2020年度 大学入試センター試験 本試験「政治経済」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2020年度 本試験の「政治・経済」は、大問4問・設問34問、満点100点、試験時間60分です。配点は第1問が28点、第2問・第3問・第4問が各24点。解答番号は1〜34で、1つの設問が1つの解答番号に対応します。1問3点が基本で、第1問の問1と問3だけが2点に配分されています。なおこの年度は大学入学共通テストではなく大学入試センター試験で、公民は「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理,政治・経済」が1冊の問題冊子にまとめられ、「政治・経済」はその一部として冊子の72〜101ページに置かれています。
第1問は「平等」という尺度から現代社会の課題を論じた評論文で、支配の正当性、法の制定、アダム・スミス、寡占市場と管理価格、消費者保護、雇用形態別の賃金グラフ、労働法制、自由貿易の需給曲線、地方公共団体、難民受入れまでを扱います。第2問は学生Aと学生Bが「私たちの生活を支える主体や仕組み」を語り合う会話文で、憲法改正手続、生存権をめぐる最高裁判決、国民負担率の国際比較、外国人の権利、租税原則、GNEの計算、景気循環、住民投票を問います。第3問は「宇宙船地球号」を手がかりに世界経済をとらえる評論文で、公共財、南北問題、貿易の為替決済の仕組み図、WTO、企業の資金調達の表、温室効果ガスの削減、日本の農業と食品、ODA実績の表が並びます。第4問は自由民主主義の成り立ちと危うさを論じた文章で、法の支配をめぐる名句、違憲審査の積極主義と消極主義、選挙制度、各国の議会制度、大衆民主主義、ナチス政権、刑事司法の統制、国民の自由と権利を扱います。
この回の特徴は、知識で即決できる設問と、資料から数値を確定させないと選べない設問がはっきり分かれていることです。後者は、賃金の棒グラフ(解答番号6)、需要供給曲線と輸入量(8)、国民負担率の積み上げ棒グラフ(13)、GNEの表(16)、為替決済の仕組み図(21)、資金調達の構成比の表(23)、ODA実績の表(26)の7問で、いずれも選択肢を先に読まず、年次・項目・単位を押さえてから当てにいくのが最短ルートです。とくに「3倍を上回る」「すべての年齢階級で」といった言い切りは、反例を1つ探せば即座に切れます。もう一つのつまずきどころは、A〜Cの記述から正しいものをすべて選ぶ①〜⑦の組合せ型(解答番号2・9・14・24)で、制定する主体(内閣か大臣か、国か地方か)や機関の所属が入れ替えられていないかを一つずつ確かめる必要があります。なお、この年度の制度や統計は2020年1月時点のもので、図表の数値も2015年から2017年にかけてのものです。
第1問 「平等」という尺度からみた現代社会の課題(配点28)
「ひとしく機会にあずかる」「ひとしく結果を享受する」という二つの意味で平等をとらえ、民主主義の普及、資本主義経済の浸透と格差の拡大、グローバル化と移民・難民の受入れへと論を進める評論文です。政治分野では支配の正当性・法の制定・地方公共団体が、経済分野では市場の限界・消費者保護・賃金格差・自由貿易が問われます。
問1:正解 ②(解答番号1/配点2)
<問題要旨>
下線部ⓐ「支配」に関連して、マックス・ウェーバーが支配の正当性(正統性)を大きく三つに分類したことをふまえ、その分類に該当しないものを四つの語句から一つ選ぶ設問です。
<考え方>
ウェーバーの三類型は、人々がなぜその支配を正当なものと認めて従うのか、という根拠の違いによる分類です。あらかじめ定められた規則に基づくから従うのが合法的支配、昔から続いてきた秩序と権威が神聖だと信じるから従うのが伝統的支配、指導者個人の非日常的な資質に帰依するから従うのがカリスマ的支配。この三つを先に挙げてしまえば、残る一つが分類に入らない語だと分かります。
<選択肢>
①【誤(三類型に該当する)】
カリスマ的支配は、預言者や英雄のような指導者個人の非日常的な資質への帰依に支えられる支配で、三類型の一つである。
②【正(三類型に該当しない)】
ポリスは古代ギリシアの都市国家を指す語であり、支配の正当性の根拠を分類したウェーバーの三類型とは関係がない。合法的・伝統的・カリスマ的のいずれとも重ならず、これが該当しないものにあたる。
③【誤(三類型に該当する)】
合法的支配は、制定された規則に従って権限が行使されるがゆえに正当と認められる支配で、近代官僚制がその典型である。
④【誤(三類型に該当する)】
伝統的支配は、古くから続いてきた秩序と支配者の権威が神聖であるという信念に支えられる支配で、家父長制や身分制がその例である。
正解【②】
三類型は合法的支配・伝統的支配・カリスマ的支配であり、「ポリス的支配」はこれに含まれないので、②が正解です。
問2:正解 ⑥(解答番号2/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓑ「法が整備された」に関連して、日本国憲法が定める法の制定について述べた記述A〜Cのうち正しいものをすべて選び、その組合せを①〜⑦から選ぶ設問です。内閣の命令、最高裁判所の規則、地方公共団体の条例という三つの制定権が並べられています。
<考え方>
それぞれの定めがどの条文に基づき、誰に与えられた権限かに戻れば決まります。内閣が制定できるのは政令であり(憲法73条6号)、省令は各省大臣が発するものです。最高裁判所には訴訟に関する手続などについて規則を定める権限があり(憲法77条1項)、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定できます(憲法94条)。この型の設問では、制定する主体が入れ替えられていないかを一つずつ確かめるのが定石です。
<選択肢>
A(内閣は、憲法および法律の規定を実施するために省令を制定することができる)【誤】
憲法73条6号が内閣の権限として定めているのは政令の制定である。省令は国家行政組織法に基づいて各省大臣が発するもので、制定の主体が大臣から内閣にすり替えられている。
B(最高裁判所は、訴訟に関する手続について規則を制定することができる)【正】
憲法77条1項は、最高裁判所が訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について規則を定める権限を有すると定めている。司法権の独立を支える規則制定権である。
C(地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる)【正】
憲法94条は、地方公共団体が法律の範囲内で条例を制定することができると定めている。条文どおりの記述である。
正解【⑥】
正しいのはBとCで、Aは政令と省令を取り違えているため、⑥が正解です。
問3:正解 ④(解答番号3/配点2)
<問題要旨>
下線部ⓒ「資本主義経済」に関連する学説を展開したアダム・スミスについての記述として、最も適当なものを選ぶ設問です。
<考え方>
主著と主張内容の組合せで決まります。スミスは『国富論(諸国民の富)』で、各人が自己の利益を追求しても「見えざる手」に導かれて社会全体の利益が実現されるとし、国家の介入を抑えて市場の調整機能に委ねることを説きました。誤りの選択肢には重商主義・リカード・ケインズの主張が混ぜられているので、それぞれ誰の学説かを言い当てて落とします。
<選択肢>
①【誤】
国内に富(正貨)を蓄積するために保護貿易を説いたのは重商主義の立場である。スミスはむしろこれを批判し、自由な経済活動を主張した。
②【誤】
『経済学および課税の原理』はリカードの著作で、比較生産費説によって自由貿易の利益を説いた。著書と人物が入れ替えられている。
③【誤】
財政政策や金融政策による有効需要の管理で完全雇用の達成を説いたのはケインズで、20世紀の学説である。人物も時期も異なる。
④【正】
スミスは『国富論(諸国民の富)』を著し、各人の利己心に基づく活動が「見えざる手」に導かれて社会全体の利益をもたらすとして、市場の調整機能を重視した。
正解【④】
『国富論(諸国民の富)』を著して市場の調整機能を重視したのがアダム・スミスなので、④が正解です。
問4:正解 ④(解答番号4/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓓ「市場」の機能や限界についての説明として、正しいものを選ぶ設問です。寡占市場での価格形成、生産費の低下と価格の関係、大型設備を用いる産業の特徴が並びます。
<考え方>
寡占市場では価格競争が起こりにくくなる、という一点から筋道が立ちます。少数の企業が市場を支配すると、有力企業がプライス・リーダーとなって一定の利潤を確保できる価格を決め、他社がそれに追随する管理価格が成立します。その結果、生産費が下がっても価格が下がりにくい価格の下方硬直性が生じます。用語と内容が正しく対応しているかを確かめるのが要点です。
<選択肢>
①【誤】
寡占市場では価格競争が弱まり、需給に応じた価格の下落が起こりにくくなる。市場による価格調整が「うまく働く」という向きが逆であり、割安になるという結論も成り立たない。
②【誤】
生産費が低下しても価格が下方に変化しにくいことは「価格の下方硬直性」という。「逆資産効果」は資産価格の下落によって消費が減る現象を指す別の語であり、言葉のすり替えにあたる。
③【誤】
鉄道のように初期投資が巨額な産業では、生産規模が大きいほど平均費用が下がるため新規参入が難しく、少数の企業による市場支配がむしろ生じやすい。結論が逆である。
④【正】
寡占市場でプライス・リーダー(価格先導者)が一定の利潤を確保できる価格を設定し、他の企業がこれに追随して成立する価格を管理価格という。定義どおりの記述である。
正解【④】
価格先導者が設定した価格に他社が追随して成立する価格が管理価格なので、④が正解です。
問5:正解 ②(解答番号5/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓔ「消費」に関連して、消費者問題にかかわる日本の法制度の説明として正しいものを選ぶ設問です。製造業者の無過失責任、消費者団体訴訟制度、消費者行政の所管、リコール制度が並びます。
<考え方>
それぞれの制度がどの法律に基づき、誰に何を認めたものかに戻ります。欠陥製品による被害について製造業者の無過失責任を定めたのは製造物責任法(PL法)、内閣総理大臣が認定した適格消費者団体に差止請求などの訴訟提起を認めたのが消費者団体訴訟制度、各省庁に分かれていた消費者行政を一元化するために2009年に設置されたのが消費者庁です。法律名と制度の中身が入れ替えられていないかが分かれ目になります。
<選択肢>
①【誤】
欠陥製品による被害について製造業者の無過失責任を定めたのは製造物責任法(PL法)である。特定商取引法は訪問販売や通信販売などを規制しクーリング・オフを定める法律で、法律名がすり替えられている。
②【正】
消費者団体訴訟制度では、国(内閣総理大臣)が認定した適格消費者団体が、被害を受けた消費者に代わって事業者の不当な行為の差止めなどを求める訴訟を起こすことができる。
③【誤】
消費者庁は2009年に、各省庁に分散していた消費者行政を一元化するために設置された官庁であり、廃止されていない。事実が正反対である。
④【誤】
リコールは製品に欠陥が判明した場合に事業者が回収・修理などを行う制度であって、欠陥の有無を問わず消費者の好みに応じた製品と交換できる仕組みではない。制度の要件を作りかえた誤りである。
正解【②】
適格消費者団体が被害者に代わって訴訟を起こせるのが消費者団体訴訟制度なので、②が正解です。
問6:正解 ④(解答番号6/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓕ「賃金の差」について、2017年6月分の賃金構造基本統計調査をもとに、20〜24歳から65〜69歳までの年齢階級ごとに「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」の1か月の平均賃金を並べた棒グラフが示され、そこから読みとれる内容として誤っているものを選ぶ設問です。
<考え方>
読み取りの設問なので、選択肢を見る前に図の要点を数値で押さえます。縦軸の単位は万円で、目盛りの上限は40万円です。「正社員・正職員」は20〜24歳の約21万円から50〜54歳の約40万円まで上がり、その後下がります。「正社員・正職員以外」はどの年齢階級でもおおむね18万円から23万円の範囲に収まり、最も高いのは60〜64歳の約23万円です。「3倍」という言い切りのある選択肢は、基準となる20〜24歳の値を3倍した数が縦軸のどこに来るかを先に計算すれば一瞬で決まります。
<選択肢>
①【誤(図から読みとれる)】
20〜24歳の差額は約21万円と約18万円で3万円に満たないのに対し、30〜34歳は約28万円と約21万円で7万円ほどある。30〜34歳の差額が上回っている。
②【誤(図から読みとれる)】
どの年齢階級でも「正社員・正職員」の棒が「正社員・正職員以外」の棒より高い。差が最も小さい20〜24歳でも上回っている。
③【誤(図から読みとれる)】
「正社員・正職員」で最も高いのは50〜54歳の約40万円。20〜24歳の約21万円の3倍は約63万円で、縦軸の上限40万円をはるかに超える。40万円はこれを下回っている。
④【正(これが図と食い違う)】
「正社員・正職員以外」で最も高いのは60〜64歳の約23万円。20〜24歳の約18万円の3倍は約55万円で、23万円はこれを大きく下回る。「3倍を上回る」という言い切りが成り立たない。
正解【④】
「正社員・正職員以外」の最高額は20〜24歳の3倍に遠く及ばないので、誤っているのは④です。
問7:正解 ④(解答番号7/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓖ「労働」について、民間の労働者に関する日本の法制度の説明として誤っているものを選ぶ設問です。不当労働行為、裁量労働制、セクシュアル・ハラスメントの防止措置、最低賃金が並びます。
<考え方>
それぞれの制度の根拠法と要件に戻ります。最低賃金法に基づく最低賃金には、都道府県ごとに定められる地域別最低賃金と、特定の産業について定められる特定(産業別)最低賃金があり、全国一律ではありません。「地域や産業を問わず同じ額」という言い切りは、制度の要件を作りかえた典型的な誤りです。
<選択肢>
①【誤(正しい)】
労働組合への加入や組合活動を理由とする解雇などの不利益な取扱いは、労働組合法7条が禁じる不当労働行為にあたる。
②【誤(正しい)】
裁量労働制では、業務の遂行方法を労働者の裁量に委ねる代わりに、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ労使で定めた時間だけ働いたものとみなされる。
③【誤(正しい)】
男女雇用機会均等法は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を講じる義務を課している。
④【正(これが誤り)】
最低賃金法に基づく最低賃金は、都道府県ごとの地域別最低賃金と特定の産業についての特定最低賃金からなり、額は地域や産業によって異なる。全国一律の同一額とする点が制度と食い違う。
正解【④】
最低賃金は地域別・産業別に額が異なるので、誤っているのは④です。
問8:正解 ③(解答番号8/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓗ「グローバル化」に関連して、自由貿易の下である商品の国際価格がPのとき、国内供給X₁と国内需要X₂との差だけ輸入されることを示した需要曲線・供給曲線の図が与えられます。他の事情を一定としたとき、この商品の輸入量を増加させうる、輸入国に関係する要因を選ぶ設問です。
<考え方>
図の上で輸入量がX₂−X₁という「幅」で表されていることに戻ります。輸入量が増えるのは、価格Pのところで需要X₂が右に伸びるか、供給X₁が左に縮むかのどちらかです。国民の所得が増えれば需要曲線が右にシフトして同じ価格でのX₂が大きくなり、幅は広がります。逆に国内産業の生産性が向上すれば供給曲線が右にシフトしてX₁が大きくなり、幅は狭まります。曲線をどちらに動かすか、あるいは価格の水平線を上下させるとどうなるかを、選択肢ごとに図の上で確かめます。
<選択肢>
①【誤】
国際価格が上がると、価格Pを示す水平線が上へ移り、供給曲線との交点X₁は右へ、需要曲線との交点X₂は左へ動く。二つの差は縮まり、輸入量はかえって減る。
②【誤】
国内産業の生産性が向上すると供給曲線が右にシフトし、価格Pのもとでの国内供給X₁が増える。X₂−X₁は小さくなり、輸入量は減る。
③【正】
国民の所得が増えると需要曲線が右にシフトし、価格Pのもとでの国内需要X₂が増える。X₂−X₁が大きくなって輸入量は増加し、しかも輸入国の国内事情による要因である。
④【誤】
関税を引き上げると輸入品の国内での価格が上がり、国内での需要は減って国内供給は増える。輸入を抑えるための措置であり、輸入量を増やす要因にはならない。
正解【③】
所得の増加は需要曲線を右にシフトさせて国内需要X₂を増やし、輸入量X₂−X₁を広げるので、③が正解です。
問9:正解 ③(解答番号9/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓘ「地方」に関連して、地方公共団体についての記述A〜Cのうち正しいものをすべて選び、その組合せを選ぶ設問です。選挙管理委員会が扱う事務の範囲、監査委員の所属、義務教育の経費の財源が並びます。
<考え方>
それぞれの機関がどこに置かれ、何を担うかに戻ります。選挙管理委員会は地方公共団体の執行機関の一つですが、衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙といった国政選挙の管理執行事務も担っています。監査委員は地方自治法に基づいて各地方公共団体に置かれる機関で、独占禁止法を運用する国の行政委員会である公正取引委員会とは所属関係がありません。義務教育の経費には義務教育費国庫負担金という国庫支出金が充てられます。機関の所属先と事務の範囲が取り違えられていないかを見るのが要点です。
<選択肢>
A(地方公共団体の選挙管理委員会は、国政選挙の事務を行うことはない)【誤】
市区町村および都道府県の選挙管理委員会は、地方選挙だけでなく国政選挙についても投票所の設置や開票などの管理執行事務を行っている。事務の範囲を不当に狭めた誤りである。
B(都道府県の監査委員は、公正取引委員会に所属している)【誤】
監査委員は地方自治法に基づいて各地方公共団体に置かれ、その財務や事務の執行を監査する機関である。公正取引委員会は独占禁止法を運用する国の行政委員会で、両者の間に所属関係はない。機関を取り違えた誤りである。
C(地方公共団体の義務教育の経費に、国庫支出金が使われる)【正】
義務教育費国庫負担金として、公立の小中学校の教職員給与などの一部を国が負担している。使途を特定して交付される国庫支出金の代表例である。
正解【③】
正しいのはCだけで、AとBはいずれも機関の役割や所属を取り違えているため、③が正解です。
問10:正解 ①(解答番号10/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓙ「難民」に関連して、難民受入れをめぐる記述として誤っているものを選ぶ設問です。日本の難民条約加入、難民認定の根拠法、第三国定住、国内避難民が並びます。
<考え方>
条約と国内法の年代、そして保護の適用範囲に戻ります。難民条約(難民の地位に関する条約)が採択されたのは1951年ですが、日本が加入したのは1981年で、これに合わせて出入国管理令が出入国管理及び難民認定法に改められました。採択の年と加入の年がずれている点が判定の要になります。また難民条約上の難民は国籍国の外にいることが要件なので、国境を越えていない人々は対象になりません。
<選択肢>
①【正(これが誤り)】
難民条約が採択されたのは1951年だが、日本が加入したのは1981年(発効は1982年)である。採択の年にそのまま加入したとする点で、時期が30年ずれている。
②【誤(正しい)】
日本は、難民条約への加入に伴って改められた出入国管理及び難民認定法に基づいて難民認定の手続を行っている。
③【誤(正しい)】
第三国定住は、最初に逃れた国(第一次庇護国)にとどまっている難民を別の国が受け入れ、そこでの定住を認める仕組みである。日本も2010年度から受入れを行っている。
④【誤(正しい)】
国内避難民は紛争などから逃れつつも国境を越えていない人々であり、国籍国の外にいることを要件とする難民条約上の難民には含まれない。
正解【①】
日本の難民条約加入は採択から30年後の1981年なので、誤っているのは①です。
第2問 学生の会話文「私たちの生活を支える主体や仕組み」(配点24)
ゼミのテーマを決めた学生Aと学生Bが、個人の努力・国の役割・地域社会の協力のバランスをどう考えるかを話し合う会話文です。生存権と憲法改正から始まり、介護保険と社会保障の財源、税と景気、そして地域の住民投票へと話題が広がり、憲法の条文知識と統計資料の読み取りが交互に問われます。
問1:正解 ②(解答番号11/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓐ「憲法」について、日本国憲法の改正に関する記述として正しいものを選ぶ設問です。発議の主体、国民投票の形式、投票権年齢の根拠法、公布の主体がそれぞれ問われます。
<考え方>
憲法96条の条文に正面から戻れば決まります。96条1項は「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」と定め、承認には「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成」が必要だとしています。2項は、改正について天皇が国民の名で公布すると定めます。発議するのは各議院ではなく国会、公布するのは内閣総理大臣ではなく天皇、という主体の確認が要点です。
<選択肢>
①【誤】
憲法改正の発議は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成を得たうえで国会が行うものであり、一院だけで単独に発議して国民投票にかけることはできない。発議の主体を院に置き換えた誤りである。
②【正】
憲法96条1項は、改正の承認について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」によると定めている。条文どおりの記述である。
③【誤】
満18歳以上の国民に憲法改正の国民投票権を認めたのは、国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)である。国会法は国会の組織と運営を定める法律で、根拠法が取り違えられている。
④【誤】
憲法改正を国民の名で公布するのは天皇である(憲法96条2項)。公布の主体が内閣総理大臣にすり替えられている。
正解【②】
国民投票の形式を憲法96条1項の条文どおりに述べているのは②なので、②が正解です。
問2:正解 ②(解答番号12/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓑ「国はどこまで人々の活動にかかわるべきなのか」に関連して、国民生活と国の施策をめぐる最高裁判所の判断についての記述アとイの正誤の組合せを選ぶ設問です。アは薬局開設の許可基準としての距離制限、イは児童扶養手当と公的年金の併給を禁じた規定を扱います。
<考え方>
どちらも有名な最高裁判決で、結論が合憲か違憲かに戻れば決まります。薬事法の距離制限規定については、1975年の最高裁判決が、不良医薬品の供給を防ぐという目的との関連で必要かつ合理的な規制とは認められないとして違憲と判断しました。一方、社会保障の給付については、1982年の堀木訴訟判決が、憲法25条の趣旨をどのような立法で実現するかは立法府の広い裁量に委ねられるとして、併給禁止規定を合憲と判断しています。経済的自由の規制には厳しく、社会権の立法裁量には緩やかにという判断の傾向の違いが背景にあります。
<選択肢>
ア(薬局開設の距離制限は合理的な規制と認められず違憲と判断した)【正】
1975年の薬事法距離制限違憲判決である。最高裁は、距離制限が競争激化による不良医薬品の供給を防ぐために必要かつ合理的な規制とはいえないとして、職業選択の自由を侵害し違憲だと判断した。
イ(児童扶養手当と公的年金の併給禁止規定を立法裁量の範囲を超え違憲と判断した)【誤】
堀木訴訟の1982年最高裁判決は、憲法25条の趣旨をどのような立法で実現するかは立法府の広い裁量に委ねられるとして、併給禁止規定を合憲と判断した。結論が逆になっている。
正解【②】
アは違憲判決どおりで正しく、イは合憲とされた判断を違憲としている点が誤りなので、②が正解です。
問3:正解 ⑥(解答番号13/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓒ「財源」に関連して、北欧型に分類されるスウェーデン、大陸型に分類されるドイツとフランス、そのほかに日本とアメリカという5か国について、2015年の租税負担率と社会保障負担率(いずれも対国民所得比)を積み上げた棒グラフが示され、図中のA〜Cに当てはまる国名の組合せを選ぶ設問です。ドイツと日本は図にあらかじめ示されています。
<考え方>
積み上げ棒の「全体の高さ(=国民負担率)」と「黒い部分の高さ(=租税負担率)」の二つを別々に読むのが要点です。Aは全体が約67%で5か国中最も高く、租税負担率は約41%、社会保障負担率は約26%。Bは全体が約57%でAに次ぎますが、そのうち約51%を租税負担率が占め、社会保障負担率がきわめて小さい。Cは全体が約33%で最も低い。税を主な財源とする北欧型は社会保障負担率が小さく、社会保険料の比重が大きい大陸型は白い部分が厚くなるという制度の違いを、棒の形の違いに重ねて読みます。
<選択肢>
A=フランス【正】
国民負担率が約67%と5か国で最も高く、租税負担率約41%に対して社会保障負担率が約26%と厚い。社会保険料の比重が大きい大陸型であって、かつ負担率が最も高い国はフランスである。
B=スウェーデン【正】
全体は約57%だが、そのうち約51%が租税負担率で、社会保障負担率は5%程度にとどまる。税を主な財源とする北欧型の特徴がそのまま形に出ている。ドイツやフランスのような大陸型なら、白い部分がこれほど薄くはならない。
C=アメリカ【正】
国民負担率が約33%と5か国で最も低く、図に示された日本(約43%)よりもさらに小さい。公的な社会保障の範囲が限られるアメリカにあたる。
正解【⑥】
負担率が最も高いAがフランス、租税の比重が突出して大きいBがスウェーデン、最も低いCがアメリカなので、⑥が正解です。
問4:正解 ⑤(解答番号14/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓓ「外国人」に関連する日本の現在の状況についての記述A〜Cのうち、正しいものをすべて選び組合せを選ぶ設問です。情報公開法の請求権者、定住外国人の地方参政権に関する最高裁の判断、地方公務員採用試験の国籍要件が並びます。
<考え方>
その権利が「法律で認められているか」「憲法上保障されていると裁判所が述べたか」「自治体の判断に委ねられているか」を区別するのが要点です。情報公開法は開示請求できる者を「何人も」と定めており、外国人も含まれます。定住外国人の地方参政権については、1995年の最高裁判決が、法律で認めることは憲法上禁止されていない(立法政策に委ねられる)と述べたにとどまります。地方公務員の採用で国籍要件を設けるかどうかは各地方公共団体の判断に委ねられており、設けない自治体もあります。
<選択肢>
A(外国人も、中央省庁の行政文書について情報公開法に基づいて開示を請求できる)【正】
情報公開法は行政文書の開示請求権者を「何人も」と定めており、日本国籍の有無や日本に居住しているかどうかを問わない。
B(最高裁は、永住資格を有する在日外国人に地方参政権が憲法上保障されていると判断した)【誤】
1995年の最高裁判決は、法律で地方参政権を認めることは憲法上禁止されていないと述べたにとどまり、憲法上保障されているとは判断していない。「禁止されていない」を「保障されている」に読みかえた誤りである。
C(地方公務員採用試験に関して、日本国籍を受験条件としない地方公共団体もある)【正】
地方公務員の採用試験で国籍要件を設けるかどうかは各地方公共団体の判断に委ねられており、一定の職種について国籍要件を外している自治体がある。
正解【⑤】
正しいのはAとCで、Bは最高裁の判断内容を強めて述べている点が誤りなので、⑤が正解です。
問5:正解 ③(解答番号15/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓔ「税」に関連して、租税の原則を表す用語A〜C(中立・垂直的公平・簡素)と、その内容を述べたア〜ウとの組合せを選ぶ設問です。
<考え方>
租税原則の三本柱である公平・中立・簡素の意味を押さえれば決まります。中立は、課税が人々の経済活動の選択をゆがめないこと。公平のうち垂直的公平は、負担能力の大きい人ほど多く負担することで、累進課税がその例です(負担能力が同じ人を同じに扱う水平的公平と対になります)。簡素は、仕組みが分かりやすく、納税・徴税にかかる費用が小さいことを指します。
<選択肢>
A(中立)=イ【正】
課税によって経済活動を極力妨げないという内容は、税が資源配分や人々の選択をゆがめないことを求める中立の原則にあたる。
B(垂直的公平)=ア【正】
租税の負担能力に応じて負担することが望ましいという内容は、所得の多い人ほど重く負担する垂直的公平にあたる。同じ負担能力の人を同じに扱う水平的公平とは区別する。
C(簡素)=ウ【正】
納税の手続が分かりやすく徴税の経費が小さいことが望ましいという内容は、簡素の原則にあたる。負担の配分ではなく制度の運用にかかるコストに関わる原則である。
正解【③】
中立=イ、垂直的公平=ア、簡素=ウの対応になるので、③が正解です。
問6:正解 ①(解答番号16/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓕ「経済活動」に関連して、2016年度の日本のGNE(国民総支出)を算出するために必要な項目と金額(民間最終消費支出300兆円、政府最終消費支出106兆円、総資本形成127兆円、財貨・サービスの輸出89兆円、同輸入83兆円、海外からの所得28兆円、海外に対する所得11兆円、国民総支出556兆円)を並べた表が与えられ、記述アとイの正誤の組合せを選ぶ設問です。
<考え方>
三面等価の原則と、GNPとGDPの差が「海外からの純所得」であることに戻ります。表の項目を足し引きすると300+106+127+89−83+28−11=556兆円となり、国民総支出の欄と一致します。支出面から見たGNEは生産面から見たGNPと等しいので、GNPも556兆円です。GDPはここから海外からの純所得(28−11=17兆円)を除いた539兆円となり、GNPより小さくなります。
<選択肢>
ア(GNP(国民総生産)の額は556兆円である)【正】
三面等価の原則により、支出面から見たGNE(国民総支出)と生産面から見たGNP(国民総生産)は等しい。表のGNEが556兆円なのでGNPも556兆円である。
イ(GDP(国内総生産)の額はGNPの額より小さい)【正】
GDPはGNPから海外からの所得を差し引き、海外に対する所得を加えたもので、556−28+11=539兆円となる。海外からの所得28兆円が海外に対する所得11兆円を上回っているため、GDPはGNPより17兆円小さい。
正解【①】
GNEと等しいGNPは556兆円、そこから海外からの純所得17兆円を除いたGDPは539兆円でGNPより小さいので、①が正解です。
問7:正解 ④(解答番号17/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓖ「景気」に関連して、景気循環の類型とそれが起こる主な要因についての記述として正しいものを選ぶ設問です。クズネッツ、コンドラチェフ、キチン、ジュグラーの4つの波が並びます。
<考え方>
周期の短い順に要因を並べて覚えておけば、対応を一つずつ確かめられます。キチンの波は約40か月で在庫投資の変動、ジュグラーの波は約10年で設備投資の変動、クズネッツの波は約20年で建築需要、コンドラチェフの波は約50年で技術革新が主な要因とされます。この設問は名称はそのままに要因だけを入れ替えているので、名称と要因の組合せだけを見ればよいことになります。
<選択肢>
①【誤】
クズネッツの波(約20年)の主な要因は建築需要の変動である。技術革新を要因とするのはコンドラチェフの波で、要因が入れ替えられている。
②【誤】
コンドラチェフの波(約50年)の主な要因は技術革新である。在庫投資を要因とするのはキチンの波で、最も長い波と最も短い波が入れ替えられている。
③【誤】
キチンの波(約40か月)の主な要因は在庫投資の変動である。建設投資(建築需要)を要因とするのはクズネッツの波である。
④【正】
ジュグラーの波(約10年)は、機械や工場などの更新にともなう設備投資の変動を主な要因とする中期波動で、名称と要因の組合せが正しい。
正解【④】
ジュグラーの波と設備投資の変動という組合せだけが正しいので、④が正解です。
問8:正解 ②(解答番号18/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓗ「地域の住民の声を政治に反映させるような仕組み」に関連して、日本の住民投票制度を述べた文章の空欄ア・イに入る語句の組合せを選ぶ設問です。アには投票によって民意を政治に反映させる制度の呼び名が、イには条例に基づく住民投票の結果に法的拘束力があるかどうかが入ります。
<考え方>
直接民主制の仕組みの呼び名と、条例に基づく住民投票の位置づけに戻ります。住民や国民が投票によって直接意思を示す制度がレファレンダム(国民投票・住民投票)、条例の制定改廃などを住民が発案する制度がイニシアティブ(住民発案)です。また、過半数の同意がなければその特別法を制定できないという法的効果をもつ憲法95条の住民投票と異なり、条例に基づく住民投票の結果に法的な拘束力はなく、結果を尊重するかどうかは首長や議会の判断に委ねられます。
<選択肢>
ア=レファレンダム【正】
投票によって民意を政治に反映させる制度をレファレンダムという。イニシアティブは条例の制定改廃などを住民が発案・請求する制度で、投票によって意思を示す仕組みではないためここには入らない。
イ=認められていない【正】
条例に基づく住民投票の結果に法的な拘束力はなく、首長や議会は結果を参考にするにとどまる。憲法95条の住民投票が、住民の過半数の同意がなければ特別法を制定できないという法的効果をもつのとは対照的であり、文章が「憲法上の住民投票とは異なる」と述べている点とも合う。
正解【②】
アはレファレンダム、イは条例に基づく住民投票に法的拘束力が認められていないことが憲法上の住民投票との違いなので、②が正解です。
第3問 「宇宙船地球号」からみた世界経済と地球環境(配点24)
ボールディングらが提起した「宇宙船地球号」という考え方を手がかりに、新興国の経済成長、国際貿易の拡大、地球環境への負荷の高まり、開発援助の広がりへと論を進める評論文です。公共財や南北問題といった基本概念に加えて、貿易の為替決済の仕組み図、企業の資金調達の表、ODA実績の表を読む設問が並びます。
問1:正解 ③(解答番号19/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓐ「地球環境」が非競合性と非排除性という性質をもつ公共財に分類されることがあるとしたうえで、公共財の性質の一つである非排除性についての記述として最も適当なものを選ぶ設問です。
<考え方>
公共財の二つの性質を、それぞれ何についての話かで区別します。非競合性は「同時に消費できるか」の話で、ある人が消費しても他の人の消費できる量が減らない性質。非排除性は「誰かを締め出せるか」の話で、対価を支払わない人を含めて利用から排除できない性質です。設問が問うのは後者なので、利用を制限できるかどうかを述べた選択肢を探します。
<選択肢>
①【誤】
他の人々の消費を減らすことなく複数の人が同時に消費できるというのは非競合性の説明である。公共財のもう一方の性質を述べており、問われているものと異なる。
②【誤】
価格が上がっても需要量があまり低下しないというのは需要の価格弾力性が小さいという話で、公共財の性質とは別の概念である。
③【正】
対価を支払わない人も含めて誰も利用から締め出すことができない、つまりだれも利用を制限されないというのが非排除性である。だからこそ市場に委ねるとただ乗りが生じ、供給が過少になる。
④【誤】
供給量が不足しても価格が変化しないというのは価格の調整機能に関する記述であって、非排除性の定義ではない。
正解【③】
非排除性は利用から誰も排除できない性質を指すので、③が正解です。
問2:正解 ①(解答番号20/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓑ「発展途上国」の経済に関連する記述として誤っているものを選ぶ設問です。プレビッシュ報告、後発発展途上国(LDC)、持続可能な開発目標(SDGs)、マイクロファイナンスが並びます。
<考え方>
南北問題をめぐる国際的な主張が、どちらの側に有利な内容だったかに戻ります。1964年の第1回国連貿易開発会議(UNCTAD)に提出されたプレビッシュ報告は「援助より貿易を」を掲げ、途上国の一次産品の価格安定、先進国が途上国の製品に低い関税を適用する一般特恵関税の供与、先進国のGNP1%にあたる援助などを求めました。アンチダンピング関税は不当に安い輸入品に対抗して輸入国が課す関税で、途上国の輸出を促す方向の主張ではありません。
<選択肢>
①【正(これが誤り)】
プレビッシュ報告が主張したのは、途上国の製品に低い関税を適用する一般特恵関税の供与などである。アンチダンピング関税は不当廉売に対抗して輸入国が課す関税であって、南北問題の解決策として主張された内容とは別物であり、言葉がすり替えられている。
②【誤(正しい)】
発展途上国の中でも所得水準が低く経済発展が最も遅れている国は、国連によって後発発展途上国(LDC)に分類される。
③【誤(正しい)】
2015年に国連で採択されたSDGsは、貧困や飢餓の撲滅に加えてジェンダー平等の実現や気候変動対策など、17の達成すべき目標を掲げている。
④【誤(正しい)】
マイクロファイナンスは、担保をもたない貧困層に少額の事業資金を融資して自助努力を支える仕組みで、バングラデシュのグラミン銀行の取組みが知られる。
正解【①】
プレビッシュ報告が求めたのは一般特恵関税の供与などであってアンチダンピング関税ではないので、誤っているのは①です。
問3:正解 ⑥(解答番号21/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓒ「国際貿易」の決済手段である為替について、X国の甲銀行・輸出業者とY国の乙銀行・輸入業者の間をA・B・Cが行き来する仕組み図が与えられ、A〜Cとその内容ア〜ウ(支払いを確約する信用状(L/C)、為替手形・船積み書類、自国通貨)との組合せを選ぶ設問です。図には商品が輸出業者から輸入業者へ渡ること、銀行間で代金の決済が行われることも示されています。
<考え方>
三つのうち「国をまたいで流れるもの」と「それぞれの国の中だけで動くもの」を分けるのが近道です。自国通貨は、輸入業者が自国の乙銀行に払い込み、輸出業者が自国の甲銀行から受け取るというように、それぞれの国の中でしか動きません。為替手形と船積み書類は、商品を船積みした輸出業者が自分の取引銀行に持ち込み、そこから相手国の銀行を経て輸入業者に示されるという一方向の流れをたどります。信用状は、取引に先立って輸入業者の取引銀行が支払いを確約する文書で、輸出業者のもとへ届きます。矢印の向きと、その矢印が国境をまたいでいるかどうかを見れば三つは区別できます。
<選択肢>
A=自国通貨(ウ)【正】
Aが付いているのは、輸入業者から乙銀行へ、甲銀行から輸出業者へという、それぞれの国の中で閉じた矢印である。輸入業者は自国通貨で代金を払い込み、輸出業者は自国通貨で受け取るという流れで、国境をまたぐ動きがないことが決め手になる。
B=為替手形・船積み書類(イ)【正】
Bは輸出業者から甲銀行へ、甲銀行から乙銀行へ、乙銀行から輸入業者へと一方向に流れている。商品を船積みした輸出業者が為替手形と船積み書類を取引銀行に持ち込み、それが相手国の銀行を経て輸入業者に示されるという順序と一致する。
C=支払いを確約する信用状(L/C)(ア)【正】
Cは乙銀行から輸出業者へ送られ、注にあるとおり輸出業者の依頼によって乙銀行から甲銀行へ送られる場合もある。輸入業者の取引銀行である乙銀行が支払いを確約して輸出業者の側に届ける文書であり、取引に先立って輸出業者が受け取る点が信用状の性格を示している。
正解【⑥】
国の中だけを動くAが自国通貨、輸出業者から輸入業者へ一方向に流れるBが為替手形・船積み書類、乙銀行が輸出業者に届けるCが信用状なので、⑥が正解です。
問4:正解 ④(解答番号22/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓓ「WTO(世界貿易機関)」についての記述として正しいものを選ぶ設問です。最恵国待遇原則、ウルグアイ・ラウンドの知的財産権ルール、紛争処理手続の議決方式、ドーハ・ラウンドの進捗が並びます。
<考え方>
GATTからWTOへ何が引き継がれ、何が新しくなったかに戻ります。自由・無差別(最恵国待遇と内国民待遇)・多角という基本原則はWTOにも引き継がれました。ウルグアイ・ラウンドで交渉された知的財産権のルールは、TRIPS協定としてWTO協定の一部になっています。紛争処理では、GATT時代の全会一致に代えて、全加盟国が反対しない限り採択されるネガティブ・コンセンサス方式がとられ、敗訴した国が採択を阻めなくなりました。
<選択肢>
①【誤】
最恵国待遇原則はGATTの基本原則であり、WTO協定にもそのまま引き継がれている。引き継がれていないとする点が事実と逆である。
②【誤】
ウルグアイ・ラウンドで交渉された知的財産権の国際的保護のルールは、TRIPS協定としてWTO協定に組み込まれている。採用されていないとする点が誤りである。
③【誤】
WTOの紛争処理手続では、全加盟国が反対しない限り裁定が採択されるネガティブ・コンセンサス方式がとられている。一国でも反対すれば採択されないのはGATT時代の全会一致方式であり、条件が逆になっている。
④【正】
2001年に開始されたドーハ・ラウンド(ドーハ開発アジェンダ)は、農産物の市場開放をめぐる輸出国と輸入国の利害対立などから、交渉全体の妥結に至っていない。
正解【④】
ドーハ・ラウンドが交渉全体の妥結に至っていないという記述だけが正しいので、④が正解です。
問5:正解 ②(解答番号23/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓔ「企業」について、日本とアメリカの民間非金融法人企業が1999年12月末と2017年3月末にどのように資金調達を行ったかを、銀行等借入・債券・株式および出資金の三項目の構成比(単位は%)で示した表が与えられ、そこから読みとれる内容として最も適当なものを選ぶ設問です。注により「その他」の数値が省かれているため、合計は100%になりません。
<考え方>
選択肢が使う「他人資本」「間接金融」「直接金融」「自己資本」という語を、表のどの項目に置き換えるかを先に決めるのが要点です。返済義務のある他人資本は銀行等借入と債券の合計、返済義務のない自己資本は株式・出資金。銀行を介する間接金融は銀行等借入、証券市場で直接調達する直接金融は債券と株式・出資金の合計です。置き換えさえ済めば、あとは二つの数値を足して比べるだけになります。
<選択肢>
①【誤】
日本の他人資本(銀行等借入+債券)は1999年が38.8+9.3=48.1%、2017年が24.2+4.1=28.3%で、2017年の方が低い。高いとする向きが逆である。
②【正】
アメリカの間接金融にあたる銀行等借入は、1999年の12.1%から2017年の6.2%へと低下している。2017年の方が割合が低いという記述どおりである。
③【誤】
2017年の直接金融(債券+株式・出資金)は、日本が4.1+49.9=54.0%、アメリカが13.7+56.5=70.2%で、日本の方が低い。比較の向きが逆である。
④【誤】
1999年の自己資本(株式・出資金)は、アメリカが66.6%、日本が33.8%で、アメリカの方が高い。低いとする点が表の数値と食い違う。
正解【②】
アメリカの銀行等借入は12.1%から6.2%へ下がっており、間接金融の割合が低くなっているので、②が正解です。
問6:正解 ⑥(解答番号24/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓕ「温室効果ガス」の削減に関連する国内外の制度を説明した記述A〜Cのうち、正しいものをすべて選び組合せを選ぶ設問です。京都議定書の排出量の売買、日本の再生可能エネルギー特別措置法、パリ協定の削減目標が並びます。
<考え方>
それぞれの枠組みが「何を認めたか」「誰に義務づけたか」に戻ります。京都議定書は先進国に削減義務を課すとともに、排出量取引・クリーン開発メカニズム・共同実施からなる京都メカニズムを認めており、排出量の売買を禁止してはいません。日本では福島第一原発事故後の2012年7月に再生可能エネルギー特別措置法が施行され、固定価格買取制度が始まりました。パリ協定は、先進国だけに削減義務を課した京都議定書と違って、すべての締約国に自主的な削減目標の提出と達成に向けた取組みを求めています。なお、出題当時はアメリカがパリ協定からの離脱を表明していた時期にあたります。
<選択肢>
A(京都議定書は締約国間における温室効果ガスの排出量の売買を禁止していた)【誤】
京都議定書は、削減目標の達成を助ける仕組みとして排出量取引を含む京都メカニズムを認めていた。禁止していたとする点が事実と正反対である。
B(福島第一原発事故後に施行された再生可能エネルギー特別措置法により固定価格買取制度が開始された)【正】
2012年7月に施行された同法により、太陽光や風力などの再生可能エネルギーから作られた電力を電気事業者が一定価格で一定期間買い取る固定価格買取制度が始まった。
C(パリ協定ではすべての締約国が自主的な削減目標を提出し、達成に向けて取り組むことが定められた)【正】
2015年採択のパリ協定は、先進国のみに削減義務を負わせた京都議定書と異なり、途上国を含むすべての締約国が削減目標を提出し、その達成に向けて取り組むことを定めている。
正解【⑥】
正しいのはBとCで、Aは京都議定書が認めていた排出量取引を禁止と述べている点が誤りなので、⑥が正解です。
問7:正解 ④(解答番号25/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓖ「農作物」に関連して、日本における農業や食品に関する出来事についての記述として最も適当なものを選ぶ設問です。農地法、農業基本法、新食糧法、食品安全基本法が並びます。
<考え方>
法律の名称と、制定・施行のきっかけおよび内容の対応に戻ります。第二次世界大戦後の農地改革は寄生地主制を解体して自作農を創設するもので、農地法(1952年)はその成果を維持するための法律です。農業基本法(1961年)は他産業との所得格差を縮めるために農業の近代化と自立経営農家の育成をめざしました。新食糧法(1995年施行)は食糧管理法に代わって米の流通を大幅に自由化する法律です。食品安全基本法(2003年)はBSE問題や食品の偽装表示事件を受けて制定されました。
<選択肢>
①【誤】
戦後の農地改革は寄生地主制を解体して自作農を創設するものであり、農地法はその成果を維持するために制定された。寄生地主制が復活したとする点が事実と正反対である。
②【誤】
農業基本法がめざしたのは、農業の近代化と自立経営農家の育成によって他産業との所得格差を縮めることである。兼業化の促進を目的とはしておらず、内容がすり替えられている。
③【誤】
新食糧法は食糧管理法に代わって米の生産・流通を自由化するための法律である。地域の伝統的な食文化を見直し守ることを目的とした法律ではない。
④【正】
食品の偽装表示などの事件やBSE問題をうけ、食の安全を確保するために2003年に食品安全基本法が制定され、リスク評価を担う食品安全委員会が置かれた。
正解【④】
食品の偽装表示などの事件をうけて食の安全を確保するために制定されたのが食品安全基本法なので、④が正解です。
問8:正解 ③(解答番号26/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓗ「開発援助」に関連して、2016年の支出純額ベースで、5か国のODAの実績総額(億ドル)、ODAの対国民総所得(GNI)比(%)、そして空欄Aという指標(%)を並べた表が与えられ、Aに入る用語とB〜Dに入る国名の組合せを選ぶ設問です。イギリスとフランスは表にあらかじめ示されています。
<考え方>
国名は「実績総額」と「GNI比」の二つを組み合わせれば決まります。Bは総額344.1億ドルと突出して大きいのにGNI比は0.19%と最も低く、経済規模が大きいアメリカにあたります。Cは総額247.4億ドルで、GNI比はイギリスと並ぶ0.70%。Dは総額104.2億ドルでGNI比0.20%と、BとともにGNI比の低い側にあります。次にAの用語ですが、贈与比率は援助総額に占める無償資金協力と技術協力の割合を示すもので、有償資金協力(円借款)の比重が大きい日本では当時40%台にとどまります。これに対しグラント・エレメントは貸付条件がどれだけ緩やかかを示す指標で、円借款は低利・長期であるため日本でも高い値になります。Dに87.0%という高い値が付いていることが、用語を決める手がかりです。
<選択肢>
A=グラント・エレメント【正】
グラント・エレメントは、金利・返済期間・据置期間といった貸付条件の緩やかさを示す指標で、無償の援助なら100.0%になる。円借款の比重が大きい国でも、条件が緩やかであれば高い値になる。これが援助総額に占める無償援助の割合を示す贈与比率であれば、円借款を柱としてきた国に87.0%という高い値が付くことはない。
B=アメリカ【正】
実績総額が344.1億ドルと5か国で最大である一方、GNI比は0.19%と最も低い。経済規模が突出して大きいアメリカの特徴であり、Aの値が100.0%である点も、援助を無償で行っていることと符合する。
C=ドイツ【正】
実績総額247.4億ドルはアメリカに次いで大きく、GNI比は0.70%に達している。イギリスと並ぶ水準であり、残るドイツにあたる。
D=日本【正】
実績総額104.2億ドルと規模は大きいが、GNI比は0.20%と低い。有償資金協力(円借款)を柱としてきた日本にあたり、Aの値87.0%もグラント・エレメントとして説明がつく。
正解【③】
Aはグラント・エレメント、B=アメリカ、C=ドイツ、D=日本となるので、③が正解です。
第4問 自由民主主義の成り立ちとその危うさ(配点24)
自由主義と民主主義が結びついた自由民主主義という体制を取り上げ、法の支配・権力分立・間接民主制・複数政党制という柱を確認したうえで、選挙によって成立したナチス政権をふまえて、多数派による少数者の抑圧という危険が今日も消えていないことを論じる文章です。思想史の名句から日本の刑事司法の統制まで幅広く問われます。
問1:正解 ⑤(解答番号27/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓐ「法の支配」に関連して、17世紀初頭にエドワード・コーク(クック)が13世紀の法律家ブラクトンの言葉をひいて述べた内容(空欄ア)と、フランス人権宣言に謳われた内容(空欄イ)を、三つの引用A〜Cから選んで組合せを答える設問です。
<考え方>
引用文の中心にある語が、どの文書・どの思想に結びつくかで決まります。法の支配は、国王であっても法の下にあることを求める考え方ですから、アには王と法の上下関係を述べた文が入ります。フランス人権宣言は近代市民革命の成果として自然権の保全を政治社会の目的に据えた文書なので、イには「時効によって消滅することのない自然的な諸権利」という自然権の語を含む文が入ります。残る一つは20世紀の社会権に関する文で、アにもイにも入りません。
<選択肢>
ア=C(王は何人の下にも立つことはない。しかし、神と法の下には立たなければならない)【正】
国王といえども法に従わなければならないという、法の支配そのものを述べた言葉である。コークはこのブラクトンの言葉をひいて、絶対君主制の下で危機に瀕していた法の支配を主張した。
イ=A(あらゆる政治的結合の目的は、人の、時効によって消滅することのない自然的な諸権利の保全にある)【正】
フランス人権宣言第2条の一節で、政治社会の目的が自然権の保全にあると宣言している。社会契約論・立憲主義が近代市民革命に結実したことを示す文である。
B(経済生活の秩序は、すべての人に、人たるに値する生存を保障することをめざす正義の諸原則に適合するものでなければならない)【アにもイにも入らない】
生存権を世界で初めて定めた1919年のワイマール憲法第151条の一節である。20世紀の社会権に関する文であり、中世から近代にかけての法の支配や自然権の話とは時期も内容も異なる。
正解【⑤】
アにはブラクトンの言葉であるC、イにはフランス人権宣言のAが入るので、⑤が正解です。
問2:正解 ②(解答番号28/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓑ「権力分立」に関連して、裁判所の違憲審査権について、積極的に行使して違憲判断をためらうべきではないとする見解と、行使には慎重さが求められやむをえない場合のほかは違憲判断を避けるべきだとする見解を対比したうえで、前者(司法積極主義)の根拠となる考え方を選ぶ設問です。
<考え方>
二つの見解の分かれ目は「民主的に選ばれた機関の判断をどれだけ尊重するか」です。司法消極主義は、国会や内閣は国民に選ばれ政治的責任を負う機関であり、専門的な情報や高度な政治判断を要する事柄はその判断に委ねるべきだと考えます。これに対し司法積極主義は、多数派の意思が通りやすい民主的機関では守られにくい少数者の権利こそ、選挙に左右されない裁判所が守るべきだと考えます。選択肢のうち政治部門を尊重せよという向きのものはすべて後者の根拠なので落とします。
<選択肢>
①【誤】
国政調査権をもち多くの情報を得られる機関、すなわち国会の判断を尊重すべきだという主張であり、違憲判断を控えるべきだとする司法消極主義の根拠にあたる。
②【正】
選挙で構成員が選ばれる機関では国民の多数派の考えが通りやすいからこそ、多数派の考えに反してでも少数者の権利を確保すべきだという主張である。多数決で切り捨てられかねない少数者を裁判所が救うという、司法積極主義の根拠そのものである。
③【誤】
外交など高度な政治的判断を要する事柄は国民に政治的責任を負う機関が決めるべきだという主張で、統治行為論に通じる司法消極主義の根拠である。
④【誤】
国民の代表者で構成される機関の判断をできる限り尊重すべきだという主張で、民主主義を理由に違憲判断を避けようとする司法消極主義の根拠である。
正解【②】
多数派の考えに反してでも少数者の権利を確保すべきだという考え方が司法積極主義の根拠なので、②が正解です。
問3:正解 ④(解答番号29/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓒ「選挙」について、小選挙区制と比例代表制とを比較した場合の、それぞれの選挙制度の一般的な特徴に関する記述として最も適当なものを選ぶ設問です。
<考え方>
1選挙区から何人を選ぶかという違いから、特徴はすべて導けます。小選挙区制は1選挙区1名なので、当選者以外に投じられた票(死票)が多くなり、大政党に有利で二大政党制になりやすく、候補者個人を選ぶ性格が強くなります。比例代表制は得票に比例して議席が配分されるため死票が少なく、小政党も議席を得やすいので多党制になりやすく、政党を選ぶ性格が強くなります。二つの制度の特徴が入れ替えられていないかを確かめます。
<選択肢>
①【誤】
小選挙区制は1選挙区から1名しか当選しないため、落選者に投じられた票がすべて死票となり、死票はむしろ多くなる。死票が少ないのは比例代表制であり、向きが逆である。
②【誤】
小選挙区制は大政党に有利に働くため二大政党制になりやすい。多党制になりやすいのは比例代表制であり、二つの制度が入れ替えられている。
③【誤】
比例代表制は政党の得票に応じて議席を配分する制度なので、政党中心の選挙になりやすい。候補者中心になりやすいのは小選挙区制である。
④【正】
比例代表制では得票に比例して議席が配分されるため、小政党にも議席が回り、有権者の中の少数派の意見も議会に反映されやすい。
正解【④】
得票に比例して議席が配分される比例代表制は少数派の意見を反映しやすいので、④が正解です。
問4:正解 ③(解答番号30/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓓ「議会」について、各国の議会制度の説明として誤っているものを選ぶ設問です。アメリカの上院、イギリスの貴族院、日本の参議院、フランスの上院が並びます。
<考え方>
二院制をとる各国で、第二院がどのように選ばれ、どんな権限をもち、解散があるのかを並べて確かめます。日本国憲法が解散を定めているのは衆議院だけで、参議院に解散はありません。衆議院が解散されている間に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会が開かれるという仕組みからも、参議院が解散されない院であることが分かります。
<選択肢>
①【誤(正しい)】
アメリカの上院は各州から2名ずつ国民の直接選挙で選ばれ、条約の締結についての承認(同意)権や、大統領による高官の任命への同意権など重要な権限をもつ。
②【誤(正しい)】
イギリスの貴族院は選挙によらない議員で構成され、長く終審裁判所の機能も担ってきたが、2009年に連合王国最高裁判所が設置されてその機能を失っている。
③【正(これが誤り)】
日本国憲法が解散を定めているのは衆議院だけで、参議院に解散は認められていない。参議院議員は直接選挙で選ばれ、3年ごとに半数が改選される。解散が認められるとした点が制度と食い違う。
④【誤(正しい)】
フランスの上院(元老院)は任期6年で、下院議員や地方議会議員などで構成される選挙人団による間接選挙で議員が選出される。
正解【③】
参議院には解散が認められていないので、誤っているのは③です。
問5:正解 ①(解答番号31/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓔ「大衆」に関連して、大衆民主主義の説明として最も適当なものを選ぶ設問です。
<考え方>
大衆民主主義(マス・デモクラシー)は、制限選挙から普通選挙への移行によって成立した体制を指す語です。19世紀までは納税額や身分によって選挙権が限られていましたが、20世紀にかけて財産・身分・教養などの制限が取り払われ、広く一般の人々が政治に参加するようになりました。革命の主体や権力の集中を述べた選択肢は、市民革命や社会主義体制の説明であって、大衆民主主義の定義ではありません。
<選択肢>
①【正】
財産や身分、政治的知識の有無などによる制限なしに政治参加の権利が保障される民主主義政治は、普通選挙の実現によって成立した大衆民主主義そのものである。
②【誤】
資本家階級が主体となって封建制や絶対君主制を否定する革命は、市民革命(ブルジョア革命)の説明である。そこで実現したのは制限選挙を含む近代民主主義であり、大衆民主主義とは段階が異なる。
③【誤】
労働者階級の指導の下に農民や中小企業家が連合して資本主義経済を打倒する革命は、社会主義革命の路線の説明で、大衆民主主義とは別の体制構想である。
④【誤】
労働者を代表する政党の指導の下で人民を代表する合議体に権力が集中される政治は、権力分立を否定する人民民主主義(社会主義国の政治体制)の説明である。
正解【①】
財産や身分による制限なしに政治参加の権利が保障される民主政治が大衆民主主義なので、①が正解です。
問6:正解 ②(解答番号32/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓕ「ナチス政権」についての説明として最も適当なものを選ぶ設問です。諸民族の平等、成立時の憲法、全権委任法、プロパガンダが並びます。
<考え方>
本文が「ナチス政権は選挙の結果として成立したが、権力分立制や複数政党制を否定する政策をとった」と述べていることが手がかりです。第一次世界大戦後のドイツにはワイマール憲法があり、ナチスはその下で行われた選挙で第一党となって政権に就きました。そのうえで1933年の全権委任法により、本来は議会がもつ立法権を政府に委ね、権力分立を実質的に無力化しました。「立法権を行政府へ」という向きを取り違えないことが要点です。
<選択肢>
①【誤】
ナチス政権はユダヤ人をはじめとする特定の民族を迫害し、人々の自由と権利を著しく侵害した。諸民族の平等を実現したとする点は事実と正反対である。
②【正】
ナチスは第一次世界大戦後のドイツに制定されたワイマール憲法の下で行われた選挙に勝ち、その憲法が効力をもつまま政権に就いた。本文の「選挙の結果として成立した」という記述とも合う。
③【誤】
1933年の全権委任法は、議会がもつ立法権を政府に委ねるものであった。「行政権を立法府に委譲した」とすると権限と主体の向きが逆になる。
④【誤】
ナチスは大規模な集会やラジオ、映画などを用いた大がかりな宣伝によって大衆の支持を集めて台頭した。プロパガンダを用いずに台頭したとする点が誤りである。
正解【②】
ナチス政権はワイマール憲法の下での選挙を経て成立したので、②が正解です。
問7:正解 ④(解答番号33/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓖ「国家権力を監視し、その濫用を防止する」に関連して、日本において裁判や刑事手続にかかわる権力を監視・統制する仕組みについての記述として誤っているものを選ぶ設問です。検察審査会、国民審査、取調べの録音・録画、再審が並びます。
<考え方>
制度の仕組みと、その制度が実際に使われた例があるかどうかを分けて確かめます。「これまでにない」という同じ形の言い切りが二つ並んでいるので、具体例を思い出せるかどうかで切り分けるのが要点です。再審によって死刑確定者が無罪となった例としては、1980年代に相次いだ免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件があり、「例はない」という言い切りは成り立ちません。一方、国民審査で罷免された最高裁判所裁判官は一人もいません。
<選択肢>
①【誤(正しい)】
検察官が不起訴とした事件について検察審査会が起訴を相当とする議決を二度行った場合には、裁判所が指定した弁護士によって強制的に起訴される仕組みが、2009年施行の改正検察審査会法で導入された。
②【誤(正しい)】
最高裁判所裁判官の国民審査はこれまで何度も行われているが、これによって罷免された裁判官はこれまでに一人もいない。
③【誤(正しい)】
2016年の刑事訴訟法改正により、裁判員裁判の対象事件などについて、取調べの全過程の録音・録画(可視化)が捜査機関に義務づけられた。
④【正(これが誤り)】
免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件のように、死刑判決が確定した人が再審で無罪とされた例が実際にある。「これまでにない」という言い切りが事実と食い違う。
正解【④】
死刑判決を受けた人が再審で無罪とされた例は実際に複数あるので、誤っているのは④です。
問8:正解 ③(解答番号34/配点3)
<問題要旨>
下線部ⓗ「自由民主主義の維持」に関連して、国民の自由や権利をめぐる日本の状況についての記述として最も適当なものを選ぶ設問です。政党の結成、インターネット上の意見交換、被選挙権、報道と検閲が並びます。
<考え方>
それぞれの自由や権利が、どの条文・どの権利概念に支えられているかに戻ります。政党を結成する自由は憲法21条の結社の自由に基づくもので、政党助成法は政党交付金の交付に関する法律にすぎません。アクセス権はマスメディアに対して反論や意見発表の場を求める新しい人権の主張であって、私人どうしの意見交換を保障する権利ではありません。検閲は憲法21条2項が例外を認めずに禁止しています。被選挙権は選挙権とともに参政権の一つとされます。
<選択肢>
①【誤】
政党を結成する自由は憲法21条が保障する結社の自由に基づく。政党助成法は政党交付金の交付要件や手続を定める法律であって、政党の結成を認める根拠法ではない。
②【誤】
アクセス権は、マスメディアに対して反論や意見発表の場を求める権利として主張されてきたものである。友人と自由に意見を交わすことは表現の自由の問題であり、権利の概念がすり替えられている。
③【正】
被選挙権は、選挙に立候補して代表者となりうる権利であり、選挙権とともに国民が政治に参加するための参政権の一つとされる。
④【誤】
憲法21条2項は「検閲は、これをしてはならない」と定め、行政機関による検閲を例外なく禁じている。デマやフェイクニュースへの対策であっても検閲は認められない。
正解【③】
被選挙権は選挙権と並ぶ参政権の一つなので、③が正解です。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

