2023年度 大学入学共通テスト 本試験 物理基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解2

<解説>
なめらかな床の上で複数の箱が一体となって右向きに加速運動しているとき、箱Aは自分より右側の箱B(さらにその先の箱Cも含めて)全体を押す役割を担っています。一方で、箱Bは自分より右側にある箱Cだけを押しています。つまり、箱Aが箱Bに及ぼす力は、箱Bが箱Cに及ぼす力よりも大きくなりやすい状況です。したがって、箱Aから箱Bへはたらく力の大きさは、箱Bから箱Cへはたらく力の大きさより大きくなります。

問2:正解5

<解説>
ばねAとばねBの両端に同じおもりをつるして静止させたところ、ばねAは自然の長さから「ある長さ」だけ伸び、ばねBは自然の長さから「その2倍の長さ」だけ伸びています。ばねが伸びたときに蓄えられるエネルギーは、ばねの伸び具合の大きさとばね自体の性質(強さ)との組み合わせによって決まります。問題文では、ばねBの伸びが2倍大きい代わりに、ばね自体の強さはばねAより小さくなるよう設定されています。その結果、ばねBに蓄えられるエネルギーはばねAの2倍になることがわかります。

問3:正解3

<解説>
ふた付きの容器に閉じこめた気体が加熱されてピストンを押し上げると、気体は熱を受け取る(Qが正)だけでなく、外へ仕事をする(Wが正)ことになります。ところが、加えられた熱量のすべてが仕事に変わるわけではなく、一部が気体の内部に蓄えられます。このため、気体が受け取った熱量Qのほうが、気体が外部に対してした仕事Wよりも大きくなり、同時に気体の内部エネルギーが増加していると考えられます。

問4:正解4

<解説>
弦の基本振動数を110Hzに合わせたいとき、4倍振動は440Hzになります。おんさ(基準音)440Hzと同時に音を鳴らしてみると、1秒あたり2回のうなりが聞こえたことから、ギターの弦の音は440Hzよりわずかに低い438Hzだと推定できます。そこから弦の張力を大きくしていくと、弦を伝わる波が速くなり振動数も高くなるため、やがて440Hzに一致します。したがって、最初の振動数は438Hzで、弦の張力を「大きく」して調律します。

第2問

問5:正解4

<解説>
水平方向に投げ出された小球は、空気抵抗が無視できるとき、等しい時間間隔で同じ距離だけ進むことになります。問題文の表をみると、0.1秒ごとに水平方向の位置が約0.39メートルずつ増えているため、0.3秒後には最初の数値の3倍ほどになり、約1.17メートルとなるのが自然な結果と考えられます。

問6:正解1

<解説>
鉛直方向の運動では、重力以外の力(空気抵抗など)が無視できる場合、初速度がゼロのときから一定の割合で速さが増えていきます。時間とともに少しずつ速さが増していくのではなく、均一な割合(重力加速度)で増加するので、速さと時間の関係は直線的にのびるグラフになります。

問7:正解4

<解説>
同じ高さから、異なる水平方向の初速度で小球を投げても、鉛直方向の落下のしかたは同じです。そのため、床までの高さが同一であれば、水平速度が異なる小球でも同時に床に到達します。これは水平方向の速さが鉛直方向の運動時間に影響を与えないからです。

問8:正解2

<解説>
それぞれの小球が床に達したときの速さを比較すると、鉛直成分は同じ高さから落ちてきたためほぼ同じ大きさになり、水平方向の成分だけが異なります。水平速度が大きいほど、最終的な速さ(鉛直成分と水平成分を組み合わせた大きさ)も大きくなります。よって、もっとも速く投げた小球がいちばん大きな速さで床に到達すると考えられます。

問9:正解6

<解説>
一方の小球Aは高さ h から自由落下し、もう一方の小球Bは床から真上に投げ上げられて同時に床へ戻ってくるように設定されています。自由落下の小球が床に着くまでの時間と、投げ上げられた小球が床に戻るまでの時間が等しくなるように初速度を決めると、床に戻るまでの往復時間が自由落下の時間と一致します。その結果、小球Bの投げ上げ初速度は、高さ h と重力加速度 g を使った特定の値となり、重力による加速時間の「半分ほどで上昇し、残りの半分で下降する」イメージと対応して、床に到達するまでの全体時間をそろえることができます。

問10:正解7

<解説>
小球Aは高さ h から静かに落下し、小球Bは床から真上に投げ上げられて同時に床に到達する設定です。小球Bの最高点は床からある高さ h_B に達しますが、ふたつの小球が同時に床に着くように調整すると、A が落下してきた距離 h のほうが B が落下する前に到達した最高点の高さ h_B よりも大きいことがわかります。
床に着く直前の小球A の運動エネルギーは、高さ h から落下して失った位置エネルギーに相当し、小球B の運動エネルギーは最高点から床までの高さ h_B に対応する位置エネルギーに相当します。最終的に変換されるエネルギー量は落下距離に比例するので、落下距離が大きい小球A のほうが運動エネルギーも大きくなります。

第3問

問11:正解1

<解説>
風力発電は、空気が動くことで生じる力学的なエネルギーを利用して風車を回し、連結した発電機によって電気エネルギーを取り出す方法です。風を受けて回転する風車には明確に動き(運動エネルギー)が存在し、その回転を発電機につなげることで電気を得ています。

問12:正解4

<解説>
太陽光発電では、太陽電池に光エネルギーが当たると電流が流れ、それを直接電気エネルギーとして取り出せる仕組みになっています。太陽光は波長に応じてエネルギーを持っており、太陽電池の材料がそれを受けとめると電気が発生するのです。

問13:正解6

<解説>
問題文のグラフによれば、風速がある程度速くなった段階で発電量が大きくなり、その状態が長く続くと、1日単位で見ると一般家庭の1日分の消費量をはるかに上回る電力を生み出す場合があります。ここでは、10m/sから15m/sほどの風が絶えず吹き続けると想定すると、1台の風力発電機で1日に生み出される電力が一般家庭の消費量の24倍に相当するという見積もりとなっています。

問14:正解2

<解説>
送電線で生じる電力損失は、送電するときの電流の大きさに関係します。電流を小さく抑えると、送電線の抵抗によって発生する熱によるエネルギー損失を大幅に減らせます。もし損失をある基準の10のマイナス6倍に抑えたいなら、電流を10のマイナス3倍程度にまで減らすことが必要になります。

問15:正解3

<解説>
送電する電力を一定に保ちつつ電流を小さくするためには、その分、電圧を大きくしなければなりません。たとえば電流を10分の1にすれば電圧を10倍に、電流を1000分の1にすれば電圧を1000倍にすることで、同じ電力を遠方まで送ることが可能になります。これは送電の実際の技術でも、高圧で送電して変圧器で降圧する方法が採られています。

問16:正解6

<解説>
変圧器は電磁誘導の原理を利用しています。一次コイルに交流電流を流すと、鉄心の中で変動する磁場が生じ、これが二次コイルへ伝わって電圧を発生させます。理想的な変圧器では、二次側の電圧は一次コイルと二次コイルの巻き数の比率に応じて変化し、巻き数の割合が大きいほうに高い電圧が得られる仕組みになっています。

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