2026年度 大学入学共通テスト 本試験「物理基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2026年度 大学入学共通テスト 本試験の「物理基礎」は、満点50点・大問3つ・全13問で、すべて必答です。配点は第1問16点・第2問16点・第3問18点。試験時間は30分で、理科基礎は物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎の4科目から2科目を選び、あわせて60分で解答します。この4科目は1冊の問題冊子にまとめられ、冊子全体で100点満点となるため、物理基礎の解答番号は1ではなく101から始まって114までの14個です。
第1問は小問集合です。氷山にはたらく浮力、導線の抵抗値と抵抗率の単位、ベクレルとシーベルトの違い、運動会の「ウェーブ」を波動とみなす設問——力学・電気・原子・波の4分野から1問ずつという構成で、いずれも公式そのものではなく「公式が何を表しているか」を問いにきています。
第2問は、円形磁石とスマートフォンの磁場センサーで台車の直線運動を調べる実験の考察です。センサーが磁石の真横を通るたびに磁場の強さがピークをつくるので、ピークの時刻の間隔が台車の進み方を、ピークの幅が通過の速さをそれぞれ映します。問2・問3はよく似た4つのグラフから1つを選ぶ形ですが、ピークの間隔だけを見ると選択肢は2つまでしか絞れません。間隔と幅の両方が同じ運動を指しているかを確かめて初めて1つに決まる、この回の山場です。
第3問はA・Bの2つに分かれます。Aは大気圧下での加熱と冷却で、比熱と蒸発熱、そして熱をうばわれる側(銅製容器)の温度降下を2段階に分けて計算します。Bは温度で抵抗値が変わる導体を温度計に使った比熱測定装置で、直列回路の分圧・ジュール熱・熱容量の加算という3つの基本が装置の説明の順にそのまま問われます。A問2は「容器から熱が奪われる」ので容器の熱容量で割るという向きを取り違えないこと、Bは式の形(時間 t を含むか、温度変化 ΔT を含むか)で選択肢が分かれることに注意してください。
第1問 小問集合(浮力・抵抗率の単位・放射線の単位・波の要素)
力学・電気・原子・波の4分野から1問ずつの小問集合で、配点は16点(各4点)。どれも一行の式か定義に戻れば決まりますが、問4だけは「1周期とは何か」の詰めが要ります。
問1:正解 ④(解答番号101/配点4)
<問題要旨>
密度 ρ₀ の氷山が密度 ρ の海水に浮いて静止している。重力加速度の大きさを g、氷山の体積を V とし、海面上に出ている部分の体積を aV(0<a<1)とするとき、氷山にはたらく浮力の大きさを式で表す設問。図1は、海面から一部が出た氷山と海水のようすを示している。
<考え方>
浮力はアルキメデスの原理、すなわち「物体が押しのけた流体の重さ」に等しい。押しのけているのは海水なので密度は ρ、その体積は氷山のうち海面より下にある部分だけである。したがって、使う密度と使う体積をそれぞれ選び分けるだけで式が決まる。
【使う量を仕分ける】 氷山の体積 V 海面上に出ている部分 aV 海面より下(水中)の部分 V − aV = (1 − a)V 押しのけた流体は海水なので、密度は ρ(氷山の ρ₀ ではない) 【浮力】 浮力 = 押しのけた海水の重さ =(海水の密度)×(水中部分の体積)× g = ρ × (1 − a)V × g = ρ(1 − a)Vg 【選択肢の落とし方】 ① ρ₀aVg 誤 密度が氷山の ρ₀ で、体積も海面上の aV ② ρ₀(1 − a)Vg 誤 体積は正しいが、密度が氷山のもの ③ ρaVg 誤 密度は正しいが、体積が海面上の部分 ④ ρ(1 − a)Vg 正 ⑤ (ρ − ρ₀)aVg 誤 浮力の式に密度の差は現れない ⑥ (ρ − ρ₀)(1 − a)Vg 誤 同じ理由 【検算】静止しているので 浮力 = 重力 ρ(1 − a)Vg = ρ₀Vg → ρ₀/ρ = 1 − a 氷は約 0.92 g/cm³、海水は約 1.02 g/cm³ なので 1 − a ≒ 0.90、つまり a ≒ 0.1。 海面上に出るのは体積の1割ほどで、「氷山の一角」という言い方と合う。 よって ④
浮力の式で迷ったら「どちらの密度か」「どちらの体積か」の2つだけを声に出して確認します。密度は押しのけられた流体(ここでは海水)、体積は流体に浸かっている部分。この2点を外さなければ ①②③⑤⑥ はすべて落ちます。
問2:正解 ②(解答番号102/配点4)
<問題要旨>
材質が同じ導線の抵抗値が、温度が同じであれば導線の長さとどういう関係にあるか(ア)、断面積とどういう関係にあるか(イ)、そしてその比例定数である抵抗率の単位(ウ)を、語と単位の組合せで選ぶ設問。
<考え方>
抵抗率 ρ を使った抵抗値の式 R = ρl/S に戻れば3つとも同時に決まる。単位は、この式を ρ について解いてから R・S・l の単位を代入すればよい。
【ア・イ】抵抗値の式 R = ρ·l/S (l:導線の長さ、S:断面積、ρ:抵抗率) l を2倍にすると R も2倍 …… 長さに比例(ア=比例) S を2倍にすると R は 1/2 倍 …… 断面積に反比例(イ=反比例) 【ウ】式を ρ について解く ρ = R·S/l 単位 Ω × m² ÷ m = Ω·m (ウ=Ω·m) 【選択肢の落とし方】 ① 比例/反比例/Ω/m 誤 ア・イは正しいが単位が Ω/m ② 比例/反比例/Ω·m 正 ③ 反比例/比例/Ω/m 誤 長さと断面積が入れ替わっており、単位も誤り ④ 反比例/比例/Ω·m 誤 長さと断面積が入れ替わっている ⑤ 比例/比例/Ω/m 誤 断面積に比例では太い導線ほど電流が流れにくくなる ⑥ 比例/比例/Ω·m 誤 同じ理由 【検算】ρ の単位を Ω·m として R = ρl/S に戻すと Ω·m × m ÷ m² = Ω で、抵抗値の単位になる。合う。 よって ②
「水道管が長いほど流れにくく、太いほど流れやすい」という水の流れのたとえで、長さに比例・断面積に反比例の向きは覚えやすくなります。単位は暗記せず、R = ρl/S を ρ について解いて作り直すほうが確実です。
問3:正解 ④(解答番号103/配点4)
<問題要旨>
ベクレルとシーベルトはどう違うのか、という2人の高校生の会話文で、ベクレルの定義にあたる空欄エ・オと、シーベルトが影響の違いを考慮する対象である空欄カに入る語の組合せを選ぶ設問。
<考え方>
この2つの単位は「放射線を出す側」と「放射線を受ける側」で分かれる、と整理すれば決まる。ベクレル [Bq] は放射能の強さ、つまり放射線を出す側の量で、1秒間に崩壊する原子核の個数。シーベルト [Sv] は受ける側の量で、1 kg あたりに吸収したエネルギー(吸収線量)に、放射線の種類ごとの人体への影響の違いを表す係数をかけた量である。
【エ・オ】ベクレル [Bq] 放射能の強さ = 1秒間に「崩壊」する「原子核」の個数 エ = 崩壊、 オ = 原子核 「電離」は放射線が物質に及ぼす作用の名前で、1秒間に個数を数える対象ではない 崩壊するのは原子核そのもの。「電子」の個数を数えるのでもない 【カ】シーベルト [Sv] 1 kg あたりに吸収するエネルギー = 吸収線量 [Gy] これに、放射線の種類が「人体」へ及ぼす影響の違いを表す係数をかけた量の単位 カ = 人体 放射線を受ける物質として問題文が挙げているのは人体の側であり、電子機器ではない 【選択肢の落とし方】 ① 電離/原子核/電子機器 誤 エとカが誤り ② 電離/原子核/人体 誤 エが誤り ③ 崩壊/原子核/電子機器 誤 カが誤り ④ 崩壊/原子核/人体 正 ⑤ 崩壊/電子/電子機器 誤 オとカが誤り ⑥ 崩壊/電子/人体 誤 オが誤り よって ④
ベクレルは「線源の強さ」、グレイは「受けた物質が吸収したエネルギー」、シーベルトは「グレイに人体への影響の係数をかけたもの」という三段構えで覚えると、どの単位が出ても仕分けられます。
問4:正解 ②(解答番号104/配点4)
<問題要旨>
等間隔で横一列に並んだ人がタイミングを合わせて立ち座りを繰り返す「ウェーブ」を波動とみなす設問。波長4.0 m、人と人の間隔50 cm、ある人が隣の人の動きを0.25 s後に再現する、という条件から、ウェーブの速さ(キ)、振動数(ク)、手を下げて座った状態から立ち上がって再び座った状態に戻るまでの時間(ケ)を求める。図2は、ある瞬間とその0.25 s後のウェーブの一部を破線で表している。
<考え方>
波の基本式 v = fλ と、周期と振動数の関係 T = 1/f に戻れば3つとも決まる。速さは「ある位置の動きが隣の位置に伝わるのにかかる時間」から出す。1人の動きが隣の人へ50 cm 伝わるのに0.25 s かかる、という条件がそのまま速さの定義になっている。
【キ】ウェーブの速さ 人と人の間隔 50 cm = 0.50 m その距離を伝わるのにかかる時間 0.25 s v = 0.50 m ÷ 0.25 s = 2.0 m/s 【ク】振動数 v = fλ より f = v/λ = 2.0 ÷ 4.0 = 0.50 Hz 【ケ】座った状態から立ち上がり、再び座った状態に戻るまでの時間 座る(最も低い位置)→ 立つ(最も高い位置)→ 座る(最も低い位置) これは振動の1往復、つまり1周期そのもの T = 1/f = 1 ÷ 0.50 = 2.0 s キ = 2.0、 ク = 0.50、 ケ = 2.0 【検算】図2で、0.25 s の間に破線の山は右へ人1人分(0.50 m)だけ進んでいる。 波長4.0 m ぶん進むのに要する時間は 4.0 ÷ 0.50 × 0.25 = 2.0 s。 波が1波長進む時間が1周期なので、ケ = 2.0 s と一致する。 よって ②
決め手は「手を下げて座った状態から、手を上げて立ち上がり、再び手を下げて座った状態に戻るまで」がちょうど1周期だという読み取りです。ここを半分(半周期)と受け取ると時間を取り違えます。なお ケ = 1.6 s の選択肢が4つ用意されていますが、1.6 s は ク = 0.63 Hz の逆数(1 ÷ 0.63 ≒ 1.6)にあたる値で、①④のように ク = 0.50 Hz を選びながら ケ = 1.6 s を選ぶと T = 1/f と矛盾します。キ・ク・ケは v = fλ と T = 1/f で互いに結びついているので、3つの整合を最後に必ず確かめてください。
第2問 磁場センサーで調べる台車の直線運動(等速運動と等加速度運動)
円形磁石とスマートフォンの磁場センサーを使い、水平に置かれたレール上をなめらかに動く台車の運動を調べる実験の考察で、配点は16点(各4点)。「センサーが磁石の真横を通るたびに磁場の強さがピークをつくる」という仕組みを最初に押さえると、4問すべてが同じ道具で解けます。
問1:正解 ④(解答番号105/配点4)
<問題要旨>
N極をレール側に向けた円形磁石を1つ置き、台車を手で押して原点Oで手をはなす。図2(a)は台車がレール右端に到達したときのグラフで、横軸が計測開始からの時刻(2.1〜3.3 s、目盛りは0.2 s ごと)、縦軸が磁場の強さ。図2(b)は台車を動かす速さを変えて同じ実験をしたときのグラフ(0.8〜2.0 s)。センサー部分が磁石のちょうど真横を通過した時刻(ア)と、台車の速さが大きいのは2つのグラフのどちらか(イ)を答える。
<考え方>
磁場の強さはセンサーと磁石の距離が最も小さいとき、すなわち真横を通る瞬間に最大になる。だからアはピークの頂点の時刻をそのまま読めばよい。イは、同じ磁石の横を同じ距離だけ離れて通るのだから、速いほど「磁石に近い区間」を短時間で通り抜ける——つまりピークの幅が狭くなる、と考える。
【ア】ピークの頂点の時刻を目盛りで読む 横軸の目盛りは 2.1・2.3・2.5・2.7・2.9・3.1・3.3(0.2 s ごと) 1目盛りを5等分すれば 0.04 s 刻みで読める ピークの頂点は 2.7 の目盛り線のすぐ左側にあり、2.7 との差は1目盛りの1割ほど 0.2 × 0.1 = 0.02 s → 2.7 − 0.02 ≒ 2.68 s ア = 2.68 2.58 なら 2.7 の目盛り線から左へ 0.6 目盛り分(2.5 と 2.7 のほぼ中間)に頂点が来るが、そうなっていない 3.30 は横軸の右端で、そこでは磁場の強さはほぼ0。ピークではない 【イ】速さが大きいのはどちらのグラフか ピークの幅を比べる (a) 2.6 あたりから 2.8 あたりまで 幅はおよそ 0.2 s (b) 1.35 あたりから 1.45 あたりまで 幅はおよそ 0.1 s 同じ磁石の横を通り抜けるのに要した時間が短い (b) のほうが速い ピークの時刻でも確かめられる どちらも同じ原点Oから同じ磁石までを進んでいるのに (a) は 2.68 s、(b) は約 1.4 s で到達している 同じ距離を短時間で進んだ (b) が速い イ = (b) よって ④
「ピークが早い時刻に出る=速い」と「ピークの幅が狭い=速い」は、この実験では必ず同じ向きに出ます。続く問2・問3では、この2つの手がかりのうち片方だけでは選択肢が絞れない形で問われるので、ここで両方の意味を確定させておくことが得点に直結します。
問2:正解 ③(解答番号106/配点4)
<問題要旨>
同じ円形磁石5個を、N極をすべてレール側に向けて等間隔に並べ(位置は x₁・x₂・x₃・x₄・x₅)、台車をレール左端に置いてから手で力を加え、原点Oで手をはなす。台車がレール右端に到達したときにスマートフォンに表示されるグラフを、①〜④のうちから選ぶ設問。4つはいずれも「同じ高さのピークが5つ並んだグラフ」で、違うのはピークの間隔と幅の変わり方だけである。
<考え方>
手をはなしたあとの台車は、レール上をなめらかに動き空気抵抗も無視できるので、水平方向に力を受けず等速直線運動をする。すると、等間隔に並んだ5個の磁石を等しい時間間隔で通過し、しかも通過するときの速さが毎回同じなので各ピークの幅も等しくなる。そこで「ピークの間隔」と「ピークの幅」の2つがそろって等しいグラフを選ぶ。
【この運動が満たすべき性質を先に書き出す】 手をはなしたあとは等速直線運動(水平方向に力がはたらかない) → 磁石が等間隔なので、隣りあうピークの時刻の間隔はすべて等しい → 通過する速さが毎回同じなので、ピークの幅もすべて等しい → 磁石との最短距離が毎回同じなので、ピークの高さもすべて等しい (高さは①〜④すべて等しく描かれているので、ここでは絞れない) 【見るところ】 隣りあうピークの頂点どうしの横方向の距離(=間隔) 1つ1つのピークの裾の広がり(=幅) 【4つのグラフを2つの性質で落とす】 ① 間隔:等しい 幅:右へ行くほど狭くなる → 誤 等しい時間間隔で通過しているのに通過だけ速くなる、という起こりえない運動 ② 間隔:右へ行くほど広がる 幅:等しい → 誤 間隔が広がるのは磁石の間を進むのに時間がかかるようになったということで、減速を表す ③ 間隔:等しい 幅:等しい → 正 等速直線運動そのもの ④ 間隔:右へ行くほど狭くなる 幅:等しい → 誤 間隔が狭まるのは加速を表すが、手をはなしたあとに加速する力はない よって ③
①と③はどちらもピークの間隔が等しいので、間隔だけを見ると2つまでしか絞れません。①はピークが右へ行くほど細くなっており、「通過にかかる時間は短くなっているのに、磁石から磁石までの時間は変わらない」という矛盾した描き方になっています。間隔と幅の両方をそろえて確かめる手順を作っておけば、次の問3も同じやり方で決まります。
問3:正解 ②(解答番号107/配点4)
<問題要旨>
5個の円形磁石はそのまま設置したうえで、伸び縮みしない軽い糸の一端を台車に取りつけ、他端をなめらかに回る軽い滑車を通しておもりにつなぐ。原点Oに台車を静止させ、静かに手をはなす(台車がレール右端に到達するまでおもりは落下し続ける)。このときスマートフォンに表示されるグラフを①〜④のうちから選ぶ設問。4つはいずれもピークの高さが等しく、間隔と幅の変わり方だけが違う。
<考え方>
おもりの重力によって糸の張力が台車を引き続けるので、台車は静止から出発して一定の大きさの力を受け、等加速度運動をする。速さが増え続けるのだから、等間隔に並んだ磁石を通過する時間間隔はだんだん短くなり、同時に通過するときの速さが増えるのでピークの幅もだんだん狭くなる。問2と同じく「間隔」と「幅」の2つを同時に満たすグラフを選ぶ。
【この運動が満たすべき性質を先に書き出す】 静止から出発し、一定の力(おもりの重力に由来する糸の張力)を受け続ける → 等加速度運動で、速さは増え続ける → 磁石が等間隔なので、隣りあうピークの時刻の間隔はだんだん狭くなる → 通過が速くなるので、ピークの幅もだんだん狭くなる → ピークの高さはどれも等しい(①〜④共通なので、ここでは絞れない) 【4つのグラフを2つの性質で落とす】 ① 間隔:右へ行くほど広がる 幅:右へ行くほど狭くなる → 誤 幅が狭まる(速くなる)のに間隔が広がる(遅くなる)という矛盾 ② 間隔:右へ行くほど狭くなる 幅:右へ行くほど狭くなる → 正 どちらも「速くなっていく」を指しており、等加速度運動と合う ③ 間隔:右へ行くほど広がる 幅:右へ行くほど広がる → 誤 どちらも減速を表しており、静止から動き出す運動と合わない ④ 間隔:右へ行くほど狭くなる 幅:右へ行くほど広がる → 誤 間隔が狭まる(速くなる)のに幅が広がる(遅くなる)という矛盾 【検算】等加速度運動で静止から出発すると、位置 x に達する時刻は t ∝ √x。 磁石が等間隔なら、通過時刻の比は √1:√2:√3:√4:√5 = 1:1.41:1.73:2.00:2.24。 隣りあう間隔の比は 0.41:0.32:0.27:0.24 となり、最初の間隔がいちばん広く、 だんだん詰まっていって差は小さくなる。②のピークの詰まり方はこの傾向と合う。 よって ②
②と④はどちらもピークの間隔がだんだん狭くなっているので、間隔だけを見ると2つまでしか絞れません。決め手はピークの幅です。速く通り抜けるほど磁石の近くにいる時間が短くなるので、幅は必ず狭くなります。④は「磁石から磁石までの時間は詰まっていくのに、1つ1つのピークは太くなる」グラフで、速くなっているのか遅くなっているのかが矛盾しています。問2と問3を並べて見ると、出題者は「間隔だけで選ぶと必ず引っかかる」ように4つの図を用意していることが分かります。
問4:正解 ②(解答番号108/配点4)
<問題要旨>
図4の実験で得られたグラフから、円形磁石の間隔 x₂ − x₁ を台車がその間を通過する時間で割って区間の平均の速度を求め、それを x₁ を通過する時刻と x₂ を通過する時刻の中央の時刻での速度とみなして v–t グラフを描いた。図5がその結果で、横軸は時刻1.5〜3.5 s(0.5 s ごとの目盛り)、縦軸は速度0〜1.0 m/s(0.2 m/s ごとの目盛り)、4つの測定点と、すべての点のなるべく近くを通る直線が引かれている。この直線から台車の加速度を求める。
<考え方>
v–t グラフの直線の傾きが加速度である。傾きは、直線上のできるだけ離れた2点で高さを読むと読み誤りの影響が小さくなるので、グラフの左端と右端で直線の高さを読み、Δv ÷ Δt を計算する。
【直線の両端の高さを目盛りで読む】 横軸の目盛り 1.5・2.0・2.5・3.0・3.5(0.5 s ごと) 縦軸の目盛り 0・0.2・0.4・0.6・0.8・1.0(0.2 m/s ごと) t = 1.5 s(左端) 直線は 0.4 の目盛り線をわずかに上に越えたところ v ≒ 0.41 m/s t = 3.5 s(右端) 直線は 1.0 の目盛り線にわずかに届かないところ v ≒ 0.95 m/s 【傾き = 加速度】 a = Δv/Δt = (0.95 − 0.41) ÷ (3.5 − 1.5) = 0.54 ÷ 2.0 = 0.27 m/s² 【検算】測定点そのもので確かめる。 いちばん左の点(およそ t = 1.9、v = 0.53)と いちばん右の点(およそ t = 3.35、v = 0.90)を結ぶと a ≒ (0.90 − 0.53) ÷ (3.35 − 1.9) = 0.37 ÷ 1.45 ≒ 0.26 真ん中の2点(およそ 2.5、0.67)と(およそ 3.0、0.83)でも a ≒ (0.83 − 0.67) ÷ (3.0 − 2.5) = 0.16 ÷ 0.5 = 0.32 いずれも 0.27 の近くに来て、0.19 や 0.44 とは合わない よって ②
0.19 と 0.44 は、読み取る2点を取り違えたときに出てくる値です。傾きを読むときは、格子のできるだけ離れた2本の縦線の上で高さを読むと、1目盛り分の読み誤りが傾きに与える影響を小さくできます。また 1.9 と 2.7 は正解の10倍で、2.7 m/s² は重力加速度と同じ桁になってしまい、糸で軽く引かれた台車の加速度としては大きすぎる——という桁の見当も効きます。
第3問 A 大気圧下での加熱と冷却(比熱・蒸発熱と容器の温度降下)
大気圧の下で物質を加熱・冷却するときの温度変化を扱います。問1は比熱と沸騰中の温度についての定性的な理解、問2は200 ℃ の銅製容器に20 ℃ の水を注いですべて蒸発させたときの、容器側の温度降下を昇温過程と蒸発過程の2段に分けて計算します。第3問全体の配点は18点で、各項目3点です。
問1:正解 ⑤(解答番号109/配点3)
<問題要旨>
同じ質量の水となたね油を同じように加熱すると水のほうが温度上昇が遅い理由(ア:水の比熱がなたね油と比べてどうか)と、沸騰が始まってからも加熱を続けたとき、水がなくなるまでの間の水の温度(イ)を、語句の組合せで選ぶ設問。
<考え方>
熱量の式 Q = mcΔT に戻る。同じ質量・同じ熱量なら、比熱 c が大きいほど温度変化 ΔT は小さい。また沸騰中に加えた熱はすべて蒸発熱(液体が気体になるのに使われる熱)に回るので、温度を上げるほうには使われない。
【ア】 Q = mcΔT より ΔT = Q/(mc) m と Q が同じなら、c が大きいほど ΔT は小さい 水のほうが温度上昇が遅い = ΔT が小さい = 比熱 c が大きい ア = 大きく 実際、水の比熱は約 4.2 J/(g·K)、なたね油は約 2 J/(g·K) で、水のほうが大きい 【イ】 沸騰中は、加えた熱がすべて「100 ℃ の水 → 100 ℃ の水蒸気」の蒸発熱に使われる 温度を上げる分には回らないので、水がなくなるまで温度は変わらない イ = 一定となる 「上がり続ける」なら大気圧の下で水が 100 ℃ を超えることになる 「下がり続ける」なら加熱しているのに冷えることになる いずれも起こらない ア = 大きく、 イ = 一定となる よって ⑤
比熱が「大きい」と「温まりにくい・冷めにくい」が同じことを指す、という言いかえに慣れておくと、ア・イのどちらも即決できます。問題文に「温まりにくいためである」と書かれているので、ここが ア の答えを指定していることにも気づきたいところです。
問2:正解 ⑤(解答番号110/配点3)
<問題要旨>
質量1000 g の銅製容器を加熱して200 ℃ にし、加熱をやめてから20 ℃ の水10 g を注いだところ、水はすべて水蒸気になって容器から水がなくなった。この過程を「20 ℃ の水がすべて100 ℃ の水になる昇温過程」と「100 ℃ の水が100 ℃ の水蒸気になる蒸発過程」に分け、それぞれの過程で容器から熱が奪われるものとする。解答番号110は、昇温過程で容器の温度が何 K 下がるか。水の蒸発熱2000 J/g、水の比熱4 J/(g·K)、銅の比熱0.4 J/(g·K)。
<考え方>
熱のやり取りは容器と水の間だけなので、水が受け取った熱量がそのまま容器が失った熱量になる。まず水側で必要な熱量を Q = mcΔT で求め、それを容器の熱容量(質量 × 比熱)で割れば、容器の温度降下が出る。割る相手を容器の熱容量にするのがこの設問の要点である。
【容器の熱容量】 C = 1000 g × 0.4 J/(g·K) = 400 J/K 【昇温過程で水が受け取る熱量】 水 10 g を 20 ℃ から 100 ℃ まで → ΔT = 80 K Q = 10 × 4 × 80 = 3200 J 【容器の温度降下】 容器はこの 3200 J を失う (容器の温度降下)= Q ÷ C = 3200 ÷ 400 = 8 K 【検算】熱容量の比で考えても同じになる。 水の熱容量 10 × 4 = 40 J/K 容器の熱容量 400 J/K (水の10倍) 同じ熱量が移るとき温度変化は熱容量に反比例するので、 水が 80 K 上がるあいだに容器が下がるのは 80 ÷ 10 = 8 K。一致する。 よって ⑤
水側の 80 K をそのまま答えにしてしまう(⑦の80)のがいちばん多い取り違えです。問われているのは「容器の温度が何 K 下がるか」なので、水の温度変化ではなく、必ず容器の熱容量 400 J/K で割ります。
問2:正解 ⑥(解答番号111/配点3)
<問題要旨>
同じ設定で、蒸発過程(100 ℃ の水10 g が100 ℃ の水蒸気になる過程)において容器の温度が何 K 下がるかを求める。
<考え方>
蒸発に必要な熱量は(蒸発熱)×(質量)で、温度変化を含まない。状態変化のあいだ温度は100 ℃ のまま変わらないからである。求めた熱量を、昇温過程と同じように容器の熱容量400 J/K で割る。
【蒸発過程で水が受け取る熱量】 Q = 2000 J/g × 10 g = 20000 J (温度は 100 ℃ のまま変わらないので、この式に ΔT は現れない) 【容器の温度降下】 (容器の温度降下)= Q ÷ C = 20000 ÷ 400 = 50 K 【検算1】2つの過程の熱量を比べる。 昇温過程 3200 J に対し蒸発過程 20000 J で、蒸発のほうが 6.25 倍。 同じ容器が失う熱なので温度降下も 6.25 倍、8 × 6.25 = 50 K。一致する。 【検算2】設定と矛盾しないかを確かめる。 容器は 200 ℃ から合計 8 + 50 = 58 K 下がって 142 ℃ になる。 まだ 100 ℃ より高いので、「水がすべて水蒸気になって容器から水がなくなった」 という問題の設定と矛盾しない。 よって ⑥
蒸発熱の計算に温度差を掛けてしまうと桁が合わなくなります。状態変化では温度が変わらないので Q =(蒸発熱)×(質量)だけ。水10 g を80 K 温めるのに3200 J、蒸発させるのに20000 J——「蒸発のほうが圧倒的に大きい」という感覚は、やけどや打ち水の話にもつながる大事な数量感覚です。
第3問 B 抵抗温度計を使った比熱の測定(直列回路の分圧・ジュール熱・熱容量)
温度によって抵抗値が変わる導体(抵抗器A)を温度計として使い、物質の比熱を測る装置を組み立てていきます。問3で回路の分圧、問4でヒーターのジュール熱、問5で試料の熱容量が加わることの効果、と装置の説明の順に3つの基本がそのまま問われます。各項目3点です。
問3:正解 ③(解答番号112/配点3)
<問題要旨>
温度変化する抵抗器A(抵抗値 R_A)と、温度によらず常に R₀ の抵抗器Bを直列につなぎ、電圧 V₀ の電源と電圧計をつないだ回路(図1)について、OP間の電圧を表す式を選ぶ設問。図1では O と P が抵抗器Bの両端にあたる点で、電圧計はその O–P 間につながれている。
<考え方>
直列回路なので、まず回路全体を流れる電流をオームの法則で求め、それに抵抗器Bの抵抗値をかければBの両端の電圧が出る。要するに分圧の式で、直列では電圧が抵抗値の比で分かれる。
【回路を流れる電流】 抵抗器AとBは直列なので、合成抵抗は R_A + R₀ I = V₀/(R_A + R₀) 【OP間=抵抗器Bの両端の電圧】 V_OP = I × R₀ = R₀/(R_A + R₀) × V₀ 【選択肢の落とし方】 ① V₀ 誤 抵抗器Aの分だけ電圧が下がるので、Bの両端は V₀ より小さい ② R_A/(R_A + R₀)·V₀ 誤 これは抵抗器Aの両端の電圧 ③ R₀/(R_A + R₀)·V₀ 正 ④ V₀/R_A 誤 単位が A(電流)で、電圧の式になっていない ⑤ V₀/R₀ 誤 同じ理由 ⑥ V₀/(R_A + R₀) 誤 これは回路を流れる電流 I そのもの 【検算】極端な場合で確かめる。 R_A → 0 なら、電源の電圧はすべてBにかかるので V_OP → V₀。③はそうなる。 R_A → ∞ なら、電圧はすべてAにかかるので V_OP → 0。③はそうなる。 ②だと逆の振る舞いになるので、ここでも落ちる。 よって ③
電圧計が回路のどこにつながれているかを図で先に確かめるのが要点です。O と P は抵抗器Bの両端なので、測っているのは「温度によらず一定の R₀」の側の電圧。温度が変わると R_A だけが変わり、その結果この電圧が変わるので、電圧計の読みがそのまま温度計になる——という装置の仕組みにつながっています。
問4:正解 ⑤(解答番号113/配点3)
<問題要旨>
図2のように、比熱を測る試料をのせる試料台に抵抗器Aを取りつけ、電圧 V の電源をつないだヒーター(抵抗値は温度によらず常に R)で試料台と試料を加熱する。試料をのせずに試料台だけを加熱する予備測定では、時間 t だけ加熱したところ試料台の温度が ΔT だけ上昇した。この予備測定でヒーターに発生した熱量 Q を表す式を選ぶ。
<考え方>
ヒーターで発生する熱量はジュール熱で Q = VIt。電流はオームの法則 I = V/R で置きかえられるので、与えられた V・R・t だけで書ける。温度上昇 ΔT は「発生した熱の結果」なので、発生した熱量そのものの式には入らない。
【ジュール熱】 Q = V·I·t オームの法則より I = V/R Q = V × (V/R) × t = (V²/R)·t 【選択肢の落とし方】 ① RV² 誤 時間が入っておらず、抵抗が分子にある ② RV²t 誤 R が分母でなく分子。R が大きいほど熱が多くなってしまう ③ RV²ΔT 誤 同じ理由に加え、t のかわりに ΔT が入っている ④ V²/R 誤 これは消費電力(単位は W)で、時間をかけていない ⑤ (V²/R)·t 正 ⑥ (V²/R)·ΔT 誤 時間のかわりに温度変化が入っている 【検算】単位で確かめる。 V²/R の単位は W(=J/s)。これに s をかけて W·s = J。 ⑤はエネルギーの単位になるが、⑥は J·K になってしまう。 また R が大きいほど電流が小さくなるので発熱は減るはず。⑤は R が分母で、この向きと合う。 よって ⑤
V²/R は電力、つまり1秒あたりに発生する熱量で、これに加熱時間 t をかけて初めて熱量になります。ΔT は次の問5で Q = CΔT の形で使う量なので、役割を混ぜないようにしてください。
問5:正解 ⑤(解答番号114/配点3)
<問題要旨>
予備測定から求まる試料台の熱容量を C、試料の質量を m、試料の比熱を h とするとき、試料をのせた本測定で加えられた熱量 Q′ と、試料をのせない予備測定で加えられた熱量 Q との比 Q′/Q を表す式を選ぶ設問。2つの測定は同じ温度の状態から始め、どちらも同じ ΔT だけ温度を上昇させる(そのため本測定に必要な加熱時間は t′ > t に増える)。
<考え方>
熱量と熱容量の関係 Q =(熱容量)× ΔT に戻る。予備測定は試料台だけなので熱容量は C、本測定は試料台に試料が加わるので熱容量は C + mh。上昇させる ΔT が両方の測定で同じなので、比をとると ΔT が消える。
【試料の熱容量】 質量 m、比熱 h の試料の熱容量 = mh 【それぞれの測定で加えた熱量】 予備測定(試料台だけ) Q = C·ΔT 本測定(試料台+試料) Q′ = (C + mh)·ΔT 【比をとる】 Q′/Q = (C + mh)·ΔT ÷ (C·ΔT) = (C + mh)/C 【選択肢の落とし方】 ① C + mh 誤 これは本測定の熱容量そのもので、比(無次元)になっていない ② C − mh 誤 同じ理由。試料が加わるのだから引くのもおかしい ③ 1 + mhC 誤 熱容量どうしの積が現れており、無次元にならない ④ 1 − mhC 誤 同じ理由 ⑤ (C + mh)/C 正 ⑥ (C − mh)/C 誤 試料が加われば必要な熱量は増えるので、比は1より大きくなければならない 【検算】極端な場合で確かめる。 mh → 0(試料をのせないのと同じ)なら Q′/Q → 1。⑤はそうなる。 mh > 0 なら (C + mh)/C > 1 で、本測定の加熱時間が t′ > t と長くなることと合う。 ⑥は mh > 0 のとき1より小さくなり、t′ > t と矛盾する。 よって ⑤
加えた熱量の比は加熱時間の比に等しいので Q′/Q = t′/t = (C + mh)/C。これを h について解くと h = C(t′ − t)/(m·t) となり、予備測定と本測定の加熱時間の差だけから試料の比熱が求まります。「試料台のぶんを予備測定で先に測っておき、差をとって試料だけの量を取り出す」——これが装置全体のねらいで、実験の考察問題では毎回この形が出てきます。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

