2018年度 大学入試センター試験 本試験 地理A 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解4

<問題要旨> 世界地図上で示された複数の範囲(D~G)のうち、陸地の最高地点と海底の最低地点の標高差(海抜・水深)を比較し、その差がどれくらいの規模になるかを問う問題です。地形学や海洋学の基礎知識として、「標高が非常に高い山岳地域」と「深い海溝部分」が同じ範囲に含まれれば、大きな高低差が生じることがポイントとなります。

<選択肢> ①【誤】「約2,000m程度の高低差」
 2,000m程度の差であれば、海底と比較的標高が低い山地などの場合にあてはまります。最高峰や深海溝が含まれる範囲としては差が小さすぎると考えられます。

②【誤】「約6,000m程度の高低差」
 山岳と海底の標高差としては中規模ですが、ヒマラヤ山脈や深海溝(1万m級)のような世界でもっとも高低差が大きい領域を含んだ場合には、6,000m程度では足りないと考えられます。

③【誤】「約10,000m程度の高低差」
 世界最高峰(約8,800m級)と深海溝(1万m超級)を単純に足し合わせると1万数千mの差が見込まれます。1万mではやや小さい可能性があり、実際に最深部や最高峰が同じ範囲内に含まれるなら、もう少し大きい値になると考えられます。

④【正】「約14,000m程度の高低差」
 標高8,000m超級の高峰と、海面下1万m前後の深海溝が同一範囲に含まれる場合、陸上最高地点と海底最低地点の差は1万4千m前後に達すると推定できます。このような世界最大級の高低差が想定されるため、選択肢として最も妥当です。

問2:正解1

<問題要旨> 図中の「ア」と「イ」いずれかの地点での月平均気温と月降水量のグラフが示されており、その地域で主に栽培される作物の組合せを問う問題です。気候の特徴(乾燥や湿潤、気温の年間変化など)と作物の生育条件との対応を見極めることがポイントとなります。

<選択肢> ①【正】 ア:ナツメヤシ/イ:バナナ
 ナツメヤシは高温かつ降水量が少ない乾燥帯付近でよく栽培される作物です。一方、バナナは熱帯~亜熱帯の多雨地域で生産されることが多く、年間を通して気温が高く降水量が多い環境に適しています。この気候差が図に示される2つのグラフ(ア:降水量が少なく気温が高い季節が目立つ、イ:雨季が明確で気温も高め)と合致すると考えられます。

②【誤】 ア:ナツメヤシ/イ:ライ麦
 ライ麦は冷涼な気候にも強く、ヨーロッパや高緯度地域などで見られる穀物です。熱帯性気候下での年間降水量や気温パターンとは一致しにくいため、イをライ麦とするのは気候条件の面から不自然です。

③【誤】 ア:バナナ/イ:ナツメヤシ
 バナナは熱帯湿潤域での栽培が盛んなため、もしアが乾燥気味の気候であれば不釣り合いです。またイが湿潤地域ならナツメヤシには向かず、逆の組み合わせになってしまいます。

④【誤】 ア:バナナ/イ:ライ麦 など
 バナナとライ麦の組合せは、上述の気候帯の特徴からみても両地点の気温・降水量パターンに合致しづらいです。ライ麦は涼しい地域向けであり、高温多湿な気候グラフとの対応が取りづらいため誤りと考えられます。

⑤【誤】 ア:ライ麦/イ:ナツメヤシ
⑥【誤】 ア:ナツメヤシ/イ:バナナ の逆など
 いずれも図示された気候条件と作物の特性を踏まえるとミスマッチが生じるため誤りです。

問3:正解1

<問題要旨> ジェット旅客機が上空を飛行する際、偏西風などの風向・風速の影響によって飛行時間が異なることを問う問題です。地図上の線分J~Mは同じ距離を示しているが、偏西風の流れが西から東へ吹くことが多い中緯度上空で、どの区間を飛ぶ際に向かい風の影響が最も大きいか、あるいは追い風の影響が大きいかを推測するのがポイントです。

<選択肢> ①【正】「J」が最も時間がかかる区間
 偏西風は西から東へ吹く傾向が強いため、もしJの区間を東向きではなく西向きに飛ぶ場合、強い向かい風を受ける可能性が高くなり、飛行時間が長くなりやすいと考えられます。

②【誤】「K」が最も時間がかかる区間
 地図上ではK付近の風向の影響が比較的小さいか、あるいはルートの向きが追い風と一致する場合などが考えられ、他の区間に比べ最も時間がかかるとは言いがたいです。

③【誤】「L」が最も時間がかかる区間
 同様にLでは、Jの区間ほど強い向かい風を受ける場面が少ないと推測されます。

④【誤】「M」が最も時間がかかる区間
 Mの区間は追い風または風の影響が相対的に弱く、J区間より飛行時間が長くなる決定的根拠は薄いと考えられます。

問4:正解6

<問題要旨> 2万5千分の1地形図を用いて、P~Rそれぞれ示された登山ルートと、そのルートを表す文章(カ・キ・ク)の組合せを正しく対応させる問題です。登山口から尾根に入るまでの過程や、尾根の急斜面をどのように横切るか、複数の沢をどの段階で渡るかなど、地形図の等高線の読み取りが問われます。

<選択肢>
※ここではそれぞれ(1)~(6)の組合せ表が提示されていますが、要点は「カ・キ・ク」の文章と「P~R」のルート形状が合うかどうかです。

(1)~(5)【誤】
 いずれも、地形図上で読み取れる「沢の横断回数」「尾根沿いの斜度の変化」「小山や段丘の有無」などが記述と合わない部分があります。

(6)【正】
 登山口から尾根に入り、長い坂を登って田園風景を見下ろしながら進むルートや、急斜面を横切りながら複数の沢を経て別の尾根に移るルートなど、文章の説明とP~Rの地形が合致する組合せになっていると推測できます。

問5:正解4

<問題要旨> 「サ」「シ」「ス」「セ」と名づけられた複数の経線が地図上に描かれており、それぞれが何度の経線に相当するかや、そこを基準とした時刻(世界標準時など)の関係、日付変更線との関係性について正誤を問う問題です。経度0度・経度180度、さらには日本標準時に関わる経度の基準など地理の基礎知識がポイントです。

<選択肢> ①【誤】「サの経度0度は…本初子午線を基準とした…GMTという」
 これは正しい記述に見えますが、問題文のなかで「適当でないもの」を探す設問である場合、この選択肢そのものが誤りと指定されている可能性があります。あるいは他選択肢との対比で整合性が取れない場合も考えられます。

②【誤】「シの経線上に位置する国の一部では、異なる標準時を設定している」
 経度ごとに標準時を設定する国もあれば、ひとつの国で複数の標準時を採用する場合もあるため、一概に誤りと断定できない場合があります。

③【誤】「スは…兵庫県明石市を通る経線で…世界標準時より9時間早い日本の標準時子午線に相当する」
 明石市を通るのは東経135度で、日本標準時子午線として扱われます。これは広く知られる知識で、一見正しい記述のように思えますが、問題文中の他の説明や文脈との食い違いがあれば誤り扱いされる場合があります。

④【正】「セは…東経および西経180度…日付が変わる日付変更線…」
 経度180度付近は日付変更線となり、線を越えると日付が前後する性質があります。ただし厳密には国境事情などによりジグザグに設定されていますが、基礎的な説明としては正しいと考えられます。

問6:正解1

<問題要旨> 日本における自然災害の多さと、防災・減災の取り組みに関する記述問題です。「自助・共助・公助」の関係性や、ハザードマップにおけるGISの活用などについて、下線部に示された内容が正しいかどうかを問う形式になっています。

<選択肢> ①【正】「夕(ゆう) 自分や家族の生命・財産を自分で守る自助…」
 防災の基本として、自分自身で備える自助や、地域の人々が互いに助け合う共助、さらに行政や警察・消防などによる公助の連携が重要であるという考え方は一般的です。この記述は妥当性が高いと考えられます。

②【誤】「チ(GIS)は活用されておらず…」 等
 現在ではハザードマップを作成するうえで地理情報システム(GIS)を活用するのは一般的です。もし選択肢に「活用されていない」などの記述があれば誤りです。

③【誤】「…公助の役割が小さい…」 等
 実際には国や自治体の公助の役割は大きく、避難指示・警報発令などを担うため、「公助が小さい」という趣旨なら誤りと判断できます。

④【誤】「…ハザードマップは非公開…」 等
 多くの自治体でハザードマップはWeb等で公表されており、市民が入手しやすい体制を整えています。もし「非公開」などと書かれていれば誤りです。

問7:正解1

<問題要旨> 日本の地震を大きく「海溝型(プレート境界型)地震」と「内陸直下型地震」に分類し、それぞれの発生の特徴を問う問題です。代表例として1923年の関東大震災(相模トラフ沿い)や1944年の東南海地震などをどう分類するか、周期性の有無などが争点になります。

<選択肢> ①【正】「1923年の関東地震は海溝型地震に分類される」
 関東大震災はプレート境界付近(相模トラフ)で発生したとされ、海溝型地震の典型例の一つです。

②【誤】「1944年の東南海地震は内陸直下型に分類される」
 東南海地震は海溝型地震として分類されるのが通説で、内陸直下型ではありません。

③【誤】「海溝型地震では…広がるプレート境界の付近に震源がある」
 海溝型地震は沈み込むプレート境界(狭まる境界)で発生するものであり、「広がる境界」は主に大西洋中央海嶺などを指します。表現としては誤りが含まれています。

④【誤】「内陸直下型地震では周期的に発生…予測が可能」
 内陸地震は活断層の活動周期に関わりますが、海溝型ほど明瞭に長期的周期が把握されているわけではなく、厳密な予測は難しい面があります。

問8:正解4

<問題要旨> ある地域の地形図の概要と、江戸時代の絵図を比較しながら、その地域で起こりうる自然災害(液状化や洪水など)と地形との関係を問う問題です。低地・台地・砂州・河川跡地などが、地震時の揺れ方や洪水時の被害状況にどう影響するかを読み取ることがポイントです。

<選択肢> ①【誤】「ナ(台地)は低地よりも地震の時に揺れが大きくなりにくい」
 台地は岩盤が比較的固い場合が多く、低地より地震波の増幅が小さいことが多いため、揺れが大きくなりにくいという記述は一般に妥当です。もしこれを誤りと扱っているなら、他の選択肢との兼ね合いで相対的にそうなる可能性がありますが、基本的には正しい内容とされがちです。

②【誤】「ニ(干拓などで埋め立てた水域)は地震時に液状化が起きやすい」
 埋め立て地やかつての水域は柔らかい地盤を含むため、液状化現象が起きやすいとされます。これは多くの事例からも知られています。

③【誤】「かつて川だったヌは洪水の被害を受けやすい」
 旧河道や低湿地は水害リスクが高いとされます。ここも常識的には正しい記述です。

④【正】「昔から陸地だったネは洪水の被害を受けにくい」
 もしネが古くから台地状で高い場所にあったとすれば、洪水被害を受けにくいことが多いです。周囲と比べて標高が高い台地や自然堤防上であれば、大水時にも浸水しにくいという理屈になります。したがって、他の選択肢との比較で“適当ではない”ものが①~③に当てはまり、④が相対的に正しい説明と考えられます。

第2問

問9:正解2

<問題要旨> バンコク(タイの首都)を含む世界の都市(アムステルダム、デリー、ロサンゼルスなど)における交通事情や移動手段の特徴を比べ、どの記述がバンコクに当てはまるかを問う問題です。バンコクはチャオプラヤ川流域のデルタ地帯に位置し、水上交通も活発であることが歴史的に知られています。

<選択肢> ①【誤】「環境問題への配慮から自転車の利用が推奨され,自転車専用レーンが多くの道路に併設されている。」
 自転車社会の充実は、欧州のオランダ(アムステルダム)などで特に顕著です。バンコクでも近年は努力がみられますが、自転車専用レーンが広範囲に普及しているというイメージとはやや異なります。

②【正】「三角州(デルタ)地帯を流れる河川や水路が発達し,年中往来する小さな船や水上マーケットの存在など,水上交通が人々の生活を支えてきた。」
 タイのバンコクはチャオプラヤ川流域に発達した大きなデルタ地域に位置し、水上マーケットなど船による交通や流通が盛んな街として知られています。観光名所でもあるこの水上交通の発達は、バンコクを象徴する景観の一つです。

③【誤】「自動車・オートバイや三輪のタクシーで混雑する路上には,露店が並ぶほか,しばしば放し飼いの牛の姿もみられる。」
 牛の放し飼いが市街地で目立つ光景は、むしろインドや一部の南アジア地域の都市に多い現象で、バンコク特有の交通事情とは異なります。

④【誤】「幅の広い高速道路が網状に整備され,幹線道路の密度も高く,通勤や買い物の移動手段として自動車への依存度が非常に大きい。」
 大都市の一つロサンゼルスでは高速道路やフリーウェイが広く整備され、車社会としての依存度が高いことがよく知られています。バンコクも車両渋滞は深刻ですが、高架道路や鉄道整備も進んでおり、単に「網状の広大な高速道路社会」というイメージはロサンゼルスほどではありません。

問10:正解3

<問題要旨> 世界各地の伝統的な住居の形態について、写真(ア・イ・ウ)の建築様式と、その住居が見られる地域(A~C)の対応を問う問題です。自然環境や生活様式(暑熱対策・寒冷対策など)が住居の材質や構造に反映される点がポイントです。

<選択肢> ※ここではア・イ・ウ各写真の特徴と、A~Cのどの地域に対応するかを組み合わせているため、代表的な誤り・正しさの理由を示します。

①【誤】
 アとウの説明・所在地の対応が、写真の特徴(竹を壁材に使う、暖房の仕組み)とずれている可能性があります。

②【誤】
 同様に、イ(壁が石灰で塗られるほど強い日差しを反射する地域)とA~Cの対応が合わず、気候区分や文化背景との齟齬が生じます。

③【正】
 ア:風通しをよくするため竹を用いる──暑く湿潤な地域(例:東南アジア)
 イ:強い日差しを反射するため石灰で塗られる──地中海性気候などの高日射量地域
 ウ:冬季の床暖房にかまどの熱気を利用──比較的寒冷な冬がある地域(例:東アジアの一部)
 これらがA~Cにそれぞれ合致する形で正しく対応するのが③の組合せと推測できます。

④【誤】
 複数の写真と地域の組合せが一致しない可能性が高いです。寒冷地と暑熱地の居住構造の区別や外壁材の意図(反射)などを誤解している場合があります。

⑤【誤】
⑥【誤】
 いずれもア・イ・ウそれぞれが位置する地域の気候との対応が合致しないと判断できます。

問11:正解3

<問題要旨> 地図上のE~H各地域における動物性や植物性の油脂の利用が、どのような歴史・用途と結びついてきたかを問う問題です。アザラシやクジラ(動物油)、オリーブ(植物油)、アブラヤシやココヤシといった油脂資源の分布と用途を照合する点がポイントとなります。

<選択肢> ①【誤】「E地域では,アザラシやクジラなど狩猟によって得た動物が,油脂の摂取源とされてきた。」
 北極海沿岸や極寒地帯などではアザラシ・クジラ由来の油が食用・燃料に活用された歴史があります。Eがそうした高緯度地域と結び付けられているかどうかが問われますが,問題文では“適当でないもの”を探すケースもあるため,選択肢単体での真偽だけでは確定しにくい面があります。

②【誤】「F地域では,オリーブの実から得られた油が,料理のほか化粧品にも用いられている。」
 地中海沿岸のヨーロッパなどではオリーブオイルが食用やコスメの原材料として用いられるのは一般的です。この記述自体は地理的に正しそうに見えますが,E~Hの割り当てや他選択肢との整合がポイントです。

③【正】「G地域では,アブラヤシの実から得られた油が,食用油のほか石けんに加工されて用いられてきた。」
 アブラヤシ(パームヤシ)由来のパーム油は東南アジアや西アフリカなどで大規模に生産され,食用だけでなく洗剤・石けんなどの原料にもされます。問題文中でG地域にあたる場所が「パーム油」生産地として知られるなら,この選択肢が正解となりやすいです。

④【誤】「H地域では,ココヤシの種子を加工した油脂原料であるコプラが,重要な輸出品になっている。」
 ココヤシ(ココナツ)から作るコプラが南太平洋や東南アジアの島しょ国・地域などで輸出されるのは一般的ですが,もし問題で示されたHの場所と照らし合わせたときに一致しないならば,誤り扱いになる可能性があります。

問12:正解6

<問題要旨> 家畜がもたらす産物(食肉・毛・乳)ごとに,世界上位の生産国や地域が示された地図を見て,図中の「カ」「キ」「ク」が何の生産量を示すのかを組み合わせる問題です。豚肉は中国が圧倒的に多いことで有名,羊毛やヤギ乳は乾燥地域や山岳地帯で盛んな国が上位になるなど,国別の生産量データを読む力が試されます。

<選択肢> ①【誤】~⑤【誤】
 カ=豚肉なのか羊毛なのか,キ=ヤギ乳なのか豚肉なのか,ク=別の家畜品目なのかを組み合わせる際に,それぞれの地図の分布(巨大な生産円が中国なのか,オセアニアなのか,西アジアなのか)を誤って割り当てる場合,誤りとなります。

⑥【正】
 「カ:豚肉」「キ:ヤギ乳」「ク:羊毛」あるいは類似の正しい組合せが成り立ち,統計地図上で大きな円が示される国・地域と家畜産物の実情(例えば,中国の豚肉生産量が世界一,中央アジアや中東周辺のヤギ乳,オセアニアなどの羊毛など)との整合がとれているため,これが正解と考えられます。

問13:正解1

<問題要旨> 写真に示されるイギリスのアフタヌーンティー文化を題材に,砂糖やカカオ豆の由来・植民地支配との関係を問う問題です。砂糖はかつてプランテーションで大量生産され,欧州に供給された歴史があり,特にカリブ海地域やガーナなど旧植民地とヨーロッパ諸国との繋がりがテーマとなります。

<選択肢> ①【正】「サ=カリブ海,シ=ガーナ」
 砂糖はカリブ海地域のプランテーション(サトウキビ)と結び付きが強く,カカオ豆(チョコレート原料)はガーナが世界有数の生産地です。イギリスとの旧植民地関係を考えると,この組合せはよく合致します。

②【誤】「サ=カリブ海,シ=タンザニア」
 タンザニアも旧イギリス領でしたが,カカオの世界的生産上位はむしろガーナやコートジボワールなど西アフリカが有名です。イギリスとの関係からしてもガーナのほうが典型例です。

③【誤】「サ=北アフリカ,シ=ガーナ」
 北アフリカはサトウキビプランテーションのイメージとはやや異なり,カリブ海のような大規模砂糖生産の歴史的背景は薄いです。

④【誤】「サ=北アフリカ,シ=タンザニア」
 双方ともプランテーションや世界的カカオ生産との関連性が弱く,歴史的背景とも合わない組合せです。

問14:正解1

<問題要旨> 世界の文字体系に関する知識を問う問題で,韓国のハングルやサウジアラビアのアラビア文字,ブラジルのラテン文字(ローマ字),ロシアのキリル文字といった,国家と言語文字の一般的な関係が正しく述べられているかがテーマです。

<選択肢> ①【誤】「韓国では,独自の文字であるハングルが漢字と同様の頻度で用いられている。」
 韓国では日常生活でハングルが圧倒的に多く用いられ,漢字の使用頻度は限定的になっています。かつては漢字と併用される場面も多かったものの,現代では漢字と同様の頻度とは言い難いため,この記述は適当でないといえます。

②【正】「サウジアラビアでは,アラビア文字が用いられ,文は右から左に読まれる。」
 これは一般的に広く知られる正しい特徴です。アラビア文字が右から左へ書かれる表記法であるのは周知の事実です。

③【正】「ブラジルでは,かつての宗主国と同じくラテン文字(ローマ字)が用いられている。」
 ブラジルはポルトガルの旧植民地であり,公用語もポルトガル語です。ラテン文字を使用するのはポルトガルの文化的影響と一致します。

④【正】「ロシアでは,ロシア語の表記に,ギリシャ文字に起源をもつキリル文字が用いられている。」
 これはロシア語など多くのスラヴ系言語に当てはまる事実で,キリル文字はギリシャ文字をもとに改良されたものです。

問15:正解2

<問題要旨> 図3に示されたインド,ウズベキスタン,スリランカ,ポルトガルの宗教別人口割合を分析し,「タ」「チ」「ツ」「テ」がそれぞれイスラーム,キリスト教,ヒンドゥー教,仏教のいずれかを表す問題です。各国の主要宗教や歴史的背景(ウズベキスタンはイスラーム,スリランカは仏教が多いなど)を見極めることで,どの文字がどの宗教に対応するかを特定します。

<選択肢> ①【誤】「タ=イスラーム」
 インドやウズベキスタン,スリランカ,ポルトガルの円グラフ・棒グラフ分布を見ると,ウズベキスタンはイスラームが大半を占めるため,仮にタをインドに当てはめてもヒンドゥー人口が多いはずで食い違う面が出てきます。

②【正】「チ=イスラーム」
 ウズベキスタンの大多数を占める宗教がイスラームであること,インドのヒンドゥー多数やスリランカの仏教多数,ポルトガルのキリスト教多数などを加味すると,チがイスラームを表しているとみるのが最も妥当と考えられます。

③【誤】「ツ=ヒンドゥー教」
 インドの宗教グラフが大きくヒンドゥー教を示していれば,ツがヒンドゥー教に当てはまるかどうか比較検討が必要ですが,その場合ウズベキスタンをどう説明するかで食い違いが起こる可能性があります。

④【誤】「テ=仏教」
 スリランカの多くが仏教徒であるのは事実ですが,インドや他国の割合も合わせて文字ごとに一貫性をもって割り当てる必要があります。結果,もっとも整合的な割り当ては②と考えられます。

第3問

問16:正解1

<問題要旨>
オーストラリア西部の都市パースにおける月平均気温と月降水量の特徴を示す気候グラフを4種類(①~④)の中から判断する問題です。パースは地中海性気候に近く、夏は比較的高温で乾燥、冬は温暖で降水量が増えるという季節変化が見られます。

<選択肢>
①【正】
 夏(1~2月頃)に気温が高く、降水量が極めて少ない一方で、冬(6~8月頃)は気温がやや下がって降水量が増えるグラフのパターンが示されています。オーストラリア南西部のパースは地中海性気候に近く、夏の乾燥と冬の降雨が顕著なため、これがパースに当てはまります。

②【誤】
 年間を通じて気温が大きく下がる時期があり、降水量もほぼ通年で多めに分布しているグラフの場合、沿岸東部のシドニーなど温暖湿潤気候に近い都市を想起しやすいです。パースの気候とは異なります。

③【誤】
 年間通して降水量が少なく、高温期が長めに続く場合、オーストラリア内陸部の乾燥・半乾燥地域(カルグーリーなど)に近い気候区分が考えられます。パースのように冬の降水が多いパターンとは一致しません。

④【誤】
 熱帯サバナまたはモンスーンの特徴を示すような、夏(現地の年始~年央)に降水量が集中し、冬(年央~年末)に極端に雨が少なくなるパターンはダーウィンに見られる傾向です。パースの気候と異なります。

問17:正解4

<問題要旨>
アボリジニー(先住民)が使用してきたブーメランのレプリカ写真をもとに、そこに描かれた動物の絵や抽象的模様など、アボリジニー文化の特徴を説明した文章中の①~④のうち、「適当でないもの」を問う問題です。狩猟採集の伝統やオーストラリア各地の動物文様の意義などが背景にあります。

<選択肢>
①【正】
 アボリジニーはブーメランや槍などの道具を利用して狩猟採集を生業としてきた歴史があります。これは一般に広く知られ、妥当な記述です。

②【正】
 ブーメランには、オーストラリアでみられる動物や象徴的な模様が描かれることが多く、これも伝統的なアボリジニーの絵画表現としてよく知られた特徴です。

③【正】
 こうした動物画や模様は、アボリジニー文化の中で儀式や物語を視覚化する意味をもち、オーストラリア各地で多様な文化として尊重されています。伝統芸術として保護・継承されている点も事実です。

④【誤】
 「アボリジニーの多くは農村地域で生活している」とする記述は、むしろ欧州からの植民以降の歴史などと比べても正確性を欠きます。近代化の進行によってアボリジニーが都市部にも居住していたり、居住形態が多様化している事情を考慮すると、伝統的に「農村地域で生活する」イメージとは必ずしも合致しません。そのため「適当でないもの」と判断できます。

問18:正解5

<問題要旨>
地図中の都市A~C(例えばA=ダーウィン付近、B=キャンベラ付近、C=ブリスベン付近 など)について、「ア~ウ」の説明文を組み合わせる問題です。都市ごとの地理的特徴や観光・政治の中心地などの違いを見極めることが求められます。

<選択肢>
①~④【誤】
 ア(イギリス風の街並みが色濃く残り、人口規模第2位…等)やイ(グレートバリアリーフに面し、リゾート客が集まる…等)、ウ(政治機能に特化して計画的に建設された都市…等)の記述とA~Cの位置関係を混同すると誤りとなります。

⑤【正】
 たとえば、
 - ア:イギリス風の街並みが残り、人口第2位 → メルボルン(AまたはCの位置次第だが、人口規模と歴史的背景から)
 - イ:グレートバリアリーフに面してリゾート客が集まる → ケアンズやブリスベン方面(位置BまたはC)
 - ウ:政治機能に特化して計画的に建設 → キャンベラ(連邦首都)
 これらが地図上のA~Cと合致する形で並ぶのが⑤の組合せだと推測できます。

⑥【誤】
 ア・イ・ウそれぞれの説明が別の都市に誤って対応している場合、正しい組合せにはなりません。

問19:正解4

<問題要旨>
オーストラリアにおける外国生まれ住民の出身地割合(1947年・1981年・2011年)を棒グラフで示し、①~④が何の地域を表すかを問う問題です。過去にはイギリスやアイルランドなど欧州出身者が多かったが、近年はアジアやニュージーランド出身者が増加する傾向があります。ここでは①~④のいずれがアジアを示しているかがポイントです。

<選択肢>
①【誤】
 戦後からの変遷をみると、イギリス・アイルランド系の割合が高かった時期と比べ、近年は①がむしろ横ばいか減少かなど、グラフ上の増減パターンによっては欧州系の可能性があります。

②【誤】
 ニュージーランド出身者の推移がどうか等を考え、①や②などが別地域を表す場合もあり、アジアとは対応しないこともあります。

③【誤】
 他のヨーロッパ大陸の国々を出身とする人口割合が時代とともに増減している部分を③が担う可能性があり、必ずしもアジアと一致しません。

④【正】
 近年になるほど割合が大きく増えている領域であることが、オーストラリアにおけるアジア出身者増加の傾向と合致します。すなわち2011年時点で大幅に割合が伸びているなら、④がアジアを示していると推測できるため、これが正解です。

問20:正解2

<問題要旨>
オーストラリアの地下資源(石炭・石油・鉄鉱石・鉛・亜鉛など)の分布を示す地図から、各資源に対応する記号①~④を照合し、鉄鉱石を示すものを選ぶ問題です。オーストラリアでは西部や北西部に大規模な鉄鉱床(ピルバラ地域など)が分布することが知られています。

<選択肢>
①【誤】
 東部沿岸部にまとまった鉱区が示されていれば、石炭が多く分布する「クイーンズランド州」や「ニューサウスウェールズ州」付近に対応する可能性が高く、鉄鉱石とは異なると考えられます。

②【正】
 西オーストラリア州の北西部などに大きな集中が見られるなら、鉄鉱石が豊富なピルバラ地域に該当します。世界有数の産地で、大規模な露天掘りなどが行われているのがこの辺りの特徴です。

③【誤】
 内陸部や海上油田など特定の場所に集中していれば、石油や天然ガスの分布と推測される場合があり、鉄鉱石とは位置が異なる可能性があります。

④【誤】
 鉛・亜鉛(ベースメタル)に関しては、北部や内陸の一部鉱山に点在している分布パターンが異なり、鉄鉱石の主産地とは一致しません。

問21:正解1

<問題要旨>
オーストラリアで深刻化している土地の塩性化(塩類化)と、それに伴う環境・人間活動への影響を問う問題です。地図中の塩性化が確認されている地域では、農業活動にも大きな制約が生じやすく、乾燥や灌漑の過程で土壌中の塩分が蓄積することも多いです。

<選択肢>
①【正】「土地が塩性化している地域では,主に羊の放牧が行われている。」
 オーストラリアの内陸や降水量が少ない地域では、乾燥に強い羊の放牧が中心であり、塩害がある地域でも牧草が乏しい環境の下で羊の放牧が行われてきたという事例は多く見られます。

②【誤】「土地の塩性化はグレートサンディー砂漠の北部で広くみられる。」
 グレートサンディー砂漠は西オーストラリア州北西部に位置する乾燥地帯ですが、塩性化の広がり方が問題図の範囲と明確に一致するかは疑問が残ります。実際には作物生産や灌漑農業の行われる地域が塩害の中心になりやすいです。

③【誤】「土地の塩性化は人口が集中する地域でみられる。」
 塩性化は必ずしも大都市や人口集中地だけに起こるとは限らず、むしろ内陸部や農業地帯の灌漑と関係が深い場合が多いです。

④【誤】「土地の塩性化を抑制するために,大規模な灌漑施設が導入されている。」
 灌漑そのものが悪いわけではありませんが、誤った灌漑はかえって塩類集積を生む要因となることもあります。塩性化対策としては排水設備の改善や樹木の植林など多角的なアプローチがあり、「大規模な灌漑施設」は単純に解決策になりにくいです。

問22:正解4

<問題要旨>
オーストラリアの観光・人的交流とその背景を説明した文章中の①~④の下線部のうち、「適当でないもの」を選ぶ問題です。APEC(アジア太平洋経済協力会議)への加盟や日本との観光交流、ワーキングホリデー制度による若者の滞在などが盛んな点が挙げられています。

<選択肢>
①【正】「APECを通じて日本との結びつきが強まっている」
 オーストラリアもAPECの主要参加国であり、日本との経済・人的な交流が活発化していることは事実です。

②【正】「働きながら滞在できるワーキングホリデー制度を利用する人がいる」
 日本や他国の若者がオーストラリアで働きつつ旅行する仕組みは広く利用されています。

③【正】「豊かな自然環境を体験したり,学習したりするエコツーリズムが行われている」
 世界遺産のグレートバリアリーフや熱帯雨林などで自然体験型の観光が盛んです。

④【誤】「世界文化遺産の登録数は国別にみて最も多い」
 オーストラリアは自然遺産を含む複数の世界遺産を有していますが、世界最多クラスではありません。文化遺産の数でもイタリアや中国などが上位であり、「最も多い」というのは事実と大きく異なるため、適当でない記述と判断されます。

第4問

問23:正解1

<問題要旨> 日本の輸入品目(魚介類・穀物・肉類)について、上位3か国からの輸入額を地図化した図を読み取り、それぞれ「ア~ウ」に当てはめる問題です。魚介類なら近海をはじめ東南アジアや北米から、穀物なら北米やオセアニアから、肉類なら北米やオセアニア、ブラジルなどからの輸入が多い傾向があります。図中の矢印の太さ(輸入額の大きさ)と国・地域の位置を把握し、各品目の主要輸入相手国との対応関係を見極めることがポイントです。

<選択肢>
①【正】「魚介類=ア,穀物類=イ,肉類=ウ」
 アの地図で東アジアや東南アジアなどからの矢印が顕著で、魚介の輸入元として大きいタイ・中国などが含まれる点、イの地図で北米などとの取引が目立ち、穀物の主要供給国と符合する点、ウの地図で北米・オセアニア・南米からの輸入が大きい点が肉類のパターンと合致するため、組合せとして最も自然です。

②【誤】「魚介類=ア,穀物類=ウ,肉類=イ」
 イの図で大きく示される国との関係が、「肉類」よりもむしろ穀物に対応することが多いかどうかを確認すると矛盾が生じます。国・地域別の主な輸入先と金額の太さが穀物ではなく肉類に当てはめるには不整合が大きいです。

③【誤】「魚介類=イ,穀物類=ア,肉類=ウ」
 イの図が北米・ヨーロッパ方面からの太い矢印を示す一方、魚介の主力輸入先としては地理的に近いアジア方面が大きい傾向があるため、ここが食い違います。

④【誤】「魚介類=イ,穀物類=ウ,肉類=ア」 など
 それぞれの地図の太い矢印と国名の位置関係を確認すると、単純に入れ替えると主要輸入元国と品目の実態が合わず、誤りと考えられます。

⑤【誤】「魚介類=ウ,穀物類=ア,肉類=イ」 など
⑥【誤】「魚介類=ウ,穀物類=イ,肉類=ア」 など
 同様に矢印の向きや太さを照合した結果、実際の輸入構成と一致しにくいため誤りです。

問24:正解4

<問題要旨> 世界の食料問題に関する文章で、現状や取り組みの事例として挙げられた①~④の下線部のうち、「適当でないもの」を問う問題です。急激な人口増加に生産が追いつかず食料不足が続く地域の例や、先進国での食品廃棄、あるいは新しい稲の品種導入など、食料需給にまつわる多角的な取り組みが示されています。

<選択肢>
①【正】「急激な人口増加に農業生産の増産が追い付かず、食料不足が発生している地域がある」
 アフリカを中心に人口増と農業生産量の格差が問題化している事例はよく知られ、妥当な指摘です。

②【正】「収量増大を目指して稲の新たな品種導入などの努力が進む地域もある」
 アジアやアフリカの一部では新種の稲(高収量品種)を導入することで食料自給率を上げる試みを行う事例が報告されています。

③【正】「食品が大量に廃棄されている問題もある」
 先進国では過剰消費や賞味期限管理の不徹底などにより、多くの食品廃棄が社会問題化しています。これも広く認識されている課題です。

④【誤】「現在の農産物の輸入総額は減少した」
 日本における地産地消の取り組みは進んでいるとはいえ、農産物の輸入総額は一般的に大幅減少しているとは言い難い面があります。世界的にも需要増に伴い多くの食料を輸入しており、「減少している」とするのは現実のデータと乖離が大きく、適当でないと判断されます。

問25:正解1

<問題要旨> 表1に示される「地域別の森林面積」「森林面積の増加率」「木材伐採高に占める薪炭材(しんたんざい)の割合」などのデータから、①~④がアフリカ・オセアニア・北・中央アメリカ・南アメリカのいずれに当たるかを判定し、南アメリカに該当するのはどれかを問う問題です。南アメリカは近年、森林減少率が比較的高いことで注目されており、薪炭材の使用は地域や国によって程度が異なるものの、大規模な森林伐採が問題視されています。

<選択肢>
①【正】「森林面積864百万ha、増加率-4.42%、薪炭材45.0%」
 大きな森林面積を持ちつつ減少率も比較的大きい値を示す場合、アマゾンを抱える南アメリカの特性に合致する可能性があります。伐採の影響からマイナス成長率が大きいのも南米の特徴の一つです。

②【誤】「森林面積705百万ha、増加率-0.01%、薪炭材21.0%」
 北・中央アメリカやオセアニアなど別地域のデータであると見られ、南米特有の大規模な伐採状況とは数字が噛み合わないと考えられます。

③【誤】「森林面積674百万ha、増加率-4.82%、薪炭材89.8%」
 このように極端に薪炭材の割合が高いと、森林伐採要因が主に生活燃料に依存する地域が想定されます。アフリカの一部では薪炭材利用が非常に高い国々が多いため、こちらはアフリカとの関連が深いと考えられます。

④【誤】「森林面積191百万ha、増加率-3.53%、薪炭材15.8%」
 これはさらに小規模な森林面積の地域であり、オセアニアなどの規模が近い可能性があります。南アメリカと比べると数値が合致しません。

問26:正解6

<問題要旨> 国際線旅客便の発着空港を、各国の首都を中心に正距方位図法で示した図(「カ~ク」)について、それぞれが「アメリカ合衆国」「アラブ首長国連邦」「日本」のいずれに該当するかを問う問題です。国際線の行き先の分布や距離、あるいは世界の主要都市への接続便の多さなどから推測します。

<選択肢>
①~⑤【誤】
 「カ」が日本かアメリカかUAEか、「キ」が別の国かという振り分けを間違うと誤りとなります。例えば日本(東京)からは東アジア近接国が多く、欧米に長距離便が集中するパターンが見られます。アラブ首長国連邦(ドバイなど)ならヨーロッパ・アフリカ・アジアへの広域路線を擁し、アメリカ(ワシントンD.C.やニューヨークなど)なら欧州への路線が集中しつつ太平洋路線もあるなどの特徴が読み取れます。

⑥【正】
 カ=アメリカ合衆国、キ=アラブ首長国連邦、ク=日本 というように、図中の路線分布や距離感が最も合致する組合せがこれに当たります。たとえば、クの中心都市に極めて密集した便が近距離のアジア近隣諸国へ飛び、欧米へ長距離便がいくつも伸びる様子などが「日本」らしいパターンとなり、他の二国との違いがはっきりします。

問27:正解4

<問題要旨> 「日本における都市問題の背景」について述べた①~④の選択肢のうち、「適当でないもの」を問う問題です。大型店舗の郊外進出やニュータウンの高齢化問題、都市部でのヒートアイランド現象(水害や暑さなどの深刻化)など、現代の日本の都市が抱える課題を正しく把握できているかが試されます。

<選択肢>
①【正】「大型小売店が郊外へ進出する一方で、都市中心部の小売店が減少し、中心部に住む交通弱者の日常的な買い物が困難となっている」
 いわゆる中心市街地の空洞化や買い物難民の問題が取り沙汰されており、正しい指摘といえます。

②【正】「高度経済成長期の住宅難解消のために建設された各地のニュータウンでは、施設の老朽化や住民の高齢化が問題となっている」
 多くのニュータウンで人口構成の高齢化や建物のリニューアル需要が課題化しており、一般に周知されている現象です。

③【正】「都市で水害が生じる背景には、地面がコンクリートやアスファルトで覆われ雨水がしみ込みにくいことがある」
 都市化によって雨水が浸透せず排水路に集まりやすいことから、集中豪雨で洪水が発生しやすくなるという問題はよく指摘されます。

④【誤】「都市のウォーターフロント開発がすすむ背景には、農村のUターンによる人口減少とたくさんの空き地の増加がある」
 農村のUターンや空き地の増加は都市部のウォーターフロント開発の主要要因とは言い難いです。むしろ港湾再開発やリゾート・商業施設の集積を狙った都市政策的理由が大きく、この説明は的を射ていないため「適当でないもの」と判断できます。

問28:正解4

<問題要旨> いくつかの国におけるODA(政府開発援助)の地域別拠出割合を示した棒グラフを読み取り、①~④の国がオーストラリア・韓国・スペイン・フランスのいずれかに対応するのかを判定する問題です。スペインは歴史的・文化的関わりをもつ旧植民地の多い中南米(スペイン語圏)への援助が比較的大きい点が特徴です。

<選択肢>
①~③【誤】
 例えばオーストラリアのODAは太平洋や東南アジアへの比率が非常に高い、韓国はアジアに偏重しながらも多様化している、フランスはアフリカ諸国への支援が大きいなど、国ごとの歴史的背景による地域配分の違いがあります。スペインの特徴とは合致しない可能性があります。

④【正】
 中南米(中央・南アメリカ)への割合が大きく、他地域にもある程度拠出しているグラフパターンがスペインの状況と整合するため、これが適切と考えられます。旧スペイン植民地である中南米諸国との結びつきを重視するスペインのODAがもっとも当てはまるのが④です。

第5問

問29:正解6

<問題要旨>
図1に示された高山市を含む3都市(高山市・富山市・浜松市)の気候指標(気温の年較差と冬季の日照時間)を比較し、「ア・イ・ウ」という記号と各都市名を組み合わせる問題です。
高山市は内陸に位置し標高も高いため、年較差がやや大きく、冬でも比較的晴天が多いことが特徴です。一方、富山市は日本海側で冬季の日照時間が短い傾向があり、浜松市は太平洋側で年間を通じ比較的温暖ですが、冬の晴天時間が他より多いか少ないかなどの地域性から判断します。

<選択肢>
①【誤】
 高山市=ア,富山市=イ,浜松市=ウ の組合せだが、実際に確認すると気温の年較差や冬季日照時間との対応が合わない可能性が高いです。

②【誤】
 高山市=ア,富山市=ウ,浜松市=イ など、地域ごとの特徴(日本海側・太平洋側・内陸)と値を照らし合わせると、食い違いが生じます。

③【誤】
 高山市=イ,富山市=ア,浜松市=ウ のように割り当てる場合、冬季日照時間が大きいor小さい順や気温年較差の順番と矛盾する可能性があります。

④【誤】
 高山市=イ,富山市=ウ,浜松市=ア などのパターンも、データの数字との整合性が取りづらいです。

⑤【誤】
 高山市=ウ,富山市=ア,浜松市=イ の組合せを取っても、内陸性気候による年較差の大きさや冬季日照量の多さ・少なさが合わないでしょう。

⑥【正】
 高山市=ウ,富山市=イ,浜松市=ア とすると、
 - ア(浜松市):年較差21.1℃程度,冬季日照時間580時間台(太平洋側の特長で冬季晴天が多め)
– イ(富山市):年較差23.9℃程度,冬季日照時間230時間台(日本海側で冬季日照が少ない)
– ウ(高山市):年較差25.5℃程度,冬季日照時間297時間台(内陸性気候で年較差が大きいが、北陸ほど冬の降雪・曇天が多くはない)
 これが最も自然な対応と言えます。

問30:正解3

<問題要旨>
高山市の大合併(2005年)後の市内人口分布を「人口密度」「老年人口割合」「平均世帯人数」などの主題図で比較し、そこから読み取れる特徴と背景を述べた文章①~④のうち、「適当でないもの」を選ぶ問題です。中心市街地と周辺部の差異(標高が高い地域、交通の便が限られる地域など)を踏まえて考察します。

<選択肢>
①【正】「人口密度は、盆地に位置する中心部とその隣接地域で高い値がみられる。」
 飛騨盆地周辺の中心市街地で人口が集中するのは一般的です。

②【正】「老年人口割合は、中心部から離れた標高の高い東西の地域で高い傾向にある。」
 都市中心部より山間部のほうが高齢化率が高いのはよくあるパターンです。

③【誤】「平均世帯人数は、中心部と周辺部において低位にある。主な理由として、隣接地域と比べて核家族世帯や単身世帯の割合が低いことが予想される。」
 周辺部よりも中心部ほど核家族世帯や単身世帯が多い場合、むしろ平均世帯人数は小さくなりやすいです。選択肢に書かれている内容は逆説的な箇所があり、「低位」「割合が低い」の文意に齟齬があるため「適当でない」内容となります。

④【正】「長期間にわたる若年層の流出や高齢者の死亡による世帯人数の減少がみられる。」
 過疎地域化が進む周辺部では、若者の流出や高齢化によって世帯あたり人数も減りやすく、一般的に考えられる現象です。

問31:正解4

<問題要旨>
高山市における農業産出額の特徴や、かつて都市との距離が遠かった時代の農産物流通(朝市や近郊の農家の役割)、さらに富山湾など北陸方面から運ばれる魚との繋がりを市役所の職員との会話文から読み取る問題です。空欄「カ」と「キ」に正しい語句・地名を当てはめ、①~④の組合せで示しています。

<選択肢>
①【誤】「カ=域外消費を促している,キ=名古屋」など
 高山市が遠方の大都市圏(名古屋や大阪など)に農産物を出荷する流れはありますが、ここでの文脈では「消費を促す」か「流通経路」としての意図とのズレがあるかもしれません。さらに魚の運搬先が名古屋か松本かでも解釈が異なってくるため、情報と整合しない可能性が高いです。

②【誤】「カ=域外消費,キ=松本」など
 会話文を見ると、富山湾の魚を標高1,000mを越える峠を越えて運ぶ先がどこかを考えると、必ずしも松本方面で説明が合うとは限りません。

③【誤】「カ=域内消費,キ=名古屋」など
 市職員の説明で、「大都市と離れていたことが農産物の○○を促した」などの話題と、富山から運ばれていた魚が『飛騨鰤』として珍重された行き先(例:名古屋や他の都市)の話が噛み合わない場合があり、文脈と一致しない可能性があります。

④【正】「カ=域内消費,キ=松本」
 高山市は遠方である大都市圏に出荷する以前に、近隣農家と朝市を形成し域内で消費していた歴史があるという流れ。さらに富山湾で揚がった鰤(ブリ)を塩漬けして山を越え、松本方面などへも運んだ(飛騨鰤)という話の筋が合致します。会話文との整合性が最もとれる組合せです。

問32:正解4

<問題要旨>
高山市の中心市街地地図(2万5千分の1地形図)を基に、城下町の特徴や寺院密集地区、都市化による道路整備などの歴史的特色を読み取り、①~④の記述から「適当でないもの」を選ぶ問題です。城下町なら「丁字路」や「枡形」など敵の進軍を遅らせる工夫、寺院の集まりを示す寺町などが読み取れます。

<選択肢>
①【正】「上二之町から南へ向かう通りでは、城下町の特徴の一つとして、戦時の敵の移動を遅らせるために丁字路がつくられている。」
 城下町の防御的街路設計として丁字路やクランク状の道が使われることはよくあるため、妥当な記述です。

②【正】「城山にはかつて城が築かれており、市内を南から北へ流れる宮川は外堀の役割を果たしていた。」
 地形図を見れば、宮川が城の外堀的な地形を構成していた可能性は高く、城跡がある地域としては自然な説明です。

③【正】「吹屋町の北側から東側にかけては、寺院が集中しており、寺院に由来する町名のつけられている地区が確認できる。」
 寺町通りなど、城下の外側に寺院を配置する「寺内町」的要素が見られるケースは多いです。

④【誤】「桜町一丁目付近は、市街地が西部に拡大するなかで整備された地域であり、特徴の一つとして、宮川と並行する幹線道路に面して工業団地が造成されている。」
 実際の地図を確認すると、桜町一丁目の付近に工業団地の造成地は見当たらないか、あるいは幹線道路が工場群に特化して並ぶような構造がなく、むしろ商業や住宅街かもしれません。文中にある「工業団地」は適切な把握ではないため「適当でないもの」と言えます。

問33:正解2

<問題要旨>
高山市の観光統計(旅行者数の推移)と、全国の外国人旅行者における地域別割合などを対比して、そこから読み取れる内容と背景を文章①~④で示し、その中の「適当でないもの」を問う問題です。高山市は宿泊客数にしめる外国人の比率が比較的高く、ヨーロッパやオセアニア方面からの観光客が増えている特色があります。

<選択肢>
①【正】「交通条件の改善は旅行者数の維持を保証するものではない」
 新交通網が整備されても必ずしも観光客が増加し続けるとは限らないので、妥当な指摘です。

②【誤】「2015年の高山市の宿泊客数の約2割を外国人旅行者が占めている。外国人旅行者の地域別割合をみると、高山市は全国に比べてヨーロッパやオセアニアの割合が高い。」
 高山市への外国人客はアジア圏も多いものの、欧米系の旅行者やオセアニアからのバックパッカーなどが多いという特徴がよく知られています。ここにある「約2割」の数字は実情に合うかもしれませんが、設問文では「適当でないもの」を探す場合、②の文意やデータが他記述と整合しない(または数値が乖離している)恐れがあります。実際の統計では、その割合にズレがある可能性が高く、「2割を占める」の正確性が疑わしいかもしれません。

③【正】「岐阜県全体の日帰り客数が約3,731万人、宿泊客数が629万人。高山市は宿泊観光地としての性格が強い。」
 高山市は飛騨高山観光として宿泊客が多く、日帰り中心の他市と比べて観光スタイルが異なる場合が多いです。

④【正】「日本では国をあげて外国人誘客に努めており、全国的な外国人旅行者の地域別割合ではアジアの比重が高い一方、高山市ではヨーロッパやオセアニアの割合が高めになっている。」
 アジアからの旅行者が全国的には大半を占める中、飛騨高山は欧米豪からの観光客にも人気が高い特徴があるため、適切な記述です。

問34:正解2

<問題要旨>
乗鞍岳(岐阜県と長野県の県境付近にある山)の高低差によって植物の分布が変わることに着目し、山地帯(約1600m付近)・亜高山帯(約2500mの森林限界)・高山帯(約2700m付近のハイマツ帯など)それぞれに代表される植生(写真A~C)を対応づける問題です。標高が上がるにつれ樹林帯が低木化し、最終的にハイマツなどが主体になる流れが特徴です。

<選択肢>
①【誤】「高山帯=A,亜高山帯=B,山地帯=C」など
 Aは地表がかなり岩石むき出しで低木状に見える写真かどうか確認が必要ですが、文中の標高ごとの植生特性とズレれば誤りとなります。

②【正】「高山帯=A,亜高山帯=C,山地帯=B」
 一般的に、高山帯(ハイマツ帯や岩礫地)は背の低いハイマツが点在するか、ほぼ草本・岩場が広がる姿(A写真のイメージ)。亜高山帯はシラビソやオオシラビソなど針葉樹の森(C写真)を形成、山地帯はブナやミズナラなどの落葉広葉樹(または針広混交林)で、やや大木が広がる感じ(B写真)と推測されるため、この組み合わせがもっとも自然に対応すると考えられます。

③【誤】「高山帯=B,亜高山帯=A,山地帯=C」など
 Bに見られる樹種や樹形が低木ではない場合、それを高山帯とするのはミスマッチとなるでしょう。

④【誤】「高山帯=B,亜高山帯=C,山地帯=A」など
 写真Aが大木の森林に見えなければ山地帯への割り当ては合わず、その他の帯との整合も困難です。

⑤【誤】「高山帯=C,亜高山帯=A,山地帯=B」
⑥【誤】「高山帯=C,亜高山帯=B,山地帯=A」
 いずれも写真中の植生状態を考慮すると矛盾が生じるため、誤りとなります。

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