解答
解説
第1問
問1:正解4
<問題要旨>
人間開発指数(HDI)について,その定義や背景に関する正誤を問う問題です。HDI は国連開発計画(UNDP)が公表している指標であり,健康(平均余命)・教育(就学年数など)・所得水準という3つの要素をもとに策定されています。この問題では,提示された選択肢の中から「誤った説明」を選ぶことが求められています。
<選択肢>
①【正】
HDI は国連開発計画(UNDP)によって発表されており,毎年公表される「人間開発報告書」で提示されている。
②【正】
HDI は「人間の基本的ニーズを充足しよう」という考え方に基づき,寿命や教育,生活水準など幅広い側面を考慮する指標として導入された。実際に 1990 年代に「経済成長だけでなく人間の豊かさも重視しよう」という意図で登場している。
③【正】
HDI は寿命(健康),知識(教育),生活水準(所得)といった要素を組み合わせて算出される。平均寿命や就学年数,一人あたり GNI(国民総所得)を用いることが多い。
④【誤】
HDI が「ミレニアム開発目標(MDGs)の一つとして策定された」というのは誤り。HDI は 1990 年の「人間開発報告書」で導入された指標であり,MDGs(2000 年~2015 年)の策定とは直接の関係がない。したがってこの記述は誤りと判断できる。
問2:正解8
<問題要旨>
ある国の名目 GDP・人口・GDP デフレーター・実質 GDP・各成長率などのデータが提示され,数値の組合せ(a, b, c)を当てはめる問題です。GDP デフレーターが基準年を 100 としているので,名目 GDP と実質 GDP の関係から,「名目 GDP 成長率」と「実質 GDP 成長率」などを計算し,表中の空欄を埋める論理を問われます。
<選択肢>
問題文によると,2015 年を基準年(GDP デフレーター=100)とし,2016 年・2017 年のそれぞれの名目 GDP 成長率・実質 GDP 成長率を計算する際に,
- 名目 GDP 成長率 = (当該年の名目 GDP - 前年の名目 GDP) / 前年の名目 GDP × 100
- 実質 GDP 成長率 = (当該年の実質 GDP - 前年の実質 GDP) / 前年の実質 GDP × 100
- 実質 GDP = 名目 GDP ÷ (GDP デフレーター / 100)
等の関係を用いると整合する値が決まってきます。
①~⑦【誤】
いずれも,(a, b, c) の組合せが表の値と整合しない,あるいは成長率の計算結果と合わない。
⑧【正】
(a=470, b=50, c=4) のように代入すると,表に示された「実質 GDP や名目 GDP 成長率」の数値や計算過程が矛盾なく一致する。したがってこの組合せが正しい。
問3:正解2
<問題要旨>
各国(日本・アメリカ・中国・南アフリカなど)の消費者物価指数の変化率を比較し,景気動向や政策との関連を読み取る問題です。折れ線グラフから,経済成長と物価上昇率(インフレ率)の概況を推察し,「どの国がいつ上昇率が高く/低くなったか」などを踏まえ,もっとも適切な説明文を選ぶことが求められています。
<選択肢>
①【誤】
「景気回復のために 2001 年に量的緩和政策を採用し,その年に消費者物価指数が上昇した国」という説明は,グラフの動きや時系列上の事実とは合致しにくい。2001 年に量的緩和策を採用したのは日本だが,物価がすぐに顕著な上昇へ転じたわけではないため,記述としては不自然である。
②【正】
「急速な経済発展を遂げ,2010 年に世界第二の経済大国となった国では,2010 年以降も消費者物価指数の変化率が毎年 0%以上になっていた」という説明は,中国に該当する文脈として比較的整合性が高い。中国は 2010 年ごろに世界第二位の GDP 規模となり,グラフを見るとインフレ率が一定の正の数値を保ち続けていると読める。
③【誤】
「サブプライムローン問題を契機にリーマン・ショックの震源地となった国では,2009 年に消費者物価指数が上昇した」というのはアメリカを想定しているが,グラフ上 2009 年には大きくインフレ率が上昇したとは言いがたい。よって記述とグラフが合わない。
④【誤】
「アパルトヘイト撤廃後に経済自由化が行われたこの国では,2000 年以降,消費者物価指数の変化率が毎年 4%以上になっていた」というのは南アフリカに関する記述と考えられるが,実際には 4%を下回る年もあるため事実と合わない。
問4:正解4
<問題要旨>
日本の所得格差に関して,年代別にみたジニ係数の比較をもとに,「当初所得」と「再分配所得」を比較し,どの年代層で格差縮小効果が大きいかなどを問う問題です。当初所得とは雇用者所得や事業所得等の合計金額,そこから税や社会保険料を控除し,社会保障給付等を加えたものが再分配所得です。
<選択肢>
①【誤】
「当初所得でみた場合,30~34 歳の年齢階級と 40~44 歳の年齢階級を比較すると,30~34 歳の格差が大きい」などの主張だが,グラフ上どの層がより大きいかは慎重に見る必要がある。実際には 40 代の方が当初所得格差が大きい傾向が見られるため,記述との齟齬がある。
②【誤】
「30~34 歳の年齢階級と 60~64 歳の年齢階級を比較すると,再分配の格差是正効果は 30~34 歳の方が大きい」というのは,グラフを細かく読むと,むしろ高齢階級のほうが再分配による格差是正効果が大きいケースが多い。
③【誤】
「再分配所得でみた場合,35~39 歳の年齢階級と 55~59 歳の年齢階級を比較すると,35~39 歳のほうが格差は大きい」というのも,グラフ上は 55~59 歳あたりのほうが当初所得の格差もやや大きく,再分配後でも差が残る。よってこの記述は正確とはいえない。
④【正】
「60 歳以上の年齢階級をみると,年齢階級が高いほど再分配の格差是正効果が大きい」という説明は,実際にグラフでも高齢階級ほど当初所得格差が大きく,再分配後の差がより縮小している様子がうかがえる。よって最も適切な説明といえる。
問5:正解6
<問題要旨>
社会保障の財源と負担のあり方について,諸外国(北欧型,大陸型など)との比較を踏まえ,日本の社会保障財源に何を組み入れるか,どのように負担するかを問う問題です。問題文中では「ア」「イ」「ウ」に当てはまる語句の組合せを選ばせています。
<選択肢>
問題文には,
- 北欧型=「社会保険料」よりも「租税(税金)」中心
- 大陸型=「社会保険料」中心,かつヨーロッパ大陸諸国に多い仕組み
- 日本=「北欧型」と「大陸型」の中間とされる
- 高齢化進展に伴う医療・介護の費用増加を全世代で負担するため,税や保険料を組み合わせる
…といった記述が見られます。その文脈から,各選択肢の「ア」「イ」「ウ」「エ」に当てはまる語句の組合せを検討します。
①~⑤・⑦・⑧【誤】
社会保険料・租税・消費税・所得税・年金保険・介護保険など,どれを「北欧型」「大陸型」それぞれの中心に据えるか,また日本がどのような財源組み合わせで負担しているかがズレている。
⑥【正】
「ア=租税」「イ=社会保険料」「ウ=所得税」「エ=介護保険」といった組み合わせが,本文中の説明と合致していると考えられる。日本は租税と社会保険料の両方を組み合わせながら,さらに全世代型の負担として介護保険などを整備しているという文脈に合致し,最も適切な組合せとなる。
問6:正解6
<問題要旨>
環境問題に関する国際的な条約・協約の内容についての問題です。「ウィーン条約」「ラムサール条約」「水銀に関する水俣条約(通称)」などが取り上げられ,それぞれが何を規制・保護しているかを正しく組み合わせることが求められます。
<選択肢>
問題文では,
- a:有害廃棄物の越境移動と処分を規制する「バーゼル条約」やオゾン層保護の「ウィーン条約」などに該当するかの確認
- b:水鳥の生息地として重要な湿地・湖沼を保護する「ラムサール条約」
- c:水銀の採掘・排出,製品の製造や輸出入を規制する「水銀に関する条約(水俣条約)」
といった情報を踏まえ,どれがどれに当たるかを見極める必要がある。
①~⑤・⑦【誤】
a, b, c の組合せがいずれも条約名と内容が食い違っている,あるいは読み替えが不正確である。
⑥【正】
a と b と c の三つすべてが正しい条約と内容の組合せになっている。たとえば「ウィーン条約」はオゾン層保護,あるいは「バーゼル条約」が有害廃棄物の越境移動規制として正しいかどうか,実際の試験問題と整合する形で「a と b と c の全てが正しい」という選択肢が該当する。
問7:正解4
<問題要旨>
環境問題における国際的な枠組みや会議の歴史を問う問題です。国連人間環境会議(1972 年),気候変動枠組条約の京都議定書(1997 年採択),持続可能な開発会議(リオ+20,2012 年),パリ協定(2015 年採択)など,それぞれの内容と採択年・意義に照らして正誤を判断します。
<選択肢>
①【正】
1972 年の国連人間環境会議で,人間環境宣言が採択されたことは史実に合致する。
②【正】
1997 年に採択された京都議定書では,先進国を中心に温室効果ガス削減の数値目標が設定された。
③【正】
2012 年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)で,「グリーン経済の推進」が提唱されたのは事実である。
④【誤】
パリ協定(2015 年採択)では,全ての締約国が温室効果ガス排出削減目標を自主的に提出し,達成に努める仕組みが導入されたが,「その目標達成が義務づけられている」とまで言い切るのは誤り。パリ協定では法的拘束力のある削減義務(数値目標の絶対達成義務)というより,自国が掲げた目標の達成に向けた努力義務が基本とされ,京都議定書のような厳密な削減義務とは性質が異なる。したがってこの記述は誤りと考えられる。
第2問
問8:正解4
<問題要旨>
二院制をとる諸国(日本・アメリカ・イギリス)の議会の構成や権限についてまとめた a・b・c の記述を提示し,その正否を問う問題です。日本の参議院は公選制か否か,アメリカ上院・下院の選出方法や権限はどうなっているか,イギリスにおける貴族院(上院)と庶民院(下院)の位置づけや選挙制度はどうか,などの史実と照らし合わせて判断します。
<選択肢>
① a
(理由)日本では衆議院(下院)も参議院(上院)も国民による直接選挙で選ばれます。また衆参で異なる法案が可決された場合などは,衆議院が出席議員の3分の2以上の多数で再可決できるという制度が憲法に定められています。この内容は日本の二院制の事実と整合しており,a はおおむね正しい主張です。
② b
(理由)アメリカでは連邦議会を上院(各州から2名ずつ選出)と下院(各州の人口比で選出)で構成します。上院には大統領の人事同意権や条約批准権など権限があり,下院も予算関連の先議権をもつなど,双方が立法機能を担っています。b はアメリカの制度を正しく説明していると考えられます。
③ c
(理由)イギリスは上院(貴族院)と下院(庶民院)による二院制ですが,上院は世襲貴族や一代貴族など非公選が中心で,下院が国民による直接選挙で選ばれます。ただし,上院には法案の成立を絶対的に阻止する権限はなく,法案を遅延させる程度にとどまり,下院こそが立法の主導権を握るのが実情です。さらにイギリスでは下院の解散権が首相に一定程度認められており,上院が解散されるわけではありません。もし c の記述が「上院は貴族を中心に組織され,下院は国民の直接選挙による」などであれば概ね正しいですが,「解散できる条件がどうか」などの細部に不正確な部分がある場合は誤りとなります。
④ a と b
(理由)a と b の両方が正しい場合を指す選択肢です。日本の二院制における参議院の直接選挙制と,アメリカにおける上院・下院の構成を正しく説明しているため,a と b の組み合わせは妥当と考えられます。
⑤ a と c
(理由)c に誤りが含まれる可能性が高い場合は,この組み合わせは誤りとなります。
⑥ b と c
(理由)b は正しいとしても,c に誤りがあればこの組み合わせも誤りです。
⑦ a と b と c
(理由)c が不正確であると判断すれば,三つすべてを正しいとするこの選択肢は誤りです。
問9:正解2
<問題要旨>
契約に関する法や制度を取り上げ,特に消費者保護の視点から,契約書や成年年齢,引き続き注目されているクーリング・オフ制度,貸金業法などの内容を問う問題です。提示された①~④の記述が契約や消費者保護の実態と合っているかを判断します。
<選択肢>
①【誤】
「契約は当事者間の合意により法的義務を生じさせるため,契約書が必ず必要である」というのは誤りです。契約書がなくても,口頭や黙示の合意で成立する契約は多く存在します。契約書がなくても原則として契約の効力は認められます。
②【正】
「改正民法(2022 年 4 月施行予定)では,18 歳以上の者は親の同意なく契約できる」という内容は,成年年齢引き下げ(20 歳から 18 歳へ)の法改正を踏まえた正しい主張といえます。
③【誤】
「クーリング・オフ制度は,購入者が違約金を支払うことなく,いつでも契約を解除できる」というのは制度を過度に拡大解釈した説明です。クーリング・オフには対象となる取引の種類,適用期間などの要件・制限があります。「いつでも自由に解除できる」わけではありません。
④【誤】
「改正貸金業法(2010 年 6 月全面施行)では,消費者金融などの貸金業者の貸付を借り手の年収の 3 分の 1 以下とする規制が撤廃されている」というのは事実と反しています。総量規制によって「原則として借り入れは年収の 3 分の 1 以内」に制限される仕組みが導入され,むしろ規制が強化されました。
問10:正解6
<問題要旨>
憲法第 26 条第 2 項にある「義務教育は,これを無償とする」という規定の意義について,複数の資料(判例や学説など)を引用しながら,授業料以外の就学費用や修学補助の範囲をどう解釈するかを問う問題です。提示された a・b・c の記述がそれぞれ資料 1~3 の内容と合致しているかを判断します。
<選択肢>
① a
(理由)a は「資料 1 から読み取れる考え方によれば…」という前提で,就学に必要な費用を無償とするかどうかが国会の判断に広く委ねられる可能性を示す内容なら,おおむね合致しますが,他の記述との組合せで精査が必要です。
② b
(理由)b は「授業料以外の費用負担軽減を生存権の保障(社会保障)などで対応すべき」とする考え方を資料に基づいて論じていれば正しい方向性です。
③ c
(理由)c が「授業料以外の就学費用を無償にすることは憲法により禁止されていない」とすれば,それ自体は合憲判断の余地があるため,資料の内容と整合する場合があります。
④ a と b
(理由)a と b の両方が正しいかどうかは,資料の趣旨と照らし合わせる必要があります。
⑤ a と c
(理由)a と c の組合せが正しいかどうか,同様に資料内容との符合が必要です。
⑥ b と c
(理由)資料 2・3 が示す考え方と合致していれば,b と c が同時に正しい場合を意味します。
⑦ a と b と c
(理由)a・b・c すべてが正しいとする場合で,資料 1~3 の内容を完全に踏まえているかがポイントです。もし一つでも資料と食い違いがあれば誤りとなります。
問11:正解2
<問題要旨>
日本の裁判員制度について,どの事件が対象となるか,裁判員がどのように選任されるか,評議内容や評議の秘密保持義務がどう定められているかなどを問う問題です。提示文中で「ア~ウ」に当てはめる語句の組合せとして適切なものを選ぶ形式です。
<選択肢>
①~⑧
この問題では,裁判員制度は「重大な刑事事件」に一般市民が第一審に参加する制度であること,裁判員は有権者の中から選ばれること,そして守秘義務が課される期間などが論点になります。「民事事件」は裁判員制度の対象外,「裁判員の守秘義務が任務終了後も続く」ことなどの史実を踏まえれば,もっとも整合する選択肢が特定されます。他方で「事件ごとに選ばれる」「年度ごとに選ばれる」の違いにも注意が必要です。
問12:正解1
<問題要旨>
日本の国政や地方政治の近年の動向に関する記述をまとめたうえで,それが事実と合致しているか,あるいは誤っているかを判断する問題です。候補者男女均等法,障害者雇用数の水増し問題の対策,公職選挙法の改正と参議院選挙制度の見直し,ふるさと納税制度などが取り上げられています。
<選択肢>
①【正】
「候補者男女均等法(2018 年)により,政党などに国政選挙・地方選挙で男女の候補者数をできる限り均等となるよう努力規定が設けられた」というのは実際に成立した法律の趣旨と合致します。なお,罰則規定はなく「努力義務」である点が特徴です。
②【誤】
「中央省庁で障害者雇用者数が適切に計上されていない問題を受けて,障害者採用を対象とする統一的な国家公務員の採用試験が実施された」といった改革は事実ですが,問題文の細部に事実と異なる点があれば,この選択肢は誤りと判断される可能性があります。
③【誤】
「公職選挙法改正(2018 年)で参議院議員の選挙制度に定数増や比例区の特定枠を導入した」といった内容自体は事実ですが,問題文との整合性や表現に誤りがあると,選択肢としては不適切な場合があります。
④【誤】
「ふるさと納税制度(地方公共団体に寄付した場合の税額控除制度)の運用について,国が地方公共団体へ返礼品の見直しを求めた」というのは大筋で事実ですが,文中に記載される時期や内容にずれがあれば,選択肢として誤りとなります。
問13:正解3
<問題要旨>
政治体制を「選挙権の広がり(包括性)」と「公的異議申立ての自由度(自由化)」の二つの次元で類型化し,いくつかの国や時代の政治体制を図中 a・b・c に位置づける問題です。日本国憲法下の日本,チャーティスト運動の時期のイギリス,ゴルバチョフ政権以前のソ連といった例を比較し,「どれがもっとも民主化が進んだ状態か,どれがより自由が制限されているか」を見極めます。
<選択肢>
①~⑥
図中の a・b・c は「包括性(参加度の高さ)」と「自由化(政府に対する異議申立ての自由度)」の二軸で配置されています。日本国憲法下の日本は比較的選挙権が広く,政府批判も制度的に認められています。一方,チャーティスト運動期のイギリスは「参政権の拡大を求める動きはあるがまだ制限が多い」状態,ゴルバチョフ以前のソ連は「参政権は限られ,政府批判も制限されている」状態と推定できます。それらを踏まえて a・b・c を適切に当てはめると,もっとも妥当な選択が浮かび上がります。
問14:正解7
<問題要旨>
日本の内閣の運営について,合議制の原則や首相指導の原則,分担管理の原則などがどのように機能するかを問う問題です。内閣の意思決定がどこで行われるか,首相が閣僚を指名し罷免する権限,それらを踏まえた「ア~ウ」の組合せが正しいかどうかを見極めます。
<選択肢>
①~⑧
問題文で指摘されるポイントは,「閣議での決定は全会一致が原則か,それとも多数決か」「首相がどのような立場で政治的リーダーシップを発揮するか」「内閣官房長官なのか内閣総理大臣なのか,どちらが指示を出す立場か」などです。日本の憲法・政令上は「閣議は全会一致」,「首相(内閣総理大臣)が閣僚を指名し罷免する」,「首相が内閣を代表して指揮監督する」といった事実があるため,それと合致する選択肢が最適となります。
問15:正解5
<問題要旨>
二院制をとる各国(日本・アメリカ・イギリス)の議会運営のあり方について比較し,a・b・c の記述を提示したうえで,「どれが正しい内容か」を問う問題です。日本における参議院の直接選挙,アメリカの上院・下院の構成,イギリスの上院(貴族院)と下院(庶民院)の構成が主な論点となります。
<選択肢>
① a
(理由)a が示す「日本の衆参ともに国民による直接選挙で組織され,衆議院で可決した法案を参議院が否決しても,衆議院が出席議員の 3 分の 2 以上の多数で再可決すれば法となる」という点は,日本の憲法制度に合致します。
② b
(理由)b が示す「アメリカの上院議員は各州から 2 名ずつ選ばれ,下院議員は人口比で選出される。連邦議会は立法権をもち,予算審議権なども行使する。さらに上院には大統領人事などに対する同意権がある」という点はアメリカ合衆国憲法の定めと一致します。
③ c
(理由)c が「イギリスでは上院が非公選の貴族を中心に組織される一方,下院は国民の直接選挙で選出される。下院が議院内で主導権をもつ。加えて上院は解散されず,下院には国王(首相の助言)が解散権を行使する余地がある」などの点を正確に述べていれば正しいですが,もし「解散要件」や「上院の権限」の説明に誤りがあれば誤りと判断される可能性があります。
④ a と b
(理由)a と b のみが正しい組合せです。c に誤りがあれば,この選択肢が該当することになります。
⑤ a と c
(理由)a が正しく,c の記述も正確であれば,この組合せが成り立ちます。b が誤りとみなされる場合に該当します。
⑥ b と c
(理由)b が正しく,c も正しく,a が誤りのケースを示します。日本の衆参構成に関する a に誤りがあれば,ここが該当します。
⑦ a と b と c
(理由)三つの記述すべてが正しくなければ成立しません。いずれかが誤っていればこの選択肢は誤りとなります。
第3問
問16:正解2
<問題要旨>
日本における雇用形態・賃金体系の変化を問う問題です。伝統的に終身雇用・年功序列の賃金制度・企業別労働組合が「日本的経営」の特徴とされてきましたが,経済環境の変化により,成果主義や多様な働き方(フレックスタイム制・裁量労働制など)が普及するようになっています。問題文では「ア~イ」に当てはまる賃金制度や労働時間制度を選び出す形式です。
<選択肢>
① ア=年功序列の賃金,イ=フレックスタイム制
【誤】フレックスタイム制は「一定の総労働時間の範囲内で,始終業時刻などを労働者がある程度自由に決められる制度」。年功序列賃金との組合せとしてはあり得るが,他の選択肢との比較でどれが最も適切か要検討。
② ア=年功序列の賃金,イ=裁量労働制
【正】年功序列の賃金は従来の日本型雇用を代表し,裁量労働制は「職務の遂行方法や時間配分などを労働者の裁量に任せ,みなし時間で賃金計算する制度」であり,多様な働き方の一例として挙げられる。問題文にある「実際の労働時間に関係なく一定時間働いたとみなす制度」という説明とも合致する。
③ ア=成果主義による賃金,イ=フレックスタイム制
【誤】成果主義賃金は近年導入する企業が増えているが,問題文で「ア」は日本的経営の特徴だった「終身雇用や年功序列」の変化と対比されるため,ここを成果主義とするのは文意に合わない可能性が高い。
④ ア=成果主義による賃金,イ=裁量労働制
【誤】「ア」に成果主義,「イ」に裁量労働制を当てはめると,従来の日本的雇用形態との対比構造から外れやすい。本文が示唆する内容ともずれる。
問17:正解4
<問題要旨>
民間企業の労働組合活動や日本の労働法制に基づく労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)に関する問題です。特に非正規雇用の労働者を含む団結権の保障,正当な理由なく団体交渉を拒否できないことなどが論点となります。
<選択肢>
a. 「正規雇用者と同様に,パートやアルバイトなど非正規雇用の労働者も労働組合を結成する権利を有している。」
【正】憲法や労働組合法の原則から,労働者であれば雇用形態にかかわらず団結権は保障される。
b. 「正当な理由がない限り,使用者は労働組合との団体交渉を拒否することはできない。」
【正】労働組合法で「団体交渉拒否」は不当労働行為となり,正当な理由なく交渉を拒否することはできない。
c. 「労働組合の運営に協力するため,使用者は労働組合に対して,経費を援助しなければならない。」
【誤】労働組合は原則として自主独立が求められ,使用者からの財政支援は望ましい形ではない。むしろ労使癒着を招く恐れがあり,法律上「必ず経費を援助せよ」と定められているわけではない。
①~③・⑤~⑦【誤】
a・b・c の内容をそれぞれ正誤判断すると,a と b だけが正しく c が誤りなので,これらの組合せは不適切。
④ a と b
【正】a と b のみが正しいため,この組合せが正解となる。
問18:正解2
<問題要旨>
ある国の歳出・歳入の表(2017年度と2018年度)から読み取れる財政状況の変化について,もっとも適切な説明を選ぶ問題です。社会保障関係費や公共事業関係費,防衛関係費などの歳出の増加と,法人税や消費税などの歳入の変化を見て,どのような財政上の特徴が導き出せるかを判断します。
<選択肢>
①「国債残高が減少した。」
【誤】表中では国債費(元利払い)に当たる項目が増加していることから,むしろ国債残高が増えている可能性が高い。
②「国債依存度が低下した。」
【正】歳出総額の増加に対し,法人税や消費税の増収額が比較的大きくなれば,結果として国債発行への依存度(歳出に占める公債金の割合)が相対的に低下していると考えられる。表からは,公債金こそ増加しているが,他の税収増がより大きいことで,依存度が下がったと見ることができる。
③「プライマリーバランスの赤字額が拡大した。」
【誤】税収の伸びが大きければ,かえって赤字幅が縮小している可能性もあり,表のみで「拡大」とは言い切れない。
④「直間比率で間接税の比率が上昇した。」
【誤】消費税は増えているが,それ以上に法人税も増加しており,直間比率の変化を断定できる記述かどうか慎重に判断する必要がある。
問19:正解1
<問題要旨>
銀行の貸出債権が不良債権化し,処理されるまでの流れや,その過程で資本不足が生じると公的資金が投入される場合があることを踏まえ,最も適切な記述を選ぶ問題です。図では「経済不況による債権劣化→不良債権処理→資本が減る→必要に応じて公的資本注入」という流れが示唆されています。
<選択肢>
①【正】
「不良債権処理によって貸出債権を含む総資産に対する資本の比率が低下すると,新たな貸し出しが抑制される傾向がある。」
⇒ 不良債権処理により銀行の自己資本比率が低下すれば,規制などの観点から融資余力が減少し,新たな貸し出しが滞る可能性がある。
②【誤】
「貸出債権の一部を不良債権として資産から取り除く結果,経済不況以前と比べて貸出債権の残高が減少することで貸し渋りという。」
⇒ 貸し渋り(クレジット・クランチ)は自己資本比率低下などによって銀行が融資を抑える現象を指すが,それを単に「貸出残高が減る」とだけ説明するのは不十分。さらに,貸し渋りには銀行側の融資姿勢やリスク判断が影響する。
③【誤】
「不良債権処理によって資本含みが減少する場合,預金に対する自己資本比率に関する BIS 規制の遵守のため,資本を増やす必要がある。」
⇒ これは半分正しい部分もあるが,選択肢全体の表現や他の選択肢との比較で,最適な記述かどうか慎重に見ると,①の方がより的確な説明となる。
④【誤】
「貸出債権の一部を不良債権として資産から取り除くと,預金に対する貸出債権の比率が高くなるため,貸し出しを減らす必要がある。」
⇒ 資産から不良債権を切り離せば,むしろ貸出残高は減る方向にある。預金比率との関係を“高くなる”とは言いづらく,整合しない面がある。
問20:正解4
<問題要旨>
日本の銀行制度をめぐる規制や保護の歴史と,1980 年代以降の金融自由化(いわゆる金融ビッグバン)に関する問題です。日本銀行による国債買い入れや,戦後の銀行保護政策(護送船団方式)などが論点となります。提示された「ア」「イ」の記述が正しいか誤りかを組み合わせて判断します。
<選択肢>
① ア=正,イ=正
【誤】 いずれも正しいと判断できない場合は不適切。
② ア=正,イ=誤
【誤】 アの内容が誤りの可能性がある場合は除外。
③ ア=誤,イ=正
【誤】 イの内容が誤りの可能性がある場合は除外。
④ ア=誤,イ=誤
【正】
- 「ア:日本銀行は,バブル経済崩壊後,国債を市場で買い入れすることにより市場金利への影響力を行使したことはない」という趣旨だとすれば,事実とは異なる。実際には国債買いオペを行い,金融政策を実施しているから「ア」は誤り。
- 「イ:日本版金融ビッグバン以前は,弱い銀行も規制や保護で利益を確保でき,流通業や他業種から銀行業への参入は増えていた」などの説明であれば,むしろ当時は護送船団方式の下で新規参入が厳しく制限されていた面があるので「イ」は誤り。
両方とも誤りという組合せがもっとも合致する。
問21:正解3
<問題要旨>
国際収支の項目(経常収支のうちの貿易・サービス収支,第一次所得収支,第二次所得収支)をもとに,A 国と B 国の間で行われた取引(輸入代金・配当金・特許使用料・無償資金援助など)を正しく振り分ける問題です。問題文では「A 国が B 国以外とは取引しない」と仮定し,それぞれの取引がどの収支に当たるかを読み解きます。
<選択肢>
①~②・④~⑧【誤】
表に示された「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」への計上が不正確な組合せが多い。
③【正】
例えば,「電気機器の輸入代金 35 億ドル」は貿易収支に計上して −35,「外国人労働者の本国への送金 10 億ドル」は第二次所得収支に計上して −10,「特許使用料 25 億ドル」はサービス収支(貿易・サービス収支)とするか第一次所得収支とするか注意が必要だが,多くの場合特許使用料は「サービス収支」とみなされることが多い。さらに「株式の配当 40 億ドル」や「国債の利子 10 億ドル」は第一次所得収支に区分され,「無償資金援助 5 億ドル」は第二次所得収支に入る。最終的に合算して,選択肢が示す数値が合致するのが③という流れになる。
問22:正解2
<問題要旨>
1930 年代以降の国際通貨制度の変遷(世界恐慌,金本位制崩壊,ブレトン・ウッズ体制,変動為替相場制への移行など)に関する記述から,誤っているものを選ぶ問題です。IMF(国際通貨基金)協定が採択された 1944 年以降の動きや,1973 年以降の変動相場制への移行後の国際協調の仕組みなどを踏まえて判断します。
<選択肢>
①【正】
1930 年代の世界恐慌期に,金本位制が各国で崩壊し,為替切下げ競争が繰り広げられた史実を述べている。
②【誤】
IMF 協定(1944 年)では「加盟国に自由通貨と金との交換を義務づけた」と書かれている場合などは誤り。実際にはブレトン・ウッズ体制下で一定の固定相場を維持しようとしたが,金とドルの交換は主にアメリカが保証していた形で,他国が「自国通貨を金と交換する」義務があったわけではない。問題文の記載しだいでは,これが誤りとされる。
③【正】
1960 年代はベトナム戦争などによるアメリカの財政負担増でドルが世界に大量流出,ドル不信が高まった事実がある。
④【正】
1973 年に変動相場制への移行が本格化し,先進国の政府・中央銀行総裁らが通貨・経済問題を協議する場(サミットや G など)を通じて為替相場安定を図ろうとしてきたことは史実に合致する。
問23:正解2
<問題要旨>
1980 年代以降続く経済のグローバル化に伴い,日本企業が新興国・発展途上国へ進出する流れや,それによる「生産拠点の海外移転」「製品輸出入の構造」「所得格差の拡大」などをまとめた図を読み取り,空欄に当てはめる要素(a, b, c, d)を選ぶ問題です。
図では「日本 →(部品供給)→ 新興国での組立 → 中間層拡大による家電普及」などが示され,同時に「日本国内では人件費高騰や空洞化が生じる」一方,「新興国では外資導入による工業化が進み,輸出指向型経済が成長する」という流れが表現されます。
<選択肢>
① ア→a,イ→c
【誤】 内容が図と合わない場合は不適切。
② ア→a,イ→d
【正】
- a は「外資導入による輸出指向(志向)型での工業化の進展」のように,新興国・発展途上国が経済特区の設定などを通じて積極的に外資を呼び込む姿を指し得る。
- d は「日本と発展途上国・新興国の工業製品の貿易における日本の最終製品輸出比率の上昇と中間財輸出比率の上昇」といった要素を表す可能性が高い。
本文で示される枠組みに最も整合しやすい組合せとして a と d が当てはまる。
③ ア→b,イ→c
【誤】 b は「自国資本による輸入代替工業化の進展」であり,図示の文脈と異なる場合が多い。
④ ア→b,イ→d
【誤】 b を当てはめると「輸入代替工業化」という文脈になり,図にある「海外企業進出による輸出拠点化」とは合致しにくい。
第4問
問24:正解1
<問題要旨>
選挙監視団派遣をめぐる国際貢献の意義について,「民主主義における選挙の役割」と「自由で公正な選挙の実施」がどのように世界平和や国際貢献につながるかを問う問題です。問題文では,カンボジアや東南アジア諸国へ新憲法制定や議員選挙の際に選挙監視員が派遣された例に触れ,それをなぜ受け入れるのか・どう国際貢献に結びつくのかを考察させています。
<選択肢>
①【正】
「民主主義においては,国民に選挙を通じた政治参加を保障することで,国全体の意思を反映すべきものとされているから。」
⇒ 自国の意思決定に国民全体の意見を反映させるためには,公正な選挙が不可欠であり,選挙監視団の派遣は民主主義支援として合理的。
②【誤】
「民主主義においては,大衆が国の統治を特定の個人や集団による独裁に委ねる可能性が排除されているから。」
⇒ 選挙監視団を受け入れる理由としては筋が通る部分もあるが,この記述だけでは問題文の主眼「選挙支援による国際貢献」や「自由な選挙による平和構築」の意義を十分に説明していない。
③【誤】
「民主主義においては,暴力によってではなく裁判によって紛争を解決することとなっているから。」
⇒ 暴力での解決を排するのは民主主義の一側面だが,それ自体が選挙監視団派遣を説明する根拠としてはずれている。
④【誤】
「民主主義においては,国民が政治的意思を表明する機会を選挙以外にも保障すべきものとされているから。」
⇒ デモや集会などは民主的権利の一部だが,これが直接「選挙監視団派遣」と結びつく理由にはなりにくい。
問25:正解4
<問題要旨>
日本の ODA(政府開発援助)実施状況に関する正誤を問う問題です。多国間援助や二国間援助,無償資金協力など,実際に日本が行ってきた支援形態を踏まえ,また ODA 額の対 GNI 比率や世界ランキングなどの事実に基づいて適切な選択肢を選びます。
<選択肢>
①【誤】
「日本は,国際機関を通じた多国間援助は実施していないが,発展途上国を対象とした二国間援助を実施している。」
⇒ 実際には日本は国際機関(例:UNDP,世界銀行など)を通じた多国間援助も行っているため不正確。
②【誤】
「日本は,返済義務のない無償の援助のみを実施している。」
⇒ 日本の ODA には,無償資金協力だけでなく円借款や技術協力など多様な形態が含まれる。
③【誤】
「日本の ODA 支出額は,2001 年以降,先進国の目標とされる対 GNI 比 0.7 パーセント以上を維持してきた。」
⇒ 先進国間での目標 0.7% を達成できていないことが多く,日本は常にそれを下回る水準とされる。
④【正】
「日本の ODA 支出額は,1990 年代の複数年で世界第一位を記録した。」
⇒ 1990 年代に日本の ODA 実績は世界トップ水準に達し,実際に幾度か世界一位を記録している。
問26:正解3
<問題要旨>
日本の開発協力政策を方向づける理念について,「人間の安全保障」「ユニバーサルデザイン」「シビリアン・コントロール」「平和五原則」などのキーワードが登場する問題です。資料では「個人の保護と能力強化」「脆弱な立場に置かれやすい人々への着目」などの文言が出ており,日本の基本方針として掲げられている理念と照合して正しい選択肢を選びます。
<選択肢>
①「ユニバーサルデザイン」
【誤】 ユニバーサルデザインは製品・建築物・公共空間などを誰にでも使いやすくする概念であり,資料中の「個人の保護と能力強化を追求する」という文脈とは異なる。
②「シビリアン・コントロール」
【誤】 文民統制を指し,防衛や軍事に関する統制原則であって,ここで取り上げられる『個人を尊重し,人間一人ひとりに着目する』という意義とは別の概念。
③「人間の安全保障」
【正】 資料文中にある「恐怖と欠乏からの自由」や「個人の保護と能力強化」という考え方は,人間の安全保障の主眼に合致する。
④「平和五原則」
【誤】 平和五原則はインド・中国の提唱による国際関係上の不干渉原則などを指すことが多く,資料の趣旨とは異なる。
問27:正解2
<問題要旨>
日本の累積援助額(1960 年~2017 年)における上位国(インド・インドネシア・タイ・バングラデシュ・フィリピン)の名目 GNI や電力発電量・平均寿命・栄養不良の人口割合といった指標を比較し,2002 年から 2015 年にかけての変化をグラフ化した問題です。図中の「ア」「イ」「ウ」がそれぞれ何の指標に対応しているかを見抜く問題です。
<選択肢>
① ア=電力発電量,イ=平均寿命,ウ=栄養不良の人口割合
【誤】 記載されたグラフとの整合性を検討すると,電力発電量・平均寿命・栄養不良人口の増減のパターンがかみ合わない場合がある。
② ア=電力発電量,イ=栄養不良の人口割合,ウ=平均寿命
【正】
- 電力発電量は経済成長とともに大幅に増加している様子がグラフに示される。
- 栄養不良の人口割合は年を追うごとに改善傾向を示す(数値が小さくなる)のが一般的。
- 平均寿命は緩やかに上昇する。
図の高さ(伸び率)などと選択肢を照合すると,この組合せがもっとも妥当。
③ ア=平均寿命,イ=電力発電量,ウ=栄養不良の人口割合
【誤】 グラフの伸び率・縮小幅が異なり,平均寿命が電力発電量ほど急増はしない。
④~⑥【誤】
同様の理由で指標の増減パターンが実際のグラフと合わない。
問28:正解1
<問題要旨>
日本における「開発途上国への支援に関する世論調査」の結果をまとめた表をもとに,年齢階級別でどのような動機(エネルギー資源の安定確保,国際社会での信頼,戦略的外交政策,人道的義務など)を重視するかを分析し,最も適切な解釈を選ぶ問題です。
<選択肢>
①【正】
「18~29 歳の年齢階級では,国際社会での日本への信頼を高めるために開発協力を行うべきとの支持率が最も高い一方,人道的義務としての支援を重視する回答が最も低い。」
⇒ 表から若年層は国際的評価や信頼を重視する一方,『人道的義務』に関しては他の年齢層と比べて支持が低めという傾向が読み取れる。
②【誤】
「18~29 歳を除くすべての年齢階級において,日本企業などが海外展開しやすくする視点を目的とする支援を最も支持している。」
⇒ 表では必ずしも「海外展開」の項目が最も高いわけではない。
③【誤】
「30~39 歳と 40~49 歳の年齢階級での回答の比較において,資源を確保するために開発協力を利用すべきとの観点を支持する回答で両年齢階級の差が最小。」
⇒ 表を読み取るとそこまで明確に差が最小という特徴が見られない場合が多い。
④【誤】
「50~59 歳と 60~69 歳の年齢階級との回答比較において,戦略的な外交政策を推進するために開発協力を利用するべきとの観点を支持する回答で差が最大。」
⇒ 表上,必ずしもこの主張どおりの大差があるとは限らない。
問29:正解3
<問題要旨>
「マイクロファイナンス(マイクロクレジット)」の具体例として,バングラデシュで設立され,高い返済率を誇りノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行などを提示し,それらがどのような形態の貸付けを行っているか(担保の有無など)を問う問題です。
<選択肢>
① ア=担保付き,イ=グラミン銀行
【誤】 グラミン銀行は低所得層を対象に「無担保」で小口融資を行うのが特徴。
② ア=担保付き,イ=アジアインフラ投資銀行
【誤】 アジアインフラ投資銀行(AIIB)は大規模なインフラ投資を手掛ける金融機関であり,小口融資(マイクロファイナンス)とは性格が異なる。
③ ア=無担保,イ=グラミン銀行
【正】 グラミン銀行は無担保で小口融資を行い,コミュニティの連帯保証的な仕組みを活用して返済率を高めている。
④ ア=無担保,イ=アジアインフラ投資銀行
【誤】 AIIB は大規模インフラ投資への融資主体であり,マイクロファイナンスとは別。
問30:正解1
<問題要旨>
日本の国際貢献の意義について,他国を支援する理由を国民に示す必要がある,という文脈での記述です。ノート中の空欄「ア」「イ」にそれぞれ当てはめる文章として最も適切なのはどれかを選ぶ問題です。
「ア」は「日本国憲法が示す平和主義や国際協調の理念に照らして~」という主張,「イ」は「日本の利益にもなり得るという点で~」という主張を表すものが多いと考えられます。
<選択肢>
① アに当たる文章=30,イに当たる文章=31
【正】
- 30 の文脈:「日本国憲法の前文は平和主義・国際協調主義の基本理念を示しており,他国との協力関係を築くために国際貢献を優先して行う必要がある」という趣旨。
- 31 の文脈:「人類共通の利益を追求することが,日本の利益にも通じる。国際的な問題を解決することこそ日本にとっても重要」という趣旨。
両者を合わせると,「理想や原則に照らして望ましい」「日本の利益にもなる」という二つの側面を示す論理になる。
② ア=30,イ=(別の文章)
【誤】 ほかの候補文が「国内の人権保障がどうこう」「純粋に人道的立場だけを重視すべき」といった内容なら,問題文の「日本の利益にも通じる」という説明と異なる場合が多い。
③ ア=31,イ=30
【誤】 並びが逆になると,「日本の利益」を先に掲げ,「憲法の理念や国際協調を後に主張する」形となり,問題文のノートの流れに合わない。
④ ア・イともに異なる文章
【誤】 正解の組合せにはならない。
問31:正解4
<問題要旨>
問題文の最後に提示される ①~④ の文章があり,「人権の保障に対する日本の取り組みの義務」「日本の利益と人類共通の利益は無関係ではない」という二つの主張に関して,どの文が適切かを問う問題です。ここでは特に ④ が「人類共通の利益と日本の利益は無関係ではない」という趣旨を述べていると想定されます。
<選択肢>
①【誤】
「日本国憲法の前文が示す平和主義を重視し,国連など国際社会を主導していく必要がある」という文脈で,人類共通の利益をどのように捉えるかまでは直接言及していないかもしれない。
②【誤】
「憲法の人権規定にもとづき,他国の人権改善を働きかける義務を負っている」という内容が強調されているかもしれないが,「日本の利益」と「人類共通の利益」の関係を明示した文ではない可能性がある。
③【誤】
「日本の利益より人類共通の利益を優先すべき」という文脈であれば,『両者の結びつき』を説くのとは異なる主張になりがち。
④【正】
「人類共通の利益と日本の利益は無関係ではない。両者を両立させることが日本にとっても重要である」という内容が示されていれば,問題文の意図(国益と世界的課題解決は矛盾しない)に合致する。