2018年度 大学入試センター試験 本試験「生物基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2018年度 大学入試センター試験「生物基礎」は、全16項目・満点50点です。試験時間は理科①(「基礎」を付した科目)として、2科目あわせて60分。大問は第1問から第3問まですべて必答で、配点は第1問19点・第2問15点・第3問16点です。解答番号はこの年度は1から始まり、1から17までを使います(第1問の問5だけが解答番号5・6の二つを受け持ちます)。
第1問は細胞と遺伝子です。Aでヒトと大腸菌の細胞の比較、細胞小器官のはたらき、葉緑体で行われる炭酸同化を扱い、Bで遺伝子の本体がDNAであることを明らかにした研究史と、DNA・RNAのヌクレオチドの構造を扱います。第2問は体内環境の維持で、Aが体液の循環と腎臓による尿の生成、Bが自律神経とホルモンによる調節です。第3問は生物の多様性と生態系で、Aが世界の陸上バイオームと日本の自然植生・代償植生の分布図、Bが遷移です。
知識で即決できる設問が多い一方、点差がつくのは資料を読む2問です。第3問の問2は、日本列島を自然植生・代償植生・その他に分けて塗り分けた3枚の分布図から、どのバイオームの分布域に自然植生が残っているかを判断します。同じ第3問の問4は、新旧二つの池の調査結果の表から、水深が浅くなった原因と水中が暗くなった原因をそれぞれ特定できるかが分かれ目です。どちらも印象で選ぶのではなく、図のどこ・表のどの行が根拠かを指させる形で読み進めてください。
第1問(必答) A 細胞の研究史と炭酸同化
細胞の研究から細胞内の様々な構造が分かってきたこと、そして葉緑体で行われる炭酸同化を題材にした3問です。真核細胞と原核細胞の共通点・相違点、細胞小器官のはたらき、光合成の基本が問われます。
問1:正解 ⑤(解答番号1/配点3)
<問題要旨>
ヒト(真核生物)の細胞と大腸菌(原核生物)の細胞について述べた5つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。図や資料はなく、真核細胞と原核細胞の共通点・相違点の知識だけで決まります。
<考え方>
「すべての生物に共通する性質」と「原核細胞と真核細胞で分かれる性質」を仕分ければ決まります。共通するのは、細胞からできていること、ATPをエネルギーの受け渡しに使うこと、DNAを遺伝物質とすること、細胞分裂で増えること、そして共通の祖先に由来することです。分かれるのは、核膜で包まれた核と、ミトコンドリアや葉緑体などの膜で囲まれた細胞小器官の有無です。細胞壁は原核生物と植物・菌類にはあり、動物にはありません。
① 誤 ATPはすべての生物に共通する物質で、ヒトでも大腸菌でも同じ構造をもつ。 ② 誤 ヒトの細胞はミトコンドリアで呼吸を行うが、大腸菌はミトコンドリアをもたず、細胞膜と細胞質基質で呼吸を行う。呼吸に関する細胞小器官は共通ではない。 ③ 誤 大腸菌には細胞壁があるが、ヒト(動物)の細胞には細胞壁がない。 ④ 誤 すべての生物は共通の祖先に由来すると考えられており、ヒトと大腸菌も進化上共通した起源をもつ。 ⑤ 正 ヒトの細胞も大腸菌の細胞も、細胞分裂によって数を増やす。 よって ⑤
②は「呼吸をする」点自体は共通なので早合点しやすい選択肢です。問われているのは呼吸そのものではなく「呼吸に関する細胞小器官」で、大腸菌にはその細胞小器官がありません。
問2:正解 ①(解答番号2/配点3)
<問題要旨>
細胞小器官などの細胞内の構造について述べた4つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。
<考え方>
細胞質基質・核・ミトコンドリア・リボソームのそれぞれについて、「何を含むか」「どの生物にあるか」「何とはたらくか」を確かめれば一つに決まります。とくにリボソームは、DNAではなくmRNAの塩基配列を読んでタンパク質を合成する、という点が要になります。
① 正 細胞質基質には、呼吸の解糖系ではたらく酵素をはじめ多数のタンパク質が溶けている。 ② 誤 核をもつのは真核生物だけで、大腸菌などの原核生物に核はない。「あらゆる生物」ではない。 ③ 誤 ミトコンドリアは独自のDNAをもつ(葉緑体も同様)。 ④ 誤 リボソームが結合してタンパク質合成の鋳型にするのはDNAではなくmRNAである。DNAの塩基配列はいったん転写されてmRNAになる。 よって ①
③と④はどちらも「DNA」という語を含むので混同しやすいところです。DNAをもつ細胞小器官はミトコンドリアと葉緑体、DNAを直接読まずmRNAを読むのがリボソーム、と二つに分けて整理しておくと迷いません。
問3:正解 ③(解答番号3/配点3)
<問題要旨>
葉緑体で行われる炭酸同化について、クロロフィルなどによって吸収されるもの(ア)、デンプンなどとして合成されるもの(イ)、シアノバクテリアが属する生物の区分(ウ)を入れ、8通りの組合せから一つ選ぶ設問です。
<考え方>
光合成の式(二酸化炭素+水+光エネルギー → 有機物+酸素)と、シアノバクテリアが核をもたない細菌の仲間であることの2点に戻れば決まります。組合せ問題なので、確実に決まる空欄から順に埋めて選択肢を絞ります。
【ア】クロロフィルは光を吸収する色素なので、吸収されるのは光エネルギー。 → ア=光エネルギー(①〜④に絞られる) 【イ】デンプンは炭素を骨格にもつ有機物。無機物である二酸化炭素から有機物をつくるのが炭酸同化。 → イ=有機物(③・④に絞られる) 【ウ】シアノバクテリアは核膜で包まれた核をもたない細菌の仲間。 → ウ=原核生物 (ア・イ・ウ)=(光エネルギー・有機物・原核生物) よって ③
ウで「シアノバクテリアは光合成をするから植物の仲間=真核生物」としないこと。光合成をするかどうかと、核をもつかどうかは別の話です。葉緑体の起源がシアノバクテリアに似た原核生物の共生にあるとする共生説も、あわせて押さえておきたいところです。
第1問(必答) B 遺伝子の本体とヌクレオチドの構造
遺伝子の本体が何であるかをめぐる20世紀の研究史を題材にした3問です。染色体説から形質転換実験・ファージの実験までの流れと、DNAとRNAのヌクレオチドの違いが問われます。第1問はA・Bあわせて19点です。
問4:正解 ⑥(解答番号4/配点3)
<問題要旨>
「20世紀になってエに遺伝子が存在するという説が提唱された」「エの主な構成物質はDNAとオである」という文章の空欄エ・オに入る語の組合せを、6通りから選ぶ設問です。
<考え方>
遺伝子が染色体にあるとするサットンの染色体説と、染色体の化学組成に戻れば決まります。染色体はDNAとタンパク質(ヒストン)からなり、DNAがヒストンに巻き付いた構造をとっています。
【エ】20世紀初め、サットンは減数分裂での染色体のふるまいとメンデルの遺伝の法則が対応することから、 遺伝子は染色体にあるとする染色体説を提唱した。 → エ=染色体(⑤・⑥に絞られる) 【オ】染色体の主な構成物質はDNAとタンパク質(ヒストン)。 → オ=タンパク質 (エ・オ)=(染色体・タンパク質) よって ⑥
当時はDNAとタンパク質のどちらが遺伝子の本体かが決着しておらず、構成単位の種類が多く複雑なタンパク質のほうが有力と考えられていました。その決着をつけたのが、次の問5で問われる実験です。
問5:正解 ②・⑥(解答番号5・6/配点4)
<問題要旨>
過去の研究者らが得た成果を述べた6つの記述から、「形質の遺伝を担う物質がDNAである」ことを明らかにした成果を二つ選ぶ設問です。解答の順序は問われません。
<考え方>
「DNAという物質を見つけた」「DNAの構造を明らかにした」「遺伝の規則性を見つけた」という成果と、「遺伝情報を担っているのがDNAだと示した」成果を区別するのが要点です。後者にあたるのは、DNAを壊すと形質が伝わらなくなることを示した実験か、DNAだけが入って形質が伝わることを示した実験に限られます。
① 誤 傷口の膿からリンを多く含む物質(ヌクレイン)を見つけた成果。DNAという物質の発見であって、 それが遺伝を担うことまでは示していない。 ② 正 病原性菌の抽出物を混ぜると形質転換が起こるのに、DNA分解酵素で処理した抽出物では起こらない。 形質転換を起こす物質がDNAであることを示している。 ③ 誤 アデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれ1:1(シャルガフの規則)。 DNAの塩基組成についての成果で、遺伝を担うかどうかとは別。 ④ 誤 2本の鎖がらせん状に絡み合う二重らせん構造のモデル。DNAの立体構造についての成果。 ⑤ 誤 エンドウの交配実験から遺伝の法則を見いだした成果。形質の遺伝をDNAと結びつけてはいない。 ⑥ 正 ファージを細菌に感染させるとDNAだけが細菌に注入され、それで新たなファージがつくられる。 遺伝情報を運ぶのがDNAであることを示している。 よって ②・⑥
③と④は、DNAが遺伝子の本体だと分かったあとに進んだ研究で、時期の順序としても「本体の特定」より後にあたります。選択肢を「発見」「証明」「構造」「法則」に仕分けると二つに絞り込めます。
問6:正解 ⑦(解答番号7/配点3)
<問題要旨>
ヌクレオチドはカ・キ・リン酸から構成されること、RNAのヌクレオチドではカとしてチミンの代わりにウラシルが使われ、キがクである点でDNAと異なること、という文章の空欄カ〜クに入る語の組合せを8通りから選ぶ設問です。
<考え方>
ヌクレオチドの3要素(塩基・糖・リン酸)に戻れば決まります。チミンとウラシルはどちらも塩基なので、その置き換わりを述べているカが塩基だと確定し、リン酸を除いて残るキが糖になります。あとはRNAの糖がリボース、DNAの糖がデオキシリボースであることを当てはめるだけです。
ヌクレオチド = 塩基 + 糖 + リン酸 【カ】チミン・ウラシルはいずれも塩基。その置き換わりを述べているのでカ=塩基。 → ⑤〜⑧に絞られる 【キ】リン酸とカ(塩基)を除いて残る構成要素は糖。 → キ=糖(⑦・⑧に絞られる) 【ク】RNAの糖はリボース(DNAの糖はデオキシリボース)。 → ク=リボース (カ・キ・ク)=(塩基・糖・リボース) 【検算】文章は「RNAのヌクレオチドは…DNAのヌクレオチドと異なっている」と述べている。 ⑧のようにク=デオキシリボースとするとDNAと同じ糖になり、「異なっている」に合わない。 よって ⑦
RNAの「リボ」=リボース、DNAの「デオキシリボ」=デオキシリボース(酸素が1つ少ない糖)と、名前そのものが糖の名前になっています。塩基の違い(チミンとウラシル)と糖の違い(デオキシリボースとリボース)の2点が、DNAとRNAを分ける要点です。
第2問(必答) A 体液の循環と腎臓による尿の生成
ヒトの体内を循環する体液が何を運ぶか、血液中の老廃物が腎臓でどう尿になるかを扱う3問です。血管・リンパ・血球の基本と、ろ過と再吸収のしくみが問われます。第2問はA・Bあわせて15点です。
問1:正解 ②(解答番号8/配点3)
<問題要旨>
ヒトの体内を循環する体液について述べた5つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。
<考え方>
血管壁の厚さ、リンパ管の行き先、血液を放置したときの分離、肺循環での酸素の出入り、血球の数の5点を順に確かめれば決まります。とくに肺動脈・肺静脈は「心臓から出るのが動脈」という定義で決まる呼び名なので、中を流れるのが動脈血か静脈血かを取り違えないことが要です。
① 誤 血管壁の厚さは 動脈 > 静脈 > 毛細血管 の順。毛細血管は内皮細胞1層でできており最も薄い。 「動脈、毛細血管、静脈の順に薄くなる」ではない。 ② 正 毛細血管からしみ出た組織液の一部はリンパ管に入ってリンパ液となり、 最終的に鎖骨下静脈で血液に合流する。 ③ 誤 血液を試験管に入れて放置すると、血ぺい(血球と繊維素が固まったもの)と血清に分離する。 血しょうから繊維素が取り除かれたものが血清であり、「沈殿物と血しょう」ではない。 ④ 誤 肺動脈には全身から心臓に戻った静脈血が流れ、肺静脈には肺でガス交換を終えた動脈血が流れる。 酸素ヘモグロビンの割合は肺静脈中のほうが多い。 ⑤ 誤 血液1 mm³あたり、赤血球は約450万〜500万個、白血球は数千個。赤血球のほうがはるかに多い。 よって ②
④は「肺動脈」という名前から動脈血を連想して引っかかりやすい選択肢です。動脈・静脈は心臓を基準にした呼び名で、中を流れる血液の性質とは別だと切り分けてください。
問2:正解 ④(解答番号9/配点3)
<問題要旨>
腎動脈を流れる血しょうがアからイの内部にろ過されて原尿となり、原尿が細尿管を通る間に成分の一部がウへ再吸収される、という文章の空欄ア〜ウに入る語の組合せを、8通りから選ぶ設問です。
<考え方>
腎単位(ネフロン)の順路に戻れば決まります。糸球体 → ボーマンのう → 細尿管 → 集合管 という一本道で、ろ過は糸球体からボーマンのうへ、再吸収は細尿管を取り巻く毛細血管へ、と対応します。
腎臓の順路 糸球体 → ボーマンのう → 細尿管(腎細管) → 集合管 → 腎うへ 【ア・イ】ろ過は、毛細血管が毛玉状に集まった糸球体から、それを包むボーマンのうへ起こる。 (糸球体とボーマンのうを合わせた呼び名が腎小体。) → ア=糸球体、イ=ボーマンのう(③・④に絞られる) 【ウ】 再吸収された成分の行き先は、細尿管を取り巻く毛細血管。そこから血液に戻る。 → ウ=毛細血管 (ア・イ・ウ)=(糸球体・ボーマンのう・毛細血管) 【検算】ア=集合管としてみると、集合管は原尿ができたあとに通る場所なので順路が逆になり不成立。 ウ=腎小体としてみると、腎小体はろ過が起こる場所であって再吸収の行き先ではなく不成立。 よって ④
「腎小体」と「糸球体」は指す範囲が違います。腎小体は糸球体とボーマンのうを合わせた呼び名なので、ろ過の「出どころ」を指す語としては糸球体が正確です。
問3:正解 ②(解答番号10/配点3)
<問題要旨>
健康なヒトの腎臓のはたらきについて述べた4つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。
<考え方>
ろ過されるもの・されないもの、再吸収されるもの・されないもの、そして尿素をつくるのがどの臓器か、の3点で決まります。タンパク質は分子が大きくてろ過されず、グルコースはろ過されたあと全量再吸収される、という対比がこの設問の中心です。
① 誤 タンパク質は分子が大きく糸球体でろ過されない。健康なヒトの原尿にはほとんど出てこない。 ② 正 グルコースはろ過されて原尿に入るが、細尿管で全量が再吸収されるため、尿には出てこない。 ③ 誤 腎動脈を流れる血しょうのうち、ろ過されて原尿になるのはその一部にすぎず、体積は等しくない。 ④ 誤 尿素はアンモニアから尿素回路によって肝臓で合成される。腎臓は尿素を合成せず、 血液中の尿素をこし取って排出する器官である。 よって ②
「健康なヒトでは」という条件が付いているのは、糖尿病では再吸収しきれずに尿にグルコースが出るからです。条件の付いた文はその条件が効く場所を探しながら読んでください。
第2問(必答) B 自律神経とホルモンによる調節
体内環境の調節が自律神経とホルモンの二つの系で行われることを題材にした2問です。調節の中枢と分泌の経路、そして興奮・緊張した状態で実際に何が起こるかが問われます。
問4:正解 ①(解答番号11/配点3)
<問題要旨>
自律神経とホルモンによる調節の中枢がエであること、エの活動でオのはたらきが強まると胃や腸の活動が抑制されること、エが放出ホルモンを分泌してカを刺激すると副腎皮質刺激ホルモンの分泌が促されること、という文章の空欄エ〜カの組合せを8通りから選ぶ設問です。
<考え方>
調節の中枢は間脳の視床下部であるという一点と、交感神経と副交感神経の作用が逆向きであること、そして脳下垂体の前葉と後葉で出るホルモンが違うこと、の3点で決まります。
【エ】自律神経系とホルモン分泌の両方をまとめる中枢は、間脳の視床下部。 小脳は運動の調節やからだの平衡を保つ中枢であり、体内環境の調節の中枢ではない。 → エ=視床下部(①〜④に絞られる) 【オ】胃や腸の消化活動を抑制するのは交感神経(活動時・緊張時にはたらく)。 副交感神経は逆に消化活動を促進する。 → オ=交感神経(①・②に絞られる) 【カ】副腎皮質刺激ホルモンを分泌するのは脳下垂体前葉で、視床下部の放出ホルモンがこれを刺激する。 脳下垂体後葉から分泌されるのはバソプレシン。 → カ=脳下垂体前葉 (エ・オ・カ)=(視床下部・交感神経・脳下垂体前葉) よって ①
脳下垂体後葉のホルモンは、視床下部の神経分泌細胞が後葉まで伸びてそのまま分泌するもので、放出ホルモンによる刺激を受けません。文中に「放出ホルモンを分泌して刺激する」とある時点で前葉に決まります。
問5:正解 ①(解答番号12/配点3)
<問題要旨>
ヒトが興奮や緊張した状態で生じる体内環境の応答について述べた4つの記述から、誤っているものを一つ選ぶ設問です。正しいものではなく誤りを選ぶ点に注意が必要です。
<考え方>
興奮・緊張時は交感神経がはたらき、血糖濃度を上げて活動に備える方向に全体が動く、という向きをそろえて読めば決まります。アドレナリンも糖質コルチコイドも血糖濃度を上げるホルモンで、グリコーゲンを「つくる」向きにはたらくのは血糖濃度を下げるインスリンです。
① 誤(これが答え) アドレナリンは肝臓や筋肉のグリコーゲンを分解してグルコースに変え、 血糖濃度を上げるホルモン。グリコーゲンの合成を促進するのはインスリンである。 ② 正 交感神経のはたらきで心臓の拍動が促進され、心拍数が増加する。 ③ 正 糖質コルチコイドはタンパク質からグルコースをつくる反応(糖新生)を促進し、血糖濃度を上げる。 ④ 正 チロキシンは代謝全体を高めるホルモンで、細胞での酸素の消費が増え、異化が促進される。 よって ①
血糖濃度を上げるホルモンはアドレナリン・グルカゴン・糖質コルチコイドと複数あるのに対し、下げるホルモンはインスリンだけ、という非対称を押さえておくと、この種の設問はほぼ即決できます。
第3問(必答) A 世界のバイオームと日本の自然植生・代償植生
自然植生と代償植生という用語を導入したうえで、世界の陸上バイオームが気温・降水量とどう対応するか、日本列島で自然植生がどこに残っているかを問う2問です。問2は図1の3枚の分布図の読み取りが中心になります。第3問はA・Bあわせて16点です。
問1:正解 ④(解答番号13/配点3)
<問題要旨>
世界の陸上のバイオームについて、年平均気温と年降水量の具体的な値を挙げた4つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。図は示されておらず、気温と降水量からバイオームが決まるという対応の知識で判断します。
<考え方>
バイオームは年平均気温と年降水量の二つで決まる、という原則に戻ります。とくに、気温が十分高くても降水量が足りなければ森林は成立せず草原や荒原になる、という降水量側の制約が鍵です。おおよそ、森林が成立するのは年降水量が1000 mmを超えるあたりからで、それを下回ると草原、さらに少ないと荒原(砂漠)になります。
① 誤 年平均気温が20 ℃以上でも、降水量が少なければ雨緑樹林・サバンナ・砂漠になる。 「どのバイオームでも常緑広葉樹が優占する」は成り立たない。 ② 誤 年平均気温が−5 ℃以下の寒冷な地域に分布するのはツンドラで、年降水量はごく少ない。 2000 mmもの降水量はない。 ③ 誤 照葉樹林は暖温帯(おおよそ年平均気温13〜20 ℃)のバイオーム。 年平均気温5 ℃は冷温帯から亜寒帯にあたり、夏緑樹林や針葉樹林の範囲である。 ④ 正 年平均気温10 ℃以上でも年降水量が約500 mmしかない地域は森林が成立する降水量に届かず、 ステップやサバンナといった草原のバイオームになる。 よって ④
①は「常緑広葉樹」という語に注目します。熱帯多雨林・亜熱帯多雨林・照葉樹林はたしかに常緑広葉樹林ですが、同じ高温域でも乾季のある地域は落葉広葉樹の雨緑樹林です。「すべて」「どの…でも」という言い切りには、まず反例を一つ探してください。
問2:正解 ③(解答番号14/配点3)
<問題要旨>
日本列島を約1 km四方の区画に分け、各区画を自然植生・代償植生(植林地を含む)・その他(市街地・耕作地を含む)に分類して、該当する区画を黒く塗った3枚の分布図が図1です。この図と日本の森林バイオームの分布を重ねて、自然植生が比較的高い割合で残っているバイオーム(ア)、自然植生でブナが優占種であるバイオーム(イ)、自然植生の占める割合が最も低かったバイオーム(ウ)を答え、9通りの組合せから一つ選びます。
<考え方>
図の黒い区画がどこに集まっているかを、日本のバイオームの分布(南から順に亜熱帯多雨林・照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林で、同じ緯度でも標高が高いほど北のバイオームに対応する)と重ねて読みます。まず知識だけで決まるイを確定させ、次に「自然植生」の図で黒が濃い地域と「代償植生」の図で黒が濃い地域を見比べてアとウを決める、という順で進めるのが確実です。
【イ】ブナは夏緑樹林の代表的な優占種。その代償植生でミズナラが優占するという記述とも合う。 → イ=夏緑樹林(③・⑥・⑨に絞られる) 【ア】「自然植生」の図で黒い区画が密に集まっているのは、北海道の中央から東部にかけてと、 本州中部の山岳地帯。いずれも亜寒帯、あるいは標高が高く亜寒帯に対応する地域で、 針葉樹林の分布域にあたる。一方、西日本の低地には黒い区画がほとんどない。 → ア=針葉樹林(③に絞られる) 【ウ】「代償植生」の図で黒い区画が広く一面を覆っているのは、九州・四国・中国・近畿の低地から 関東にかけての地域。同じ地域を「自然植生」の図で見るとほとんど白いままである。 この地域は照葉樹林の分布域で、古くから人が住み利用してきたため自然植生がほとんど残らない。 → ウ=照葉樹林 (ア・イ・ウ)=(針葉樹林・夏緑樹林・照葉樹林) 【検算】ア=夏緑樹林(④〜⑥)と仮定する。イ=夏緑樹林が確定しているので残るのは⑥で、 このときウ=針葉樹林となる。しかし「自然植生」の図で最も黒いのは北海道と中部山岳、 すなわち針葉樹林の分布域なのだから、そこを「自然植生の割合が最も低い」とするのは 図と正反対になる。よって不成立で、ア=針葉樹林に決まる。 よって ③
3枚の図は同じ範囲を描いたものなので、1枚だけを眺めるのではなく、同じ場所を3枚で見比べるのが読み方です。西日本の低地は「自然植生」でほぼ白、「代償植生」で真っ黒という対比が、そのままウの根拠になります。
第3問(必答) B 遷移のしくみ(池の遷移と一次遷移・二次遷移)
遷移を扱う3問です。極相の性質を問う知識問題、二つの池の調査結果から遷移のしくみを考えさせる考察問題、一次遷移と二次遷移の違いを問う組合せ問題という構成で、配点4点の問4がこの大問の山場になります。
問3:正解 ①(解答番号15/配点3)
<問題要旨>
遷移について述べた5つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。極相林の性質、一次遷移の順序と初期の条件、湖沼から始まる遷移の呼び名が問われます。
<考え方>
遷移の定義(ある土地の植生が時間とともに変化する現象)と、遷移が進むにつれて環境がどう変わるかに戻ります。極相は「変化が止まった状態」ではなく「入れ替わりが釣り合って全体としては変わらない状態」である、という理解が①の当否を決めます。
① 正 極相林では、ギャップができてそこに陽樹が入るなど部分的な入れ替わりはあるが、 林全体としての種の構成は大きく変化しない。 ② 誤 極相林でも高木が倒れるなどしてギャップができ、そこは林床まで光が届いて明るい。 「どこも同じ程度の暗さ」ではない。 ③ 誤 正しい順序は 裸地・荒原 → 草原 → 低木林 → 高木林。低木林と高木林が入れ替わっている。 ④ 誤 噴火直後の溶岩台地には土壌がなく、窒素化合物などの栄養塩も水分も乏しい。 そこに最初に侵入・定着するのは、乾燥や貧栄養に耐える地衣類やコケ植物である。 ⑤ 誤 湖沼から始まる遷移は湿性遷移。乾性遷移は裸地など陸上から始まる遷移をいう。 よって ①
③は「低木林 → 高木林」の順序さえ押さえていれば即答できます。草から低木、低木から高木へと背丈の順に並べ直すと間違えません。
問4:正解 ③(解答番号16/配点4)
<問題要旨>
遷移が始まってからの経過年数だけが異なり、池の外の環境はよく似た二つの池(新しい池・古い池)について、断面の模式図(図2)と調査結果(表1)が示されます。表1には平均水深、水深50 cmでの相対光強度、浮葉植物の被度、沈水植物の被度、堆積物の状態の5項目が並んでいます。新しい池の現在の様子が古い池の過去の様子を表すとみなして、遷移のしくみについての考察を4つの中から一つ選ぶ設問です。
<考え方>
4つの選択肢は「池の中の環境が生物の作用を受けて変化するか/受けずに変化するか」と「植物種の交代が環境の変化に応じて起こるか/関係なく起こるか」の2点の組合せになっています。したがって、表1のどの行がどちらの判断の根拠になるかを一つずつ突き止めれば決まります。堆積物の行が前者を、被度と相対光強度の行が後者を決めます。
【まず表1で変化した項目を並べる】 平均水深 4 m → 1 m 水深50 cmでの相対光強度 80 % → 10 % 浮葉植物の被度 0 % → 80 % 沈水植物の被度 70 % → 0 % 堆積物の状態 土砂の上に未分解の枯死体が薄く → 土砂は新しい池と同程度の厚さで、 その上に枯死体が厚く 【環境の変化は生物の作用によるか】 堆積物の行に「新しい池と同じ程度の厚さに土砂が積もり」とある。土砂の量は変わっていない。 それでも平均水深が 4 m から 1 m へ浅くなったのだから、浅くした分は その上に厚く積もった植物の枯死体、すなわち池に生きていた植物そのものによる。 → 池の中の環境は、生物の作用を受けて変化している(③・④に絞られる) 【植物種の交代は環境の変化に応じているか】 古い池では浮葉植物の被度が80 %に達し、水面が葉で覆われている。 その結果、水深50 cmでの相対光強度が 80 % から 10 % へ下がっている。 水中の光が足りなくなれば、植物体が全て水中にある沈水植物は生育できない (実際に被度は 70 % → 0 %)。 一方、浮葉植物は注に「水深が深いと生育できない」と明記されており、 水深が 4 m から 1 m へ浅くなったことが、その侵入を可能にしている。 → 水深が浅くなり水中が暗くなるという環境の変化に応じて、 沈水植物から浮葉植物へ植物種が交代している よって ③
迷わせにくるのが堆積物の行にある「土砂」です。土砂だけを見ると外から流れ込んだ非生物的な要因に見えますが、その土砂の厚さは二つの池で同程度だと書かれているので、水深の差を説明できるのは枯死体のほうだけです。表の一行の中の「同じところ」と「違うところ」を分けて読むのが決め手になります。
問5:正解 ⑦(解答番号17/配点3)
<問題要旨>
森林伐採の跡地などから始まる遷移がエと呼ばれ、噴火直後の溶岩台地から始まり森林に至る遷移がオと呼ばれること、エでは遷移の始まりからカが存在するため、エの進行はオと比べてキであること、という文章の空欄エ〜キの組合せを8通りから選ぶ設問です。
<考え方>
一次遷移と二次遷移を分けるのは「遷移が始まる時点で土壌があるかどうか」の一点です。土壌ができるまでには非常に長い時間がかかるので、その段階を飛ばせる二次遷移のほうが速く進みます。
【エ・オ】森林伐採の跡地には土壌が残っているので二次遷移。 噴火直後の溶岩台地は土壌のないところからなので一次遷移。 → エ=二次遷移、オ=一次遷移(⑤〜⑧に絞られる) 【カ】 二次遷移の出発点にあって一次遷移の出発点にないのは土壌。 土壌には種子や地下茎、菌類なども残っている。 「風化した岩石」は一次遷移の初期に岩石が風化してできるもので、二次遷移の特徴ではない。 → カ=土壌(⑦・⑧に絞られる) 【キ】 岩石が風化し、地衣類やコケ植物の遺骸が混じって土壌ができるまでには長い年月がかかる。 その段階を飛ばせる二次遷移は、一次遷移より進行が速い。 → キ=速い (エ・オ・カ・キ)=(二次遷移・一次遷移・土壌・速い) よって ⑦
山火事の跡地や、耕作をやめた畑から始まる遷移も二次遷移です。「もとが森林だったかどうか」ではなく「土壌が残っているかどうか」で判断してください。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

