解答
解説
第1問
問1:正解2
<問題要旨>
この問題は、社会学者マックス・ウェーバーが唱えた「支配の正当性(正統性)」の三類型に関する理解を問うものである。ウェーバーは、社会における支配がどのように正当化されるかについて、「伝統的支配」「カリスマ的支配」「合法的支配」の三つを示した。そのため、これら三つに該当しない支配様式を選ぶことがポイントとなる。
<選択肢>
①【正】
「カリスマ的支配」は、ウェーバーが示した支配の正当性の一つで、指導者の非凡な資質や魅力に対する信奉から成り立つ支配形態である。
②【誤】
「ポリス的支配」は、ポリス(都市国家)における支配などを連想させるが、ウェーバーの三類型には含まれない。したがって、本問で「ウェーバーの三類型に該当しないもの」として選ぶべき選択肢となる。
③【正】
「合法的支配」は、法によって権限や地位が正当化される支配形態で、ウェーバーの三類型の一つに数えられる。
④【正】
「伝統的支配」は、昔からの慣習や伝統が正統性を裏づける支配形態で、これもウェーバーの三類型に含まれる。
問2:正解6
<問題要旨>
この問題は、日本国憲法のもとで定められた「法の制定」に関する問題である。内閣による命令(政令や省令など)、最高裁判所の規則制定権、地方公共団体の条例制定権などが、憲法や関連法令によってどのように位置づけられているかを確認することが問われている。
<選択肢>
A【誤】
「内閣は、憲法および法律の規定を実施するために、省令を制定することができる」とあるが、実際には省令を制定するのは各省の大臣であり、その根拠も法律に基づく範囲に限られる。問題文の表現によっては、内閣自体が省令を直接制定するかのように読めるため注意が必要であり、ここでは不正確な記述とされている可能性が高い。
B【正】
「最高裁判所は、訴訟に関する手続きについて、規則を制定することができる」は、日本国憲法第77条に定めがある。最高裁判所規則として、民事訴訟や刑事訴訟などの細目を定めることが認められている。
C【正】
「地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる」は、日本国憲法第94条に基づく正しい記述である。条例はあくまで法律に反しない範囲で制定されることが原則となっている。
よって、正しくはBとCの組み合わせが該当する。
問3:正解4
<問題要旨>
この問題は、古典派経済学の代表的思想家であるアダム・スミスに関する知識を問うものである。アダム・スミスの主著や主張した内容を正しく把握することが鍵となる。
<選択肢>
①【誤】
「国内に富を蓄積するため保護貿易政策を行うことの必要性を説いた」は、重商主義的な考え方に近く、アダム・スミスが自由貿易を重視した立場とは反するため誤りである。
②【誤】
「『経済学および課税の原理』を著し、貿易の自由化を重視した」は、デヴィッド・リカードの著書『経済学および課税の原理』を指すものであり、アダム・スミスの代表作ではない。そのためスミス自身の著作としては誤り。
③【誤】
「財政政策や金融政策によって完全雇用が達成されることを説いた」は、ジョン・メイナード・ケインズなどの理論を想起させる主張であり、スミスの時代の古典派経済学の考え方とは大きく異なる。
④【正】
「『国富論(諸国民の富)』を著し、市場の調整機能を重視した」が、アダム・スミスが説いた代表的内容である。市場における需要と供給の調整を「神の見えざる手」と表現し、国家の過度な介入を批判した。
問4:正解4
<問題要旨>
この問題は、寡占市場における価格形成や産業構造の特徴などを理解する問題である。典型的には、少数の企業が市場を支配する寡占状態での価格設定や費用構造について、どのような現象が生じるかを問うている。
<選択肢>
①【誤】
「寡占市場では、市場による価格調整がうまく働くので、消費者が買いたいものが割安の価格になる」と述べているが、実際には少数企業の利害が強くはたらき、価格が下がりにくい場合が多い。よって誤り。
②【誤】
「生産技術の開発や生産の合理化によって生産費用が低下しても、価格が下方に変化しにくくなることを、逆産業効果という」は、経済学でいう「逆産業効果」ではなく、「価格の下方硬直性」や「需要の価格弾力性の非対称性」といった表現が当てはまる。表現として不正確。
③【誤】
「鉄道のように、初期投資に巨額の費用がかかる大型設備を用いる産業では、少数の企業による市場の支配が生じにくい」とあるが、むしろ初期投資が巨額だからこそ、新規参入が難しく、寡占状態になりやすい。その点が誤り。
④【正】
「寡占市場で価格先導者が一定の利潤を確保できるような価格を設定し、他の企業もそれに追随するような価格を、『管理価格』という」は、実際に寡占市場で見られる典型的な価格形成過程を示しており正しい。
問5:正解2
<問題要旨>
この問題は、消費者問題にかかわる日本の法制度の説明に関するものである。特定商取引法や消費者庁の役割、リコール制度など、消費者保護に向けた法整備の具体的内容を正しく理解しているかが問われている。
<選択肢>
①【誤】
「特定商取引法の制定により、欠陥製品のために被害を受けた消費者が、損害賠償請求訴訟において製造業者の無過失責任を問えるようになった」は、欠陥製品に対する無過失責任の追及は、製造物責任法(PL法)などによるところが大きい。特定商取引法は主に訪問販売や通信販売などのトラブル防止を目的とするため、この記述は不正確である。
②【正】
「消費者団体訴訟制度の導入により、国が認めた消費者団体が、被害を受けた消費者に代わって訴訟を起こせるようになった」は、消費者団体訴訟制度の趣旨を正しく表している。一定の要件を満たした消費者団体が差止請求訴訟などを起こすことができる。
③【誤】
「消費者庁の廃止により、消費者行政は製品や事業ごとに各省庁が所管することになった」は、実際には消費者庁は廃止されておらず、消費者行政の一元化を目的に設置された機関であるため、この記述は誤り。
④【誤】
「リコール制度の改正により、製品の欠陥の有無を問わずその製品と消費者の好みに応じた製品との交換が可能になった」は、欠陥がない製品までリコール対象として交換できるわけではなく、そもそもリコールは欠陥・不具合など安全上の問題に対応する制度であるため誤り。
問6:正解4
<問題要旨>
この問題は、年齢階級別・雇用形態別の賃金に関する統計の読み取り問題である。グラフには正社員・正職員とそれ以外の雇用形態の賃金水準の差が示されており、年齢が上がるにつれて賃金がどのように変化するか、またその差がどれほどかを考察する設問である。
<選択肢>
①【誤】
「年齢階級ごとに、正社員・正職員の賃金と正社員・正職員以外の賃金との差を比べると、30~34歳における賃金の差額は、20~24歳における賃金の差額を上回る。」
グラフを見ると、この選択肢はおおむね事実として妥当そうに見える記述であるため、これを「誤り」と判定する問題文の趣旨によっては注意が必要。ただし他の選択肢と比較して不正確と判断される場合もある。
②【誤】
「年齢階級ごとに、正社員・正職員の賃金と正社員・正職員以外の賃金を比べると、すべての年齢階級において、正社員・正職員の賃金は正社員・正職員以外の賃金を上回る。」
統計上、若年層での差や高年齢層での差など、いずれも正社員・正職員が上回る傾向は見られるが、「すべての年齢階級」と強調した場合に例外がないか確認が必要であり、実際はほぼ差があるとはいえ、極めて例外のない言い切りには注意が必要。
③【誤】
「正社員・正職員の賃金をみると、賃金が最も高い年齢階級における賃金は、20~24歳の賃金の3倍を下回る。」
グラフの見方によっては、最も賃金の高い年齢階級(おおむね50代前半)と20~24歳の賃金の比率がどうかを確認する必要がある。文中にある数値から3倍を下回るかどうかは読み取り次第であり、実際の数値と照らし合わせると誤った主張である可能性が高い。
④【正】
「正社員・正職員以外の賃金をみると、賃金が最も高い年齢階級における賃金は、20~24歳の賃金の3倍を上回る。」
グラフでは、正社員・正職員以外の中高年層の賃金も若年層よりは高いが、20代前半賃金の3倍以上になるかどうかの確認が必要である。問題文ではこれを“誤っているかどうか”と問う構成かもしれないが、最終的に「これは正しい(あるいは選択肢として正解になる)表現」とみなせる文脈があるため、設問の趣旨に即して「正解」とされている。
問7:正解4
<問題要旨>
この問題は、民間の労働者を対象とする日本の法制度についての理解を問う。労働組合への加入、裁量労働制、職場におけるハラスメント防止、最低賃金の設定など、労働関連法規の基本知識が求められている。
<選択肢>
①【正】
「労働組合への加入を理由とする解雇は、不当労働行為として禁止される」は、労働組合法などにより認められた妥当な説明である。
②【正】
「裁量労働制では、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間だけ働いたとみなされる」は、制度の概要としておおむね正しい。研究開発職や一部の専門職に適用されることがある。
③【正】
「事業主は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するために、必要な措置を講じることが義務づけられている」は、男女雇用機会均等法などの規定により事業主に義務が課されているため、これも正しい。
④【誤】
「法律に基づく最低賃金は、地域や産業を問わず同じ額とされている」は、最低賃金法の規定により、地域別最低賃金や産業別最低賃金などがそれぞれ異なる額で定められているのが実際であり、同一額ではない。よってこの記述は誤りだが、設問の文脈によってはこれが「誤っている選択肢」として正解になる。
問8:正解3
<問題要旨>
この問題は、自由貿易の下で国際価格が一定のとき、国内の供給量と需要量の差から生まれる輸入量に影響を与える要因を問うものである。国際価格、関税、国内生産性、国民所得の変化などが、輸入の増減にどのように作用するかを考える必要がある。
<選択肢>
①【誤】
「国際価格の上昇」は、海外からの商品が割高になるため、通常は輸入量が減少する要因となりやすい。
②【誤】
「国内産業の生産性の向上」は、国内生産量が増えることで輸入に頼る必要性が小さくなる傾向があり、輸入量の減少につながる。
③【正】
「国民の所得の増加」は、消費需要が増大して輸入需要も拡大する可能性が高い。そのため、自由貿易下であれば輸入量が増加する要因として考えられる。
④【誤】
「関税の引き上げ」は、輸入品を割高にするため、国内消費者が輸入品を敬遠し、輸入量は減少する要因となる。
問9:正解3
<問題要旨>
この問題は、地方公共団体に関する記述を正しく理解できているかを問う。地方自治法や関連法規では、地方公共団体の機関の役割、国との関係、費用負担などについて細かく定められている。
<選択肢>
A:地方公共団体の選挙管理委員会は、国政選挙の事務を行うことはないか
B:都道府県の監査委員は、公正取引委員会に所属しているか
C:地方公共団体の義務教育の経費に、国庫支出金が使われるか
問題文ではA~Cの正誤を組み合わせて答える形式になっているが、最終的には「Cのみが正しい」か「Aが誤りでBが誤り、Cが正しい」などの判断が求められる。
ここで「正解3」となっているのは選択肢③に当たるため、AとBは誤り、Cは正しいという構成になる。つまり、
- Aは、実際には地方公共団体の選挙管理委員会は、国政選挙(衆議院・参議院の選挙など)の管理も行うため誤り。
- Bは、都道府県の監査委員は公正取引委員会とは無関係であり誤り。
- Cは、地方公共団体の義務教育費などに国庫負担金や国庫支出金が使われるため正しい。
問10:正解1
<問題要旨>
この問題は、難民認定や国際的な難民条約(1951年採択の難民条約など)への加入、国内避難民の扱いなどをめぐる日本の制度や実態についての理解を問うものである。難民条約や難民認定法に関する知識、さらに第三国定住や国内避難民の定義などが鍵となる。
<選択肢>
①【誤】
「日本は、難民条約の採択された年にこの条約に加入した」とあるが、実際には難民条約は1951年に国連で採択され、日本がこれを批准したのは1981年と大きく時期がずれている。よって事実と反するため誤りだが、問題が「誤っている記述を選べ」の趣旨ならば、これが該当する。
②【正】
「日本は、出入国管理及び難民認定法に基づいて難民を受け入れている」は、現在の日本の国内法制として事実に即した正しい説明である。
③【正】
「第三国定住は、難民を最初の受入国から別の国に送り、そこで定住を認める仕組みである」は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの枠組みで行われる第三国定住制度を指しており、おおむね正しい。
④【正】
「国内避難民は、紛争などから逃れつつも国境を越えていない人々であり、難民条約上の保護対象には含まれない」は、一般に国内避難民(IDP)は難民の定義(国境を越えた逃避)に当てはまらないため、条約上の保護対象ではないことが多い。これは正しい知識として知られている。
第2問
問11:正解2
<問題要旨>
この問題は、日本国憲法の改正手続に関する理解を問うている。衆参両院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成による発議と、国民投票による承認手続、さらには最終的な改正の公布主体などについて、どのように定められているかを正確に把握することが求められる。
<選択肢>
①【誤】
「衆参各議院は、それぞれの総議員の3分の2以上の賛成が得られた場合、単独で憲法改正を発議し、国民投票にかけることができる」
衆議院・参議院それぞれが3分の2以上で可決したうえで初めて発議できるという点は正しいが、問題文の「単独で」という表現にはやや注意が必要である。実際には衆参両院の賛成を経て発議されるため、「一方の議院のみで改正案を出せる」と誤解される恐れがある。ここでは厳密性に欠ける記述とみなされやすい。
②【正】
「日本国憲法の改正に関する国民投票は、特別の国民投票、または国会の定める選挙の際に行われる国民投票のいずれかによる」
憲法改正手続法(国民投票法)で定める特別の国民投票や、国会が別途定める選挙期日などの方法で行われるため、趣旨として正しい。
③【誤】
「国会の改正によって、満18歳以上の国民が日本国憲法の改正に関する国民投票権を有することになった」
日本の国民投票法では投票年齢が18歳以上と定められてはいるが、そもそも“国会の改正”という書き方があいまいであり、法改正過程に関して正確性を欠く可能性がある。また問題文の細部が他の選択肢と比較して不整合とみなされる場合がある。
④【誤】
「日本国憲法の改正は、最終的に、内閣総理大臣によって国民の名で公布される」
憲法改正の最終的な公布は、実際には天皇の国事行為によって行われるため、この記述は誤りである。
問12:正解2
<問題要旨>
この問題は、日本の最高裁判所が下した判決のうち、国民生活と国の施策の関係をめぐる合憲性・違憲性について正しく理解できているかを問う。薬局の開設規制や児童扶養手当制度など、それぞれの合憲判断・違憲判断の論拠を判例に即して把握する必要がある。
<選択肢>
ア【正/誤いずれかの可能性】
「最高裁判所は、薬局開設の許可基準として距離制限を設けることは、合理的な規制とは認められず、違憲であると判断した」
薬事法に関連する判決として、過度な距離制限が営業の自由などを侵害しないかが争点となった。判例では、一定の公衆衛生上の必要性が認められる場合には合憲となりうるが、距離制限が厳しすぎると違憲になる可能性もある。具体的な判決内容を照らし合わせると、「距離制限は違憲」と結論付ける趣旨の判断が示されたものがある。
イ【正/誤いずれかの可能性】
「最高裁判所は、児童扶養手当と公的年金の併給を禁止する児童扶養手当法の規定は、国会の立法裁量の範囲を超え、違憲であると判断した」
公的年金を受給すると児童扶養手当が減額または支給停止になる仕組みをめぐって争われた判決がある。判例では、立法裁量の範囲内と判断されたものが多く、必ずしも一律に違憲とするわけではない。選択肢では「違憲か合憲か」を区別する点が重要であり、実際の最高裁の態度は「合憲」としたケースもあるため、ここが誤りとされる可能性がある。
問題全体として、AとIの正誤の組合せを問う形になっており、正解が②ということは「アは正、イは誤」となるか、「アは誤、イは正」となるかのいずれかが整合する。最終的に、薬局距離制限をめぐる最高裁判決を正確に捉えると、そちらは違憲判決(アが正)とされ、一方、児童扶養手当法の併給禁止は合憲判断(イが誤)であったため、②の組合せが導かれる。
問13:正解6
<問題要旨>
この問題は、スウェーデン(北欧型)、ドイツやフランス(大陸型)、アメリカや日本などの税負担率・社会保障負担率を比較するグラフを読み取る問題である。グラフ中に示された国(A・B・C)それぞれがどの国に当たるかを推測し、北欧型は高い租税負担率・社会保障負担率、大陸型は比較的高めの社会保障負担率、アメリカは租税負担率も社会保障負担率も相対的に低め、といった特徴を踏まえて国名を組合せる。
<選択肢>
①~⑥の組み合わせはいずれも「A=アメリカ、B=スウェーデン、C=フランス」など国名が異なるパターンになっており、該当のグラフの棒の高さ(租税負担率・社会保障負担率)を照らし合わせることで、最も整合的な組み合わせを見極める必要がある。
最終的に正解⑥は「A=フランス、B=スウェーデン、C=アメリカ」のような組み合わせであると推定される。その理由として、フランスは大陸型の特徴から社会保障負担率が高め、スウェーデンは北欧型ゆえに租税負担率も社会保障負担率も非常に高い、アメリカは租税負担率も社会保障負担率も比較的低い、といったグラフの特徴に合致するためである。
問14:正解5
<問題要旨>
この問題は、日本における現在の外国人の権利や参政権、地方公務員採用などについての実情を問うものである。情報公開請求の可否、永住者の地方参政権、地方公務員試験の受験資格など、関連する判例や各自治体の事例を踏まえて正誤を判断する必要がある。
<選択肢>
A【正/誤いずれも検討可】
「外国人も、中央省庁の行政文書に関して、情報公開法に基づいて開示を請求することができる」
日本の情報公開法は「何人も請求できる」とされているため、国籍にかかわらず請求自体は可能である。よって多くの場合は正しく扱われる。
B【正/誤いずれも検討可】
「最高裁判所は、永住資格を有する在日外国人には、地方参政権が憲法上保障されていると判断した」
判例では、永住外国人の地方参政権(地方選挙への投票権)を憲法上保障するとまでは言っていないという解釈が多数である。そのためこれを「憲法上保障」と断定するのは誤りとされる可能性が高い。
C【正/誤いずれも検討可】
「地方公務員採用試験に関して、日本国籍を受験条件としない地方公共団体もある」
自治体によっては一定の職種や職務において国籍要件を設けていない事例があるため、この記述は実情として正しいと言える。
問題文ではA~Cの正誤を組み合わせて答えさせる形式であり、正解が⑤ということは「AとCが正しい」などの組み合わせが導かれる。Bは誤りとされるため、結果として選択肢⑤(AとC)のみが正しい、が妥当となる。
問15:正解3
<問題要旨>
この問題は、租税の基本原則に関する用語「中立」「垂直的公平」「簡素」と、その具体的な内容を指す「ア〜ウ」との組み合わせを問う。一般に租税原則としては、納税者の負担能力に応じる「公平性」、経済活動を妨げない「中立性」、手続きが煩雑でない「簡素性」などが挙げられる。
<選択肢>
A:中立
B:垂直的公平
C:簡素
ア:租税の負担能力に応じて負担することが望ましいとする考え方(=「垂直的公平」)
イ:課税によって経済活動を極力妨げないことが望ましいとする考え方(=「中立」)
ウ:納税の手続がわかりやすく、微税の経費が小さいことが望ましいとする考え方(=「簡素」)
正解③が示す組み合わせ(A=イ、B=ア、C=ウ)の説明は、
- 「中立」がイ(課税による経済活動の阻害を最小限に)
- 「垂直的公平」がア(担税力に応じて課税)
- 「簡素」がウ(手続き・コストの負担が少ない)
となるため、これが最も適切とされる。
問16:正解1
<問題要旨>
この問題は、GNE(国民総支出)やGNP(国民総生産)、GDP(国内総生産)の関係を理解し、表中の数値から読み取れる正誤を問うものである。国民総支出(GNE)は民間・政府の最終消費支出や総資本形成、輸出入などの合算から算出され、GNPはGDPに海外からの所得(純所得)を足し引きして求められる。
<選択肢>
ア:「GNP(国民総生産)の額は556兆円である」
表では「国民総支出(GNE)」が556兆円と示されているが、GNPが必ずしもGNEと同額になるとは限らない。しかし日本の場合、海外からの所得の受取・支払を合算すると、概ね近い水準になることもある。提示された数値次第でこれを正とするか誤とするかが決まる。問題文の流れでは、GNE=556兆円とし、それに見合うGNPが556兆円程度と扱われている場合、アが「正」とみなされている可能性がある。
イ:「GDP(国内総生産)の額はGNPの額より小さい」
通常、海外からの純所得がプラスであればGNPはGDPより大きくなる。よって日本では、海外資産による受取が多い場合にGNPがGDPを上回る傾向があるため、一般論としてイは「正」となりやすい。
正解①であれば「ア=正、イ=正」の組み合わせとなり、示された数値を踏まえて両方とも正しいと認定される構成だと考えられる。
問17:正解4
<問題要旨>
この問題は、景気循環の種類と、その主な要因を問う。経済学で議論される波として、キチンの波(在庫投資変動が主因・約40か月周期)、ジュグラーの波(設備投資変動が主因・約10年周期)、クズネッツの波(建設投資など・約20年周期)、コンドラチェフの波(技術革新など・約50年周期)といった分類がある。
<選択肢>
①【誤】
「クズネッツの波は、技術革新を主な要因として起こるとされる景気循環である」
クズネッツの波は住宅建設などの投資が中心とされることが多く、技術革新が主因とされるのはコンドラチェフの波の説明に近い。
②【誤】
「コンドラチェフの波は、在庫投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である」
在庫投資が主要因とされるのはより短期のキチンの波であり、コンドラチェフの波は長期的視点で技術革新や社会的大変動が主因とされる。
③【誤】
「キチンの波は、建設投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である」
キチンの波は在庫投資の循環を説明する場合が多い。一方、建設投資はクズネッツの波との関連が強い。
④【正】
「ジュグラーの波は、設備投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である」
ジュグラーの波は約10年周期で見られる設備投資の盛衰を説明する理論として広く知られており、これが最も定説に近い。
問18:正解2
<問題要旨>
この問題は、日本における住民投票制度についての理解を問う。地方自治特別法に関する住民投票や、地方公共団体の条例に基づく各種住民投票(住民意思を政策に反映させる仕組み)などがあり、憲法上のレファレンダム(国民投票)やイニシアティブとは区別されることが多い。また、住民投票の結果に法的拘束力があるかどうかも重要な論点となる。
<選択肢>
①【誤】
「ア=レファレンダム、イ=認められている」とした場合、国レベルの憲法改正国民投票とは異なり、地方の住民投票は必ずしも法的拘束力を伴わない例が多い。
②【正】
「ア=レファレンダム、イ=認められていない」
ここでいうア(住民投票制度を指す言葉)を「レファレンダム」と呼び、イで示される法的拘束力が認められているかどうかについては、地方自治法上必ずしも拘束力を持たず、条例によっては認められない場合が多い。よってこの組み合わせが筋が通る。
③【誤】
「ア=イニシアティブ、イ=認められている」
地方における直接請求(イニシアティブ)はあるものの、設問の文脈と照らし合わせると順番が合わない可能性が高い。
④【誤】
「ア=イニシアティブ、イ=認められていない」
これも同様に、住民投票を指す語を「イニシアティブ」と結びつけるのは不適切であり、さらに“認められていない”という表現も文脈的にズレがある。
したがって、②(ア=レファレンダム、イ=認められていない)が最適となる。
第3問
問19:正解3
<問題要旨>
この問題は、公的財(公共財)の性質として挙げられる「非競合性」と「非排除性」について理解を問うものである。非排除性とは、代金を支払わない者をその消費から排除しにくいという性質を指す。一方、非競合性は、ある人が消費しても他の人の消費が妨げられない性質を指す。選択肢のどれが「非排除性」を的確に説明しているかがポイントとなる。
<選択肢>
①【誤】
「他の人々の消費を減らすことなく、複数の人々が同時に消費できる」
これは非競合性(誰かが消費しても他の人が消費できなくなるわけではない)の説明に当たる。非排除性ではない。
②【誤】
「価格が上がっても需要量はあまり低下しない」
需要の価格弾力性の低さを示唆しているにすぎず、非排除性とは直接関係しない。
③【正】
「だれも利用を制限されない」
料金を払わない人であっても、それを消費から排除しにくいという意味で、非排除性を端的に示している。
④【誤】
「供給量が不足しても、価格が変化しない」
これは公的財か否かとは別に、市場における価格形成が歪んでいる場合などを連想させるが、非排除性とは異なる概念である。
問20:正解1
<問題要旨>
この問題は、「南北問題」や「発展途上国」「持続可能な開発目標(SDGs)」など、国際経済や国際開発に関する用語や取り組みの正確な理解を問うものである。提示された選択肢のうち、誤っている記述を見抜く必要がある。
<選択肢>
①【誤】
「プレビッシュ報告では、南北問題を解決するために、アンチダンピング関税の導入が主張された」
プレビッシュ報告(1960年前後)は、一次産品(農産物や鉱産物)を輸出に頼る発展途上国が先進国との交易条件の悪化に直面するという主張を展開した。政策としては輸出品の多様化や工業化促進などが論じられたが、アンチダンピング関税導入を主張したというのは整合性が薄く、ここが誤りとされる。
②【正】
「発展途上国の中でも最も経済発展が遅れた国は、後発発展途上国(LDC)と呼ばれる」
国連が定義するLDC(Least Developed Countries)は、特に開発が遅れている国々を指し、一般的に正しい説明である。
③【正】
「持続可能な開発目標(SDGs)では、貧困や飢餓の撲滅に加えてジェンダー平等の実現などの達成すべき目標が設定された」
国連が採択したSDGs(2015年~2030年)には、17の目標にわたって多岐にわたる課題が設定されている。記述の通り正しい。
④【正】
「発展途上国の中には、貧困層の自助努力を支援するために、マイクロファイナンスという低所得者向けの少額融資が実施されている国もある」
バングラデシュのグラミン銀行などが代表例であり、記述として成立する。
問21:正解6
<問題要旨>
この問題は、二国間貿易において為替を利用した決済を行う仕組み(銀行・輸出入業者・為替手形や信用状など)の流れを把握する問題である。図中のA、B、Cが指す内容と、「支払いを確約する信用状(ア)」「為替手形・船積み書類(イ)」「自国通貨(ウ)」との組み合わせが正しいかどうかが問われている。
<選択肢>
(選択肢①~⑥のいずれも、A・B・Cとア・イ・ウを組み合わせたパターン)
最終的に正解が⑥である以上、A・B・Cをそれぞれ「ウ・イ・ア」と当てはめるパターン(あるいはそれに準じた配列)が最も図の決済フローに合致すると考えられる。つまり、
- Aは自国通貨(ウ)
- Bは為替手形・船積み書類(イ)
- Cは信用状(ア) と読み取れる仕組みになっている。
問22:正解4
<問題要旨>
この問題は、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)やWTO(世界貿易機関)における原則やルール、紛争処理手続き、ドーハ・ラウンドの現状などについて正しい理解を問うものである。
<選択肢>
①【誤】
「GATTの基本原則の中には最恵国待遇原則があったが、これはWTOには引き継がれていない」
最恵国待遇(MFN)はWTOにも引き継がれており、誤り。
②【誤】
「GATTのウルグアイ・ラウンドでは、知的財産権の国際的保護に関するルールについて交渉されたが、このルールはWTOでは採用されていない」
ウルグアイ・ラウンドによってTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面)などがWTO体制に組み込まれており、これは誤り。
③【誤】
「WTOの紛争処理手続においては、加盟国が一国でも反対すれば、協定違反の有無に関する裁定は採択されない」
WTOでは、紛争処理小委員会の報告採択は“逆 consensus”方式をとり、一国の反対だけで報告が廃案になるわけではない。よって誤り。
④【正】
「WTOのドーハ・ラウンドは、農産物の輸出国と輸入国との間の利害対立もあり、交渉全体の妥結には至っていない」
ドーハ・ラウンドは難航しており、いまだ包括的妥結には至っていないのが実状である。
問23:正解2
<問題要旨>
この問題は、日本とアメリカの企業がどのように資金調達を行っているか(銀行借入、社債発行、株式による資金調達など)を、ある時点と後の時点で比較するデータを読み取る問題である。間接金融と直接金融の割合がどう変化しているか、また自己資本比率がどう推移しているかを見極める必要がある。
<選択肢>
①【誤】
「日本の企業における資金調達のあり方を1999年12月末時点と2017年3月末時点で比較した場合、2017年の方が他人資本の割合が高い」
提示されたデータを見ると、銀行借入の比率は低下し、株式や社債など直接金融の割合が増えた場合、必ずしも“他人資本比率だけが上昇”とは言い切れず、不正確となる。
②【正】
「アメリカの企業における資金調達のあり方を1999年12月末時点と2017年3月末時点で比較した場合、2017年の方が間接金融の割合が低い」
一般にアメリカでは、銀行借入の割合はもともと低めで、さらに最近では株式や社債といった直接金融のウェイトが高まる傾向が続いており、この記述はデータと合致する可能性が高い。
③【誤】
「2017年3月末時点の資金調達において、日本の企業はアメリカの企業よりも直接金融の割合が高い」
アメリカ企業のほうが直接金融を活用する度合いが大きいのが通例であり、この記述は誤り。
④【誤】
「1999年12月末時点の資金調達において、アメリカの企業は日本の企業よりも自己資本の割合が低い」
歴史的に見ても、アメリカ企業のほうが株式市場からの資金調達が活発な傾向にあるため、自己資本比率が日本より低いとは言えない。
問24:正解6
<問題要旨>
この問題は、温室効果ガスの削減に関連する国際的枠組み(京都議定書、パリ協定など)や、国内での再生可能エネルギー普及策(固定価格買取制度など)についての理解を問う。記述A・B・Cのうち、どれが正しくどれが誤りかを組み合わせて解答する形式になっている。
<選択肢>
A【誤】
「気候変動枠組条約の京都議定書では、締約国間における温室効果ガスの排出量の売買を禁止していた」
実際には京都メカニズムとして排出量取引(排出権の売買)を認める制度があったため、この記述は誤り。
B【正】
「日本では、福島第一原発事故後に施行された再生可能エネルギー特別措置法によって、再生可能エネルギーから作られた電力の固定価格買取制度が始まった」
2012年にスタートした固定価格買取制度(FIT)は再生可能エネルギー特措法に基づき、記述の通り。
C【正】
「気候変動枠組条約のパリ協定では、すべての締約国が温室効果ガスの自主的な削減目標を掲げ、目標の達成に向けて取り組むことが定められた」
先進国・途上国の区別なく、各国が自主的に削減目標(NDC)を提示するという特徴をもつため正しい。
よって「BとC」が正しく、Aが誤りの組み合わせが正解となる(選択肢⑥)。
問25:正解4
<問題要旨>
この問題は、日本の農業政策や食に関わる法制度について、戦後から現代までの主要な出来事を正しく理解しているかを問う。農地制度改革や農業基本法、新食糧法、食品安全基本法などが選択肢として登場しており、どれが正しい説明かを判断する。
<選択肢>
①【誤】
「第二次世界大戦後、農地法が制定され、寄生地主制が復活した」
実際には戦後の農地改革によって寄生地主制は解体され、小作農の自作農化が進められたため、復活したというのは誤り。
②【誤】
「農業基本法は、兼業化の促進による農業従事者の所得の増大をめざした」
1961年に制定された農業基本法の主眼は、農家所得の向上を図りつつも農業の近代化・規模拡大などを推進する点であったが、「兼業化の促進」を目標としたわけではなく、むしろ専業化も大きな課題であった。表現として不正確である。
③【誤】
「高度経済成長期の後、地域の伝統的な食文化を見直し守っていくために、新食糧法が施行された」
1995年施行の新食糧法(食糧需給価格安定法の廃止など)は、米の需要減や流通自由化への対応が主目的であり、「伝統的食文化の保護」とは別の趣旨が強い。
④【正】
「食品の偽装表示などの事件をうけて、食の安全を確保するために、食品安全基本法が制定された」
2003年に食品安全基本法が制定された背景には一連の食品偽装問題やBSE問題などがあり、この記述は正しい。
問26:正解3
<問題要旨>
この問題は、世界の政府開発援助(ODA)の実績を国別に比較した表を読み取り、空欄A~Dに当てはまる国名の組み合わせを判断する問題である。ODAの実績総額や対国民総所得(GNI)比、および表中にあるA(%)という指標が何を示しているかなどを総合的に考察し、適切な国名を割り振る必要がある。
<選択肢>
(選択肢①~⑥では、A、B、C、Dに特定の国名を当てはめたり、「贈与比率」「グラント・エレメント」などの用語を対応させたりするパターンが示される)
正解が③である以上は、問題文が示すODA額やGNI比率などが「A=グラント・エレメント」「B=アメリカ」「C=ドイツ」「D=日本」などの割り当て(もしくはその逆)と整合していることがポイントになる。たとえばアメリカはODA総額が大きい傾向があるがGNI比は低め、ドイツはEU内でも比較的ODA比率が高め、日本も総額こそ大きいもののGNI比は低いことが多い、といった特徴を踏まえた組み合わせとなっていると推定される。
第4問
問27:正解5
<問題要旨>
この問題は、イギリスにおける中世以降の国王権力と法との関係、また近代市民革命とフランス人権宣言に関する言説を正しく対応づける問題である。具体的には、ブランクトンの法理を引用して「国王は神と法の下にある」と説いたエドワード・コークの姿勢と、フランス人権宣言に現れた近代の人権思想がどのような文言で表現されているかを照合する必要がある。
<選択肢(A・B・C)>
A:「あらゆる政治の結合の目的は,人の,時効によって消滅することのない自然的な諸権利の保全である」
B:「経済生活の秩序は,すべての人に,人たるに値する生存を保障することをめざす正義の諸原則に適合するものでなければならない」
C:「王は何人の下にも立つことはない。しかし,神と法の下には立たなければならない」
空欄「ア」には、コークがブランクトンの言葉を引用した内容が入り、「王権も法に従うべし」という主旨が求められる。また空欄「イ」には、フランス人権宣言がうたう近代的人権思想の内容が入ると考えられる。ゆえに「ア=C」「イ=A」と対応させるのが最も自然であり、これによって「王権は法の下にある」という伝統的なイギリス法思想と、「あらゆる政治体の目的は自然権の保全である」というフランス革命期の権利宣言の思想を正しく接合できる。
<選択肢> ①【誤】 ア=A、イ=B
②【誤】 ア=A、イ=C
③【誤】 ア=B、イ=A
④【誤】 ア=B、イ=C
⑤【正】 ア=C、イ=A
⑥【誤】 ア=C、イ=B
問28:正解2
<問題要旨>
この問題は、日本国憲法が司法機関たる裁判所に違憲審査権を与えていることをふまえ、「裁判所が違憲判決を行使するにあたって、むやみに行使すべきではない」という考え方の根拠を問うものである。すなわち、「議会や行政が民主的正統性や専門的知見をもって判断している場合、司法は慎重に介入すべき」とする主張と整合する記述を見抜く必要がある。
<選択肢>
①【誤】
「法制制定の背景となる社会や経済の問題は複雑であるから、国政調査権をもつ多数の情報収集が可能な機関の判断を尊重すべきである」という趣旨であれば、議会の判断を重んじる必要性を示唆しているが、設問の文脈次第ではこれが十分ではないとされる場合がある。
②【正】
「選挙によって構成員が選出される機関(議会)では、多数派の考えが通りやすい一方、少数者の権利保護にも配慮しなければならず、司法は安易に違憲と断ずるよりも議会の民主的正統性を尊重すべきだ」という文脈に当てはまる。多数決原理の長所と危うさを踏まえ、司法権の行使における慎重姿勢を支持する立場の説明になっている。
③【誤】
「外交や高度な政治的判断が必要となる事柄は、国政の重要事項についての決定であり、国民に対して政治的責任を負う機関が行うべき」という趣旨は、“統治行為論”に近いが、問題の文脈は立法一般における違憲判断の慎重さを論じているため、ややずれが生じる。
④【誤】
「日本国憲法は民主主義を原則としているので、国民の代表者によって構成される機関の判断を、できる限り尊重するべきである」という記述自体は一般論としては成り立つが、この設問で求める理由づけ(少数者保護とのバランスなど)とピッタリ合致しているわけではない。
問29:正解4
<問題要旨>
この問題は、小選挙区制と比例代表制を比較し、それぞれの一般的特徴を正しく把握しているかを問う。小選挙区制は得票に対して議席数の偏りが大きく、二大政党制をもたらしやすい。比例代表制は、多党制になりやすく、少数意見を議会に反映しやすいとされる。
<選択肢>
①【誤】
「小選挙区制は、死票が少なくなりやすい制度といわれる」
実際は一回の選挙区で1名しか当選しないため、落選候補に投じられた票が“死票”になりやすいと言われる。よって誤り。
②【誤】
「小選挙区制は、多党制になりやすい制度といわれる」
むしろ二大政党制を生みやすい傾向がある。
③【誤】
「比例代表制は、政党中心ではなく候補者中心の選挙となりやすい制度といわれる」
比例代表制は「政党への投票」を基礎とするため、個々の候補者というより政党が重視されることが多い。逆の内容。
④【正】
「比例代表制は、有権者の中の少数派の意見も反映されやすい制度といわれる」
各政党の得票率に応じて議席が配分されるため、相対的に少数意見が議席を得やすい。
問30:正解3
<問題要旨>
この問題は、アメリカ・イギリス・日本・フランスなど主要国の議会制度について正誤を問うものである。上院の選出方法や権限、あるいは下院との関係など、各国で特徴が異なるため、正しく対応づける必要がある。設問では「誤っているもの」を選ぶ形が多い。
<選択肢>
①【正】
「アメリカでは、国民の直接選挙によって選出される上院が置かれ、条約締結の同意権など重要な権限が付与されている」
実際に上院議員は50州それぞれでの直接選挙で選ばれ、条約承認権・高官任命同意権などを持つ。
②【正】
「イギリスでは、非民選の議員からなる貴族院が置かれ、最高裁判所の機能も果たしてきたが、現在ではその機能を喪失している」
貴族院はかつて終審裁判所としての機能を一部担っていたが、最高裁の新設により司法機能は分離された。
③【誤】
「日本では、国民の直接選挙によって選出される参議院が置かれ、戦前の貴族院と異なり解散が認められるなど、民主化が図られている」
実際には参議院に解散制度は存在しない。衆議院は解散があるが、参議院にはない。ここが誤り。
④【正】
「フランスでは、任期6年の上院が置かれ、上院議員選挙人団による間接選挙で議員が選出される」
フランスの上院(元老院)は間接選挙で選ばれる仕組みであり、この記述はおおむね正しい。
問31:正解1
<問題要旨>
この問題は、「大衆民主主義」の特徴を問う。近代以降、財産や身分の制限が緩和され、広範な国民に参政権が与えられるようになった体制を指す。一方で、“革命的社会主義”のように特定の階級による政権奪取をめざす路線や、“一党指導体制”の下で権力を集中させるモデルは大衆民主主義とは異なる。
<選択肢>
①【正】
「財産や身分あるいは政治的知識の有無などによる制限なしに、政治参加の権利が保障されるような民主主義政治」
これこそ大衆民主主義の基本的な説明であり、広範な国民に選挙権などの政治参加が開かれる。
②【誤】
「資本家階級が主体となって,封建制や絶対君主制を否定する革命を進めるような民主主義政治」
これはブルジョワ革命の歴史的文脈を示唆するが、大衆民主主義そのものの説明とは異なる。
③【誤】
「労働者階級の指導の下に農民や中小企業家が連合し,資本主義経済を打倒する革命を進めるような民主主義政治」
社会主義革命論を想起させる説明であり、大衆民主主義というより“共産主義革命路線”に近い印象である。
④【誤】
「労働者を代表する政党の指導の下で,人民を代表する合議体に権力が集中されるような民主主義政治」
特定政党の指導の下で権力を集中させる構図は、“一党制”に近く、多元的な大衆民主主義とは距離がある。
問32:正解2
<問題要旨>
この問題は、歴史上の政権や体制に関する説明文のうち、どれが該当するかを判定する問題と思われる。たとえばナチス政権がワイマール憲法の下で生まれたこと、あるいはその成立経緯や権力委任の経過などについて、正しく把握しているかを問う形式である。
<選択肢>
①【誤】
「この政権は、諸民族の平等を実現した」
ナチス・ドイツを含め、実際には特定の民族に対する排除や迫害が行われたため、こうした記述は誤り。
②【正】
「この政権は、ワイマール憲法の下で成立した」
ヒトラー政権は当初、ワイマール憲法下で選挙を経て合法的に首相職に就き、その後に全権委任法などを通じて独裁体制を確立した。
③【誤】
「この政権は、全権委任法により行政権を立法府に委譲した」
実際には全権委任法で立法権が行政府(ヒトラー政権)に集約されるようになったため、この表現は逆。
④【誤】
「この政権は、プロパガンダ(宣伝)を用いずに長い間支持を得た」
ナチス政権はむしろ盛んに宣伝政策を用いて国民支持を取りつけたため、誤り。
問33:正解4
<問題要旨>
この問題は、日本における裁判や刑事手続の監視・統制に関する仕組みについて、正しいか誤っているかを判別するものである。検察審査会制度や国民審査、取り調べの可視化(録音・録画)、再審制度などに関して、実際の導入状況・事例が問われている。
<選択肢>
①【正】
「検察官が不起訴の決定をした事件について、検察審査会が起訴相当の議決を二度行った場合は、強制的に起訴される仕組みが導入されている」
いわゆる「検審法改正」(2009年施行)により、検察審査会の議決が一定の場合に強制起訴が可能になった。
②【正】
「国民審査により最高裁判所の裁判官が罷免された例は、これまでにない」
日本国憲法下で、最高裁判所裁判官が国民審査で罷免された事例は現在まで存在しない。
③【正】
「取り調べの録音や録画を義務づける仕組みが、裁判員裁判対象事件などに導入された」
2018年より改正刑事訴訟法が施行され、裁判員裁判対象事件や一部の検察独自捜査事件などで取り調べの可視化が義務化された。
④【誤】
「死刑判決を受けた人が再審により無罪とされた例は、これまでにない」
日本では、死刑判決が確定した後に再審で逆転無罪となった事例が複数存在する(免田事件、財田川事件、松山事件など)。よってこの記述は誤り。
問34:正解3
<問題要旨>
この問題は、日本における国民の自由や権利の現状について、どのような制度保障や制限があるかを問う。政党結成の自由、インターネット上の政治的言論、選挙権・被選挙権、報道に対する行政機関の関与などが主な論点となる。
<選択肢>
①【正か誤か検討】
「政党を結成することは、政党助成法により認められている」
実際には結社の自由として、政党結成は法的に認められるが、「政党助成法」自体は助成金の要件を定める法律であり、「結成を認めている」という表現はやや不正確ながら、結党自体は憲法上の権利であり、誤りとまでは言えない。
②【正か誤か検討】
「インターネット上で友人と自由に政治的な意見を交わし合うことは、アクセス権として保障されている」
日本では表現の自由が認められるが、直接「アクセス権」という形で保障されているわけではない。ただしインターネット上での言論は憲法上の自由な政治的意見交換に含まれるため、一概に誤りとは言い難い。
③【正】
「被選挙権は、国民が政治に参加するための権利の一つとされている」
選挙権と並び、国民が政治的意思形成に直接かかわる重要な権利である。憲法や公職選挙法などで一定の年齢要件を満たす場合に被選挙権が認められている。
④【誤か検討】
「報道については、デマやフェイクニュースへの対策として行政機関による検閲が認められている」
日本国憲法第21条で検閲は禁止されており、デマ情報に対する対策として行政機関が事前に報道を差し止めるような制度は認められていない。
以上の観点から、選択肢③が「最も正しく日本の現状を述べている」と判断できる。