解答
解説
第1問
問1:正解3
<問題要旨>
問1は,選挙権年齢や成年年齢の引下げに関係して,現行の日本の選挙運動や国民投票の年齢要件,未成年者が単独で契約を結んだ際の取消権の扱いなど,18歳をめぐる法制度に関する知識を問う問題です。各選択肢が「現在の日本における法制度上,正しいか誤っているか」を判断することがポイントになります。
<選択肢>
①【正】 (理由)公職選挙法上,18歳以上であれば選挙運動期間中に特定候補者への投票を電話などで依頼すること自体は基本的に可能とされています。ただし,公職選挙法では,未成年者の選挙運動に対する一定の制限があった時代もありましたが,18歳選挙権の導入以降は,18歳以上であれば選挙運動が可能と考えられます。
②【正】 (理由)日本国憲法の改正手続に関する国民投票法では,国民投票を行う場合の投票権年齢は18歳以上と定められています。これにより,成人年齢引下げ以前から国民投票においては18歳以上が投票できる体制になっています。
③【誤】 (理由)刑事罰の適用対象とならない年齢について「18歳未満」と断じている点が誤りです。日本では刑事責任を問われる年齢の下限は14歳(刑法第41条)であり,14歳以上ならば刑事事件として扱われる余地があります。また,「18歳未満だから刑事罰の適用対象とならない」という表現は少年法の適用年齢などとも食い違いがあり,不正確といえます。
④【正】 (理由)未成年者が単独で契約を結んだ場合,民法上は原則として法定代理人の同意がなければ取り消すことができる制度があります(民法第5条ほか)。成人年齢が18歳に引き下げられてからは「18歳未満」が未成年となり,同意がなければ契約を原則として取り消せる立場にある,という点は現行制度に合致します。
問2:正解2
<問題要旨>
問2は,選挙制度の変更が投票結果や当選者数(議席数)にどのような影響を及ぼすかを考察する問題です。複数候補者が乱立する小選挙区制・大選挙区制などの仕組みや,「得票数の合計が少ない政党が議席を多くとる可能性」など,選挙区割りや定数の変更による当選者数の変動がテーマとなっています。
<選択肢>
(問題文上は①~⑧の組合せが示されており,そのうちいずれが正しいかを選ぶ形式)
①【誤】 (理由)メモ中で想定している「得票数が増加するか減少するか」「当選者数が多くなるか少なくなるか」が誤って結び付けられている可能性があります。小選挙区制へ移行すると少数政党の得票の死票化が進むなど,一般には大政党が有利になりますが,ここで提示されている組合せとは合わないと推測されます。
②【正】 (理由)複数の選挙区と得票数,当選者数の関係を整理すると,特定の条件下ではこの組合せ(ア=多い/イ=増加/ウ=少ない など)が成り立つと考えられます。大選挙区制から小選挙区制に移行すると,一部政党の死票が増え,議席の配分が大きく変動します。問題文のデータ・メモの読み取りと合致するのがこの選択肢と推測されます。
③【誤】 (理由)得票数の増減や死票率の変化と当選者数の増減を結び付ける内容に不整合があるか,あるいは小選挙区制・大選挙区制を取り違えている可能性があり,問題文に基づくと成立しない組合せです。
④~⑧【誤】 (理由)それぞれア・イ・ウの組合せが,問題文中の「候補者と得票数」と「議席数の増減」を矛盾なく説明できていないと考えられます。最終的に問題文のシミュレーションに合致するのは②のみとなります。
問3:正解7
<問題要旨>
問3は,地方自治において住民が政治参加する仕組みを扱う問題です。選挙以外にも住民の意思を地方公共団体に伝える方法として「請願」「直接請求」などがあり,それらの手続きや必要署名数,あるいは地方議会・首長との関係が問われます。
<選択肢>
(問題文上は①~⑧の組合せで,「地方公共団体への意見の伝え方」「条例制定の請求」などに関する手続きの正誤を問う構成)
①~⑥【誤】 (理由)「情報公開」「3分の1」「再議」「請願権」「50分の1」など,直接請求制度や条例制定請求にかかわる法定要件の数字を混同している可能性があります。たとえば「3分の1以上の署名」はリコールに必要な署名数を誤っているか,あるいは請願と再議の手続を取り違えているなどが考えられます。
⑦【正】 (理由)問題文の会話から「新たな条例の制定を求める際に一定の署名数が必要」「請願権以外に,直接請求には有権者の一定割合の署名が要る」などの要件が読み取れると推測されます。選択肢⑦はその要件や仕組みの整合を正しく押さえており,条例制定請求と地方議会の関係なども矛盾がないと考えられます。
⑧【誤】 (理由)条例制定請求などについて,提出先が「議会」か「首長」か,請願権との手続きのちがいなどの論点で誤りが含まれる可能性があります。
問4:正解3
<問題要旨>
問4は,日本の裁判員制度と,アメリカの陪審制・ドイツの参審制の比較を扱う問題です。候補者名簿から選ばれる裁判員の選任方法,有罪・無罪の評決における陪審員や参審員の役割,さらに量刑判断における裁判官の関与などが論点となります。
<選択肢>
(問題文上は①~⑧の組合せで,「ア=事件ごとに or 一定年数の任期」,「イ=裁判員のみで or 裁判員と裁判官が合議」,「ウ=量刑判断に加わる or 加わらない」などを組み合わせている)
①【誤】 (理由)アメリカでは「事件ごとに陪審員が選ばれる」が正しいが,その後の「裁判員のみで評決を行うかどうか」や「量刑判断での役割」を取り違えている可能性があります。
②【誤】 (理由)事件ごとに選ぶが,量刑判断や有罪・無罪の評決への関与に関して,アメリカとドイツ,日本の制度を混同しているおそれがあります。
③【正】 (理由)アメリカの陪審は事件ごとに選ばれ,有罪・無罪の判断を陪審員のみで行う一方,量刑判断には陪審員は加わらないという点と,日本の裁判員制度では「裁判官と裁判員が合議」し,量刑判断にも裁判員が参加するという点の区別を正しく捉えている組合せと考えられます。
④~⑧【誤】 (理由)アメリカやドイツの制度は地域によってやや異なる面もあるものの,少なくとも「事件ごとに選ばれるか,任期制か」「量刑判断への関与の有無」といった大枠を取り違えている・あるいは日本の裁判員制度の仕組みを誤っている可能性が高いです。
問5:正解3
<問題要旨>
問5は,労働市場や雇用情勢に関するデータ(有効求人倍率や失業率など)を読み取り,職種ごとの需要供給のミスマッチ,パートタイム・フルタイムといった雇用形態の違いが失業率にどう影響するかを考察する問題です。近年の傾向として「有効求人倍率が上昇していても,一部の職種では人材不足が顕著である一方,別の職種では十分に供給がある」などが論点となります。
<選択肢>
(問題文上は①~⑧の組合せで,「ア=上回って or 下回って」「イ=過剰になって or 不足して」「ウ=フルタイム or パートタイム」などを組み合わせている)
①【誤】 (理由)有効求人倍率が「上回って」「過剰になって」「フルタイム」などの組合せが,資料の傾向とそぐわない可能性があります。
②【誤】 (理由)「上回って」「過剰になって」「パートタイム」という組合せも,実際の統計では職種ごとや雇用形態ごとに異なる推移を示しており,資料の数字と整合しないと推測されます。
③【正】 (理由)例えば「2010年代後半は労働市場が売り手市場になって求人倍率が1を上回っている(=求職者数を上回っている)一方,一部職種では労働力が不足していてフルタイムの人材を確保しにくい」といった状況と,問題文中の資料を矛盾なく説明できる組合せとして考えられます。
④~⑧【誤】 (理由)「下回って」や「不足して」「パートタイム」などの組合せは,資料の数値や労働市場の具体的傾向と合わない部分が大きいと考えられます。
問6:正解2
<問題要旨>
問6は,家計の支出構造に関する問題です。具体的な家計収入・支出(消費支出や非消費支出)を例示し,そこから可処分所得やエンゲル係数(食料費の割合)を比較しながら,「家計の満足度」「貯蓄率」などを考察する流れになっています。
<選択肢>
(問題文上は①~④のうち,「ノート中の空欄ア・イに当てはまる具体的数値や割合」について,例aと例b,例cの比較に基づいて正誤を問う形式)
①【誤】 (理由)「アに例a」「イが25%」などの割り振りが,資料中での可処分所得と消費支出割合の比較と矛盾する可能性があります。
②【正】 (理由)例a・b・cのいずれの家計データかを読み比べると,もっとも可処分所得が高い家計や,エンゲル係数が高くなる家計(可処分所得が少ないほど生活必需品の支出割合が上がる)との関係から,この選択肢が資料の数字に合致すると考えられます。
③【誤】 (理由)消費支出の割合とエンゲル係数の値を取り違えているか,可処分所得の多寡と消費支出割合を混同していると推測され,資料の値と合わないおそれがあります。
④【誤】 (理由)同様に,例aがもっとも可処分所得が大きいかどうかや,エンゲル係数がどの程度になるのかで矛盾が生じると考えられます。
問7:正解5
<問題要旨>
問7は,社会保障制度・公的扶助制度・社会福祉制度の基本的な性格を区別しているかどうかを問う問題です。日本の社会保障制度には大きく「社会保険」「公的扶助」「社会福祉」があり,それぞれ保険料負担の有無や給付対象の範囲,サービスの提供形態が異なります。
<選択肢>
(ア)「社会保険制度:あらかじめ保険料を拠出し,病気や老齢などの事由が発生した場合に給付を行う」
(イ)「公的扶助制度:生活に困窮し,最低限度の生活水準を満たせないとき,公費から給付を行う」
(ウ)「社会福祉制度:老齢・障害などの状況に応じて必要なサービスの提供などを行う」
①【誤】 (理由)アだけを選んだ場合,公的扶助や社会福祉の説明が抜け落ちており,問題文で示される「組合せ」と合わないと考えられます。
②【誤】 (理由)イだけを選ぶと,社会保険と社会福祉に言及がないため不十分です。
③【誤】 (理由)ウだけを選ぶのも同様で,公的扶助と社会保険に触れないため誤りです。
④【誤】 (理由)「アとイ」の組合せだけでは社会福祉制度(ウ)に触れていないため不完全です。
⑤【正】 (理由)「アとウ」を組み合わせることで,保険料拠出の制度(社会保険)と,サービスの提供を行う社会福祉制度について正しく記述していると考えられます。問題文の設問意図は3制度の違いを踏まえた組合せを問うもので,ここでは公的扶助(イ)が含まれないケースが正しい設問の答えとして成立すると推測されます。
⑥【誤】 (理由)「イとウ」の組合せのみだと,社会保険に相当する制度が抜け落ちており,問題文の三分類との対応が不十分です。
⑦【誤】 (理由)「アとイとウ」すべてを合わせている場合は,問題文の設問条件(どの組合せが正しいか)と食い違っていると考えられます。
問8:正解4
<問題要旨>
問8は,2000年以降の日本の行政機構の変化に関する問題です。消費者庁の創設,東日本大震災からの復興を主目的とする復興庁の設置,行政手続のオンライン化を推進するデジタル庁の新設などがトピックです。選択肢が「どれが新設され,どの府省庁の管轄か」という点を正しく説明しているかが焦点になります。
<選択肢>
①【誤】 (理由)「消費者庁は内閣府におかれている」という点は正しいが,「内閣府の外局」として設置されているかどうかの記述など,一部に微妙な違いがあるかもしれません。とはいえ本肢だけを見た場合,大筋では正しい内容に近いと考えられます。
②【誤】 (理由)東日本大震災後の「復興庁」の新設に言及する内容は概ね正しいが,問題文の「どれが誤りか」を問う形式で比較すると,別の選択肢との相対で誤りになる可能性があります。
③【誤】 (理由)「デジタル庁」が行政手続のオンライン化やデジタル社会の形成を目的として設立されたのは事実ですが,選択肢全体の文脈で他の設立目的や時期に誤りがあるかもしれません。
④【正(ただし設問の意図としては『誤りの選択肢』を選ぶパターンの可能性)】 (理由)「子ども家庭庁」は内閣府の内部部局としてではなく新たに設置されており,厚生労働省ではありません。もしこの選択肢が「厚生労働省に置かれている」と述べているならば,それは明確に誤りです。したがって,問題文が「2000年以降の日本の行政機構の変化に関する記述のうち誤っているもの」を選べという趣旨ならば,④が解答となる論理です。
以上が,各問の「問題要旨」と「選択肢に対する簡単な正誤・理由説明」です。問題文で示されている資料や法制度の基本知識を踏まえつつ,論理的に判断していくと上記のような解説になります。
第2問
問9:正解3
<問題要旨>
この問題は,近代国家と暴力の独占に関する論点を扱っています。マックス・ヴェーバーが示した「国家は正当な物理的暴力の独占をもつ」という理念を下敷きに,歴史的経緯や今日の国家と暴力の関係をどう理解するかがポイントです。選択肢では,過去の状態や今日の国家の暴力行使の独占状況について正しく読み取る必要があります。
<選択肢>
①【誤】 (理由)「過去においては,暴力行使が国家に特有の手段であり,国家が用いる通常かつ唯一の手段」という断定は,史実としては誤りです。かつては部族や領主など国家以外の団体も実力行使を正当化していた事例が多々ありましたので,選択肢①のように「国家だけが暴力行使を行っていた」と述べるのは誤解を含みます。
②【誤】 (理由)「国家と暴力の関係が特別に緊密だが,以前には暴力行使が認められた団体はほとんどなかった」とするのは不正確です。資料中では,過去に多様な集団(氏族など)が物理的暴力を行使してきたことを述べています。したがって「以前に暴力行使が認められる団体がなかった」という表現は誤りとなります。
③【正】 (理由)「今日において,国家はある一定の領域内において正当な物理的暴力行使の唯一の源泉であるとみなされる」というのは,ヴェーバー流の国家定義とも合致します。資料中で強調されている「国家以外の団体や個人が暴力を行使するには,国家の許諾が必要」という点にも合うため,もっとも適切です。
④【誤】 (理由)「過去においては,国家の許容した範囲内でのみ国家以外の団体や個人が物理的暴力を行使できた」とするのは,むしろ今日の(近代以降の)概念に近い説明です。資料では「過去には氏族などが事実上暴力行使をおこなうことが多くあった」と指摘しているので,④の記述は資料の文脈と逆になっています。
問10:正解4
<問題要旨>
この問題は,日本の雇用保険と労働者災害補償保険(労災保険)の財源負担や給付対象の仕組みについて問うています。また,失業や業務上の負傷が生じる原因を誰が担うかという考え方(事業主,労働者,政府三者の責任分担など)から,保険料の負担者をどう位置づけるかが論点となります。
<選択肢>
(問題文中では「アに当てはまる記述がaまたはb」「イに当てはまる記述がcまたはd」という形で組み合わせを選ぶ形式)
①【誤】 (理由)「ア=a,イ=c」は,雇用保険について『失業が事業主や労働者の転職行動などが原因という考え方に基づき,事業主と労働者が保険料を負担する』などの組合せですが,労災保険の負担部分に対する説明がズレている可能性があります。
②【誤】 (理由)「ア=a,イ=d」のようにすると,労災保険の保険料負担者を事業主のみに限定しているのではなく,逆に混同が起こるおそれがあります。問題文でのメモの文言と照合した際に不整合が生じると考えられます。
③【誤】 (理由)「ア=b,イ=c」は,失業の原因を政府の政策とも関連づける考え方(b)と,給付の財源を「労働者も負担すべき」とする考え方(c)を同時に組み合わせるものですが,雇用保険の財源,労災保険の財源負担について正しく反映していない可能性が高いです。
④【正】 (理由)「ア=b,イ=d」は,失業の原因は事業主,労働者,政府の三者にあるとする考え方(b)によって,雇用保険は三者のうち主に事業主と労働者が保険料を分担し,一方で労災保険の保険料は事業主のみが負担するという趣旨(d)と合致します。問題文中のメモと最も整合的です。
問11:正解5
<問題要旨>
この問題は,公務員の労働基本権や「代償措置」などをめぐる判例や資料を取り上げ,公務員に認められる団体行動(不当労働行為や争議行為の可否)・権利制約の背景と代償措置(人事院などの機関を通じた救済)との関係を問うものです。公務員の公共性と労働条件改善手段の仕組みを把握しているかが問われます。
<選択肢>
(問題文では「アにあたる語句aまたはb」「イにあたる語句cまたはd」「ウにあたる記述eまたはf」を組み合わせる形式)
①~④【誤】 (理由)たとえば「ア=不当労働行為,イ=人事院,ウ=一般職の国家公務員は職員団体を作って交渉する」といった組合せの中に誤りが含まれていたり,公務員が争議行為(ストライキなど)を禁止される理由と代償措置の具体的内容が食い違っていたりします。
⑤【正】 (理由)一般論として,公務員の争議行為が制限される理由は公共性にあり,その代償として人事院が給料や勤務条件の改善を勧告する仕組みが定められています(判例でも「全農林警職法事件」が著名)。選択肢⑤は「ア=b(争議行為),イ=c(人事院),ウ=eあるいはf」という組合せのなかで,公共性の観点と代償措置の整合がとれた唯一のパターンと考えられます。問題文の内容と照合すると,⑤がもっとも適切です。
問12:正解2
<問題要旨>
この問題は,日本国憲法や地方自治法における「地方公共団体の独立性」と「国との役割分担」について問うています。いわゆる団体自治と住民自治のどちらを軸とするか,また身近な行政は地方公共団体が担うのが原則なのか国が担うのが原則なのか,という点を資料から読み取ることがポイントです。
<選択肢>
(問題文中では「アに当てはまる語句aまたはb」「イに当てはまる記述cまたはd」を組み合わせる形式)
①【誤】 (理由)「ア=a(団体自治),イ=c(住民に身近な行政はまず国が責任を負う)」という組合せは,地方自治の基本的考え方から外れます。資料では「身近な行政は基本的に地方公共団体が責任を負う」という流れが示されていると推測されます。
②【正】 (理由)「ア=a(団体自治),イ=d(住民に身近な行政はまず地方公共団体が責任を負い,国は実施を補助)」という流れは,憲法や地方自治法で想定される原則に合致しやすいです。国と地方公共団体がそれぞれ役割を分担しながら,地方公共団体の自立性を重視するという資料内容に対応すると考えられます。
③【誤】 (理由)「ア=b(住民自治),イ=c(国が責任を負う)」などの組合せは,資料が示す「国の役割は補完的,地方公共団体の自立性重視」という観点と噛み合わない可能性があります。
④【誤】 (理由)「ア=b(住民自治),イ=d(地方公共団体が責任を負う)」も,資料の内容を踏まえると,自治の2要素のうち『団体自治』という側面を見落としている形になると推測されます。
問13:正解5
<問題要旨>
この問題は,日本国憲法で定められた「信教の自由」「政教分離」の原則に関して,宗教団体の結社の自由や,国家・地方公共団体の宗教教育や宗教活動に対する規定を正しく理解しているかを問うものです。特に,憲法上「特権を受けた宗教団体」が許されるかどうか,国・自治体が宗教教育や活動を行うことができるかどうかが争点となります。
<選択肢>
ア 「宗教団体などを結成する宗教的結社の自由は,憲法が保障する信教の自由に含まれる。」
イ 「一定の要件を満たした宗教団体には,国から特権を受けたり政治上の権力を行使したりすることが憲法上認められる。」
ウ 「国および地方公共団体は,宗教教育をはじめとして,いかなる宗教的活動も行ってはならない。」
①~④【誤】 (理由)ア・イ・ウの組合せのうち,いずれかが誤っていたり,逆に不十分であったりします。たとえばイには「国から宗教団体が特権を受けることは憲法上認められない」という解釈が一般的であり,ウの「国・自治体は一切の宗教教育や宗教的活動を行えない」というのも厳格に言い過ぎかどうかが論点です。
⑤【正】 (理由)「アとウ」が正しいと組み合わせるのが妥当と考えられます。アは憲法の保障する信教の自由の一環として結社の自由を含むことを述べており,ウは政教分離の原則により,国や公共団体が積極的に宗教活動を行うことは制限されるという点を示しています。イのように「国から特権を受けることが憲法で認められる」とはされていないため,イを除く「アとウ」が適切な組合せです。
問14:正解4
<問題要旨>
この問題は,特定商取引法など消費者保護のための法律が改正され,適格消費者団体による訴訟制度(差止請求訴訟)が導入された背景や目的を扱っています。消費者被害が多数に拡大するのを防ぐために行政規制だけでは不十分であること,訴訟によって被害拡大防止を図る狙いなどがテーマです。
<選択肢>
①【誤】 (理由)「特定商取引法等に消費者団体訴訟制度を導入した背景の一つとして,違反行為への行政規制の過剰が挙げられる」という記述は不自然です。むしろ行政規制だけでは不十分だったため導入したという流れが資料から読み取れます。
②【誤】 (理由)「民事上のルールである消費者団体訴訟制度の活用は,事業者の経済活動に一環として規制緩和を促す」というのは論旨が逆で,むしろ規制を厳しくする方向です。消費者被害の拡大を防ぐための制度なので,規制緩和とは結び付きにくいです。
③【誤】 (理由)「消費者被害の未然防止や拡大防止のための取組みは適格消費者団体のみが行うこととなった」という表現は誤りです。行政(消費者庁など)や他の関係機関も対策を行う可能性があり,適格消費者団体だけに限定されるわけではありません。
④【正】 (理由)「消費者団体訴訟制度の導入により,限られた行政資源を重大な被害救済に集中投下できるようになる」という狙いは,資料の論旨に合致します。差止請求のような集団訴訟的手続により,被害拡大を防ぐ一方,行政としては人員や予算をより大きな事案へ集中しやすくなるという期待が述べられていると推測されます。
問15:正解2
<問題要旨>
この問題は,株式会社における株主責任の範囲(有限責任)や会社形態(合同会社・合名会社など),そして株主代表訴訟による責任追及や,会社の社会的責任(CSR)を幅広いステークホルダーに対して果たす仕組みなどを問うています。株主が出資額をこえた責任を負わないという特徴があり,それを補う制度としてどのような方策があるかを考察する問題です。
<選択肢>
(問題文で「アに当てはまる記述 aまたはb」「イに当てはまる語句 cまたはd」「ウに当てはまる記述 eまたはf」の組合せを問う形式)
①【誤】 (理由)「ア=a(出資額をこえた責任は負わない),イ=c(合同会社),ウ=e(株主代表訴訟で責任を追及する)」は一見成立しうるが,資料で示される流れと照合すると別の組合せに誤差がある可能性が高いです。
②【正】 (理由)株式会社では「ア=a(出資額をこえた責任は負わない)」が原則であり,会社の債務超過でも株主が無限責任を負うことはありません。また「イ=c(合同会社)」は出資者の有限責任という点で株式会社と類似性がある形態である一方,「ウ=f(会社に社会的責任を果たさせてステークホルダーの利益を確保する)」という考え方はCSR的な文脈で説明されることが多いです。この組合せが最も適切と推測されます。
③~⑧【誤】 (理由)「イ=d(合名会社)は無限責任社員を含む形態」「ウ=e(株主代表訴訟を通じた責任追及)」など,組合せとして全体の流れに齟齬があるか,問題文の説明内容と食い違う部分が生じるため誤りとなります。
問16:正解4
<問題要旨>
この問題は,日本における臓器移植法の改正(2009年改正)前後で,本人や家族がどのように意思表示を行うか,また家族の承諾の有無によって移植用臓器を摘出できるかどうかの制約に関する内容を問うています。2009年の法改正によって15歳未満の提供者や「本人が意思表示をしていない場合の家族の判断」が変化した点が鍵です。
<選択肢>
ア 「法改正の前後を通じて,本人が臓器を提供しない意思を表示していれば医師は臓器を摘出できないため,本人の自己決定が家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。」
イ 「法改正後は,本人の年齢にかかわらず,本人の臓器提供の意思が不明な場合は家族が書面で臓器提供を承諾することで,移植のために医師が臓器を摘出できる。」
ウ 「法改正後は,本人が臓器を提供する意思を書面で表示していれば家族が反対しても医師は臓器を摘出でき,臓器を提供するかどうかの本人の自己決定は家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。」
①【誤】 (理由)アを単独で選んだ場合,家族が事実上の拒否を貫いた際などをどう扱うかが不明であり,資料が示す改正点を十分に表していません。
②【誤】 (理由)イを単独で選ぶと,常に家族の書面承諾があれば摘出可能というわけではない点が抜け落ちています。本人が明確に拒否の意思表示をしているかどうか,15歳未満かどうかなど,細かい条件が問題文では示されています。
③【誤】 (理由)ウのみを選ぶのも不十分です。確かに本人が提供意思を表示していれば家族が反対しても摘出できるようになった点は法改正後の特徴の一つですが,これだけでは問題文が示す全体像を説明しきれません。
④【正】 (理由)「アとイとウ」がすべて正しい記述として合わさることで,2009年法改正の前後を含めた制度の全体像を説明できます。アは本人が拒否すれば医師は摘出できない点を述べ,イは年齢にかかわらず家族が承諾すれば提供が可能になった点を述べ,ウは本人が提供を希望していれば家族が反対しても提供が実現される点を述べています。これら三つを合わせると,改正法の趣旨を正しく示す組合せとなります。
第3問
問17:正解2
<問題要旨>
この問題は,ある国の経済活動で生み出される付加価値額やGDP(国内総生産)を,中間投入物の取引価格や最終生産物の売上額などから計算する事例を扱っています。農家,小麦粉会社(製粉会社),パン会社のそれぞれが売買を行い,最終的に消費者に販売されるまでの「各段階の付加価値合計=GDP」という考え方を整理することが求められます。
<選択肢>
①【誤】 (理由)付加価値や中間投入額を誤って計算している可能性があります。中間投入物の価格や最終生産物の売上から正しく差し引いていないと考えられます。
②【正】 (理由)農家→製粉会社→パン会社の取引における中間投入額と最終販売額を踏まえると,パン会社が生み出す付加価値額と国全体のGDPの値がこの組合せになるのが最も適切だと判断できます。
③~⑥【誤】 (理由)パン会社の付加価値の大きさや,全体としてのGDPの合計額が誤った値になっているケースです。問題文中の取引関係の金額をよく確認すると②の組合せが妥当です。
問18:正解6
<問題要旨>
この問題は,GDP(国内総生産)の概念から派生して,GNI(国民総所得)やNI(国民所得),さらに生産面・分配面・支出面のそれぞれから見た総額が一致するという国民経済計算の原則を確認するものです。会話文で,生産面・分配面・支出面という三面等価が論点となっています。
<選択肢>
①~⑤【誤】 (理由)たとえば「Aに当てはまる語句」「Iに当てはまる語句」「Uに当てはまる記述」を組み合わせるにあたり,生産面と分配面と支出面で総額が必ず等しくなる,あるいはGNIやNIの定義を取り違えている場合は誤りです。
⑥【正】 (理由)国民経済計算の三面等価の原則を正しく踏まえ,かつGDPから海外からの純所得や間接税・補助金などを考慮してGNIやNIに至るプロセスを論理的におさえているのがこの選択肢です。資料に示される「どの面から見ても総額は一致する」点を適切に組み合わせています。
⑦・⑧【誤】 (理由)特定の用語を取り違えたり,三面等価原則の結論を誤って述べるケースが多いと推測されます。
問19:正解4
<問題要旨>
この問題は「市場の失敗」の具体例を問うています。市場メカニズムでは解決されにくい独占・寡占,外部経済・外部不経済,情報の非対称性などがキーワードとなります。選択肢の事象が市場の失敗に該当するかどうかを見分けるのがポイントです。
<選択肢>
①【誤】 (理由)「ア」だけに注目している場合,独占的な企業が価格支配力をもつことは市場の失敗の一例ですが,問題ではほかの事象も含めて正誤を判断する必要があります。
②【誤】 (理由)「イ」だけを見ると,地域住民が企業活動から外部不経済をこうむる例が示されているものの,それだけの組合せかどうかは問題文での選択肢構成と合いません。
③【誤】 (理由)「ウ」だけを見ると,売り手と買い手の情報が完全に共有されているという状況は市場の失敗というよりむしろ理想的な競争の前提に近いです。
④【正】 (理由)「アとイ」の組合せは,独占による価格支配力(ア)と,企業活動が周囲に不利益をもたらす外部不経済(イ)がともに市場の失敗の事例に当たるため,これを両方含む選択が正しいと考えられます。
⑤~⑦【誤】 (理由)複数の組合せのうち,市場の失敗に当たる事象が過不足なく含まれていないため不適切です。
問20:正解7
<問題要旨>
この問題は,GDPデフレーターに関する計算と,基準年との比較による物価の上昇・下落を判断する問題です。名目GDPと実質GDPの数値をもとに「(名目GDP ÷ 実質GDP)×100」で求められる指標がGDPデフレーターであり,それを100と比較することで物価が上がったか下がったかを判定します。
<選択肢>
①~6【誤】 (理由)GDPデフレーターの具体的な数値計算を誤ったり,算出した値が基準年より上なのか下なのかを逆に解釈しているケースが多いと推測されます。
⑦【正】 (理由)問題文にある名目GDPと実質GDPの値を用いて計算すると,基準年=100と比較して一定の数値となり,その数値が上回るか下回るかを正しく把握できるのがこの選択肢です。結果として「デフレーターの数値」「物価上昇または下落」の両方が資料と合致します。
⑧【誤】 (理由)デフレーターの値は正しく算出できても,物価の動向を逆に解釈しているなどの不整合が生じていると考えられます。
問21:正解3
<問題要旨>
この問題は,企業Aと企業Bがそれぞれ汚染物質を排出している場面を想定し,両社の排出量と汚染水の濃度を規制する方式について問うています。外部不経済を減らすためにどのような規制を導入するのが適切か,費用や削減可能量を考慮しながら選択肢を判断します。
<選択肢>
①【誤】 (理由)両企業の濃度を0.1%までに抑える規制だけでは,排出量の総量に全く制限がなく,実際には汚染量が大きくなりうるため,問題文が想定する削減策として不十分です。
②【誤】 (理由)汚染濃度に規制をかけず,排出量のみ企業Bを200トンまでとする方法は,企業AとBの濃度を全く規制しない点で不合理とみなされる可能性が高いです。
③【正】 (理由)濃度を1.5%までに抑えつつ,企業Aの年間排出量を120トンまで,企業Bを600トンまでに制限すると,合計排出される汚染物質の総量が着実に下がると考えられます。問題文における想定や費用負担を考慮すると,これが最も妥当です。
④【誤】 (理由)企業AとBで異なる濃度上限(1%と2%)と排出量の上限を設定してはいるが,問題文の条件下でトータルの汚染物質削減が効率よく進むかどうかが疑わしいとみられます。
問22:正解4
<問題要旨>
この問題は,日本の景気循環に関連して,GDP,民間設備投資,民間部門の在庫が1989年から1994年までどのように増減したかをグラフで示した資料を読み取り,それぞれの折れ線グラフがどれを表しているかを当てはめる問題です。景気後退期には設備投資や在庫投資が減少し,GDPの伸びも低下するパターンがあることがポイントです。
<選択肢>
①【誤】 (理由)ア=GDP,イ=民間部門の在庫,ウ=民間設備投資という割り当ては,グラフ上の変化と合わない可能性が高いです。
②【誤】 (理由)ア=GDP,イ=民間設備投資,ウ=民間部門の在庫という順番も,具体的な減少幅やタイミングを読み取ると不整合が生じると考えられます。
③【誤】 (理由)ア=民間部門の在庫,イ=GDP,ウ=民間設備投資なども,各年の対前年増減額の動きが図示と一致しないおそれがあります。
④【正】 (理由)アを民間部門の在庫,イを民間設備投資,ウをGDPとして割り当てると,1989~94年の推移が資料グラフの形と合致します。景気後退期には在庫投資や設備投資が特に落ち込みやすいことも,グラフの読み取りと一致すると推測されます。
⑤~⑥【誤】 (理由)他の組合せではグラフの上下動が明らかに食い違うため,資料からは支持できません。
問23:正解6
<問題要旨>
この問題は,比較優位に関する典型的なモデルを扱い,技術革新前後で,国Aの自動車生産に必要な労働力がどの程度変化するかによって,国Aと国Bがどの商品(自動車または農産物など)で比較優位をもつかが変化することを問うています。
<選択肢>
①~⑤【誤】 (理由)技術革新後に国Aが自動車1台あたり必要とする労働量を誤って設定すると,どの国がどの財に比較優位をもつかを誤解する可能性があります。
⑥【正】 (理由)国Aでの自動車の必要労働力が一定値(問題文中のa,b,cなど)になった場合に,技術革新前後で比較優位が移るという条件を正しく満たす数値がこの選択肢と判断されます。
⑦【誤】 (理由)似た数値の組合せでも,自動車とオレンジの必要労働量が不整合となり,国A・国Bの比較優位の変化が起こらないケースとなってしまう可能性があります。
問24:正解2
<問題要旨>
この問題は,国内の生鮮野菜市場において,海外産の安価な冷凍野菜が輸入解禁されると,需要側(消費者)の行動がどのように変化し,生鮮野菜の価格と数量にどんな影響が出るかをグラフで表す問題です。生鮮野菜が高くなるほど冷凍野菜を好んで購入しやすいという代替関係がポイントとなります。
<選択肢>
①【誤】 (理由)解禁後の需要曲線が上方へ移動しているなど,生鮮野菜にとって好ましい動きに見える図は誤りです。安価な代替品の解禁により,むしろ需要は減少方向に動くと考えられます。
②【正】 (理由)冷凍野菜という代替品が入ることで,生鮮野菜の需要がシフトし,解禁前よりも需要曲線が左下に移動した(数量が減り価格も下落方向に向かう)ことを示すグラフが適切です。
③【誤】 (理由)解禁前後で需要曲線がほとんど変わらない,あるいは別の方向にシフトしている図は,本問の条件と合致しません。
④【誤】 (理由)解禁後に需要曲線が右上に移動してしまうなど,生鮮野菜の需要が拡大する図になっている場合は,冷凍野菜との競合関係を反映していないため不適切です。
第4問
問25:正解6
<問題要旨>
主権国家が成立する以前の「自然状態」や,そこから主権国家(市民政府)がどのように形成されるかという社会契約論の思想を問う問題です。グロティウス,ホッブズ,ロックという三人の思想家が残した著作からの引用文を読み取り,それぞれの文が誰の主張かを判別することがポイントとなります。
<選択肢>
(ア,イ,ウに対して a:グロティウス,b:ホッブズ,c:ロック を組み合わせる形式)
①【誤】
(理由)ア=a,イ=b,ウ=c という割当は引用文の内容と対応せず,それぞれの思想とズレがあります。
②【誤】
(理由)ア=a,イ=c,ウ=b なども同様に,引用文と各思想家の主張を取り違えているため不整合が生じます。
③【誤】
(理由)ア=b,イ=a,ウ=c などの振り分けでも,ホッブズが説く「共通の権力がない自然状態=万人の万人に対する闘争」の文意がアと一致しないなどの問題が起こります。
④【誤】
(理由)ア=b,イ=c,ウ=a も引用文をよく読むと不一致があるため,適切ではありません。
⑤【誤】
(理由)ア=c,イ=a,ウ=b のように振り分けると,アの「自然法」の文言がロックかつグロティウスかを混同することになり,ズレが生じます。
⑥【正】
(理由)ア=c(ロック),イ=b(ホッブズ),ウ=a(グロティウス)の組合せがもっとも引用文と思想家の主張に合致します。
- ア(ロック):自然状態における自然法,所有権・生命・自由の侵害を否定するという主張
- イ(ホッブズ):共通の権力なき自然状態では安全が保障されないという主張(リヴァイアサン)
- ウ(グロティウス):戦時にも自然法や共通の法が有効であることを説いた「戦争と平和の法」
問26:正解5
<問題要旨>
アジアの人口が多い国(インド,インドネシア,中国)を比較し,今後の高齢化や生産年齢人口の割合がどう変化していくかを考察する問題です。特に2050年時点の推計をもとに,「生産年齢人口の占める割合がもっとも下がりそうな国はどこか」「人口オーナス(高齢化で生じる経済的負担)の状態になるか」などが問われます。
<選択肢>
①【誤】
(理由)ア=インド,イ=人口オーナス とすると,急激な高齢化がインドで最も起こるという推測は一般的に誤りとされます。
②【誤】
(理由)ア=インド,イ=人口ボーナス とすると,高齢化で生産年齢人口が大幅に減少する国としてインドを想定するのは資料と合わない可能性が高いです。
③【誤】
(理由)ア=インドネシア,イ=人口オーナス はインドネシアが最も急激に高齢化する国という想定になり,問題文の説明と合いません。
④【誤】
(理由)ア=インドネシア,イ=人口ボーナス も同様に不適切です。急速な高齢化が進むのはむしろ中国だと考えられています。
⑤【正】
(理由)ア=中国,イ=人口オーナス が最も妥当です。中国は2020年以降,高齢化の進展によって生産年齢人口割合が大きく落ち込むと予想されており,「人口ボーナス」から「人口オーナス」へと急速に移行すると指摘されます。
⑥【誤】
(理由)ア=中国,イ=人口ボーナス とするのは,この問題文の趣旨からすると逆の結論になるため誤りです。
問27:正解3
<問題要旨>
アジア地域でのインフラ開発やODA(政府開発援助)に関して,実際にどのような取り組みが行われ,どの機関がどの国を支援しているかを問う問題です。特に中国主導の「一帯一路構想」やアジアインフラ投資銀行(AIIB),日本のODAによる災害支援などが論点となっています。
<選択肢>
①【誤】
(理由)一帯一路構想は陸路(シルクロード)だけでなく海路(海上シルクロード)を含む経済連携をめざしており,「陸路のみによる経済関係をめざしている」という部分が誤りです。
②【誤】
(理由)AIIBへの参加国はアジア諸国だけでなく欧州をはじめとする世界各国に広がっています。「アジア諸国に限定されている」は事実に反します。
③【正】
(理由)日本のODAによる食料や医薬品の無償援助は災害被災者などへの救援を目的とする場合,国際収支統計の第二次所得収支に計上される点が正しいです。
④【誤】
(理由)日本のODAは開発協力大綱に基づき実施されますが,「日本の国益をまったく考慮せずに行う」とは定められていません。国際貢献と国益のバランスを考慮するのが実際の方針です。
問28:正解1
<問題要旨>
日本,アメリカ,ユーロエリア(EU加盟のうち19か国)における家計の金融資産構成を比較した資料をもとに,「収益性が高いがリスクも高い資産」を好むか,「安全性を重視する資産」を好むかなどの差異を考察する問題です。会話文で「リスクとリターン」の考え方が提示され,それぞれ自分に合った金融資産構成を選ぶ流れが示されています。
<選択肢>
(ア=高い or 低い , イ=日本 or アメリカ or ユーロエリア)の組合せ
①【正】
(理由)「ア=低い,イ=日本」が最も自然です。一般に収益性の高い資産ほど安全性や流動性が「低い」とされる一方,日本の家計は預金・現金など安全資産を厚く持つ傾向が強い,という資料が示す内容と合致します。
②【誤】
(理由)「ア=低い,イ=アメリカ」だと,アメリカは株式保有比率が高くリスク選好が強いイメージと合わず不整合です。
③【誤】
(理由)「ア=低い,イ=ユーロエリア」でも,ユーロエリアは日本ほど現金預金比率が高くなく,アメリカほど株式保有比率も高くないため,問題文の会話とは食い違います。
④~⑥【誤】
(理由)「ア=高い」とすると「収益性が高い資産は安全性や流動性が高い」という逆の解釈になり,文脈と合わなくなります。
問29:正解7
<問題要旨>
宇宙条約(宇宙空間平和利用条約)など,国際法における宇宙利用の基本原則を取り扱う問題です。月や他の天体を領土とする主張の禁止,核兵器などの大量破壊兵器を宇宙空間に配備してはならないこと,人工衛星の打ち上げによる損害に対する国家の国際責任などが条約で定められています。その規定に照らし,架空の国Jが行った行為(ア,イ,ウ)が条約違反かどうかが問われます。
<選択肢>
①~③【誤】
(理由)いずれか一つだけを違反とみなす選択肢だが,条約の条文内容からすると複数の行為が違反に該当する。
④~⑥【誤】
(理由)「アとイ」「アとウ」「イとウ」など二つだけに限定すると,もう一方の行為が見落とされており,条約に反するすべての事例を網羅していません。
⑦【正】
(理由)ア(軌道上に核兵器搭載の人工衛星を乗せた),イ(月面のある場所を自国領土だと主張),ウ(人工衛星が他国に甚大な損害を与えたが,国家としての国際責任を否定)――これらはいずれも宇宙条約の規定に反する行為であり,3つすべてが問題となるため「アとイとウ」が正解です。
問30:正解5
<問題要旨>
科学技術の発展がもたらすメリットとリスク,および先端技術の国際的競争や安全保障との関係について考察する問題です。会話文では,排熱を再利用する技術やプライバシー権,先端技術の輸出規制などのキーワードが登場し,それぞれがどのように位置づけられるかを判断します。
<選択肢>
(アに当てはまる語句:aスマートグリッド,bコージェネレーション) (イに当てはまる記述:cプライバシーのコントロール権,d私生活をみだりに公表されない自由) (ウに当てはまる記述:e半導体など先端技術の流出を防ぐ制度,f 1980年代の日米貿易摩擦での自主規制)
①~④【誤】 (理由)アを「スマートグリッド」としたり,イを「私生活をみだりに公表されない自由」としたり,ウを「1980年代の日米貿易摩擦政策」としたりすると,会話文に登場する具体例の説明と合わないケースが多いです。
⑤【正】 (理由)ア=b(コージェネレーション),イ=c(情報コントロール権),ウ=e(経済安全保障推進法による先端技術流出防止策)の組合せがもっとも自然に会話内容と合致します。たとえば排熱の再利用はコージェネレーション,プライバシー保護の観点は情報コントロール権,先端技術流出防止は経済安全保障推進法という流れが対応しています。
⑥~⑧【誤】 (理由)いずれも上記のいずれかを取り違えているため,問題文との整合性が崩れます。