R&D(Research and Development)と呼ばれます。
②【誤】
カルテル(企業連合)は、同業種の企業同士が価格や生産量などを協定で結ぶことです 。同業種の複数企業が合併する企業合同は「トラスト」と呼ばれます。
③【誤】
中小企業基本法では、中小企業を「資本金の額」と「従業員の数」(業種ごとに規定)に基づいて定義しています 。自己資本比率は企業の財務の健全性を示す指標です。
④【正】
特定の地域において、その地域の資源や技術、労働力を活用し、発展・定着してきた産業を「地場産業」と呼びます 。これらは多くの場合、地元の中小企業によって支えられています。
問5:正解⑥
<問題要旨>
下線部「成年になると法的にも未成年者と異なる取扱いを受け」 に関連して、日本の若年者に関する法制度(少年法、民法、国民年金法)についての正誤を判断する問題です。
<選択肢>
ア【誤】
少年法で定められている「少年」とは、20歳未満の者を指します 。2022年4月の民法改正(成年年齢18歳)に伴う少年法改正で、18歳・19歳は「特定少年」とされましたが、「少年」の定義は20歳未満のままです。
イ【正】
民法改正により、2022年4月1日から成年年齢は満20歳から満18歳に引き下げられました 。
ウ【誤】
国民年金(基礎年金)への加入が義務づけられる(第1号被保険者となる)年齢は、日本国内に住む「満20歳から満60歳まで」の者です 。
したがって、正しいのはイのみです。よって、⑥が正解です 。
第3問
問1:正解②
<問題要旨>
日本のバブル経済の発生から崩壊、およびその後の処理に至るまでの出来事(ア~オ)を、年代順に正しく並べ替える問題です。
<選択肢>
各出来事を時系列に沿って分析します。
ウ:1985年のプラザ合意による急激な円高と、それによる円高不況が発生しました 。
イ:この不況対策として、日銀が低金利政策を実施(1986年~)し、市場に資金があふれ、株式や不動産に流入し始めました 。
オ:株価や地価が実体経済以上に高騰し(バブル発生・膨張期、1980年代後半)、資産効果で消費も活発化しました(バブル景気) 。
エ:1989年末に株価が最高値を付けた後、日銀による金融引締め(1989年半ば~)などを受け、1990年明けから株価が急落しました(バブル崩壊) 。
ア:バブル崩壊により、不動産価格が下落し、土地担保融資が回収不能(不良債権)となり、金融機関の経営を圧迫しました(1990年代) 。
したがって、時系列は ウ → イ → オ → エ → ア となります。 この順序に一致するのは、②です 。
問2:正解③
<問題要旨>
金融機関の不良債権の分類(メモ)を読み、提示された「事例」がどの分類に当てはまるかを判断する問題です。
<選択肢>
メモの分類を整理します 。
I. 破産更生債権:経営破綻(破産手続など)
II. 危険債権:実質破綻(長期延滞などで回収不能見込み)
III. 要管理債権:「3か月以上延滞」または「救済措置(金利減免、返済繰延べ=リスケジュールなど)」事例 を分析します。
・「延滞はしていない」→ II や III の「3か月以上延滞」には該当しない。
・「銀行がリスケジューリング(リスケジュール)を行った」→ III の「債務返済の繰延べなどの、“救済措置”が与えられた」 に該当します。
したがって、この事例は③「要管理債権」に当てはまります 。
問3:正解①
<問題要旨>
信用創造のプロセスを図と説明文で示し、預金準備率と融資額の関係を計算する問題です。
ア(預金準備率)、イ(融資額)、ウ(預金増加額)の3つの数値を求めます。
<選択肢>
【アの計算】
D社がA銀行に1000万円預金 。A銀行は準備金として300万円を中央銀行に預けました 。 「必要最低限度の準備金を中央銀行に預け」る とあるため、 預金準備率(ア)= 準備金 300万 / 預金 1000万 = 0.3 よって、ア = 30 (%)
【イの計算】
A銀行は残りの700万円をE社に融資し 、E社はそれをB銀行に預金しました 。 B銀行は、預金700万円に対し、ア=30% の準備金を預けます。 準備金(X)= 700万 × 30% = 210万円。 残りをF社に融資(イ)します 。 融資額(イ)= 700万 - 210万 = 490万円。 よって、イ = 490
【ウの計算】
「預金(支払い)準備率が40%の場合」 の計算です。
D社がA銀行に1000万預金。 A銀行の融資額 = 1000万 × (1 – 40%) = 600万円。(E社へ融資)
E社がB銀行に600万預金。 B銀行の融資額 = 600万 × (1 – 40%) = 360万円。(F社へ融資)
F社がC銀行に360万預金。 「三つの銀行が受け入れた預金の増加額」 は、 A銀行 (1000万) + B銀行 (600万) + C銀行 (360万) = 1960万円。 よって、ウ = 1960
【まとめ】
ア=30、イ=490、ウ=1960 この組合せである①が正解です 。
問4:正解③
<問題要旨>
貨幣が持つ4つの機能(価値尺度、交換手段、支払い手段、価値貯蔵手段) のうち、「価値貯蔵(保蔵)手段」として用いられた事例を選ぶ問題です。
<選択肢>
①【交換(流通)手段】
タオルを貨幣に換え、その貨幣で傘を買っています。貨幣が商品交換の仲立ちをしており、「交換(流通)手段」の機能を示しています 。
②【価値尺度】
土地、建物、宝石など、異なるものの価値を「日本円」という共通の単位で測っています。これは「価値尺度」の機能を示しています 。
③【価値貯蔵(保蔵)手段】
腐敗しやすいナスを、価値が変動しにくい貨幣(預金)に換えて、価値を保存しています。これは「価値貯蔵(保蔵)手段」の機能を示しています 。
④【支払い手段】
原材料の仕入れ(債務の発生)と、その対価の支払い(債務の返済)が時間的にずれており、後日、手形(貨幣)で決済しています。これは「支払い手段」の機能を示しています 。
問5:正解①
<問題要旨>
男女雇用機会均等法(現行法)の内容に関する3つの記述(ア、イ、ウ)の正誤を判断する問題です。
<選択肢>
ア【正】
男女雇用機会均等法(第11条)は、事業主に対して、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するために必要な措置(相談体制の整備など)を講じることを義務づけています 。
イ【正】
男女雇用機会均等法(第29条)は、同法に違反する措置について、厚生労働大臣が勧告し、事業主が勧告に従わない場合には、企業名を公表できると規定しています 。
ウ【正】
男女雇用機会均等法(第9条)は、事業主に対して、女性労働者の妊娠・出産などを理由とする解雇や、その他の不利益な取扱いを禁止しています 。
したがって、ア、イ、ウはすべて正しいです。よって、①が正解です 。
問6:正解②
<問題要旨>
性別・年齢階級別労働力率のグラフ から、「2019年の女性」のデータを示す折れ線を選ぶ問題です。
<選択肢>
・A(破線・四角):20代から60代前半まで95%前後で推移しており、最も高い労働力率です。これは「2019年の男性」のグラフです 。
・D(実線・丸):30代で著しく落ち込む、谷の深い「M字カーブ」を描いています。これは最も年代の古い「1979年の女性」と判断できます 。
・C(破線・バツ):Dと同様にM字カーブですが、Dよりも谷が浅くなっています。これは「1999年の女性」と判断できます 。
・B(点線・ひし形):CよりもさらにM字の谷が浅くなり、台形に近づいています。近年の女性の就労継続が進んだ結果であり、これが「2019年の女性」のグラフです 。
したがって、②のBが正解です 。
第4問
問1:正解②
<問題要旨>
多様性(ダイバーシティ)を尊重し、「それぞれの個性や能力を承認し、一人一人の活躍を促すための取組み」 として適当でないものを選ぶ問題です。
<選択肢>
①【適当である】
女性管理職比率の数値目標(ポジティブ・アクション)は、性別による格差を是正し、女性の活躍を促す取組みです 。
②【適当でない】
財務情報の公開(ディスクロージャー)は、企業の透明性を高め、投資家保護や資金調達を目的とするものであり 、直接的に従業員や市民の多様な個性・能力の承認や活躍を促す施策(ダイバーシティ施策)とは目的が異なります。
③【適当である】
障害の有無にかかわらず、すべての人がともに楽しめるスポーツ大会を企画することは、障害者の個性や能力を承認し、活躍の場を促す取組みです 。
④【適当である】
同性パートナーシップ制度の導入により、同性カップルが直面する不利益(例:公営住宅への入居困難)を解消することは、性的マイノリティ(LGBTQ+)の人権を尊重し、活躍を促す(生活基盤を保障する)取組みです 。
問2:正解①
<問題要旨>
「文化の異なる人々との対話や共生のあり方」 に関連する人物や思想についての記述として、最も適当なものを選ぶ問題です。
<選択肢>
①【正】
キング牧師は、アメリカ合衆国において、非暴力による公民権運動を指導し、アフリカ系アメリカ人に対する人種差別の撤廃と、人種間の平等な共生社会を訴えました 。
②【誤】
マララ・ユスフザイは、パキスタンの活動家で、女性の教育を受ける権利を訴えました 。南アフリカのアパルトヘイト撤廃運動を指導したのは、ネルソン・マンデラなどです。
③【誤】
「野生の思考(未開社会の思考)」が西洋的思考と比べて劣っていないことを、構造主義の立場から説明したのは、人類学者のレヴィ=ストロースです 。フーコーは、権力と知の関係などを分析した思想家です。
④【誤】
「対話的理性」や「コミュニケーション的行為」を通じた合意形成を追究したのは、ドイツの哲学者ハーバーマスです 。リースマンは、『孤独な群衆』で現代人の社会的性格を分析した社会学者です。
問3:正解②
<問題要旨> 医療における自己決定権に関連する3つの用語(A: インフォームド・コンセント, B: リプロダクティブ・ヘルス/ライツ, C: リヴィング・ウィル)と、その記述(ア~ウ)を正しく対応させる問題です。
<選択肢> ア:「医師が説明し、患者自身が同意した上で治療を選択すること」 。これは「説明と同意」と訳される A インフォームド・コンセント の定義です。
イ:「将来、意思表明できなくなったときのために、延命治療などに関する意向を文書で表明しておくこと」 。これは「生前の意思」と訳される C リヴィング・ウィル の定義です。
ウ:「性や生殖に関する事柄(産むか産まないかなど)を、自ら決定すること」 。これは B リプロダクティブ・ヘルス/ライツ (性と生殖に関する健康と権利)の定義です。
したがって、Aーア、Bーウ、Cーイ の組合せが正しいです。 この組合せは ② です 。
問4:正解⑦
<問題要旨> ミニレポートの空欄 ア、イ、ウ に入る語句の正しい組合せを選ぶ問題です。
<選択肢> ア:配布プリント の文脈から、「共同体の眠りについた個人」とは、「自由で自律した個人」と対比される存在、すなわち「共通の価値規範に拘束された」個人を指します 。
イ:文化人類学者ベネディクトは、『菊と刀』の中で、欧米の「罪の文化」に対し、日本文化の特質を、他者の目や世間体を気にする「恥の文化」と類型化しました 。
ウ:お正月、節分、クリスマスといった、毎年決まった時期に行われる伝統的な行事は「年中行事」と呼ばれます 。
【まとめ】 ア=共通の価値規範に拘束された イ=恥の文化 ウ=年中行事 この組合せである⑦が正解です 。
問5:正解②
<問題要旨>
情報通信技術の発展と知的財産権(著作権)に関する記述ア・イの正誤を判断する問題です。
<選択肢>
ア【正】
違法にアップロードされた音楽や映像(海賊版)であることを知りながらダウンロードする行為は、私的使用目的であっても著作権侵害(複製権の侵害)にあたります 。
イ【誤】
自分が購入した音楽CDなど(コピーガードが施されていないもの)のデータを、私的使用の目的で(例:自分のスマートフォンに入れるため)コピー(複製)することは、著作権法で認められている「私的複製」の範囲内であり、著作権侵害にはあたりません 。
したがって、アは正、イは誤です。よって、②が正解です 。
問6:正解④
<問題要旨>
日本における個人情報や情報セキュリティに関連する法整備についての記述として、最も適当なものを選ぶ問題です。
<選択肢>
①【誤】
捜査機関が通信内容を取得(傍受)する手続きを定めているのは、「通信傍受法」です 。特定秘密保護法は、国の安全保障に関する重要な情報を保護する法律です。
②【誤】
税と社会保障に関する情報を「個人番号(マイナンバー)」で管理する仕組みは「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)」です 。住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)は、住民票の情報を全国で共有するシステムです。
③【誤】 他人のパスワードを無断で利用してアクセス制限のあるコンピュータにアクセスする行為は、「不正アクセス禁止法」によって禁止されています 。
④【正】
個人情報保護法は、事業者が保有する個人情報について、本人がその開示や利用停止などを求める権利(開示請求権、利用停止請求権など)を定めています 。
第5問
問1:正解③
<問題要旨>
3つの資料(資料1:高齢化率、資料2:合計特殊出生率、資料3:人口移動)を読み解き、会話文中の空欄 X、Y、Z に入る記述の正しい組合せを選ぶ問題です。
<選択肢>
【X、Yの判断】
・X(島根県) :資料1(2015年) で高齢化率は上位(3位)。資料2(2015年) で合計特殊出生率は上位(2位)。→ ア「高齢化率の順位が高く、合計特殊出生率の順位も高い」
・Y(東京都) :資料1(2015年) で高齢化率は下位(下から2位)。資料2(2015年) で合計特殊出生率は下位(最下位)。→ エ「高齢化率の順位が低く、合計特殊出生率の順位も低い」
【Zの判断】
XとYの現象(地方で高齢化と出生率が共に高く、大都市で共に低い)の理由として、資料3 の「2000年代、2010年代」 の動きが根拠とされています。 グラフを見ると、この時期、「東京圏」(実線)は0より上で「転入超過」であり、「地方圏」(太い実線)は0より下で「転出超過」です。 これは、ク「地方圏が転出超過している一方で、東京圏は転入超過になっている」 ことを示しています。 (若い世代が地方圏から東京圏へ移動するため、地方圏は高齢化が進み、東京圏は高齢化率が低く抑えられます。また、若い世代が流出する地方圏では出生率が低下しそうですが、島根の例はむしろ高く、逆に東京は低いという複雑な状況が読み取れます。)
【まとめ】
X=ア、Y=エ、Z=ク この組合せである③が正解です 。
問2:正解⑦
<問題要旨>
社会資本(インフラ)を2つの類型(X:生活向上目的, Y:経済発展目的) に分類する問題です。Xに当てはまるものの組合せを選びます。
<選択肢>
ア:a. 農地への用水路 (→ 農業生産=Y:経済発展)、b. 飲用水の水道 (→ X:生活向上)
イ:a. 貨物輸送の専用道路 (→ 物流=Y:経済発展)、b. 散歩用の遊歩道 (→ X:生活向上)
ウ:a. 憩いのための都市公園 (→ X:生活向上)、b. 工場建設用のインフラ整備地 (→ 工業生産=Y:経済発展)
したがって、X(生活向上目的)に当てはまるのは、アのb、イのb、ウのa です。 この組合せは ⑦ です 。
問3:正解④
<問題要旨>
自治体とNPOの協働手法である A:共催, B:補助, C:委託 の定義と、具体的な事業ア~ウ を正しく対応させる問題です。
<選択肢>
ア:自治体が決定した事業 の運営をNPOが「任された」(実施した)ものです。これは自治体の事業をNPOに依頼する C 委託 に該当します。
イ:自治体の部門とNPOが、実地訓練を「一緒に企画・実施した」 ものです。双方が労力などを出し合い、ともに事業を実施する A 共催 に該当します。
ウ:NPOが「開始した」自主的な事業 に対し、自治体が「運営費用の一部」(資金)を提供したものです。これは B 補助 に該当します。
したがって、Aーイ、Bーウ、Cーア の組合せが正しいです。 この組合せは ④ です 。
問4:正解③
<問題要旨>
農業地域の課題 A(収入安定・拡大) と B(地域環境の保全) に、聞き取った内容(ア~エ) を分類し、正しい組合せを選ぶ問題です。
<選択肢>
内容の分類:
ア:アンテナショップで野菜を販売する 。→ A 収入安定・拡大
イ:農道沿いの草刈りや花植えで、景観を維持する 。→ B 地域環境の保全
ウ:生態系に関心をもつ人と、生物が生息できる場所を整える 。→ B 地域環境の保全
エ:高価格で取引される品種へ転換する 。→ A 収入安定・拡大
【まとめ】 A(収入安定・拡大):ア と エ B(地域環境の保全):イ と ウ この組合せである③が正解です 。
問5:正解②
<問題要旨>
示された観点(地域の人々が主体となり、地域内の資源と地域外の資源を組み合わせて取り組む) に直接基づくと考えられる取組みを、ア~ウからすべて選ぶ問題です。
<選択肢>
ア【該当する】
・主体:町内会のリーダーたち(地域の人々)
・地域内の資源:空き家 ・地域外の資源:政府のモデル事業(カネ)、ICT環境、移j住者(ヒト) → 観点に該当します。
イ【該当する】
・主体:地元NPO(地域の人々) ・地域内の資源:自治体の助成金(カネ)、商店・病院(モノ) ・地域外の資源:県外のデザイナー(ヒト) → 観点に該当します。
ウ【該当しない】
・主体:外国企業 → 「地域の人々」が主体となっていないため、観点に該当しません。
したがって、観点に該当するのは ア と イ です。 この組合せは ② です 。

