2019年度 大学入試センター試験 本試験 生物基礎 解答・解説

2019年度 大学入試センター試験 本試験「生物基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2019年度 本試験 生物基礎は、第1問から第3問までの全問必答、採点項目は16、満点は50点です。大問ごとの配点は第1問19点・第2問15点・第3問16点で、いずれも選択問題はありません。

この年度は大学入学共通テストではなく、大学入試センター試験として実施された回です。生物基礎は物理基礎・化学基礎・地学基礎とともに理科①の1冊にまとめられており、生物基礎の問題は冊子の30ページから始まります。そのため解答番号は1から18までで、101から始まる近年の理科基礎とは番号の振り方が違います。当サイトの他の年度と見比べるときは、この点に注意してください。

第1問は生物の特徴と遺伝子のはたらきです。Aでは単細胞生物の分類と代謝の基本事項に加え、ニワトリの肝臓片と過酸化水素水を使った実験について「どういう対照実験を組めば、その可能性を否定できるか」を問う設問が出ました。Bはブロッコリーの花芽からDNAを抽出する実験を題材に、細胞の構造と、塩基数・アミノ酸数の計算を扱います。

第2問は体内環境の維持です。Aでは血球のはたらきと、心臓の左心室と右心室を仕切る壁に穴が開いた場合の血液の流れ、そして酸素解離曲線のずれ方が問われます。Bは予防接種と免疫記憶、抗体のはたらきです。第3問は生態系と植生で、窒素の循環、エネルギーの流れ、葉の厚さと寿命の関係、陽樹と陰樹の光‐光合成曲線、そして土壌中の種子から始まる二次遷移の実験を扱います。

この回でつまずきやすいのは、グラフのずれ方を「形の印象」で選んでしまう設問です。第2問問3の酸素解離曲線も、第3問問4の光‐光合成曲線も、曲線のどちら側にずれるかだけでなく、高い値の側で元の曲線とどちらが上かまで見ないと候補が2つ残ります。第3問問3の樹種選びも、葉の厚さ・寿命の条件だけでは候補が2つ残り、常緑樹か落葉樹かで最後を決めることになります。

第1問(必答) A 生物の特徴(単細胞生物・代謝・酵素のはたらきを調べる実験)

全ての生物が細胞からできていること、生体内の化学反応全体を代謝とよぶことを述べた文章をもとに、単細胞生物の分類、代謝の基本事項、そして酵素のはたらきを確かめる対照実験の組み立てを問います。

問1:正解 ②(解答番号1/配点3)

<問題要旨>
ゾウリムシ・オオカナダモ・酵母菌(酵母)・ネンジュモの4種から、真核細胞からなる単細胞生物だけを選び出す組合せを答える設問です。「真核細胞である」と「単細胞生物である」の二つの条件を同時に満たすものを選びます。

<考え方>
細胞の種類(原核細胞か真核細胞か)と、からだの成り立ち(単細胞か多細胞か)は別々の観点なので、4種それぞれについて二つの表を作るつもりで分けて判定します。原核生物は細菌とシアノバクテリアの仲間で、核膜に包まれた核をもたない点が決め手です。

【4種の判定】
ⓐ ゾウリムシ   真核細胞・単細胞   → 条件を満たす
ⓑ オオカナダモ  真核細胞・多細胞(被子植物)→ 多細胞なので不可
ⓒ 酵母菌(酵母) 真核細胞・単細胞(菌類) → 条件を満たす
ⓓ ネンジュモ   原核細胞・単細胞(シアノバクテリア)→ 原核なので不可

条件を満たすのは ⓐ と ⓒ
よって ②

ネンジュモは葉緑体をもたないまま光合成を行うシアノバクテリアで、原核生物です。「光合成をする=真核」ではない点が、この設問のひっかけになっています。

問2:正解 ③(解答番号2/配点3)

<問題要旨>
エネルギーと代謝に関する4つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。光合成の原料、酵素の成分、同化の定義、呼吸におけるATPの合成方向が論点になります。

<考え方>
同化と異化の定義、酵素の本体はタンパク質であること、ATPとADPのどちらが高エネルギー側かという3点に戻れば、選択肢は一つずつ落とせます。とくにATPとADPは「ATPが分解されてADPとリン酸になるときにエネルギーが放出される」向きを押さえておけば、呼吸の記述の正誤はすぐ決まります。

① 誤 光合成の原料は水と二酸化炭素。窒素は有機窒素化合物の合成に使われるが、光合成の原料ではない
② 誤 酵素の本体はタンパク質であり、炭水化物ではない
③ 正 外界から取り入れた物質を、生命活動に必要な物質に合成する反応が同化。定義どおり
④ 誤 呼吸では有機物の分解で放出されたエネルギーを使い、ADPとリン酸からATPが合成される。向きが逆

よって ③

④は「ATPからADPが合成される」という順序の入れ替えだけで誤りになっています。文の前半(酸素を用いて有機物を分解する)が正しいため見落としやすく、最後まで読み切ることが必要です。

問3:正解 ④(解答番号3/配点3)

<問題要旨>
過酸化水素水にニワトリの肝臓片を加えると酸素が発生した、という結果に対し、「加えた物質による物理的刺激で過酸化水素が分解した」という可能性[1]と、「肝臓片自体から酸素が出た」という可能性[2]を検証するための実験を、ⓐ〜ⓕから一つずつ選ぶ設問です。酸化マンガン(Ⅳ)は過酸化水素の分解を触媒し、石英砂は触媒しないことが注として与えられています。

<考え方>
対照実験は「確かめたい要因だけを残し、それ以外の要因を取り除いた条件」を作ります。可能性[1]は触媒作用のない固体を加えて酸素が出るかを見る、可能性[2]は過酸化水素を含まない液に肝臓片を加えて酸素が出るかを見る、という形に翻訳できます。

【可能性[1]:物質を加える物理的刺激で分解するのか】
確かめたいのは「触媒作用と無関係に、固体を加えただけで分解するか」
→ 触媒しない石英砂を過酸化水素水に加える = ⓑ
ⓐ・ⓒ は酸化マンガン(Ⅳ)を含む。酸素が出ても触媒作用のせいか物理的刺激のせいか区別できない → 不可

【可能性[2]:肝臓片自体から酸素が出るのか】
確かめたいのは「過酸化水素がなくても肝臓片から酸素が出るか」
→ 過酸化水素を含まない水に肝臓片を加える = ⓓ
ⓔ・ⓕ には肝臓片が入っていないので、この可能性は検証できない → 不可

可能性[1]=ⓑ、可能性[2]=ⓓ
よって ④

この2つの実験でどちらも酸素が発生しなければ、可能性[1]・[2]はともに否定され、最初の結果は肝臓に含まれる酵素の触媒作用によると結論できます。対照実験は「何を変え、何をそろえたか」を一組ずつ言葉にすると迷いません。

第1問(必答) B 遺伝子とそのはたらき(DNAの抽出実験・塩基数とアミノ酸数)

ブロッコリーの花芽からDNAを抽出する実験の手順を追いながら、植物細胞の構造とDNAの所在、遺伝情報の一様性、そして塩基数から合成されるアミノ酸数を求める計算までを扱います。

問4:正解 ⑥(解答番号4/配点3)

<問題要旨>
DNA抽出実験の説明文中の空欄ア〜エに入る語の組合せを選ぶ設問です。アは植物細胞の細胞膜の外側にある構造、イ〜エはDNAを含む細胞小器官(イは核・液胞のいずれか、ウは呼吸に関与するもの、エは光合成に関与するもの)です。

<考え方>
実験手順の一文ずつが、どの構造を壊す操作なのかに対応しています。すりつぶすのは細胞壁を壊すため、中性洗剤を加えるのは膜構造を壊すためです。あとは「呼吸=ミトコンドリア」「光合成=葉緑体」という対応と、DNAを含むのは核・ミトコンドリア・葉緑体であって液胞ではない、という知識で決まります。

ア 植物細胞の細胞膜の外側を囲む構造 = 細胞壁
  (乳鉢と乳棒ですりつぶすのは、この細胞壁を壊すため)
イ DNAを含む細胞の中の構造で、ウ・エと並ぶもの = 核
  (液胞はDNAを含まないので不可)
ウ 呼吸に関与する細胞小器官 = ミトコンドリア
エ 光合成に関与する細胞小器官 = 葉緑体

ア=細胞壁、イ=核、ウ=ミトコンドリア、エ=葉緑体
よって ⑥

選択肢はア(細胞質基質か細胞壁か)・イ(核か液胞か)・ウエ(ミトコンドリアと葉緑体の順序)の3か所で枝分かれしています。どれか一つを確実に決めれば候補が半分になるので、最も確実なウ・エの対応から入るのが安全です。

問5:正解 ①(解答番号5/配点3)

<問題要旨>
DNAと遺伝情報に関する4つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。同一個体の異なる器官から抽出したDNAの遺伝情報が一致するかどうか、DNAとRNAの塩基配列の関係が論点になります。

<考え方>
多細胞生物では、1個体のからだを作る細胞はすべて1個の受精卵が体細胞分裂をくり返してできたものなので、どの細胞も同じゲノムをもちます。器官ごとに違うのは「どの遺伝子が発現しているか」であって、もっているDNAそのものではありません。ここに戻れば①〜③は一度に整理できます。

① 正 同一個体の細胞はすべて同じゲノムをもつので、花芽由来と葉由来のDNAの遺伝情報は一致する
② 誤 花芽のDNAにも、根や葉ではたらくタンパク質の遺伝情報が同じように含まれている
③ 誤 同じ理由で、花芽から抽出したDNAにも根の発生に関わる遺伝子は含まれる
④ 誤 RNAはDNAの片方の鎖の一部を写し取ったもので、しかもTがUに置き換わる。全塩基配列が一致することはない

よって ①

器官ごとの性質の違いは、同じDNAのうち「どの遺伝子を使うか」が器官ごとに異なることで生じます。これを選択的な遺伝子発現といいます。

問6:正解 ④・②(解答番号6・7/配点4)

<問題要旨>
300塩基対のDNAについて、全塩基の20%がアデニンであるときの二本鎖中のシトシンの数(オ)と、片方の鎖が全て転写されてできたmRNAの塩基配列が最初から最後まで全てアミノ酸を指定していた場合に合成されるタンパク質のアミノ酸数(カ)を、①90〜⑧900の数値から選ぶ設問です。オとカはそれぞれ一つずつ選び、同じ選択肢を繰り返し選んでもよいという条件がついています。

<考え方>
オはシャルガフの規則(A=T、G=C)に戻ります。「塩基対の数」と「塩基の数」は2倍違うので、まず全塩基数に直してから割合を計算するのが確実です。カはコドンが3塩基で1つのアミノ酸を指定するという原則に戻り、mRNAの塩基数を3で割ります。

【オ:二本鎖DNA中のシトシンの数】
300塩基対 → 全塩基数 = 300×2 = 600
アデニンの数 = 600×0.20 = 120
A=T より チミンの数 = 120
グアニン+シトシン = 600 − 120 − 120 = 360
G=C より シトシンの数 = 360÷2 = 180
よって オ は ④

【検算】A 120 + T 120 + G 180 + C 180 = 600 全塩基数と一致

【カ:連なるアミノ酸の数】
300塩基対のDNAの片方の鎖が全て転写された → mRNAの塩基数 = 300
3塩基(コドン)で1つのアミノ酸を指定する
300÷3 = 100
よって カ は ②

オ = ④、カ = ②

オで「300の20%=60」としてしまうと、塩基対と塩基の取り違えで答えがずれます。カでは「二本鎖の片方だけが転写される」ので、mRNAの塩基数は600ではなく300である点を必ず確認してください。

第2問(必答) A 血液と循環(血球のはたらき・心臓の構造・酸素解離曲線)

哺乳類の血液が血しょうと血球からなり、心臓を中心に循環していることを述べた文章をもとに、血小板のはたらき、心室を仕切る壁に穴が開いた場合の血流、そして二酸化炭素濃度による酸素解離曲線のずれ方を問います。

問1:正解 ③(解答番号8/配点3)

<問題要旨>
ヤナギから抽出された成分を含む薬を飲んだところ、けがで静脈が傷ついた際に通常よりも出血が止まりづらくなったという現象を示し、その成分が作用したと考えられるものを、赤血球・白血球・血小板・血清から選ぶ設問です。

<考え方>
「出血が止まる」しくみ、すなわち血液凝固の最初の段階に関わる成分はどれかに戻ります。血管が傷つくとまず血小板が傷口に集まって集合し、続いてフィブリンが血球を絡めて血ぺいを作ります。出血が止まりにくくなったのなら、この過程が妨げられたと考えます。

① 誤 赤血球はヘモグロビンによる酸素の運搬を担う。血液凝固には直接関わらない
② 誤 白血球は食作用や免疫を担う。血液凝固には直接関わらない
③ 正 血小板は傷口に集まって凝集し、血液凝固の引き金となる。ここが妨げられれば出血が止まりづらくなる
④ 誤 血清は血ぺいができたあとに残る液体成分であり、凝固を担う有形成分ではない

よって ③

ヤナギの樹皮に含まれる成分は、古くから解熱鎮痛に用いられ、血小板の凝集を抑えるはたらきも知られています。設問で示された現象そのものが、血小板の役割を裏返しに述べたものになっています。

問2:正解 ①(解答番号9/配点3)

<問題要旨>
肺循環と体循環の経路を説明したうえで、左心室と右心室を仕切る壁に大きな穴が開いた場合に起きると考えられる血液循環の記述を選ぶ設問です。心臓の4つの部屋と血管のつながりを正しくたどれるかが問われます。

<考え方>
まず正常な経路を「右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身→大静脈→右心房」と一本につないで押さえます。そのうえで、左心室と右心室の間に穴が開けば、収縮時の圧力が高い左心室から右心室へ血液が流れ込む、という1点だけが新たに加わります。それ以外の経路は変わりません。

【穴によって加わる流れ】
左心室(高い圧)→ 穴 → 右心室(低い圧)
右心室に入った血液は肺動脈から肺へ送られる

① 正 肺静脈→左心房→左心室と戻った血液の一部が、穴から右心室へ入り、再び肺へ送られる
② 誤 肺静脈の血液は肺でガス交換を終えた血液で、最も酸素に富む。肺動脈の血液がそれを上回ることはない
③ 誤 全身を巡った血液は大静脈から右心房へ戻る。左心房へは戻らない
④ 誤 肺に達した血液は肺静脈から左心房へ入る。右心房へは戻らない

よって ①

②は「穴があれば肺動脈にも動脈血が混じる」ところまでは正しいのですが、肺静脈の血液より酸素が多くなることはありません。混ざる前と混ざったあとのどちらが酸素に富むかを比べると判定できます。

問3:正解 ④・①(解答番号10・11/配点3)

<問題要旨>
図1は、静止している筋肉の血管における血液の酸素解離曲線を示しています。活発に収縮している筋肉の血管では血液中の二酸化炭素濃度が上昇し、肺胞の血管では静止している筋肉より二酸化炭素濃度が低いことが与えられ、それぞれの場合の酸素解離曲線(実線)として適当な図を①〜④から一つずつ選びます。①〜④の破線はいずれも図1と同じ曲線で、同じ選択肢を繰り返し選んでもよいという条件がついています。なお、解答番号10が活発に収縮している筋肉、11が肺胞です。

<考え方>
二酸化炭素濃度が高いほどヘモグロビンは酸素を離しやすくなる、という原則に戻ります。同じ酸素濃度で比べたとき、二酸化炭素濃度が高ければ酸素ヘモグロビンの割合は低く、低ければ高くなります。したがって曲線は上下どちらかへ全体としてずれるので、低い酸素濃度の側だけでなく、酸素濃度80〜100の側でも実線と破線のどちらが上かを確認して候補を切ります。

【判定の基準】
同じ酸素濃度で比べて
 二酸化炭素濃度が高い → 酸素ヘモグロビンの割合は破線より低い(曲線は右下へずれる)
 二酸化炭素濃度が低い → 酸素ヘモグロビンの割合は破線より高い(曲線は左上へずれる)
これは酸素濃度の全域で成り立つ

【解答番号10 活発に収縮している筋肉(二酸化炭素濃度は高い)】
実線が破線より下にある図を探す → ③ と ④ が候補
③ 不可 酸素濃度が70をこえたあたりで実線が破線を上回り、右端では実線が約95%、破線が約85%となる
    二酸化炭素濃度が高いのに酸素ヘモグロビンの割合が高くなることになり、原則と矛盾する
④ 適  酸素濃度0から100までの全域で実線が破線より下、右端でも実線が約80%、破線が約85%
よって 解答番号10 は ④

【解答番号11 肺胞(二酸化炭素濃度は低い)】
実線が破線より上にある図を探す → ① と ② が候補
② 不可 酸素濃度が60をこえたあたりで実線が破線を下回り、右端では実線が約80%で頭打ち、破線は約85%
    二酸化炭素濃度が低いのに酸素ヘモグロビンの割合が低くなることになり、原則と矛盾する
① 適  酸素濃度0から100までの全域で実線が破線より上、右端でも実線が約90%、破線が約85%
よって 解答番号11 は ①

解答番号10 = ④、解答番号11 = ①

③と②は、曲線の立ち上がる位置だけを見ると正しくずれているように見えます。グラフの右端、すなわち酸素濃度が100に近いところで実線と破線のどちらが上かを確かめるのが、この2つを落とす決め手です。曲線の形の印象ではなく、同じ酸素濃度での縦軸の値を2か所(低い側と高い側)で比べる習慣をつけてください。

第2問(必答) B 免疫(予防接種と免疫記憶・抗体のはたらき)

弱毒化した病原体をあらかじめ接種する予防接種のしくみを説明した文章をもとに、免疫記憶を担う細胞とアレルギーの成り立ち、そして抗体の産生と機能を問います。

問4:正解 ⑧(解答番号12/配点3)

<問題要旨>
予防接種のしくみを述べた文章中の空欄ア〜ウに入る語句の組合せを選ぶ設問です。アはB細胞とT細胞が抗原を認識したあとに残るもの、イは再度同じ抗原を認識すると増殖して抗体産生細胞に分化するもの、ウは花粉症のようなアレルギーが起こるときの免疫応答の状態です。

<考え方>
予防接種が効くのは、一度目の感染(接種)で作られた記憶細胞が残り、二度目に同じ抗原が入ったときに素早く強い応答が起こるからです(二次応答)。この流れのどこを問われているかで空欄が決まります。抗体産生細胞に分化するのはB細胞である、という対応も同時に確認します。

ア 抗原を認識したB細胞・T細胞が、発病を防ぐために残るもの = 記憶細胞
  (樹状細胞は抗原を取り込んでT細胞に提示する細胞で、認識した結果として残るものではない)
イ 再度同じ抗原を認識して増殖し、抗体産生細胞に分化するもの = B細胞
  (抗体産生細胞に分化するのはB細胞であって、T細胞ではない)
ウ 花粉症のようなアレルギーが起こるときの免疫応答 = 過剰になる
  (本来は無害な物質に対して免疫応答が過剰に起こるのがアレルギー)

ア=記憶細胞、イ=B細胞、ウ=過剰になる
よって ⑧

ウで「低下する」を選ぶと、直後に出てくる自己免疫疾患(免疫系が自身の正常な細胞や組織を攻撃する)との区別がつかなくなります。免疫の低下によって起こるのは日和見感染などで、アレルギーとは方向が逆です。

問5:正解 ⑤(解答番号13/配点3)

<問題要旨>
抗体の産生と機能に関する5つの記述から、最も適当なものを一つ選ぶ設問です。抗体を産生する細胞、ヘルパーT細胞のはたらき、体液性免疫と細胞性免疫の区別、異種タンパク質に対する免疫応答、抗原抗体複合体のその後が論点になります。

<考え方>
抗体が抗原に結合したあと、その複合体がどうなるかに戻ります。抗体は結合するだけでは抗原を壊せず、結合によって目印をつけ、マクロファージなどの食作用による排除を受けやすくします。この一連の流れ(抗原抗体反応→食作用による排除)を押さえれば⑤が決まります。

① 誤 抗体を産生するのは、B細胞が分化した抗体産生細胞(形質細胞)。マクロファージは食作用を担う
② 誤 活性化したヘルパーT細胞はB細胞の増殖を促進し、抗体産生細胞への分化も促進する。「抑制する」が逆
③ 誤 抗体によって抗原を排除するのは体液性免疫。細胞性免疫はキラーT細胞などが直接はたらく免疫
④ 誤 ウマにとってヒトのタンパク質は異物(抗原)なので、これに対する抗体を産生する
⑤ 正 抗体が結合した抗原(抗原抗体複合体)は、マクロファージなどの食作用によって排除される

よって ⑤

②は前半(増殖を促進する)が正しく、後半だけが逆になっています。免疫の設問では「促進」と「抑制」の入れ替えが頻出なので、文末まで読んでから判断してください。

第3問(必答) A 生態系(窒素の循環とエネルギーの流れ)

生態系の中で物質やエネルギーが様々な経路を通って移動することを述べた文章をもとに、窒素の循環に関わる生物と現象の名称、そしてエネルギーの流れの正誤を問います。

問1:正解 ③(解答番号14/配点3)

<問題要旨>
窒素の循環を述べた文章中の空欄ア〜ウに入る語の組合せを選ぶ設問です。アは植物が無機窒素化合物から作る有機窒素化合物の例、イは大気中の窒素分子から無機窒素化合物を作ることができる生物、ウは無機窒素化合物が窒素分子に変化して大気中に放出される現象の名称です。

<考え方>
窒素循環は「窒素固定・硝化・脱窒」の三つの語をどこに当てはめるかで決まります。大気中の窒素分子(N₂)を取り込んで無機窒素化合物に変えるのが窒素固定、逆に無機窒素化合物を窒素分子に戻して大気へ返すのが脱窒です。硝化はアンモニウムイオンを亜硝酸イオン・硝酸イオンへ酸化する過程で、大気中の窒素分子は使いません。

ア 植物が無機窒素化合物から作る有機窒素化合物 = タンパク質
  (グルコースは炭水化物であり、窒素を含まないので有機窒素化合物ではない)
イ 大気中の窒素分子から無機窒素化合物をつくる = 窒素固定を行う生物 = 根粒菌
  (硝化細菌はアンモニウムイオンを酸化するだけで、窒素分子は利用しない)
ウ 無機窒素化合物が窒素分子となって大気中へ放出される現象 = 脱窒

ア=タンパク質、イ=根粒菌、ウ=脱窒
よって ③

ウの空欄の直前に「窒素分子に変化して大気中に放出され」と書かれており、これは窒素固定と真逆の向きです。文中の矢印の向きを確かめれば、窒素固定と脱窒の取り違えは防げます。

問2:正解 ②(解答番号15/配点3)

<問題要旨>
生態系におけるエネルギーの移動に関する5つの記述から、誤っているものを一つ選ぶ設問です。光エネルギーの供給源、熱エネルギーの行方、生産者・消費者・分解者それぞれのエネルギーの受け渡しが論点になります。誤りを選ぶ設問である点に注意が必要です。

<考え方>
生態系では物質は循環するが、エネルギーは循環せず一方向に流れる、という原則に戻ります。太陽の光エネルギーが化学エネルギーに変換され、食物連鎖を通じて移動し、各段階で熱エネルギーとして生態系の外へ放散されて戻ってこない、という一本の流れです。

① 正 生産者が利用する光エネルギーは太陽から供給される
② 誤 熱エネルギーは生態系外へ放散され、再び利用されることはない。循環しつづけることはない
③ 正 生産者は光エネルギーを化学エネルギーに変換し、有機物中に蓄える
④ 正 消費者は呼吸などにより化学エネルギーの一部を熱エネルギーとして放出する
⑤ 正 分解者は遺体や排出物の有機物を分解して化学エネルギーを得る

誤っているものは ②
よって ②

「物質は循環し、エネルギーは循環しない」という対比が、この大問全体を通した軸になっています。Aの問1で扱った窒素は循環する側、ここで扱う熱エネルギーは循環しない側です。

第3問(必答) B 植生(葉の厚さと寿命・陽樹と陰樹の光合成・二次遷移)

葉の性質が生育場所の環境条件と深く関係していることを、葉の厚さと寿命の関係を示した図1と、陽樹・陰樹の光の強さとCO₂吸収・放出速度の関係を示した図2をもとに考え、最後に二次遷移の初期に現れる樹木の由来を実験から推測します。

問3:正解 ⑥(解答番号16/配点4)

<問題要旨>
図1は、葉の寿命が長い種ほど葉が厚いという右上がりの関係を示しています。この図をもとに、「生育に適した季節の長い地域に分布するエなどの常緑樹は、生育に適した季節の短い地域に分布するオなどの落葉樹に比べ、葉の寿命がカ、葉の厚さがキ」という文の空欄エ〜キに入る語の組合せを選びます。

<考え方>
まずカとキを図1から決め、次にエ・オを樹種の知識で決める、という二段構えで進めます。カは常緑樹と落葉樹の性質そのもの、キは図1の右上がりの関係から自動的に決まります。ここで残った候補は、エに常緑樹、オに落葉樹が入るという条件で最後の一つに絞ります。

【カ・キを決める】
常緑樹の葉は1年を通してついているので、落葉樹に比べ葉の寿命は長い → カ = 長く
図1は「葉の寿命が長いほど葉は厚い」という右上がりの関係 → 寿命が長い常緑樹の葉は厚い → キ = 厚い
カ=長く・キ=厚い をもつのは ⑤ と ⑥ の2つ

【エ・オを決める】
エには常緑樹、オには落葉樹が入る
⑤ エ=スダジイ(常緑・照葉樹)、オ=タブノキ
  タブノキも常緑の照葉樹であり、落葉樹ではない → 不可
⑥ エ=スダジイ(暖温帯の照葉樹林をつくる常緑広葉樹)
  オ=ミズナラ(冷温帯の夏緑樹林をつくる落葉広葉樹)→ 条件に合う

よって ⑥

候補として並ぶ樹種のうち、スダジイ・タブノキ・ヤブツバキは常緑の照葉樹、ブナ・ミズナラは落葉の夏緑樹です。照葉樹林と夏緑樹林の代表種をまとめて覚えておくと、この種の設問は最後の一手で迷わなくなります。

問4:正解 ⑥(解答番号17/配点3)

<問題要旨>
図2は、陽樹と陰樹それぞれについて、光の強さと葉の面積当たりのCO₂吸収・放出速度の関係を破線と点線で示したものです。横軸上にはA・Bの2つの光の強さが示されています。この図に基づき、CO₂の吸収および放出速度についての記述を①〜⑦から一つ選びます。

<考え方>
まず、最大のCO₂吸収速度が大きく、光が0のときの放出速度(呼吸速度)も大きい曲線が陽樹、どちらも小さい曲線が陰樹である、という対応をつけます。そのうえで、曲線が横軸(0)と交わる光の強さが光補償点で、そこより強い光では吸収が放出を上回り、弱い光では放出が上回る、という基準ですべての選択肢を判定します。

【曲線の割り当て】
点線 光が0のときの放出(呼吸)速度が大きく、最大吸収速度も大きい → 陽樹
破線 どちらも小さく、弱い光で早く0を横切る → 陰樹

【A・Bの位置】
A 点線(陽樹)が0と交わる光の強さ = 陽樹の光補償点
  破線(陰樹)はAより弱い光で0を横切っているので、陰樹の光補償点はAより小さい
B Aよりかなり強い光。陽樹・陰樹ともに0より上(吸収している)

【選択肢の判定】
① 誤 Aより弱い光では陽樹は光補償点未満なので、呼吸によりCO₂を放出する
② 誤 Bでは陰樹の曲線は0より上にあり、CO₂を吸収している
③ 誤 陽樹の曲線は光が強くなるほど傾きが小さくなり頭打ちになる。正比例ではない
④ 誤 陰樹の曲線も同様で、反比例の関係にはない
⑤ 誤 Bは陽樹の光補償点Aより強いので、吸収速度が放出速度を上回る
⑥ 正 陰樹の光補償点はAより弱い光にあるので、光の強さAでは吸収速度が放出速度を上回る
⑦ 誤 Aより弱い光の範囲では、陰樹(破線)の方が陽樹(点線)より上にある。常に大きいとはいえない

よって ⑥

陰樹が林床のような弱い光の下でも生育できるのは、呼吸速度が小さく光補償点が低いためです。図2でこの性質が読み取れることが、次の問5で扱う遷移の進み方と直接つながります。

問5:正解 ③(解答番号18/配点3)

<問題要旨>
実験1では、暖温帯の極相林から採取した地表付近の土から植物の葉・茎・根を全て取り除いて温室に置いたところ、2か月後に樹木の芽ばえが多数生え、いずれも極相林の主要な構成種ではありませんでした。実験2では、翌春にその森林の一部が伐採され、伐採跡地に自然に生えてきた樹木の芽ばえの大部分が、実験1で芽生えた樹種と共通していました。この樹木種の由来として最も適当なものを選びます。

<考え方>
実験1は、土から植物体を全て取り除いてあるので、芽ばえの出どころは土の中に残っていた種子(埋土種子)以外にありません。実験2でその樹種と伐採跡地の樹種が大部分一致したのですから、伐採跡地の樹木も同じ由来、すなわち伐採前から土壌中にあった種子だと結論できます。実験1で生えたのが極相林の構成種ではなかったことから、その正体は明るい場所で育つ陽樹です。

【実験1が示すこと】
土から葉・茎・根を全て取り除いた → 栄養器官からの再生はありえない
それでも芽ばえが出た → 土壌中に種子(埋土種子)が蓄えられていた
芽ばえは極相林の主要構成種ではなかった → 陰樹ではなく陽樹の種子

【実験2が示すこと】
伐採跡地に生えた樹種の大部分が、実験1の樹種と共通
→ 伐採跡地の樹木も、土壌中にあった同じ種子に由来する

【選択肢の判定】
① 誤 切り株からの再生なら、植物体を取り除いた実験1の土から芽ばえが出たことを説明できない
② 誤 周囲に残る陰樹の種子が由来なら、極相林の構成種ではない実験1の樹種と一致しない
③ 正 伐採前から土壌中にあった陽樹の種子が、伐採で明るくなったことをきっかけに発芽した
④ 誤 伐採された樹木が前年に作った種子なら、その樹木は極相林の構成種であり、実験1で芽生えた樹種(極相林の構成種ではない)と大部分が共通することの説明がつかない

よって ③

土壌中に長く生き続ける種子の集まりを埋土種子(シードバンク)といい、二次遷移が一次遷移より速く進む理由の一つになっています。伐採や山火事で林冠が開くと光が林床に届き、これらの陽樹の種子が一斉に発芽します。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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