解答
解説
第1問
問1:正解3
<問題要旨>
この問題では、サービス貿易が国境を越えて行われる際の形態(モード)に関する理解が問われています。具体的には、サービス提供者または消費者の移動の有無や設置拠点の違いなどから「越境取引」「国外消費」「商業拠点設置」「人の移動」に分類し、それぞれの事例がどの形態に該当するかを考察する問題です。
<選択肢>
①【誤】
各行動を「越境取引」「国外消費」「商業拠点設置」「人の移動」のどれに当てはめるかを誤っている可能性があります。たとえば、通信手段を用いて自国からサービスを提供するケースを「越境取引」とするかどうかなど、分類の原則を再確認すると不整合が生じるでしょう。
②【誤】
同様に、三つの具体的行動のいずれかが「国外消費」や「商業拠点設置」などに当てはまっていないか、あるいは「人の移動」を伴うかどうかを誤っていると考えられます。選択肢の割り振りが当該モードの定義から外れている可能性が高いです。
③【正】
問題文から読み取れる「他国における日本企業の拠点を利用した商品の輸送」「現地でのバスツアーへの参加」「演奏者が外国へ渡ってコンサートを開くケース」などの事例を、各モードの定義に照らして妥当な組み合わせにした場合、もっとも整合的な対応となるのがこの選択肢です。
④【誤】
上記の三つの行動いずれかについて、サービス提供者・消費者の移動や現地拠点の設置の有無を誤って判断しているため、定義上の齟齬が生じると考えられます。
問2:正解4
<問題要旨>
この問題は、外国為替市場や為替レートの変動要因、為替政策に関する基礎知識を問うものです。ドル円相場などを例に、通貨高・通貨安の状況や需給バランスによる変動、政府・中央銀行の介入などの仕組みを正しく理解しているかを確認する問題となっています。
<選択肢>
①【誤】
「1ドル=120円と1ドル=130円のどちらが円高・円安か」という事例において、通貨高・通貨安の状態を取り違えている可能性があります。正確には、1ドルあたりの円の支払い額が少なくなるほど「円高」、多くなるほど「円安」です。
②【誤】
「金・ドル本位制」という表現が出てきた場合は、古くはブレトンウッズ体制と関連づけて解説されますが、為替相場が需給で決まるメカニズムを説明する際に必ずしもその言葉を用いるとは限りません。為替の需要と供給によってレートが変動する仕組みを誤って把握しているおそれがあります。
③【誤】
急激な円高・円安に対応するための「ドル売り・円買い介入」や「ドル買い・円売り介入」についての政府の判断を誤解している可能性があります。為替政策の特徴を混同しているか、記述が足りない場合が考えられます。
④【正】
外国為替市場や為替手段に関する国際的な支払・受取と金融機関の仲立ちなどについての記述が、為替の決済方法や資本取引の面から正しく整理されているとみられます。総合的にみて、選択肢の説明が市場の基本原理に合致していると判断できます。
問3:正解1
<問題要旨>
この問題は、欧州連合(EU)に関わる地域経済統合の進展や、EU発足に至る枠組みなどの歴史・制度に関する知識を問うものです。各選択肢は、マーストリヒト条約、ユーロの導入、ギリシャ財政問題、欧州中央銀行(ECB)の役割など、EUの主要トピックに関係しています。
<選択肢>
①【正】
欧州共同体(EC)をEUに発展させることを定めた主な条約としてマーストリヒト条約があります。ECからEUへと拡大する際の重要なステップを示す条項であり、適切な記述だといえます。
②【誤】
「ギリシャの財政破綻と国債暴落をきっかけにユーロ高が進んだ」という説明は、ギリシャ財政危機の実態とその後のユーロ相場の動きを正確に反映していない可能性があります。実際にはギリシャの信用不安によりユーロが下落傾向になるなどの懸念が広がった時期がありました。
③【誤】
EU域内の財政政策に関しては、EU加盟国が相互に規律を定める仕組み(財政規律)やEUの共通通貨政策を担うECBはありますが、「統一的な財政政策が実施されている」と言い切るのは不正確です。各国の財政主権との兼ね合いは完全に一元化されていません。
④【誤】
第二次世界大戦後の欧州統合の起点にはヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)があり、その後に欧州経済共同体(EEC)や欧州原子力共同体(EURATOM)などが成立しました。「EECが最初に発足した」という書きぶりは、戦後統合の流れを正しく説明していない可能性があります。
問4:正解4
<問題要旨>
この問題は、国際社会の仕組みや国際機関の構造に関する基礎的な知識が問われています。国際法上の国家の成立要件、国際連合の主要機関、国際協力機関の役割などに触れ、どの記述が正しいかを判別する問題です。
<選択肢>
①【誤】
国家領域の構成要素は「領土・領海・領空」が基本ですが、排他的経済水域(EEZ)などは領土に準じた主権的権利が及ぶ範囲として区別されています。選択肢の記述がそれらを混同しているか、定義が曖昧である可能性があります。
②【誤】
国際連合の主要機関は「総会」「安全保障理事会」「経済社会理事会」「信託統治理事会」「国際司法裁判所」「事務局」の六つです。ここに「人権理事会」は直接含まれていないため、記述の取り扱い方によっては誤りと判断される可能性があります。
③【誤】
一般協定(GATT)を引き継いだのは世界貿易機関(WTO)ですが、国際復興開発銀行(IBRD)は世界銀行グループの一機関です。GATTとの直接的な継承関係はないため、この選択肢は誤りと考えられます。
④【正】
「人間の安全保障」の考え方は、国連開発計画(UNDP)が1994年の『人間開発報告書』で示したことで知られ、貧困や人権侵害などの脅威から人々を守ろうとする概念です。これを扱う主体としてUNDPの名が挙がるのは妥当な記述です。
問5:正解4
<問題要旨>
この問題は、自由貿易協定(FTA)や地域経済統合がもたらす利益・損失を数値例で考察する問題です。関税率の変化により国内価格がどう変わり、政府の関税収入や消費者の恩恵・国内産業の保護との兼ね合いがどのように変化するかを理解する必要があります。
<選択肢>
①【誤】
数値例において、B国やC国からの輸入に関税がかかる場合と、FTAを結んで関税がかからない場合の売買価格を正しく整理できていない可能性があります。また、政府の関税収入の増減や輸入先の変化を十分に考慮していないかもしれません。
②【誤】
FTAが締結されると、関税が撤廃されるため「高い関税コスト」を理由に輸入元を変える動機がなくなりますが、そのとき国内での売値がどう下がり、誰がどの利益を得るか、政府が失う関税収入の額を誤っている可能性があります。
③【誤】
関税の有無で生じる輸入価格差と、切り替えによって発生する政府の関税収入の増減を混同しているか、効果の大きさを過剰に見積もっている可能性が考えられます。
④【正】
数値例を踏まえ、FTAの締結によって生じる価格差の変化、関税収入の損失、消費者余剰の増大などを総合的に検討すると、この選択肢がもっともバランスよく正しい数値関係を示しています。政府の収入減少や国内消費者のメリットなどの整合性がとれています。
問6:正解7
<問題要旨>
この問題では、宗教上の理由などで着用されるヴェール(スカーフ)を公共の場で禁止する法律や、それに対する人権上の是非について考察する内容が扱われています。公の秩序・安全保障と個人の自由・権利との兼ね合いを論じる判断基準が問われています。
<選択肢>
①【誤】
「顔を隠すヴェールの着用はコミュニケーションの阻害となるため、包括的に禁止すべきだ」という趣旨であっても、国家の安全上必要な範囲を超えて一律に禁止することを正当化できるかは疑問が残るとされています。
②【誤】
「公共の場におけるヴェール着用を国家が命じること」について、政治や宗教分離の原則と抵触する可能性があるという指摘があります。禁止すべきかどうかの議論と混同されている可能性があります。
③【誤】
「女性の自主選択に基づく場合でも、双方の平等に反するから一概に禁止すべきだ」との断言は、女性の権利保護と本人の意思をめぐる議論を単純化してしまっている恐れがあります。多面的な状況に配慮する必要があると考えられます。
④【誤】
「治安への脅威がある以上、すべての公共の場で顔を隠すヴェール着用を一律に禁止するのは当然正当化される」という主張に対しては、個人の自由権をどこまで制限できるかの問題が残ります。脅威に応じて必要最小限の制限が求められるという考え方が主流です。
⑤~⑦【いずれか正解として考え得る組み合わせ】
問題文ではA~Cの論点(公共の安全、社会的活動における顔の役割、女性の権利保護など)と、ア・イ・ウ・エの選択肢(着用禁止の是非)を対応させる流れになっています。その中で、公権力のあり方やジェンダーの視点などを踏まえ、もっとも適切な組み合わせとなるのがこの選択肢(⑦)です。ヴェールの着用を一概に禁止するのではなく、個人の尊重や社会的文脈に応じた判断が重視されています。
問7:正解6
<問題要旨>
この問題は、先進国と開発途上国との間における医療資源や特許の問題を題材に、国際的な医薬品の供給体制をどう構築するかが問われています。特許保護期間を延ばすと製薬企業の利益は確保される一方、高価な医薬品が開発途上国で普及しにくいという課題があり、逆に特許保護を緩めれば企業のインセンティブが失われる恐れもあるため、そのバランスをどう取るかが論点となっています。
<選択肢>
①【誤】
「特許保護期間を長期化する新しい条約を結ぶ」だけでは、開発途上国側の高い医薬品コスト問題が解消されない可能性があります。さらに開発投資も活性化するとは限らず、問題の解決には不十分です。
②【誤】
「特許権者の利益を損なわないように支援機関が資金を拠出して医薬品を購入する」という方法は有効ですが、単に国際機関の援助だけでは全ての開発途上国で医薬品が行き渡る保証はありません。複数の対策を組み合わせる必要があると考えられます。
③【誤】
「特許保護を一時的に停止する」といった内容でも、具体的にどのような条件下で緊急性を認めるかなどが曖昧だと、医薬品開発への投資意欲を著しく損ねる可能性があります。これだけで問題が完全に解決するわけではありません。
④【誤】
組み合わせとして、途上国がすぐに自国でジェネリックを製造しやすくする施策だけでは、開発コストを回収したい先進国企業の動機づけが損なわれ、長期的な新薬開発の停滞を招く恐れがあります。
⑤【誤】
「特許保護の期間を延長しつつ、政府が失う関税収入に相当する補助を充てる」などは、本問で論じる範囲の対策と直接結びついているわけではなく、関税問題とも異なるため不正確といえます。
⑥【正】
問題文中で示されている「特許の保護期間やその緩和策、国際機関の援助、緊急時のライセンスなど」を複合的に検討し、途上国の医薬品アクセス改善と製薬企業の研究開発インセンティブ維持の両面をバランスよく考慮しているのがこの選択肢です。X・Y・Zなどの案を組み合わせた包括的なアプローチが示唆されている点で、もっとも現実的だと判断できます。
第2問
問8:正解4
<問題要旨>
この問題では、心理学における青年期の特徴について理解が問われています。エリクソンやレヴィンなどの学説が示すように、青年期には自己同一性の確立過程や周囲との関係から生じる特徴的な状態があるとされます。選択肢では、身体的・社会的な成熟に関する用語や「モラトリアム」「マージナル・マン」などがどのように定義されるかを踏まえ、最も適切な記述を判断する必要があります。
<選択肢>
①【誤】
「青年期の初め頃において、身体が性的に成熟し大人になることを第一次性徴と呼ぶ」という表現は、生物学的な初歩的説明に留まっています。実際には思春期以降に見られる身体的変化には第一次性徴と第二次性徴があり、その区別を誤解している可能性があります。
②【誤】
「エリクソンは、青年が自分であることに確信がもてず、多様な自己を統合できない混乱した状態をモラトリアムと呼ぶ」という説明は、モラトリアムの概念をやや狭く捉えすぎています。エリクソンの言う「モラトリアム」は、青年期における社会的責任を猶予して自己探求を行う猶予期間を指すとされますので、自己統合の混乱状態そのものとは必ずしも同義ではありません。
③【誤】
「青年が、親や年長者の価値観を拒否したり社会的権威に抵抗したりすることを第一反抗期と呼ぶ」というのは、むしろ幼児期後半頃に見られる第一反抗期と青年期の反抗を混同している可能性があります。青年期の反抗にはさまざまな形態があり、一概に「第一反抗期」とは呼びません。
④【正】
「レヴィンは、子ども集団にも大人集団にも属しながら、どちらの集団にもはっきりと所属意識をもてない青年を境界人(マージナル・マン)と呼んだ」という説明は、レヴィンの用語として正確に理解されています。青年期が大人と子どもの境界に置かれ、アイデンティティの揺らぎを伴うという側面を示唆するため、青年期の特徴を的確に捉えています。
問9:正解4
<問題要旨>
この問題は、若者の自己認識や国際比較・国内比較という視点が登場し、自国の特徴と諸外国の特徴をどのように比較するかが問われています。日本の若者の「やさしさ」への意識が比較的低い割合だった、などの調査結果を材料にして、会話文中に挿入される説明文(a・b と c・d)を正しく組み合わせる必要があります。
<選択肢>
①【誤】
「ア=a,イ=c」の組み合わせでは、国内の項目間比較と国際比較についての話題が会話文の流れとやや一致しない可能性があります。それぞれの視点(国内・国際)をどの段階で比較しているかに齟齬が生じます。
②【誤】
「ア=a,イ=d」の場合、国内項目間の比較のタイミングと、国際項目間比較のタイミングが逆転する可能性があります。結果的に話の流れが合わなくなるため、表で示される数値の見方とずれる恐れがあります。
③【誤】
「ア=b,イ=c」の組み合わせでは、ア(a・b)が国内比較か国際比較か、イ(c・d)がどのような比較に言及しているかという点で、会話文の流れに不整合が生じる可能性があります。
④【正】
「ア=b,イ=d」の組み合わせでは、まず一方が項目ごとの国際比較、もう一方が国内の項目間比較に注目しているという流れが会話文の内容と合致しやすく、さらに「やさしさ」の回答割合を巡る言及とも矛盾しません。表の見方(国内間の順位・各国間の順位)をそれぞれ別々の視点として整理できるため、自然な組み合わせになっています。
問10:正解1
<問題要旨>
劇団の主宰者が言及するインタビュー資料の一部から、[A] と [B] にあてはまる語句を選ぶ問題です。内容としては、NPOや企業が社会課題を収益ビジネスで解決する「社会的企業(ソーシャルビジネス)」の概念や、企業が法令遵守だけでなく社会・環境に配慮した活動を行う「企業の社会的責任(CSR)」などが話題となっています。これらの用語を正しく理解し、インタビューの文脈に整合する語句を当てはめられるかがポイントです。
<選択肢>
①【正】
[A]に「社会的企業」、[B]に「企業の社会的責任(CSR)」という組み合わせは、NPOや企業が公共性の高い課題をビジネスで解決する潮流と、企業がステークホルダーに貢献する取り組み全般を示す活動が一連の文脈で語られるため、自然に対応します。
②【誤】
[A]に「社会的企業」、[B]に「内部統制」を当てはめると、文中の「環境保全活動の支援」や「ステークホルダーへの貢献」という話題との関連性が薄くなります。内部統制は企業内部の管理システムを指すため、文脈にそぐいません。
③【誤】
[A]に「営利企業」、[B]に「企業の社会的責任」とすると、営利企業は一般的な呼称ですが、わざわざ取り上げて強調する場面としては不自然です。また前後の文脈からは「社会課題の解決に取り組む事業形態」を強調する意図がうかがえます。
④【誤】
[A]に「営利企業」、[B]に「内部統制」を入れると、やはり環境保全や社会貢献を念頭に置いた話題と整合せず、文意が大きくずれてしまいます。
問11:正解5
<問題要旨>
1963年以降の日本の有効求人倍率の推移を示すグラフをもとに、特定の時期(ア~エ)をどのような経済状況や政策の動きと関連づけるかを判断する問題です。原油価格の高騰やインフレ、国内消費市場の拡大、規制緩和・金融の自由化など、日本経済の成長や後退の要因を年代別に整理して正しく対応づける必要があります。
<選択肢>
(選択肢は「ア~エ」と「A~D」を組み合わせた8通りのパターンになっているが、ここでは説明のみを示します)
- A:「原油価格の高騰による急激なインフレと不況(マイナス成長)」
- B:「構造改革特区による規制緩和・金融自由化を進めた時期」
- C:「企業の設備投資と消費革新による国内消費市場の拡大」
- D:「原油価格の高騰を機に製造業の産業構造転換が加速」
【正】(5番)
グラフの山谷と符合する時期には、1970年代のオイルショックや高度経済成長の終焉、バブル期・その後の構造調整、そして2000年代の規制緩和や企業活性化の流れなどが影響しています。選択肢5はそれらの経済史的事実とグラフの谷・山のタイミングをもっとも整合的に対応づけているため、正しい組み合わせと判断されます。他の組み合わせは、オイルショックの影響やバブル景気・その崩壊と時期がずれたり、日本型産業構造の変遷との接点に不整合が生じたりします。
問12:正解2
<問題要旨>
社会参加に関する哲学的・思想的な議論がテーマです。ハイデッガーやアーレントなどが、人間の自由や共同体への関わりをどのように位置づけているかが問われています。公共性や連帯、自由と責任を巡る思想を理解し、その記述が正確かどうかを見極める必要があります。
<選択肢>
①【誤】
ハイデッガーが「人間は自由の刑に処せられている」というのは、サルトルの「実存は本質に先立つ」などにも通じる実存主義的文脈ですが、そこから導かれる責任論と社会参加の話をどう結びつけるかが曖昧な記述のため、慎重に判断が要ります。
②【正】
アーレントは、古代ギリシャのポリスをモデルにした公共圏・公共性の重要性を論じ、人間にとって共同体で活動する意義を強調しました。個人が私人としてだけでなく公共の場で相互に関わり合うことを「政治」と捉える文脈があり、本問の「社会参加」の説明として適切に当てはまります。
③【誤】
シュヴァイツァーは「生命への畏敬」を説き、アフリカでの医療活動を行った人物です。他者を愛し、博愛の精神を実践したことは著名ですが、「死を待つ人の家を運営して奉仕活動をした」というのはマザー・テレサの活動に関する記述に近く、混同の可能性があります。
④【誤】
レヴィナスは「他者の顔」を正面から受け止める責任を説いた哲学者であり、「自由からの逃走」という表現はエーリッヒ・フロムの著書として知られています。記述が複数の思想家の概念を混同しているため、誤りとなる可能性が高いです。
問13:正解1
<問題要旨>
日本の財政や予算編成に関する基本知識が問われる問題です。財政政策の役割や、国の特定事業の収支を賄う方法、地方自治体の自主財源と依存財源などの区別を把握しているかを確認します。
<選択肢>
①【正】
「政府支出や税収の増減などを通じて、民間部門の需要を刺激あるいは抑制し、景気の安定化を図る手法をフィスカル・ポリシーと呼ぶ」は、経済学・財政学の用語として適切です。政府が意図的に財政手段を操作して景気の調整を図ることを指します。
②【誤】
「国会で成立させる予算のうち、国が行う特定事業の収支を計上したものを財政投融資と呼ぶ」という記述は、財政投融資(FILP)が単純な特定事業とは限らず、政府系金融機関を通じた融資形態などの特徴をもつことと異なります。
③【誤】
「地方公共同体の自主財源には地方税のほかに地方交付税がある」というのは誤りです。地方交付税は国からの支出であり、一般的に地方自治体の依存財源に分類されます。
④【誤】
「地方分権に関わる『三位一体の改革』の一環で、補助金(国庫支出金)の増額が図られた」は逆です。三位一体の改革では、むしろ国庫補助負担金の縮減や税源移譲などが柱でした。補助金の増額ではなく減額が中心でした。
問14:正解5
<問題要旨>
マズローの欲求階層説を題材にした問題で、低次から高次へと五つの欲求が積み重なっているという前提に基づき、提示されたA・B・Cの記述がいずれの段階に該当するかを正しく振り分けることが求められます。欲求階層説では、生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求→自尊の欲求→自己実現の欲求、の順に整理されています。
<選択肢>
(組み合わせのパターンは多岐にわたるが、ここでは代表的な考え方を示す)
- A:「人と愛情に満ちた関係を求め、所属や家族を強く望む」⇒ 所属と愛の欲求(第3段階)
- B:「音楽家は音楽を作り、美術家は絵を描く…自分がなりうるものにならなければならない」⇒ 自己実現の欲求(第5段階)
- C:「社会的場面で緊急に必要とされるのは法秩序や社会的権威…」⇒ 安全の欲求(第2段階)
【正】(5番)
Aを3番目、Bを5番目、Cを2番目とする組み合わせは、マズローの欲求階層説に照らして自然に対応します。すなわち、まず身体・生理的欲求(第1段階)の次に安全の欲求(第2段階)、さらに帰属の欲求(第3段階)、自尊の欲求(第4段階)、そして最後に自己実現の欲求(第5段階)という順序があるため、A・B・Cをそれぞれ3・5・2の階層に当てはめる考え方が論理的に妥当です。
第3問
問15:正解8
<問題要旨>
この問題は、名目GDPと実質GDPの違いを整理し、物価変動(価格低下や上昇)が生じた場合にどのように数値が変化するかを理解するものです。スマートフォンのみが値下がりした仮想例において、生産量が同じでも名目GDPと実質GDPがそれぞれどう動くか、さらに生産量の増減を判断する指標としてはどちらを使うべきかを問われています。
<選択肢>
(A・Bに入る語句:ア「増加」 イ「減少」 ウ「同じ」
Cに入る語句:力「名」 牛「実」 質「質」 などの候補)
①~⑦【誤】
ある年と翌年で生産量が変わらないにもかかわらず物価が下がった場合、実質GDPは生産量そのものが変化しないため「同じ」になるが、名目GDPは「減少」するはずです。さらに、生産量の増減を把握するには物価変動の影響を取り除いた「実質GDP」を使う、という流れを正しく反映できていない組み合わせが多いと考えられます。
⑧【正】
物価のみが下落(スマートフォンの価格が下がる)したとき、同じ生産量なら実質GDPは「変わらない(同じ)」が、名目GDPは「減少」します。また、経済成長のうち生産量の増減を判断する際は物価の影響を除いた「実質GDP」を用いるのが一般的です。これらを組み合わせて成立するのが選択肢⑧です。
問16:正解1
<問題要旨>
この問題は、携帯電話市場の規制緩和や端末販売規制などを背景に、政府が企業や市場にどのように働きかけるかを問う内容です。独占禁止法や公共財の供給、労働条件・食の安全管理などの仕組みが正しく理解されているかを確認しています。
<選択肢>
①【正】
「企業が製品の販売価格を小売店に強制することなどの禁止を定めた法律は、独占禁止法である」という説明は適切です。再販売価格維持など競争制限行為を原則禁止とする独占禁止法の趣旨にも合致します。
②【誤】
「公共財の供給を政府が担う必要があるのは、市場メカニズムに任せると過剰供給されるためである」とありますが、公共財が供給されにくい典型的な理由は、むしろ非排除性や非競合性による「市場からの供給不足(フリーライダー問題)」です。過剰供給ではなく、供給不足の懸念があるため政府が担うとされます。
③【誤】
「法が定める労働条件の最低基準を企業が守っているかを監視する機関として労働委員会がある」は不正確です。労働委員会は労働争議や労使関係の調整などを扱う機関であり、最低基準の監督は主に労働基準監督署の管轄です。
④【誤】
「食の安全のために、消費者が生産・流通の情報を得られる仕組みとして食糧管理制度がある」というのは誤りです。食糧管理制度は戦後のコメ流通・価格統制を中心とする旧制度であり、現在のトレーサビリティ制度や食品表示法とは異なるものです。
問17:正解3
<問題要旨>
日本とアジア諸国・地域の貿易関係について問われており、特にASEAN(東南アジア諸国連合)における関税の引き下げを通じて域内自由貿易を促進しようとする動きなど、アジア地域の経済連携を取り上げる問題です。
<選択肢>
①【誤】
「中国が共産党指導体制を維持しつつ市場経済を取り入れている仕組みを一国二制度という」というのは不正確です。「一国二制度」は香港やマカオなどの高度な自治を認める際の枠組みを指し、社会主義と資本主義の並立を公式化したものとは少し文脈が異なります。
②【誤】
「日本とアジアの国々は工業部品や完成品を相互に輸出しているが、こうした貿易形態を垂直貿易と呼ぶ」という説明は疑義があります。垂直貿易は完成品と中間財など付加価値の段階差が大きいものを指すことが多いですが、アジア域内では生産ネットワークが複雑化し水平的な部品供給も行われます。文意の狙いからみて適切さに欠ける可能性が高いです。
③【正】
「東南アジア諸国連合(ASEAN)が関税の引き下げなどを通じて域内の自由貿易を促進するために創設したのは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)である」という記述は事実に沿っています。AFTAはASEAN加盟国間の貿易自由化を加速する枠組みとして設立されたため、正しい知識に基づく説明です。
④【誤】
「アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に至る交渉を主導したのは日本である」というのは誤りです。AIIBを主導したのは中国であり、日本は参加を見送った経緯があります。
問18:正解1
<問題要旨>
サービスの取引とは何か、という点を問う問題です。問題文では、サービスの取引対象として「物ではない」「生産と消費が同時」「作り置き(在庫)ができない」という特徴が挙げられています。提示されたA~Cの具体例が、このサービスの特徴を満たすかどうかを判断します。
<選択肢>
A:理髪店で髪を切ってもらう → 物ではなく、生産と消費が同時に行われ、在庫化できません。サービスの代表例です。
B:コンビニエンスストアがアルバイト従業員を雇用し、働いてもらう → 労働力を提供してもらう契約であり、これも「物」ではないやり取りで、その場での人の労働サービスが発生しています。サービス取引とみなせます。
C:駅で切符を購入して鉄道に乗り、目的地まで移動した → 乗車券という形で物理的な切符が存在しても、その本質は「鉄道による移動」というサービスです。乗車は生産(運送サービスの提供)と消費が同時に行われ、在庫化ができない点もサービスの典型です。
①【正】
AとBとCはいずれもサービスの特徴を備えており、すべてサービス取引に該当します。
②~⑧【誤】
AとBだけ、あるいはAとCのみなど、いずれかを除外する選択肢は、Cに関して「切符」という物理的な形があるから誤解している等の可能性があります。しかし問題文で示されるサービスの定義を踏まえると、いずれもサービスといえるため、①以外は不適当です。
問19:正解4
<問題要旨>
プラットフォームビジネスの特徴、特にネットワーク効果や利用者数による競争の仕組みについて問う問題です。会話文で「人気のあるWebサイトをみんなが使うと企業も広告を出したがる」という好循環(ネットワーク外部性)が働き、複数のプラットフォーム間で同分野のサービスが競合するときにどんな状況が起こるかを考察しています。
<選択肢>
Xに入る記述(ア・イ):
- ア:「毎回同じ人気のあるWebサイトを利用する」
- イ:「必要に応じてWebサイトを使い分ける」
Yに入る記述(カ・キ):
- カ:「複数のプラットフォームの利用者数が横並びになる」
- キ:「利用者数が多いプラットフォームに、さらに利用者が集まる」
Zに入る記述(サ・シ):
- サ:「単一のプラットフォームが、安定してサービスを提供する」
- シ:「複数のプラットフォームが、競争しつつサービスを提供する」
①~③、⑤~⑧【誤】
発生している事象(人気サイトにさらに利用者が集まり、企業も広告を出す)から推測されるのは、ネットワーク外部性によって「利用者が多いプラットフォームにより多くの利用者が流れていく(=キ)」という状況です。また会話文では、競争する複数のプラットフォームが存在し得るという説明がなされており、XやZの組み合わせを誤っていると流れが不自然になります。
④【正】
Xとして「必要に応じてWebサイトを使い分ける(イ)」と考え、Yには「利用者数が多いプラットフォームにさらに利用者が集まる(キ)」のネットワーク効果の状況を挿入、さらにZには「複数のプラットフォームが競争しながらサービスを提供する(シ)」とする流れが、会話文の主旨(同分野でのプラットフォーム競争)と最もよく合致します。
問20:正解4
<問題要旨>
グローバル化や企業規模の拡大などに伴い、国や政府の役割をどう捉えるかを問う問題です。選択肢には、国際的な会議の新設や「大きな政府」対「小さな政府」の議論、地方分権改革、国の予算規模などが取り上げられています。
<選択肢>
①【誤】
2008年の世界金融危機をきっかけに、新興国を含む主要国が経済問題を協議する場として活発化したのはG20サミットです。G7(主要先進国首脳会議)はそれ以前から継続的に行われており、2008年後に新たに始まったわけではありません。
②【誤】
「『大きな政府』を否定し、『小さな政府』を目指すべきとする考え方を修正資本主義という」のは誤りです。修正資本主義(混合経済)の立場は、むしろ政府の積極的な介入を容認し、完全な小さな政府路線とは対照的です。
③【誤】
「国と地方の役割関係を見直した地方分権一括法の施行により、地方公共団体が担う事務は法定受託事務に一本化された」は実情と異なります。地方分権一括法後も自治事務と法定受託事務に区分されており、一本化ではありません。
④【正】
日本の国の予算総額(一般会計)は年々拡大し、2022年度当初予算は100兆円を超える規模となっています。これに該当する選択肢は実際の数値的事実とも合致します。
第4問
問21:正解4
<問題要旨>
ここでは、日本の刑事司法制度に関して、法律や憲法上どのような権利が認められているか、また検察審査会や裁判員制度などがどのように機能しているかを問う問題です。
選択肢では、不起訴処分に対する検察審査会の役割や、裁判員制度における裁判員や検察審査会による関与、そして弁護側が主張する「自白の任意性」や「違法な捜査」の可能性など、刑事訴訟法で定められた手続面が論点となっています。
<選択肢>
①【誤】
「不起訴処分になった事件について、検察審査会の議決に基づいて強制的に起訴される場合、その起訴を担うのは検察官である」という部分は誤りの可能性があります。実際には検察官が不起訴とした事件で検察審査会が起訴を相当と議決し、さらに『起訴議決』が出ると「検察官役の指定弁護士」が公訴を提起する制度が存在します。
②【誤】
「殺人などの重大事件の刑事裁判においては、第一審および控訴審に裁判員が関与する」と書いてあれば誤りとなります。実際に裁判員制度が導入されているのは第一審の合議体であり、控訴審では裁判員は関与しません。
③【誤】
「憲法によれば、被告人に不利益な唯一の証拠が本人の自白であるときでも、有罪判決が下される可能性がある」という点は、むしろ刑訴法上「補強法則」があり、自白のみを証拠として有罪にすることはできないと定められています。よほど特殊な状況でなければ、自白単独では有罪認定が難しいため、この記述は不正確です。
④【正】
「憲法によれば、勾留・拘束された人が、その後に無罪の裁判を受けたときは、国に対して補償を求めることができる」というのは、刑事補償制度に関する正確な説明です。日本国憲法第40条や刑事補償法の規定により、抑留又は拘禁されたのち無罪となった場合には国に補償請求ができます。
問22:正解6
<問題要旨>
西欧の思想家の著作を引用した「ア・イ・ウ」の記述と、近代以降の刑罰の目的・性質を示す「A・B・C」との対応を選ぶ問題です。ここでは、刑罰が「応報」「一般予防(威嚇)」「特別予防(改善や再犯防止)」などの概念と関連付けられているかが焦点となっています。
<選択肢>
(ア・イ・ウ:原文の主張)
- ア:刑罰は社会や犯罪者の利益を促す手段ではなく、あくまで犯した行為に対する処置という色合いをもつ。
- イ:刑罰の目的は他の人を震え上がらせることで威嚇効果をねらう。
- ウ:無条件に即時に実行されねばならない事柄は、改善が不可能な者については無害化し、改善できる者は改善するという考え方。
(A・B・C:刑罰の三つの主な考え方)
- A:刑罰は、罪を再度犯させないための特別予防を重視。
- B:犯罪者に刑罰を科することで他の人々に警告し犯罪を行わせないために科す(一般予防)。
- C:過去に行った犯罪への応報・報いとして刑罰がある。
①~⑤【誤】
対応づけのどこかにずれが生じ、ア・イ・ウがそれぞれ「どの刑罰目的に力点を置いているか」を誤っている可能性があります。
⑥【正】
選択肢⑥のように、アには「C(応報的性質)」、イには「B(一般予防)」、ウには「A(特別予防)」という組み合わせがもっとも整合的です。アでは犯した罪に対しての処罰を重視し、イでは他者を恐れさせる威嚇としての機能、ウでは改善・再犯防止といった特別予防が述べられています。
問23:正解2
<問題要旨>
防犯カメラの設置をめぐる会話文が題材で、撮影される側の承諾・映像の保存や利用の方法など、プライバシーと公共性の兼ね合いが論点となっています。空欄(ア・イ・ウ)に入る文言を、後のA~Cの中から適切に対応づける問題です。ここでは、防犯カメラの映像が「防犯以外の目的」に使われるリスクや、撮影される人の「自己の容姿・姿態を撮影されない自由」がどのように侵害されるかが焦点となります。
<選択肢>
A:「映像が流出したり、防犯以外の目的で利用されたりするリスクを発生させる」
B:「撮影される人の、みだりに自己の容姿・姿態を撮影されない自由を制約する」
C:「公共の場で意見を表明したり、その他さまざまな活動をしたりすることを萎縮させる」
①【誤】
イ=A、ウ=Bなどの組み合わせだと、会話の文脈で行政が「承諾なしに撮影する場合に生じる懸念」は何かを整理すると不自然さが残ります。
②【正】
イ=A、ウ=C の組み合わせは、マエダが述べる「映像の保存・管理」や「無承諾で撮られることによる弊害」をA(流用や流出リスク)に関連づけ、また「撮影しなくても、模型だけでも人々の活動を萎縮させる」という指摘をCと対応させるのが自然です。
③~⑥【誤】
いずれのパターンも「萎縮効果」や「無承諾撮影のリスク」との対応が正しく説明されないため、会話文の流れに不整合が生じやすいです。
問24:正解3
<問題要旨>
基本的人権をめぐる日本の最高裁判所の判例に関する問題です。選択肢には教科書検定制度、わいせつ文書や小説の公表を巡る問題、憲法の私人間効力(直接適用)の可否、そして三菱樹脂事件などの知る権利・思想信条の自由が争われた裁判例が挙げられています。どれが最高裁の実際の判断と合致するかを見極めるのが狙いです。
<選択肢>
①【誤】
「一連の家永教科書訴訟において、最高裁判所は教科書検定が違憲であるという判断を下した」というのは誤りです。最高裁判所は検定制度そのものを違憲と判断していません。
②【誤】
「チャタレーバ事件において、最高裁判所はわいせつ文書の頒布を禁止した刑法の規定を、憲法に違反すると判断した」というのは不正確です。実際にはわいせつ文書の規制を合憲とし、わいせつ性の判断基準を示しました。
③【正】
「『石に泳ぐ魚』事件において、最高裁判所は小説の公表差止を認める判断を下した」というのは事実として知られています。プライバシー権侵害が問題となった裁判例で、公表差止が認められた事例です。
④【誤】
「三菱樹脂訴訟において、最高裁判所は、憲法の規定が私人間に直接適用されると判断した」というのは誤りです。三菱樹脂事件では、憲法の直接適用よりも私的自治との関係などをめぐる判断が示され、私人間効力の範囲については限定的な解釈にとどまりました。
問25:正解2
<問題要旨>
国会や国会議員に関する基礎的知識を問う問題です。衆議院の解散や企業・団体による政治献金、政党内の拘束とマニフェストの違い、政府委員制度など、立法過程や政治資金規正法にかかわる制度が整理されているかがポイントになります。
<選択肢>
①【誤】
「衆議院の解散中に、国に緊急の必要があるときには臨時会が開かれることがある」というのは、解散中で衆議院が存在しない状況では衆議院の招集自体が不可能です。臨時会が開かれる場合は、解散前など他の状況で判断されます。
②【正】
「国会議員などの政治家個人に対して、企業や団体が政治献金をすることは、政治資金規正法によって禁止されている」はおおむね正確な説明です。政治家個人への企業・団体献金は禁止され、政党などを経由する献金のみが一定範囲で認められています。
③【誤】
「国会における法律案などの採決において、政党に所属する議員が党の決定に従わなければならないことをマニフェストという」は誤りです。マニフェストは選挙公約などを指す言葉であり、党議拘束とは別概念です。
④【誤】
「国会における審議を活性化するために現在導入されている制度の一つが、政府委員制度である」というのは逆です。政府委員制度は過去に廃止され、現在では各大臣、副大臣らが国会答弁を行う仕組みになっています。
問26:正解4
<問題要旨>
日本の選挙制度に関する基本的な事柄が問われており、国政選挙における在外投票の扱いや選挙運動のルール、秘密投票の原則、公職選挙法違反の処罰などが論点となっています。
<選択肢>
①【誤】
「国政選挙において、外国に居住する日本人は、法律上、投票できないことになっている」は誤りです。実際には在外選挙制度があり、在外公館投票などの手段によって投票が可能です。
②【誤】
「選挙運動の期間中に、その選挙の候補者が戸別訪問を行うことは、法律上、認められている」も誤りです。公職選挙法で戸別訪問は原則として禁止されています。
③【誤】
「一定の年齢に達した者が、その財産や納税額などにかかわりなく、選挙権を行使できる選挙は、秘密選挙と呼ばれる」は誤りです。秘密選挙は投票内容を秘密にすることであって、財産や納税額と関係があるわけではありません。財産要件を課さない選挙は普通選挙です。
④【正】
「ある候補者の選挙運動の責任者が、その選挙に関して公職選挙法違反で有罪となった場合、候補者の当選が無効となることがある」という内容は、公職選挙法に定める連座制の説明として正しいです。一定の範囲で選挙運動管理責任者等が違反を犯すと連座制が適用され、候補者の当選が無効になる場合があります。
問27:正解5
<問題要旨>
地方自治における条例制定や署名運動・住民投票など、選挙以外の政治参加手段について会話文形式で考察している問題です。市長や地方議会、選挙管理委員会といった機関に対して具体的にどのような請求や手続が可能か(地方自治法に定める直接請求制度など)が論点です。
<選択肢>
A:市長に対して、地方自治法に基づいて、条例の制定を請求する
B:議会の議員に対して、条例の制定を陳情する
C:選挙管理委員会に対して、地方自治法に基づいて、議会の解散を請求する
①~④【誤】
「議会に対して解散を請求する」といった手続が市民に認められていないなど、組み合わせに誤りがある可能性があります。また署名数の要件や請求先の違いが正しく反映されていないと齟齬が生じます。
⑤【正】
ア=C(選挙管理委員会に対して、地方自治法に基づいて、議会の解散を請求)、イ=A(市長に対して条例制定を請求)、ウ=B(議会の議員に対して条例制定を陳情)という手順や請求先が地方自治法の規定に沿っており、会話文の流れにも合致します。住民運動で条例制定を求める方法や議会解散を請求する方法などが整合的に対応しています。
第5問
問28:正解3
<問題要旨>
この問題は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の区別や、それを統計的に捉える手法(等価可処分所得の中央値や貧困線)に関する理解が試されます。表1・表2では、日本の相対的貧困率と子どもの相対的貧困率、さらにOECD加盟国のデータを比較することで、国際的な貧困率の水準や子どもの貧困の現状を把握する必要があります。問題文のメモには、所得や生活コストの違いなどを調整したうえで貧困率を算出していることが示されています。
<選択肢>
①【誤】
「日本での相対的貧困率は2012年、2015年、2018年いずれも15.0%を超えている。また2018年の相対的貧困率の15.4%という値は、等価可処分所得が253万円に満たない者の比率だ」という記述がありそうですが、問題文の数値(表1)を見ると、相対的貧困率15.4%に対応する貧困線が127万円とされているなど、年収換算が大きく異なる可能性が出ます。よって不正確さが含まれると考えられます。
②【誤】
「2012年に比べて2015年、2015年に比べて2018年の子どもの相対的貧困率は低くなっている。10人に1人未満の子どもが貧困線に満たない世帯で生活している」という書きぶりが想定されますが、表を見ると数値の下がり方がそこまで大きくなく、かつ「10人に1人未満」という文言が誇張されている可能性があります。実際に2013年ごろには子どもの貧困率が16%を超えていたことが知られ、2018年に13.5%とはいえ、必ずしも「10人に1人未満」ではない点で整合性が取れません。
③【正】
「子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は、アメリカにおいて[大人が一人の世帯]と[大人が二人以上の世帯]の差が30ポイント以上である。一方、デンマークでは両類型の世帯の差が10ポイント以下である」という記述は、表2に示されるアメリカ・デンマークの数値(大人が一人の世帯の貧困率・二人以上の世帯の貧困率)を比較すれば、「アメリカでの差が約30ポイント以上、デンマークでの差が10ポイント以下」という関係が読み取れます。この説明は表2の数値と合致しています。
④【誤】
「日本での子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は、大人が二人以上の世帯ではOECD加盟国平均との差が5ポイント以内、一方、大人が一人の世帯の相対的貧困率はOECD平均より10ポイント以上低い」などといった記述があるとすれば、表2の比較ではむしろ日本の「大人が一人」の世帯貧困率48.3%はOECD平均31.9%より大幅に高いほか、「大人が二人以上」の世帯貧困率は11.2%で、OECD平均9.4%との間にそこまで大きな差が開いていないわけではないものの、「10ポイント以上低い」などとは言えず、整合性を欠きます。
問29:正解3
<問題要旨>
相対的貧困が広がると、子どもには「教育の機会不平等」と「社会的孤立」といった問題が生じやすいことが挙げられています。問題文中では、それぞれの問題(問題1・問題2)に対応する具体的な取り組み(a・b)を示し、図としてまとめています。選択肢では、提示されたア~エの内容(部活動の補習、家事・介護を担う子どもへの支援、休暇を利用した補習や体験活動の企画など)と、問題1・問題2にそれぞれ対応する官民の取り組みをマッチングさせることが求められます。
<選択肢>
①【誤】
アとイとウのいずれかを組み合わせても、「教育の機会不平等」「社会的孤立」への対応策として的確に割り当てられていないおそれがあります。
②【誤】
アとイとエなど、他の組み合わせでも、どちらが学力補習的支援なのか、どちらが家族関係や友人関係から孤立しがちな子どもをサポートする施策なのかといった対応が合わない可能性があります。
③【正】
「ア」と「ウ」それぞれの取り組みが、問題1(学習支援による教育格差の解消)・問題2(孤立防止・家族の負担軽減など)に合致すると考えられます。たとえば「ア:家事や家族の世話、介護を担う子どもへの訪問相談や支援サービス(ヤングケアラーへの対策)」は、社会的孤立を深める要因を解消する取り組みと対応しやすい。一方、「ウ:多くの子どもが費用を出せずに旅行や遊園地に行けない場合、NPOや自治体の助成金を活用して体験活動を行う」というのは、学びや社会経験の拡充にも繋がる施策であり、教育の機会不平等や生活体験の格差を埋めるアプローチとしても位置づけられます。問題文の図(a・b)との対応づけを踏まえて、選択肢③が適切と判断できます。
④~⑨【誤】
残りの組み合わせは、問題1・問題2それぞれの要点(就学継続の難しさや社会的孤立)に合った取り組みとは言いにくい部分があり、不整合が生じると考えられます。
問30:正解2
<問題要旨>
子どもの貧困問題に対するアプローチとして、「経済的不平等」そのものを是正する施策と、地域の人々や多様な主体が参加する施策の両面が重要とされています。会話文では、フジタ・ハヤシ両者が「再分配の仕組み」と「行政以外のさまざまな担い手による活動」の必要性を論じ、それぞれに該当する内容(AとB)を、ア~エの選択肢から対応づける問題です。
<選択肢>
A:…(経済的不平等を改善するうえで大きな負担がかからないよう配慮しながら、再分配のしくみを整える)
B:…(地域やNPOなど多様な担い手が活動し、子どもの社会参加を促す)
①【誤】
「A=ア/B=ウ」のような場合、消費税や累進課税などの話と福祉分野の集中的なサービス提供という文脈がうまく合致しない恐れがあります。
②【正】
フジタが述べる「再分配の仕組み」をめぐっては、課税のあり方を軸に経済的不平等を是正するという考えが示唆されます(たとえば「ア:所得税の累進性を高める」)。そしてハヤシが言及する「地域の人々が主体的に問題解決へ取り組む」といった活動を指すのが「エ:NPOや学生、高齢者など多様な担い手が福祉活動に参加し、子どもの社会参加を促す」イメージに近いです。よって「A=ア,B=エ」の組み合わせは会話内容と自然に対応します。
③~⑧【誤】
そのほかの組み合わせでは、「消費税の逆進性を利用する」や「福祉を公的機関に集中的に担わせる」などの選択肢が出てきても、会話文で述べられている負担の配慮や地域主体の重要性にそぐわない部分があり、不整合が生じます。