解答
解説
第1問
問1:正解③
<問題要旨>
イスラーム、ヒンドゥー教、仏教、ユダヤ教の各宗教における教義や規範に関する基本的な知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
イスラームは、ムハンマドが唯一神アッラーの啓示を受けたことで成立した宗教であり、それ以前のアラビア社会で信仰されていた多神教的な伝統を否定するものです。 したがって、以前の伝統を遵守するよう命じられているという記述は誤りです。
②【誤】
ヒンドゥー教は、バラモン教から発展した宗教であり、ヴァルナ(四姓)を中心とする身分制度を否定していません。 むしろ、輪廻思想と結びつき、ダルマ(社会的義務)を果たすことを重視します。したがって、全ての人を平等とみなしたという記述は誤りです。
③【正】
仏教において、在家信者が守るべき基本的な戒律として五戒(不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒)があります。出家した修行者(比丘・比丘尼)は、これに加えてさらに多くの、より厳格な戒律(具足戒)を守ることが求められます。 したがって、この記述は正しいです。
④【誤】
ユダヤ教の十戒には、「わたしのほかに、ほかの神々があってはならない」という唯一神への信仰が含まれています。 しかし、「救世主(メシア)を待望すべきこと」は十戒には含まれていません。メシア待望はユダヤ教の重要な思想ですが、十戒の条文ではありません。したがって、この記述は誤りです。
問2:正解④
<問題要旨>
古代ギリシア・ローマ思想、古代インド思想、古代中国思想、ユダヤ教における思想や生き方に関する知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
パリサイ派は、モーセの律法を厳格に解釈し、その遵守を人々に求める立場でした。 律法を厳格に規定しようとする態度を批判し、柔軟な生き方を求めたのはイエスです。したがって、この記述は誤りです。
②【誤】
アリストテレスは、観照(テオーリア)的な生活、すなわち知性を働かせて真理を探究する生活こそが最高の幸福をもたらすと考えました。 倫理的徳に基づいた政治的生活も重要視しましたが、それが「最も望ましい生き方」であり「最高の幸福」であるとはしていません。したがって、この記述は誤りです。
③【誤】
ジャイナ教は、徹底した不殺生(アヒンサー)の戒律で知られています。 農業は土中の生物を殺傷する可能性があるため、ジャイナ教の信者の多くは商業に従事しました。したがって、この記述は誤りです。
④【正】
老子は、人為的なものを排し、自然のままにあるがままに生きる「無為自然」を理想としました。 彼は、人々が素朴で質素な生活に満足する小さな国家(小国寡民)が理想的なあり方だと説きました。したがって、この記述は正しいです。
問3:正解②
<問題要旨>
荀子の思想、特に性悪説と礼治主義について、資料文を正確に読解し、孟子の性善説との対比を理解できているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
資料文で荀子は、孟子が「性と偽の区別を理解していない」と批判しています。 荀子によれば、「性」は生まれつきのものであり、「偽(作為)」は学習など後天的な努力によって獲得されるものです。孟子が批判されているのは、後天的に獲得される「偽」を、生得的な「性」と混同している点です。人間が矯正し得ない欲望を持つという荀子の思想は正しいですが、孟子批判の論点が異なります。
②【正】
荀子は、人間の生まれつきの性質(性)は欲望に満ちた悪であるが、後天的な学習や努力(偽)によって礼儀を身につけ、善い人間になることができる(化性起偽)と説きました。 資料文では、孟子の性善説を「性と偽の区別を理解していない」と批判し、礼儀は聖人の「偽」から生じたものであると述べており、後天的に習得可能であることを示しています。したがって、この記述は正しいです。
③【誤】
荀子は、後天的に獲得される「偽」としての礼儀を非常に重視しました。 これによって人間は矯正され、社会秩序が保たれると考えたため、「偽」が不要だと述べているわけではありません。むしろ、「偽」こそが重要であると説いています。したがって、この記述は誤りです。
④【誤】
荀子は、人間の本性は邪悪(性悪)であると考えましたが、教育や学習(偽)を通じて聖人にもなれる、つまり善を身に付けることは可能であるとしました。 資料の末尾にも「普通の人でも、禹のようになることができる」とあり、善を身につけられないとしているわけではありません。したがって、この記述は誤りです。
問4:正解②
<問題要旨>
資料1のソフィストの思想と資料2のキケロの思想を比較読解し、両者の自然観や正義観の違いを把握した上で、それらが西洋思想史の中でどのように位置づけられるかを理解することが求められています。
<選択肢>
①【誤】
cが「功利主義」である点が誤りです。キケロの思想は、ストア派の影響を受けており、理性が支配する自然(自然法)に従って生きることを重視します。これは、時代を超えて普遍的に妥当する法が存在すると考える「自然法思想」の源流の一つです。 功利主義は、社会全体の快楽や幸福を最大化することを善とする近代の思想であり、文脈に合いません。
②【正】
a:資料1でソフィストは、「他人より多く持とうと欲張る」のが「自然本性」だとしており、これは「人間の欲求」を指します。 b:資料2でキケロは、「自己利益のために他人から略奪し他人を害する」ことを批判しており、これは「自己の利益」の追求を指します。 c:キケロが依拠したストア派の思想は、宇宙全体を貫く理法(ロゴス)としての自然法に従うことを説き、後の「自然法思想」の重要な源流となりました。 したがって、この組合せは正しいです。
③【誤】
bが「社会の利益」である点が誤りです。資料2は「自己利益のために他人から略奪し他人を害する」こと、つまり「自己の利益」の過剰な追求を問題にしています。
④【誤】
aが「平等の追求」である点が誤りです。資料1のソフィストは、法によって強制される「平等の尊重」を、自然本性である欲求を抑圧するものとして否定的に捉えています。 したがって、彼らが重視しているのは「人間の欲求」です。
⑤【誤】
aが「平等の追求」、bが「社会の利益」、cが「功利主義」である点が誤りです。上記②、③、④の解説を参照してください。
⑥【誤】
aが「平等の追求」、bが「社会の利益」である点が誤りです。上記③、④の解説を参照してください。
第2問
問1:正解③
<問題要旨>
平安時代の仏教者である最澄と空也の思想と活動に関する基本的な知識が問われています。
<選択肢>
ア【誤】
最澄は『法華経』の精神に基づき、「一切衆生悉有仏性(すべての生きとし生けるものは仏となる可能性を持つ)」という一乗思想を説きました。 悟りの能力によって成仏できる人とできない人を区別するのではなく、すべての人が成仏できると主張した点が特徴です。したがって、この記述は誤りです。
イ【正】
空也は、平安時代中期の僧で、「市聖(いちのひじり)」と呼ばれました。諸国を遍歴しながら、庶民に浄土教を広め、念仏を勧めました。 また、社会事業にも尽力し、道や橋を造り、井戸を掘るなど、人々のために活動したことで知られています。したがって、この記述は正しいです。
組合せとして、アが誤、イが正であるため、③が正解となります。
問2:正解④
<問題要旨>
日本神話における神々の性格や行動、およびそれに対する和辻哲郎の解釈についての理解が問われています。
<選択肢>
①【誤】
『古事記』の国産みの場面で、イザナキとイザナミは天つ神に「この漂える国を修理(おさ)め固め成せ」と命じられます。 最初の子(ヒルコ)が不具であった原因を天つ神に問い、女から先に声をかけたことが原因だと教えられ、その通りにやり直して成功します。したがって、神の意向を問い、それに従っており、反発したという記述は誤りです。
②【誤】
日本の神話における「天つ神」は、絶対的な人格神ではなく、神々が合議(神議り)によって物事を決定する場面が多く見られます。 例えば、アマテラスが天の岩戸に隠れた際には、八百万の神々が集まって相談しています。したがって、全てを自身の判断で決定したという記述は誤りです。
③【誤】
和辻哲郎は、アマテラスが高天原の主宰神でありながら、同時に天つ神の神意を伺う存在でもあることを「祀るとともに祀られる神」と表現し、その二重の性格に日本の神の尊貴さの根源を見出しました。 尊貴さを否定したわけではありません。したがって、この記述は誤りです。
④【正】
日本神話において、スサノヲが高天原へ行く際に、アマテラスはスサノヲが国を奪いに来たのではないかと疑います。そこで、スサノヲは身の潔白を証明するために誓約(うけい)を行い、清き明き心があることを示しました。 したがって、この記述は正しいです。
問3:正解②
<問題要旨>
江戸時代の儒学者、伊藤仁斎の思想、特に彼が説いた「仁」の解釈について、具体的な人間関係に即して理解できているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
伊藤仁斎は、外面的な「礼儀」よりも、内面からあふれ出る誠実な愛情としての「仁」を重視しました。 仁斎の思想は、形式化した朱子学を批判し、実践的な古義学を確立した点に特徴があります。したがって、礼儀が「仁」であるとするこの記述は、仁斎の思想とは異なります。
②【正】
伊藤仁斎は、最も身近な人間関係(親子、兄弟など)の中にこそ実践すべき道徳の根本があると考えました。 彼が説く「仁」とは、誠実な心(誠)に基づいた他者への具体的な愛情(愛)であり、資料にある「我よく人を愛すれば、人またよく我を愛す」という相互的な思いやりとして表現されます。したがって、日常の間柄における思いやりが「仁」であるというこの記述は、仁斎の思想を正しく説明しています。
③【誤】
「私利私欲を厳しくつつしむ」という考え方は、欲望を理で抑えることを説く朱子学の「存天理、滅人欲」に近いものです。 伊藤仁斎は、人間の自然な情愛を肯定的に捉え、それを道徳の基礎に置きました。したがって、欲望から完全に脱することを前提とするこの記述は、仁斎の思想とは異なります。
④【誤】
「上下関係の秩序を重んじ、その道理と心を一体にする」という考え方は、理を重視する朱子学的な発想に近いものです。 伊藤仁斎は、観念的な「理」よりも、具体的な人間関係における実践的な「仁」を重視しました。したがって、この記述は仁斎の思想とは異なります。
問4:正解①
<問題要旨>
日記と資料文を読解し、Cの思考の変遷と、三木清の読書論を結びつけて理解することが求められています。
<選択肢>
a:Cは日記の中で、当初は問いを「他者に問うもの」と考えていましたが、西田幾多郎の哲学に触れ、「自分自身に向けて問う」自問自答も「正真正銘の問いだ」と気づきます。 そして7月17日の日記で、「吉田松陰の牢獄での営みも、西田幾多郎の自分自身への問いも、私の自問自答も、問いであるという点では同じ」だと結論付けています。 したがって、「他者にに向けられた問いも自問自答も問いであることは同じである」はCの気づきと合致しています。
b:三木清の資料では、読書における対話について、「問から答へ、答は更に問を生み、問答は限りなく進展してゆく」と述べられています。 これは、問いが答えを生み、その答えがまた新たな問いを生むという、問いの連鎖的な性質を指摘しています。したがって、「問いは次々に更なる新たな問いを生み出していく」は資料の内容と合致しています。
以上より、aとbの組合せとして①が最も適当です。
第3問
問1:正解⑤
<問題要旨>
近代ヨーロッパの思想家であるベンサム、ロック、トマス・アクィナス、モンテスキュー、ルソーの思想を、それぞれのキーワード(制裁、抵抗権・革命権、神の法など)と正しく結びつけられるかが問われています。
<選択肢>
ア:行為の結果として生じる快楽と苦痛の計算によって、善悪を判断する功利主義を唱えたのはベンサムです。彼は、人々の行為を規制する力として、物理的、政治的(法律的)、道徳的、宗教的という四つの制裁(サンクション)を挙げました。
イ:社会契約説を唱え、人々は自然権を保障するために政府に権力を信託するが、政府がその信託に反して権力を濫用した場合には、人々は抵抗権や革命権を行使して新たな政府を樹立できると考えたのはロックです。
ウ:中世ヨーロッパのスコラ哲学を大成したトマス・アクィナスは、神が世界を支配する「永遠法」があり、人間は理性によってその一部である「自然法」を認識できるとしました。 彼は、神の法(啓示法)と理性が捉える法は矛盾せず、調和すると考えました。
以上のことから、アはベンサム、イはロック、ウはトマス・アクィナスとなり、正しい組合せは⑤です。
問2:正解③
<問題要旨>
カントの道徳哲学における「自由」の概念と、彼が理想とした「目的の王国」についての正確な理解が問われています。
<選択肢>
①【誤】
カントは、経験論(感覚や知覚から知識が生まれるとする考え)と合理論を統合しましたが、道徳の根拠を経験から導き出すことを否定しました。 彼は、経験によらない純粋な理性のうちに道徳法則を見出しました。
②【誤】
カントによれば、道徳法則は「自分だけに妥当する主観的な行動原則(格率)」ではなく、誰もが従うべき普遍的なものでなければなりません(定言命法)。 「君の格率が、君の意志によって普遍的な自然法則となるかのように行為せよ」という形式がその一例です。
③【正】
カントにとっての自由(自律)とは、感覚的な欲望や衝動に支配されることなく、自らの理性が見出した普遍的な道徳法則に、自発的に従うことを意味します。 また、彼が理想とした「目的の王国」とは、すべての人々が理性的存在として互いを単なる手段としてだけでなく、同時に目的として尊重しあうような共同体のことです。 この記述はカントの思想を正しく説明しています。
④【誤】
カントにおいて、自由は「自然の必然的法則」から独立していること(自律)を意味します。 自然法則に従うことは、他律であり自由ではありません。また、「公共の利益」や「普遍的な意志」といった概念は、カントよりもルソーの思想と親和性が高いです。
問3:正解①
<問題要旨>
ドイツ観念論の哲学者シェリングの思想について、提示された資料を読解し、人間における自由と善悪の関係を正しく理解することが求められています。
<選択肢>
①【正】
資料には「人間は、善と悪とに向かう自己運動の源泉を等しく自分の内に持つ」「人間は分岐点に立っている」「人間が何を選ぼうとも、それは人間がなしたことになる」とあります。 これは、人間が善悪両方への可能性を内に秘めており、どちらか一方を選択する決断を迫られる存在であることを示しています。この選択の可能性こそが、シェリングの言う「人間的自由」の本質です。したがって、この記述は資料の内容を正しく要約しています。
②【誤】
資料には、善と悪への可能性を「等しく自分の内に持つ」と明記されており、「悪へ向かう傾向をより強く持つ」とは書かれていません。 したがって、この記述は誤りです。
③【誤】
資料は「人間が何を選ぼうとも、それは人間がなしたことになる」と述べており、人間が自ら選び決断する力を持っていることを前提としています。 「決断する力はない」という記述は、資料の内容と矛盾します。
④【誤】
資料には、善と悪への可能性を「等しく」持つと書かれており、「悪へ向かう傾向をより強く持つ」とはされていません。 したがって、この記述は誤りです。
問4:正解①
<問題要旨>
これまでの会話全体を振り返り、D、E、Fの議論を通じて深められた「自由」についての理解をまとめる問題です。準備段階の考察とディスカッション後の気づきを区別して整理する必要があります。
<選択肢>
a:準備段階の会話で、DとEは「自由は単に制約から解放されることだけではない」し、他者との共存のためには「規範や法みたいなある種の制約が必要」で、それによって「他者との対立から合意に向かう調整」がなされると話し合っています。 これは、自由が「他者の自己決定との調整をも含むものだ」と捉えていることを示しています。
b:ディスカッションの中で、Fは自由に伴う不安から「誰かに決めてほしい気もしてしまう」と吐露し、Dも「自由を持て余している弱い自分」を認めます。 それに対しEは、「自分の弱さを素直に認める」「迷いながらも下した選択は、…一層貴重に思える」と述べ、Fも「自由を手放さず、迷いながら自分で決定していきたい」と応じます。 これは、「自らの迷いや弱さと向き合いながら、それらを完全に払拭できなくても、自由を放棄しないこと」が重要だと考えるようになったことを示しています。
以上より、aとbの組合せとして①が最も適当です。
第4問
問1:正解②
<問題要旨>
青年期の発達課題である「自我の目覚め」や「心理的離乳」について論じた思想家、シュプランガーとホリングワースの学説を正しく特定できるかが問われています。
<選択肢>
ア:青年期を、自己の内面を発見し、それゆえに深い孤独感と他者からの理解を渇望する時期として捉え、「自我の目覚め」と表現したのは、ドイツの哲学者・心理学者のシュプランガーです。 イ:青年期に、親への精神的な依存から脱却し、一人の独立した個人として歩み始める過程を、乳離れになぞらえて「心理的離乳」と呼んだのは、アメリカの心理学者ホリングワースです。
したがって、アがシュプランガー、イがホリングワースとなる②が正解です。サリヴァンは対人関係論、マーガレット・ミードは文化人類学的な視点から青年期を論じた人物であり、異なります。
問2:正解③
<問題要旨>
アではアマルティア・センの潜在能力(ケイパビリティ)アプローチ、イでは開発途上国における食糧問題の原因についての知識が問われています。
<選択肢>
ア【誤】
アマルティア・センが提唱した潜在能力(ケイパビリティ)とは、個人がどのような状態にあるか(機能の集合)というだけでなく、「どのような人間であるか、何をすることができるか」という選択の可能性を含む概念です。 彼は、貧困とはこの潜在能力が欠如した状態であるとし、その拡大が重要だと説きました。記述にある「国家の機能の集合である潜在能力」という部分が誤りです。潜在能力はあくまで個人のものです。
イ【正】
開発途上国の多くは、植民地時代の経済構造を引きずり、先進国向けのコーヒーやカカオ、ゴムといった商品作物(モノカルチャー経済)の生産に偏りがちです。 その結果、自国民向けの食糧生産が不足し、食糧価格の変動や輸出価格の下落によって飢餓に苦しむ一因となっています。したがって、この記述は正しいです。
組合せとして、アが誤、イが正であるため、③が正解となります。
問3:正解①
<問題要旨>
ロールズの正義論、特に格差原理と、才能の分配に関する彼の考え方を、資料文と照らし合わせて正確に理解できているかが問われています。
<選択肢>
①【正】
ロールズは、社会における不平等が許容される条件として、二つの正義原理を提唱しました。第一に機会均等原理(公正な機会の均等)、第二に格差原理(最も不遇な人々の利益を最大化する場合に限って格差は許される)です。 資料では、才能によって得られる所得は、その人の道徳的な価値とは無関係であり、あくまで「共通利益を最大限高める」ために用いられるべきだと述べられています。 これは、才能の分配は偶然(自然のくじ)によるものであり、その結果生じる格差は社会全体の利益、特に最も恵まれない人々の利益に貢献する場合にのみ正当化されるというロールズの思想と合致しています。したがって、この記述は正しいです。
②【誤】
「あらゆる二項対立的な図式を問い直す」という主張は、デリダなどのポスト構造主義の思想の特徴です。 ロールズは社会契約説を現代的に再構成した思想家であり、この説明は当てはまりません。
③【誤】
ロールズは、功利主義を批判する立場から自身の正義論を展開しました。 功利主義が社会全体の利益(効用)の最大化を優先するあまり、個人の権利や少数者の犠牲を容認しかねないと考えたからです。したがって、「功利主義の発想に基づいて」という記述は誤りです。
④【誤】
資料では、「結果として生じる分配上の取り分は、道徳上の価値と相関するものではない」と述べられており、個々人の才能に応じて利益を分配することが正義だとは主張していません。 むしろ、才能による利益の分配は、社会全体の利益に資するという条件の下で正当化されるとしています。したがって、この記述は誤りです。
問4:正解④
<問題要旨>
GとHの対立する意見(運による格差を社会が埋め合わせるべきか、個人の努力で乗り越えるべきか)と、その根底にある共通の願い(人々が互いを尊重しあう社会)とを結びつける論理を、会話の流れから正確に読み取る問題です。
<選択肢>
この問題は、GとHそれぞれの主張とその理由を正しく組み合わせる必要があります。
・Gの立場: 運の違いが生む格差は社会が埋め合わせるべき。
・Hの立場: 運の違いが生む格差は個人の努力で乗り越えるべき(努力が報われることを重視)。
会話の後半で、二人がなぜそう考えるかの理由が明かされます。
・Gの理由 (c): 格差を社会が埋め合わせなかったら、生まれつきの環境などで評価が決まってしまい、人々が互いを尊重できなくなるから。 ・Hの理由 (d): 格差を社会が埋め合わせる中で、努力まで運のせいにされると、努力した人が正当に評価されず、尊重されないと感じるから。
この論理に合致する選択肢を探します。
a (Gの意見): Gは「社会のあり方で変わるものと捉え、社会ができる限り埋め合わせる」と考えています。 b (Hの意見): Hは「努力が報われることの方を重視する」と考えています。 c (Gの理由): Gは、社会が格差を「埋め合わせなかったら」、生まれ持った環境で評価が決まる社会になり、相互尊重が失われることを懸念しています。 d (Hの理由): Hは、社会が格差を「埋め合わせる中で、努力まで運のおかげだということになると」、努力する人が評価されないと感じ、相互尊重が失われることを懸念しています。
このa, b, c, dの組合せが全て合致しているのは④です。
第5問
問1:正解①
<問題要旨>
日本の過密・過疎問題に関する経緯、現状、対策についての記述のうち、誤っているものを特定する問題です。
<選択肢>
①【誤】
地方から都市への大規模な人口移動と、それに伴う過密・過疎の問題が顕著になったのは、1960年代の高度経済成長期です。 この時期、若者を中心に多くの人々が仕事を求めて三大都市圏へ移動しました。バブル経済崩壊後から始まったわけではありません。したがって、この記述は誤りです。
②【正】
過疎地域では、人口減少と少子高齢化が深刻化しています。 中には、高齢化率が50%を超え、集落機能の維持が困難になる「限界集落」と呼ばれる状態に陥っている地域も存在します。したがって、この記述は正しいです。
③【正】
「まち・ひと・しごと創生法」は、人口減少の克服と地方創生を目的として2014年に制定されました。 この法律に基づき、国および各地方公共団体は、それぞれの実情に応じた総合戦略を策定し、地域活性化に取り組んでいます。したがって、この記述は正しいです。
④【正】
コンパクトシティとは、人口減少社会において、居住地域や医療、福祉、商業などの都市機能を中心市街地に集約させることで、行政サービスの効率化や地域の活性化を図るまちづくりの考え方です。 地方の人口減少や高齢化への対応策の一つとして注目されています。したがって、この記述は正しいです。
問2:正解③
<問題要旨>
日本の地方財政に関する制度(財政健全化法、ふるさと納税、地方交付税、地方債)についての正確な知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)」に基づき、財政状況が著しく悪化した団体は「財政再生団体」に指定されます。 実際に、北海道夕張市が2007年にこの指定を受けています。したがって、「指定された地方公共団体はこれまでのところない」という記述は誤りです。
②【誤】
ふるさと納税は、任意の地方公共団体への寄付により、寄付額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から控除される制度です。 「消費税が軽減される」という記述が誤りです。
③【正】
地方交付税は、国税である所得税、法人税、消費税などの一定割合を原資として、地方公共団体間の財政力格差を是正するために国から交付される資金です。 その使途は特定されておらず、地方公共団体が自主的に使える一般財源です。したがって、この記述は正しいです。
④【誤】
地方債の発行は、以前は国の許可が必要でしたが、地方分権の推進により、2006年度からは国との事前協議制に移行しました。 財政状況が一定基準以上の団体は、国の同意なしに発行できます。したがって、「原則として国による許可が必要」という記述は誤りです。
問3:正解④
<問題要旨>
地方公共団体、非営利組織(NPO)、中小企業に関する基本的な知識の正誤を判断する問題です。
<選択肢>
a【正】
地方自治法上、地方公共団体は、都道府県と市町村からなる「普通地方公共団体」と、特定の目的のために設置される特別区、地方公共団体の組合、財産区などからなる「特別地方公共団体」の二種類に分類されます。 したがって、この記述は正しいです。
b【正】
特定非営利活動促進法(NPO法)は、ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動を促進するために制定されました。 この法律に基づき、一定の要件を満たす団体は、所轄庁の認証を得ることで法人格を取得でき、NPO法人として活動できます。したがって、この記述は正しいです。
c【誤】
中小企業基本法上の定義によれば、日本の中小企業は、企業数では全体の約99.7%を占めています。 また、従業員数では約7割を占めています。記述にある「企業数では約7割」「従業員数では約5割」という数値が誤りです。
以上より、正しいものはaとbであり、その組合せである④が正解です。
問4:正解④
<問題要旨>
表に示されたデータから、地域A、地域B、および国全体のリサイクル率を計算し、基準年と5年後を比較して、リサイクルが活発化した(=リサイクル率が増加した)地域を特定する問題です。
<選択肢>
リサイクル率(%)= 再資源化個数 ÷ 販売個数 × 100
・地域A
基準年: 160 ÷ 400 = 0.4 (40%)
5年後: 250 ÷ 500 = 0.5 (50%)
→ 40%から50%に増加しており、活発化している。
・地域B
基準年: 10 ÷ 100 = 0.1 (10%)
5年後: 60 ÷ 500 = 0.12 (12%)
→ 10%から12%に増加しており、活発化している。
・国全体
国全体では、販売個数と再資源化個数をそれぞれ合計して計算します。
基準年:
販売個数 = 400 (A) + 100 (B) = 500個
再資源化個数 = 160 (A) + 10 (B) = 170個
リサイクル率 = 170 ÷ 500 = 0.34 (34%)
5年後:
販売個数 = 500 (A) + 500 (B) = 1000個
再資源化個数 = 250 (A) + 60 (B) = 310個
リサイクル率 = 310 ÷ 1000 = 0.31 (31%)
→ 34%から31%に減少しており、活発化していない。
したがって、リサイクルが活発化したのは地域Aと地域Bです。よって、④が正解です。
問5:正解②
<問題要旨>
2011年と2021年の日本国債保有者構成比の円グラフを比較し、特に日本銀行の保有割合が急増した背景にある金融政策を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
グラフを見ると、日本銀行の国債保有割合は8.2%から48.4%へと大幅に増加しています。 これは、市中にお金を供給して景気を刺激する「金融緩和」政策の一環です。 「金融引締め」は逆の政策です。また、財政法により、日本銀行が政府から国債を直接引き受けること(市中消化の原則の例外)は原則として禁止されています。
②【正】
2013年から日本銀行は「異次元の金融緩和」として、デフレ脱却を目指し、市中の民間金融機関(銀行など)が保有する国債を大量に買い入れる「量的・質的金融緩和」政策を実施しました。 これにより、市中への資金供給量を増やし、金利の低下を促しました。この結果、日本銀行の国債保有高と保有割合が急増しました。したがって、この記述は正しいです。
③【誤】
日本銀行の保有割合は増加しており、これは金融緩和策の結果です。 「金融引締め」や「国債を売却した」という記述は、グラフが示す事実と逆です。
④【誤】
これは金融緩和政策を反映していますが、日本銀行による国債の直接引き受けは原則禁止されています。 日銀は市場(民間金融機関)から国債を購入しています。したがって、この記述は誤りです。
問6:正解①
<問題要旨>
国内総生産(GDP)の構成項目である「民間最終消費支出」と「民間企業設備投資」について、それぞれの増加額とGDPに占める割合の関係から、対前年度増加率の大小を判断する問題です。
<選択肢>
まず、日本の名目GDP(支出側)の構成割合について、一般的な知識が必要です。
・民間最終消費支出:約55~60%を占める最大の項目です。
・民間企業設備投資:約15%程度を占めます。
したがって、「国内総生産に占める支出割合は、民間最終消費支出より民間企業設備投資の方が小さい」と言えます。
次に、増加率を考えます。
増加率 = 増加額 ÷ 前年度の値
・民間最終消費支出の増加額:2兆3,211億円 ・民間企業設備投資の増加額:3兆1,698億円
増加額自体は民間企業設備投資の方が多いです。
増加率を比較するには、分母となる前年度の値(元の大きさ)が重要になります。
民間最終消費支出は、元の値(割合が大きい)が非常に大きいため、増加額が小さくても増加率は小さくなる傾向があります。
一方、民間企業設備投資は、元の値(割合が小さい)が比較的小さいため、増加額が大きければ増加率は非常に高くなります。
この問題では、増加額が民間企業設備投資の方が大きい(3.1兆円 > 2.3兆円)上に、元の値(分母)が民間企業設備投資の方が小さいです。したがって、増加率(増加額/元の値)は、明らかに民間企業設備投資の方が高くなります。
この条件に合致するのは①です。「支出割合は…民間企業設備投資の方が小さい」「増加率を比較すると、民間企業設備投資の方が高い」という記述は正しいです。
第6問
問1:正解④
<問題要旨>
パレスチナ問題の歴史的経緯について、重要な出来事や地名、当事者を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
・ア:1993年、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)は、アメリカの仲介で歴史的な和平合意に達しました。これがオスロ合意です。 この合意に基づき、パレスチナ人による暫定自治が開始されることになりました。プラザ合意は1985年のG5によるドル高是正のための合意であり、全く関係ありません。
・イ:オスロ合意によってパレスチナ暫定自治が開始されたのは、ガザ地区とヨルダン川西岸のイェリコ(ジェリコ)地区です。 ゴラン高原はシリアとイスラエルの係争地です。
・ウ:2000年代に入り、パレスチナ側の武装蜂起(第二次インティファーダ)が激化する中、イスラエル政府はテロ対策を名目に、ヨルダン川西岸地区を囲むように分離壁の建設を開始しました。 これはパレスチナ側の強い反発を招き、和平交渉を困難にしています。
以上のことから、アはオスロ合意、イはヨルダン川西岸、ウはイスラエル政府となり、正しい組合せは④です。
問2:正解③
<問題要旨>
第一次世界大戦後の国際社会における戦争の違法化の試みについて、国際連盟の仕組みと不戦条約の内容を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
・ア:国際連盟は、紛争が生じた際に、加盟国全体で規約違反国に制裁を科すことで平和を維持しようとする集団安全保障の考え方を世界で初めて制度化したものです。 勢力均衡は、特定の国が強大になるのを防ぐため、複数の国家が同盟関係を結び、パワーバランスを保つことで平和を維持しようとする考え方で、第一次大戦以前のヨーロッパの国際秩序の基本原理でした。
・イ:1928年に締結された**不戦条約(ケロッグ=ブリアン協定)**は、「国際紛争解決のため戦争に訴えることを非とし」、また「国家の政策の手段としての戦争を放棄すること」を宣言した条約です。 これにより、それまで国家の権利とされてきた戦争が、一般的に違法化される道が開かれました。国際人道法は、戦時における非戦闘員の保護や、非人道的な兵器の使用禁止などを定めた法規(ジュネーヴ諸条約など)の総称であり、文脈が異なります。
したがって、アが集団安全保障、イが不戦条約となる③が正解です。
問3:正解④
<問題要旨>
日本の安全保障政策に関する法制度(重要影響事態法、PKO協力法、防衛装備移転三原則、国家安全保障会議)についての正確な知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
2015年の平和安全法制により、従来の周辺事態法は重要影響事態法に改正されました。これにより、自衛隊の活動範囲から「日本の周辺地域」という地理的な制約がなくなりました。 したがって、この記述は誤りです。
②【誤】
PKO協力法は数度の改正を経て、武器使用基準が緩和されてきました。 現在では、自己の管理下に入った者の生命等を守るための「駆けつけ警護」や、共同で活動する他国軍部隊を防護するための武器使用も可能になっています。「自衛隊員の防護のためにのみ」という記述は誤りです。
③【誤】
日本は長らく、武器や関連技術の輸出を原則として禁止する「武器輸出三原則」を維持してきましたが、2014年にこれを撤廃し、より条件を緩和した「防衛装備移転三原則」を新たに閣議決定しました。 記述は変更の前後が逆になっています。
④【正】
2013年に、外交・安全保障政策の司令塔機能を強化するため、内閣に国家安全保障会議(日本版NSC)が設置されました。 内閣総理大臣を議長とし、官房長官、外務大臣、防衛大臣の四大臣会合を中核として、安全保障に関する重要事項を審議・決定します。したがって、この記述は正しいです。
問4:正解②
<問題要旨>
日本の統治機構における「責任の連鎖」(委任された側が委任した側に説明責任を果たす関係)について、図中の矢印ア(国会→有権者)と矢印イ(内閣→国会)に該当する憲法上の仕組みを正しく選ぶ問題です。
<選択肢>
・矢印ア(国会から有権者への責任):国会が、主権者である国民(有権者)に対して活動内容を明らかにし、その審判を仰ぐための仕組みが該当します。
a. 両議院の会議の公開(憲法57条1項)と会議録の公表(同2項)は、国民が国会の審議を知るための重要な仕組みであり、国会の有権者に対する説明責任の根幹をなします。
b. 国の決算を国会に提出するのは内閣の役割(憲法90条1項)であり、国会から有権者への責任を示す仕組みではありません。
・矢印イ(内閣から国会への責任):議院内閣制の下で、内閣が国会に対して負う責任を示す仕組みが該当します。
c. 弾劾裁判所は、不適切な行為をした裁判官を罷免するかどうかを判断するために国会に設置される機関(憲法64条)であり、内閣の責任とは直接関係ありません。
d. 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院に出席して国務について報告する義務を負っています(憲法63条)。 これは、内閣が国会に対して説明責任を果たすための重要な仕組みです。
したがって、矢印アがa、矢印イがdとなる②が正解です。
問5:正解⑥
<問題要旨>
2021年の少年法改正のポイントについて、改正前後の制度を正しく理解しているかが問われています。
<選択肢>
・ア:少年法では、犯罪の疑いがある少年や、将来犯罪を犯すおそれのある少年(虞犯少年)の事件は、原則としてすべて家庭裁判所に送致されます(全件送致主義)。 家庭裁判所が調査を行い、保護処分(保護観察、少年院送致など)や検察官送致(逆送)などの処分を決定します。
・イ:家庭裁判所が、少年を刑事裁判にかけるのが相当と判断した場合、事件を検察官に送り返します。これを逆送といいます。 逆送された事件は、検察官によって起訴され、成人と同じように刑事裁判が行われます。
・ウ:2021年の改正で、18歳および19歳の少年は「特定少年」と位置づけられました。 特定少年は、引き続き少年法の適用対象ですが、原則逆送対象事件の範囲が拡大されたり、起訴後の実名報道が可能になったりするなど、17歳以下の少年とは異なる扱いを受けることになりました。選挙権年齢や成年年齢が18歳に引き下げられたことに伴う改正です。
したがって、アが家庭裁判所、イが検察官、ウが18歳となる⑥が正解です。
問6:正解③
<問題要旨>
表現の自由(憲法21条)に関する2つの最高裁判例を読み解き、その内容を正しく理解しているものを選ぶ問題です。
<選択肢>
①【誤】
判例1は、表現の自由を保障する理由について、「国民が…自由な意思をもつて自己が正当と信ずるものを採用することにより多数意見が形成され、かかる過程を通じて国政が決定されることをその存立の基礎としている」と述べています。 これは、個人の利益のためだけでなく、民主主義的な政治プロセス(民主主義過程)を維持するために不可欠な権利であると位置づけていることを示しています。したがって、この記述は誤りです。
②【誤】
判例1は、「とりわけ、公共的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならない」と述べていますが、公共的事項にかかわらない表現が保障されないとは述べていません。 学問、芸術、思想など、個人の自己実現に関わる表現も憲法21条で保障されます。「とりわけ」という言葉は、公共的事項に関する表現の重要性を強調しているに過ぎません。したがって、この記述は誤りです。
③【正】
判例2は、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するもの」であると明確に述べています。 このように、報道の自由が国民の知る権利に応え、民主主義を支える重要な役割を担っているからこそ、憲法21条によって保障されるとしています。したがって、この記述は判例の内容と合致しています。
④【誤】
判例2は、「思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない」と述べています。 これにより、思想の表明だけでなく、単なる事実の伝達(報道)も憲法21条の保障の対象であることを明らかにしています。したがって、この記述は誤りです。
第7問
問1:正解④
<問題要旨>
SDGsに至るまでの、環境と開発に関する主要な国際会議を、開催された年代順に正しく並べる問題です。
<選択肢>
各会議の開催年は以下の通りです。
b. 国連人間環境会議(ストックホルム会議):1972年。「かけがえのない地球」をスローガンに、環境問題が初めて世界的な議題となりました。
a. 国連環境開発会議(地球サミット、リオデジャネイロ会議):1992年。「持続可能な開発」を基本理念とし、「アジェンダ21」などが採択されました。
d. 第55回 国連総会(ミレニアム・サミット):2000年。国連ミレニアム宣言が採択され、これが後のMDGs(ミレニアム開発目標)の基礎となりました。
c. 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット):2002年。地球サミットから10年後のフォローアップ会議で、「持続可能な開発」の実施計画などが確認されました。
したがって、開催年順に並べると、b (1972) → a (1992) → d (2000) → c (2002) となります。よって、正解は④です。
問2:正解④
<問題要旨>
地球温暖化対策の国際的な枠組みである「京都議定書」と「パリ協定」の内容や理念について、その違いを正確に比較・理解しているかが問われています。
<選択肢>
①【誤】
パリ協定では、すべての締約国に温室効果ガス削減の義務が課されていますが、その削減目標は各国が自主的に決定し、提出する仕組みになっています。 したがって、「すべての締約国に温室効果ガスを削減する義務が課された」という点は正しいですが、その目標設定の仕方が異なります。また、京都議定書が先進国のみに削減義務を課したのは「共通だが差異ある責任」の理念に基づいています。
②【誤】
京都議定書では、温室効果ガス削減義務を負ったのは先進国のみであり、発展途上国は義務を負いませんでした。 「すべての締約国に同様に温室効果ガス削減義務が課されている」という記述は、両条約ともに誤りです。
③【誤】
「持続可能な開発」は、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たす開発を指し、「現在の成長よりも将来世代の発展を優先すべき」という意味ではありません。 また、京都議定書で課されたのは、先進国に対する国別の削減目標であり、「一律の」目標ではありません。
④【正】
京都議定書では削減義務を負うのが先進国のみだったのに対し、パリ協定では先進国・途上国を問わず、すべての締約国が削減目標を作成・提出し、対策に取り組むことが義務付けられました。 一方で、パリ協定においても、先進国が途上国に対して資金援助や技術支援を行うことが定められており、これは各国の能力や歴史的責任の違いを考慮する「共通だが差異ある責任」の理念を引き継いでいると言えます。したがって、この記述は正しいです。
問3:正解②
<問題要旨>
国際人権規約、人権理事会、ILO(国際労働機関)、国連安全保障理事会といった国際機関の仕組みや役割に関する正確な知識が問われています。
<選択肢>
①【誤】
規約人権委員会(自由権規約委員会)が個人通報制度に基づき、人権侵害の申し立てを受理・検討できるのは、当該国が「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)」に加えて、その「選択議定書」を批准している場合に限られます。 したがって、「選択議定書を批准していなくとも」という記述が誤りです。
②【正】
国連人権理事会は、国連総会の補助機関であり、理事国は総会での選挙によって選ばれます。 理事国が重大かつ組織的な人権侵害を犯した場合には、総会の3分の2以上の多数決によって、その資格を停止されることがあります。実際に、過去にリビアやロシアが資格停止となっています。したがって、この記述は正しいです。
③【誤】
ILO(国際労働機関)の最大の特徴は、各国が政府代表2名、労働者代表1名、使用者(経営者)代表1名で構成される「三者構成」の原則をとっている点です。 これにより、労使の意見も直接反映される仕組みになっています。「二者構成」という記述が誤りです。
④【誤】
国連安全保障理事会の常任理事国は、第二次世界大戦の主要戦勝国である、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5か国です。 国連分担金の比率によって決まるわけではありません。したがって、この記述は誤りです。
問4:正解①
<問題要旨>
メモと表のデータを基に、アルゼンチン、インドネシア、南アフリカの3か国について、対外債務負担の度合いの変化を正しく読み解く問題です。 メモによれば、債務負担の度合いは「対輸出額比」と「対GNI比」の両方から判断するとされています。
<選択肢>
a【正】
アルゼンチンのデータを見ると、
・対外債務残高:225,925 → 277,827(百万米ドル)で増加 ・対輸出額比:172 → 333 (%) で上昇 ・対GNI比:38 → 56 (%) で上昇 債務残高が増加し、判断指標である2つの比率も共に上昇しているため、「債務負担の度合いは高まったと判断できる」という記述は正しいです。
b【誤】
インドネシアのデータを見ると、
・対外債務残高:353,564 → 379,589(百万米ドル)で増加 ・対輸出額比:177 → 160 (%) で低下 ・対GNI比:36 → 36 (%) で変化なし 指標のうち、対輸出額比は低下、対GNI比は横ばいであるため、「ともに低下しており」「債務負担の度合いは高まったと判断できる」という記述は誤りです。
c【誤】
南アフリカのデータを見ると、
・対外債務残高:174,921 → 174,094(百万米ドル)で減少 ・対輸出額比:148 → 131 (%) で低下 ・対GNI比:52 → 49 (%) で低下 指標はともに低下しており、債務負担の度合いは「低まった」と判断できます。したがって、「債務負担の度合いは高まったと判断できる」という記述は誤りです。
以上より、正しい記述はaのみです。よって、①が正解です。