2017年度 大学入試センター試験 本試験 現代社会 解答・解説

2017年度 大学入試センター試験 本試験「現代社会」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2017年度 大学入試センター試験 本試験「現代社会」の解答・解説です。第1問(22点)〜第6問(14点)がすべて必答で、100点満点。解答番号は 1 〜 36 の通し番号です。政治・経済・国際・青年期と、現代社会の全分野から出題されています。

設問ごとにアコーディオンを開くと、<問題要旨><考え方>と、正解の根拠および他の選択肢が誤りである理由が読めます。

第1問 森林と社会(食料と貿易・エネルギー・地方自治・行政・社会貢献活動・調査の手法・大衆社会論)

森林と人々の関わりを題材にした8問。政治・経済・青年期の各分野から幅広く問われ、配点も22点と最大です。

問1:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
食料に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
各国際交渉・国際会議で何が扱われたかを確認します。

① GATT のウルグアイ・ラウンド(1986〜94年)では農産物も協議の対象となり、日本のコメについて部分開放(ミニマム・アクセス)が決まった。誤り。
② 日本は2016年にTPP協定に署名している。誤り。
③ 日本ではコメの過剰生産に対し、1970年代から減反政策(生産調整)がとられた。誤り。
④ 1996年にローマで開かれた世界食糧サミットで、栄養不足人口の半減を目指すローマ宣言が採択された。正しい。 ←
問2:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
エネルギーや資源に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
制度の名称を取り違えていないかを確かめます。

① 第一次石油危機(1973年)は、第4次中東戦争を機にOPECが原油価格を大幅に引き上げたことが一因。正しい。
② バイオエタノールの原料はトウモロコシやサトウキビで、食用作物と競合するため食糧供給への影響が懸念される。正しい。
③ 電力会社に再生可能エネルギー由来の電力の買取りを義務づける制度は固定価格買取制度(FIT)。コージェネレーションは発電時の排熱も利用する熱電併給システムで、意味が異なる。誤り。 ←
④ 2013年施行の小型家電リサイクル法により、携帯電話やデジタルカメラなどの再資源化が進められている。正しい。
問3:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
日本の地方自治体に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
首長の地位と権限、機関委任事務の扱いを確認します。

① 地方自治体の首長は住民の直接選挙で選ばれる(首長制)。議会が指名するのは議院内閣制の首相。誤り。
② 教育委員会・選挙管理委員会などの行政委員会は執行機関に分類される。議決機関は地方議会。誤り。
③ 機関委任事務は、国の事務を知事や市町村長に委任して国の指揮監督下に置く制度で、上下・主従の関係の象徴だった。1999年の地方分権一括法で廃止され、自治事務と法定受託事務に再編された。「新設された」は誤り。
④ 首長は議会の議決に異議があるとき、これを再議に付すことができる(拒否権)。議会が出席議員の3分の2以上で再可決すれば議決は確定する。正しい。 ←
問4:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
現在の日本の行政に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
行政裁判所の有無、委任立法の増減、行政手続法の内容を確かめます。

① 日本国憲法76条2項は特別裁判所の設置を禁じており、戦前のような行政裁判所は存在しない。行政訴訟も通常の裁判所が扱う。誤り。
② 行政権の拡大の要因として指摘されるのは、委任立法の増加。誤り。
③ 憲法17条は、公務員の不法行為により損害を受けた者が国または公共団体に賠償を求めることができると定める(国家賠償請求権)。正しい。 ←
④ 行政手続法(1993年)は行政指導の手続を明確化し、その透明性を高めるための法律であって、行政指導そのものを禁止するものではない。誤り。
問5:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
日本における市民や企業による社会貢献活動に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
NPO法がいつ制定されたかを思い出します。

① 特定非営利活動促進法(NPO法)の制定は1998年。1995年の阪神・淡路大震災でのボランティア活動の広がりが契機となった。高度経済成長期(1950年代半ば〜1973年)ではない。誤り。 ←
② ボランティア休暇制度を導入する企業は実際に存在する。正しい。
③ 企業による社会貢献活動をフィランソロピー、文化・芸術支援をメセナという。正しい。
④ ゼロ・エミッションは、生産活動で出る廃棄物をゼロに近づける取組み。正しい。
問6:正解 ⑦(配点2)

<問題要旨>
課題について調べたり発表したりする際の活動内容ア〜ウと、その内容を表す名称A〜Dとの組合せとして最も適当なものを選ぶ。
ア 批判せずに自由にアイデアを出し合う/イ 団体の代表者と直接会って詳しく話を聞く/ウ 研究した結果を他の人たちの前で報告する
A インタビュー B ロールプレイ C プレゼンテーション D ブレインストーミング

<考え方>
それぞれの手法の定義をそのまま当てはめます。

ア 批判を控えて自由に多くのアイデアを出し合う集団発想法がブレインストーミング(D)。
イ 対象者に直接会って質問し、話を聞く調査法がインタビュー(A)。
ウ 調べた結果をまとめて他者の前で発表することがプレゼンテーション(C)。

(ロールプレイ(B)は、特定の立場や役割を演じることで理解を深める学習法。ここでは該当するものがない。)
問7:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
個人と社会との関わりについての主張や思想に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
用語と提唱者の対応を一つずつ確認します。

① 「自由からの逃走」を論じたのはフロム。ハーバーマスはコミュニケーション的合理性を論じた思想家。誤り。
② 「アンガジュマン(社会参加)」を唱えたのはサルトル。ニーチェは「神は死んだ」「超人」などで知られる。誤り。
③ リースマンは『孤独な群衆』で、社会的性格を伝統指向型・内部指向型・他人指向型に分け、現代の大衆社会に特徴的なものとして他人指向型を挙げた。正しい。 ←
④ 「権威主義的パーソナリティ」を定式化したのはアドルノら。ウェーバーは官僚制やプロテスタンティズムの研究で知られる。誤り。
問8:正解 ②(配点2)

<問題要旨>
本文の内容と合致する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
本文が森林との関わりをどう位置づけているかを読み取ります。

① 薪や木炭を燃料としていた時代から、電気やガスの普及によって人々と森林の関わりが変化したことは本文に述べられている。合致する。
② 本文は、間伐や下草刈りといった人の手が入らないと森林が荒れることを踏まえ、森林との関わりを保ち活用していくことを説いている。「関わりを抑制していくことが求められる」は本文の趣旨と逆。誤り。 ←
③ 間伐材や端材のエネルギー利用(木質バイオマス)は、森林を資源として活用する取組みとして述べられている。合致する。
④ 都市住民による森林ボランティアや森林での学習活動は、森林を対象とした社会的な活動として述べられている。合致する。

第2問 民主政治とその課題(外国の政治制度・政治思想・統治の原則・刑事司法・議会制民主主義)

衆愚政治とポピュリズムを導入に、諸外国の政治制度、古代からの政治思想、そして日本の司法と国会を問います。

問1:正解 ④(配点2)

<問題要旨>
外国の政治制度に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
議院内閣制と大統領制の違いを、議席と解散権の観点から整理します。

① イギリスの首相がもつのは下院(庶民院)の解散権。上院(貴族院)は選挙で選ばれないため解散はない。誤り。
② アメリカの議会に大統領の不信任決議権はない。厳格な三権分立がとられており、大統領も議会を解散できない。誤り。
③ イギリスの首相は下院議員のなかから選ばれ、議席をもつ。誤り。
④ アメリカの大統領は国民が選んだ大統領選挙人によって選ばれ、議会に議席をもたない。教書の送付や法案の拒否権はもつが、法案提出権はない。正しい。 ←
問2:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
国家や政治のあり方についての思想に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
古代ギリシアの思想家と社会契約説の論者を確認します。

① プラトンは、感覚でとらえる現実世界の背後にあるイデアを認識する哲学者が統治すべきだとする哲人政治を説いた。「可視的な現実世界の探求を愛する者」ではない。誤り。
② アリストテレスは『政治学』で国制を分類し、中産市民が多数を占める共和制(ポリテイア)を中庸を得たものとして評価した。正しい。 ←
③ ホッブズは、万人の万人に対する闘争を避けるため、人々が自然権を主権者(国家)に譲渡する契約を結ぶと論じた。「国家から獲得した」は逆。誤り。
④ ロックは、政府が信託に反した場合には人民が抵抗権(革命権)を行使して政府を変更できると論じた。誤り。
問3:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
統治の原則に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
選挙の四原則(普通・平等・直接・秘密)の定義を確認します。

① 権力者が法に拘束されない専断的な政治のあり方を「人の支配」といい、これに対するのが「法の支配」。正しい。
② 一票の価値が等しくあるべきとする考え方は平等選挙の原則。直接選挙の原則は、有権者が代表者を直接選ぶこと(間接選挙・複選制の否定)を意味する。誤り。 ←
③ 権力分立の原則の説明として正しい。モンテスキューが『法の精神』で体系化した。
④ 「国家からの自由」は自由権の説明として正しい。これに対し「国家による自由」は社会権にあたる。
問4:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
日本における刑事司法に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
憲法の刑事手続に関する条文を思い出します。

① 憲法31条は「法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定める(法定手続の保障)。正しい。 ←
② 説明されているのは一事不再理の原則(憲法39条)。無罪推定の原則は、有罪判決が確定するまでは無罪と推定されるという考え方。誤り。
③ 憲法34条・37条3項が、被疑者・被告人の弁護人依頼権を保障している。誤り。
④ 免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件など、再審で無罪となった事例が実際にある。誤り。
問5:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
日本の議会制民主主義に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
衆議院の優越がどこまで及ぶかを確認します。

① 55年体制の下では、自由民主党(保守)が一貫して議席の過半数を占め、日本社会党(革新)はおよそその半分にとどまった(いわゆる「1と2分の1政党制」)。革新優位ではない。誤り。
② 衆議院の与党が参議院で過半数を失う「ねじれ国会」は、1989年以降たびたび生じている。誤り。
③ 国政調査権は憲法62条で「両議院」に認められており、証人の出頭・証言や記録の提出を要求できる。正しい。 ←
④ 内閣不信任決議権は衆議院のみがもつ(憲法69条)。参議院ができるのは法的拘束力のない問責決議にとどまる。誤り。

第3問 企業と経済(企業の形態・株式会社・1990年代の金融・社会保障・景気動向・就職意識の調査・世界経済・葛藤)

企業と働くことをめぐる8問。問6の折れ線グラフと問8の葛藤の型が、この大問の山場です。

問1:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
企業に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
企業結合の形態と、監視にあたる機関を確認します。

① コングロマリットは異業種の企業を合併・買収して多角化した複合企業。同一業種の合併・買収はトラストにあたる。誤り。
② 日本には東証マザーズやJASDAQなど、成長途上のベンチャー企業に資金調達の場を提供する新興株式市場が存在する。正しい。 ←
③ 競争を制限する企業行動を監視するのは公正取引委員会(独占禁止法の運用)。財務省ではない。誤り。
④ 戦前の日本の財閥は、持株会社を頂点に多数の傘下企業を支配するコンツェルンの形態をとっていた。トラストではない。誤り。
問2:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
日本の株式会社制度に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
自己資本と他人資本の区別、株主総会の権限を確認します。

① 取締役は株主総会で選任されるが、株主である必要はない(所有と経営の分離)。誤り。
② 株式の発行によって集めた資金は返済義務がなく、自己資本にあたる。社債や借入金は他人資本。正しい。 ←
③ 配当は利益から支払われるもので、利益がなければ支払う必要はない。誤り。
④ 取締役の選任・解任は株主総会の決議事項。交代させることができる。誤り。
問3:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
1990年代の日本の金融機関の状況に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
当時、金融行政を担っていた官庁を確認します。

① 1990年代に金融機関の監督にあたっていたのは大蔵省。1998年に金融監督庁(2000年から金融庁)へ移された。通商産業省ではない。誤り。 ←
② バブル崩壊後、不良債権を抱えた金融機関による貸し渋り・貸し剥がしが問題となった。正しい。
③ 1998年、北海道拓殖銀行や山一証券の破綻などを受けて金融再生法が制定された。正しい。
④ 不良債権の増加により自己資本比率が低下し、BIS規制(8%)への対応が課題となった。正しい。
問4:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
日本の社会保障制度に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
年金制度の仕組みと、社会保険の構成を確認します。

① 1985年の年金制度改革で基礎年金制度が導入され、全国民共通の1階部分が設けられた。制度間の格差の緩和が目的の一つである。正しい。 ←
② 20歳以上の学生も国民年金への加入が義務づけられている(学生納付特例制度により納付を猶予できる)。誤り。
③ 生活保護など公的扶助に関する事務は、福祉事務所が担っている。誤り。
④ 日本の社会保険は、医療保険・年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の五つ。労災保険が抜けている。誤り。
問5:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
日本の景気動向や経済情勢に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
各時期を代表する言葉が、いつのものかを確かめます。

① 「狂乱物価」は1973〜74年の第1次石油危機の際の物価急騰を指す。1980年代後半はバブル経済の時期。誤り。
② バブル崩壊後の1990年代からの長期停滞は「失われた10年」(さらに続いたとして「失われた20年」)と呼ばれる。正しい。 ←
③ 実質経済成長率は、1998年、2008〜09年、2011年などにマイナスを記録している。誤り。
④ 護送船団方式は、最も体力の弱い金融機関に合わせて行政が業界全体を保護・指導する方式で、競争はむしろ抑制された。誤り。
問6:正解 ③(配点2)

<問題要旨>
新入社員に「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因を最も重視しましたか」と尋ねた調査結果(1990〜2015年、5年刻み)のグラフについて、ア〜エに該当する項目a〜d(a 給料が高いから/b 会社の将来性を考えて/c 自分の能力・個性が生かせるから/d 仕事がおもしろいから)の組合せとして最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
与えられた文A〜Dを手がかりに、決まりやすいものから順に確定していきます。

【A から a を決める】
「a 給料が高いから」は 1990〜2000年は「経営者に魅力を感じたから」を上回り、2005〜2015年は下回る。
 経営者に魅力:2 → 3 → 3 → 5 → 6 → 6
 エ:6 → 5 → 4 → 4 → 3 → 3
エだけがこの関係を満たす。よって a = エ。

【B から b を決める】
「b 会社の将来性を考えて」は 1990〜2005年に減少し、2005年以降は「技術が覚えられるから」を下回る。
 ウ:21 → 18 → 13 → 8 → 7〜8 → 9(減少)
 技術:13(2005)・9(2010)・12(2015)で、いずれもウを上回る。
よって b = ウ。

【C・D から c と d を決める】
残るアとイが c・d。D より「d 仕事がおもしろいから」の1990年の値は「b(ウ=21)」の半分以下、すなわち10以下。ア=27、イ=8 なので d = イ。
(2000年に イ14・ウ13 でほぼ同じ、2015年に イ19・ウ9 で逆転、というD の記述とも合う。)
したがって c = ア。

まとめると ア=c、イ=d、ウ=b、エ=a。
問7:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
世界経済に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
各国・各地域の経済情勢を年代とともに確認します。

① BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国、のちに南アフリカを加えてBRICS)は、豊富な人口と天然資源を背景に2000年代に高成長を遂げた。正しい。 ←
② 2010年に表面化したのはギリシャの財政危機。これが欧州債務危機へと広がり、ユーロの信認が揺らいだ。ドイツではない。誤り。
③ 日本にとって中国は2007年に貿易総額で最大の相手国となった。第3位ではない。誤り。
④ 日本の公的債務残高の対GDP比はOECD加盟国のなかで最も高い水準にある。誤り。
問8:正解 ④(配点2)

<問題要旨>
葛藤は、接近したい欲求と回避したい欲求の組合せからいくつかの型に分けられる。「ヤマアラシのジレンマ」と同じ型に分類されるものを、A〜Cからすべて選んだときの組合せとして最も適当なものを選ぶ。
A 外国に留学して勉強を続けたいが、国内で働いてキャリアも積みたい。
B 親の勧める職業を選んで親を安心させたいが、その仕事は自分には退屈で苦痛だろうから避けたい。
C 起業に挑戦してみたいが、競争の激しさや破産の可能性を考えると尻込みする。

<考え方>
まず「ヤマアラシのジレンマ」がどの型かを決め、A〜Cを同じ基準で分類します。

葛藤(コンフリクト)はレヴィンによって3つの型に分けられる。
 接近・接近型…どちらも魅力的な二つのうち一方しか選べない
 回避・回避型…どちらも避けたい二つのうち一方を選ばざるをえない
 接近・回避型…同一の対象に、近づきたい気持ちと避けたい気持ちが同時に働く

「ヤマアラシのジレンマ」は、寒さのために身を寄せ合いたいが、近づくと互いのとげで傷つけ合うというたとえ。同じ対象(相手に近づくこと)に接近と回避が同時に働くので接近・回避型。

A 留学したい/働きたい … どちらも望ましいものの選択なので接近・接近型。
B 親を安心させたい/その仕事は避けたい … 同じ対象(親の勧める職業を選ぶこと)に接近と回避。接近・回避型。 ←
C 起業したい/尻込みする … 同じ対象(起業)に接近と回避。接近・回避型。 ←

よって B と C。

第4問 地域と環境(世界遺産・国会・環境政策の手法・住民の直接請求・環境法制)

地域社会と環境をめぐる5問。問3の「直接規制か経済的誘導か」という切り分けが、この大問の要になります。

問1:正解 ②(配点2)

<問題要旨>
2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として適当でないものを選ぶ(官営八幡製鉄所/富岡製糸場/韮山反射炉/端島炭坑(軍艦島))。

<考え方>
別の世界遺産として登録されているものが一つ混じっています。

「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(2015年登録)は、幕末から明治期の重工業に関わる23の資産からなり、官営八幡製鉄所、韮山反射炉、端島炭坑(軍艦島)、三菱長崎造船所、松下村塾などが含まれる。

富岡製糸場は製糸(軽工業)の遺産で、2014年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として別に世界文化遺産に登録されている。したがって「明治日本の産業革命遺産」の構成資産ではない。
問2:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
日本の立法機関である国会に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
衆議院の優越と、国会の種類、法案提出権を確認します。

① 参議院が否決しても、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば法律は成立する(憲法59条2項)。誤り。
② 条約の締結は内閣が行うが、事前または事後に国会の承認を必要とする(憲法61条・73条)。誤り。
③ 衆議院の解散による総選挙の日から30日以内に召集されるのは特別会(特別国会)。臨時会は内閣が必要と認めたときなどに召集される。誤り。
④ 法律案は国会議員のほか内閣も提出できる。実際には内閣提出法案(閣法)が成立件数の大半を占める。正しい。 ←
問3:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
環境の保護や保全を目的に国や地方自治体が採る法的手法として、A(私人の権利や自由に対して直接規制を加える)とB(私人に経済的インセンティブを与え、その活動を誘導する)がある。ア〜ウのうち、Aに区分されるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを選ぶ。
ア 工場排水の有害物質の排出基準を定め、違反した工場に改善命令を行う。
イ 有害物質の排出量が少ない自動車を対象として減税を行う。
ウ 森林において開発を行う際には、行政機関による許可が必要であるとする。

<考え方>
「してはならない/しなければならない」と命じているか、「したくなるように仕向けている」かで分けます。

ア 基準を定めて違反者に改善命令を出すのは、行為そのものを法的に義務づけ・禁止するもの。直接規制(A)。

イ 減税は、望ましい行動をとった者に経済的な利益を与えて誘導する仕組み。経済的インセンティブ(B)。
(環境税や排出量取引も同じくBにあたる。)

ウ 許可がなければ開発できないとするのは、権利や自由を直接制限するもの。直接規制(A)。

したがって A に区分されるのは ア と ウ。
問4:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
日本における住民による地方自治への関与に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
直接請求の種類と、憲法95条の住民投票を確認します。

① 直接請求には条例の制定だけでなく改廃(改正・廃止)の請求も含まれる(有権者の50分の1以上の署名)。誤り。
② 解職請求(リコール)の対象には、首長だけでなく議員や主要公務員も含まれる(有権者の3分の1以上の署名)。誤り。
③ 憲法95条は「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」と定める。正しい。 ←
④ 2015年に大阪市で「大阪都構想」(特別区の設置)の賛否を問う住民投票が実施されている。誤り。
問5:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
環境の保護や保全についての法制度に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
環境権の位置づけと、各条約が扱う対象を確認します。

① 環境権は憲法13条(幸福追求権)や25条(生存権)を根拠とする新しい人権で、憲法に明文の規定はない。誤り。
② ワシントン条約(1973年採択)は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約。正しい。 ←
③ 環境影響評価法の制定は1997年だが、それ以前から川崎市(1976年)をはじめ多くの自治体が環境アセスメント条例を制定していた。誤り。
④ 有害廃棄物の国境を越える移動を規制するのはバーゼル条約。ラムサール条約は水鳥の生息地として重要な湿地の保全に関する条約。誤り。

第5問 教育と国際社会(国際機関・貧困・人権・教育分野のODA・グローバルな課題)

すべての子どもに教育をという課題を軸に、国際機関の役割、貧困の指標、人権条約、そして教育ODAの表の読み取りを問います。

問1:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
国際機関に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
各機関の略称と設立目的を対応させます。

① 難民の保護を主たる目的とするのは UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)。WHO は世界保健機関で、保健・衛生を担当する。誤り。
② 労働者の権利保障や労働条件の改善を目的とするのは ILO(国際労働機関)。UNDP は国連開発計画で、開発途上国の開発支援を担う。誤り。
③ 子どもへの栄養・医療などの提供を目的とするのは UNICEF(国連児童基金)。正しい。 ←
④ 戦後の復興と経済開発のための融資を目的として設立されたのは IBRD(国際復興開発銀行、世界銀行)。UNCTAD は国連貿易開発会議で、南北問題の是正を議論する場。誤り。
問2:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
開発途上国と貧困に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
2015年を期限とした国連の目標の名称を思い出します。

① 1974年の国連資源特別総会で新国際経済秩序(NIEO)樹立宣言が採択された。正しい。
② 人間開発指数(HDI)は平均余命・教育・所得の三側面から算出され、UNDP が1990年から『人間開発報告書』で公表している。正しい。
③ 後発開発途上国(LDC)の説明として正しい。
④ 2015年の達成を目指した国連の目標はミレニアム開発目標(MDGs)。国民総幸福(GNH)はブータンが提唱する、経済指標にとらわれない発展の考え方で、まったく別のもの。誤り。 ←
(MDGs の後継が2030年を期限とする持続可能な開発目標(SDGs)。)
問3:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
人権に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
各条約・宣言の内容と、日本の関連立法を確認します。

① 子どもの権利条約(1989年採択)12条は、子どもが自己に影響を及ぼす事項について自由に意見を表明する権利を保障している。正しい。 ←
② 女性差別撤廃条約(1979年採択)の批准(1985年)に向けて制定されたのは男女雇用機会均等法。男女共同参画社会基本法は1999年の制定で、批准のためのものではない。誤り。
③ 1993年の国連世界人権会議で採択されたウィーン宣言には、先住民の権利保護の強化が盛り込まれている。誤り。
④ 世界人権宣言(1948年)は法的拘束力のない宣言。条約として法的拘束力をもたせたのが1966年の国際人権規約である。誤り。
問4:正解 ④(配点2)

<問題要旨>
OECD加盟5か国(フランス・ドイツ・日本・イギリス・アメリカ)による教育分野のODA総額と、そのうちの初等教育への援助額を示した表から読み取れることとして最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
選択肢ごとに、比べるべき数値を表から拾って計算します。

表の数値(100万米ドル)は次のとおり。
     総額2003/総額2013/初等2003/初等2013
 フランス 1,445/1,459/26/138
 ドイツ  1,327/1,732/70/128
 日本    805/ 701/74/ 84
 イギリス  212/1,435/126/312
 アメリカ  339/ 844/220/586

① 2003年の総額最多はフランス(1,445)で正しいが、初等教育への援助額が最も少ないのはフランス(26)。アメリカ(220)は最多に近い。誤り。
② 2013年の初等教育の割合は、ドイツ 128/1,732 ≒ 7 % で最小は正しいが、最大はアメリカ 586/844 ≒ 69 %。日本は 84/701 ≒ 12 %。誤り。
③ 総額が減少したのは日本だけ(−104)で最大は正しいが、初等教育の増加額が最も大きいのはアメリカ(+366)。ドイツは+58。誤り。
④ 総額の増加率が最大なのはイギリス(1,435/212 ≒ 6.8倍)。初等教育の増加率が最大なのはフランス(138/26 ≒ 5.3倍。アメリカは 2.7倍、イギリスは 2.5倍)。どちらも正しい。 ←
問5:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
グローバルな問題についての考え方や取組みに関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
用語の定義が入れかわっていないかを確かめます。

① それぞれの文化の価値を対等なものとして尊重する考え方は文化相対主義。自民族中心主義(エスノセントリズム)は、自分の属する民族の文化を基準として他を低く見る態度で、意味が正反対。誤り。 ←
② 「人間の安全保障」は、国家の安全保障だけでは対処できない貧困・環境破壊・感染症などの脅威から一人一人の生活を守るという考え方。正しい。
③ 「持続可能な開発」は、将来世代の必要を損なわずに現在の世代の必要を満たす開発という考え方で、1992年のリオ宣言の中心概念。正しい。
④ マイクロクレジット(マイクロファイナンス)は、バングラデシュのグラミン銀行に代表される、貧困層への無担保・少額融資の仕組み。正しい。

第6問 賃金と経済(資本主義の思想・労働環境・市場と企業・景気循環と経済政策・所得の格差と再分配)

賃金が「費用」と「所得」の二つの側面をもつという文章を軸に、経済思想から所得再分配までを問います。

問1:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
資本主義経済にかかわる考え方に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
経済学者と、その中心的な主張を対応させます。

① ケインズは『雇用・利子および貨幣の一般理論』で、不況と失業に対処するため政府が有効需要をつくり出すべきだと説いた。正しい。
② アダム・スミスは『国富論』で、各人が自己利益を追求することが「見えざる手」に導かれて社会全体の利益にもなると論じた。正しい。
③ シュンペーターは、企業家によるイノベーション(創造的破壊)が資本主義発展の原動力であると論じた。正しい。
④ 労働者が生産物や自分自身から疎外されると論じたのはマルクス。リカードは比較生産費説(比較優位)で知られる古典派経済学者である。誤り。 ←
問2:正解 ②(配点3)

<問題要旨>
1990年代以降の日本における労働環境に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
労働時間の国際比較と、労働法制の改正の方向を確認します。

① 日本の年間総労働時間は短縮傾向にあるものの、ドイツやフランスよりなお長い。誤り。
② 1987年の労働基準法改正で導入された裁量労働制は、その後の改正で企画業務型が加わるなど対象業務が拡大している。正しい。 ←
③ 若年層(15〜24歳)の失業率は、全年齢の平均失業率より一貫して高い。誤り。
④ 労働者派遣法は1999年の改正で対象業務が原則自由化され、2004年の改正で製造業への派遣も解禁された。「対象外となった」は逆。誤り。
問3:正解 ①(配点3)

<問題要旨>
市場における競争や企業に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
完全競争市場の性質と、経済用語の定義を確認します。

① 小規模な売り手と買い手が多数存在する完全競争市場では、個々の企業は市場価格を受け入れるだけの存在(プライステイカー)となり、価格支配力をもたない。正しい。 ←
② 利潤のうち社内に蓄積される部分は内部留保。減価償却は固定資産の価値の減少分を費用として計上する会計処理で、意味が異なる。誤り。
③ 規模の経済(スケールメリット)が働く産業では、生産規模が大きい企業ほど単位あたり費用が下がり有利になる。誤り。
④ 業務の一部を外部に委託することはアウトソーシング。デリバティブは先物・オプションなどの金融派生商品を指す。誤り。
問4:正解 ③(配点2)

<問題要旨>
現代の景気循環における諸局面と経済政策に関する記述として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
不況期に中央銀行がとる政策の向きを確認します。

① 好況期に景気の過熱を抑えるため、政府は増税や公共投資の縮小を行う(フィスカル・ポリシー)。正しい。
② 後退期には需要に対して供給が過剰となり、売れ残りの在庫が積み上がる。正しい。
③ 不況期に景気を回復させるために中央銀行が行うのは、金融市場で国債等を買い入れる買いオペレーション(資金供給)。売却(売りオペ)は資金を吸収する引き締め策で、向きが逆である。誤り。 ←
④ 回復期には在庫が減少し、それを補うために生産が増加していく。正しい。
問5:正解 ④(配点3)

<問題要旨>
所得の格差や再分配に関する記述として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
ジニ係数の動きと、垂直的公平・水平的公平の区別を確認します。

① 日本の所得に関するジニ係数は、1980年代以降おおむね上昇(格差拡大)傾向にある。誤り。
② 中国では1990年代以降、沿海部の都市と内陸の農村との所得格差がむしろ拡大している。誤り。
③ 説明されているのは水平的公平(同程度の負担能力の人には同程度の負担を)。垂直的公平は、負担能力の大きい人により大きな負担を求める考え方で、累進課税がその例。誤り。
④ 生活保護などの公的扶助は、税を財源として低所得層へ給付するため、所得を再分配する機能をもつ。正しい。 ←

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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