解答
解説
第1問
問1:正解4
<問題要旨>
この問題は、資本主義経済の成立と発展の概要について、産業革命・私有制・市場経済・階級分化・景気循環などを整理し、誤った記述を選ぶ問題です。イギリスで始まった産業革命による工場制手工業から機械工業への転換、資本家と労働者との対立構造を分析したマルクスの理論や、ケインズが提示した不況の原因とその克服策などが論点になっています。
<選択肢>
①【正】 産業革命が18世紀後半にイギリスで起こり、その後ヨーロッパ諸国やアメリカ、日本へ波及した歴史的事実と符合する内容であり、誤りとはいえません。
②【正】 生産手段を私有できることが資本家の利潤追求意欲や資本蓄積への動機を高める、という資本主義の特徴を説明するもので、一般的に正しいといえます。
③【正】 市場経済の下では企業が利潤を求め、その利潤がさらなる投資の源泉になるという説明は、資本主義経済の基本的な仕組みを述べたもので、誤りではありません。
④【誤】 ケインズの理論は主に「総需要の不足」を不況の原因とし、政府による財政支出などで有効需要を創出すべきだと説きました。「供給能力の不足」を主因とするのはむしろ古典派的な考え方と真逆であり、ここではケインズの主張を取り違えているため誤りと判断できます。
問2:正解6
<問題要旨>
日本・韓国・中国の経済発展や政策運営に着目し、2000年・2010年・2020年の実質GDP成長率、一人当たり実質GDP、政府債務残高対GDP比を比較して、どの国がA・B・Cに当たるかを見極める問題です。その上で、それぞれの国に対する説明(ア〜ウ)を組み合わせて、適切な組合せを選ばせています。
- A国:実質GDP成長率が近年低迷、一人当たり実質GDPは比較的高水準、政府債務残高比率が非常に高い
- B国:比較的高い経済成長率と一人当たりGDPの伸長、政府債務の対GDP比は中程度からやや上昇
- C国:成長率が高く、一人当たりGDPは大幅に上昇、政府債務比率も上がってはいるがまだ中程度
- ア:1978年の改革開放政策以降、外資誘致などで経済成長を続けた低・中所得国モデル
- イ:1960年代から工業化を進め、NIESの一角として高所得国となった
- ウ:1950年代〜1973年頃に高度成長を成し遂げたが、1990年代以降は低成長が続き、政府債務の累積赤字が課題
<選択肢(①〜⑥)についての概要>
①~⑤:いずれもA、B、Cに対するア・イ・ウの組み合わせが異なりますが、各国の経済指標や歴史的経緯と合わない部分があります。
⑥【正】 A国→ウ、B国→イ、C国→ア、の組み合わせが、上記のデータや歴史的背景に最も合致します。すなわち、
- A国(ウに相当)=日本(高水準の一人当たりGDP、近年の低成長、政府債務比率が高い)
- B国(イに相当)=韓国(1960年代からの工業化、通貨危機を乗り越えて高所得国となる)
- C国(アに相当)=中国(1978年の改革開放を経て急成長、低・中所得国モデルからの脱却途上)
よって⑥が適切な選択となります。
問3:正解4
<問題要旨>
日本・中国・ナイジェリア・ロシアなど複数国の輸出品目の特徴を踏まえ、それぞれの主要輸出品の割合データ(表ア・表イ・表ウ・表エなど)から、どの国に対応するかを判断させる問題です。加工貿易や工業製品中心の国、エネルギーや鉱物資源中心の国など、それぞれの経済構造が反映されます。
<選択肢>
①~③:いずれも各表と国名が対応しない組み合わせが含まれています。
④【正】 典型的には、たとえば下記のような対応をすると整合します。
- 表ア(原油や石油製品、鉄鋼などが主力):ロシア
- 表イ(機械類・自動車・精密機械など):日本
- 表ウ(原油・液化天然ガス・船舶など):ナイジェリア
- 表エ(機械類・衣類・繊維など):中国
この組み合わせが、各国の特徴的な輸出品目と合致し、正答となります。
問4:正解5
<問題要旨>
日本の地球温暖化対策に関心をもち、政府が宣言した温室効果ガス削減目標や、エネルギー源別の発電量データ(図e・図f)をもとに、空欄ア・イ・ウに当てはまる説明や図表の組み合わせを問う問題です。固定価格買取制度の対象や、化石燃料からの脱却に向けた政策目標の内容などが論点となっています。
<選択肢(①〜⑧)>
それぞれ、
- アに当てはまる記述(a, b):温室効果ガス排出ゼロを目指すのか、吸収量との均衡を目指すのか、など
- イに当てはまる記述(c, d):再生可能エネルギーによる発電か、原子力エネルギーによる発電か
- ウに対応する図表(e か f):2012年と2019年、どちらの発電量構成を示したものか
が違う形で組み合わされています。
①~④:アやイ、ウに当てはめられている記述・図表が政策やデータと矛盾する組み合わせです。
⑤【正】 例えば、「ア=b(温室効果ガスの排出量と植物などによる吸収量との均衡を達成する)」「イ=c(再生可能エネルギーによる発電)」「ウ=図e(2012年時点の発電構成)」というような構成が、問題文中の資料や図表の説明と最も整合すると考えられます。
⑥~⑧:いずれもア・イ・ウの組み合わせや図表選択が資料と矛盾しているとみなされます。
問5:正解1
<問題要旨>
日本国憲法における「権利と義務」の規定について、生徒同士が納税の義務や憲法尊重擁護義務を例に会話する問題です。空欄ア・イに当てはまる条文内容(公務員に課される憲法尊重義務、国民全員に負う納税義務など)の組み合わせを問い、最も適切なものを選ばせています。
<選択肢>
①【正】 ア=a(公務員に課される義務を定めた趣旨)、イ=c(新たな国税を課したり変更したりするには法に基づかなければならないという趣旨)という組み合わせが、問題文の会話で述べられている内容と合います。
②~④【誤】 公務員の義務や納税義務の解釈がずれたり、国税に関する法整備が不要などといった趣旨になっていたりするため、憲法の趣旨とは整合しません。
問6:正解5
<問題要旨>
日本の国際収支(経常収支内の項目)について、サービス収支や第一次・第二次所得収支などの数値推移を比較し、古い年代順にA・B・Cを並べるか、比率が最大かどうかなどを判断する問題です。ここではA・B・Cのデータが「1998年・2008年・2018年」のいずれかを示すものとし、提示された選択肢(ア~ウ)との関係を総合的に考察します。
<選択肢(①〜⑦)>
- ア:A・B・Cにおいて経常収支に対する第一次所得収支の比率が最も大きいのはB
- イ:A・B・Cの貿易・サービス収支額が小さいものから順に並べるとA→B→C
- ウ:A・B・Cを年代の古いものから並べるとC→A→B
①~④:それぞれア・イ・ウの真偽が食い違い、表データと合わない組み合わせになります。
⑤【正】 例として「アとウが正しい」などの形で、A・B・Cの並びと比率の最大項目が最も整合する選択肢が⑤にあたる、と判断できます。
⑥~⑦:やはりアやイ、ウにおける真偽が問題文のデータと合わない組み合わせです。
問7:正解3
<問題要旨>
公正取引委員会などの独立性や、行政委員会の位置づけに関する法令条文をもとに、内閣から完全に独立しているわけではない点や、委員の任命には国会同意が必要な場合がある点などを確認する問題です。空欄ア・イに当てはまる語句・記述の組み合わせを解釈し、最適な選択肢を選ばせています。
<選択肢>
①:ア=a(独立行政法人)、イ=c(両議院による同意を要件としつつ…)などの組み合わせは公正取引委員会の条文と整合しません。
②:ア=a、イ=d(内閣総理大臣が単独で任意に…)も公正取引委員会の実態とは整合しにくいです。
③【正】 ア=b(行政委員会)、イ=c(任命には両議院の同意が要件)、といった組み合わせが、公正取引委員会の位置づけや独立性についての条文説明と最も整合します。
④:ア=b、イ=d では、内閣総理大臣が自由に委員を任命できるといった内容になり、独立性との整合を欠きます。
問8:正解2
<問題要旨>
日本の公務員数の推移を示したグラフを読み取り、石油危機や民営化などの時期区分との関連を考察する問題です。国家公務員等予算定員の大まかな数の減少傾向や、その内訳(一般会計上の予算定員・特別会計上の予算定員・政府関係機関職員数など)がどのように変化してきたかを問うています。
<選択肢>
①【誤】 第一次石油危機より前に「人口千人当たりの国家公務員等予算定員が減少傾向に転じている」という主張は、グラフや時期との整合がない可能性があります。
②【正】 第一次石油危機より前は公務員数が増加基調で、危機後に減少へ転じていく様子が読み取れる、あるいは人口千人当たり定員の推移に変化があった、という点がグラフと合致する説明になりやすいです。
③【誤】 「公務員数の減少分の最大要素は一般会計上の予算定員」という内容が事実と異なるか、他の要因が大きい可能性があり、グラフと合わないとみなされます。
④【誤】 図中のBの時期に郵政民営化が行われた、というのは時期がずれている可能性が高く、グラフと整合しない説明です。
第2問
問9:正解1
<問題要旨>
日本における都市部の過密化と地方部の過疎化・人口減少対策について、バブル崩壊前後の動向や近年の施策を踏まえ、誤った記述を選ぶ問題です。高度経済成長期に活発化した地方から都市への人口移動、少子高齢化が進む地方の社会維持の困難などが背景として問われています。
<選択肢>
①【誤】 地方から都市部への大規模な人口移動は、高度経済成長期からの長期的現象です。バブル崩壊後だけに原因を求めるのは不正確であり、過密・過疎の問題は昭和30〜40年代以降の産業構造変化とも深く関わっています。
②【正】 少子高齢化の進展により人口が減少し、地域社会の維持に困難が生じている事例は各地で確認されます。特に人口の半数以上が高齢者となるような自治体では社会的インフラ維持が深刻な課題です。
③【正】 「まち・ひと・しごと創生」の政策や、全国の地方公共団体による個性ある地域づくりの推進は、実際に行われている施策として知られています。
④【正】 地方の人口減少や高齢化への対応として、医療・商業機能などを中心的地域に集約させて効率的に配置する「コンパクトシティ」構想などが進められています。
問10:正解3
<問題要旨>
日本の地方財政に関する基礎的な制度や現状について問う問題です。ふるさと納税、地方交付税、地方債の許可制などが論点になっています。最も適切な記述を選ぶ形式です。
<選択肢>
①【誤】 地方公共団体の財政再建に関しては、財政健全化法などの法整備が行われています。また財政破綻に陥り、再生団体へ移行した自治体(例:夕張市など)の事例もあるため、「これまで存在しない」とするのは不正確です。
②【誤】 ふるさと納税の控除対象は主に所得税と住民税です。消費税が軽減される仕組みではないため、ここで「消費税が軽減される」という記述は誤りになります。
③【正】 地方交付税(普通交付税)は国税の一定割合を地方公共団体に配分する制度で、原則として使途は特定されず、自治体の自由な裁量で使用できます。これは制度の重要な特徴と合致しています。
④【正/誤の検討】 地方公共団体が地方債を発行する際、財政破綻を回避するための協議・許可制度が設けられています。ただし詳しい条件によっては「許可不要」のものもあり得ますが、制度上原則として国等の関与があるという点は事実です。しかし選択肢③と比べると、③のほうがより「最も適当」な記述とみなされます。
問11:正解4
<問題要旨>
地域再生のために、地方公共団体・非営利組織(NPO)・中小企業など多様な主体が連携する必要性に着目し、各主体に関する基本的な特徴を示した記述a〜cの正否を判断する問題です。正しいものをすべて選び、その組合せを答えさせています。
<選択肢>
a 地方公共団体には、普通地方公共団体(都道府県・市町村)と、特別区・財産区などの特別地方公共団体がある
b 特定非営利活動促進法(NPO法)により、社会的公益活動を行う一定の要件を満たした団体には法人格が付与される
c 日本の中小企業は企業数ベースで約7割、従業員数ベースで約5割、などの数字は実態に比べると過小であり、一般的に中小企業は企業数の大多数(9割以上)を占めるとされる
① a
② b
③ c
④ a と b 【正解】
⑤ a と c
⑥ b と c
⑦ a と b と c
解説:
- a【正】普通地方公共団体と特別地方公共団体に区分されるのは地方自治法の定めに合致します。
- b【正】NPO法で定められた要件を満たすと法人格が付与されることも事実です。
- c【誤】日本の中小企業は企業数が全体の99%超という統計があるほどで、提示の「約7割」はかなり少なく、実情に即していません。
よって正しいのは a と b のみで、選択肢④が適切です。
問12:正解3
<問題要旨>
政府による価格政策(価格を上限・下限などに固定した場合)の需給曲線上の変化を扱う問題です。グラフに示された均衡点と固定価格の位置関係から、実際に売買される数量と「超過需要」「超過供給」のいずれかが生じることを問うています。
<選択肢>
① ア=Q₀,イ=超過需要
② ア=Q₀,イ=超過供給
③ ア=Q₁,イ=超過需要 【正解】
④ ア=Q₁,イ=超過供給
⑤ ア=Q₂,イ=超過需要
⑥ ア=Q₂,イ=超過供給
解説:
- 固定価格が均衡価格より低い場合、需要量が供給量を上回る「超過需要」が生じるのが一般的です。
- そのとき実際に取引される数量は供給量に相当する「Q₁」になると考えられ、超過分の需要は満たされないという構造になります。
- したがって「ア=Q₁, イ=超過需要」の組合せが妥当です。
問13:正解2
<問題要旨>
為替相場への介入には「風に逆らう介入」(相場の過度な動きを抑制し、反転を狙う)と「風に乗る介入」(相場の動きをより推進する)があり、円・ドル為替レートの介入時点を境にグラフがどう変化するかを考える問題です。提示された図ア〜図エのうち、「風に逆らう介入」によってレートがそれまでとは逆方向に動く様子を示しているものを選びます。
<選択肢>
① 図ア
② 図イ 【正解】
③ 図ウ
④ 図エ
解説:
- 「風に逆らう介入」は、為替レートの上昇局面なら下落への転換を図る、あるいは下落局面なら上昇に転じさせる動きです。
- 図イは介入時点で為替レートが大きく変動し、その後に反転するイメージが示されており、「風に逆らう介入」の典型例と判断できます。
問14:正解4
<問題要旨>
地域におけるリサイクル率(再資源化個数÷販売個数)の変化から、どの地域や国全体がリサイクルの活性化を実現しているかを判断する問題です。表では地域Aと地域Bの「基準年」と「基準年の5年後」の販売個数・再資源化個数が示され、その増減がリサイクル率にどう影響しているかが論点です。
<選択肢>
① 地域A
② 地域B
③ 国全体
④ 地域Aと地域B 【正解】
⑤ 地域Aと国全体
⑥ 地域Bと国全体
⑦ 地域Aと地域Bと国全体
解説:
- 地域Aでは、販売個数と再資源化個数の双方が増加しているが、再資源化個数の増加割合が大きく、リサイクル率が向上していると推定できる。
- 地域Bでも、基準年と比べて再資源化個数がより大幅に増え、販売個数との比率が向上している可能性が高い。
- 問題文の条件から、この2地域いずれもリサイクル率の向上がうかがえるため、選択肢④「地域Aと地域B」が「活性化している」と判断されます。
問15:正解2
<問題要旨>
日本国債の保有者構成が2011年から2021年にかけてどう変化したかを示す円グラフをもとに、日銀の国債買い入れ政策や、民間金融機関との関係に注目する問題です。特に日本銀行の保有比率が大幅に上昇している点から、どのような金融取引が行われたかを論じています。
<選択肢>
①【誤】 日本銀行が日本政府から国債を直接引き受ける行為は、財政法で原則禁止されています(例外規定はあるものの通常は行われにくい)。よって「直接引き受けた結果」という表現は事実と乖離します。
②【正】 日本銀行が金融緩和策の一環として市場で民間金融機関から国債を積極的に買い入れた結果、日銀の保有比率が拡大したと考えられます。
③【誤】 「日銀が民間金融機関に国債を売却した結果」というのは保有比率が減少する説明に近いため、実態と逆です。
④【誤】 ①と同様、「日銀が政府発行の国債を直接引き受けた」という説明は一般的な金融慣行や法制の原則と矛盾します。
問16:正解1
<問題要旨>
日本の国内総生産(GDP)の支出面を構成する要素として、民間最終消費支出、民間企業設備投資、政府最終消費支出、総固定資本形成、純輸出などが含まれます。2014年度から2015年度にかけての民間最終消費支出や民間企業設備投資の増加額を比較し、どの側面がより大きいかを考察する問題です。
<選択肢>
①【正】 「国内総生産の支出面に占める構成比として、民間最終消費支出のほうが民間企業設備投資よりも大きい。したがって、2015年度の増加額を比較しても、相対的に民間企業設備投資より民間最終消費支出の増加額が小さくなるとは限らない」といった説明が妥当です。具体的には消費支出の占める比率は大きいが、対前年増加率や増加額を考慮するとこちらのほうが優位にある場合もあります。
②〜④【誤】 いずれも消費支出と設備投資との比較や支出面の比率に関して、問題文や実際のデータと矛盾する内容となっています。
第3問
問17:正解1
<問題要旨>
核兵器に関する諸条約の概要や発効状況などを確認する問題です。部分的核実験禁止条約(PTBT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、核拡散防止条約(NPT)、第一次戦略兵器削減条約(START I)などの特徴を踏まえ、誤った記述を選ばせています。
<選択肢>
①【誤】 部分的核実験禁止条約(PTBT, 1963年)では、「大気圏内・宇宙空間・水中」での核実験が禁止されています。しかし地下核実験については禁じられていません。よって「地下核実験が禁止された」という記述は誤りです。
②【正】 包括的核実験禁止条約(CTBT, 1996年)は、すべての核実験を包括的に禁止するものの、一部の核保有国などが未批准であるため、未発効の状態が続いています。
③【正】 核拡散防止条約(NPT, 1970年発効)では、アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の5か国を「核兵器国」と認め、それ以外の締約国には保有を認めない形をとります。
④【正】 第一次戦略兵器削減条約(START I, 1991年調印)では、大陸間弾道ミサイルなどの戦略核兵器の削減が定められました。これは戦略核弾頭数の大幅削減を双方に義務づけるものです。
問18:正解4
<問題要旨>
中東地域の紛争と和平交渉(特にイスラエルとパレスチナの関係)における歴史的合意や係争地の名称、パレスチナ自治政府およびイスラエル政府などの名称を正しく組み合わせる問題です。オスロ合意(1993年)やゴラン高原、ヨルダン川西岸、パレスチナ自治政府、イスラエル政府といった要素が論点になります。
<選択肢>
① ア:オスロ合意 イ:ゴラン高原 ウ:パレスチナ自治政府
② ア:オスロ合意 イ:ゴラン高原 ウ:イスラエル政府
③ ア:オスロ合意 イ:ヨルダン川西岸 ウ:パレスチナ自治政府
④ ア:オスロ合意 イ:ヨルダン川西岸 ウ:イスラエル政府【正】
⑤ ア:プラザ合意 イ:ゴラン高原 ウ:パレスチナ自治政府
⑥ ア:プラザ合意 イ:ゴラン高原 ウ:イスラエル政府
⑦ ア:プラザ合意 イ:ヨルダン川西岸 ウ:パレスチナ自治政府
⑧ ア:プラザ合意 イ:ヨルダン川西岸 ウ:イスラエル政府
解説:
- ア:イスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間で締結された和平協定は「オスロ合意」と呼ばれます。
- イ:「ヨルダン川西岸」はパレスチナ人が多く居住し、暫定自治の対象ともされてきた主要地域の一つです。
- ウ:紛争当事国としてイスラエル政府が挙がる場面が会話中に言及されている場合、ここで「パレスチナ自治政府」か「イスラエル政府」かを判別する文脈があり、本問ではイスラエル政府のほうが当てはまる内容になっています。
問19:正解3
<問題要旨>
国際社会における戦争の違法化や平和維持の枠組みを確認する問題です。勢力均衡や集団安全保障などの考え方、不戦条約や国際人道法の成立経緯と目的を取り上げています。空欄ア・イに当てはまる語句の組合せを選ぶ形式です。
<選択肢>
① ア:勢力均衡 イ:不戦条約
② ア:勢力均衡 イ:国際人道法
③ ア:集団安全保障 イ:不戦条約【正】
④ ア:集団安全保障 イ:国際人道法
解説:
- ア(集団安全保障)は、国際連盟や国際連合などが採用してきた「加盟国全体で侵略国を制裁し、平和を維持する」という理念に該当します。
- イ(不戦条約, 1928年)=ケロッグ=ブリアン条約は、自国の政策手段としての戦争放棄を目的とした条約です。
- よって「集団安全保障」と「不戦条約」を組み合わせた③が適切です。
問20:正解4
<問題要旨>
日本の安全保障に関する近年の制度や取り組みについて、もっとも適切な記述を選ぶ問題です。周辺事態法やPKO協力法、防衛装備移転三原則、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置状況などが主に論点となっています。
<選択肢>
①【誤】 重要影響事態法による自衛隊の海外派遣は、必ずしも日本の周辺地域のみを対象とするとは限らず、他国軍への後方支援なども念頭におかれています。
②【誤】 PKO協力法では武器使用の要件が厳格に制限されていますが、それは「自衛隊員の防護のためだけに認められる」わけではなく、改正を経て駆けつけ警護など範囲が拡大されました。
③【誤】 日本は「武器輸出三原則」を撤廃し、防衛装備移転三原則へと転換しましたが、すべて自由化されたわけではなく一定の要件で防衛装備品の海外移転を可能としたものです。
④【正】 日本版NSCにあたる国家安全保障会議は内閣総理大臣を議長とし、重大な安全保障事項を協議する機関として設置されました。これは2013年に設置法が成立し、実際に運用されています。
問21:正解2
<問題要旨>
「委任の連鎖」と「責任の連鎖」という概念を踏まえ、憲法上の仕組み(国会や内閣に対する公開の義務、弾劾裁判所の設置、内閣総理大臣の報告義務など)をどのように対応させるかを問う問題です。空欄ア・イに当てはまる記述の組合せを選びます。
<選択肢>
① ア=a,イ=c
② ア=a,イ=d【正】
③ ア=b,イ=c
④ ア=b,イ=d
ここで:
- a:両議院の会議の公開と会議録の公表
- b:国の収入支出の決算の提出
- c:弾劾裁判所の設置
- d:一般国務についての内閣総理大臣の報告
解説:
- 「矢印アで示された責任」は国会に対する説明責任や公表の義務(会議録等)が関係しやすく、aが該当すると考えられます。
- 「矢印イで示された責任」は内閣が国会や国民に一般国務を報告するなど、行政の動きを明らかにする仕組みであり、dとの組み合わせが自然です。
- よって②「ア=a,イ=d」が最も筋が通っています。
問22:正解6
<問題要旨>
少年法改正に関するポイントをもとに、(ア)事件が最初に送られる裁判所、(イ)特定の重大事件で逆送がなされる先、(ウ)少年の年齢要件が何歳なのか、を正しく組み合わせる問題です。2021年改正で「18歳以上20歳未満の者」を特定少年とするなど、少年法の年齢区分が変更された点が論点になっています。
<選択肢>
① ア=地方裁判所 イ=検察官 ウ=14歳
② ア=地方裁判所 イ=検察官 ウ=18歳
③ ア=地方裁判所 イ=弁護士 ウ=14歳
④ ア=地方裁判所 イ=弁護士 ウ=18歳
⑤ ア=家庭裁判所 イ=検察官 ウ=14歳
⑥ ア=家庭裁判所 イ=検察官 ウ=18歳【正】
⑦ ア=家庭裁判所 イ=弁護士 ウ=14歳
⑧ ア=家庭裁判所 イ=弁護士 ウ=18歳
解説:
- 少年法では、原則として少年事件は「家庭裁判所」に送致され、そこで審判等が行われます(アは家庭裁判所)。
- 重大犯罪の場合などで「逆送」される先は検察官(イ=検察官)であり、成人同様の刑事手続きにかけられるケースがあります。
- 改正により、18歳や19歳の者を「特定少年」と位置づけ、保護処分などの在り方に一定の変更がなされました(ウ=18歳に関する規定)。
- 以上から⑥がもっとも適切です。
問23:正解3
<問題要旨>
最高裁判所の判例例集から、個人の表現の自由や報道機関の自由が憲法21条の下でどのように保護されるかを読み解き、判例文から導かれる結論として最も適切なものを選ぶ問題です。民主主義社会における言論の重要性や、公共的事項に関わる報道の意義がポイントとなっています。
<選択肢>
①【誤】 「民主主義維持のためだけに個人の表現の自由がある」と限定する表現はやや極端です。憲法21条は個人の利益に結びつく自己実現の面も重視しています。
②【誤】 公共的事項に関わらない個人の主義主張であっても、基本的には憲法21条で広く保障されると考えられます。
③【正】 報道機関の報道の自由が国民の知る権利に資すること、さらにそれが憲法21条によって保障されている旨が判例文の趣旨と合致します。
④【誤】 「思想の表明ではない単なる事実の伝達は21条で保護されない」とまではいえません。事実を伝達する行為も広い意味で「表現」に含まれると解釈されます。
問24:正解2
<問題要旨>
衆議院と参議院の権能や任期差、憲法改正案の発議、条約の承認など、二院制における優越の仕組みを問う問題です。会話中では衆議院のほうが任期が短く解散もあるため国民の意思を反映しやすいとされる一方、必ずしも常に衆議院が優先するわけではないなど、具体例(条約の承認や憲法改正の発案)を踏まえて正しい組合せを選ばせています。
<選択肢>
① ア=衆議院 イ=衆議院の議決 ウ=条約締結の承認
② ア=衆議院 イ=衆議院の議決 ウ=憲法改正の提案【正】
③ ア=衆議院 イ=参議院の議決 ウ=条約締結の承認
④ ア=衆議院 イ=参議院の議決 ウ=憲法改正の提案
⑤ ア=参議院 イ=衆議院の議決 ウ=条約締結の承認
⑥ ア=参議院 イ=衆議院の議決 ウ=憲法改正の提案
⑦ ア=参議院 イ=参議院の議決 ウ=条約締結の承認
⑧ ア=参議院 イ=参議院の議決 ウ=憲法改正の提案
解説:
- ア(衆議院)は任期が短く解散もある院として言及されています。
- イ(衆議院の議決)を最終的な決定として扱う場合は、通常、予算や条約の承認、内閣総理大臣の指名などで衆議院優越が認められますが、会話中では「憲法改正の提案」に触れつつ「必ずしも衆院優先というわけではない」という流れにも言及しているため、やや注意が必要です。
- ウ(憲法改正の提案)は両院それぞれ総議員の3分の2以上の賛成を要するため、衆参どちらか一方だけが決定権をもつわけではありません。ただ、問題文の会話構成上、「ウ=憲法改正の提案」の例を挙げているものが最も整合的と考えられます。
- 結果として②「ア=衆議院,イ=衆議院の議決,ウ=憲法改正の提案」が会話内容に最も適しています。
第4問
問25:正解4
<問題要旨>
国際的な環境・開発関連の会議(国連人間環境会議、国連環境開発会議、持続可能な開発に関する世界首脳会議など)の開催年を古い順に並べる問題です。スライドa〜dに示されたそれぞれの会議がいつ開催されたかを正しく時系列順に整理することが問われています。
<選択肢>
① a → b → c → d
② a → b → d → c
③ b → a → c → d
④ b → a → d → c 【正】
⑤ c → d → a → b
⑥ c → d → b → a
⑦ d → c → a → b
⑧ d → c → b → a
【理由説明】
- b「国連人間環境会議」は1972年にストックホルムで開催され、「かけがえのない地球」のスローガンのもと、人間環境宣言を採択しました。
- a「国連環境開発会議(地球サミット)」は1992年リオデジャネイロで開かれ、アジェンダ21を採択し「持続可能な開発」が大きなテーマとなりました。
- d「第55回国連総会」は2000年に国連ミレニアム宣言を採択し、後にMDGs(ミレニアム開発目標)が設定される基礎となりました。
- c「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)」は2002年に開催され、ヨハネスブルク宣言を採択しました。
この年表に当てはめると、1972年→1992年→2000年→2002年の順で「b → a → d → c」が最も整合します。
問26:正解4
<問題要旨>
地球温暖化対策のために採択された「京都議定書(1997年)」と「パリ協定(2015年)」の位置づけや内容を比較し、記述の正誤を判断する問題です。先進国と途上国の責任や削減義務、今後の目標設定のあり方などが論点です。
<選択肢>
①【誤】 京都議定書に「共通だが差異ある責任」の理念が直接明示されているわけではなく、どの国にも一律に責任を負わせているわけでもありません。またパリ協定は、すべての締約国に削減義務が課せられる仕組みを導入しているわけではなく、NDC(自主的貢献)という形で各国が目標を提出します。
②【誤】 京都議定書もパリ協定も「地球環境保護を将来世代の発展にとって不可欠」と位置づける理念に立っていますが、いずれの協定でも先進国と途上国に対する温室効果ガス削減義務が完全に同一というわけではありません。
③【誤】 京都議定書では温室効果ガス削減を先進国だけに数値約束として課す形でしたが、パリ協定では将来世代への配慮も踏まえ、すべての国がNDCを提出する方式に移行しています。けれども「一律の温室効果ガス削減目標」ではなく、各国が自主的に設定するという枠組みです。
④【正】 パリ協定では、先進国だけでなくすべての締約国が温室効果ガス削減に取り組む仕組みへ移行しました。一方で、先進国には発展途上国向けの資金支援を行う義務など「共通だが差異ある責任」の考え方が引き継がれています。京都議定書とは異なる形で、広く参加を促しつつ柔軟性を持たせる協定となっている点が正しく指摘されています。
問27:正解2
<問題要旨>
SDGsの達成に貢献する国際機関の仕組みを調べる中で、人権や労働環境を巡る国連機関、国際労働機関(ILO)などの特徴が正しく書かれているかを判断する問題です。国連安保理の常任理事国や、人権理事会(あるいは人権規約委員会)などが登場します。
<選択肢>
①【誤】 「人権規約委員会」は自由権規約や社会権規約など条約の履行を監視する機関で、すべての「通報を検討できる」わけではありません。また「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」の選択議定書を批准した国にのみ通報制度が適用されるなど、細かい要件があります。
②【正】 人権理事会では、重大な人権侵害を行った国・組織に対しては総会決議によって加盟資格停止などの措置が取られる場合があります。このように人権保護のための監視と是正機能を有する点が特徴です。
③【誤】 ILOは三者構成(政府・労働者・使用者)による運営が原則ですが、選択肢の文面では「労働者の声が反映されるように政府代表と労働者代表の二者構成」としており、使用者の代表が欠落しているため事実と異なります。
④【誤】 国連安全保障理事会の常任理事国は主要五か国(米・英・仏・露・中)ですが、これは分担金上位5か国と必ずしも一致するわけではありません。日本などは分担金上位国ですが常任理事国ではないことから、誤りです。
問28:正解3
<問題要旨>
SDGsの達成を目指す企業の取り組みとして、グローバル規模の経営資源の流れを示す用語、および途上国の労働者を公正な条件で支援する取引形態を示す用語を正しく当てはめる問題です。
<選択肢>
アに当てはまる語句
a:セーフティネット
b:サプライチェーン
イに当てはまる語句
c:フェアトレード
d:メセナ
① ア=a,イ=c
② ア=a,イ=d
③ ア=b,イ=c 【正】
④ ア=b,イ=d
【理由説明】
- サプライチェーン(b)は「原材料の調達から消費者の手元に届くまでの一連の流れ」を指します。選択文にも「原材料の調達から消費者に至るまで…が複雑化」とあるので、ここに該当するのが自然です。
- フェアトレード(c)は「発展途上国の原材料や製品を公正な価格で継続的に取引し、生活改善や自立をめざす取り組み」です。記述にもその文言があるため合致します。
- よってア=b(サプライチェーン)、イ=c(フェアトレード)が最適です。
問29:正解1
<問題要旨>
各国(アルゼンチン・インドネシア・南アフリカ)における対外債務残高や、それを対輸出額比・対GNI比で比較し、債務負担の度合いがどう変化しているかを読み取る問題です。選択肢a〜cの記述がいずれ正しいか誤りかを判断し、正しいものをすべて選ぶ形式です。
<選択肢>
a アルゼンチンでは2017年から2018年にかけて対外債務残高・対輸出額比・対GNI比すべてが上昇しており、債務負担が高まったと判断できる【正】
b インドネシアでは対外債務残高が増加、しかし対輸出額比や対GNI比が上昇しているかどうかはデータ的に低下傾向が示唆されるため、債務負担が「高まった」とは断定しにくい【誤】
c 南アフリカでは2017年から2018年にかけて対外債務残高がわずかに減少ないし横ばいに近く、対輸出額比と対GNI比も低下傾向。債務負担度合いは上がったとはいえない【誤】
① a 【正】
② b
③ c
④ a と b
⑤ a と c
⑥ b と c
⑦ a と b と c
【理由説明】
- アルゼンチン(a)のみが問題文に適合し、bとcは本文中の数値と整合しません。そのため「a」だけが正しく、選択肢①となります。
問30:正解2
<問題要旨>
SDGsの特性(目標が広範にわたり、各国の自主性に委ねられているなど)について生徒同士が議論している会話のなかで、空欄ア・イに当てはまる記述を選ぶ問題です。SDGsの課題に対して「国の対応能力に限界がある」「だからこそ国際社会と連携し支援体制を作ることが重要だ」といった趣旨、また「各国それぞれが優先課題を決めて目標を追求する仕組みが作られた」といった趣旨が含まれます。
<選択肢(アに当てはまる記述 a, b / イに当てはまる記述 c, d)>
① ア=a,イ=c
② ア=a,イ=d 【正】
③ ア=b,イ=c
④ ア=b,イ=d
【理由説明】
- a:SDGsは国際社会がサポートし合う重要性を強調しつつ、各国の自主的な取り組みを促進する立場を述べている内容に合致します。
- d:各国にはそれぞれ優先すべき課題があり、達成方法を委ねる仕組みにしているため、「包括的目標を示したうえで、どう達成するかは各国の裁量に任せている」という説明と合致します。
- よってア=a、イ=d の組み合わせが最も当てはまるため、選択肢②が適切と考えられます。