2024年度 大学入学共通テスト 本試験 生物 解答・解説

2024年度 大学入学共通テスト 本試験「生物」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2024年度(令和6年度)大学入学共通テスト 本試験「生物」は、全24項目(解答番号1〜26)、100点満点、試験時間60分です。大問は6題で、すべて必答。配点は第1問14点・第2問17点・第3問16点・第4問19点・第5問14点・第6問20点です。

第1問は納豆菌と近縁の細菌Nを題材にした糖代謝とオペロンによる発現調節、第2問は生体膜の輸送タンパク質から気孔の開口とニューロンの興奮まで、第3問は骨格筋の収縮の仕組みと体節から皮筋節が分化する移植実験、第4問はジャガイモの塊茎形成をテーマにした高校の探究活動、第5問は陸上生態系の生産構造と炭素の循環、第6問は動物の系統とサイコロを使った系図シミュレーションです。

知識だけで決まる設問は少なく、与えられた図・表・実験条件から「どの条件とどの条件を比べているのか」を読み取らせる設問が全体を占めます。第1問問3のように確かめたい主張に合わせて比較する培地を選ぶ設問、第3問問2のように材料の性質(グリセリン筋とスキンド筋で何が残っているか)を結果にあてはめる設問、第6問Bのように系図の線を追って数える設問が並び、読み取りの正確さがそのまま得点差になります。

なお、この回は問題冊子とともに問題訂正が示されています。93ページの第6問B問3の3行目について、問題文の末尾に「ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。」を加える、という内容です。

第1問(必答) 糖代謝(納豆菌・細菌Nのキシロースオペロンの発現調節)

納豆づくりに使われる納豆菌と、それに近縁の細菌Nを題材に、エネルギー代謝とオペロンによる遺伝子発現の調節を扱います。配点14点。グルコースとキシロースの両方を含む混合糖培地での増殖曲線(図1・図2)を読み取り、最後は仮説を検証するための培地の選び方まで問われます。

問1:正解 ③(解答番号1/配点4)

<問題要旨>
下線部(a)「納豆菌は稲わら中に含まれる糖を分解することでエネルギーを得ている」に関連して、エネルギー代謝についての4つの記述から最も適当なものを選ぶ設問です。解糖系・アルコール発酵・クエン酸回路・電子伝達系のそれぞれで、ATPがどこで合成され、二酸化炭素がどこで生じるかが問われます。

<考え方>
呼吸の三段階(解糖系・クエン酸回路・電子伝達系)で「何がどこで出入りするか」に戻れば決まります。解糖系はグルコース1分子あたりATPを2分子消費して4分子合成するので正味+2分子、クエン酸回路は基質レベルのリン酸化でATPを合成しながら二酸化炭素を放出、電子伝達系は酸素を使ってATPを合成しますが二酸化炭素は放出しません。

① 誤 解糖系ではATPを2分子消費して4分子合成するので、正味では合成される量のほうが多い(+2分子)。
② 誤 アルコール発酵でのNADHの酸化はアセトアルデヒドをエタノールに還元する反応であり、この過程ではATPは合成されない。
③ 正 クエン酸回路ではNADHやFADH₂が生成されるだけでなく、基質レベルのリン酸化によってATP(GTP)も合成される。
④ 誤 二酸化炭素が生じるのはピルビン酸の脱炭酸反応とクエン酸回路であり、電子伝達系では生じない。電子伝達系で生じるのは水である。
よって ③

「酸素を使う段階=二酸化炭素が出る段階」と結びつけてしまうと④を選びがちですが、酸素が使われるのは電子伝達系の最後で水ができるところで、二酸化炭素の放出とは別の段階です。

問2:正解 ①(解答番号2/配点5)

<問題要旨>
図1は、細菌Nの野生株を混合糖培地で培養したときのグルコース濃度・キシロース濃度・細胞数・キシロースオペロンの発現量の変化を示しています。図2は、糖の利用の仕方が異なる変異株Mについて細胞数と糖濃度の変化を示したものです。この2つの図をもとに、ア(先に利用される糖)・イ(リプレッサーとオペレーターの関係)・ウ(増殖が速い株)の組合せを選びます。

<考え方>
ア・ウは図の読み取り、イはオペロンの負の調節の原理で決まります。図1で先に減り始めて先に0になる糖がアであり、その糖があるあいだ発現量が0に張りついていることから、そのときリプレッサーがオペレーターに結合していると言えます。ウは、同じ細胞数に達するまでにかかった時間を図1と図2で比べます。

【ア 先に利用される糖】
 図1で、グルコース(初濃度1 g/L)は培養開始後すぐに減り始め、約270分で0になる。
 キシロース(初濃度3 g/L)はそれまで3 g/Lのまま変化せず、グルコースが尽きた後に減り始める。
  → 先に利用されるのは グルコース

【イ リプレッサーとオペレーター】
 図1で、グルコースが残っている約270分までキシロースオペロンの発現量はほぼ0で、グルコースが尽きた直後から上昇する。
 発現が抑えられている状態=リプレッサーがオペレーターに結合してRNAポリメラーゼの転写を妨げている状態。
  → 「に結合して」

【ウ 増殖が速い株】
 細胞数(相対値、右の対数目盛り)が同じ値に達するまでの時間を比べる。
  図1(野生株)  … 約550分で相対値およそ300〜400に達する
  図2(変異株M) … 同程度に達するのは約950分
  → 増殖が速いのは 野生株。混ぜて培養すれば野生株が集団内で優勢になる。

【検算】図1では約200分の時点で細胞数の相対値が約10、図2では同じ時点で約2〜3。培養のどの時期をとっても野生株のほうが細胞数が多い。
よって ①

この設問は②または③を解答した場合は2点の部分点が与えられます。

問3:正解 ②(解答番号3/配点5)

<問題要旨>
図1からは「キシロースオペロンは、キシロースが存在すると発現するが、グルコースが存在するとキシロースが存在しても発現は抑制される」という仮説が立ちます。しかし同じ図からは「キシロースオペロンの発現は、グルコースのみによって制御される」という可能性も考えられます。この後者の可能性を検討するには、ⓐ〜ⓓの4つの培地のうちどの2つで培養して発現量を比べればよいかを選ぶ設問です。

<考え方>
「Xのみによって決まる」かどうかを確かめる比較では、X以外の要因を両方の条件から取り除いたうえで、Xの有無だけを変えます。ここで検討したい主張が名指ししている要因はグルコースなので、キシロースを両方の培地から外し、グルコースの有無だけが違う2条件を選びます。そうして初めて、観察された発現量の違いをグルコースによるものだと言い切れます。

【検討したい主張】「キシロースオペロンの発現は、グルコースのみによって制御される」
  → 変えるべき要因は グルコースの有無。キシロースは両方の培地から外しておく。

【4つの培地の中身】
 ⓐ グルコースのみ    … グルコース あり / キシロース なし
 ⓑ キシロースのみ    … グルコース なし / キシロース あり
 ⓒ どちらも含まない   … グルコース なし / キシロース なし
 ⓓ 混合糖培地      … グルコース あり / キシロース あり

① ⓐ,ⓑ 誤 グルコースとキシロースを同時に入れ替えており、違いがどちらの要因によるものかを切り分けられない。さらに、二つの仮説のどちらでも「ⓐは発現せず、ⓑは発現する」と予測が一致するため区別できない。
② ⓐ,ⓒ 正 どちらの培地にもキシロースが無く、違いはグルコースの有無だけ。ⓒで発現が見られれば「キシロースが無くてもグルコースが無ければ発現する」ことになり、グルコースのみによる制御が直接示される。ⓐ・ⓒとも発現しなければ、発現にはキシロースが必要だと分かり、この主張は否定される。キシロースという要因が両方の条件から消えているので、観察された違いはグルコースによるものだと言い切れる。
③ ⓐ,ⓓ 誤 どちらの培地にもグルコースがあるため、二つの仮説のどちらでも「どちらの培地でも発現しない」と予測が一致し、区別できない。
④ ⓑ,ⓒ 誤 変えているのはキシロースの有無であり、この比較が直接確かめるのは「キシロースが必要かどうか」。グルコースはどちらの培地にも無く、グルコースによる制御そのものを見ていない。
⑤ ⓑ,ⓓ 誤 二つの仮説のどちらでも「ⓑは発現し、ⓓは発現しない」と予測が一致するため、区別できない。
⑥ ⓒ,ⓓ 誤 グルコースとキシロースを同時に入れ替えており、違いがどちらの要因によるものかを切り分けられない。
よって ②

④を選びたくなりますが、ⓑとⓒで変えているのはキシロースの有無なので、この比較が確かめるのは「キシロースが必要かどうか」です。検討したい主張が名指ししている要因はグルコースですから、キシロースを両方の培地から外し、グルコースの有無だけを変える②を選びます。

第2問(必答) 生体膜(輸送タンパク質・気孔の開口・興奮の伝導と伝達)

生体膜を貫通して物質を輸送するタンパク質という共通の話題から、孔辺細胞の膨張による気孔の開口、ニューロンの活動電位と興奮の伝導・伝達へと広がります。配点17点。チャネル・担体(輸送体)・ポンプの役割分担を土台に、実験と図の読み取りが重なります。

問1:正解 ③(解答番号4/配点4)

<問題要旨>
下線部(a)「生体膜を貫通して物質を輸送するタンパク質(輸送タンパク質)」に関連して、チャネル・担体(輸送体)・ポンプの性質についての5つの記述から最も適当なものを選ぶ設問です。

<考え方>
受動輸送(濃度勾配に従う・ATPを使わない)と能動輸送(濃度勾配に逆らう・ATPを使う)の区別に戻れば決まります。チャネルと担体は受動輸送、ポンプは能動輸送を担い、選択的透過性はそのどちらにもみられます。

① 誤 チャネルも担体も特定の物質しか通さない。選択的透過性は受動輸送にもみられる性質である。
② 誤 担体(輸送体)にも受動輸送を担うものがある。グルコース輸送体は濃度勾配に従ってグルコースを運ぶ。
③ 正 水はアクアポリンという輸送タンパク質を通ることで、脂質二重層を直接透過する場合よりも速く膜を通過できる。水の透過性は特定の輸送タンパク質の働きで高められている。
④ 誤 ポンプはATPのエネルギーを使って濃度勾配に逆らう輸送(能動輸送)を行うタンパク質である。
⑤ 誤 アミノ酸は親水性で分子量も大きく、脂質二重層を自由には透過できない。輸送タンパク質を介して運ばれる。
よって ③
問2:正解 ②(解答番号5/配点4)

<問題要旨>
実験1では、タマネギの子葉から取り出した孔辺細胞とそれ以外の表皮細胞を、カリウムイオン(K⁺)を含む溶液・含まない溶液に浸し、明所・暗所に置いて膨張するかどうかを調べています。ⓐ〜ⓓの4つの記述のうち、この結果についての考察として適当なものの組合せを選びます。

<考え方>
実験の各条件が「何と何を比べているか」を対応づけ、その比較から言えることだけを拾います。行われていない条件については何も言えない、という切り方が要になります。

【実験1の条件と結果】
 孔辺細胞    +K⁺  暗所 … 形態は変化しなかった
 孔辺細胞    +K⁺  明所 … 膨張した
 孔辺細胞   K⁺なし  明所 … ほとんど膨張しなかった
 孔辺細胞以外の表皮細胞+K⁺ 明所 … 形態は変化しなかった

ⓐ 適当 K⁺を含む溶液の明所では膨張し、K⁺を含まない溶液の明所ではほとんど膨張しない。この2条件の違いはK⁺の有無だけなので、膨張にはK⁺の流入が必要だと言える。
ⓑ 適当でない K⁺を含む溶液でも暗所では形態が変化していない。暗所で特にK⁺を取り込んでいるとは言えず、むしろ逆の結果である。
ⓒ 適当 K⁺があっても暗所では膨張せず、明所でもK⁺がなければ膨張しない。どちらが欠けても膨張しないので、光とK⁺の両方が必要だと言える。
ⓓ 適当でない 孔辺細胞以外の表皮細胞は明所でしか調べていない。暗所に置いた結果がないので、暗所で膨張するかどうかは判断できない。
 適当なのはⓐとⓒ。
よって ②

ⓓのように「調べていない条件についての記述」は、内容の正しさではなく実験に対応する条件があるかどうかで落とします。

問3:正解 ③(解答番号6/配点4)

<問題要旨>
図1は、ニューロンが刺激を受けて興奮するときの膜電位の変化を模式的に示したもので、静止電位が約−60 mV、活動電位の最大値が約+40 mVであることが読み取れます。膜電位と興奮に関する5つの記述のうち、適当でないものを選ぶ設問です。

<考え方>
活動電位の各局面でどのイオンがどちら向きに動くかに戻ります。静止時は細胞内にK⁺が多く細胞外にNa⁺が多い状態が保たれており、脱分極は電位依存性ナトリウムチャネルが開いてNa⁺が細胞内へ流入することで、再分極は電位依存性カリウムチャネルが開いてK⁺が流出することで起こります。

① 正 静止電位が生じている細胞では、ナトリウムポンプの働きによってK⁺濃度は細胞外より細胞内のほうが高く保たれている。
② 正 閾値以上の刺激を与えると活動電位が発生し、それ以上刺激を強くしても活動電位の大きさは変わらない(全か無かの法則)。
③ 誤 図1で0ミリ秒から膜電位が急激に上昇して+40 mVの最大値に達するのは、ナトリウムチャネルを通してNa⁺が細胞外から細胞内へ「流入」するためである。「細胞外に流出する」としている点が誤り。
④ 正 最大値に達した後の膜電位の下降(再分極)には、電位に依存して開閉するカリウムチャネルが関与する。
⑤ 正 ナトリウムポンプはNa⁺を細胞外へ、K⁺を細胞内へと、両方のイオンを輸送する。
よって ③

適当でないものを選ぶ設問なので、正しい記述にうっかり印をつけないよう、設問文の指示を最後にもう一度確かめます。

問4:正解 ⑤(解答番号7/配点5)

<問題要旨>
活動電位が発生すると活動電流(局所電流)が生じ、それが次々に隣接する部分のチャネルを開くことで興奮が伝わります。この興奮の伝導と伝達についての文章中のア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>
不応期と伝導方向の関係、およびシナプスでの伝達の向きに戻れば決まります。一度興奮した部位はしばらく不応期に入って刺激を受けても興奮できないため、興奮は逆戻りできずに一定方向へ進みます。シナプスでは軸索末端から神経伝達物質が細胞外に放出され、次のニューロンの受容体に結合します。

【ア】一度興奮した部位は、しばらく不応期となって刺激を受けても興奮しない。
   → 「興奮しにくい」
【イ】そのため興奮は来た方向へは戻れず、まだ興奮していない側へだけ進む。
   → 「一定方向に伝わる」
【ウ】興奮が軸索を伝導してシナプスに達すると、軸索末端のシナプス小胞がエキソサイトーシスによって神経伝達物質をシナプス間隙へ出す。
   → 「細胞外に放出される」

【検算】伝導では活動電位の大きさは変わらないので、イに「増幅される」は入らない。伝達は放出する側の話なので、ウに「細胞内に取り込まれる」も入らない。
よって ⑤

この設問は①,⑥,⑦のいずれかを解答した場合は2点の部分点が与えられます。

第3問(必答) 骨格筋(筋収縮の仕組みと体節からの皮筋節の分化)

骨格筋の筋細胞の構造(図1)と、胚の体節が分化する様子(図2)という二つの話題を扱います。配点16点。前半はグリセリン筋・スキンド筋を使った実験から収縮に必要な条件を取り出し、後半はニワトリ胚の移植実験から皮筋節の分化を決めているものを突き止めます。

問1:正解 ①・②(解答番号8・9/配点6)(順序は問わない)

<問題要旨>
下線部(a)「骨格筋の収縮は、筋細胞が収縮することで起こる」に関連して、骨格筋の収縮に関する6つの記述のうち適当なものを二つ選ぶ設問です。解答の順序は問われません。

<考え方>
滑り説に戻ります。収縮はアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが互いに滑り込むことで起こり、フィラメント自身の長さは変わりません。収縮の開始はCa²⁺がトロポニンに結合してトロポミオシンの位置がずれることで起こり、ミオシン頭部でATPが分解されて滑りが進みます。

① 正 暗帯はミオシンフィラメントが存在する範囲に対応する。滑り込みによってサルコメアが短くなっても、ミオシンフィラメント自体の長さは変わらないので暗帯の長さは変わらない。
② 正 Ca²⁺がトロポニンに結合するとトロポミオシンの位置がずれ、アクチンフィラメント上のミオシン結合部位が露出して、アクチンとミオシンが結合できるようになる。
③ 誤 動物の筋細胞が無酸素状態で解糖を行ったときに蓄積するのは乳酸であり、エタノールではない。エタノールが生じるのはアルコール発酵で、酵母などが行う。
④ 誤 ATPが結合するのはアクチンではなくミオシン頭部である。ミオシン頭部でATPが分解され、そのエネルギーで頭部が動いてアクチンフィラメントを引き込む。
⑤ 誤 アクチンフィラメントもミオシンフィラメントも短くならない。互いに滑り込むことでサルコメアが短くなる。
⑥ 誤 強縮は単収縮が重なり合って生じるもので、その張力は単収縮より大きくなる。
 適当なのは①と②。
よって ①・②

⑤は滑り説そのものを取り違えた記述で、①と表裏の関係にあります。①が正しいと判断できれば⑤は自動的に落とせます。

問2:正解 ⑦(解答番号10/配点5)

<問題要旨>
試料として、筋細胞をグリセリンに浸して筋原繊維のみにした「グリセリン筋」と、細胞膜だけを除去して筋原繊維や細胞小器官は正常のままの「スキンド筋」が用意されています。実験1〜4の結果が与えられ、これを踏まえて実験5〜7でそれぞれ筋収縮が起こるか(○)起こらないか(×)の組合せを予測する設問です。

<考え方>
実験1〜4から「収縮にはATPと高濃度のCa²⁺の両方が必要」「Ca²⁺の供給源は筋小胞体」「グリセリン筋にはATPをつくる仕組みも筋小胞体も残っていない」という3点を取り出し、実験5〜7の条件に一つずつあてはめます。

【実験1〜4から読み取れること】
 実験1(グリセリン筋+ATP+高濃度Ca²⁺)が○、実験2(グリセリン筋+高濃度Ca²⁺、ATPなし)が×
  → 収縮にはATPが必要。逆に、筋原繊維だけでもATPと高濃度Ca²⁺があれば収縮する。
 実験3(スキンド筋+ATP+低濃度Ca²⁺)が×、実験4(実験3にカルシウムチャネルを開く薬剤を追加)が○
  → 収縮には高濃度のCa²⁺が必要で、その供給源はスキンド筋に残っている筋小胞体。

【実験5】グリセリン筋を、ATPのかわりにグルコースを含む高濃度Ca²⁺の溶液に浸す
  グリセリン筋は筋原繊維のみで、解糖系の酵素もミトコンドリアも残っていない。
  グルコースからATPをつくれないので、ATPがなく収縮は起こらない → ×
【実験6】グリセリン筋を、ATPと低濃度Ca²⁺の溶液に浸した後、カルシウムチャネルを開く薬剤を加える
  グリセリン筋には筋小胞体がないので、チャネルを開いてもCa²⁺は放出されない。
  Ca²⁺濃度は低いままなので収縮は起こらない → ×
【実験7】スキンド筋を、ATPと高濃度Ca²⁺の溶液に浸す
  スキンド筋は筋原繊維が正常で、細胞膜がないため外液のATPと高濃度Ca²⁺がそのまま筋原繊維に届く → ○

 実験5 × 実験6 × 実験7 ○
よって ⑦

この設問は③,⑤,⑧のいずれかを解答した場合は2点の部分点が与えられます。

問3:正解 ①(解答番号11/配点5)

<問題要旨>
図2は、体節が発生に伴って二つの組織に分化し、背側の表皮に近い側が皮筋節になることを示しています。実験8では脊索を別の胚の右側の体節と表皮の間に、実験9では背側神経管断片を別の胚の右側の体節と脊索の間に移植しています。これらの結果から、実験10(胚の左側の体節を取り出し、右の体節を取り除いた別の胚に背腹が逆になるように移植する)の1日後に体節がどのように分化するかを示した図を選びます。

<考え方>
実験8・実験9が示しているのは「体節のどこが皮筋節になるかは、体節自身があらかじめ持っている性質ではなく、まわりの組織から受け取るシグナルで決まる」ということです。したがって背腹を逆にして移植しても、皮筋節は体節の元の向きにではなく、胚の中での位置(神経管に近い背側)に従って分化します。

【実験8 脊索を右側の体節と表皮の間(背側)に移植】
 左側(通常どおり)… 背側に皮筋節が分化
 右側(脊索あり) … 皮筋節が分化しなかった
  → 脊索は、近くにある体節が皮筋節になるのを抑える。

【実験9 背側神経管断片を右側の体節と脊索の間(腹側)に移植】
 左側(通常どおり)… 背側に皮筋節が分化
 右側(断片あり) … ほぼ全体が皮筋節に分化
  → 背側神経管は、近くにある体節を皮筋節に分化させる。

【二つの実験からまとめる】
 本来なら腹側になるはずの部分でも、背側神経管のシグナルを受ければ皮筋節になる(実験9)。
 本来なら皮筋節になるはずの背側でも、脊索が近くにあれば皮筋節にならない(実験8)。
  → 体節には、あらかじめ「背側が皮筋節になる」という運命は決まっていない。決めているのは周囲の組織の位置である。

【実験10にあてはめる】
 体節の背腹を逆にして移植しても、シグナルを出す神経管(背側)と脊索(腹側)の位置は変わらない。
  → 移植した右側でも、胚の背側(神経管に近い側)で皮筋節が分化する。左右とも背側に皮筋節が現れる。

 ① 左右とも背側に皮筋節 … これに当たる。
 ② 右側は腹側に皮筋節 … 体節にあらかじめ背腹の運命が決まっている場合の図。実験9の結果と矛盾する。
 ③ 右側はほぼ全体が皮筋節 … 実験9のように背側神経管断片を余分に移植した場合の図。実験10ではその操作をしていない。
 ④ 右側は背側と腹側の両方に皮筋節 … 皮筋節を分化させるシグナルの出どころは神経管のある背側だけなので、腹側にも現れる理由がない。
 ⑤ 右側に皮筋節がない … 実験8のように脊索を背側に移植した場合の図。実験10ではその操作をしていない。
よって ①

③と⑤は、それぞれ実験9・実験8の右側の結果をそのまま持ってきた図です。実験10で移植しているのは体節だけで、脊索も神経管断片も動かしていない点を確かめると落とせます。

第4問(必答) 植物の生殖と環境応答(ジャガイモの塊茎形成)

ジャガイモの塊茎形成をテーマに、高校のクラスが2つの班に分かれて探究活動に取り組む、という設定です。配点19点。1班は光受容体(フィトクロム)の関与を確かめる実験計画を、2班は同化物の分配を測る方法の設計を担当し、どちらも「何をどう測れば仮説を検証できるか」が問われます。

問1:正解 ⑤(解答番号12/配点5)

<問題要旨>
下線部(a)に関連して、自然環境下の植物における有性生殖と無性生殖の一般的な特徴を述べたⓐ〜ⓒのうち、有性生殖の特徴に関する記述を過不足なく含む組合せを選ぶ設問です。

<考え方>
有性生殖は配偶子の合体を伴うので相手が必要で、子には両親由来の遺伝子の新しい組合せが生じます。無性生殖は相手が不要で、子は親と同じ遺伝情報を持ちます。この2点で3つの記述を振り分けます。

ⓐ 有性生殖の特徴 受精には他の個体がつくった配偶子が必要なので、個体群密度が著しく低いと相手に出会えず、子孫を残しにくい。無性生殖なら1個体でも子孫を残せる。
ⓑ 無性生殖の特徴 親個体の遺伝情報がそのまま全て子に受け継がれるのは無性生殖。有性生殖では減数分裂によって、親の持つ遺伝子の半分ずつが配偶子に入る。
ⓒ 有性生殖の特徴 子の遺伝的な性質がばらつくため、新しい病原菌に対して抵抗性を持つ個体が集団の中に残りやすく、全滅が起こりにくい。無性生殖では子が全て同じ遺伝情報を持つので、全滅しやすい。
 有性生殖の特徴はⓐとⓒ。
よって ⑤

この設問は①,③のいずれかを解答した場合は2点の部分点が与えられます。

問2:正解 ④・⑤(解答番号13・14/配点5)

<問題要旨>
1班は、ジャガイモの塊茎形成に対する日長の作用がフィトクロムを介しているかを確かめるため、24時間周期の光条件を変えた実験1〜4を計画し、結果を予測しました。図1では、実験1(明期8時間+完全暗期16時間)は塊茎が形成される、実験2(暗期の途中に白色光を短く当てる)は形成されない、実験3(暗期の途中にアを当てる)は形成されない、実験4(暗期の途中にアを当てた直後に続けてイを当てる)は形成される、となっています。ア・イに入る光をそれぞれ選びます。

<考え方>
フィトクロムは、赤色光を吸収すると吸収型(Pfr型)に、遠赤色光を吸収すると赤色光吸収型(Pr型)に戻るという、可逆的な性質を持ちます。短日植物の花芽形成と同じく、暗期の途中の赤色光による光中断は短日の効果を打ち消し、その直後に当てた遠赤色光はさらにその赤色光の効果を打ち消します。図1で各実験の帯がどう並んでいるかを、この性質にあてはめます。

【実験1・実験2でまず分かること】
 明期8時間+暗期16時間では塊茎が形成される(短日条件)。
 暗期の途中に白色光を短く当てる(光中断)と形成されない。
  → 塊茎形成を誘導しているのは、連続した暗期の長さである。

【ア 実験3】
 光中断に使う光をアに替えても塊茎は形成されない。
  → アは白色光と同じく光中断に有効な光。フィトクロムを吸収型(Pfr型)に変え、短日の効果を打ち消すのは赤色光。
  → ア = 赤色光 …④

【イ 実験4】
 図1の実験4の帯を見ると、暗期の途中にアの帯が入り、その直後に続けてイの帯が入っている。
 この順で当てると塊茎が形成される=アによる光中断の効果が打ち消されている。
  → 赤色光でPfr型になったフィトクロムをPr型に戻すのは遠赤色光。
  → イ = 遠赤色光 …⑤

【検算】紫外線・青色光・緑色光ではフィトクロムの赤色光/遠赤色光の可逆性を確かめられず、「フィトクロムの関与を確かめる」という1班の目的に合わない。
よって ア ④ ・ イ ⑤

この設問は、13と14の両方が正解のときに5点、一方のみ正解のときは2点という採点です。

問3 測定項目:正解 ②(解答番号15/配点4)

<問題要旨>
2班は「より多くの量の同化物が地下茎に分配されるようになる」という仮説を立て、表1の3つの栽培条件について、地下茎(x)と地下茎を除く植物全体(y)を試料として特定の項目を測定することにしました。測定する項目として最も適当なものを選ぶ設問です。

<考え方>
測りたいのは「炭酸同化で生産された有機物(同化物)の量」です。水分を含まないこと、そして同化物全体を代表する量になっていることの2点で、5つの選択肢を振り分けます。

① 誤 生のままの重量は水分量に大きく左右される。地下茎と葉では含水率も違うので、同化物の量の比較には使えない。
② 正 乾燥させた後の重量(乾燥重量)は水分を除いた量なので、その器官に蓄えられている有機物の量の指標として使える。
③ 誤 焼却した後の灰の重量は、有機物が燃えてなくなった後に残る無機物の量である。同化物の量そのものではない。
④ 誤 デンプンは同化物の一部にすぎず、器官によって蓄え方も違う。地下茎に分配された同化物全体を表さない。
⑤ 誤 DNAの重量はおおよその細胞数の指標であって、同化物の量ではない。
よって ②

④は「塊茎にはデンプンが蓄えられる」という知識に引っぱられて選びやすい選択肢です。しかし仮説は同化物全体の分配についてのものなので、一部の物質だけを測っても検証になりません。

問3 計算式:正解 ⑧(解答番号16/配点5)

<問題要旨>
表1では、栽培条件1(長日条件で一定期間栽培)を出発点として、条件2(その後、短日条件に移して栽培=塊茎形成が誘導される条件)と条件3(その後も長日条件のまま栽培=対照条件)が枝分かれし、それぞれ地下茎 x₁〜x₃、地下茎を除く植物全体 y₁〜y₃ が得られます。地下茎に分配された同化物の比率を求め、条件2と条件3で比較するための計算式を選ぶ設問です。

<考え方>
「分配された比率」は「その期間に新しくつくられた同化物のうち、地下茎に回った分の割合」です。条件1が枝分かれの時点なので、条件2・条件3それぞれの期間の増加分は、条件1の値との差で表します。

【式の組み立て】
 条件2の期間に新しくつくられた同化物の総量 =(x₂+y₂)−(x₁+y₁)
 そのうち地下茎に分配された分       = x₂ − x₁
  地下茎に分配された比率(短日条件) = (x₂ − x₁) / {(x₂+y₂) − (x₁+y₁)}

 対照条件3も同じ形で
  地下茎に分配された比率(長日のまま)= (x₃ − x₁) / {(x₃+y₃) − (x₁+y₁)}

 この2つを比べ、短日条件のほうが大きければ仮説が支持される。

⑥ 誤 (x₁+y₁) を (x₂+y₂)、(x₃+y₃) で割っただけで、地下茎とそれ以外を区別していない。植物全体が何倍になったかを見ているにすぎない。
⑦ 誤 分子が植物全体の増加量になっており、地下茎の分だけを取り出していない。
⑧ 正 分子が地下茎の増加量 x − x₁、分母がその期間の同化物の増加量 (x+y) − (x₁+y₁) になっており、地下茎に分配された割合を表している。
⑨ 誤 分子が x₂ − x₃、y₂ − y₃ と条件2と条件3の差になっており、各条件での分配の比率になっていない。
よって ⑧

条件1が枝分かれの時点であることを見落として x₂/(x₂+y₂) のような「その時点での重量の比」を求めると、条件1までに蓄えられていた分まで含んでしまいます。「分配されるようになる」という仮説は期間中の増加分についての主張なので、条件1との差をとります。

第5問(必答) 陸上生態系(生産構造と有機物の蓄積・炭素循環)

陸上生態系の植生の構造と、有機物の蓄積および炭素の循環を扱います。配点14点。生産構造図と相対照度の対応、森林と農耕地の有機物量の表、森林を農耕地に変えたときの変化と、3問とも図表の数値に戻って判断させる作りです。

問1:正解 ⑦(解答番号17/配点5)

<問題要旨>
グラフⓐ・ⓑは、林床の草本層が発達した森林あるいは牧草地について、同化器官(左向きの棒)と非同化器官(右向きの棒)の生物量を、高さ(最高点を1とする相対値)ごとに、総量を1とする相対値で示しています。森林のグラフがⓐ・ⓑのどちらかを判断し、さらにその森林で推測される相対照度のグラフをⓒ〜ⓕから選ぶ設問です。

<考え方>
まず「森林は幹・枝・根という非同化器官が生物量の大部分を占め、葉(同化器官)の占める割合はごくわずかである」という点でⓐ・ⓑを振り分けます。次に、相対照度はその高さより上にある同化器官がどれだけ光を吸収したかで決まるので、同化器官のある高さでは大きく下がり、同化器官のない高さでは横ばいになる、という対応で4つのグラフを絞ります。

【森林はⓐかⓑか】
 ⓐ … 同化器官の棒は高さ0.2〜0.5あたりで最も長く0.05前後あり、高さ全体に広く並ぶ。非同化器官は最長でも0.21程度。同化器官が生物量のかなりの割合を占めている。
 ⓑ … 同化器官の棒はどの高さでも非常に短い。非同化器官は高さ0〜0.1の棒が0.39と突出し、上にいくほど短くなる。
 森林では、幹・枝・根が生物量の大部分を占め、葉が占める割合はごくわずかである。
  → 森林は ⓑ、牧草地は ⓐ

【ⓑで同化器官がどの高さにあるか】
 高さ0.4〜0.9 … 短い棒が並ぶ   … 林冠の葉
 高さ0.1〜0.4 … 棒がない     … 幹だけの空間
 高さ0〜0.1  … 独立した棒がある … 林床の草本層

【相対照度の形を予想する】
 高さ1.0から0.8付近 … 林冠の葉が光を吸収するので、相対照度が急に下がる。
 高さ0.8から0.1付近 … 葉がないのでほとんど下がらず、グラフは縦に近い線になる。
 高さ0.1より下    … 草本層がさらに光を吸収するので、もう一段下がって0に近づく。

 ⓒ 誤 上から下まで一様に下がり続ける形で、葉のない層に対応する縦に近い部分がない。同化器官が高さ全体に広く分布する牧草地に合う形。
 ⓓ 誤 高さ0.45付近まで下がった後は完全に一定で、林床でさらに下がる段差がない。
 ⓔ 正 上部で急に下がり、その下は縦に近い線が続き、高さ0.1付近でもう一段下がって0に近づく。ⓑの同化器官の分布とそのまま対応する。
 ⓕ 誤 上部ではほとんど下がらず下部で大きく下がる形で、葉が低い位置にしかない植生に当たる。林冠に葉がある森林には合わない。
  → ⓑ と ⓔ
よって ⑦

ⓐとⓑの見分けは「同化器官の棒がどれだけ長いか」で決まります。左向きの棒の目盛りが0.05までしかないことに注意すると、ⓑの同化器官がいかに少ないかがつかめます。

問2:正解 ②(解答番号18/配点4)

<問題要旨>
表1は、森林(熱帯・温帯・亜寒帯)と農耕地(熱帯・温帯)について、蓄積されている有機物の量(現存量と土壌有機物量)と純生産量の推定値を、炭素量に換算して示しています。これらの値に基づいた考察として適当でないものを選ぶ設問です。

<考え方>
表の数値をそのまま計算して一つずつ確かめます。純生産量は年間の炭素固定量に当たるので、土壌有機物量が多い理由を説明できるかどうかは、有機物が「供給される側」と「分解される側」に分けて考えます。

【表1の数値(単位は省略)】
 森林 熱帯  現存量18 土壌有機物12 純生産1.0
 森林 温帯  現存量15 土壌有機物13 純生産0.7
 森林 亜寒帯 現存量 9 土壌有機物21 純生産0.2
 農耕地 熱帯 現存量0.5 土壌有機物 6 純生産0.5
 農耕地 温帯 現存量0.5 土壌有機物 7 純生産0.5

① 適当 合計に占める現存量の割合を計算する。
    熱帯の森林 18 ÷ (18+12) = 0.60
    温帯の森林 15 ÷ (15+13) ≒ 0.54
    亜寒帯の森林 9 ÷ ( 9+21) = 0.30
    熱帯の農耕地 0.5 ÷ 6.5 ≒ 0.08  温帯の農耕地 0.5 ÷ 7.5 ≒ 0.07
    最も高いのは熱帯の森林。
② 適当でない 亜寒帯の森林の純生産量は0.2で5つの生態系の中で最も小さく、土壌に供給される有機物はむしろ少ない。土壌有機物量が多いのは、低温で分解者のはたらきが鈍く、分解が供給に追いつかないためである。炭素固定量が少ないことは、土壌有機物量が多い理由にはならない。
③ 適当 現存量は熱帯で18→0.5、温帯で15→0.5と、どちらも大きく減少する。
④ 適当 合計は熱帯の森林が18+12=30、亜寒帯の森林が9+21=30で、ほとんど変わらない。
よって ②

④は熱帯と亜寒帯で合計がどちらも30になるという計算で確かめられます。現存量と土壌有機物量の内訳は大きく違うのに合計が同じ、という点がこの表の面白いところです。

問3:正解 ⑤(解答番号19/配点5)

<問題要旨>
下線部(c)に関連して、森林を焼き払って農耕地として利用し続けると土壌有機物量が次第に減少していく、その理由を考察した文章中のア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>
土壌有機物量は「植生から供給される有機物」と「分解者によって分解される有機物」の差し引きで決まります。文章はこの2つを一つずつ理由として挙げているので、地表温度の上昇が効くのは分解の側、収穫による持ち出しが効くのは供給の側、と振り分けます。

【ア】農耕地では地表温度が高くなりやすい。温度が上がると分解者のはたらきが活発になる。
   → 促されるのは土壌中の有機物の 「分解」
【イ】供給の側を小さくしている要因を入れる。表1で農耕地の純生産量0.5は、熱帯の森林1.0・温帯の森林0.7より小さい。
   → 「純生産」量が森林より小さい
   (「呼吸」量が森林より小さいのなら、植生に残る有機物はむしろ増えることになり、供給が減る理由にならない。)
【ウ】純生産量が小さいうえ、収穫のたびに生物量が農耕地の外へ持ち出される。
   → 植生からの有機物の供給は森林より 「少なく」 なる

 供給が減り、分解が進む。この差し引きで土壌有機物量は次第に減少していく。
よって ⑤

アを「蓄積」としてしまうと「蓄積が促されるから土壌有機物量が減少する」となり、文章全体の筋が通らなくなります。空欄の前後だけでなく、段落の結論と合うかどうかで確かめます。

第6問(必答) A 海岸で見つけた動物の系統

アキさんとハルさんが探究活動で海岸に出かけ、観察した生物について話し合う会話文です。生物学でいう「動物」の条件を確かめたうえで、ノートにまとめた特徴(図1)をもとに、動物の主要な門の系統樹(図2)のどこに当てはまるかを決めます。第6問全体の配点は20点です。

A問1:正解 ⑥(解答番号20/配点4)

<問題要旨>
「カイメンは岩に張り付いて動かないけれど動物だったか」という会話を受けて、ⓐ〜ⓒのうち、生物学における「動物」の全てに当てはまる記述を過不足なく含む組合せを選ぶ設問です。

<考え方>
「全てに当てはまるか」を問う設問なので、反例が一つでもある記述を落とします。会話に出てきた海綿動物や刺胞動物という、体制の単純な動物を反例の候補に置いて確かめます。

ⓐ 全てには当てはまらない 海綿動物には胚葉の分化がなく、刺胞動物は外胚葉と内胚葉からなる二胚葉性で中胚葉を持たない。三つの胚葉が形成されるのは三胚葉性の動物に限られる。
ⓑ 全てに当てはまる 動物は光合成を行わず、他の生物がつくった有機物を取り入れて生きる従属栄養生物である。
ⓒ 全てに当てはまる 動物は全て多細胞生物である。単細胞の従属栄養生物は動物に含めない。
 全てに当てはまるのはⓑとⓒ。
よって ⑥

「動く」ことは動物の定義に入っていません。カイメンのように固着して動かない動物がいることが、この会話文の出発点になっています。

A問2 カメノテ:正解 ④(解答番号21/配点2)

<問題要旨>
図1のノートにまとめた特徴から、カメノテが図2の系統樹のV〜Zのどこに当てはまるかを選ぶ設問です。図2では、Vが海綿動物門、Wが組織の分化の後に単独で分かれる門、Xがへん形動物門・環形動物門を含む旧口動物のまとまり、Yが線形動物門を含む旧口動物のまとまり、Zが脊索動物門を含む新口動物のまとまりとして示されています。

<考え方>
ノートの特徴のうち、門を決められる決定的なものを拾います。「節のある器官を持つ」「脱皮する」が節足動物の特徴で、節足動物は線形動物とともに、脱皮によって成長するグループにまとめられます。

【カメノテのノート】硬い殻を持つ/節のある器官を持つ/脱皮する
  「節のある器官を持つ」+「脱皮する」 → 節足動物門(カメノテは甲殻類)

【図2での位置】
 旧口動物は二つのまとまりに分かれ、一方(X)はへん形動物門・環形動物門を含み、もう一方(Y)は線形動物門を含む。
 線形動物とともに脱皮によって成長するグループをつくるのが節足動物なので、節足動物門はYの中の××動物門に当たる。
  → カメノテは Y
よって ④

「硬い殻を持つ」だけでは軟体動物や棘皮動物とも区別できません。門を一つに決められるのは「節のある器官」と「脱皮する」のほうです。

A問2 ウメボシイソギンチャク:正解 ②(解答番号22/配点2)

<問題要旨>
図1のノートにまとめた特徴から、ウメボシイソギンチャクが図2のV〜Zのどこに当てはまるかを選ぶ設問です。

<考え方>
「刺胞(刺細胞)を持つ」は刺胞動物門だけが持つ特徴なので、これ一つで門が決まります。あとは図2の分岐の順序から、刺胞動物門がどの位置に来るかを読み取ります。

【ウメボシイソギンチャクのノート】やわらかい/触手を動かす/刺胞(刺細胞)を持つ
  「刺胞(刺細胞)を持つ」 → 刺胞動物門

【図2での位置】
 Vは海綿動物門で、「組織の分化」の矢印より前に分かれている。
 刺胞動物は組織は分化しているが、旧口動物にも新口動物にも属さない。
 図2で、組織の分化の後、旧口動物と新口動物が分かれるより前に単独で分岐しているのがW。
  → ウメボシイソギンチャクは W
よって ②

「やわらかい」「触手を動かす」だけでは、たとえば軟体動物とも紛らわしくなります。刺胞は刺胞動物だけが持つ細胞なので、そこで決めます。

A問2 ムラサキウニ:正解 ⑤(解答番号23/配点2)

<問題要旨>
図1のノートにまとめた特徴から、ムラサキウニが図2のV〜Zのどこに当てはまるかを選ぶ設問です。

<考え方>
「原口は口にならない」は新口動物の定義そのものなので、これで新口動物のまとまりに決まります。図2で「新口動物」と書かれているまとまりがどれかを見ます。

【ムラサキウニのノート】トゲで覆われている/硬い殻を持つ/原口は口にならない
  「原口は口にならない」 → 新口動物

【図2での位置】
 図2で「新口動物」と示されたまとまりに含まれるのは、☆☆動物門と脊索動物門で、これがZ。
 トゲと硬い殻(骨片からなる殻)は棘皮動物の特徴で、棘皮動物は新口動物なので、☆☆動物門が棘皮動物門に当たる。
  → ムラサキウニは Z
よって ⑤

問2は「同じものを繰り返し選んでもよい」とされているので、3つが必ず別々の記号になるとは限りません。今回は結果として三つとも異なる記号になります。

第6問(必答) B 系図シミュレーションと遺伝的浮動

サイコロを振って親と子を線で結び、無性生殖をする1倍体の集団の系図をつくるシミュレーションです。図3の手順に従って図4・図5を読み取り、遺伝的浮動による遺伝子頻度の変動と、新しく生じた突然変異がたどる運命を考えます。なお、この問3については問題冊子とともに、問題文の末尾に「ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。」を加える訂正が示されています。

B問3 ア:正解 ④(解答番号24/配点3)

<問題要旨>
図4はハルさんの結果で、世代7までは線が引かれていますが、世代7と世代8を結ぶ線が未完成になっています。ハルさんが世代7を親世代として振ったサイコロの目は会話文の直前に示されています。図4を完成させたうえで、世代8の6個体のうち何個体が世代1の個体Ⓔに由来するかを選ぶ設問です。

<考え方>
まず図4を世代1から下へたどって、世代7の6個体がそれぞれⒺとⒻのどちらに由来するかを決めます。次に図3の手順どおり、示されたサイコロの目を小さい順に親世代の左から割り当て、それぞれの目が出た回数をその個体の子の数として世代8との線を引きます。

【図4を世代1からたどる】
 世代1→世代2 … Ⓐから1個体、Ⓒから2個体、Ⓓ・Ⓔ・Ⓕからそれぞれ1個体(Ⓑは子を残さない)
 世代2→世代3 … 左から5番目(Ⓔ由来)から5個体、6番目(Ⓕ由来)から1個体
   → 世代3の時点で、集団はⒺ由来(左から1〜5番目)とⒻ由来(6番目)だけになる。
 世代3→世代4 … Ⓔ由来の個体から4個体、Ⓕ由来の個体から2個体
 世代4→世代5 … Ⓔ由来から5個体、Ⓕ由来から1個体
 世代5→世代6 … Ⓔ由来から4個体、Ⓕ由来から2個体
 世代6→世代7 … Ⓔ由来から3個体、Ⓕ由来から3個体
   → 世代7は、左から1・2・3番目がⒺ由来、4・5・6番目がⒻ由来

【世代7→世代8 サイコロの目は 1,2,3,3,4,5】
 目を小さい順に、親世代の左の個体から割り当てる。
  左から1番目 ← 目1  出た回数 1 → 子 1個体
  左から2番目 ← 目2  出た回数 1 → 子 1個体
  左から3番目 ← 目3  出た回数 2 → 子 2個体
  左から4番目 ← 目4  出た回数 1 → 子 1個体
  左から5番目 ← 目5  出た回数 1 → 子 1個体
  左から6番目 ← 目6  出た回数 0 → 子 0個体
【検算】1+1+2+1+1+0 = 6 … 各世代6個体が生き残るという条件と合う。

 Ⓔ由来(左から1〜3番目)の子 … 1+1+2 = 4個体
 Ⓕ由来(左から4〜6番目)の子 … 1+1+0 = 2個体
  → 世代8の6個体のうち、Ⓔに由来するのは4個体
よって ④

サイコロの目は「出た順」ではなく「小さい順に左から」割り当てます。目3が2回出ていること、目6が1回も出ていないことを数え落とさないのが要点です。

B問3 イ:正解 ③(解答番号25/配点3)

<問題要旨>
アキさんの結果(図5)の✱印のところで突然変異が起こったと考えたとき、変異型の対立遺伝子を持つ個体が一つの世代中に最大で何個体まで増加するかを選ぶ設問です。✱は、世代1の個体Ⓐから世代2の左端の個体へ向かう線の上に付いています。

<考え方>
突然変異は✱の付いた線が結んでいる先、つまり世代2の左端の個体に伝わります。以後はその個体から下へ伸びる線だけを追い、世代ごとに変異型が何個体いるかを数えます。線が途切れたところで変異型は集団から消失します。

【図5で✱の下の系統だけを追う】
 世代2 … ✱の線の先の個体、すなわち左端の1個体が変異型     … 1個体
 世代3 … その個体から、左から1・2・3番目の3個体へ線が伸びる … 3個体
 世代4 … 世代3の1・2番目からは線が出ておらず、3番目から2個体へ線が伸びる … 2個体
 世代5 … 世代4の変異型2個体のうち、1個体だけが子を1個体残す … 1個体
 世代6 … その個体が子を1個体残す               … 1個体
 世代7 … 世代6の変異型個体からは線が出ていない        … 0個体(消失)

 変異型の個体数の推移 1 → 3 → 2 → 1 → 1 → 0
 最大は世代3の 3個体。

【検算】アキさんは「世代8の全個体が個体Ⓑに由来している」と言っている。図5をたどると世代7・世代8はすべてⒷ由来で、Ⓐ由来の系統は残っていない。変異型が途中で消失したことと矛盾しない。
よって ③

✱が付いているのは世代1のⒶそのものではなく、Ⓐから世代2の左端へ向かう線です。Ⓐからはもう1本、世代2の左から2番目へ向かう線が出ていますが、こちらには変異は伝わりません。

B問4:正解 ②(解答番号26/配点4)

<問題要旨>
下線部(b)「遺伝子頻度の変動」に関連して、現実の生物集団で起こる遺伝子頻度の変動についてのⓓ〜ⓖのうち、適当なものの組合せを選ぶ設問です。シミュレーションの結果も手がかりにして判断します。

<考え方>
遺伝的浮動の性質に戻ります。新しく生じた変異は最初は集団中に1個体分しかないので、多くは偶然によって失われます。一方、生存や繁殖にとって有利でも不利でもない中立な変異であっても、偶然によって集団全体に広まる(固定する)ことがあります。また遺伝的浮動の影響は集団が小さいほど大きくなります。

ⓓ 適当 新しく生じた突然変異は最初1個体にしか存在せず、その個体が子を残さなければ失われる。図5でも、✱の変異は世代3で3個体まで増えた後に集団から消失している。
ⓔ 適当でない 中立な突然変異も、遺伝的浮動によって集団全体に広まることがある。図5では世代8の全個体が個体Ⓑに由来しており、有利でも不利でもない違いが集団全体に広まりうることを示している。
ⓕ 適当 1回の突然変異に由来する対立遺伝子が集団全体に広まっているなら、その対立遺伝子は変異が生じた1個体から受け継がれたものである。したがってその世代の全個体は、その個体を共通の祖先に持つことになる。
ⓖ 適当でない 遺伝的浮動が遺伝子頻度の変動に与える影響は、集団が小さいほど大きく、大きくなるほど小さくなる。
 適当なのはⓓとⓕ。
よって ②

ⓔとⓖは、どちらもシミュレーションの結果がそのまま反例になっています。6個体という小さな集団だからこそ、中立な違いが8世代で集団全体に広まったことを確かめておくと、中立説と遺伝的浮動の関係が整理できます。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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