2021年度 大学入学共通テスト 本試験 化学 解答・解説

2021年度 大学入学共通テスト 本試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2021年度(令和3年度)大学入学共通テスト 本試験「化学」の全問解説です。第1問から第5問まで各20点、合計100点で、すべて必答(選択問題はありません)。解答番号は1〜29です。旧センター試験と比べて図やグラフ、実験データを自分で処理して答えを出す問題の比重が高くなっているのが特徴で、第5問のグルコースの平衡はその代表例です。各設問の見出しをタップすると、その問題の考え方と計算過程が開きます。まちがえた設問だけを選んで確認してください。

第1問 物質の状態と構造(イオン・結晶格子・分子間力・蒸気圧)

小問4題で20点。金属イオンの性質、体心立方格子からアボガドロ定数を導く式、分子間力の正誤判定、そして蒸気圧曲線の読み取りと状態変化の追跡です。問4は図の読み取りとボイルの法則を組み合わせる、共通テストらしい思考問題になっています。

問1:正解 ①(配点4)

<問題要旨>
記述ア「2価の陽イオンになりやすい」とイ「硫酸塩が水に溶けやすい」の両方に当てはまる金属元素を、Mg・Al・K・Ba から選びます。

<考え方>
アとイを別々に判定し、両方を満たすものを残します。硫酸塩の水への溶けやすさは、アルカリ土類金属では原子番号が大きいほど溶けにくくなることを覚えておきます。

ア 2価の陽イオンになりやすいか
 ① Mg → Mg²⁺(2価)○
 ② Al → Al³⁺(3価)×
 ③ K  → K⁺ (1価)×
 ④ Ba → Ba²⁺(2価)○

 → アを満たすのは Mg と Ba

イ 硫酸塩が水に溶けやすいか
 MgSO₄ … 水に溶けやすい ○
 BaSO₄ … 水に溶けにくい(白色沈殿)×

 ※ 2族の硫酸塩は
   MgSO₄ 可溶
   CaSO₄・SrSO₄・BaSO₄ 難溶

アとイの両方を満たすのは Mg

よって ①
問2:正解 ⑤(配点4)

<問題要旨>
単位格子の一辺が L(cm)、モル質量 M(g/mol) の原子からなる体心立方格子の結晶があり、密度が d(g/cm³) のとき、アボガドロ定数 N_A を表す式を選びます。

<考え方>
「単位格子1個の質量=密度×体積」という等式を立てます。単位格子に含まれる原子の数を数え、その質量を M と N_A で表せば式が完成します。

① 体心立方格子の原子数
 頂点 8個 × 1/8 = 1
 中心 1個 × 1  = 1
     合計 2 個

② 単位格子1個の質量(原子から)
 原子1個の質量 = M / N_A (g)
 単位格子の質量 = 2M / N_A (g)

③ 単位格子1個の質量(密度から)
 体積 = L³ (cm³)
 質量 = d × L³ (g)

④ ②=③ とおいて N_A を求める
 2M / N_A = L³ d
 N_A = 2M / (L³ d)

よって ⑤
問3:正解 ②(配点4)

<問題要旨>
溶媒への溶解や分子間力についての記述Ⅰ〜Ⅲの正誤の組合せを選びます。

<考え方>
「似たものどうしがよく溶ける」という原則と、分子間力の大きさと沸点の関係を確認します。Ⅲは向きが逆になっていないかに注意します。

Ⅰ ヘキサンが水にほとんど溶けないのは
  ヘキサン分子の極性が小さいため

 ヘキサン C₆H₁₄ は無極性分子
 水 H₂O は極性分子
 極性の似た者どうしがよく溶ける
  → 無極性と極性は混ざりにくい
  Ⅰ は 正

Ⅱ ナフタレンが溶けたヘキサン溶液では
  ナフタレン分子とヘキサン分子の間に
  分子間力がはたらいている

 溶けている=分子どうしが
 引き合って一様に分散している状態
  → 分子間力ははたらいている
  Ⅱ は 正

Ⅲ 分子間力が小さいほど沸点は高くなる

 分子間力が大きいほど引き離しにくい
  → 沸点は高くなる(逆)
  Ⅲ は 誤

(正, 正, 誤)

よって ②
問4 a:正解 ④ ②(解答番号4・5/配点4)

<問題要旨>
ピストン付き容器に 90℃・1.0×10⁵ Pa の C₂H₅OH の気体が入っています。90℃ のまま体積を5倍にし、その状態から圧力一定で温度を下げたとき、凝縮が始まる温度を2桁の数値で答えます(図1の蒸気圧曲線を使用)。

<考え方>
2段階に分けます。まず等温変化はボイルの法則で圧力を求めます。次に「圧力一定で冷却したとき、その圧力と飽和蒸気圧が等しくなる温度で凝縮が始まる」ことを使い、図1から温度を読み取ります。

【第1段階】90℃ のまま体積5倍(等温)

 ボイルの法則 P₁V₁ = P₂V₂
 1.0×10⁵ × V = P₂ × 5V
 P₂ = 1.0×10⁵ / 5
   = 0.20×10⁵ Pa

【第2段階】圧力 0.20×10⁵ Pa のまま冷却

 気体の圧力は 0.20×10⁵ Pa で一定
 温度を下げると飽和蒸気圧が下がる
 飽和蒸気圧 = 0.20×10⁵ Pa になった
 瞬間に凝縮が始まる

【図1の読み取り】
 縦軸 0.2(×10⁵ Pa)の高さで
 蒸気圧曲線と交わる温度を読む
  → 約 42 ℃

 4 の欄 → 4 → ④
 5 の欄 → 2 → ②

よって 42 ℃(④ ②)
問4 b:正解 ①(解答番号6/配点4)

<問題要旨>
容積一定 1.0 L の密閉容器に 0.024 mol の液体の C₂H₅OH だけを入れ、0℃ から徐々に加熱します。容器内の気体の C₂H₅OH の温度と圧力が、図2の点A〜Gのどこを通って変化するかを選びます。

<考え方>
液体が残っている間は「圧力=その温度の飽和蒸気圧」なので蒸気圧曲線上を進みます。液体がすべて蒸発したあとは、体積・物質量が一定の理想気体なので P = nRT/V の直線に乗ります。この2本の交点が切り替え点です。

【液体が残っている間】
 気液平衡なので
 圧力 = その温度の飽和蒸気圧
  → 実線(蒸気圧曲線)上を進む
  0℃ の点Aから出発

【すべて蒸発したあと】
 0.024 mol が 1.0 L に閉じこめられた
 理想気体になる

 P = nRT / V
  = 0.024 × 8.3×10³ × T / 1.0
  = 1.99×10² × T (Pa)

 T = 273 K(0℃)
  P = 1.99×10²×273 ≒ 0.54×10⁵ Pa → 点F
 T = 373 K(100℃)
  P = 1.99×10²×373 ≒ 0.74×10⁵ Pa → 点G

 → 直線 F–G が全部気体のときの直線

【切り替わる温度】
 蒸気圧曲線と直線F–Gの交点
  → 点C(約68℃, 0.68×10⁵ Pa)
  ここで最後の液体が蒸発しきる

【経路】
 A →(蒸気圧曲線上)→ B → C
  → C →(直線上)→ G

よって A → B → C → G = ①

第2問 光と化学反応・電池・水の状態変化(エネルギー計算)

小問3題で20点。光がかかわる反応の正誤、空気亜鉛電池の電気量計算、そして氷の昇華熱と水素結合を結びつける問題です。問3 b・c はエネルギー図を読みながら経路をたどる問題で、化学基礎の熱化学の考え方がそのまま使えます。

問1:正解 ③(配点4)

<問題要旨>
光が関わる化学反応や現象に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。

<考え方>
4つとも教科書で扱う内容です。反応が熱を出すのか吸収するのかを問う③に注目します。植物が光を必要とする理由を考えれば向きが決まります。

① 塩素と水素の混合気体に紫外線
  → H₂ + Cl₂ → 2HCl が爆発的に進行
  (光によるラジカル連鎖反応)  正しい

② オゾン層は紫外線を吸収して
  地上の生物を保護している    正しい

③ 光合成
  6CO₂ + 6H₂O
   → C₆H₁₂O₆ + 6O₂

  この反応は光エネルギーを
  吸収して進む「吸熱反応」
  (だから光が必要)
  「発熱反応である」は 誤り ←これ

④ 酸化チタン(Ⅳ) に紫外線
  → 光触媒として有機物を分解
  (セルフクリーニング材料)  正しい

よって ③
問2:正解 ③(配点4)

<問題要旨>
空気亜鉛電池を一定電流で 7720 秒間放電したところ、電池の質量が 16.0 mg 増加しました。流れた電流は何 mA かを求めます(ファラデー定数 9.65×10⁴ C/mol)。

<考え方>
「質量が増える」原因は、正極で空気中の O₂ を取り込むことです。増加した質量=取り込んだ O₂ の質量と考え、O₂ の物質量から電子の物質量、電気量、電流の順に進みます。

【増えた質量の正体】
 正極 O₂ + 2H₂O + 4e⁻ → 4OH⁻
 負極 Zn + 2OH⁻ → ZnO + H₂O + 2e⁻

 全体 2Zn + O₂ → 2ZnO
 → 外から入ってくるのは O₂ だけ
 質量増加 16.0 mg = O₂ の質量

【O₂ の物質量】
 O₂ = 32 g/mol
 n(O₂) = 16.0×10⁻³ / 32
     = 5.00×10⁻⁴ mol

【電子の物質量】
 O₂ 1 mol あたり e⁻ 4 mol
 n(e⁻) = 4 × 5.00×10⁻⁴
     = 2.00×10⁻³ mol

【電気量】
 Q = 2.00×10⁻³ × 9.65×10⁴
  = 193 C

【電流】
 I = Q / t = 193 / 7720
  = 0.0250 A = 25.0 mA

よって ③
問3 a:正解 ①(解答番号9/配点4)

<問題要旨>
水の三重点よりも低温かつ低圧に保たれている氷を、水蒸気に昇華させる方法として適当なものをア〜エからすべて選びます。

<考え方>
三重点より低い圧力の領域では、固体と気体を分ける昇華圧曲線しかありません。状態図の上で「今いる点」からどちらに動けば曲線を越えて気体側に入るかを考えます。

【状態図のイメージ】
 三重点より低圧の領域では
  左(低温)側が 固体
  右(高温)側が 気体
 境界が昇華圧曲線(右上がり)

 現在地:曲線より左上(固体)

ア 温度一定で減圧する
  → 真下に動く
  → 昇華圧曲線を下に横切る
  → 気体になる ○

イ 温度一定で加圧する
  → 真上に動く
  → ますます固体側 ×

ウ 圧力一定で加熱する
  → 右に動く
  → 昇華圧曲線を右に横切る
  → 気体になる ○

エ 圧力一定で冷却する
  → 左に動く
  → ますます固体側 ×

適当なのは ア と ウ

よって ①
問3 b:正解 ②(解答番号10/配点4)

<問題要旨>
氷の結晶中では1個の水分子が4個の水分子と水素結合しており、水素結合1本には2個の水分子が関与しています。0℃ における氷の昇華熱を Q(kJ/mol) とするとき、水素結合 1 mol を切るのに必要なエネルギーを Q で表します。

<考え方>
水分子 1 mol あたり水素結合が何 mol あるかを数えるのがポイントです。「1分子から4本出ているが、1本は2分子で共有している」ので単純に4倍にはなりません。

【水分子 1 mol あたりの水素結合】
 水分子1個から出る水素結合 … 4本
 しかし水素結合1本には
 水分子が2個関与している
  → 1本を2個で分け合う

 水分子1個あたりの水素結合
  = 4 × (1/2) = 2 本

 水分子 1 mol あたり
  → 水素結合 2 mol

【昇華熱との関係】
 昇華熱 Q は
 水分子 1 mol 中のすべての
 水素結合を切るエネルギー

 Q (kJ) で 2 mol の水素結合を切る

 水素結合 1 mol あたり
  = Q / 2 (kJ/mol)

よって ②
問3 c:正解 ④(解答番号11/配点4)

<問題要旨>
図2のエネルギー関係(0℃ の融解熱 6 kJ/mol、25℃ の蒸発熱 44 kJ/mol)から、0℃ における氷の昇華熱 Q を求めます。液体・気体を 1 K 上げるのに必要なエネルギーはそれぞれ 0.080 kJ、0.040 kJ です。

<考え方>
昇華は「固体(0℃) → 気体(0℃)」の変化です。図に直接その矢印はないので、与えられた矢印だけを使って遠回りの経路をつくり、途中の温度変化分も足し引きします。

【求めたい変化】
 H₂O(固, 0℃) → H₂O(気, 0℃) : Q

【使える経路】
 ① H₂O(固,0℃) → H₂O(液,0℃)
   融解熱      +6 kJ

 ② H₂O(液,0℃) → H₂O(液,25℃)
   0.080 × 25 = +2.0 kJ

 ③ H₂O(液,25℃) → H₂O(気,25℃)
   蒸発熱      +44 kJ

 ④ H₂O(気,25℃) → H₂O(気,0℃)
   冷却なので放出
   0.040 × 25 = −1.0 kJ

【合計】
 Q = 6 + 2.0 + 44 − 1.0
  = 51 kJ/mol

よって ④

第3問 無機物質と錯イオン(溶融塩電解・金属の推定・光化学反応の定量)

小問3題で20点。問2は4種類の金属を手がかりから絞り込むパズル、問3はシュウ酸鉄(Ⅲ)錯イオンの光分解を沈殿の質量から追跡する実験問題です。問3 c は物質量の差から反応した錯イオンを逆算する、本試験でも差がついた計算になっています。

問1:正解 ③(配点4)

<問題要旨>
塩化ナトリウムの溶融塩電解(融解塩電解)に関連する記述のうち、誤りを含むものを選びます。

<考え方>
両極の反応式を書き、電子の数を合わせて量的関係を確認します。単体のナトリウムが水溶液の電気分解では得られない理由も押さえておきます。

【溶融塩電解の反応】
 陰極 Na⁺ + e⁻ → Na
 陽極 2Cl⁻ → Cl₂ + 2e⁻

① 陰極に鉄、陽極に黒鉛
  実際の工業的製法どおり  正しい

② Na の単体が陰極で生成し
  Cl₂ が陽極で発生      正しい

③ Na 1 mol 生成するとき
  Cl₂ が 1 mol 発生する

  Na 1 mol → e⁻ 1 mol
  e⁻ 1 mol → Cl₂ 1/2 mol

  正しくは Cl₂ 0.5 mol
  → 誤り ←これ

④ NaCl 水溶液の電気分解では
  陰極で 2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
  が優先し、Na の単体は得られない
                正しい

よって ③
問2:正解 ア ③・イ ④(解答番号13・14/配点4)

<問題要旨>
元素ア〜エはそれぞれ Ag, Pb, Sn, Zn のいずれかで、記述Ⅰ〜Ⅲの特徴をもちます。アとイに当てはまるものを選びます。

<考え方>
Ⅰでまず2グループに分け、Ⅱで具体的に1つを確定し、Ⅲの「同族」で残りを決めます。イオン化傾向と PbCl₂ の性質が鍵です。

【Ⅰ 希硫酸に溶けるか】
 Ag … イオン化傾向が H₂ より小 → 溶けない
 Pb … PbSO₄ の被膜ができ → 溶けにくい
 Sn … 溶ける
 Zn … 溶ける

 {ア, イ} = {Sn, Zn}
 {ウ, エ} = {Ag, Pb}

【Ⅱ ウの2価の塩化物】
 冷水にほとんど溶けず熱水に溶ける
  → PbCl₂ の性質
  ウ = Pb
  よって エ = Ag

【Ⅲ アとウのみが同族元素】
 ウ = Pb は 14族
  → ア も 14族
  Sn は 14族、Zn は 12族
  ア = Sn
  よって イ = Zn

ア = Sn → ③
イ = Zn → ④
問3 a:正解 ③(解答番号15/配点4)

<問題要旨>
実験Ⅱで得られたろ液に Fe²⁺ が含まれていることを確かめる操作として、最も適当なものを選びます。

<考え方>
Fe²⁺ と Fe³⁺ の検出試薬は取り違えやすいところです。どちらがどちらの色を出すかを整理して選びます。

【鉄イオンの検出】
 Fe²⁺ + K₃[Fe(CN)₆] 水溶液
  → 濃青色の沈殿

 Fe³⁺ + K₄[Fe(CN)₆] 水溶液
  → 濃青色の沈殿

 Fe³⁺ + KSCN 水溶液
  → 血赤色の溶液

【選択肢の検討】
① H₂S 水溶液
  FeS は酸性では沈殿しない
  Fe²⁺ に特有ではない ×

② サリチル酸水溶液
  Fe³⁺ の呈色に使う ×

③ K₃[Fe(CN)₆] 水溶液
  Fe²⁺ で濃青色沈殿 ○

④ KSCN 水溶液
  Fe³⁺ の検出 ×

よって ③
問3 b:正解 ①(解答番号16/配点4)

<問題要旨>
1.0 mol の [Fe(C₂O₄)₃]³⁻ が式(1)にしたがって完全に反応するとき、酸化されて CO₂ になる C₂O₄²⁻ の物質量を求めます。

<考え方>
反応式(1)の係数を見比べ、左辺と右辺で C₂O₄²⁻ がどこへ行ったかを数えます。CO₂ になったのは「錯イオンからも遊離分としても残らなかった分」です。

【反応式(1)】
 2[Fe(C₂O₄)₃]³⁻
  → 2[Fe(C₂O₄)₂]²⁻ + C₂O₄²⁻ + 2CO₂

【C₂O₄ の行方(左辺2 mol 分)】
 左辺 3 × 2 = 6 mol

 右辺
  錯イオン中 2 × 2 = 4 mol
  遊離した分     1 mol
  CO₂ になった分  1 mol
   (2CO₂ = C₂O₄ 1個分)
      合計    6 mol ✓

【1.0 mol あたりに直す】
 錯イオン 2 mol で C₂O₄ 1 mol が酸化
 錯イオン 1.0 mol なら
  1.0 × (1/2) = 0.5 mol

よって ①
問3 c:正解 ④(解答番号17/配点4)

<問題要旨>
実験Ⅰ(0.0109 mol の錯イオンに光照射)と実験Ⅱ(CaC₂O₄·H₂O が 4.38 g 得られた)から、[Fe(C₂O₄)₃]³⁻ の何 % が [Fe(C₂O₄)₂]²⁻ に変化したかを求めます。

<考え方>
沈殿として回収されたのは「CO₂ にならずに残った C₂O₄²⁻ の全量」です。はじめの C₂O₄²⁻ との差が CO₂ になった分で、問3 b の比(錯イオン2 : C₂O₄ 1)で錯イオンの量に直します。

【はじめの C₂O₄²⁻】
 錯イオン 0.0109 mol × 3
  = 0.0327 mol

【残った C₂O₄²⁻(沈殿から)】
 CaC₂O₄·H₂O 式量 146
 n = 4.38 / 146 = 0.0300 mol
  → C₂O₄²⁻ も 0.0300 mol

【CO₂ になった C₂O₄²⁻】
 0.0327 − 0.0300 = 0.0027 mol

【反応した錯イオン】
 錯イオン 2 mol につき
 C₂O₄²⁻ 1 mol が CO₂ になる

 0.0027 × 2 = 0.0054 mol

【割合】
 0.0054 / 0.0109 × 100
  = 49.5 ≒ 50 %

よって ④

第4問 有機化合物と高分子(芳香族・油脂・アルコール・ポリペプチド)

小問5題で20点。芳香族の反応、油脂の各種数値、アルコールの酸化と脱水、高分子の基礎知識、そしてらせん構造の長さ計算です。問3 b は脱水でできるアルケンを幾何異性体まで含めて数え上げる問題で、書き出す作業が必要になります。

問1:正解 ①(配点4)

<問題要旨>
芳香族炭化水素の反応に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。

<考え方>
触媒と条件から生成物を決める、基本の反応を並べた問題です。ナフタレンの酸化生成物を正しく覚えているかがポイントになります。

① ナフタレン + O₂
  高温・V₂O₅ 触媒

  生成するのは 無水フタル酸
  o-キシレンではない
  → 誤り ←これ

  ※ o-キシレンを V₂O₅ 触媒で
   酸化しても無水フタル酸になる
   (方向が逆になっている)

② ベンゼン + Cl₂
  鉄粉または FeCl₃ 触媒
  → クロロベンゼン(置換)  正しい

③ ベンゼン + 濃硫酸(高温)
  → ベンゼンスルホン酸
   (スルホン化)      正しい

④ ベンゼン + H₂
  高温・高圧、Ni 触媒
  → シクロヘキサン(付加)  正しい

よって ①
問2:正解 ③(配点3)

<問題要旨>
油脂に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。

<考え方>
けん化価・ヨウ素価の定義と、硬化油のつくり方を確認します。硬化油は「水素を付加する=還元」であることが決め手です。

① けん化価
  油脂1 g をけん化するのに必要な
  KOH の mg 数

  分子量が小さい=1 g 中の物質量が多い
  → 必要な KOH も多い
  → けん化価が大きいほど平均分子量は小さい
                正しい

② ヨウ素価
  油脂100 g に付加するヨウ素の g 数

  C=C が多い(不飽和度が高い)ほど大
  乾性油は空気中の O₂ で固化しやすい
  → 二重結合が多い → ヨウ素価は大きい
                正しい

③ 硬化油
  液体の油脂の C=C に
  H₂ を付加(=還元)してつくる

  「酸化してつくられる」は 誤り ←これ

④ 油脂は高級脂肪酸とグリセリン
  (1,2,3-プロパントリオール)の
  エステル          正しい

よって ③
問3 a:正解 ③(解答番号20/配点3)

<問題要旨>
アルコール ア〜エ に適切な酸化剤を作用させると、それぞれからアルデヒドまたはケトンの一方が生成します。ケトンが生成するものはいくつあるかを答えます。

<考え方>
OH がついた炭素に結合している炭化水素基の数で、第一級・第二級・第三級を判定します。第一級ならアルデヒド、第二級ならケトンです。

【判定の原則】
 第一級アルコール → アルデヒド
 第二級アルコール → ケトン

ア CH₃-CH(CH₃)-CH₂-CH₂-OH
  OH の炭素に H が2個
  → 第一級 → アルデヒド

イ CH₃-CH₂-CH₂-CH(OH)-CH₃
  OH の炭素の両側に炭素
  → 第二級 → ケトン ○

ウ CH₃-CH₂-CH(OH)-CH₂-CH₃
  → 第二級 → ケトン ○

エ CH₃-CH(CH₃)-CH(OH)-CH₃
  → 第二級 → ケトン ○

ケトンが生成するのは イ・ウ・エ の 3 つ

よって ③
問3 b:正解 ②(解答番号21/配点3)

<問題要旨>
ア〜エ に酸触媒を加えて加熱し、OH 基のついた炭素とその隣の炭素から OH と H がとれてアルケンが生成します。生成するアルケンの異性体の数が最も多いアルコールを選びます(シス−トランス異性体も区別)。

<考え方>
OH がついた炭素の「隣」がいくつあるかを数え、それぞれについて生成するアルケンを書き出します。二重結合の両端にそれぞれ異なる基が2つずつ付いていれば、シス−トランス異性体を分けて数えます。

ア CH₃-CH(CH₃)-CH₂-CH₂-OH
  隣は1か所のみ
  → 3-メチル-1-ブテン
     1 種類

イ CH₃-CH₂-CH₂-CH(OH)-CH₃
  隣は2か所(CH₃側と CH₂側)
  ・CH₃側 → 1-ペンテン    1種
  ・CH₂側 → 2-ペンテン
     シス形とトランス形   2種
     合計 3 種類 ←最多

ウ CH₃-CH₂-CH(OH)-CH₂-CH₃
  左右対称なのでどちらでも同じ
  → 2-ペンテン(シス・トランス)
     2 種類

エ CH₃-CH(CH₃)-CH(OH)-CH₃
  ・CH₃側 → 3-メチル-1-ブテン 1種
  ・CH側 → 2-メチル-2-ブテン
     二重結合の一方に CH₃ が2個
     → 幾何異性体なし     1種
     合計 2 種類

最も多いのは イ

よって ②
問4:正解 ①(解答番号22/配点3)

<問題要旨>
高分子化合物に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。

<考え方>
ナイロン6とナイロン66の繰り返し単位の違いがポイントです。ナイロン6は ε-カプロラクタムの開環重合でできます。

① ナイロン6
  繰り返し単位
  -[NH-(CH₂)₅-CO]-

  アミド結合は 1 つ
  「二つもつ」は 誤り ←これ

  ※ ナイロン66 は
   -[NH(CH₂)₆NH-CO(CH₂)₄CO]-
   でアミド結合が2つ

② ポリ酢酸ビニルを加水分解
  → ポリビニルアルコール   正しい

③ 尿素樹脂は熱硬化性樹脂    正しい
  (フェノール樹脂・メラミン樹脂も同様)

④ 生ゴムに数%の硫黄を加えて加熱
  → 加硫、弾性が向上      正しい

⑤ ポリエチレンテレフタラート
  繊維(ポリエステル)にも
  樹脂(PETボトル)にも使う  正しい

よって ①
問5:正解 ②(解答番号23/配点4)

<問題要旨>
分子量 2.56×10⁴ のポリペプチド鎖 A は、分子量 89 のアミノ酸 B のみが脱水縮合したものです。らせんのひと巻きがアミノ酸 3.6 個分、ひと巻きの間隔が 0.54 nm のとき、らせんの全長 L を求めます。

<考え方>
縮合重合では1個つながるごとに水が1分子とれるので、鎖の中でのアミノ酸1単位の分子量は 89 ではなく 89−18 になります。ここを間違えないことが最大のポイントです。

【アミノ酸1単位の分子量】
 アミノ酸 B の分子量 89
 脱水縮合で H₂O(18)がとれる

 単位の分子量 = 89 − 18 = 71

【アミノ酸の個数】
 n = 2.56×10⁴ / 71
  = 360.5… ≒ 360 個

【らせんの巻き数】
 ひと巻き = 3.6 個分
 巻き数 = 360 / 3.6 = 100 巻き

【全長】
 L = 100 × 0.54
  = 54 nm

よって ②

第5問 グルコース(変旋光の平衡・グリコシドの性質・酸化分解)

小問3題で20点。グルコースの α 形と β 形が平衡に達するまでを表から追う探究型の大問です。問1 b は表の数値を補間して時刻を読み取り、問1 c は平衡の比が変わらないことを使って新しい平衡を求めます。問2は「還元性を示さない」という一言から結論が決まります。

問1 a:正解 ④(解答番号24/配点4)

<問題要旨>
実験Ⅰでは α-グルコース 0.100 mol を水 1.0 L に溶かし、表1のように α-グルコースの物質量が減少して10時間後に平衡に達しました。平衡時の β-グルコースの物質量を求めます。

<考え方>
鎖状構造の割合は無視できるので、溶液中は α 形と β 形だけです。全体の物質量は変わらないので、単純な引き算で求まります。

【前提】
 鎖状構造は無視できる
 → 溶液中は α形 と β形 だけ

 全体の物質量は変わらない
 α + β = 0.100 mol(常に一定)

【平衡時】
 表1 の 10.0 h(および 7.0 h)で
 α-グルコース = 0.032 mol

 β = 0.100 − 0.032
  = 0.068 mol

よって ④
問1 b:正解 ②(解答番号25/配点3)

<問題要旨>
β-グルコースの物質量が、平衡に達したときの物質量の 50 % であったのは、α-グルコースを加えた何時間後かを求めます。

<考え方>
まず「β が平衡値の50%」を α の値に翻訳します。そのうえで表1のどの区間に入るかを見て、方眼紙にプロットするか比例配分で時刻を読み取ります。

【βの目標値】
 平衡時の β = 0.068 mol
 その50% → β = 0.034 mol

【αに直す】
 α = 0.100 − 0.034
  = 0.066 mol

【表1から時刻を読む】
 時間(h) 0  0.5  1.5  3.0 …
 α(mol) 0.100 0.079 0.055 0.040 …

 α = 0.066 は
 0.079(0.5 h)と 0.055(1.5 h)の間

【比例配分の目安】
 0.079 → 0.055 で 0.024 減る間に 1.0 h
 0.079 → 0.066 は 0.013 の減少

 0.5 + 1.0 × (0.013/0.024)
  = 0.5 + 0.54
  ≒ 1.0 h

(実際は方眼紙になめらかな曲線を
 かいて読み取るとおよそ1.0時間)

よって ②
問1 c:正解 ④(解答番号26/配点3)

<問題要旨>
実験Ⅱでは溶液A(平衡状態)にさらに β-グルコースを 0.100 mol 加えて溶かし、20℃ で10時間放置して新たな平衡に達しました。このときの β-グルコースの物質量を求めます。

<考え方>
同じ温度なら、平衡に達したときの α : β の比は変わりません。全体の物質量が2倍になっただけなので、比をそのまま当てはめます。

【もとの平衡(溶液A)】
 α = 0.032 mol
 β = 0.068 mol
 α : β = 0.032 : 0.068

 平衡定数
 K = β/α = 0.068/0.032 = 2.125

【β を 0.100 mol 追加】
 全体 = 0.100 + 0.100 = 0.200 mol

【新しい平衡】
 温度が同じなので K は変わらない
 → α : β の比も同じ

 β = 0.200 × (0.068 / 0.100)
  = 0.200 × 0.68
  = 0.136 mol

(このとき α = 0.064 mol
  β/α = 0.136/0.064 = 2.125 ✓)

よって ④
問2:正解 ①(解答番号27/配点3)

<問題要旨>
グルコースとメタノールが1分子ずつ反応して水1分子がとれた化合物 X(α形とβ形の混合物として得られる)の水溶液は、還元性を示しませんでした。分離した α 形の X 0.1 mol を水に溶かして 20℃ に保ったときの、α 形の物質量の時間変化を表すグラフを選びます。

<考え方>
グルコースが α ⇄ β と変わるのは、環がいったん開いて鎖状構造(アルデヒド基)を経由するからです。還元性がないという事実から、環が開けるかどうかを判断します。

【還元性がないことの意味】
 グルコースが変旋光を示すのは
 環が開いて鎖状構造
 (-CHO をもつ)になれるため

 X は 1位の OH が
 -O-CH₃(メチルグリコシド)
 になっている

 → 環が開けない
 → 鎖状構造(-CHO)が生じない
 → 還元性を示さない(問題文と一致)

【α 形の変化】
 鎖状構造を経由できない
 → α形 ⇄ β形 の相互変換が起こらない
 → α形 の物質量は 0.1 mol のまま

【グラフ】
 ① 0.1 のまま水平 ○
 ② 直線的に0まで減少 ×
 ③ 0.05付近まで減って一定 ×
  (これはグルコース本体の変化)
 ④ 0 まで減少 ×

よって ①
問3 a:正解 ④(解答番号28/配点4)

<問題要旨>
グルコースにある酸化剤を作用させると分解され、水素原子と酸素原子を含み炭素原子数が1の有機化合物 Y・Z が生成します。Y はアンモニア性硝酸銀水溶液を還元して銀を析出させ、Y は還元剤としてはたらくと Z になります。Y・Z の組合せを選びます。

<考え方>
炭素数1で H と O を含む化合物は CH₃OH・HCHO・HCOOH の3つです。銀鏡反応を示すこと、そして酸化されると何になるかで順序が決まります。

【候補】
 CH₃OH(メタノール)
 HCHO (ホルムアルデヒド)
 HCOOH(ギ酸)

【Y の条件】
 アンモニア性硝酸銀を還元
 → 銀鏡反応を示す
 → -CHO をもつ

 HCHO … -CHO あり ○
 HCOOH … -CHO 構造をもち
     銀鏡反応を示す ○
 CH₃OH … 示さない ×

【Y が酸化されると Z】
 HCHO → 酸化 → HCOOH
 HCOOH → 酸化 → CO₂ と H₂O
     (炭素数1の有機物ではない)

 → Y = HCHO, Z = HCOOH

よって ④
問3 b:正解 ①(解答番号29/配点3)

<問題要旨>
ある量のグルコースがすべて反応して、2.0 mol の Y と 10.0 mol の Z が生成したとすると、反応したグルコースの物質量を求めます。

<考え方>
グルコース以外に炭素源はなく、生成物も Y・Z だけです。したがって炭素原子の数が保存されます。炭素の数だけに注目すれば一発で決まります。

【炭素原子の保存】
 グルコース C₆H₁₂O₆ … C が 6 個
 Y = HCHO   … C が 1 個
 Z = HCOOH  … C が 1 個

 グルコース n(mol) が
 すべて Y・Z になったとすると

 6n = 2.0 × 1 + 10.0 × 1
 6n = 12.0
 n = 2.0 mol

【水素で検算】
 左 グルコース 2.0 mol → H 24 mol
 右 HCHO 2.0×2 = 4
   HCOOH 10.0×2 = 20
      合計 24 mol ✓

よって ①

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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