2024年度 大学入学共通テスト 本試験 政治経済 解答・解説

2024年度 大学入学共通テスト 本試験「政治経済」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
スポンサーリンク

解答

解説

2024年度大学入学共通テスト本試験の政治・経済は、第1問から第4問までの4つの大問、解答番号1〜30の30問で構成されています。満点は100点、試験時間は60分です。配点は第1問が26点、第2問が25点、第3問が25点、第4問が24点で、4つの大問にほぼ均等に配分されています。なお、この2024年度本試験は旧課程「政治・経済」として実施された最後の回で、2025年度からは「公共,政治・経済」に改編されています。

第1問は、生徒Xと生徒Yが参加した公開講座「成人年齢の引下げと生活の変化」を軸に、18歳成人をめぐる制度、選挙制度のモデルケース、住民の直接請求、裁判員制度、雇用と失業の統計資料、単身勤労世帯の家計収支表、社会保障の三つの制度、行政機構の新設を横断的に問います。第2問は「統治作用を担う団体」と「市民社会を構成する団体・集団」を調べる探究学習で、ウェーバーの国家論の原典資料、雇用保険と労災保険の財源、全農林警職法事件の判決文と公務員の労働基本権、国と地方公共団体の役割分担、政教分離、消費者団体訴訟制度、株式会社と有限責任、臓器移植法の改正を扱います。第3問は大学教員による出張講義「経済成長とグローバル化」の目次に沿って、付加価値とGDPの計算、三面等価の原則、市場の失敗、GDPデフレーター、汚染物質の排出規制、1989年から1994年までの景気循環のグラフ、比較優位と技術革新、冷凍野菜の輸入解禁と生鮮野菜の需要曲線を問います。第4問は「国際社会における日本の立場と役割」をテーマにしたグループワークの連想図から、社会契約説の原典資料、アジア3か国の人口ピラミッド、アジアのインフラ開発とODA、日米欧の家計金融資産構成、宇宙条約の条文の適用、科学技術の利用とリスクへ広がります。

この回の特徴は、暗記した知識をそのまま当てる設問が少なく、与えられた表・グラフ・条文・判決文をその場で処理して答えを出す設問が大半を占めることです。選挙区ごとの得票表から死票を数え直す設問(解答番号2)、汚染水の量と濃度をかけ合わせて上限値を比べる設問(解答番号21)、比較優位が入れ替わる条件を機会費用の不等式で絞る設問(解答番号23)はいずれも、選択肢を眺めるだけでは決まらず、先に自分で数値を出す必要があります。また、組合せ型の選択肢が⑦や⑧まであるため、三つの空欄のうち一つでも取り違えると外れます。空欄は必ず一つずつ確定させ、確定したところから選択肢を機械的に削っていくのが安全です。資料の読み取りでは、「すべての」「最も」といった言い切りに対して反例を一つ探す習慣も効きます。

第1問 成人年齢の引下げと生活の変化(配点26)

生徒Xと生徒Yが参加した、主に18歳を対象とする公開講座の内容(政治や司法へのかかわり、経済活動、変化する社会の中の自分)を資料として示し、その各項目の下線部から、18歳成人の制度、選挙制度、住民参加、裁判員制度、労働市場、家計、社会保障、行政機構へと問いを広げる大問です。統計資料と表を読み取る設問が2問、語句の組合せ型が4問含まれます。

問1:正解 ③(解答番号1/配点3)

<問題要旨>

公開講座の表題にある「成人年齢の引下げ」にかかわる制度について、現在の日本の制度に関する記述のうち、誤っているものを一つ選ぶ設問です。選挙運動、国民投票、刑事罰、未成年者の契約という、年齢が関係する四つの場面が並べられています。

<考え方>

「18歳」という年齢が出てくる制度と、そうでない制度を仕分けるのが軸です。成年年齢18歳(民法)、選挙権年齢18歳(公職選挙法)、国民投票の投票権年齢18歳(国民投票法)はそろって18歳ですが、刑事責任年齢だけは14歳(刑法第41条)で、この一本だけが列から外れます。年齢の数字がすり替えられている選択肢を探せば決まります。

<選択肢>

①【正】

選挙運動期間中に電話で特定の候補者への投票を依頼することは、公職選挙法で禁止されていません(禁止されているのは戸別訪問などです)。また選挙運動ができるのは満18歳以上の者なので、記述どおりです。

②【正】

日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)により、憲法改正の国民投票で投票権をもつのは18歳以上の日本国民です。

③【誤】

刑法第41条は「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めており、刑事罰の対象とならないのは14歳未満です。18歳未満であっても14歳以上であれば刑事罰の対象となりえます。年齢の要件を14歳から18歳にすり替えた誤りです。

④【正】

成年年齢が18歳に引き下げられた結果、18歳未満の者が未成年者にあたります。未成年者が法定代理人の同意なく単独で結んだ契約は、原則として取り消すことができます(未成年者取消権)。

正解【③】

刑事罰の対象とならない年齢は18歳未満ではなく14歳未満なので、誤っているのは③です。

問2:正解 ②(解答番号2/配点4)

<問題要旨>

定員10人・各選挙区から上位2人が当選する議会について、三つの政党A〜Cが五つの選挙区a〜eに1人ずつ候補者を立てたときの得票数の表が与えられます。この制度を、定員5人の小選挙区制に変更した場合を比べ、メモの空欄ア(得票合計が最少の政党の当選者数)・イ(死票の増減)・ウ(変更後の同じ比較)に入る語句の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

表の数字を実際に当選者へ翻訳するところから始めます。まず政党別の得票合計はA党150、B党135、C党215で、最も少ないのはB党です。次に各選挙区の順位を書き出し、変更前(上位2人)と変更後(上位1人)で議席を数え直します。死票は「当選しなかった候補者に投じられた票」なので、変更前は各区の3位の票、変更後は各区の2位と3位の票を足せば出ます。

<選択肢>

ア=多い【正】

変更前は各選挙区の上位2人が当選します。aはC・B、bはC・B、cはC・B、dはA・B、eはA・Bが当選し、議席はA党2・B党5・C党3。得票合計が最も少ないB党が、全選挙区で2位に食い込んで最多の5議席を得ます。したがって「多い」が入ります。得票が少ないのだから議席も少ないはずだという直感で「少ない」を選ぶと外れます。

イ=増加【正】

死票は変更前が各区3位の票で、a10+b25+c15+d15+e25=90票。変更後は各区の2位と3位の票が死票となり、a35+b55+c35+d40+e60=225票です。小選挙区制は1議席あたりの落選者が増えるため死票が増えるのが原則で、この数値もそれを裏づけます。「減少」は成り立ちません。

ウ=少ない【正】

変更後は各選挙区で1位のみが当選します。a・b・cはC党、d・eはA党が勝ち、議席はA党2・C党3で、B党は0議席です。得票合計が最少のB党が当選者数でも最少となるので「少ない」が入ります。同じ得票分布でも、選挙制度が変われば議席配分が正反対に近い形になるという、この設問の主題そのものです。

正解【②】

ア「多い」・イ「増加」・ウ「少ない」の組合せなので②が正解です。

問3:正解 ⑦(解答番号3/配点3)

<問題要旨>

住民参加を扱った下線部に関連して、生徒Xと生徒Yが、現在の日本の地方公共団体で住民が政治に参加する仕組みについて話し合う会話文が示されます。空欄ア(選挙とは別に住民の意見を届ける手続)・イ(条例制定を求めるのに必要な署名数)・ウ(憲法第16条の規定)に入る語句の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

地方自治法の直接請求制度と、憲法の請願権という二つの制度を切り分けるのが軸です。直接請求の署名要件は、条例の制定改廃請求と監査請求が有権者の50分の1以上、議会の解散請求と首長・議員の解職請求が3分の1以上という区別が最重要で、ここを取り違える受験生が多い箇所です。ウは「年齢にかかわらず意見を届けられる」という会話の続きから、選挙権と切り離された権利を探します。

<選択肢>

ア=直接請求【正】

会話文はこの手続の一つとして「新たな条例の制定を求めることができた」と続けており、地方自治法の直接請求制度を指します。「情報公開」は行政のもつ情報を住民が受け取る制度で、住民の意見を地方公共団体へ届ける手段ではないため入りません。

イ=50分の1【正】

条例の制定改廃請求(地方自治法第74条)に必要な署名は、その地方公共団体の有権者の50分の1以上です。「3分の1」は議会の解散請求や解職請求(リコール)の要件で、これを条例制定請求に当てはめるのは数値要件の取り違えになります。条例制定はリコールより要件が軽い、と方向で覚えておくと混同しません。

ウ=請願権【正】

憲法第16条は「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し」と定めます。国籍や年齢を問わないので「年齢にかかわらず意見を届けられる」という会話とも合います。「再議」は首長が議会の議決に異議があるときに議会へ差し戻す制度で、住民ではなく首長の権限なので、主体が入れ替わった誤りになります。

正解【⑦】

ア「直接請求」・イ「50分の1」・ウ「請願権」の組合せなので⑦が正解です。

問4:正解 ③(解答番号4/配点3)

<問題要旨>

裁判員に関する下線部を受けて、生徒Xが諸国の刑事裁判への市民参加の制度をまとめたメモが示されます。アメリカの陪審制、ドイツの参審制と対比しながら、日本の裁判員制度について、空欄ア(選任の方法)・イ(有罪か無罪かの判断のしかた)・ウ(量刑への関与)に入るものの組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

メモがアメリカとドイツの特徴を先に書いてくれているので、日本の制度をその両者と照らし合わせれば決まります。日本の裁判員制度は、選任は陪審制と同じく事件ごと、評議は参審制と同じく職業裁判官との合議、量刑にも関与するという組み合わせで、「陪審制と似たところも参審制と似たところもある独特な制度」というメモの結びと整合します。

<選択肢>

ア=事件ごとに【正】

裁判員は、選挙人名簿から作られた裁判員候補者名簿をもとに、対象事件ごとにくじで選ばれます。「一定年数の任期で」選ばれるのはメモにあるとおりドイツの参審員で、これを日本に当てはめると国の取り違えになります。

イ=裁判員と裁判官が合議で【正】

日本では、有罪か無罪かの判断(事実認定)を裁判員と裁判官が合議で行います。「裁判員のみで」有罪無罪を決めるのはアメリカの陪審制の特徴で、日本では採られていません。

ウ=加わる【正】

日本では量刑の判断にも裁判員が加わります。量刑に加わらないのがアメリカの陪審員で、参審員と同じく量刑まで関与する点が日本の特徴です。

正解【③】

日本の裁判員は事件ごとに選ばれ、有罪無罪を裁判官との合議で判断し、量刑にも加わるので③が正解です。

問5:正解 ③(解答番号5/配点4)

<問題要旨>

職業選択を扱った下線部に関連して、三つの資料が示されます。資料1は2002年から2018年までの有効求人倍率と完全失業率の関係を示した散布図、資料2は事務的職業と輸送・機械運転の職業の職業別有効求人倍率(2014年〜2018年)の表、資料3は2002年から2006年までの雇用形態別(パートタイム・フルタイム)有効求人倍率のグラフです。会話文の空欄ア・イ・ウに入る語句の組合せを選びます。

<考え方>

有効求人倍率は求人数÷求職者数なので、1倍を超えれば求人が求職を上回るという定義に戻るのが出発点です。資料1で2014年の点は有効求人倍率およそ1.1倍・完全失業率およそ3.6%、2018年の点はおよそ1.6倍・およそ2.4%で、2014年以降はすべて1倍を超えています。資料2・資料3は、同じ「不足」でも需要側の不足か供給側の不足かを、倍率が低い職業と高い職業に振り分けて読みます。

<選択肢>

ア=上回って【正】

資料1で2014年以降の点はいずれも有効求人倍率が1倍を超えています(2014年がおよそ1.1倍、2018年がおよそ1.6倍)。求人数が求職者数を上回っているのに完全失業率がゼロにならない、という会話の問いかけが成立します。「下回って」ではミスマッチを話題にする流れになりません。

イ=不足して【正】

資料2で事務的職業の有効求人倍率は0.31から0.49と1倍を大きく下回り、求人すなわち労働力の需要量が不足しています。一方、輸送・機械運転の職業は1.62から2.51と1倍を大きく上回り、求職者すなわち労働力の供給量が不足しています。二つの空欄は同じ語句が入るので、需要側にも供給側にも当てはまる「不足して」が正解です。「過剰になって」では、倍率が1倍を割る事務的職業の説明になりません。

ウ=フルタイム【正】

資料3で2002年から2006年のパートタイムの有効求人倍率は1.4倍前後で推移するのに対し、フルタイムは0.4倍台から1.0倍程度までしかありません。フルタイムの求人すなわち労働力の需要量が不足していたことが、この時期に完全失業率が高止まりした理由として挙げられています。

正解【③】

ア「上回って」・イ「不足して」・ウ「フルタイム」の組合せなので③が正解です。

問6:正解 ②(解答番号6/配点3)

<問題要旨>

家計を扱った下線部に関連して、単身勤労世帯3例(例a・例b・例c)の1年間の家計収支の平均月額を示した表が与えられます。実収入、実支出、消費支出、うち食料費、非消費支出(直接税・社会保険料)の各欄が並びます。ノートの空欄ア(例aと例bのどちらの平均消費性向が高いか)・イ(例cのエンゲル係数の値)に入るものの組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

二つの指標の定義をそのまま計算に落とせば決まります。平均消費性向=消費支出÷可処分所得、可処分所得=実収入-非消費支出、エンゲル係数=食料費÷消費支出です。可処分所得を「実収入」で代用したり、エンゲル係数の分母を実収入にしたりすると値が変わってしまうので、分母を取り違えないことが要点です。

<選択肢>

ア=例a【正】

例aの可処分所得は550-150=400千円で、平均消費性向は300÷400=75%。例bの可処分所得は310-60=250千円で、180÷250=72%です。75%>72%なので例aの方が高くなります。実収入で割ると例aが約55%、例bが約58%と大小が逆転してしまうので、非消費支出を差し引くことが判定を分けます。

イ=30%【正】

エンゲル係数は食料費÷消費支出なので、例cは30÷100=30%です。分母を実収入140千円としてしまうと約21%になり、選択肢のどれとも合いません。可処分所得が最も少ない例cでエンゲル係数が最も高くなる(例aは60÷300=20%、例bは42÷180=約23%)というノートの記述とも整合します。

正解【②】

平均消費性向が高いのは例a、例cのエンゲル係数は30%なので②が正解です。

問7:正解 ⑤(解答番号7/配点3)

<問題要旨>

セーフティネットとしての社会保障を扱った下線部に関連して、日本の社会保険制度・公的扶助制度・社会福祉制度それぞれの基本的な特徴を述べた三つの記述ア〜ウのうち、正しいものをすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

社会保障の四つの柱(社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生)を、財源が保険料か公費(租税)かで仕分けるのが最短です。社会保険は事前に保険料を拠出する拠出制、公的扶助(生活保護)は保険料を伴わない無拠出制で財源は公費、社会福祉もサービス提供が中心で拠出を前提としません。財源の主体が入れ替えられていないかを見ます。

<選択肢>

ア【正】

社会保険制度は、あらかじめ保険料を拠出しておき、疾病・老齢・失業・業務災害・要介護といった保険事故が生じた当事者に給付を行う仕組みです。医療保険・年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の五つがこれにあたり、記述どおりです。

イ【誤】

公的扶助(生活保護)は、生活に困窮し最低限度の生活水準に満たない状態になった者に給付を行う点までは正しいものの、その財源は保険料ではなく公費(租税)です。事前の拠出を要件としない無拠出制であることが公的扶助の本質なので、「保険料から」とする点で財源の主体が入れ替わっています。

ウ【正】

社会福祉制度は、老齢・障害・ひとり親・児童など、社会生活を送るうえで支援が必要な当事者に対して、施設やサービスの提供などを行う仕組みです。記述どおりです。

正解【⑤】

正しいのはアとウで、公的扶助の財源を保険料とするイだけが誤りなので⑤が正解です。

問8:正解 ④(解答番号8/配点3)

<問題要旨>

行政機構を扱った下線部を受けて、2000年以降における日本の行政機構の変化に関する記述のうち、誤っているものを一つ選ぶ設問です。消費者庁、復興庁、デジタル庁、こども家庭庁という、比較的新しい四つの官庁が並べられています。

<考え方>

新設官庁は「設置の目的」と「どこに置かれているか」の二点で覚えます。「庁」は省または内閣府の外局として置かれるのが原則で、消費者庁とこども家庭庁はともに内閣府の外局、復興庁とデジタル庁は内閣に直属する組織です。設置の目的はいずれも記述どおりなので、所属先がすり替えられている選択肢を探します。

<選択肢>

①【正】

消費者庁は2009年に、複数の省庁に分散していた消費者行政を一元化することなどを目的として新設され、内閣府の外局として置かれています。

②【正】

復興庁は2012年に、東日本大震災からの復興を円滑かつ迅速に進めることなどを目的として新設されました。

③【正】

デジタル庁は2021年に、行政手続のオンライン化によるデジタル社会の形成などを目的として新設されました。

④【誤】

こども家庭庁は2023年4月に発足し、子どもと家庭の福祉・保健政策を総合的に進めることを目的としていますが、置かれているのは厚生労働省ではなく内閣府の外局です。この試験はこども家庭庁の発足からおよそ9か月後の出題でした。目的の記述は正しく、所属先だけが入れ替えられている誤りです。

正解【④】

こども家庭庁は内閣府の外局であり、厚生労働省には置かれていないので、誤っているのは④です。

第2問 統治する団体と市民社会の団体(配点25)

統治作用を担う団体に関心をもつ生徒Xと、市民社会を構成する団体・集団に関心をもつ生徒Yが、さまざまな団体・集団の働きをそれぞれ調べていくという設定の大問です。ウェーバーの原典、最高裁判決文、憲法や地方自治法の条文、法改正のメモといった資料が多く、資料に書かれた内容だけから判断する力が問われます。

問1:正解 ③(解答番号9/配点3)

<問題要旨>

近代国家の成立を調べる生徒Xが見つけた資料として、マックス・ヴェーバー『職業としての政治』の一節が示されます。過去には氏族をはじめ多様な団体が物理的暴力をノーマルな手段と認めていたが、今日では国家が一定の領域の内部で正当な物理的暴力行使の独占を要求する人間共同体である、という内容です。この資料から読みとれる内容として最も適当なものを一つ選ぶ設問です。

<考え方>

資料読み取り問題なので、知識で補わず、資料が「過去」と「今日」のどちらについて何を述べているかだけで判定します。資料の構造は、過去=多様な団体が暴力をノーマルな手段としていた、今日=国家が暴力行使への権利の唯一の源泉とみなされ、他の団体や個人は国家が許容した範囲内でしか暴力を行使できない、という時期の対比です。この対比を取り違えている選択肢を落とします。

<選択肢>

①【誤】

資料は暴力行使が「国家にとってノーマルな手段でもまた唯一の手段でもない」と明言しており、さらに過去には多様な団体が暴力を認めていたとしています。「過去において国家に特有の手段であり、通常かつ唯一の手段でもある」は資料と正反対です。

②【誤】

前半の「今日において国家と暴力の関係は特別に緊密」は資料どおりですが、後半が誤りです。資料は過去において氏族を始めとする多種多様な団体が暴力をノーマルな手段として認めていたと述べており、「それ以前に暴力行使はいかなる団体にも認められたことがない」は資料の記述をひっくり返しています。

③【正】

資料は「国家とは、ある一定の領域の内部で正当な物理的暴力行使の独占を要求する人間共同体である」「国家が暴力行使への『権利』の唯一の源泉とみなされている」と述べ、これを現代に特有の現象としています。記述はこの今日についての内容をそのまま言い換えたものです。

④【誤】

国家が許容した範囲内でのみ他の団体や個人が物理的暴力を行使できる、というのは資料が「今日では」として述べている内容です。これを「過去においては」とするのは時期の前後を入れ替えた誤りです。

正解【③】

今日において国家が一定の領域内の正当な物理的暴力行使の唯一の源泉とみなされていると述べる③が、資料の内容と一致します。

問2:正解 ④(解答番号10/配点3)

<問題要旨>

国家が運営する社会保障の仕組みとして、日本の雇用保険と労働者災害補償保険(労災保険)についてのメモが示されます。空欄ア(失業したときの主な給付の財源の負担者)にはaかb、空欄イ(労災保険の給付の財源となる保険料の負担者)にはcかdが入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

同じ社会保険でも、保険料を誰が負担するかは制度の成り立ちによって異なるという点が軸です。労災保険は、労働基準法が使用者に課した無過失の災害補償責任を保険化したものなので、負担するのは事業主だけです。雇用保険の失業等給付は労使が保険料を負担するうえに国庫負担もあり、政府も財源の担い手になります。選択肢の文はそれぞれ負担者の「考え方」まで説明しているので、その理屈と負担者が対応しているかを見ます。

<選択肢>

ア=b(事業主、労働者、政府の三者)【正】

雇用保険の失業等給付の財源は、事業主と労働者が負担する保険料に加えて国庫負担(政府)で賄われます。失業は景気変動など政府の経済政策・雇用政策とも無縁でない原因で生じるため、労使だけでは対処できないという考え方に対応します。aは負担者を事業主と労働者の二者に限っており、国庫負担が抜け落ちている点で誤りです。

イ=d(事業主のみ)【正】

労災保険の保険料は事業主が全額負担し、労働者の負担はありません。業務に起因する災害の補償は、事業から利益を得る事業主が負うべきだという考え方(使用者の無過失責任)に基づくからです。cは「給付を受けうる労働者も負担すべき」という考え方で労働者にも負担させており、労災保険の趣旨と合いません。

正解【④】

雇用保険の失業等給付は事業主・労働者・政府の三者、労災保険の保険料は事業主のみが負担するので④が正解です。

問3:正解 ⑤(解答番号11/配点4)

<問題要旨>

公務員が結成する団体を調べる生徒Xが、日本の公務員の労働基本権に関する最高裁判決の一節を資料として示します。資料の空欄アにはaかbの語句、生徒Xと生徒Yの会話文の空欄イにはcかdの語句、空欄ウにはeかfの記述が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

資料は全農林警職法事件(1973年)の最高裁判決で、公務員の争議行為の一律禁止を合憲とした判例です。まず判決が何を禁止の対象としているかを資料の文脈から確定し、次に判決がいう「代償措置」の具体例を思い出し、最後に空欄ウが会話のどちら側の発言に置かれているかを確認します。空欄ウはYの疑問に対してXが判決を支持する側から答える位置にあるので、判決を擁護する向きで、かつ現行法の説明として正確な記述を選びます。

<選択肢>

ア=争議行為【正】

資料は「公務員の〔ア〕およびそのあおり行為等を禁止するのは……憲法28条に違反するものではない」と続きます。憲法第28条は団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)を保障する条文で、国家公務員法が禁止しているのは争議行為とそのあおり行為です。「不当労働行為」は労働組合法が使用者に禁じる行為であり、禁止される主体が労働者側ではなく使用者側なので、ここには入りません。

イ=人事院【正】

判決がいう代償措置の代表例は、人事院が国家公務員の給与などの勤務条件の改善を内閣と国会に勧告する人事院勧告の制度です。「内閣人事局」は2014年に設置された、幹部職員の人事を内閣官房で一元管理する組織で、勤務条件の改善を勧告する機関ではありません。

ウ=e(職員団体をつくることができ、申入れを受けた機関は交渉に応ずべき地位にあるものとされるにとどまる)【正】

一般職の国家公務員は、国家公務員法により勤務条件の維持改善を目的とする職員団体を結成でき、当局は交渉に応ずべき地位に立ちますが、団体協約を締結する権利はありません。この「団結権はあるが交渉権は限定されている」という現行法の姿を、判決を支持する立場からやむをえないと述べる記述です。fは「職員団体をつくることができないとされる」としており、職員団体の結成自体は認められているという事実に反します。

正解【⑤】

ア「争議行為」・イ「人事院」・ウ「e」の組合せなので⑤が正解です。

問4:正解 ②(解答番号12/配点3)

<問題要旨>

国と地方公共団体との関係について、生徒Xが憲法第92条と、1999年の地方分権一括法による改正で新設された地方自治法第1条の2を引いたメモが示されます。空欄ア(国から独立した団体が自らの意思と責任で地方の事務を処理するという考え方)にはaかbの語句、空欄イ(地方自治法第1条の2が定める国と地方の関係)にはcかdの記述が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

「地方自治の本旨」を構成する二つの原則を正確に分けることが第一歩です。団体自治は国から独立した団体が自らの責任で地方の事務を処理すること、住民自治は地方の政治をその住民の意思に基づいて行うことで、メモの説明は前者にあたります。空欄イは条文の引用文そのものに答えが書かれているので、条文をそのまま読み直します。

<選択肢>

ア=団体自治【正】

メモは「国から独立した団体を設け、その団体の意思と責任において地方の事務を処理するべきである」と説明しており、これは団体自治の定義そのものです。住民自治は住民の意思に基づいて地方政治が行われることを指し、この説明には「住民の意思」が出てこないので当てはまりません。

イ=d(住民に身近な行政は地方公共団体が責任を負い、国は施策の実施を補助する)【正】

引用された地方自治法第1条の2は、地方公共団体が地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担い、国は本来果たすべき役割を重点的に担って、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねる、と定めています。地方公共団体の自主性・自立性が十分に発揮されるようにしなければならない、とも続きます。cは「まずは国が責任を負い、国は地方公共団体に対して指揮監督を行う」としており、責任を負う主体を地方から国へ入れ替えたうえ、地方分権改革が廃止した機関委任事務下の上下関係に引き戻す記述で、条文と正反対です。

正解【②】

ア「団体自治」・イ「d」の組合せなので②が正解です。

問5:正解 ⑤(解答番号13/配点3)

<問題要旨>

宗教団体に関心をもった生徒Yが、日本国憲法における宗教に関する規定を調べたという設定で、信教の自由や政教分離の原則に関する三つの記述ア〜ウが示されます。正しいものをすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

憲法第20条の三つの項を分けて押さえるのが軸です。第1項前段が信教の自由、第1項後段が宗教団体への特権付与と政治上の権力行使の禁止、第3項が国およびその機関による宗教的活動の禁止です。信教の自由には内心の信仰の自由だけでなく宗教的行為の自由・宗教的結社の自由も含まれます。条文がそのまま述べていることを「認められている」と裏返していないかを見ます。

<選択肢>

ア【正】

信教の自由は、内心における信仰の自由、宗教的行為の自由、そして宗教団体を結成する宗教的結社の自由を含むと解されています。憲法第21条の結社の自由の特則としての位置づけももち、記述どおりです。

イ【誤】

憲法第20条第1項後段は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と定めています。記述は「一定の要件を満たした宗教団体には……憲法上認められている」として、条文が禁止していることを許容に裏返しており、しかも条文にない「一定の要件」という例外まで付け加えています。

ウ【正】

憲法第20条第3項は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めており、記述はこの文言に沿っています。ここでいう「国及びその機関」には地方公共団体も含まれると解されており、実際、愛媛玉串料訴訟では県による玉串料の支出が違憲と判断されました。国だけが対象で地方公共団体は含まれない、と考えると取り違えます。

正解【⑤】

正しいのはアとウで、宗教団体への特権付与と政治上の権力行使を許容するイだけが誤りなので⑤が正解です。

問6:正解 ④(解答番号14/配点3)

<問題要旨>

消費者団体に関心をもった生徒Yが、特定商取引法等にも消費者団体訴訟制度を導入した2008年の法改正について、改正の内容・改正の背景・制度を導入するねらいの三つに整理したメモを作成します。このメモから読みとれる内容として最も適当なものを一つ選ぶ設問です。

<考え方>

メモは、従来の行政規制に「加えて」適格消費者団体による差止請求訴訟という民事の手段を用意した、という構造で書かれています。行政規制は廃止も緩和もされておらず、手段が一つ増えたという点を押さえると、緩和・限定・置き換えを述べる選択肢は落ちます。残るのはメモが「副次的効果」として挙げている行政資源の集中で、これは言い換えの精度だけを確かめれば済みます。

<選択肢>

①【誤】

メモの「改正の背景」は、行政規制だけでは被害の未然防止や拡大防止が十分にできなかったと述べています。背景は行政規制の不足であって「過剰」ではありません。方向が逆です。

②【誤】

消費者団体訴訟制度は、従来の行政規制に加えて差止請求訴訟という手段を新たに設けるものです。事業者の不当な行為を止める手段が増えるのですから、事業者の経済活動に対する規制緩和とはいえません。

③【誤】

メモは行政による規制に「加え」る形で制度を導入すると述べており、行政規制は存続します。被害の未然防止や拡大防止のための取組みが適格消費者団体だけのものになった、とは読みとれません。「のみ」という言い切りに対する反例が、メモの中にそのまま書かれています。

④【正】

メモの「制度を導入するねらい」の二つ目に、行政機関の人員や予算などの資源を、より迅速な対応が求められる重大な消費者被害に集中させることが可能になるという副次的効果が挙げられています。記述はこれを言い換えたものです。

正解【④】

限りのある行政資源を重大な消費者被害に集中的に投入できるという副次的効果を述べた④が、メモから読みとれます。

問7:正解 ②(解答番号15/配点3)

<問題要旨>

日本の会社の組織や責任について生徒Yと生徒Xが議論する会話文が示されます。空欄ア(株主が会社の債務に対して負う責任)にはaかbの記述、空欄イ(出資者の責任の範囲が株式会社と同じ会社形態)にはcかdの語句、空欄ウ(株主が自らの利益を優先して会社に望ましくない活動をさせる事態を避ける手立て)にはeかfの記述が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

会社法が定める会社形態を、出資者が有限責任か無限責任かで並べ直すのが軸です。株式会社の株主と合同会社の社員は有限責任、合名会社の社員は全員が無限責任、合資会社は両方が混在します。空欄ウは、株主利益の優先という弊害への対抗手段を問うので、株主以外の利害関係者に目を向ける考え方を探します。

<選択肢>

ア=a(出資額をこえた責任は負わない)【正】

株式会社の株主は間接有限責任を負い、会社が債務を返しきれなくても出資額を失う以上の責任は負いません。この有限責任があるからこそ広く出資を集められる一方、株主が会社の債務を自ら被らずに済むために、リスクの高い活動を会社にさせうるという批判が生じます。会話の後半の論点につながる前提です。

イ=合同会社【正】

合同会社は2006年施行の会社法で新設された会社形態で、出資者(社員)は全員が有限責任です。株式会社と同じ責任の範囲になります。合名会社は社員全員が無限責任を負う会社なので、責任の範囲が「同じ」にはなりません。

ウ=f(会社に社会的責任を果たさせて幅広いステークホルダーの利益を確保すること)【正】

株主の経済的利益の優先という弊害に対しては、従業員・消費者・取引先・地域住民といった幅広い利害関係者(ステークホルダー)の利益に配慮させる企業の社会的責任(CSR)の考え方が対抗手段になります。eは「会社が株主代表訴訟を通じて株主の責任を追及していく」としていますが、株主代表訴訟は株主が会社に代わって取締役など役員の責任を追及する制度で、訴える側と訴えられる側が入れ替わっています。

正解【②】

ア「a」・イ「合同会社」・ウ「f」の組合せなので②が正解です。

問8:正解 ④(解答番号16/配点3)

<問題要旨>

家族という集団に関心をもった生徒Yが、2009年の臓器移植法改正について、脳死した本人に家族がいる場合の制度を改正前・改正後に分けてまとめたメモを作成します。このメモから読みとれる内容として正しい記述ア〜ウをすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

メモに書かれた摘出の要件を、改正前・改正後それぞれについて条件式として書き出すのが確実です。改正前は「本人の書面による提供意思かつ家族が拒まない」、改正後は「本人の書面による提供意思かつ家族が拒まない」または「本人の意思が不明かつ家族が書面で承諾」です。改正の前後を通じて家族が拒めば摘出できない点は変わらないことが、三つの記述を仕分ける鍵になります。

<選択肢>

ア【正】

改正前は本人の書面による提供意思がなければ摘出できず、改正後も、本人が提供しない意思を表示していれば「意思が不明」にはあたらないため、家族が承諾しても摘出できません。しかも改正後は提供しない意思の表示は年齢にかかわらずできるとされています。提供しないという自己決定は、前後を通じて家族の意思と無関係に貫かれます。

イ【正】

改正後は、本人の意思が不明でも家族が書面で承諾すれば摘出できます。15歳未満の者についても、提供しない意思を表示していなければ家族の書面による承諾で摘出できるとメモが明記しており、年齢を問わず同じ扱いです。一方、本人が提供しない意思を表示していれば摘出できないという点もアと同じ理由で成り立ちます。

ウ【誤】

改正後も摘出できるのは「本人が書面で提供意思を表示しており家族が拒まないとき」に限られます。家族が反対すれば摘出できないので、提供するという本人の自己決定が家族の意思にかかわらず実現されるわけではありません。提供しない意思(ア・イ)と提供する意思(ウ)とで家族の関与のしかたが違う、というのがこの設問の要点です。

正解【④】

正しいのはアとイで、家族が反対しても摘出できるとするウだけが誤りなので④が正解です。

第3問 経済成長とグローバル化(配点25)

生徒Xと生徒Yが通う学校で開かれた、大学教員による出張講義「経済成長とグローバル化」の資料の目次を示し、その下線部から問いを立てていく大問です。付加価値とGDP、三面等価、GDPデフレーターといった計算のほか、排出規制の上限値の比較、景気循環のグラフの判別、比較優位が入れ替わる条件など、手を動かして数値を出す設問が集中しています。

問1:正解 ②(解答番号17/配点3)

<問題要旨>

小麦・小麦粉・パンだけを生産する経済を想定し、農家が小麦をすべて製粉会社に50万円で販売し、製粉会社が小麦粉をすべて製パン会社に150万円で販売し、製パン会社がパンをすべて消費者に400万円で販売した、というメモと表が示されます。表の空欄のうち、エ(製パン会社の付加価値額)とオ(この国のGDP)に入る数値の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

付加価値額=生産総額-中間投入物の額、GDP=各生産段階の付加価値額の合計という二つの定義に戻ります。中間投入物は他の企業から買った原材料なので、製粉会社は小麦50万円、製パン会社は小麦粉150万円です。二重計算を避けるために中間投入物を差し引く、という発想がそのまま計算手順になります。

<選択肢>

エ=250(万円)【正】

製パン会社の生産総額400万円から、製粉会社から購入した小麦粉150万円(中間投入物)を差し引いて400-150=250万円です。販売額の400万円をそのまま付加価値額としてしまうと、製粉会社と農家が生み出した分まで二重に数えることになります。

オ=400(万円)【正】

農家50万円+製粉会社(150-50=)100万円+製パン会社250万円=400万円です。これは最終生産物であるパンの販売額400万円と一致します。付加価値の合計と最終生産物の価額が一致することが、GDPの定義の確認になります。三社の生産総額を足した600万円は中間投入物を二重に数えた値なので、GDPではありません。

正解【②】

製パン会社の付加価値額は250万円、GDPは付加価値の合計=最終生産物の価額で400万円なので②が正解です。

問2:正解 ⑥(解答番号18/配点3)

<問題要旨>

GDPの分配を扱った下線部について、生徒Xと生徒Yが講義で学んだことを確認し合う会話文が示されます。空欄ア(GDPに海外からの純所得を加え、固定資本減耗を除き、間接税を差し引いて補助金を加えた額の名称)にはaかbの語句、空欄イ(生産・分配と並ぶもう一つの面)にはcかdの語句、空欄ウ(三つの面の総額の大小)にはeかfの記述が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

国民経済計算の指標は、GDP→(+海外からの純所得)→GNI→(-固定資本減耗)→NNP→(-間接税+補助金)→NIという一本の計算の流れとして順に覚えるのが確実です。会話文はこの流れを言葉で書き下しているので、どこまで進んだ段階かを追えば名称が決まります。三面等価の原則は「生産・分配・支出」の三つで、これは定義上必ず等しくなります。

<選択肢>

ア=NI(国民所得)【正】

会話文は、GDPに海外からの純所得を加え(GNI)、固定資本減耗を除き(NNP)、さらに間接税を差し引いて補助金を加える、と計算の全段階をたどっています。到達点は市場価格表示ではなく要素費用表示の国民所得(NI)です。「GNI」は海外からの純所得を加えた段階で止まっており、固定資本減耗や間接税の調整をまだ行っていないので当てはまりません。

イ=支出【正】

三面等価の原則がいう三つの面は生産・分配・支出です。分配された所得がどのように支出(消費・投資など)に充てられたかを見る面で、「投資」は支出面を構成する一項目にすぎず、面の名称ではありません。

ウ=f(どの面からみた総額もすべて等しい)【正】

三面等価の原則により、生産面・分配面・支出面から見た総額は事後的に必ず一致します。生み出された付加価値が分配され、分配された所得が支出されるという同じ流れを三つの角度から測っているためです。eの「生産面からみた総額が一番大きい」は、どれかが大きいという前提自体が成り立ちません。

正解【⑥】

ア「NI(国民所得)」・イ「支出」・ウ「f」の組合せなので⑥が正解です。

問3:正解 ④(解答番号19/配点3)

<問題要旨>

「市場の失敗」を扱った下線部について、生徒Xが考えた三つの記述ア〜ウのうち、市場の失敗の例として正しいものをすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

市場の失敗とは、市場メカニズムに任せておいても資源の最適配分が実現しない状態を指します。代表例は独占・寡占、外部性(外部不経済・外部経済)、公共財、情報の非対称性です。裏返せば、完全競争・外部性なし・情報が完全という条件がそろっていれば市場はうまく働くので、その条件を述べているだけの記述は市場の失敗の例になりません。

<選択肢>

ア【正】

特定の企業の市場支配が進んでその企業が価格支配力をもつのは、独占・寡占による市場の失敗です。価格が競争的な水準より高く、生産量が過少になり、資源配分が最適でなくなります。

イ【正】

企業の周辺住民が対価を受け取ることなく企業活動による不利益を被るのは、外部不経済(負の外部性)です。企業の私的費用に公害などの社会的費用が反映されないため、その財が過剰に生産されます。公害問題が市場の失敗として扱われる理由です。

ウ【誤】

売り手がもっている情報をすべて買い手ももっているのは、情報の非対称性がない状態、すなわち市場がうまく機能するための条件が満たされている状態です。市場の失敗にあたるのは、売り手だけが品質を知っているといった情報の非対称性がある場合なので、記述は条件を裏返しています。

正解【④】

市場の失敗の例にあたるのは独占のアと外部不経済のイで、情報が完全な状態を述べたウは該当しないので④が正解です。

問4:正解 ⑦(解答番号20/配点3)

<問題要旨>

物価を扱った下線部に関連して、生徒XがGDPデフレーターについてまとめたメモが示されます。2010年の名目GDPが400兆円・実質GDPが400兆円、2020年の名目GDPが540兆円・実質GDPが360兆円という数値例をもとに、空欄ア(2010年を基準年としたときの2020年のGDPデフレーター)にはa〜dの数値、空欄イ(基準年と比べた2020年の物価)にはeかfの語句が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100という式に数値を入れるだけです。名目と実質を逆にすると値が逆数になってしまうので、分子が名目であることを確認します。基準年の値が100なので、算出値が100より大きければ物価上昇、小さければ物価下落と読みます。

<選択肢>

ア=150【正】

540÷360×100=150です。分子と分母を逆にすると360÷540×100=約66となり、選択肢aの66はこの取り違えを誘う数値です。90や135は、名目GDPの増加率や実質GDPの変化から作られた数値で、デフレーターの定義には対応しません。

イ=上昇【正】

基準年2010年のGDPデフレーターは100で、2020年は150ですから、基準年と比べて物価は上昇しています。名目GDPが400兆円から540兆円へ増えたのに実質GDPは400兆円から360兆円へ減っている、という数値の組み合わせ自体が、増加分が物価上昇によるものであることを示しています。

正解【⑦】

GDPデフレーターは150で基準年の100を上回るため物価は上昇しており、⑦が正解です。

問5:正解 ③(解答番号21/配点3)

<問題要旨>

公害問題を扱った下線部に関連して、同一の汚染物質を排出する企業Aと企業Bだけが存在する地域を想定し、汚染水の年間排出量(企業A100トン、企業B500トン)と汚染水の濃度(企業A1%、企業B2%)を示した表が与えられます。規制導入以後は両社とも排出量や濃度を増減させること、制限がかかったものについては制限内で排出することなどの仮定のもとで、汚染物質の総量をいかなる場合においても確実に規制導入以前より減少させる規制の内容を一つ選ぶ設問です。

<考え方>

汚染物質の量は排出量×濃度で計算します。規制導入以前は企業Aが100×1%=1トン、企業Bが500×2%=10トンで、合計11トンです。ここで効くのが「確実に」という条件で、企業は制限内であれば自由に増減させるのですから、各社が制限いっぱいまで排出した最悪の場合(上限値)で計算し、それが11トンを下回るかを見ます。片方しか制限されていなければ、制限されていない側を無限に増やせるので総量は確実に減りません。

<選択肢>

①【誤】

濃度を両社とも0.1%に制限しても、年間排出量が制限されていません。仮定により企業は排出量を増やせるので、たとえば両社が排出量を大幅に増やせば総量は11トンを上回りえます。片方の変数が野放しになっている規制です。

②【誤】

排出量を企業A50トン・企業B200トンに制限しても、濃度が制限されていません。濃度を引き上げれば総量は11トンを上回りえます。①と対になる誤りです。

③【正】

濃度は両社とも1.5%まで、排出量は企業A120トン・企業B600トンまでという二重の制限がかかります。最も多く排出した場合でも企業Aは120×1.5%=1.8トン、企業Bは600×1.5%=9トンで、合計10.8トンです。規制導入以前の11トンを必ず下回るので、いかなる場合でも確実に減少します。排出量の上限が規制前より大きいので一見ゆるく見えますが、企業Bの濃度が2%から1.5%へ下がる効果がそれを上回ります。

④【誤】

濃度は企業A1%・企業B2%、排出量は企業A300トン・企業B400トンまでという制限です。上限いっぱいで計算すると企業Aは300×1%=3トン、企業Bは400×2%=8トンで合計11トンとなり、規制導入以前とちょうど同じになります。減少する場合もありますが減少しない場合もあるので、「いかなる場合においても確実に減少させる」という条件を満たしません。濃度の上限を現状のまま据え置いたうえで企業Aの排出量上限を3倍にしたことが響いています。

正解【③】

上限いっぱいで排出しても合計10.8トンとなり、必ず規制導入以前の11トンを下回るのは③だけです。

問6:正解 ④(解答番号22/配点3)

<問題要旨>

景気循環を扱った下線部に関連して、四つの資料が示されます。資料1は景気循環の経過(売れ残りの増加→利潤の減少→雇用の減少と景気後退→生産の抑制と設備投資の減少→過剰在庫の処分と過剰設備の整理を経て回復)を説明した文章、資料2〜4は1989年から1994年までの日本のGDP・民間設備投資・民間部門の在庫それぞれの実質額の対前年増減額のグラフです。資料2〜4の空欄ア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

三つのグラフを見分ける手がかりは縦軸の目盛りの大きさとマイナスに転じるかどうかの二点です。国民経済の規模から考えて、対前年増減額が最も大きくなるのはGDP、最も小さいのが在庫です。さらに資料1の経過に照らし、どの局面でどの変数が減り始めるかを重ねます。

<選択肢>

ア=民間部門の在庫【正】

資料2は縦軸が-1兆円から3兆円と三つのうち最も小さく、金額の規模から在庫と判断できます。1989年から1993年まではプラス(在庫が積み上がる)で推移し、1994年に初めてマイナスに転じます。資料1がいう「売れ残りが増加し企業の利潤は減少する」局面から「過剰在庫の処分」へ移る流れに対応します。

イ=民間設備投資【正】

資料3は縦軸が-10兆円から15兆円で、1989年の+10兆円から減り続け、1992年に-6兆円、1993年に-7兆円とマイナスへ転じます。資料1がいう「景気の後退は、企業による生産の抑制や設備投資の減少……を促し」に対応する動きです。在庫より規模が大きく、GDPより小さい点も合います。

ウ=GDP【正】

資料4は縦軸が0から25兆円で三つのうち最も大きく、1990年の約23兆円から1993年の約1兆円まで縮みながらも、この期間を通じて一度もマイナスになりません。増減額の規模が最大で、かつプラスを保つという二点からGDPと判断できます。

正解【④】

増減額の規模が小さい順に在庫・民間設備投資・GDPと並ぶので④が正解です。

問7:正解 ⑥(解答番号23/配点4)

<問題要旨>

貿易を扱った下線部に関連して、自動車とオレンジのみを生産するA国とB国について、各財を1単位生産するのに必要な労働力の量を示した表が与えられます。技術革新以前はA国が自動車20人・オレンジ5人、B国が自動車10人・オレンジ4人で、技術革新以後はA国の自動車だけが空欄アに変わります。「技術革新の以前と以後で自動車生産に比較優位をもつ国が変わる」ためにアに当てはまる数値をすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

比較優位は労働力の絶対量ではなく機会費用で決まります。自動車1単位の機会費用をオレンジ何単位分かで表すと、A国は(自動車の必要労働力)÷(オレンジの必要労働力)、B国も同様です。技術革新以前はA国が20÷5=4、B国が10÷4=2.5でB国が自動車に比較優位をもちます。B国の値は変わらないので、比較優位が入れ替わる条件はア÷5<2.5、すなわちア<12.5という不等式になります。ここまで出してから数値を当てにいきます。

<選択肢>

a=15【誤】

15÷5=3で、B国の2.5より大きいままです。技術革新によってA国の自動車生産の効率は上がりますが、機会費用で比べるとまだB国の方が小さいため、自動車に比較優位をもつ国はB国のまま変わりません。必要な労働力がB国の10人より多いか少ないかという絶対優位で判断すると、ここを取り違えます。

b=10【正】

10÷5=2で、B国の2.5より小さくなります。自動車に比較優位をもつ国がB国からA国へ移るので、条件を満たします。A国とB国の自動車の必要労働力が同じ10人でも、オレンジの必要労働力が異なる(A国5人、B国4人)ため比較優位は入れ替わる、というのがこの設問の要点です。

c=5【正】

5÷5=1で、B国の2.5を下回ります。自動車に比較優位をもつ国はA国に移り、条件を満たします。

正解【⑥】

機会費用がB国の2.5を下回るのはb(10)とc(5)なので⑥が正解です。

問8:正解 ②(解答番号24/配点3)

<問題要旨>

貿易による国内市場への影響を扱った下線部について、安価な冷凍野菜の輸入解禁が国内の生鮮野菜市場に与える影響を考える設問です。生鮮野菜の供給は国内のみ、冷凍野菜の供給は国外のみで、冷凍野菜の輸入解禁以外の変化は起こっていないこと、そして消費者は生鮮野菜の価格が高いほど生鮮野菜より冷凍野菜を好んで購入する傾向にあることが条件として示されます。解禁前と解禁後の生鮮野菜の需要曲線を表す図を四つの中から一つ選びます。

<考え方>

判断は二段階です。第一に、安価な代替財である冷凍野菜が手に入るようになるので、生鮮野菜の需要は減り、需要曲線は左へシフトします。これで右へシフトしている図は落ちます。第二に、条件の「価格が高いほど冷凍野菜を好んで購入する」を、価格が高い領域ほど冷凍野菜への乗り換えが多く、需要の減少幅が大きいと読み替えます。逆に価格が低い領域では乗り換えが起きにくいので、減少幅は小さくなります。つまり、曲線の上のほう(高価格側)で大きく、下のほう(低価格側)でわずかしか左へ動かない図を探します。

<選択肢>

①【誤】

解禁後の曲線は解禁前より左にあり、左方シフトという第一段階は満たします。しかし二つの曲線は高価格側の端でほぼ重なり、価格が下がるにつれて離れていく形です。これは価格が低いほど需要の減少幅が大きいことを意味し、条件と正反対です。

②【正】

解禁後の曲線は左方へ動いたうえ、高価格の領域では需要がほとんど消え、低価格の領域では解禁前とほぼ同じ数量に近づいています。価格が高いほど冷凍野菜へ乗り換えるという条件どおり、減少幅が高価格側で大きく低価格側で小さい形になっており、結果として曲線は水平に近づきます。

③【誤】

解禁後の曲線が解禁前より右に描かれており、生鮮野菜の需要が増加したことを表しています。安価な代替財が入れば需要は減るはずなので、シフトの向きが逆です。

④【誤】

③と同じくシフトの向きが右で、需要の増加を表しています。傾きの変化の描き方にかかわらず、向きの時点で条件を満たしません。

正解【②】

需要曲線が左へ動き、かつ高価格帯ほど減少幅が大きい形を示しているのは②です。

第4問 国際社会における日本の立場と役割(配点24)

生徒X・生徒Y・生徒Zが「国際社会における日本の立場と役割」をテーマに行ったグループワークで、テーマから連想される論点とキーワードを書き出した図を出発点とする大問です。社会契約説の原典、人口ピラミッド、ODA、家計の金融資産構成、宇宙条約の条文と、素材の幅が最も広く、配点は6問すべてが4点です。

問1:正解 ⑥(解答番号25/配点4)

<問題要旨>

主権国家より上位に立つものがない国際社会は自然状態であるといわれることがあると知った生徒Xが、関連する文献を調べたという設定です。『統治二論(市民政府二論)』『戦争と平和の法』『リヴァイアサン(リバイアサン)』のいずれかからの一節である三つの記述ア〜ウと、著者名a〜c(グロティウス、ホッブズ、ロック)との組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

三人の自然状態の捉え方の違いが手がかりです。ホッブズは自然状態を「万人の万人に対する闘争」とみて共通の権力の不在を強調し、ロックは自然状態にも理性=自然法が働き生命・自由・財産が保障されると考え、グロティウスは戦争にも適用される国際法の基礎を自然法に求めた——この三点を、各記述のキーワードに重ねます。

<選択肢>

ア=ロック(c)【正】

「自然状態はそれを支配する自然法をもち」「何人も他人の生命、健康、自由、あるいは所有物を侵害すべきではない」という内容は、自然状態にも理性による自然法が働き、生命・自由・財産が守られると考えたロック『統治二論』の一節です。自然状態を無秩序な闘争とみるホッブズとは正反対の把握です。

イ=ホッブズ(b)【正】

「かれらすべてを威圧しておく共通の権力なしに、生活しているときには」「自身のつよさと自分自身の工夫とが与えるもののほかには、なんの保証もなしに生きている」という内容は、共通の権力を欠いた自然状態の危うさを説くホッブズ『リヴァイアサン』の一節です。

ウ=グロティウス(a)【正】

「戦の最中には、法は沈黙するかもしれないが」「自然が定め、または万民の合意が定立したところのものは依然効力を有する」「人民の間には、戦争を行うについて……有効なる共通法が存在する」という内容は、戦時にも通用する法の存在を論じたグロティウス『戦争と平和の法』の一節です。「国際法の父」と呼ばれる所以で、設問冒頭の「主権国家より上位に立つものがない国際社会」という文脈ともつながります。

正解【⑥】

アがロック、イがホッブズ、ウがグロティウスの組合せなので⑥が正解です。

問2:正解 ⑤(解答番号26/配点4)

<問題要旨>

アジアの経済情勢を扱った下線部について、2020年時点でアジアで人口が多い上位3か国(インド、インドネシア、中国)の年齢別・性別人口構成の図が示されます。出生率と死亡率の変化の傾向に影響を与える要因が生じないと仮定して2050年を予測したとき、3か国のうち15歳から64歳までの生産年齢人口が総人口に占める割合が2020年より最も落ち込む国(空欄ア)と、そうした状態を指す語(空欄イ)の組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

人口ピラミッドは、今の各年齢層が30年後には30歳分そのまま上へ移動すると考えて読みます。30年後に65歳以上になるのは現在35歳以上の層、30年後に生産年齢を支えるのは現在の若年層です。したがって「中高年層が厚く、若年層が細い」国ほど、2050年に生産年齢人口の割合が大きく落ち込みます。語句のほうは、生産年齢人口の割合が上がる局面と下がる局面の呼び分けを確認します。

<選択肢>

ア=中国【正】

中国の図は0〜4歳や20〜24歳の層が細い一方、30〜34歳と50〜54歳のあたりが最も厚いつぼ型に近い形です。この厚い層が2050年には65歳以上へ抜け、細い若年層が生産年齢人口に入ってくるため、15〜64歳が総人口に占める割合の落ち込みが3か国で最大になります。インドとインドネシアはいずれも若年層ほど厚い裾の広い形で、当面は生産年齢人口の割合が高く保たれます。

イ=人口オーナス【正】

総人口に占める生産年齢人口の割合が低下し、働き手が支える扶養負担が重くなって経済成長にマイナスに働く状態を人口オーナス(オーナスは「重荷」の意)といいます。逆に生産年齢人口の割合が高まり成長を後押しする局面が人口ボーナスで、両者は方向が正反対です。会話文が「経済成長にマイナスの影響を与える」と明言しているので、ボーナスは入りません。

正解【⑤】

2050年に生産年齢人口の割合が最も落ち込むのは中国で、その状態は人口オーナスと呼ばれるので⑤が正解です。

問3:正解 ③(解答番号27/配点4)

<問題要旨>

アジアの開発援助を扱った下線部の現状について、アジアのインフラ開発やODA(政府開発援助)に関連する記述として最も適当なものを一つ選ぶ設問です。一帯一路構想、アジアインフラ投資銀行、国際収支上の分類、開発協力大綱という四つの論点が並びます。

<考え方>

四つのうち三つは、範囲や条件を実際より狭める形の誤りです。「陸路のみ」「アジア諸国に限定」「国益を考慮せず」といった限定の言葉に対して反例を一つ探すと手早く落とせます。残る国際収支の分類は、無償の経常的な移転が第二次所得収支に入るという定義を確認します。

<選択肢>

①【誤】

一帯一路構想は、中央アジアを経由してヨーロッパへ向かう陸路の「シルクロード経済ベルト」と、南シナ海からインド洋を経る海路の「21世紀海上シルクロード」の二つからなります。「陸路のみ」は範囲を狭めた誤りです。

②【誤】

アジアインフラ投資銀行(AIIB)には、イギリス・ドイツ・フランスなどヨーロッパ諸国をはじめアジア域外の国も多数参加しています。「アジア諸国に限定されている」は事実に反します。

③【正】

自然災害や紛争による被災者の救援のために行われる食料や医療品の無償援助は、対価を伴わない経常的な移転なので、国際収支統計では第二次所得収支に計上されます。第一次所得収支は雇用者報酬や投資収益を計上する項目で、無償援助は含まれません。

④【誤】

開発協力大綱は、開発協力が日本の国益の確保に貢献することを明記しています。「日本の国益を考慮せずに行うことが示されている」は、文書の内容を逆に述べたものです。

正解【③】

被災者救援のための食料や医療品の無償援助が第二次所得収支に含まれると述べた③が正しい記述です。

問4:正解 ①(解答番号28/配点4)

<問題要旨>

金融のグローバル化を扱った下線部に関連して、日本・アメリカ・ユーロエリアにおける家計の金融資産構成を示した帯グラフが与えられます。日本は現金・預金が54.3%、アメリカは13.3%で株式等が37.8%、ユーロエリアは現金・預金が34.3%です。会話文の空欄ア(収益性が高い金融資産の安全性や流動性)と空欄イ(資産が減る可能性を最も低くしたい人の考え方に合う構成)の組合せを選ぶ設問です。なお資料の注がユーロエリアを19か国としているのはデータの時点(2021年3月末)によるもので、2023年1月のクロアチア加入以降は20か国です。

<考え方>

金融資産の三つの性質、収益性・安全性・流動性はトレードオフの関係にあり、収益性が高いものほど安全性や流動性は低くなる、という原則が空欄アの答えを決めます。空欄イは、「資産が減る可能性を最も低くしたい」という発言を、元本割れのリスクが小さい金融資産=現金・預金の比率が最も高い構成と読み替えれば、帯グラフの数値だけで決まります。

<選択肢>

ア=低い【正】

株式のように高い収益が期待できる資産は価格変動によって元本を割る危険があり、安全性が低くなります。また売却して現金化するまでに時間や価格の不利を伴うため流動性も預金より劣ります。収益性・安全性・流動性のすべてを同時に満たす金融資産はない、というのがこの原則の趣旨です。「高い」とすると三つの性質が同時に成り立つことになり、成立しません。

イ=日本【正】

資料で現金・預金の比率は日本54.3%、ユーロエリア34.3%、アメリカ13.3%です。元本割れの可能性が最も小さい現金・預金の比率が突出して高い日本の構成が、「資産が減る可能性を最も低くしたいからリターンが低くてもいい」というYの考え方に合います。アメリカは株式等が37.8%と最も高く、リスクをとって資産の増加をねらうXの考え方に近い構成です。

正解【①】

収益性の高い資産は安全性や流動性が低く、元本割れを避けたい立場に合うのは現金・預金の比率が最も高い日本の構成なので①が正解です。

問5:正解 ⑦(解答番号29/配点4)

<問題要旨>

宇宙開発を扱った下線部に関心をもった生徒Zが、宇宙条約(宇宙空間平和利用条約)の第1条・第2条・第4条・第6条・第7条を抜粋した資料を示します。この資料に基づいて判断したとき、当事国であるJ国の行為で宇宙条約違反となる事例として正しい記述ア〜ウをすべて選び、その組合せを答える設問です。

<考え方>

条文適用型の設問なので、各記述がどの条文に当たるかを一本ずつ対応させます。第2条は国家による取得の禁止、第4条は核兵器等の大量破壊兵器の軌道投入・天体設置・宇宙空間配置の禁止、第6条は非政府団体の活動についても当事国が国際的責任を負うこと、第7条は自国の領域から発射された物体が他の当事国に与えた損害についての国際的責任です。とくに第6条と第7条は、民間企業の行為であっても国が責任を免れないことを定めている点が要点です。

<選択肢>

ア【正】

核兵器を搭載した人工衛星を地球を回る軌道に乗せる行為は、第4条が禁じる「核兵器および他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せ」る行為そのものにあたります。

イ【正】

月面上のある場所の周辺を自国の領土であると主張して占拠する行為は、第2条の「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用もしくは占拠またはその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない」に反します。自国の宇宙船が先に着陸したことは、領有の根拠になりません。

ウ【正】

第6条は、宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によるか非政府団体によるかを問わず当事国が国際的責任を有すると定めています。また第7条は、自国の領域から発射された物体が他の当事国に与える損害について国際的に責任を有すると定めています。原因が企業Kにあったとしても、J国は国際的責任を免れません。民間企業の行為だから国の責任ではない、という切り分けは条約が明文で否定しています。

正解【⑦】

ア・イ・ウのいずれも第4条・第2条・第6条および第7条に違反するので⑦が正解です。

問6:正解 ⑤(解答番号30/配点4)

<問題要旨>

科学技術とエネルギー問題を扱った下線部について、その利用とリスクをめぐる生徒Xと生徒Yの会話文が示されます。空欄ア(発電時の排熱を暖房や給湯に利用して熱効率を高める技術)にはaかbの語句、空欄イ(日本におけるプライバシーの権利)にはcかdの記述、空欄ウ(先端技術が他国の軍事などに利用されることへの日本の対応)にはeかfの記述が入り、その組合せを選ぶ設問です。

<考え方>

三つの空欄はそれぞれ別分野なので、一つずつ確定させます。アはエネルギー関連用語の定義、イは新しい人権の発展の経緯と憲法の条文にその語があるかどうか、ウは技術の流出を「防ぐ」方向か「広げる」方向かという向きで決まります。会話文が「自国の民間の技術が他国の軍事などに利用されることもある」と問題提起しているので、ウは流出を防ぐ方向の記述が入るとわかります。

<選択肢>

ア=コージェネレーション【正】

コージェネレーション(熱電併給)は、発電の際に生じる排熱を暖房や給湯に利用して全体の熱効率を高める仕組みです。「スマートグリッド」は情報通信技術を使って電力の需給を最適に調整する次世代送電網のことで、排熱の利用を指す語ではありません。

イ=c(自らについての情報が勝手に利用されないように、それをコントロールする権利でもあるととらえられている)【正】

日本のプライバシーの権利は、当初は「私生活をみだりに公開されない自由」という消極的な権利として主張され、情報化の進展にともなって自己に関する情報を自らコントロールする権利(自己情報コントロール権)へと発展してきました。dは「憲法制定時から重要だと認識されていたので、憲法第13条は私生活をみだりに公開されない自由を明文で保障している」としていますが、憲法にプライバシーの語はなく、第13条の幸福追求権を根拠として判例・学説が認めてきた「新しい人権」です。明文で保障されているとする点が誤りです。

ウ=e(経済安全保障推進法に基づいて、半導体など特定の重要な先端技術の流出を防止するための制度作りが行われている)【正】

2022年に制定された経済安全保障推進法は、重要物資の安定的な供給確保、基幹インフラの安全性確保、先端的な重要技術の開発支援、特許出願の非公開の四つを柱としており、先端技術の流出防止に向けた制度整備が進められています。fは1980年代の日米貿易摩擦を持ち出して「半導体を制限なく輸出できるようにするための政策」としていますが、これは流出を防ぐのとは正反対の向きで、会話文の問題意識にも合いません。

正解【⑤】

ア「コージェネレーション」・イ「c」・ウ「e」の組合せなので⑤が正解です。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

スポンサーリンク
投稿を友達にもシェアしよう!
  • URLをコピーしました!
スポンサーリンク
目次