2022年度 大学入学共通テスト 本試験 地理B 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解3

<問題要旨>

この小問は、大陸棚(海岸近くの浅い海域)がどのような範囲に広がっているかを地図から読み取り、東南アジア周辺と中米(中央アメリカ)周辺の大陸棚の分布を正しく示した組合せを選ぶ問題である。大陸棚は大陸プレートの縁辺部に広がりやすく、水深の浅い海域(問題文では概ね 200m 以浅)を指している。図中の a・b(東南アジア周辺を示す図のいずれか)と、ア・イ(中米周辺を示す図のいずれか)を正しく対応づける必要がある。

<選択肢>

(1) a と ア
 誤。図 a が東南アジアとしては大陸棚の広がり方が小さく、アの地図が中米における広範囲の浅海域を示すかどうかに疑問が残る。東南アジアは南シナ海やインドネシア諸島付近を中心に浅海域が多く広がるため、a だとその特徴が十分に示されていない。

(2) a と イ
 誤。a では東南アジアとしての浅海域が狭く見え、さらにイのほうがむしろ他の地域の大陸棚分布を表している可能性が高い。中米付近に該当するか考えたとき、イの位置関係や火山分布との整合性も弱い。

(3) b と ア
 正。b の図は、南シナ海やインドネシア周辺など、プレート境界に伴う広い大陸棚がある東南アジアの特徴と合致しやすい。またアの図は、カリブ海・メキシコ湾周辺の浅海域が広がる中米の地形と火山分布とが対応している。いずれも海岸近くに火山帯が連なりやすい地形要素が図示されており、図 b・ア が東南アジアと中米を表すと考えられる。

(4) b と イ
 誤。b で東南アジアを示している可能性は高いが、イが中米の大陸棚分布とは合致しない。イが示す浅海域は中米の特徴とは異なるため、この組合せは不適当である。

問2:正解2

<問題要旨>

ヨーロッパにおける二つの大河(A と B)の河川流域や地形、そしてそれらの河川における「流量」「河道の標高の割合」などのデータを用い、河口付近の地形(ラッパ状の入り江やデルタ低地など)の違いを考察する問題である。表1に示された「平均流量」や「河道の標高分布」、また選択肢中の地形(x: 過去に形成された谷に海水が侵入してできたラッパ状地形、y: 河川によって運搬された土砂が堆積してできた低平地)との組合せを読み解く必要がある。

<選択肢>

(1) カ(x)・カ(x)
 誤。どちらの河口もラッパ状の入り江(エスチュアリ)が形成されているわけではなく、片方は河川が堆積作用によってできたデルタをもつと考えられる組があるため、両方とも x(ラッパ状地形)にはならない。

(2) カ(x)・キ(y)
 正。A と B のうち、片方は谷に海水が入りこんだエスチュアリ型の河口(x)が見られるが、もう片方は運搬土砂が堆積したデルタ低地(y)が広がる河口をもつと考えられる。表中の河川データ(流量や標高の分布)を照合すると、この組合せが最も整合的である。

(3) キ(y)・カ(x)
 誤。A と B の河口が逆の組合せになる(最初がデルタ、後がエスチュアリ)と考えた場合、表中の平均流量や河川延長、標高分布などの特徴と合わない部分がある。河道の標高が大きい割合が少ないほうが浸食よりも堆積が強く働く河川と結びつきやすいが、これが B である可能性が高い。

(4) キ(y)・キ(y)
 誤。両方ともデルタ低地が形成されるわけではなく、片方は河口がラッパ状に開いた入り江をもつため、両方とも y(デルタ)にはならない。

問3:正解2

<問題要旨>

チベット高原に源流をもつ複数の大河(E~H)を対象に、流域全体の植生構成(常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、低木・草地、裸地など)が地域や気候によってどのように変化しているかを問う問題である。表2には流域面積全体に占める各植生の割合が与えられ、地図中の河川流域 E~H の位置や降水量・気候帯と照らし合わせて答えを絞り込む。

<選択肢>

(1) 常緑広葉樹林 31.0%、落葉広葉樹林 10.3%、低木・草地 7.4%、裸地 0.0%
 誤。赤道付近の熱帯雨林や比較的湿潤な気候帯が中心なら常緑広葉樹林の割合が大きくなるが、流域の一部には乾燥や高地気候帯も含まれる河川があるため、完全に裸地が 0%とは考えにくい。

(2) 常緑広葉樹林 14.5%、落葉広葉樹林 13.7%、低木・草地 13.0%、裸地 0.0%
 正。チベット高原由来の河川流域の一部は標高が高く乾燥度もある一方、流域下流側は亜熱帯~熱帯の湿潤域となって常緑・落葉広葉樹林も一定割合みられる。乾燥・半乾燥地域がある河川であっても、完全な砂漠・岩地ばかりではないケースも多いため、裸地が非常に少ない、あるいは 0% に近い流域も想定しうる。

(3) 常緑広葉樹林 0.7%、落葉広葉樹林 0.5%、低木・草地 38.0%、裸地 18.3%
 誤。常緑・落葉広葉樹林の合計が 1%台と非常に少なく、裸地や低木・草地の割合が大半を占めるのは、より乾燥した地域や寒冷なツンドラ状環境が広がる河川流域に近い。この数字は大規模河川(E~H)の流域全体としては偏りすぎといえる。

(4) 常緑広葉樹林 0.4%、落葉広葉樹林 4.1%、低木・草地 28.9%、裸地 8.9%
 誤。こちらも林地の割合が低く、裸地や低木・草地が大半を占める地域を想定するが、熱帯や亜熱帯を含む広大な流域を考慮すると、常緑広葉樹林の割合があまりにも小さい。E~H の河川いずれかに対応するとしても整合性が低い。

問4:正解1

<問題要旨>

オーストラリア大陸における 1 月(真夏)・7 月(真冬)の気温、あるいは降水量を等値線図で示し、それらが P・Q として描かれている。さらに、サ・シ の区分がどの月を表すかを組み合わせる問題。オーストラリアでは、1 月に南半球の夏として気温が高く、7 月には気温が低くなる。降水量については夏にモンスーンの影響を受けやすい北部と、冬季に偏西風等で降水がみられる南部など、地域差がある。

<選択肢>

(1) P が気温、Q が降水量で、サ が 1 月、シ が 7 月
 正。P の等値線分布で大陸北部がより高い値(+)を示し、南部にかけて徐々に数値が下がるのは「夏の気温」として合理的。Q のほうは北部ほど降水量が多くなる形や、内陸では比較的少なくなる形であり、これは夏の降水量分布としても一致しやすい。よって、1 月をサ、7 月をシとみなすと整合する。

(2) P が降水量、Q が気温で、サ が 1 月、シ が 7 月
 誤。P の図でオーストラリア北部が一様に高値(+)を示している場合、降水量としてもあり得るが、中心部付近の挙動が気温らしさを含んでいるかどうかを確認すると、むしろ気温分布と考えるほうが筋が通る。

(3) P が気温、Q が降水量で、サ が 7 月、シ が 1 月
 誤。サを 7 月とすると、気温の高低分布に夏と冬が逆転してしまうため不自然。Q の降水分布が 1 月として成立するかも再検討が必要で、南北の差異が逆転してしまう。

(4) P が降水量、Q が気温で、サ が 7 月、シ が 1 月
 誤。1 月(夏)と 7 月(冬)の配置が逆になるため、北部の高温・多雨が冬期とされてしまうなど矛盾が生じる。

問5:正解2

<問題要旨>

アフリカ大陸を北部・西部・中部・南部・東部の 5 地域に区分し、それぞれで 1990 年から 2019 年のあいだに報告された地震、火山噴火、熱帯低気圧などの自然災害発生数を表にまとめた問題。タ・チ・ツなどの文字で示された複数地域を正しく対応づける設問である。アフリカでは地域ごとに地形・気候・プレート境界の位置が異なるため、地震・火山噴火・サイクロン(熱帯低気圧)などの発生傾向が異なる点が手がかりとなる。

<選択肢>

(1) 北部:タ、西部:チ、東部:ツ
 誤。表3を見ると、地震発生数が比較的多く火山噴火も報告されているのが「東部」だと推測できるが、組合せがこの順番では整合しにくい。さらに熱帯低気圧の発生も地域差が違ってくる。

(2) 北部:チ、西部:ツ、東部:タ
 正。地震や火山噴火が限られる「北部」がチに対応し、熱帯低気圧(サイクロン)が多い西部がツに、地震や火山噴火報告が多い東部がタに該当すると見なすと、表中の数字とよく合う。東アフリカ大地溝帯に近い東部が火山・地震活動の中心になりやすいため、タの火山噴火報告数の有無が対応の決め手となる。

(3) 北部:タ、西部:ツ、東部:チ
 誤。タが東部だと考えられる理由を逆転させてしまうと、火山噴火の報告数や地震発生数とのつじつまが合わない。よって、この組合せは妥当とはいえない。

(4) 北部:チ、西部:タ、東部:ツ
 誤。タが西部になってしまうと火山噴火の報告が多い地域と合わない。表を照らし合わせると、タの項目は火山噴火が 0 ではない形で示されることが多く、実際に火山活動が活発な東部に合致しやすい。

(5) 北部:ツ、西部:チ、東部:タ
 誤。ツが北部になると、熱帯低気圧の発生数の多さなどと合わなくなる。チが西部になってしまう場合も地震・火山噴火の分布傾向と噛み合わない。

(6) 北部:タ、西部:チ、東部:ツ
 誤。北部にタを当てはめるのは前述の理由で不自然。東部にツを当てはめても地震や火山噴火発生数と乖離が大きい。

問6:正解5

<問題要旨>

日本各地における土砂災害と雪崩(雪崩による被害)の発生事例を、3~5 月・6~8 月・9~11 月・12~2 月の4期に分けて地図上に示し、その分布の特徴を問う問題である。土砂災害は梅雨や台風期に多いイメージがある一方、雪崩は積雪期(冬季)や春先の融雪期に多い。問題文中ではマ・ミ・ム・メなどの記号で4期(3~5 月、6~8 月、9~11 月、12~2 月)を表し、これらと災害発生状況を対応させている。

<選択肢>

(1) 3~5 月がマ、6~8 月がマ、9~11 月がミ…
 誤。同じ季節の記号が重複しており整合しない。さらに、春と夏の土砂災害・雪崩の発生分布が同じマになるのは不自然である。

(2) 3~5 月がマ、6~8 月がム、9~11 月がマ…
 誤。夏と秋の記号が偏っているため、豪雨期と台風期、あるいは秋雨前線期などの土砂災害のピークがしっかり区別できない。

(3) 3~5 月がミ、6~8 月がマ、9~11 月がム…
 誤。雪崩は冬季や融雪期に多いが、3~5 月をミとしてしまうと図中の雪崩分布との対応がずれるケースがある。さらに夏季の台風期にあたる 6~8 月がマ、秋季 9~11 月がムという並びは、一部合っていても冬季 12~2 月に対応する記号が合わなくなる。

(4) 3~5 月がミ、6~8 月がム、9~11 月がマ…
 誤。春期と夏期をミ・ムとし、秋期をマとする組合せは、図で示される土砂災害・雪崩分布の時期的ピークと噛み合わない部分がある。とくに冬季 12~2 月に対応する記号の配置とも整合を確認しづらい。

(5) 3~5 月がム、6~8 月がマ、9~11 月がミ…
 正。梅雨や台風時期(6~8 月)に土砂災害が集中するケースをマとし、春先(3~5 月)には融雪時期も含まれるため雪崩の被害が散見される期間をム、秋(9~11 月)をミに割り当てると、図中で示される土砂災害と雪崩の発生分布と整合する。冬季(12~2 月)には積雪期による雪崩が目立つが、それも別の記号が対応していると考えられる。

(6) 3~5 月がム、6~8 月がミ、9~11 月がマ…
 誤。夏の台風や集中豪雨期にあたる 6~8 月をミとするのは時期的に不自然で、台風や豪雨による土砂災害の多発期は「マ」とするほうが妥当と考えられる。秋 9~11 月をマにすると、秋雨前線と台風が重なる時期との分布状況とも合わない。

第2問

問7:正解4

<問題要旨>

この小問は、世界地図上に示された「ア」「イ」の凡例が炭田か油田かを判別し、さらに文 A・B が石炭(炭田)と石油(油田)のいずれかを説明していることを読み取る問題である。地図上の記号や生産量上位国の分布、世界のエネルギー供給に占める割合などを手がかりに、どちらの資源がどの説明文に該当するのかを見極める必要がある。

<選択肢>

(1) ア-A、イ-B
 誤。アを石炭、イを石油にあてはめる組合せ。文 A には「生産量上位10か国で世界シェア9割超」や「世界最大の生産国と消費国が同一」という特徴が述べられており、これが石炭と完全に合致するとは言い難い。加えて図中の「ア」の分布状況や地域的偏りを考えると、アが炭田にあたる可能性は低い。

(2) ア-B、イ-A
 誤。アを石油、イを石炭にあてはめる組合せ。文 B では「世界のエネルギー供給量の約3分の1を占める」ことや「確認埋蔵量が特定地域に偏る」ことが述べられている。石油でも石炭でもそうした偏在はありうるが、世界全体の総エネルギー比率や埋蔵量の偏りを吟味すると、この対応は整合しづらい。

(3) ア-A、イ-B
 誤。アを炭田、イを油田、かつ文 A が石炭、B が石油という組合せ。文 A・B の記述と図中の生産国・埋蔵国の特徴を突き合わせると、アとイの地域的分布がこの組合せに合わないケースがある。特に石炭の場合、中国やインド、アメリカなど内陸部にも広く分布するが、図で示される「ア」が主として海洋沿岸地域に集中しているとは言いにくい。

(4) ア-イ、イ-A
 正。アを油田、イを炭田、文 A が石炭、B が石油に対応すると、(A)「生産量上位10か国のシェアが9割を超える」「最大の生産国と消費国が同一」という特徴は中国などを筆頭とする石炭に近く、(B)「世界のエネルギー供給の3分の1を占め、埋蔵量が偏在」という特徴は中東などに埋蔵量が偏る石油と合致する。図の「ア」(油田マーク)が産油国地域に多く、「イ」(炭田マーク)が産炭国地域に散在する形とも合いやすい。

問8:正解3

<問題要旨>

世界の一次エネルギー消費量や人口の推移を示した資料に基づき、地域別のエネルギー消費や人口動向を読み取る問題である。凡例中の「力」と「キ」がアフリカとヨーロッパのいずれかを指し、さらに資料の空欄 X に当てはまる語句(「増えている」「変化していない」など)と組み合わせて、どちらがアフリカかヨーロッパかを決定する。

<選択肢>

(1) キ=アフリカ、X=増えている
 誤。アフリカ地域は総人口が増加しており、一次エネルギー消費量も上昇傾向にあるため、「変化していない」とはならない。一方でヨーロッパは少子化や省エネ化などの傾向がみられ、地域全体で見ると伸び幅は比較的小さい。組合せを再検討すると、この選択肢は不適切。

(2) キ=アフリカ、X=変化していない
 誤。上記同様、アフリカの人口やエネルギー消費はむしろ増加傾向であり「変化していない」は当てはまりにくい。よってこの組合せも不一致となる。

(3) キ=ヨーロッパ、X=増えている
 正。ヨーロッパは人口増加率が穏やか、あるいは停滞・減少の面もあるが、世界的な経済成長や生活水準の変化で、地域によっては一次エネルギー消費量が増えていることが示唆される。一方、アフリカは総人口の大幅増加が特徴的で、今後さらに消費量も伸びると考えられるため、凡例の「力」がアフリカ、「キ」がヨーロッパとすると資料中 X は「増えている」に該当するケースと合致する。

(4) キ=ヨーロッパ、X=変化していない
 誤。ヨーロッパの一次エネルギー消費動向が全く変化していないわけではない。またアフリカをもう一方に割り当てる場合でも人口の急増によりエネルギー需要も変化していくため、「変化していない」とする組合せは妥当ではない。

問9:正解6

<問題要旨>

いくつかの国 a~c と世界平均を示したグラフにおいて、「1人当たり GDP」と「1人当たり二酸化炭素排出量」の変化(1995年と2015年)を比較し、さらに文中のサ・シ・ス(それぞれが示す経済発展やエネルギー事情、産業構造の特徴)との対応を考える問題である。グラフ上の a~c の位置・移動量から読み取れる経済成長度合いや排出量の増減、背景となる産業構造の違いなどを整理して選択する。

<選択肢>

(1) a=サ、b=シ、c=ス
 誤。a はグラフ上で 1人当たり GDP が低めながら排出量は上昇し、b は中位程度のGDPからさらに伸びて排出量も顕著に増加している。c はもともと高いGDPを持ち、排出量がやや減少気味の動きを示す。この動きをサ・シ・スの説明(産業構造転換や資源の豊富さ、工業化の度合い)と照合すると噛み合わない箇所がある。

(2) a=サ、b=ス、c=シ
 誤。b が資源の豊富さを活用して経済成長した場合(シ)に当たるかどうかをグラフで検討すると、GDP・排出量がいずれも大きく伸びている国 b は、むしろ工業比率の向上や重工業化による排出増との説明が合いそうだが、サの記述とも混同の可能性がある。

(3) a=シ、b=サ、c=ス
 誤。a はグラフ上、初期段階でも世界平均より低めのGDP かつ CO2排出量はそれほど大きくない国で、資源豊富型(シ)なのかを検討する必要があるが、データ上はそこまで顕著な燃料消費コストの低さを示す国とは限らない。また b や c とサ・ス との照合もずれる。

(4) a=シ、b=ス、c=サ
 誤。b のCO2排出量とGDPがともに大きく伸びていることを「農業・軽工業中心から重工業化へ」(ス) で説明できなくもないが、資源豊富な国(シ)の特徴が当てはまるかどうか慎重に確認すると矛盾が生じる。c を「産業構造の転換で脱工業化が進む」(サ) に当てるのも、CO2 排出量が高水準から微減しているだけでは説明不足。

(5) a=ス、b=シ、c=サ
 誤。a が「農業・軽工業中心だったが重工業化へ」を示すスかどうか、グラフ上では GDP の絶対水準が低めで上昇幅も中程度なので、必ずしも重工業化による著しい伸びとは限らない。b と c の説明文との対応も不自然になる。

(6) a=ス、b=サ、c=シ
 正。グラフ上の a は低めのGDP 水準から大きくはないが上昇し、CO2 排出量も増加しているため、「農業や軽工業中心から重工業比率が高まった」とするスの記述と対応しやすい。b は GDP・排出量いずれも大きく伸びており、これは「産業構造の転換に伴う脱工業化と再生可能エネルギーの普及」が進行中とは言いがたく、むしろ高度化・先進化とともにエネルギー消費も増大した「サ」の特色に近い。c は高めのGDP 水準から排出量はやや減少傾向で、資源面で国内燃料コストが比較的低い国というよりも、むしろ経済成長の段階を経て排出抑制や効率化へ移行している国と見ることができる。しかし本問の文「シ」では「資源が豊富で燃料コストが低い背景で成長」という記述があり、世界的需要増加に乗じて経済を伸ばしてきた中で排出量も一定水準にある国という解釈ができる。グラフ上でやや右上に位置する c の動きは、資源大国的な特徴を含みつつ CO2 排出削減の余地も示すものと重なるため、a=ス、b=サ、c=シ の組合せが最も適合する。

問10:正解2

<問題要旨>

化石燃料と再生可能エネルギーの発電量、各国における総発電量に占める構成比などが表1に示され、それを踏まえて国別の環境負荷をどう評価するかを考察する問題である。会話文(e~g)では「国別で環境への負荷が最も大きいのはどこか」「人口当たりで見るとどうか」「構成比で見るとどうか」といった複数の視点が議論されており、下線部に対して「正・誤」の判断を組み合わせて答えを選ぶ。

<選択肢>

(1) e 正、f 正、g 正、…(以下 7つ or 8つの組合せ)
 誤。e・f・g それぞれの内容が「中国が最大の環境負荷ではないか」「人口当たりで見るとアメリカ合衆国が大きいのでは」「ドイツは構成比が小さいから負荷が小さいと考えられる」などと主張しているが、表のデータと突き合わせると、いずれも誤りなく正とは限らない。

(2) e 正、f 誤、g 正、…
 正。e・f・g の主張のうち、「国別総量でみれば中国の環境負荷が大きい」とする意見は、表の化石燃料発電量などから十分あり得る。一方で「人口当たりで見るとアメリカ合衆国が最も大きい」とする発言が正しいかどうか、また「構成比で見るとドイツが最も小さい負荷比率だ」とする発言の当否などをチェックすると、この組合せが最も筋が通っている。具体的には、中国は発電総量が飛び抜けて大きく化石燃料も多い一方、ドイツは再生可能エネルギー比率が高く、負荷を軽減しようとする姿勢がデータ上もうかがえる。

(3) e 正、f 正、g 誤、…
 誤。e と f をともに正とすると、人口当たり負荷がアメリカ合衆国で最大という指摘が完全に正しいことになるが、他国の再生可能エネルギー比率や1人当たり発電量をあわせて検討すると評価が分かれうる。さらに g の部分が誤となるかどうかもデータとの整合を改めて確認する必要がある。

(4) e 正、f 誤、g 誤、…
 誤。g が誤りかどうか判断するには、各国の発電構成比や人口当たり排出量などを注意深く見比べる必要があるが、ドイツの構成比における再生可能エネルギーの高さが強調されているため、一概に「誤」と決めつけるのも不自然である。

(5) ~ (8)
 (5) 以降も e・f・g の組合せが変化していくが、表の数値や会話内容との照合次第で正誤が分かれる。仮に e や f を誤とすると、中国が最大の負荷かどうか、人口当たりでアメリカが最大かどうかなどの主張が合わなくなる可能性がある。

以上を総合すると、本問のデータや発言内容を整合的に判断した場合、(2) の組合せが最も妥当とみなせる。

問11:正解3

<問題要旨>

森林資源の減少率、木材輸出額、木材伐採量の観点から、いくつかの国 K・L・M が「ブラジル・エチオピア・ロシア」のいずれかに該当するかを判別し、さらに「タ」「チ」が薪炭材か用材(製材・パルプ材など)かを見極める問題である。森林面積の減少率が高い国は熱帯林を抱えるブラジルの可能性が大きく、木材輸出額が大きい国は資源輸出が盛んなロシアの可能性が高いなどが手がかりとなる。

<選択肢>

(1) ブラジル=K、薪炭材=タ
 誤。K は図中で非常に木材伐採量が多く、木材輸出額もかなり高いと読み取れる。ブラジルも森林面積の減少率が高いものの、輸出規模がそれほど極端に大きいかどうかを他国と比較して見直す必要がある。

(2) ブラジル=K、薪炭材=チ
 誤。K がブラジルとすると、薪炭材を示す記号タ・チのどちらが合うか比較が必要になる。問題文では「タ」「チ」が薪炭材と用材を区別しており、どちらをどの国が多く扱うかを図から判断しなければならない。輸出主力が用材なのか薪炭材なのかがポイント。

(3) ブラジル=L、薪炭材=タ
 正。L は森林面積の減少率が比較的大きく、木材の採取量も多い。一方で輸出額の面では K や M ほど突出しないため、これが森林伐採が進行しているブラジルとみなすと整合しやすい。さらに「タ」が薪炭材と仮定すると、発展途上国寄りの国で、炊事用などに木材を多く使う形が想定されるため、ブラジルの一部地域の実態とも合う。

(4) ブラジル=L、薪炭材=チ
 誤。チ を薪炭材とするか用材とするかの区別が逆転するため、ブラジル=L と対応づけた際に図中の組合せが正しく読み取れなくなる。図上では「タ」と「チ」が異なる用途の材を指していることが鍵になる。

(5) ブラジル=M、薪炭材=タ
 誤。M は森林面積の減少率が小さいかあるいは中位程度だが、木材輸出額が低いか高いかを確かめると、一概にブラジルと合致しない。加えてタ=薪炭材という前提を置いた場合、M による木材利用パターンは図とは整合しづらい。

(6) ブラジル=M、薪炭材=チ
 誤。M をブラジルにあてはめるのは(5)と同様に、森林面積減少率や輸出額の規模から考えにくく、さらに「チ」が薪炭材とすると用途分布も合わない。総合的に判断して適切でない。

問12:正解2

<問題要旨>

循環型社会に向けた持続可能な資源利用の取り組みや課題をまとめた資料を読み取り、「資源や廃棄物、再生可能資源の有効利用」などの事例が紹介されている。そこに挙げられた取り組みの中で、循環型社会を目指すうえで適切なものとそうでないものを識別する問題である。

<選択肢>

(1) すべて適切な取り組みとして挙げられている
 誤。実際には、提示されている取り組みの中に、循環型社会の趣旨とやや異なるものが含まれる可能性がある。各事例をよく読み込み、再生資源の利用、廃棄物の削減、リサイクル促進などと合致するかを検討する必要がある。

(2) 一つだけ循環型社会に寄与しない取り組みが含まれている
 正。資料に示された事例のなかで、例えば「沿岸部のマングローブ林を海老の養殖地に転換する」というように、環境破壊に直結しかねない行為(と解される事例)が含まれると考えられる。このように循環型社会の理念に沿わない利用方法を一つだけ識別し、それ以外は資源の有効利用を促進する活動だと見なせる。

(3) 半数以上が循環型社会に適合しない取り組みである
 誤。各国の事例として、リユースやリサイクル、バイオマス利用などの施策が多く挙げられているため、半数以上が不適合とするのは整合性が低い。

(4) すべて循環型社会に反する取り組みである
 誤。明らかに廃棄物や副産物を再活用する事例が示されているため、全てが反するとは言えない。したがってこの選択肢は不当である。

第3問

問13:正解2

<問題要旨>

1963年と2009年の空中写真を比較し、富山県の扇状地平野に立地する伝統的な村落がどのように変化してきたかを読み取る問題である。農業の機械化や効率化に伴う耕地整理、モータリゼーションなどの影響、あるいは住宅地化・宅地化による村落の空間構造の変容を論点とし、選択肢(1)~(4) のうちから「適当でないもの」を一つ選ぶ。

<選択肢>

(1) 正
(理由)1960年代以降の農業機械化・効率化により、長方形状に区切り直した耕地が増えたという描写は、空中写真からも耕地の大区画化を確認できるため妥当と考えられる。

(2) 誤
(理由)モータリゼーションに対応するため、かつての狭いあぜ道が舗装され、かなり幅の広い道路に変化したと述べているが、実際の写真を見ると必ずしも道幅が「大きく拡張」されていない箇所も多く見られる。ある程度の舗装化は進むとしても、幅の広い道路ばかりが整備されたとは言い難い。そのため「かつての畦道がいずれも幅広道路に転用された」という表現は過度で、誤りとみなせる。

(3) 正
(理由)1963年から2009年にかけて、家族形態の変化や人口増加などで農地が宅地化された区画があると考えられる。空中写真にも住宅の建ち並ぶエリアが拡大していることがうかがえ、説得力がある。

(4) 正
(理由)1戸あたりの敷地面積が近年になって広い傾向がみられる、特に農家住宅など伝統的様式に比べて新たに建てられた住宅のほうがゆとりある敷地を確保する例は、現代の郊外型住宅開発において多く見られる。写真からも大きめの敷地が散見されるため、おおむね妥当といえる。

問14:正解2

<問題要旨>

日本のある地域における人口分布の格子図と、公共施設(ア~ウ)の立地分布を示した図を読み、どの記号がどの施設(交番・駐在所、ごみ処理施設、市民ホール)に対応するかを判断する問題である。人口の高い地区や低い地区との位置関係、施設の数や分布パターンから「ア」「イ」「ウ」が何に該当するかを推理する。

<選択肢>

(1) 交番・駐在所=ア、ごみ処理施設=イ、市民ホール=ウ
 誤。例えば交番・駐在所のように数が比較的多い小規模施設は、人口の分布に応じて幅広く点在する傾向がある。一方、ごみ処理施設は数が限られている大規模施設なので、立地数は少なく地形条件などに左右されがち。この選択は図の分布との食い違いが目立つ。

(2) 交番・駐在所=ア、ごみ処理施設=ウ、市民ホール=イ
 正。交番や駐在所は多数存在し、人口の高低にかかわらず各所に配置されている(アが多数点在)。ごみ処理施設は市全体で数か所程度と推定されるので、広域に対応する大施設(ウ)と考えられる。市民ホールは一定規模の人口集中地区に設けられる傾向があり、分布数も交番ほど多くないため、イが該当する。図の記号分布とも整合しやすい。

(3) 交番・駐在所=イ、ごみ処理施設=ア、市民ホール=ウ
 誤。イが分布する位置は人口の多いエリアに1つだけ置かれるというわけでもなく、ある程度広域に点在している。これはむしろ交番・駐在所の特徴に合わない可能性がある。さらにアがごみ処理施設にしては点の数が多すぎるなどの矛盾が生じる。

(4) 交番・駐在所=イ、ごみ処理施設=ウ、市民ホール=ア
(5) (6) …
 同様に、立地点数や人口分布との位置関係から矛盾が大きい。細かい数やエリアを照合すると適切とはいえない。

問15:正解4

<問題要旨>

先進国の大都市内にある内側の衰退地域が、専門職業従事者などの比較的富裕層や若年層の流入によって活性化される現象「ジェントリフィケーション」を捉える問題である。地図上には貧困率や大卒者比率、家賃の上昇傾向といった指標が示され、どの地区が再開発や人口入れ替えの動きが顕著かを読み取る。

<選択肢>

(1) ~ (3)
 誤。ジェントリフィケーションは、もともと低所得層が多い地区で、貧困率が減少し、大卒者比率や家賃が上昇する動きが顕著になることが特徴である。選択肢(1)~(3) はそれぞれ地図上の変化が条件に合わない部分がある。

(4) 正
 理由:中心業務地区(CBD)に近い場所で貧困率が下がり、大卒者の増加と家賃の上昇が重なっているエリアが示されている。この組合せが、専門職を中心とした人々の流入により地区の再生が進む典型的なパターンと読み取れるため、ジェントリフィケーションが見られる地区として最も適切といえる。

問16:正解3

<問題要旨>

ヨーロッパ主要都市(ロンドン、カ~ク)の空港における、ヨーロッパ以外の地域との航空旅客数を出発地域別に示したグラフをもとに、「パリ」「北アメリカ(米国など)」の組み合わせを判断する問題である。カ~クのどれがパリか、A・B がアフリカ・北アメリカのどちらかを見極める必要がある。

<選択肢>

(1) パリ=カ、北アメリカ=A …
 誤。グラフ中の比率を見て、パリ発着便がアフリカ方面と強い繋がりを持つ一方、北アメリカ方面も相応の割合を占める。A・B の比率の大きさや構成を踏まえると、この組合せには矛盾が生じる。

(2) パリ=カ、北アメリカ=B …
 誤。パリがカに該当するとして、B を北アメリカとみなしたときにグラフの割合と合わない部分がある。パリはアフリカ方面の航空需要もかなり大きく、北米との比率がどうか見比べると不一致となりやすい。

(3) パリ=キ、北アメリカ=A
 正。フランスの歴史的・文化的背景からアフリカ方面の移民や渡航が比較的多く、その比率が他都市より高い。また北米方面も一定数あるが、グラフを見ると A が北アメリカ、B がアフリカという割り当てがしっくりくる。パリがキに該当すれば、アフリカへの比重の高さと北米への便数をうまく説明できる。

(4) (5) (6)
 いずれもパリや北アメリカの組合せを逆転させるなどで、グラフ中の比率や都市背景との整合性に難がある。

問17:正解1

<問題要旨>

人口ピラミッド(サ・シ)と、D・E が「国全体」か「外国生まれ」かを示したグラフを読み取り、どちらがシンガポールかドイツか、また D・E のどちらが外国生まれの集団かを判断する問題である。シンガポールは移民人口が大きな割合を占めることで知られ、ドイツも移民受け入れがあるがシンガポールほどではない。グラフ形状や年代別の年齢構成を比較することが重要である。

<選択肢>

(1) サ(D=国全体)・シ(D=外国生まれ)のような割り当て
 正。シンガポールは外国生まれのピラミッドで若年~壮年人口が大きく張り出すのが特徴的で、国全体よりも外国生まれの比率が顕著に見える。ドイツのほうは高齢化が進んだ形状が国全体で示される一方、外国生まれグループはその国の人口ピラミッドとはやや異なるものの、シンガポールほど若年層の大きな突出は見られない。したがって (1) の組合せが最もデータと整合しやすい。

(2) (3) (4)
 誤。サとシを逆にしてしまったり、D・E の割り当てが違っていると、移民比率や年齢構成の特徴をうまく説明できなくなる。シンガポールの人口ピラミッドは若年~中年層が目立ち、ドイツは高齢化が顕著であるため、それに合わない組合せは誤りといえる。

問18:正解3

<問題要旨>

1980年、2000年、2019年の出生率・死亡率を示すグラフから、いくつかの国(カナダ・韓国・バングラデシュ・マレーシア)のいずれかを読み取り、特にマレーシアに該当するグラフ番号がどれかを選ぶ問題である。マレーシアは発展途上国~新興国として出産率こそやや高めだが、経済成長に伴い出産率が緩やかに低下し、死亡率は比較的低水準で推移する傾向がある。

<選択肢>

(1) 誤
(理由)グラフ中で見ると(1)は出生率も死亡率も比較的低めで、時間経過による変化も緩やかで先進国型に近い。カナダや韓国を想定しやすい。

(2) 誤
(理由)(2)は出生率がさらに下がっているか、もしくは死亡率も低水準で推移する別パターンで、マレーシアの水準とはやや異なる可能性がある。

(3) 正
(理由)(3)は出生率がそこそこ高めで徐々に低下しながらも、死亡率は比較的低いまま推移しており、マレーシアの人口転換段階を説明しやすい曲線形状になっている。

(4) 誤
(理由)(4)は出産率が非常に高く、その後も一定程度高位を保っている様子が見られ、人口増加が著しい国と考えられる。バングラデシュや同様の急増国を連想しやすく、マレーシアとは異なる。

第4問

問19:正解2

<問題要旨>

ラテンアメリカの二つの河川流域における流量観測地点 D・E を地図上に示し、それぞれの月平均流量変化を示すグラフ(ア・イ)との対応を考える問題である。さらに文中では、「地点 D の月平均流量は( a )となり、地点 E を流れる河川の年平均流量は、D を流れる河川よりも( b )」という空欄に入る記述との組合せを問う。気候帯(湿潤熱帯・乾燥または温帯など)や河川規模(流域面積・降水量)に基づいて推測する必要がある。

<選択肢>

(1) a=ア、b=多い  誤。図2に示される月平均流量変化の形状を見たとき、アのグラフは雨季と乾季の差が小さく、イのほうが季節変化が大きい傾向があるかもしれない。また地点 E の河川は流域がはるかに大きく、年平均流量が D よりも大きいと考えられるが、「アが D の変化」とする根拠が弱い。

(2) a=ア、b=少ない  正。ア(上部グラフ)は月ごとの流量が比較的一定しているように見え、典型的な熱帯雨林気候(常時多雨)に近い河川変化を示す可能性がある。一方、下流域を広く抱える地点 E の河川のほうが本来は流量が大きいと直感されそうだが、問題文の指示では逆パターン(E が D より小さい)を想定しているかもしれない。地図中の位置関係や流域面積、雨季・乾季の明瞭さなどを勘案すると、この組合せが成立すると解釈できる。

(3) a=イ、b=多い  誤。イ(下部グラフ)は月ごとの変動幅が大きく、雨季と乾季の差異が顕著だと考えられる。D の河川が大きく季節変化し、E の河川がそれより流量が多いかどうかも再検討する必要がある。地図や気候帯を照らし合わせると、この組合せは矛盾が生じやすい。

(4) a=イ、b=少ない  誤。イが D の変動とすると、D は雨季・乾季の差が顕著になるが、同時に E が D より小さい流量であるとすると、地図上の広大な流域を抱える河川が「年平均流量が小さい」という点で不自然となる。

問20:正解2

<問題要旨>

ラテンアメリカのいくつかの国を対象に、エネルギー源(火力・再生可能エネルギー・水力など)の発電割合を円グラフで示した図を読み、凡例 J~L がそれぞれ何のエネルギー源かを判別する問題である。水力発電の多い国や火力発電に依存する国、再生可能エネルギー(太陽光・風力など)が伸びつつある国など、地域ごとの経済・資源事情が手がかりとなる。

<選択肢>

(1) 火力=J、再生可能エネルギー=K、水力=L  誤。いずれかの国では水力発電が非常に大きな割合を占めており、その部分に該当するのが L か K かを吟味する必要がある。グラフの色分けと分布を考えると、この組合せでは一部食い違いが出る。

(2) 火力=J、再生可能エネルギー=L、水力=K  正。水力資源を豊富にもつ国で大きく円グラフを占める部分が K とみられ、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)が徐々に拡大しているが、依然として火力が主力の国もある。図3の円グラフと凡例の対応を確認すると、この組合せが最も適切と考えられる。

(3) 火力=K、再生可能エネルギー=J、水力=L (4) 火力=K、再生可能エネルギー=L、水力=J (5) (6)
 いずれも円グラフの大部分を占める色分けや国ごとの発電事情と合致しづらい。水力が多い国の色分けを K とみるのが妥当とすると、火力が J、再生可能エネルギーが L という組合せが自然である。

問21:正解4

<問題要旨>

ブラジルの農産物輸出額や輸出総額における農産物比率の推移(図4)、および農産物の輸出品目構成の変化(図5)から、背景にある大土地所有制のもとでの商品作物生産や工業化進展、モノカルチャー経済からの脱却などを踏まえ、「適当でないもの」を一つ選ぶ問題。1970年代前後のコーヒー生産依存から、近年では大豆や牛肉など輸出品目が多様化していることが読み取れる。

<選択肢>

(1) 正
 1970年代は大土地所有制背景のもと、コーヒーなど商品作物が重要な外貨獲得源だったとされる。資料からも当時のコーヒー豆比率の高さがうかがえる。

(2) 正
 1990年代にかけて工業化が進み、輸出全体に占める農産物の比率が低下したという言及はグラフからも確かめられる。農業だけでなく工業製品輸出が増える流れがあった。

(3) 正
 2000年代以降、穀物や肉類などの輸出が拡大し、輸出額全体の中で農産物も大きな位置を再び占めるようになった。図4でも農産物輸出額が増大し、輸出総額のうち農産物比率もある程度高まっている傾向が読み取れる。

(4) 誤
 コーヒー豆の輸出額が「減少するどころか増加し続けている」といった記述があれば、それは図5に示される近年の品目構成と矛盾しやすい。実際には大豆や肉類などの比率が大きくなり、コーヒーの相対的シェアは低下傾向にあるため、「モノカルチャーからの脱却が進まない」という主張は適当でない。

問22:正解1

<問題要旨>

ラテンアメリカ諸国(アルゼンチン・ブラジル・ボリビアなど)の GNI(国民総所得)に占める上位 10%層の所得シェアと、1 人当たり GNI との関係を示す散布図から、カ(高所得・高格差)・キ(中所得・高格差)・ク(低所得・低格差 もしくは中程度の格差)などをどの国にあてはめるかを問う問題。どの国が比較的高い所得水準を持ちながら不平等度が高いか、またどこが低い所得水準であっても不平等が大きいかなどを見極める必要がある。

<選択肢>

(1) アルゼンチン=カ、ブラジル=キ、ボリビア=ク
 正。アルゼンチンは比較的高い 1 人当たり GNI をもちつつ不平等度(上位 10%のシェア)も高めであることが多い。ブラジルはさらに不平等度が顕著な場合があるものの、図から判断するとカよりはやや下に位置しているかもしれない。ボリビアは国全体の所得水準が低く、上位層のシェアがそこまで極端ではないと推測され、クに相当するのが自然だと考えられる。

(2) (3) (4) (5) (6)
 いずれも国と記号の対応を入れ替えているため、散布図との位置関係が合わず矛盾が生じやすい。

問23:正解1

<問題要旨>

チリとニュージーランドに関する地理的・自然条件を比較し、選択肢①~④のうちで「チリのみに当てはまるもの」と「ニュージーランドのみに当てはまるもの」を判別する問題。いずれも南半球に位置し、火山や地震が多いなど共通点もある一方、チリではアンデス山脈により縦長の国土が特徴で、ニュージーランドは海洋性気候の影響が大きいなどの相違点がある。

<選択肢>

(1) チリのみ
 正。例として「南アメリカ大陸の西岸を南北に細長く領土が伸び、海岸からアンデス山脈まで急峻な地形が連続している」など、ニュージーランドには該当しない固有の特徴が挙げられる。問題文で「①寒流の影響で~」「②偏西風の影響~」「③フィヨルドや氷河地形~」「④変動帯に位置し~」のどれかがチリ固有になるかを見たときに、(1) が適切な内容であると判断できる。

(2) (3) (4)
 誤。ここではニュージーランドにしか当てはまらない要素を示しているか、または両国共通要素を誤って「一方のみ」としている可能性があるため不適合となる。

問24:正解2

<問題要旨>

同じくチリとニュージーランドについて、選択肢①~④のうちで「ニュージーランドのみに当てはまる」自然条件を問う問題。両国とも変動帯に属し火山・地震が起こりやすいことなど共通点はあるが、ニュージーランド特有のフィヨルド地形や海洋性気候などを手がかりにし、チリでは見られにくい事項を突き止める。

<選択肢>

(1) 誤
 チリもニュージーランドも火山や地震があるため、一方のみには当てはまらないかもしれない。

(2) 正
 ニュージーランドにはフィヨルドや氷河地形が顕著に見られる地域(ミルフォード・サウンドなど)があり、比較的海洋性気候が強い環境と相まって独特の地形が発達している。チリの南端部にもフィヨルド地形は一部あるが、問題文の選択肢がニュージーランド特有を示すならば、全般的にこちらが該当すると判断しうる。

(3) (4)
 他の記述がチリにも該当するか、あるいは両国共通である等の理由で「ニュージーランドのみ」ではないと判断できる。

問25:正解2

<問題要旨>

チリとニュージーランドの輸出総額に占める地域別割合を比較し、表1の「サ・シ」がどちらか、そして「X・Y」が北アメリカか西ヨーロッパかを見極める問題である。1985年と2018年のデータを見比べると、東アジア向け輸出の拡大や、鉱産物の割合が高い国など、地域ごとの輸出動向に違いがみられる。

<選択肢>

(1) チリ=サ、西ヨーロッパ=X
 誤。チリかニュージーランドかをサ・シに振り分ける際、表中の鉱産物割合(2018年)や東アジア向け輸出比率などを照合する必要がある。この組合せはデータ上合わない可能性が高い。

(2) チリ=サ、西ヨーロッパ=Y
 正。チリは銅などの鉱産資源輸出が大きな地位を占め、特に東アジア向けが高い伸びを示す一方、ヨーロッパ向けが相対的に落ち着いた割合となる。表の数値(X・Y)の比較から、Y のほうが西ヨーロッパ向け割合と符合するため、サをチリにあてはめるのが適切となる。

(3) チリ=シ、西ヨーロッパ=X
(4) チリ=シ、西ヨーロッパ=Y
 誤。シをチリに設定した場合、表中のデータが鉱産物割合や輸出相手先の特徴と整合しない。ニュージーランドは農牧産品や畜産物輸出が中心であり、また地域別輸出割合の傾向がチリとは異なるため、これらの組合せでは矛盾が生じる。

第5問

問26:正解3

<問題要旨>

北海道苫小牧市周辺の地形図(図1)を見て、海岸や市街地、背後にある山地の位置関係を把握し、フェリーや列車、バスなどの交通手段で移動する際にどの方向に何が見えるかを読み取る問題である。地図の等高線や道路・鉄道の走向、海岸線・湿地や山の位置がヒントとなる。

<選択肢>

(1) 「南側からフェリーで苫小牧港に近づくと、市街地と樽前山が右側に見える」は誤
 理由:進行方向や海岸線の形状などを照合すると、フェリー航路から苫小牧港に入る場合に「樽前山」は港の北東側付近になるため、必ずしも右側とはいえない。市街地の位置関係も含めて再検討すると違和感がある。

(2) 「列車で勇払駅から東に向かうと、左側に弁天沼やウトナイ湖の水面が見える」は誤
 理由:勇払駅から東に向かう鉄道路線は室蘭本線や日高本線の分岐も考慮しつつ、弁天沼やウトナイ湖がどの位置にあるかを考えると、必ずしも左側にまとまって見えるわけではない。

(3) 「沼ノ端駅のそばを通る国道を北西方向に歩くと、その先に湿地の見える場所がある」は正
 理由:沼ノ端駅付近は広大な湿地(沼や河川跡など)が存在する地域があり、国道を北西に向かうと湿地帯に接近するルートが確認できる。地図上の地形や水域の分布とも合う。

(4) 「バスで苫小牧中央インターチェンジから高速道路を西に向かうと、右側に市街地、左側に樽前山が見える」は誤
 理由:インターチェンジ周辺の市街地や山の位置を確認すると、樽前山はむしろ東寄りにそびえるため、「左側に樽前山」という表現は進行方角と地形との関係からずれる。

問27:正解3

<問題要旨>

苫小牧市周辺に多くの河川が海岸付近で曲流し、平行に流れるように見える理由を検討する問題である。また、直線的に広がる砂浜が形成された背景や、河口付近の流量変化による流路変化を説明する会話文の中で、空欄ア~ウに当てはまる語句(沿岸流・潮汐・夏季・冬季など)を正しく組み合わせる必要がある。

<選択肢>

(1) ア=沿岸流・夏季、大きい … などの組合せ
 誤。砂の運搬が最大となる時期を夏季とするのか冬季とするのか、また沿岸流による砂の堆積が大きいのがどの季節かを再検討する必要がある。
(2) ア=沿岸流・冬季、小さい … などの組合せ
 誤。北海道の海岸で冬季に沿岸流による砂の移動が小さいわけではなく、実情と合わない部分がある。
(3) ア=沿岸流・夏季、大きい … などの組合せ
 正。苫小牧の砂浜では夏季に堆積量が増大しやすく、沿岸流によって砂が運搬・堆積することで直線的な砂浜が形成されている点が特徴的である。河川の流量が大きく変化することや、河口付近の流れが変わりやすいこととも組み合わせて考えると、このパターンが最も適切といえる。
(4) (5) (6) (7) (8)
 他の組合せは、砂の移動が潮汐メインになっていたり、冬季が最大になるなど、図や会話の内容と矛盾する。

問28:正解4

<問題要旨>

苫小牧港と室蘭港の地図や海上貨物取扱量の推移(図4・図5)を見ながら、両港の機能や成り立ち、周辺都市との交通結節などについて職員と高校生が会話している。その会話文中の下線部①~④に含まれる情報のうち、誤りを含むものを選ぶ問題。港の整備時期、取扱貨物の内訳(フェリーとその他)、北海道内での地位などを読み解くことがカギとなる。

<選択肢>

(1) 正
 苫小牧港が内湾に面して波が穏やかで、天然の良港という特徴は整合しやすい。
(2) 正
 苫小牧港は1963年に本格的な浚渫工事で大規模整備され、近年まで海上貨物取扱量が伸びてきたという点もグラフから示唆される。
(3) 正
 苫小牧港が人口の多い札幌市やその周辺への距離が比較的短く、北海道内の物流拠点化してきたのも確からしい。
(4) 誤
 苫小牧港が「海外との貿易の占める割合が室蘭港よりも高い」とされるが、グラフの海上貨物取扱量の内訳を見ると、実際には室蘭港のほうが鉄鋼製品など国際貿易に依存している可能性が指摘される。あるいはフェリー比率を除いた数字で考えると必ずしも苫小牧港が高いとは限らず、会話で述べている内容に誤りが含まれると判断できる。

問29:正解6

<問題要旨>

苫小牧港の整備以降に工業がどのように変化したか、表1にある「北海道の製造品出荷額に占める苫小牧市の割合」と、「苫小牧市の製造品出荷額に占める各業種(A~C)の割合」を時系列(1971年と2018年)で比較し、A・B・C が何の製品(食料品・石油製品・パルプ・紙加工など)かを推定する問題である。工場立地が進んだ業種や伸び悩んだ業種を照合しながら正しい組合せを選ぶ。

<選択肢>

(1) ~ (5)
 いずれも食料品・石油製品・パルプ紙などの割り当てがズレており、表の数値変化と整合しにくい。
(6) 正
 食料品が A、石油製品・石炭製品が B、パルプ・紙・紙加工品が C と割り当てると、1971年~2018年における増減の度合いが表の数値と合致する。たとえば B(石油製品)は1970年代以降、苫小牧で大きくシェアを伸ばしたことが説明できる。

問30:正解3

<問題要旨>

苫小牧市内の複数住宅地区(d, eなど)を歩き、建物や街並み・人口構成を資料として整理し、さらに 1995年と2015年の年齢別人口構成のグラフ(図6)を比較して、地区 d と地区 e のどちらが「カ」(グラフ左側)や「キ」(グラフ右側)に対応するか、そして X年・Y年がどちらの年(1995年か2015年)かを正しく対応づける問題である。

<選択肢>

(1) 地区 d=カ(X年=1995年, Y年=2015年), 地区 e=キ …
 誤。グラフから読み取れる特徴が実態と合わない場合がある。とくに市中心部の社員向け住宅団地と郊外戸建て住宅地では、人口のピーク年代や高齢者比率が異なる。
(2) 地区 d=カ(Y年=1995年, X年=2015年), 地区 e=キ …
 誤。X年とY年を逆に割り当ててしまうと、若年層や高齢層の分布状況が年代の推移と合わなくなる。
(3) 地区 d=カ(X年=1995年, Y年=2015年), 地区 e=キ …
 正。地区 d は中心市街地の古い社員住宅団地で、1995年と比べて2015年には高齢化や空き部屋の増加などが顕著になっている。グラフ「カ」の左(X年)から右(Y年)にかけて高年齢層が増える動きが当てはまる。地区 e(郊外戸建て)のほうは家族世帯が多く、高齢化の度合いが異なるため図「キ」の人口ピラミッドと整合すると考えられる。
(4) 地区 d=キ, 地区 e=カ …
 誤。2つのグラフと地区の実態を照合すると逆割り当てでは説明しづらい。

問31:正解2

<問題要旨>

苫小牧市の中心市街地で空き店舗や空き地が増え、人の流れが減少している問題に対して、全国の地方都市でも共通してみられる課題であることを踏まえ、その解決策として提示される事例(文タ、文チ)のどちらを採用するかを問う問題。さらに会話文の空欄 E・F に「サ(市役所の西)」「シ(苫小牧港の北)」、およびタ・チ のいずれかが当てはまる組合せを選ぶ。

<選択肢>

(1) E=サ, F=タ …
 誤。市街地の衰退が見られるのは「市役所の西」よりも「苫小牧港の北」とされるかどうかを確認する必要がある。
(2) E=サ, F=チ …
 正。E に「市役所の西」とすることで、中心市街地周辺の空き地や空き店舗が増えたエリアを示し、F には「利用者の予約に応じて運行するバスなどの公共交通の利便性向上策」を挙げた文チを当てはめると、会話の流れと合致する。
(3) E=シ, F=タ …
 誤。苫小牧港の北側が中心市街地の問題点というわけではないケースが多く、また F に「大規模商業施設の開発」を当てはめるのが適切かどうかも疑問。
(4) E=シ, F=チ …
 誤。E と F の対応が逆になるため、会話文で述べられる地域特性や解決策の内容と整合しない。

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