2023年度 大学入学共通テスト 本試験 地学基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解④

<問題要旨>

エラトステネスの方法を用いて、2地点の太陽の南中高度の差と、その2地点間の距離から地球の全周を求める計算問題です。

<選択肢>

①~③【誤】

計算結果が異なります。計算過程を見直す必要があります。

④【正】

2地点の緯度の差は、太陽の南中高度の差に相当します。

緯度の差 = 57.6°- 53.1° = 4.5°

この緯度の差(中心角)に対する弧の長さが550kmです。

地球の全周(360°)の長さを L とすると、中心角と弧の長さの比は等しくなるため、以下の比例式が成り立ちます。

4.5° : 550km = 360° : L

これを解くと、 L = 550 × (360 / 4.5) = 550 × 80 = 44000 km となります。

問2:正解①

<問題要旨>

プレート境界の種類と、それに伴う地形、地震、火山活動に関する基本的な知識を問う問題です。

<選択肢>

①【正】

イ:海底にある発散境界では、マントルから新しい海洋プレートが生成され、両側に拡大していきます。この場所に形成される海底の大山脈を「海嶺」と呼びます。

ウ:深発地震は、沈み込むプレートの内部で発生します。プレートの沈み込みが起こるのは「収束」境界です。

エ:プレート同士が水平にすれ違う「すれ違い」境界では、大規模なマグマの生成は起こらず、火山活動は見られません。 以上のことから、この組み合わせが正しいです。

②【誤】

ウとエが誤りです。深発地震が起こるのは収束境界であり、火山活動が見られないのはすれ違い境界です。

③【誤】

イが誤りです。海溝は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む収束境界に形成される地形です。

④【誤】

イとウとエがすべて逆です。海溝は収束境界、深発地震は収束境界、火山活動がないのはすれ違い境界です。

問3:正解①

<問題要旨>

地層の対比に用いられる「鍵層」として適している地層の特徴について問う問題です。

<選択肢>

①【正】

鍵層は、離れた場所にある地層が同じ時代のものであることを示すための目印となる層です。そのためには、ごく短い期間に、地理的に広い範囲にわたって堆積した地層であることが理想的です。例えば、火山の噴火によって広範囲に降り積もった凝灰岩層は、地質学的には「同時」とみなせる短い期間に堆積するため、鍵層として非常に有用です。

②【誤】

分布範囲が狭いと、離れた地域の地層を対比するための鍵としては使えません。

③【誤】

堆積期間が長いと、その地層が堆積している間に他の場所では別の現象が起きている可能性があり、正確な時代の特定が難しくなります。

④【誤】

堆積期間が長く、分布範囲が狭い地層は、鍵層には最も不向きです。

問4:正解④

<問題要旨>

2つの地域の柱状図を対比し、地層の堆積速度や堆積環境について考察する問題です。

<選択肢>

①【誤】 a、bともに正しくありません。

②【誤】 bが誤りです。

③【誤】 aが誤りです。

④【正】

a(誤)

凝灰岩層XとYは同じ時代に堆積した鍵層なので、その間の期間は地域Aと地域Bで同じです。柱状図から、その期間に地域Aでは泥岩が約20m、地域Bでは砂岩が約30m堆積しています。同じ時間でより厚く堆積した地域Bの砂岩の方が、地域Aの泥岩よりも堆積速度が速いと言えます。したがって、「地域Bの砂岩が10m堆積する時間」は、「地域Aの泥岩が10m堆積する時間」よりも短くなります。よって、この記述は誤りです。

b(誤)

鍵層によって地層が堆積した時代が同じであるとわかっても、堆積した環境まで同じとは限りません。実際に、この例では同じ時代に地域Aでは泥(比較的流れの穏やかな深い環境)、地域Bでは砂(比較的流れの速い浅い環境)が堆積しており、堆積環境は異なると考えられます。よって、この記述は誤りです。

問5:正解②

<問題要旨>

深成岩の偏光顕微鏡写真のスケッチから、鉱物の晶出順序と、その際にできる結晶の形に関する用語の知識を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】 カが誤りです。鉱物aは他の鉱物の隙間を埋めるような形で存在しており、後から晶出したと考えられます。

②【正】

オ:マグマが冷えて固まる際に、周囲に障害物がなく、鉱物本来の結晶面で囲まれた規則正しい形に成長した結晶を「自形」と呼びます。逆に、他の鉱物に阻まれて不規則な形になったものを「他形」と呼びます。

カ:一般に、マグマから先に晶出した鉱物ほど、自由に成長できるため自形になりやすくなります。図中の鉱物bは、比較的整った多角形(自形)を示しています。一方、鉱物aやcは、bや他の結晶の隙間を埋めるような不規則な形(他形)をしています。したがって、一番はじめに晶出した鉱物はbと考えられます。

③【誤】 カが誤りです。鉱物cは他の鉱物の隙間を埋めるように存在しており、後から晶出したと考えられます。

④【誤】 オ、カともに誤りです。

⑤【誤】 オが誤りです。

⑥【誤】 オ、カともに誤りです。

問6:正解③

<問題要旨>

火山の形状、マグマの種類、粘性、SiO₂量の関係性について正しく理解しているかを問う問題です。図中の対応関係の誤りを指摘する必要があります。

<選択肢>

①【誤】

項目Aの対応関係は正しいです。昭和新山のような溶岩円頂丘(溶岩ドーム)は粘性の高いマグマから、キラウエアのような盾状火山は粘性の低いマグマから形成されます。

②【誤】

項目Bの対応関係は正しいです。溶岩円頂丘はケイ長質マグマ、盾状火山は苦鉄質マグマによって形成されるのが典型的です。

③【正】

項目Cの言葉が上下入れ替わっています。ケイ長質マグマはSiO₂量が多く、粘性が「高い」です。一方、苦鉄質マグマはSiO₂量が少なく、粘性が「低い」です。図では、ケイ長質が「粘性が低い」に、苦鉄質が「粘性が高い」に対応付けられており、これが誤りです。

④【誤】

項目Dの対応関係は正しいです。ケイ長質マグマはSiO₂量が約63%以上と多く、苦鉄質マグマはSiO₂量が45~52%程度と少ないです。

第2問

問1:正解④

<問題要旨>

地上天気図から高気圧の東西の幅と移動速度を読み取り、その高気圧が特定の経度を通過するのにかかる時間を計算する問題です。また、高気圧内での大気の鉛直方向の動きに関する知識も問われています。

<選択肢>

①【誤】 ア、イともに誤りです。

②【誤】 アが誤りです。

③【誤】 イが誤りです。

④【正】

ア:1020hPaの等圧線で囲まれた高圧部の東西の幅は、図からおよそ東経125°から145°の間にあり、経度差で約20°です。問題文の「北緯35°付近において、経度幅10°に相当する距離は約900km」という情報を用いると、高圧部の東西の距離は 900 km × (20° / 10°) = 1800 km となります。この高気圧は時速30kmで東に進んでいるので、通過にかかる時間は、距離 ÷ 速さ = 1800 km ÷ 30 km/h = 60 時間 と計算できます。

イ:高気圧に覆われている地域では、上空から地表に向かう「下降流」が卓越しています。下降流によって空気は断熱圧縮されて温度が上昇し、湿度が下がるため、雲ができにくく、晴天になることが多いです。

問2:正解③

<問題要旨>

年平均海面水温の分布図から、暖流である黒潮の典型的な流路を推定する問題です。

<選択肢>

①【誤】

この流路は、日本海を流れる対馬海流に近く、太平洋側の黒潮の流路とは異なります。

②【誤】

この流路は、日本の南岸から大きく離れており、等温線の分布と一致しません。

③【正】

黒潮は暖かい海水(暖流)を運ぶため、その流路は周囲よりも海面水温が高くなります。図2の等温線を見ると、日本の南岸に沿って、等温線が北側へ大きく張り出している領域が確認できます。これは、暖かい海水が北へ運ばれていることを示しており、黒潮の流路と一致します。特に、台湾の東から日本の南岸に沿って北東へ流れ、紀伊半島沖でやや蛇行する様子は、選択肢③の模式図とよく対応しています。

④【誤】

この流路は、日本の東方沖を南下する寒流の親潮に近い流路であり、黒潮とは逆です。

第3問

問1:正解①

<問題要旨>

星団(散開星団、球状星団)と星雲(散光星雲、惑星状星雲)のそれぞれの特徴と関係性を理解しているかを問う問題です。

<選択肢>

①【正】

ア・イ:散開星団(M45など)は、比較的まばらに星が集まっており、生まれたばかりの若い恒星(青白い高温の星が多い)で構成されます。一方、球状星団(M13など)は、数万〜数百万個の恒星が球状に密集しており、年老いた恒星(赤い低温の星が多い)で構成されます。したがって、アは「散開星団」、イは「球状星団」です。

ウ・エ:散光星雲(M42など)は、ガスや塵が広がる領域で、その中で新しい星が誕生します。したがって、ウは「散光星雲」です。惑星状星雲(M97など)は、太陽程度の質量の恒星が一生の終わりに放出したガスが、中心に残った白色矮星の光で照らされて輝いている天体です。したがって、エは「惑星状星雲」です。

②【誤】 ウとエが逆です。

③【誤】 アとイが逆です。

④【誤】 アとイ、ウとエがそれぞれ逆です。

問2:正解②

<問題要旨>

星雲が淡くぼんやりと光って見える理由について問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

メシエ天体に含まれる星雲は、すべて太陽系の外に存在する天体です。

②【正】

星雲は、恒星間に存在するガスや塵(星間物質)が、近くの恒星の光を反射したり、エネルギーを得て自ら発光したりすることで輝いて見えます。その名の通り、雲のように淡く広がって見える天体です。

③【誤】

コロナは恒星を取り巻く高温のガス層ですが、星雲全体を輝かせているわけではありません。

④【誤】

系外惑星が恒星の光を反射して輝くことはありますが、その光は非常に弱く、星雲のように広範囲にわたって淡く輝いて見える現象とは異なります。

問3:正解②

<問題要旨>

太陽の黒点が、周囲の光球に比べて黒く(暗く)見える理由を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

黒点が暗いのは、光を吸収する物質が集まっているからではありません。

②【正】

黒点の部分には、非常に強い磁場が存在します。この強い磁場が、太陽の内部から対流によって運ばれてくる熱エネルギーの輸送を妨げます。その結果、黒点部分の温度が周囲の光球(約6000K)よりも低く(約4000K)なります。温度が低い部分は放出する光のエネルギーも小さくなるため、周囲よりも暗く見えるのです。

③【誤】

黒点の磁場は「弱い」のではなく「強い」です。

④【誤】

黒点の磁場は「弱い」のではなく「強い」です。

問4:正解③

<問題要旨>

銀河系(天の川銀河)の大きさや構造、そして他の銀河の位置関係についての知識を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

カの数値が誤りです。

②【誤】

カの数値とキの方向が両方とも誤りです。

③【正】

カ:私たちの太陽系が属する銀河系(天の川銀河)の円盤部の直径は、約10万光年です。

キ:私たちは銀河系の円盤部の中にいるため、円盤部を内側から見ると、全天を一周する「天の川」として見えます。図2は銀河系を真横から見た模式図なので、円盤部は水平方向(方向B)に広がっています。アンドロメダ銀河(M31)は、私たちの銀河系の外にある別の銀河であり、天の川とは異なる方向に見えます。したがって、M31の方向は、銀河系の円盤部から外れた方向Aとなります。

④【誤】

キの方向が誤りです。

第4問

問1:正解②

<問題要旨>

日本の火山がもたらす恵みに関する記述の中から、適当でないものを選ぶ問題です。

<選択肢>

①【正】

マグマの熱によって熱せられた地下水(熱水)には、様々な金属成分が溶け込んでいます。この熱水が上昇し、冷やされる過程で金属成分が沈殿し、金・銀・銅などの金属鉱床が形成されることがあります。

②【誤】

石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料は、大昔の植物や生物の遺骸が地中に埋もれ、長い時間をかけて熱や圧力を受けて変質したものです。これらは主に堆積岩中に存在し、火山活動(マグマ活動)によって生成されるものではありません。

③【正】

日本の温泉の多くは、地下にあるマグマ溜まりの熱によって地下水が温められて生じます。これは火山の恵みの一つです。

④【正】

地熱発電は、マグマの熱エネルギーを利用して地下の高温の蒸気や熱水を取り出し、その力でタービンを回して発電する仕組みです。これも火山の恵みを利用したものです。

問2:正解②

<問題要旨>

石灰岩の起源と、それが堆積岩になる作用、さらに変成作用を受けて大理石になる過程についての知識を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

イとウが逆です。

②【正】

ア:石灰岩の主成分は炭酸カルシウムであり、その多くはサンゴ、フズリナ、有孔虫、貝類といった、炭酸カルシウムの殻や骨格をもつ生物の遺骸が堆積してできたものです。放散虫は二酸化ケイ素の殻をもつため、チャートの起源となります。 イ:生物の遺骸などの堆積物が、長い時間をかけて固まり、堆積岩になる作用を「続成作用」といいます。 ウ:石灰岩のような堆積岩が、マグマの熱や造山運動による高い圧力を受けて、結晶構造が変化し、別の岩石になる作用を「変成作用」といいます。石灰岩が変成作用を受けると、結晶が大きくなり、結晶質石灰岩(大理石)になります。

③【誤】

ア、イ、ウのすべてが誤りです。

④【誤】

アが誤りです。

問3:正解①

<問題要旨>

日本に降水をもたらす様々な気象現象に関する説明文の中から、誤っているものを選ぶ問題です。

<選択肢>

①【誤】

梅雨前線は、北の冷たく湿ったオホーツク海気団と、南の暖かく湿った小笠原気団(北太平洋高気圧)の勢力がほぼ等しくなり、その境界にできる「停滞前線」です。温暖前線は、暖気が寒気の上に乗り上げる際にできる前線であり、梅雨前線とは異なります。記述されている前線の種類が誤りです。

②【正】

台風は、熱帯の海上で発生する低気圧で、中心付近に非常に強い上昇気流があり、発達した積乱雲を伴います。そのため、通過する地域に大雨や暴風をもたらします。

③【正】

温帯低気圧は、中緯度帯で発生する低気圧で、多くの場合、暖気と寒気の境界面である温暖前線と寒冷前線を伴います。これらの前線面では空気が上昇し、雲ができて降水をもたらします。

④【正】

冬には、シベリア大陸から冷たく乾燥した季節風が吹きます。この季節風が、比較的暖かい日本海を渡る際に、海面から大量の水蒸気を補給されます。湿った空気は日本の山脈にぶつかって強制的に上昇し、雪雲を発達させ、日本海側に大雪を降らせます。

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