解答
解説
第1問
問1:正解5
<問題要旨> 本問は、明治期に活躍した日本の思想家(福沢諭吉・中江兆民など)が説いた「文明開化」や「民権思想」の受容に関する問題です。提示された引用文が誰の著作かを見極め、それぞれ最も適切な組合せを選ぶよう求められています。引用文の内容(西洋の翻訳書に学ぶ姿勢や人間の平等・民権、内発的な文明化など)から、福沢諭吉が示した実学重視・翻訳書の取り入れ方、中江兆民が展開した民権思想の特徴を照らし合わせることがポイントです。
<選択肢> ①【福沢諭吉→ア 中江兆民→イ】(誤) - アの引用文は「恩赦的な民権が…」という趣旨が含まれており、近代的市民社会の展開よりも“漸進的に庶民が権利を得る”といった書きぶりがうかがえる。これはむしろ保守的な権利観を強く示す文脈に近く、福沢諭吉の実学重視・独立自尊の語り口とはやや異なる。
- イには「西洋の開化は内発的で…」とあるが、福沢諭吉の代表的文献と方向性がずれるので誤りと考えられる。
②【福沢諭吉→ア 中江兆民→ウ】(誤) - アは上記と同様に福沢の趣旨と整合しにくい。
- ウには「西洋の翻訳書を取り調べ…年少にして文文たる者へは横文字をも読ませ…」という“学問の勧め”に通じそうな内容があるが、アの方が福沢とは合致しないため、全体として組合せが不適切。
③【福沢諭吉→イ 中江兆民→ア】(誤) - イの「西洋の開化は内発的で…花が開くように外に向かう…」は、日本独特の“外発的な文明化”を論じている節がある。福沢諭吉の思想の一部には「脱亜論」など広く西洋の制度を取り入れる主張もあるが、“内発的”という表現は必ずしも福沢には当てはまりにくい。
- またアの引用は前述のとおり「恩賜的民権の漸進」を描いており、より「前近代から徐々に民権を得る」という視点が強い。こちらは中江兆民の急進的な民権思想とは方向性が異なる。
④【福沢諭吉→イ 中江兆民→ウ】(誤) - イを福沢諭吉の文脈と見る点に疑いがあるため不適切。
- ウが中江兆民かどうかも慎重に考える必要があるが、ウの引用文は“学問の導入方法”や“翻訳書の活用”に強い関心を示す文章で、こちらの方がむしろ福沢諭吉の書きぶりに近い。
⑤【福沢諭吉→ウ 中江兆民→ア】(正) - ウには「翻訳書を取り調べ、実事を押さえ…物理の道理を求め…今日の用を違(たが)うべからず」という“学問の勧め”を想起させる語りが明確に見られる。これは福沢諭吉が西洋の学術を積極的に取り入れ、実学重視を提唱した姿勢と近い。
- アは「恩賜的民権の最初は少なくとも…漸次に胚胎し…肩を並ぶるに至る」というように、“旧来の権威体制の下、ゆるやかに民権が拡大していく”旨の表現がある。しかし中江兆民の著作には、従来の王権的支配から近代的自由へと移行する流れの途中で“漸進的・段階的”な民権の伸張を論じる箇所も存在し、急進的に思われがちな一方で「恩賜的民権に始まり、やがて普通選挙へとつながる」という段階論的視点も残している。よってアは中江兆民の文脈と合致すると考えられる。
⑥【福沢諭吉→ウ 中江兆民→イ】(誤) - イの「内発的な開化」論は、どちらかというと日本の開化を“伝統的なものが自然に花開くように発展する”という捉え方が垣間見える。中江兆民はフランス留学の経験などから、より直接的に“人権”や“自由民権”を論じたため、イと必ずしも一致するとは言いがたい。
- ウを福沢諭吉に当てる点はよいが、イを中江兆民とする根拠が薄いため不適切となる。
問2:正解4
<問題要旨> 本問は、三権分立(立法・行政・司法)の考え方をもとに、モンテスキューの権力分立論がどのように整理されているかを確認する問題です。カードⅠとカードⅡの記述を照合し、三権分立の具体的な仕組み(職業的裁判官による裁判、犯罪捜査権と逮捕権の分離、議会が担う役割など)との対応関係を見極めます。
<選択肢> ①【イと②、ウと③】(誤) - イは「三つの権力をそれぞれ議会・内閣・裁判所が担う」という一般的説明であり、②は「立法権は貴族と平民の議会が担い…」というカードⅡの文言。これらが必ずしも対応しきれていない可能性がある。
- またウ・③の対応も、ウには「抑制・均衡を図る」程度の説明しかなく、③「立法権や執行権は…裁判権に対して…介入をしない」は要旨が少しずれている。
②【イと②】(誤) - イの説明と②の説明だけを組み合わせても、残るウや③との対応関係が整理されていない。
- 質問文ではカードⅠのア〜ウをカードⅡ(1)〜(3)に照らし合わせて整合を検討する構造になっているため、イと②のみでは根拠を満たせない。
③【ウと③】(誤) - ウの記述は「三権が相互に抑制・均衡を図る」という要点だが、③の「立法権や執行権に対して裁判権が…」という箇所との対応だけでは不十分。
- またイや②の組み合わせをどう扱うかに触れられていないため、正解とはならない。
④【合致しているものはない】(正) - カードⅠのア〜ウそれぞれと、カードⅡ(1)〜(3)を単純に対応させた際、「立法権・行政権・司法権」という三つの権力を分ける仕組みは大枠合致するが、引用された具体的な内容(貴族院と平民院、職業的裁判官の裁判など)とカードⅠの記述を厳密に合わせようとすると一部食い違いが生じる。
- そのため「①〜③の組み合わせはすべてどこかに齟齬があり、合致しているものはない」という結論に至る。
問3:正解4
<問題要旨> 本問では、モンテスキューとロックの権力分立論を比較し、それらが現代の政治体制とどの程度整合するかを問うています。カードⅢにはロックの「統治二論」で説かれる立法権と執行権の分離がまとめられており、これをA・Bの記述(中国の権力集中制との対比など)と照合します。
<選択肢> ①【A=正 B=正】(誤) - A「ロックの権力分立はモンテスキューと同じ視点で三つに区別・分離する」とあるが、ロックは「立法」と「執行」を中心に分ける点が強調されており、モンテスキューのように立法・行政・司法の三権を厳密に分けるとはやや異なる部分もある。Aを完全に正とは言いにくい。
- B「共産党の指導下にある中国の権力集中制がカードⅢのあり方と合致する」とあるが、中国の一党支配体制は三権分立を採用していないので、ロック型の分立論と合致するとは考えにくい。
②【A=正 B=誤】(誤) - Aを正とした点に同様の疑問が残る。
- Bを誤とする方向は妥当性があるが、Aが正かどうかが不確定。
③【A=誤 B=正】(誤) - Aを誤とする点は「ロックは立法・執行を重視しており、モンテスキューと完全一致ではない」という理由であれば妥当性がある。
- しかしBを正とするのは、中国の権力集中制がロックの分立論と「合致する」という評価になるため、そこが論理的に成り立たず矛盾する。
④【A=誤 B=誤】(正) - Aに関しては、ロックの権力分立論はモンテスキューほど厳密に三権に分割したわけではなく、「モンテスキューと同様に三つに区別・分離する」と断定するのは誤りと考えられる。
- Bに関しては、中国の共産党一党支配による権力集中制はロックの分立論と相容れず、「合致する」とは言いがたい。よってBも誤りとなり、A・Bともに誤りが妥当といえる。
問4:正解2
<問題要旨> 現代日本の司法制度について、公開の原則や最高裁判所長官の任命、弾劾裁判所の設置など、憲法や裁判所法の規定を踏まえて正しく述べているかどうかを問う問題です。どの選択肢が現行の日本国憲法や司法制度に合致するかを見極めます。
<選択肢> ①【「裁判所による許可がない限りは、非公開で行われる」】(誤) - 刑事裁判や民事裁判は、原則として公開が憲法で保障されている。公開しない例外が一部あるだけで「非公開が原則」という言い方は誤り。
②【「個々の裁判官は、良心に従って独立して職権を行い…」】(正) - 日本国憲法第76条3項で「裁判官はその良心に従ひ独立してその職権を行ひ…」と定められている。加えて裁判官の独立は保障され、憲法および法律のみに拘束される。
③【「最高裁判所長官は、国会が議決を経て指名する」】(誤) - 最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命する(憲法第6条)。国会の議決を経るわけではない。
④【「罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する弾劾裁判所は、衆議院のみが設置する」】(誤) - 弾劾裁判所は衆参両議院に設置される(国会法等の規定)。衆議院のみではない。
問5:正解3
<問題要旨> 刑事事件における裁判手続や捜査機関の活動(検察審査会、被告人の権利保障など)を取り上げ、現行制度の特色を正しく理解しているかを確認する問題です。有罪判決後の再審や被害者参加制度、検察審査会におけるメンバー構成などが選択肢に示されるため、それぞれが日本の刑事司法制度の実際と照合されます。
<選択肢> ①【「刑事裁判では、裁判官の下で当事者が妥協点を見付けて訴訟を終結させる和解が行われることがある」】(誤) - 刑事裁判は、民事裁判のように当事者同士が和解して訴訟終了とはならない。刑事事件は公訴の維持・取り下げの判断は検察官が行い、当事者同士の和解で終了する制度はない。
②【「検察官による不起訴処分の当否を審査する検察審査会の審査員は、裁判官から選出される」】(誤) - 検察審査会の審査員は、くじで選ばれた一般市民が担当する(裁判官が選ぶわけではない)。
③【「有罪判決が確定した後であっても、一定の条件の下で裁判のやり直しを行う制度がある」】(正) - いわゆる再審制度は、日本でも重大な事実誤認などがあれば有罪判決後に裁判をやり直せる仕組みが存在する。これは刑事訴訟法に定められている。
④【「被害者参加制度の導入によって、犯罪被害者やその遺族は、裁判員として裁判に参加できるようになった」】(誤) - 被害者参加制度は、公判で被害者(または遺族)が意見陳述や被告人への質問を行う制度。ただし裁判員制度とは別で、被害者が裁判員になる仕組みではない。
問6:正解1
<問題要旨> 民事事件における紛争解決方法(訴訟・ADR・損害賠償責任など)について問う問題です。特に「裁判所以外での第三者の関与による和解手続」や「契約自由の原則」がどこに当てはまるかを見極めます。
<選択肢> ①【「訴訟以外の場で公正な第三者の関与の下で紛争を解決する制度を導入するため、裁判外紛争解決手続法(ADR法)が制定された」】(正) - 日本では、裁判によらない紛争解決手段として調停や仲裁などを含むADR制度が整備されており、ADR促進法(通称ADR法)が施行されている。
②【「損害賠償を求める訴訟では、原則として、過失のない場合でも責任を問われる」】(誤) - 民事上の損害賠償責任は、故意または過失が基本要件。原則無過失責任が課されるのは特別法で定められる場合などに限られる。
③【「民事紛争を解決するための手段の一つとして、裁判所が関与する斡旋がある」】(誤) - 「斡旋」という表現は行政による労働争議解決などで用いられることが多い。民事分野では「調停」や「和解」が通常の用語。裁判所による調停制度はあるが「斡旋」という言い方は通例でないこと、選択肢の文脈としてやや不自然。
④【「物の持ち主はその物を自由に扱うことができるという原則を、契約自由の原則という」】(誤) - 「契約自由の原則」は当事者がどのような契約を結ぶかを自由に決定できる原則のこと。所有権に基づく自由処分の話とは厳密には別概念なので、この記述は誤りとなる。
問7:正解3
<問題要旨> 行政手続や行政訴訟、行政機関の法的根拠(委任立法など)に関する問題です。日本の行政は「法律の留保」原則のもと、国会で制定された法律にもとづいて行われますが、法令によって行政が具体的規定を定める委任立法がどのように機能するか、また行政訴訟の扱いをどう考えるかを問うています。
<選択肢> ①【「行政の活動に関する訴訟については、行政裁判所が審理を行う」】(誤) - 日本には大陸法系のような「行政裁判所」は存在せず、通常の裁判所(司法裁判所)が行政事件も扱う。
②【「国家公務員の職業倫理強化を主な目的とする、行政手続法が制定された」】(誤) - 行政手続法の主眼は、行政処分を行う際の手続の公正・透明性の確保であり、公務員の倫理規定を定める法律ではない。職業倫理を定めるものには国家公務員法などがある。
③【「法律による委任に基づき、行政機関がその法律の具体的な内容を政令や省令などによって定めることを委任立法という」】(正) - 委任立法は、国会で成立した法律の範囲内で、行政機関(内閣や各省)が細目を定める仕組み。日本では憲法でも内閣に政令制定権が認められるなど、一般的な制度として根付いている。
④【「国会審議活性化法により、内閣府や各省に、内閣によって任命される副大臣と政務次官が設置された」】(誤) - 副大臣や政務官(旧・政務次官)を設置する制度は「中央省庁改革関連法」によるもので、「国会審議活性化法」とは直接結びつかない表現。
問8:正解2
<問題要旨> 政党Xと政党Yの主張を例に、単独政権・連立政権、伝統的共同体価値の重視・ライフスタイル多様性の重視といった軸で「どの象限に位置づけられるか」を判断させる問題です。二大政党制の推進を掲げる政党と、多党制・多様なアイデンティティを尊重する政党の志向性を読み取り、それぞれが単独政権志向か連立政権志向か、伝統的価値寄りか多様性寄りかを整理します。
<選択肢> ①【政党X→ア 政党Y→ウ】(誤) - 「ア」は単独政権の形成に加え、ライフスタイルの多様性を重視する象限。政党Xが「二大政党制を目指した選挙制度改革」を掲げていること自体は単独政権になりやすい要素だが、同時に「地域の結束と家族の統合を重視」と言っているため、やや伝統的価値に近いとも読める。
- Yが「ウ」=連立政権×伝統的共同体の価値 という組合せになるが、Yは「個々人のアイデンティティを尊重」とあるため、伝統よりは多様性寄りになると考えられる。
②【政党X→イ 政党Y→エ】(正) - 「イ」は単独政権×伝統的共同体の価値を尊重する象限。Xは「二大政党制への改革」「地域の結束と家族の統合の重視」とあるため、伝統的価値観寄りかつ単独政権を取りやすい方向性と見られる。
- 「エ」は連立政権×ライフスタイルの多様性を尊重する象限。Yが「多党制を目指す」「個々人の多様なアイデンティティを尊重」とある点を踏まえると、連立政権の形を念頭に、個人の多様性を尊重する姿勢と整合する。
③【政党X→ウ 政党Y→ア】(誤) - Xを「ウ」(連立政権×伝統的価値)とするには、二大政党制を目指す姿勢が合わない(むしろ連立より単独政権に近い)。
- Yを「ア」(単独政権×多様性重視)とするにも、「多党制を目指す」との方向は矛盾する。
④【政党X→エ 政党Y→イ】(誤) - Xを「エ」(連立政権×多様性重視)と読むには、地域や家族の統合を重視する保守的要素が合致しづらい。
– Yを「イ」(単独政権×伝統的共同体の価値)とするのも、文言上「多党制」「個々人のアイデンティティを尊重」とあるため、正反対となる。
⑤【政党X→ア 政党Y→イ】(誤) - Xを「ア」(単独政権×多様性重視)に置くには、「地域の結束と家族の統合を重視」という要素が乏しい。
– Yを「イ」(単独政権×伝統的価値)に置くにも、多党制を掲げるYとは整合しない。
⑥【政党X→イ 政党Y→ア】(誤) - Yを「ア」とすると単独政権×多様性重視であり、「多党制」は単独政権志向に反するため不整合。
– 結局、Xが「イ」、Yが「ア」という入れ替えは成り立たない。
第2問
問9:正解6
<問題要旨>
本問は、循環型社会を推進するうえで提唱されている「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」を、優先順位の高い順(①リデュース ②リユース ③リサイクル)に並べ替える問題です。ヤマダさんの発表内容「ア~エ」のうち、どれが「リデュース」「リユース」「リサイクル」に相当するかを見極め、法律上も示されている優先度で正しく配列します。
<選択肢> ① ア→イ→ウ
(誤)
ア(使用済み食品トレーを原料に再利用)=リサイクル、イ(埋め立て)=3R該当外、ウ(使い捨て削減)=リデュースであり、3Rの優先順を「リデュース→リユース→リサイクル」と並べることはできない。
② ア→エ→イ
(誤)
ア=リサイクル、エ(何度も洗浄して使う)=リユース、イ=3R外。イがそもそも3Rではなく、しかもアよりエを先に持ってくる場合は「リサイクル→リユース」という順になるため、優先度の観点と矛盾する。
③ イ→ア→エ
(誤)
イ(埋め立て)を最初に置いている時点で3Rの枠外が先に来るので不適当。3Rをそもそも正しく並べていない。
④ イ→ウ→エ
(誤)
イが先頭にある点で、3Rではない埋め立て(処分)をリデュースよりも手前に置いており、3Rの優先度として正しくない。
⑤ ウ→ア→イ
(誤)
ウ(リデュース)→ア(リサイクル)までは「削減→再資源化」の順でおおむね良いが、最後がイ(埋め立て)で終わり、この並び全体を3Rとして並べた形になってしまう。3R外のイを含めた並び方としては不十分。
⑥ ウ→エ→ア
(正)
ウは使い捨て製品削減=リデュース、エは洗浄・再使用=リユース、アは原料として再利用=リサイクルであり、かつ「リデュース→リユース→リサイクル」の優先順に合致している。
⑦ エ→ア→ウ
(誤)
エ(リユース)→ア(リサイクル)→ウ(リデュース)と、リデュースが最後になっており、3Rの一般的な優先度と逆転している。
⑧ エ→イ→ウ
(誤)
エ→イ→ウ では、イ(埋め立て)が含まれているうえ、順番も「リユース→処分→リデュース」となり、3Rの考え方に反する配置となる。
問10:正解6
<問題要旨>
イケダさんの発表内容で示された「古い建物A~Cをどのような方法(i, ii, iii)で決定投票した場合に、どれが最終的に選ばれるか」という設定をもとに、「ア」「イ」の欄に入る建物の組合せを問う問題です。方法i~iiiの手順(1位が多い建物を即決する、あるいは3位が多かった建物を除いて決選投票を行う等)を踏まえ、最終的にどの建物が残るかを読み解きます。
<選択肢> ① ア=建物A イ=建物B
(誤)
方法ii・iiiで残る候補を比較した際、建物Bがどちらに該当するかを検証すると、条件によっては別の建物が優勢になる場合があり、組合せとしての一貫性に疑問がある。
② ア=建物A イ=建物C
(誤)
同様に、方法iiでAが選ばれるか、方法iiiでCが生き残るかは、アンケート分布次第で整合性に難がある。
③ ア=建物B イ=建物A
(誤)
方法iiの時点でBが決選投票に進むかを検討する必要があるが、提示された票数によっては別の結果が出る可能性がある。
④ ア=建物B イ=建物C
(誤)
方法iiiの対象となる建物がどれかを確かめると、BとCの組合せがすんなり当てはまるとは限らない。
⑤ ア=建物C イ=建物A
(誤)
方法iiではAとCが多かった場合の決選投票、方法iiiでは別の建物を除く投票になる。C→Aの決まり方が票数の内訳と論理的に合わないパターンが考えられる。
⑥ ア=建物C イ=建物B
(正)
方法iでAが即決される一方、方法iiで多かった建物がCとBに絞られ決選投票に至るケース、方法iiiで3位が多い建物を除いた結果、CとBの決選投票になるケースが、実際のアンケート分布を踏まえると一致しやすい。こうした投票手順を総合すると、アにC、イにBが入ると矛盾しにくい。
問11:正解6
<問題要旨>
国内外の政治的決定において、議会や国民投票、リコール請求などに必要な賛成多数や署名数の要件が異なることを理解する問題です。アメリカの連邦議会での大統領拒否権の覆し方、日本国憲法改正、地方自治体の首長解職請求(リコール)の要件を正しく組み合わせることが問われています。
<選択肢> ① a=3分の1以上 b=過半数 c=3分の2以上
(誤)
アメリカ大統領拒否権の覆し(a)に3分の1以上では足りず、通常は上下両院の3分の2以上が必要と言われる。
② a=3分の1以上 b=3分の2以上 c=過半数
(誤)
憲法改正(b)に3分の2以上が必要なのは国会。国民投票では有効投票の過半数とされることが一般的で、組合せがずれる。
③ a=過半数 b=3分の1以上 c=3分の2以上
(誤)
大統領拒否権を過半数で覆せるわけではなく、bやcもそれぞれずれがある。
④ a=過半数 b=3分の2以上 c=3分の1以上
(誤)
aに過半数を充てるのは大統領拒否権を覆す要件に合致しない。bに3分の2以上は国会発議要件のみを指し、国民投票の要件が不十分。
⑤ a=過半数 b=3分の2以上 c=過半数
(誤)
首長の解職請求(c)に過半数の署名を求めるのは過大。リコール請求の要件は有権者の一定数(3分の1)などが一般的。
⑥ a=3分の2以上 b=過半数 c=3分の1以上
(正)
a(大統領拒否権の覆し)には両院で3分の2以上、b(国民投票による憲法改正承認)は有効投票総数の過半数、c(首長解職請求の署名数)は当該自治体の有権者の3分の1以上という要件がそれぞれ実情に最も近い。
⑦ a=3分の2以上 b=過半数 c=過半数
(誤)
cに「過半数」の署名はリコール要件としては高すぎて現行制度と整合しない。
⑧ a=3分の2以上 b=3分の2以上 c=3分の1以上
(誤)
bを3分の2以上とすると、国会による発議と国民投票の承認要件を混同しているか、国民投票の条件を無視している恐れがある。
問12:正解2
<問題要旨>
ここでは、自然環境や生物の多様性についての基本的概念を指す語句が問われています。発表内容で示された「人間にとっての自然のかけがえのなさ」に関し、選択肢a・bの説明がどの用語(ア:宇宙船地球号/イ:アニミズム/ウ:生物多様性)に当たるかを見極める問題です。
<選択肢> ① a=ア b=イ
(誤)
aは「将来にわたって人類が限られた空間で~」という文脈から、地球を有限の宇宙船にたとえる発想に近い。bがアニミズム(イ)だとすると、「多様な生物種を保存すべき価値」には必ずしも直結しづらい。
② a=ア b=ウ
(正)
aの記述は「限られた空間で生きることを前提に、環境負荷をかけすぎないよう警鐘を鳴らす」趣旨であり、地球をひとつの宇宙船になぞらえる「宇宙船地球号」と合致する。bは「異なる生物種や品種にわたる豊かな差異を保全すべき価値」=生物多様性に関する説明として整合する。
③ a=イ b=ア
(誤)
aにアニミズムを当てるのは、「万物に霊が宿る」発想であって“有限空間”という意味合いではない。bを宇宙船地球号とするのも、生物多様性の説明として適切ではない。
④ a=イ b=ウ
(誤)
aにアニミズムを当てるのは誤り。bに生物多様性を当てるのは一見よいが、aがイにそぐわない。
⑤ a=ウ b=ア
(誤)
aを生物多様性に結びつけると、「限られた空間で~」というニュアンスを拾いきれない。bを宇宙船地球号にすると「多様性」という趣旨から外れる。
⑥ a=ウ b=イ
(誤)
aを生物多様性、bをアニミズムと捉えるのも文意がずれる。そもそもアニミズムは自然物や森羅万象に霊性を認める考え方で、「遺伝資源としての多様性価値」云々とは別の枠組み。
問13:正解2
<問題要旨>
環境問題や軍縮などの国際条約の概要、あるいは貿易上の優遇措置の制度を正しく理解する問題です。ここでは、「環境条約の『共通だが差異のある責任』」「核拡散防止条約(NPT)」「一般特恵関税制度」がそれぞれどのような内容なのか、記述の正誤を判定します。
<選択肢> ① ア=正 イ=正 ウ=正
(誤)
ウ「一般特恵関税制度」の説明が、開発途上国への輸入促進と表現されていれば要注意。本来は先進国が途上国からの輸入品に低関税を適用し、途上国の経済発展を促す制度である。
② ア=正 イ=正 ウ=誤
(正)
ア(環境条約で先進国がより大きな責任を負うことを求める原則)は妥当。イ(核拡散防止条約では、核兵器保有国を増やさないため「非核兵器国」に核兵器製造・取得を禁止している)も概ね正しい。ウは「先進国が途上国から輸入する際に関税を軽減する制度」が正しい趣旨だが、選択肢文言では「途上国による輸入を促進」と読める表現になっていて誤りと判断できる。
③ ア=正 イ=誤 ウ=正
(誤)
核拡散防止条約(イ)を誤りとみなす根拠が薄い。さらにウが正しいかどうかも、選択肢の説明文に問題があるので全体として不整合。
④ ア=正 イ=誤 ウ=誤
(誤)
イが誤りとされる根拠は見出しづらい。アはともかくウだけ誤りとは限らず、この組合せは不適切。
⑤ ア=誤 イ=正 ウ=正
(誤)
アは「共通だが差異のある責任の原則」という環境条約の考え方に近く、誤りとする理由は乏しい。
⑥ ア=誤 イ=正 ウ=誤
(誤)
アを誤りにする根拠はなく、ここではイを正、ウを誤とする点は一部あっているが、アを誤とするのは不当。
⑦ ア=誤 イ=誤 ウ=正
(誤)
アを誤・イを誤とするのは双方ともに適切とは言いがたい。
⑧ ア=誤 イ=誤 ウ=誤
(誤)
三つすべてを誤りとみなす必然性はないため、不適当といえる。
第3問
問14:正解1
<問題要旨>
本問は、1980年代における日本の実質経済成長率の推移を示す折れ線グラフを選ぶ問題です。高度経済成長期(1950〜60年代)ほどではないものの、1980年代前半は比較的安定的な成長率を維持し、後半になるとバブル経済の影響でやや上昇する動きが見られました。大きなマイナス成長は起こっていないが、1960年代ほどの二桁成長には及ばない、という特徴を踏まえてグラフを判断します。
<選択肢> ①(正)
- 1980年代前半はおおむね中程度の成長率をたどり、後半にかけて一時的に成長率がやや上向く形が読み取れる。二桁に大きく振れることなく、おおむねプラス圏で動くため、1980年代の傾向と合致する。
②(誤)
- 途中で急激に成長率が落ち込む場面が大きく描かれているため、1980年代としては振れ幅が大きすぎる印象がある。
③(誤)
- 緩やかな右下がりの傾向が強く、成長率が後半に入っても低迷し続けるようなグラフで、バブル期にやや上昇傾向を示す1980年代の実態と乖離する。
④(誤)
- 全体にわたって二桁成長近い高い水準を維持しているように見え、高度成長期を思わせるパターン。1980年代にこれほどの高水準は見られない。
⑤(誤)
- プラス成長とマイナス成長を繰り返すように波打ち、後半には成長率がゼロ近くまで落ち込む。1980年代後半のバブル経済期のプラス傾向と整合しにくい。
問15:正解3
<問題要旨>
本問は、日本のGDP(国内総生産)に「含まれる/含まれない」経済活動を選別する問題です。GDPは国境内で生産された付加価値の合計を計上するため、活動がどこで行われたかが判断基準となります。
<選択肢>
A【日本のプロ野球でプレーするアメリカ人選手に球団が支払った年俸】
→ プレーが日本国内で行われており、日本球団からアメリカ人選手へ支払われる報酬は、日本国内の生産活動に基づく付加価値としてGDPに含まれる。
B【日本人アーティストがイギリスで行ったコンサートの興行収入】
→ イギリス国内で生み出されたサービスの付加価値なので、日本のGNP(国民総生産)的には関連しうるが、地理的にはイギリスでの活動であり、日本のGDPには含まれない。
C【日本の温泉地を訪れた中国からの観光客が旅館に支払った宿泊料】
→ 日本国内で提供された宿泊サービスに対する支払いであり、日本国内での付加価値生産としてGDPに含まれる。
① AとBとC
(誤) Bは国内での生産活動でないため誤り。
② AとB
(誤) Cも日本国内での生産に該当するため外せない。
③ AとC
(正) AもCも日本国内の付加価値創出にあたり、GDPに含まれる。
④ BとC
(誤) Bはイギリスでの活動なので日本のGDPには含まれない。
⑤ A
(誤) Cも含まれるため不十分。
⑥ B
(誤) Bはイギリスでの活動なのでGDPに含まれない。
⑦ C
(誤) Aも含む必要がある。
⑧ 日本のGDPに含まれるものはない
(誤) AとCは含まれる。
問16:正解2
<問題要旨>
本問は国際貿易に関する基本用語・制度を問う問題です。水平貿易・保護貿易政策(非関税障壁)・為替レートと貿易収支の関係・多角的貿易交渉などについて、記述が正しいかどうかを判断します。
<選択肢>
①【途上国で生産された原材料と先進国で生産された工業製品が交換される貿易は“水平貿易”と呼ばれる】
(誤) 一般にこれを“垂直貿易(南北問題の構図)”と呼ぶことが多い。水平方向の貿易は似たような付加価値の工業製品同士などを交換する場合を指す。
②【保護貿易の手段の一つとして、輸入品検品の厳格化が行われる場合、これは非関税障壁と呼ばれる】
(正) 関税以外の手段(衛生基準や検疫強化など)を使って輸入を制限・抑制するものは一般に非関税障壁に分類される。
③【他の経常収支項目が一定ならば、日本の貿易収支の黒字幅が拡大することは、為替レートが円安に動く一因となる】
(誤) 貿易黒字が大きいとむしろ円高要因になる場合が多い。黒字国の通貨は需給関係で買われやすくなる。
④【日本がコメの輸入について部分開放を初めて受け入れた多角的貿易交渉は、ドーハ・ラウンドである】
(誤) 日本のコメ市場部分開放が取りざたされたのはウルグアイ・ラウンド(1993年合意)であり、ドーハ・ラウンドではない。
問17:正解4
<問題要旨>
景気変動の種類(コンドラチェフの波・ジュグラーの波など)や、景気が悪化した際に行われる財政政策・景気の自動安定化装置(ビルトイン・スタビライザー)などを問う問題です。どの記述が正しいかを見極めます。
<選択肢>
①【コンドラチェフの波と呼ばれる景気変動は、在庫投資の変動によって起こるとされる】
(誤) 在庫投資の変動による景気循環はキチンの波(短期波動)に近い。コンドラチェフの波は技術革新などに起因するとされ、周期が約50年と長い。
②【ジュグラーの波と呼ばれる景気変動は、建設投資の変動によって起こるとされる】
(誤) ジュグラーの波は設備投資の盛衰に由来すると言われることが多く、建設投資(建築)とのみ断定するのは誤り。建設業の変動は主にクズネッツの波(建設投資による20年周期)と関連が深い。
③【景気が悪いときに行われる拡張的財政政策の一つとして、政府支出の削減がある】
(誤) 景気が悪いときの拡張的財政政策では支出を増やす・減税する等が普通で、支出削減はむしろ緊縮策となる。
④【景気の自動安定化装置の役割を担う制度の一つとして、所得税の累進課税制度がある】
(正) 累進課税や失業給付などは、景気が過熱すると税負担が増え消費が抑制され、逆に不況時には税収が減り可処分所得が下支えされるため、自動的な景気安定装置として機能する。
問18:正解2
<問題要旨>
公的財と私的財の区別として、「非排除性(料金を払わなくても利用を排除できない)」「非競合性(ある人が利用しても他の人の利用が減らない)」などがよく例に挙げられます。会話文では「一般道」のように非排除性・非競合性を有する財を民間が供給するとどうなるか、という論点から政府の役割を考えさせる内容となっています。選択肢では【A】【B】に入る発言が最も妥当なものを探します。
<選択肢>
① A=「一般道を作るためには行政上の複雑な手続きが必要となる」 / B=「社会で必要とされる最少の道路を作ろうとしない」
(誤) “行政手続きの複雑さ”の話が直接的な文脈ではない。民間が担うと「採算が合わず十分に供給されない」などの問題が想定されるが、「最少の道路を作ろうとしない」というのも的を射ていない。
② A=「一般道を使う人はお金を支払わない」 / B=「社会で必要とされる以上に道路を作ろうとする」
(正) 非排除性が高い一般道では、通行料を徴収しにくく、利用者がお金を払わずに利用できる(A)。その結果、民間企業が収益を得にくく、もし作るなら採算を確保するために高い料金設定などが必要になるが、むしろ採算割れを起こし資本投下に見合わない可能性が大きい。しかし、問題文の対比としては「政府に任せず企業に委ねると、収益最大化をめざす姿勢が『必要以上に開発を進めるか・あるいは逆に投資しないか』」が論点となる。選択肢②は文意上「金を払わない=非排除性」「企業は利潤を求めて過大な投資へ向かう」などのパターンを描いており、比較的整合する。
③ A=「一般道を作り過ぎても損をする心配がない」 / B=「社会で必要とされる以上に道路を作ろうとしない」
(誤) 企業は過剰投資すれば赤字を被る可能性があるため、「作り過ぎても損しない」は言いにくい。
④ A=「一般道は世の中のあらゆる人が利用する可能性がある」 / B=「社会で必要とされる以上に道路を作ろうとする」
(誤) Aの文言はただの説明に近く、Bと組み合わせても問題文の意図と合致しづらい。
問19:正解5
<問題要旨>
財やサービスを「排除性の有無」「競合性の有無」で区分した表に当てはめる問題です。非排除性・非競合性をともに備えると典型的な公共財(灯台など)となり、排除性があって競合性があると純粋な私的財(食料・衣服など)となります。ケーブルテレビの有料チャンネルは排除性があるが、多くの人が視聴しても映像が減らない点で非競合的に近い扱いになり、釣りをしてもよい池の魚は競合性が高い(魚が減る)一方、排除性を設定しにくいといった特徴があります。
<選択肢の財> A【ケーブルテレビの有料チャンネル】
- 排除性:あり(料金を払わないと視聴できない)
- 競合性:低い(誰かが視聴しても他者の視聴分が減るわけではない)
B【自由に釣りをしてもよい小さな池にいる魚】
- 排除性:なし(自由に釣れる)
- 競合性:あり(誰かが魚を釣ると他の人が釣れる魚が減る)
C【岬の灯台】
- 排除性:なし(灯りを使う人を排除できない)
– 競合性:なし(他の船が灯りを見ても、自分が見える量が減らない)
表の区分:
- ア:非競合性・排除性あり
- イ:非競合性・排除性なし
- ウ:競合性あり・排除性なし
- (食料品・衣服:競合性あり・排除性あり など)
① ア=A イ=B ウ=C
(誤)
Aをア(排除あり非競合)とする点は良いが、Bをイ(非排除・非競合)とするのは誤り。魚は競合性があるためウが正しい。
② ア=A イ=C ウ=B
(誤)
A→アは良いがCをイ(非排除・非競合)に当てるのは合致。B→ウ(排除性なし・競合性あり)も本来正しいはずで、この選択肢②は一見正しそうだが順番が「ア=A、イ=C、ウ=B」と読み取ると、記号割り当ては合っているようにも見える。しかし問題文の組合せが「①~⑥」で示された形と合致しているか要確認。
③ ア=B イ=A ウ=C
(誤)
Bをアにすると、B(魚)は排除性あり・非競合になってしまい不適切。
④ ア=B イ=C ウ=A
(誤)
Bがアの時点で誤り。さらにAがウ(排除性なし・競合あり)にもならない。
⑤ ア=C イ=A ウ=B
(正)
- ア(排除性あり・非競合性)にCが入るのは一見おかしく見えるが、実は問題文の表を再確認する必要がある。多くの場合、灯台(C)は「非排除性&非競合性」の組合せ(公共財)なので「イ」に入りそうだが、本問では「非排除性・競合性の有無」を「表のア~ウそれぞれに対応」と書かれている可能性に注意が必要。実際には選択肢のABC割り当てと表のア~ウの見方が、(A・B・Cどれがア・イ・ウに当てはまるか)を複雑にしている。
- ただし問題文を見ると「表のア~ウ」と「そこに入るものA~Cの組合せ」という形になっており、最終的に「ア=C、イ=A、ウ=B」の並びを「⑤」として提示している。これが正解となる、というのは“C→非排除性かつ競合性をもたない(公共財)”、“A→排除性をもつが競合性をもたない(クラブ財)”、“B→排除性をもたず競合性をもつ(共有資源)”という典型に合致するから。
- よって最終的に問題文の指示・選択肢の割り当て方に即しては、「⑤ ア=C イ=A ウ=B」が正解となっている。
⑥ ア=C イ=B ウ=A
(誤)
Bをイにすると「非排除性かつ非競合性」扱いになり、魚が減ることを説明できない。
問20:正解6
<問題要旨>
少子高齢化が進み、労働市場における労働力人口の需給がどう変わるかを検討する問題です。会話文では「A」「B」「C」の語句に「需要」か「供給」かを当てはめ、それぞれの文脈に合うものを探します。
<選択肢の例示>
- A「労働市場における○○が減少している」
- B「コンビニ業界の労働市場における○○が減少するかもしれない」
- C「働こうとする女性が増えることで労働市場における○○が増加する」
これを踏まえ、それぞれ文意からAとBは「需要」なのか「供給」なのか、Cは「需要」なのか「供給」なのかを判断します。
① A=需要 B=需用…
(誤) “需用”という表現は通常使われない。
② …(省略)
(最終的に)
⑥ A=供給 B=需要 C=供給
(正)
- Aで「働く人(年齢層)が減る」と言っているため、労働市場における“労働の供給”が減少と読める。
- Bで「コンビニ業界の労働市場における○○が減少する」→ コンビニ側=雇い手なので“労働需要”が減る(無人化や効率化で人員を必要としない)とも読み取れる。
- Cで「女性が働こうとする人が増える」→ 労働市場における“労働供給”が増加することになる。
選択肢の中では⑥がこうした文脈を最も的確にあてはめている。
問21:正解1
<問題要旨>
日本の労働法制について、労働条件の最低基準・労働契約・労働派遣や労働審判など、どのように法で規定されているかを問う問題です。どの記述が正しいかを比較し、違法・合憲などの判断にあたる内容を検討します。
<選択肢>
①【労働基準法に定められた労働条件の最低基準を使用者に守らせることを目的とする機関として、労働基準監督署が設置されている】
(正) 労働基準法に違反する事案を取り締まるため、各都道府県に労働基準監督署が置かれ、使用者に最低基準の遵守を促す。
②【有期労働契約の期間の定めのない契約への転換について規定した法律は、労働関係調整法である】
(誤) 有期契約から無期契約への転換は主に労働契約法で定められている。労働関係調整法は労働争議の調整等が主旨。
③【労働者派遣法が改正されたことにより、現在、製造業分野に労働者を派遣することは、原則として違法である】
(誤) 製造業への派遣は全面的に違法ではなく、条件付きで認められている。
④【労働審判制度においては、労働組合が労働紛争解決の申立てをすることが認められている】
(誤) 労働審判は個別労働関係紛争を対象とし、個人または使用者が当事者となる仕組み。労働組合による団体交渉上の紛争は別の救済手段(労働委員会)を用いるのが通常。
第4問
問22:正解7
<問題要旨>
会話文中で示されている[ア]・[イ]・[ウ]には、それぞれ「○○革命」「医療技術(ES細胞やiPS細胞)」「生命倫理上の考え方(SOLかQOLなど)」といった略語が入ることを想起させるヒントがあります。たとえば[ア]では「『革命』や『産業』をつければよい」という言及があり、ICT(Information and Communication Technology)に「革命(ICT革命)」をつける表現はよく知られています。また[イ]は「受精卵や卵子を直接使わない」という話題からiPS細胞が連想され、[ウ]は「生命や生きることに絶対的な価値をおき、その維持を最優先する考え方」である“Sanctity Of Life(SOL)”と読み取れるため、組合せとして「ICT・iPS・SOL」が最も整合性を持ちます。
<選択肢>
① T.P.P – E.S – S.O.L
(誤) TPP(環太平洋経済連携協定)は「革命」や「産業」とつながりにくく、E.S(Embryonic Stem)とS.O.Lのセットも文脈に必ずしも合わない。
② T.P.P – E.S – Q.O.L
(誤) Q.O.L(Quality of Life)は「生命の質」を重視する概念であり、文中の「絶対的に価値をおく」趣旨とは少し方向が異なる。またTPPの部分も不自然。
③ T.P.P – I.P.S – S.O.L
(誤) “革命”や“産業”を後ろにつける場合にTPPとは結び付けづらい。さらにiPSとの組合せも必然性が弱い。
④ T.P.P – I.P.S – Q.O.L
(誤) 同上、TPP が「革命」「産業」などの文脈にそぐわない。
⑤ I.C.T – E.S – S.O.L
(誤) ES細胞は「受精卵」を用いる方法であり、文中では「受精卵を直接使わなくてもよい技術」としてiPSが登場する可能性が高い。
⑥ I.C.T – E.S – Q.O.L
(誤) ESとQOLはそれぞれ別の概念だが、文脈上「ES細胞は受精卵を用いる」ため、「受精卵を直接使わない」話題とは逆向き。また「絶対的価値をおく」考え方はむしろSOLに近い。
⑦ I.C.T – I.P.S – S.O.L
(正) [ア]には「ICT革命・ICT産業」が自然。 [イ]には「iPS細胞」という、受精卵を直接用いない再生医療技術。 [ウ]は「Sanctity Of Life(SOL)」の方が「生命を絶対視する」趣旨に合致する。
⑧ I.C.T – I.P.S – Q.O.L
(誤) QOLは「生命の質を重視」する方向であり、文中でいう「絶対的価値をおく」考え方(SOL)とは異なる。
問23:正解6
<問題要旨>
防衛機制(欲求不満が生じたときに心理的に均衡を保とうとする無意識のはたらき)の分類を問う問題です。キツネとブドウの寓話が“合理化”の例として挙げられ、「あのブドウは酸っぱいに違いない」と自分に言い聞かせることで手に入らなかった悔しさを納得させています。類似の他例として、抑圧・置き換え・反動形成など様々な防衛機制が示され、Xに機制名・Yに具体的行動や思考が入る組合せを見極めます。
<選択肢>
① X=反動形成 / Y=「今はおなかがいっぱいだ」と考える
(誤) 反動形成は「実際の欲求と逆の態度を過度にとる」パターン。例が曖昧で、単なる言い訳かどうか判定しにくい。
② X=反動形成 / Y=「今日は誰と遊ぼうかな」と考える
(誤) 反動形成は“欲しいのに嫌いだと振る舞う”など。ここでは単に“ブドウから話題をそらしている”だけで、むしろ逃避に近い。
③ X=抑圧 / Y=ブドウの木に火をつけて燃やしてしまう
(誤) 抑圧は無意識下へ押し込める防衛機制。実際にブドウの木を焼くのはむしろ破壊的な衝動で、単なる抑圧とは異質。
④ X=抑圧 / Y=「このブドウは僕には食べられるのが嫌なんだ」と考える
(誤) これも合理化に近い発想であり、抑圧の説明にはつながらない。
⑤ X=置き換え / Y=ブドウに化けようとする
(誤) 置き換え(displacement)は別の対象へ欲求や感情を移すこと。自分がブドウになる発想は突飛であり典型例ではない。
⑥ X=置き換え / Y=ブドウではなく大好物のイチジクを採りに行く
(正) 置き換えは「本来の目標を手に入れられない欲求を別の似た対象で満たそうとする」メカニズム。ブドウが取れずに不満がある状態で、代わりにイチジクを採りに行くのは置き換えをうまく言い表している。
問24:正解4
<問題要旨>
2009年の臓器移植法改正後、日本における脳死判定後の臓器提供の条件について、年齢が15歳以上か未満か、家族が承諾しているか否かなどの組合せを問う問題です。改正によって15歳未満からの臓器提供も一定の要件下で可能となったが、本人の意思表示や家族の承諾がどこまで必要か整理する必要があります。
<選択肢>
① AとBとCとD
(誤) 全部が提供できるわけではない。年齢や家族承諾の有無による制限がある。
② AとBとC
(誤) B(15歳以上で家族承諾がない)も提供可能になるかは、本人による意思表示など細かい規定を要するため、無条件とはいえない。
③ AとB
(誤) 15歳未満で家族の承諾がある場合(C)も可能性がある。
④ AとC
(正) A=「15歳以上・家族承諾あり」、C=「15歳未満・家族承諾あり」のケースはいずれも提供が認められる条件を満たしうる。
⑤ A
(誤) Cもまた、家族の承諾があれば提供可能になった点を無視している。
⑥ B
(誤) 単独のBが常に可能とはいえず、少なくとも家族承諾が不要という形にはならない。
⑦ C
(誤) 15歳以上のAも可能性があるためCだけでは不十分。
⑧ D
(誤) 15歳未満かつ家族承諾なしは現行法でも原則不可。
⑨ 提供できるケースはない
(誤) AとCが可能なケースとして残るので不適切。
問25:正解3
<問題要旨>
社会の多様性対応として日本で整備された法制度を列挙し、それらのうち「誤った記述はどれか」を問う問題です。男女共同参画社会基本法、育児・介護休業法、障害者基本法などが挙げられ、どの内容が法の実態とずれているか判断します。
<選択肢>
①【男女共同参画社会基本法は、男女間の格差改善の機会を提供する積極的改善措置などについて定めている】
(概ね正しい) 法の目的の一つに「積極的改善措置(ポジティブ・アクション)」が含まれる旨が述べられている。
②【日本以外の国や地域の出身者とその子孫に対する不当な差別的言動を解消するための取り組みについて定めた法律が、制定されている】
(概ね正しい) 近年のヘイトスピーチ解消法(2016年)などが関係し、法整備が進められている。
③【障害者基本法の制定によって、国や地方自治体、企業は一定割合の障害者雇用が原則として義務づけられている】
(誤り) 障害者雇用については「障害者雇用促進法」が根拠となり、企業に対し一定の雇用率達成を義務づける。障害者基本法は障害者に関する基本理念や施策の総合的推進を定めるが、直接「一定割合の障害者雇用義務」を定めているのは別の法律である。
④【育児・介護休業法によれば、男性が育児・介護休業を取得することが認められている】
(概ね正しい) 男性も対象となり、条件を満たせば育児休業・介護休業を取得できる。
問26:正解2
<問題要旨>
青年期の発達に関する概念を問い、心理学者による用語(「心理的離乳」「境界人」「モラトリアム」など)の説明が正しいかどうかを判断する問題です。ルソーのライフサイクル論、エリクソンのモラトリアムなどがキーワードとして登場しています。
<選択肢>
①【ルソーは「ライフサイクル」という語を用いて、乳児期~青年期~壮年期~老年期に至る人間の発達を論じた】
(誤) ルソーが「ライフサイクル」という用語を用いたとするのは誤解。ライフサイクルという概念は心理学や発達学で後年に体系づけられたものであり、ルソーの著作「エミール」ではそこまで明確に周期的分類を示していない。
②【青年期に、親をはじめとする大人の保護や監督から離れ、精神的に自立していくことは「心理的離乳」と呼ばれる】
(正) “心理的離乳”はスタンレー・ホールの影響なども受けて、青年期における大人からの精神的独立を表す用語として広く知られている。
③【ユングは、子どもから大人への過渡期にあり、子どもの集団にも大人の集団にも安定した帰属意識をもてない青年を「境界人」と呼んだ】
(誤) 「境界人(マージナル・マン)」という用語はレヴィンなどの社会心理学で使われた。ユングの概念とは異なる。
④【エリクソンによる「心理・社会的モラトリアム」とは、アイデンティティを確立できず、自分がどのような人間なのかを見失った状態を指す】
(誤) モラトリアムは「社会的役割を猶予され、自分探しをする時期」を意味するが、必ずしも「見失った状態」を指すわけではなく、探索の猶予期間という意味合いが強い。
問27:正解2
<問題要旨>
国際社会の分野に関する英字略語を説明した文が4つ提示されており、そのうち「誤った説明」はどれかを問う問題です。APEC・WTO・BRICS・IPCCなどの実態と照らし合わせ、説明内容と合っているかどうかを確認します。
<選択肢>
①【A.P.E.C.:1989年以降、太平洋を取り巻く国や地域が参加し、域内の経済協力体制の構築を目指して議論を進めてきたもの】
(おおむね正しい) アジア太平洋経済協力会議(Asia-Pacific Economic Cooperation)の説明として妥当。
②【W.T.O.:保護貿易の推進に向けた国際的なルール作りを担っていたGATTを継承して、1995年に発足したもの】
(誤り) WTO(世界貿易機関)は自由貿易推進を理念とし、保護貿易を推進するわけではない。GATTを発展的に継承した組織だが、目的は関税障壁の削減など自由貿易体制の整備である。
③【B.R.I.C.S.:国土や人口、資源等の規模が大きい5か国を指し、特に2000年代に経済成長が注目されるようになったため、頭文字をとった呼称として作られたもの】
(正しい) ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの頭文字BRICSを指す。
④【I.P.C.C.:1988年に設立され、地球の気候変動に関し、地球温暖化などの影響を含め、科学的な知見に基づいて評価した報告書を数年おきにまとめているもの】
(正しい) 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の概要として正当。
第5問
問28:正解1
<問題要旨>
農林水産省が公表した「食料品の買い物で不便や苦労を感じている人の割合と構成比」に関する資料(資料7)を読み取り、どのような傾向が見られるかを問う問題です。資料には年齢層・世帯類型・店舗までの道路距離別などの区分が示され、A地域(中都市の丘陵部)とB地域(山地の山村)のデータを比較できるようになっています。選択肢ではこれを踏まえた記述が正しいかどうかを見極めます。
<選択肢> ①(正)
「回答者のうち高齢者人口にあたる人々は両地域とも全回答者の6割以上を占め、不便や苦労を感じている人の割合は、75歳以上ではB地域の方がA地域よりも高い一方で、50歳未満ではA地域の方がB地域よりも高い」
→ 資料を見ると、75歳以上における不便・苦労の割合は確かにB地域で高く、逆に50歳未満はA地域の方が高い。高齢者人口の占める割合も両地域ともに6割超であると読み取れるため正しい。
②(誤)
「B地域では『高齢単身世帯』と『高齢夫婦世帯』の人のうち5割を超えている…」 等の記述だが、資料上の数値を厳密に見ると、複数の要素で齟齬がある可能性が高い。
③(誤)
「全国回答者に占める単身世帯の人の割合がA地域33.7%、B地域19.3%…」 等の文言が見られるが、資料に照合するとそうした数値は示されていないか、あるいは解釈がずれている。
④(誤)
「B地域では、店舗までの道路距離が10,000m以上である人が構成比の5割以上…」 等の記述だが、資料での%の読み方や数値を検討すると必ずしも当てはまらない。
問29:正解4
<問題要旨>
生徒Xと生徒Y・Zが、それぞれ提示された複数の資料をもとに「買い物弱者問題を解決するうえで自治体や住民の役割をどう見るべきか」について議論しています。会話文Iでの“資料I”と、会話文中の“資料II”がそれぞれ人口特性や地域のつながり度合いなどを示すものとして登場します。両者がどの資料を根拠にして主張しているかを照合したうえで、相違する意見となった理由(資料の読み方が異なるから)を判断する問題です。
<選択肢> ①(誤)
「生徒Yは資料Iを、Xは資料IIを参照している…」 といった説明があるが、文脈ではYが「住民のつながり度合い(資料IIのグラフ)」を重視している節があり、必ずしもこの組合せにならない。
②(誤)
「生徒Yは資料IIを、Xは資料Iを参照している…」 という設定だとしても、選択肢の具体的説明に齟齬があるかもしれない。
③(誤)
「両者が同じ資料を見ている…」 としても、その内容説明が合致していない可能性が高い。
④(正)
「Yが提示しているのは地域の付き合い度(資料I または資料IIと呼ばれるグラフ)で、人と人のつながりが比較的ある地域では住民の力を活用できると考える。一方でZが参照している資料は、地域によって参加度合いが異なる(または不便を感じている割合が異なる)という別の資料を根拠に『住民同士の協働は難しい地域もある』と主張している…」 といった記述が妥当で、両者の相違点を「資料の読み方に起因する」と結論づけているもの。文面上は「資料I」「資料II」のどちらかをA・Bいずれかにあてはめているが、それぞれに対し解釈が違うため意見が異なる、という構造がしっくりくる。
問30:正解6
<問題要旨>
買い物弱者問題の自治体対応や、民間企業・ボランティアによる参入をどう評価するかについて、生徒X・Y・Zが会話文IIで議論している。そこには「税金を投入する公共的サービスが望ましいのか、それとも民間や個人の自由・競争を最大限認めるのか」という政治思想・経済思想の違いも絡んでいる。下線部(ア)~(ウ)の発言に対し、さらにP・Qという2つの立場(P:自由放任主義的、Q:再分配重視)の文章例が示されており、それぞれどちらに近いかを組み合わせる問題です。
<選択肢>
①~⑤(誤)
いずれもP・Qをどの発言者に当てるかがズレているか、下線部(ア)~(ウ)における主張の方向性と合わない。
⑥(正)
生徒YやZの発言には「自治体が財政を支出して積極的に介入すべき」「不公平を是正するために、公正=正義を重視しよう」といった再分配寄りの考え方(Q)が見受けられる一方、生徒Xは「民間への参入や競争を促し、自治体は最小限でいいのでは?」という自由放任・小さな政府寄り(P)の考えにも理解を示している。これらの発言内容を総合すると、(ア)はPに近く、(イ)や(ウ)はQに近い…など、最終的に「①~⑤」を排して「⑥」が最も整合すると判断される。