2025年度 大学入学共通テスト 追試験 化学 解答・解説

2025年度 大学入学共通テスト 追試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2025年度 大学入学共通テスト 追試験・化学の解説です。試験時間は60分、満点は100点、このページの項目数は全26項目です。2025年度は移行措置の年度で、新教育課程履修者は第1問〜第5問の5問(各20点・合計100点)を解答し、旧教育課程履修者等は第1問〜第4問を必答としたうえで第5問・第6問のいずれか1問を選択して解答します(こちらも合計100点)。大問ごとの配点は第1問〜第6問のすべてが20点です。当サイトでは選択問題の第5問・第6問を両方とも解説しているため、このページの表示上の合計は120点になります。

第1問〜第4問が必答の共通部分です。第1問は原子・イオンの大きさ、イオン結晶の単位格子、飽和蒸気圧のもとでの圧力と体積、水溶液の濃度と凝固点降下という理論化学の基本を並べた小問集合。第2問は無機物質の性質の正誤判定に続いて、溶解度積を使った硫酸塩の沈殿の判定、アルミニウムの工業的製造(溶融塩電解と熱分解)を扱います。第3問は有機化合物と高分子で、反応の種類と分子の平面性、環状化合物の開環と不斉炭素原子、エステルの構造決定、脂肪酸の融点と油脂の脂肪酸組成のグラフ読み取りが出ました。第4問は美術・工芸を題材にした横断的な大問で、漆喰(石灰)の化学と飽和水溶液の pH、日本画の銅の顔料の熱分解、藍染めに使うインジゴの酸化還元、アゾ染料メチルオレンジの合成経路が並びます。

第5問と第6問は同じ4テーマ(アルコール発酵の熱、炭酸塩の二段滴定、H₂ + I₂ ⇄ 2HI の平衡と反応速度、イオン交換膜法による海水の濃縮)を扱い、問2〜問4は設問・図・選択肢まで同一です。違いは問1だけで、第5問は新課程の「エンタルピー変化 ΔH」、第6問は旧課程の「熱化学方程式の反応熱 Q」で問うため、同じ発熱反応でありながら答えの符号が入れかわります(第5問問1は ΔH = −67 kJ で ③、第6問問1は Q = +67 kJ で ⑤)。どちらを選んでも有利・不利が出ないように内容が揃えられています。

つまずきやすいのはグラフ選択の設問です。解答番号3・12・24・29・30はいずれも形の似た候補が並び、雰囲気では選べません。2V₀ での圧力が 0.5P₀ か 0.75P₀ か、熱重量曲線の第1段が約72 mg か約52 mg か、滴下量が x = 0.10 g のとき約1.9 mL か、平衡値が 0.8 mol か約0.33 mol か。先に数値を出してから目盛りに当てる、という順番を崩さないことが得点の分かれ目です。計算に使う原子量は問題冊子の巻頭に示された H 1.0、C 12、N 14、O 16、Na 23、Al 27、S 32、Cl 35.5、Ca 40、Cu 64 を、ファラデー定数やモル凝固点降下・溶解度積は各設問で与えられた値を使います。

第1問(必答) 物質の構造と状態(原子・イオンの大きさ、単位格子、飽和蒸気圧、凝固点降下)

配点20点。原子とイオンの大きさ、イオン結晶の単位格子、飽和蒸気圧のもとでピストンを引き上げたときの圧力と体積、水溶液の濃度と凝固点降下という理論化学の4テーマを並べた小問集合です。問4は a・b・c の3枝に分かれ、冷却曲線の読み取りまで含みます。

問1:正解 ②(解答番号1/配点3)

<問題要旨>
18族を除く第3周期までの原子と、そのイオンの大きさについて、4つの記述から誤りを含むものを選ぶ設問です。周期表の縦(同族)と横(同一周期)で大きさがどう変わるか、陽イオン・陰イオンになると大きさがどう変わるかが問われています。

<考え方>
原子の大きさは「電子殻の数」と「有効核電荷」の2つで決まる、という原則に戻ります。同族では下へいくほど電子殻が増えて大きくなり、同一周期では右へいくほど陽子が増えて有効核電荷が大きくなるため、電子が強く引きつけられて小さくなります。イオンについては、陽イオンは最外殻の電子を失う(または電子間の反発が減る)ので小さくなり、陰イオンは電子が増えて反発が強まるので大きくなります。

① 正 同族では下へいくほど電子殻が増える(Li < Na < K、F < Cl < Br)。
② 誤 同一周期では原子番号が増えると有効核電荷が大きくなり、原子は小さくなる(Na > Mg > Al > … > Cl)。
③ 正 Na → Na⁺ では最外殻(M殻)の電子が失われ、半径は大きく縮む。
④ 正 Cl → Cl⁻ では電子が1個増えて電子間の反発が強まり、半径は大きくなる。
よって ②

「同一周期で原子番号とともに大きくなる」のは原子量や陽子の数で、大きさは逆向きに変わります。電子配置が同じイオン(O²⁻・F⁻・Na⁺・Mg²⁺)の大小比較と混同しないようにしましょう。

問2:正解 ②(解答番号2/配点3)

<問題要旨>
陽イオンAと陰イオンBからなる結晶の単位格子の図が与えられ、Aは面心立方格子と同じ配置をとり、Bは隣接する4個のAがつくる正四面体の重心に位置すると説明されています。Aの配位数、単位格子中のAの数とBの数の組合せを選びます。

<考え方>
単位格子に含まれる粒子の数は「頂点は 1/8、面の中心は 1/2、内部は 1」で数える、という原則に戻ります。「隣接する4個のAがつくる正四面体の重心」は面心立方格子の四面体孔で、単位格子の内部に8か所あり、図ではその8か所すべてにBが描かれています。Aの配位数は最も近いBの数で、蛍石型構造の陽イオンと同じ8です。

【Aの数】
頂点 1/8 × 8個 = 1
面心 1/2 × 6個 = 3
合計 1 + 3 = 4個
【Bの数】
単位格子の内部にある四面体孔 8か所 × 1 = 8個
【組成の確認】
A : B = 4 : 8 = 1 : 2 → 組成式 AB₂(電荷のつり合いからAは2価、Bは1価)
【Aの配位数】
Aのまわりで最も近いBの数 = 8個(蛍石型の陽イオンと同じ)
よって 配位数8・A4個・B8個 → ②

ここで数えるのは「Aのまわりで最も近いBの数」です。同種のA同士の最近接数(12)を答えないよう注意しましょう。逆にBの配位数は、正四面体の頂点にあるAの数で4です。

問3:正解 ②(解答番号3/配点4)

<問題要旨>
温度 T で飽和蒸気圧が P₀ の揮発性の液体だけを入れた密閉容器のピストンをゆっくり引き上げ、体積 V₀ でちょうどすべてが気体になり、さらに 4V₀ まで引き上げる操作です。この一連の操作での「気体の体積」と「気体の圧力」の関係を表すグラフを、5つの候補から選びます。

<考え方>
液体が残っている間は圧力は温度で決まる飽和蒸気圧のまま、液体が無くなった後はボイルの法則に従う、という2段構えで考えます。前半(0 から V₀ まで)は水平線 P = P₀、後半(V₀ から 4V₀ まで)は PV = P₀V₀ の反比例です。候補②と③はどちらも V₀ まで水平ですが、V₀ 以降が反比例か直線かで分かれます。2V₀ の目盛りでの圧力を見て、0.5P₀ なら反比例(②)、0.75P₀ なら直線(③)と切ります。

【0 < V ≦ V₀(液体と気体が共存)】
体積を増やしても蒸発した分だけ気体が補われるので、圧力は飽和蒸気圧のまま
 P = P₀(水平)
【V₀ < V ≦ 4V₀(すべて気体)】
ボイルの法則 PV = P₀V₀
 V = 2V₀ のとき P = P₀V₀ ÷ 2V₀ = 0.5P₀
 V = 3V₀ のとき P = P₀V₀ ÷ 3V₀ = 0.33P₀
 V = 4V₀ のとき P = P₀V₀ ÷ 4V₀ = 0.25P₀
【グラフの判定】
② V₀ まで P₀ 一定、2V₀ で 0.5P₀、3V₀ で約0.33P₀、4V₀ で 0.25P₀ → 反比例に一致
③ V₀ まで P₀ 一定だが、2V₀ で 0.75P₀、3V₀ で 0.5P₀ と等間隔に下がる直線 → 不適
① 4V₀ まで P₀ 一定。すべて気体になった後も圧力が下がらないので不適
④⑤ V₀ より手前から圧力が下がっており、共存領域で飽和蒸気圧一定にならないので不適
よって ②

②と③は形がよく似ています。どちらかで迷ったら 2V₀ の縦線と 0.5P₀ の横線の交点に点があるかを見てください。反比例なら体積が2倍で圧力は半分になります。

問4:正解 ④,③,①(解答番号4・5・6/配点10)

<問題要旨>
水溶液の濃度と凝固点降下を扱う3枝です。aはモル濃度と質量モル濃度についての記述から誤りを含むものを選ぶ設問で、「水溶液の体積は水の体積に比べて増加する」という条件が付いています。bは凝固点降下度が 0.052 K の希薄な NaCl 水溶液と、同じ質量モル濃度の Na₂SO₄ 水溶液の凝固点降下度を求めます。cは水 1.00 kg にショ糖 0.100 mol を溶かした水溶液の冷却曲線が与えられ、水溶液と氷が共存する領域で温度が t_A = −0.370 ℃ から t_B = −0.740 ℃ まで下がる間の氷の質量の増加量を求めます。

<考え方>
aは「モル濃度は体積基準だから温度で変わる、質量モル濃度は質量基準だから温度で変わらない」という定義の違いに戻ります。bは凝固点降下度が溶質粒子(電離後のイオン)の質量モル濃度に比例することから、粒子数の比だけで決まります。cは「氷が析出すると液相の水が減り、その分だけ溶液が濃くなって凝固点がさらに下がる」という共存領域の性質を使い、各温度での質量モル濃度から液相に残っている水の質量を逆算します。モル凝固点降下は設問で与えられた 1.85 K·kg/mol を使います。

【a 解答番号4】
① 正 モル濃度は体積基準。温度が変われば体積が変わるので濃度も変わる。
② 正 質量モル濃度は「溶質の物質量 ÷ 溶媒の質量」。どちらも温度によらないので変わらない。
③ 正 どちらも溶質 1 mol/水 1 kg(= 1000 g ÷ 18 g/mol ≒ 55.6 mol)なので、溶質と水の物質量の比は同じ。
④ 誤 1 mol/L のショ糖水溶液 1 L には、水は 1 L より少ない量しか含まれない(水溶液の体積は水の体積より増加するため)。よって水の物質量は 1 L の水より少ない。
よって ④

【b 解答番号5】
NaCl → Na⁺ + Cl⁻    粒子数 2倍
Na₂SO₄ → 2Na⁺ + SO₄²⁻ 粒子数 3倍
同じ質量モル濃度なので、凝固点降下度は粒子数に比例する
Δt = 0.052 K × (3/2) = 0.078 K
よって ③

【c 解答番号6】
Kf = 1.85 K·kg/mol(設問で与えられた値)、ショ糖 0.100 mol、はじめの水 1.00 kg
点A Δt = 0.370 K
 0.370 K = 1.85 K·kg/mol × m → m = 0.200 mol/kg
 液相の水 = 0.100 mol ÷ 0.200 mol/kg = 0.500 kg
 氷 = 1.000 kg − 0.500 kg = 0.500 kg
点B Δt = 0.740 K
 0.740 K = 1.85 K·kg/mol × m → m = 0.400 mol/kg
 液相の水 = 0.100 mol ÷ 0.400 mol/kg = 0.250 kg
 氷 = 1.000 kg − 0.250 kg = 0.750 kg
氷の増加量 = 0.750 kg − 0.500 kg = 0.250 kg
【検算】温度の下がり方が2倍(0.370 → 0.740)なので質量モル濃度も2倍、液相の水は半分(0.500 → 0.250 kg)。減った 0.250 kg がそのまま氷になっており、質量の収支が合う。
よって ①

cで「1.00 kg の水がすべて溶媒として残っている」と考えると質量モル濃度は 0.100 mol/kg、凝固点は −0.185 ℃ にしかなりません。点Aの −0.370 ℃ と合わないことから、点Aの時点ですでに半分が氷になっていると気づけます。

第2問(必答) 無機物質の性質とアルミニウムの工業的製造

配点20点。無機物質の性質を問う正誤判定2問、溶解度積と飽和濃度を使った硫酸塩の沈殿の判定、そしてアルミニウムの工業的製造という流れです。問4は a・b・c の3枝で、ボーキサイトの処理に関する正誤判定、溶融塩電解の量的計算、硫酸アルミニウムアンモニウムの熱重量グラフの選択を含みます。

問1:正解 ④(解答番号7/配点3)

<問題要旨>
常温・常圧における無機物質の性質について、気体の色とにおい、ハロゲン化水素の水溶液の酸の強さ、アルカリ金属と水の反応、ハロゲン化銀の水への溶けやすさという4つの記述から、誤りを含むものを選びます。

<考え方>
ハロゲン化銀は「AgF だけが水に溶けやすく、AgCl・AgBr・AgI は難溶」という例外を押さえているかが決め手です。残る3つは、気体の性質、ハロゲン化水素酸のうち HF だけが弱酸であること、アルカリ金属が水と反応して水素を発生することという基本事項で、いずれも正しい記述です。

① 正 H₂・CO₂・He はいずれも無色・無臭の気体。
② 正 HCl・HBr・HI の水溶液はいずれも強酸(ハロゲン化水素酸で弱酸なのは HF だけ)。
③ 正 2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂ のように、アルカリ金属は水と反応して水素を発生する。
④ 誤 AgF は水に溶けやすい。水に溶けにくいのは AgCl(白)・AgBr(淡黄)・AgI(黄)。
よって ④

ハロゲン化銀は「フッ化物だけが例外」と覚えます。あわせて、AgCl はアンモニア水に錯イオン [Ag(NH₃)₂]⁺ をつくって溶け、AgBr・AgI はチオ硫酸ナトリウム水溶液に溶けることも確認しておきましょう。

問2:正解 ③(解答番号8/配点3)

<問題要旨>
非金属元素の化合物について、過塩素酸中の塩素の酸化数、二酸化硫黄の酸化剤・還元剤としてのはたらき、硝酸と金の反応、十酸化四リンと水の反応、濃硫酸の脱水作用という5つの記述から、誤りを含むものを選びます。

<考え方>
金 Au は硝酸単独では溶けず、王水でなければ溶けない、という点が決め手です。残りは酸化数の計算、SO₂ の硫黄が中間の酸化数(+4)であること、P₄O₁₀ と水の反応、濃硫酸の脱水作用という定番事項を確認する記述で、いずれも正しいと判断できます。

① 正 HClO₄ で H は +1、O は −2。(+1)+ x + 4×(−2) = 0 → x = +7
② 正 SO₂ の S は +4 で中間の酸化数。H₂S に対しては酸化剤、Cl₂ や KMnO₄ に対しては還元剤としてはたらく。
③ 誤 金 Au は硝酸では溶けない。溶かすには王水(濃塩酸と濃硝酸を体積比 3 : 1 で混ぜたもの)が必要。
④ 正 P₄O₁₀ + 6H₂O → 4H₃PO₄
⑤ 正 濃硫酸の脱水作用でスクロースから H₂O が奪われ、黒く炭化する。
よって ③

「白金 Pt と金 Au は王水にのみ溶ける」「アルミニウム Al・鉄 Fe・ニッケル Ni は濃硝酸で不動態になって溶けない」の2点はセットで押さえておくと、金属と酸の反応の設問に強くなります。

問3:正解 ⑦(解答番号9/配点3)

<問題要旨>
試験管A・B・Cに Mg²⁺、Ca²⁺、Ba²⁺ の塩化物の 1.0×10⁻² mol/L 水溶液が 5.0 mL ずつ入っており、25 ℃ でそれぞれに 1.0×10⁻³ mol/L の硫酸 H₂SO₄ 水溶液を 0.50 mL 加えます。表には MgSO₄ 飽和水溶液のモル濃度 3.0 mol/L と、CaSO₄ の溶解度積 1.9×10⁻⁴ (mol/L)²、BaSO₄ の溶解度積 9.2×10⁻¹¹ (mol/L)² が与えられ、3本それぞれの沈殿の有無の組合せを選びます。

<考え方>
「混合後の濃度でイオン積をつくり、溶解度積と比べる」という手順に戻ります。まず 5.0 + 0.50 = 5.5 mL に薄まることを反映させて濃度を計算します。MgSO₄ については溶解度積ではなく飽和水溶液のモル濃度が与えられているので、生じうる MgSO₄ の濃度が 3.0 mol/L に達するかどうかで判断します。

【混合後の濃度】
全量 5.0 mL + 0.50 mL = 5.5 mL
[M²⁺] = 1.0×10⁻² mol/L × 5.0/5.5 = 9.1×10⁻³ mol/L
[SO₄²⁻] = 1.0×10⁻³ mol/L × 0.50/5.5 = 9.1×10⁻⁵ mol/L
イオン積 = 9.1×10⁻³ × 9.1×10⁻⁵ = 8.3×10⁻⁷ (mol/L)²
【試験管A(Mg²⁺)】
生じうる MgSO₄ の濃度は最大でも 9.1×10⁻⁵ mol/L < 3.0 mol/L(飽和水溶液の濃度)
 → 飽和にはるかに届かないので沈殿しない 無
【試験管B(Ca²⁺)】
8.3×10⁻⁷ < 1.9×10⁻⁴(CaSO₄ の溶解度積)
 → 沈殿しない 無
【試験管C(Ba²⁺)】
8.3×10⁻⁷ > 9.2×10⁻¹¹(BaSO₄ の溶解度積)
 → 沈殿する 有
よって A 無・B 無・C 有 → ⑦

BaSO₄ の溶解度積は CaSO₄ の 10⁻⁷ 倍ほど小さく、ごく薄い硫酸でも沈殿します。硫酸バリウムがX線撮影の造影剤として体内に入れられるのも、この極端な難溶性のためです。

問4:正解 ③,⑤,①(解答番号10・11・12/配点11)

<問題要旨>
アルミニウムの工業的製造を扱う3枝です。aはボーキサイトから Al₂O₃ を取り出して溶融塩電解するまでの4つの下線部に関する記述から、誤りを含むものを選びます。bは陰極で Al³⁺ + 3e⁻ → Al、陽極で C + O²⁻ → CO + 2e⁻ と C + 2O²⁻ → CO₂ + 4e⁻ が同時に起こる条件で、9650秒間に Al が 2.70×10⁵ g 生成し陽極の炭素が 1.08×10⁵ g 減少したときの電流と、CO₂ の物質量を求めます。cは Al(NH₄)(SO₄)₂(式量 237)100 mg を 400 ℃ から 1000 ℃ まで加熱したときの温度と質量の関係を表すグラフを、6つの候補から選びます。

<考え方>
aは Al(OH)₃ の熱分解の化学反応式 2Al(OH)₃ → Al₂O₃ + 3H₂O を自分で書けば、係数の誤りが見えます。bは「Al の物質量 → 電子の物質量 → 電気量 → 電流」と一方向に流し、炭素の物質量と電子の物質量の2式を連立して CO と CO₂ に分けます。cは式量から各段階の質量を先に計算し、第1段と最終段のプラトーの値でグラフを切ります。原子量は冊子巻頭の C 12、O 16、Al 27 を、ファラデー定数は設問で与えられた 9.65×10⁴ C/mol を使います。

【a 解答番号10】
① 正 CO₂ は水に溶けて H₂CO₃ となる酸性の気体。通じれば溶液の pH は下がる。
② 正 CO₂ が OH⁻ を消費するので [Al(OH)₄]⁻ ⇄ Al(OH)₃ + OH⁻ の平衡は右へ移動し、Al(OH)₃ が沈殿する。
③ 誤 2Al(OH)₃ → Al₂O₃ + 3H₂O
   2 mol の Al(OH)₃ から生じる H₂O は 3 mol。記述の「2 mol の水」は誤り。
④ 正 氷晶石 Na₃AlF₆ を加えると、混合物の融解温度が純物質の Al₂O₃ の融点より下がる。約1000 ℃ で融解させられるのはこの性質の利用。
よって ③

【b 解答番号11】
Al の物質量 = 2.70×10⁵ g ÷ 27 g/mol = 1.00×10⁴ mol
電子の物質量 = 3 × 1.00×10⁴ mol = 3.00×10⁴ mol
電気量 Q = 3.00×10⁴ mol × 9.65×10⁴ C/mol = 2.895×10⁹ C
電流 I = 2.895×10⁹ C ÷ 9650 s = 3.00×10⁵ A
炭素の物質量 = 1.08×10⁵ g ÷ 12 g/mol = 9.00×10³ mol
CO を a mol、CO₂ を b mol として
 炭素の収支 a + b = 9.00×10³
 電子の収支 2a + 4b = 3.00×10⁴
 下の式から上の式の2倍を引いて 2b = 3.00×10⁴ − 1.80×10⁴ = 1.20×10⁴
 b = 6.00×10³ mol(CO₂)、a = 3.00×10³ mol(CO)
よって 電流 3.00×10⁵ A・CO₂ 6.00×10³ mol → ⑤

【c 解答番号12】
Al(NH₄)(SO₄)₂ 100 mg の物質量 = 100 mg ÷ 237 = 0.422 mmol
Al 2個分で Al₂(SO₄)₃ と Al₂O₃ が1個できるので、いずれも 0.422 ÷ 2 = 0.211 mmol
約550 ℃ までに生じる Al₂(SO₄)₃(式量 342) 0.211 mmol × 342 = 72 mg
950 ℃ で得られる Al₂O₃(式量 102) 0.211 mmol × 102 = 21.5 mg
【グラフの判定】
100 mg → 第1段のプラトーが約72 mg → 最終値が約21.5 mg という2段の階段になるのは ①
③ 第1段のプラトーが約52 mg なので不適
② 最終値が約42 mg、④ 最終値が約36 mg なので不適
⑤⑥ 加熱によって質量が増加しており、脱水・分解の向きと合わないので不適
よって ①

cで「Al 1個あたり Al₂(SO₄)₃ が 1/2 個」の係数を落として式量をそのまま掛けると第1段が 144 mg になり、どの選択肢にも合いません。Al の数を揃えてから質量を計算してください。

第3問(必答) 有機化合物と高分子(付加反応・不斉炭素原子・エステル・脂肪酸と油脂)

配点20点。反応の種類と分子の平面性、環状化合物の開環と不斉炭素原子、合成高分子の性質、エステルの構造からアルコールを決める設問、そして脂肪酸の融点グラフと油脂の脂肪酸組成の円グラフを読む設問という構成です。構造式を書いて数え上げる作業が中心になります。

問1:正解 ②(解答番号13/配点3)

<問題要旨>
5つの反応が構造式で示され、「付加反応であり、かつ反応の生成物に含まれるすべての炭素原子が同一平面上にあるもの」を選びます。反応の種類(置換・付加・脱離)の判別と、生成物の立体構造の両方を満たす必要があります。

<考え方>
まず「付加反応かどうか」で候補を絞り、残ったものを「C=C のまわりは sp² 混成で平面、単結合だけでできた環や鎖は平面にならない」で判定します。光照射下の Cl₂ や鉄粉を触媒とする Cl₂ は置換反応、濃硫酸による分子内脱水は脱離反応で、いずれも付加反応ではありません。

① 不適 Cl₂・光 側鎖の H が Cl に置き換わる置換反応。付加反応ではない。
② 適  2-ブチン + H₂(触媒) 三重結合への付加反応。
    生成物 CH₃−CH=CH−CH₃ の C=C のまわりは sp² 混成で平面。両端のメチル炭素もその平面上にあるので、炭素4個すべてが同一平面上にある。
③ 不適 濃硫酸 分子内脱水(脱離反応)でアルケンが生成。付加反応ではない。
④ 不適 Cl₂・鉄粉 ベンゼン環の H が Cl に置き換わる置換反応。
⑤ 不適 シクロヘキセン + H₂(触媒) 付加反応ではあるが、生成物シクロヘキサンの炭素6個はすべて単結合でつながり、いす形をとるので同一平面上にない。
よって ②

「炭素がすべて同一平面上にある」代表例は、ベンゼン環、アルケンの C=C とその両側、アルキンの直線部分です。⑤のように反応前には平面部分があっても、付加によって失われる場合があることに注意しましょう。

問2:正解 ⑤(解答番号14/配点4)

<問題要旨>
シクロプロパンが環のひずみのために Br₂ と反応して環が開くことが例示され、続いてメチルシクロプロパンの構造式に ア・イ・ウ の3つの切断位置が示されます。それぞれの位置で結合が切れて環が開いたとき、不斉炭素原子をもつ開環生成物が得られるか(〇)得られないか(×)の組合せを選びます。

<考え方>
環を開いた生成物の構造式を実際に書き、「4個の異なる基が結合した炭素があるか」を1つずつ数える、という手順に尽きます。図では ア と イ がメチル基をもつ頂点の炭素から出る2本の結合、ウ が下の2つの CH₂ を結ぶ結合です。切断した2つの炭素に Br が1個ずつ付きます。

環の炭素を C1(H と CH₃ をもつ頂点)、C2・C3(下の2つの CH₂)とすると
 ア = C1−C2、イ = C1−C3、ウ = C2−C3
【ア を切断】
生成物 CH₃−CHBr−CH₂−CH₂Br
 Br の付いた炭素に結合するもの −CH₃、−H、−Br、−CH₂CH₂Br(4種すべて異なる)
 → 不斉炭素原子をもつ 〇
【イ を切断】
ア と左右が入れかわるだけで同じ生成物 CH₃−CHBr−CH₂−CH₂Br → 〇
【ウ を切断】
生成物 BrCH₂−CH(CH₃)−CH₂Br
 中央の炭素に結合するもの −CH₃、−H、−CH₂Br、−CH₂Br(同じ基が2つある)
 → 不斉炭素原子をもたない ×
よって ア 〇・イ 〇・ウ × → ⑤

ア と イ はメチル基をもつ炭素から出る2本の結合で、分子の対称性から同じ生成物(1,3-ジブロモブタン)になります。この対称性に気づけば、候補は「ア と イ が同じ記号」の ①・⑤・⑧ に絞れます。

問3:正解 ①(解答番号15/配点3)

<問題要旨>
合成高分子化合物について、ポリ酢酸ビニルの分類、アラミド繊維の強度、メラミン樹脂の単量体、シリコーンゴムの主鎖の構造という4つの記述から、誤りを含むものを選びます。

<考え方>
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い(鎖状か三次元網目状か)に戻ります。付加重合でできる鎖状高分子は熱可塑性、ホルムアルデヒドを使った付加縮合で立体網目をつくるフェノール樹脂・尿素樹脂・メラミン樹脂は熱硬化性です。

① 誤 ポリ酢酸ビニルは酢酸ビニルの付加重合でできる鎖状高分子で、熱可塑性樹脂。熱硬化性樹脂ではない。
② 正 アラミド繊維は芳香族ポリアミドで、引っ張り強度に優れ防護衣料などに使われる。
③ 正 メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドの付加縮合でつくる熱硬化性樹脂。
④ 正 シリコーンゴムの主鎖は Si−O 結合の繰り返しで、炭素原子間の二重結合をもたない。
よって ①

ポリ酢酸ビニルはけん化するとポリビニルアルコールになり、さらにホルムアルデヒドでアセタール化するとビニロンになります。この流れも一緒に押さえておきましょう。

問4:正解 ⑤(解答番号16/配点3)

<問題要旨>
アルコールAを酸化してカルボン酸Bを得て、これをアルコールCと脱水縮合させてエステルD(CH₃CH₂−CO−O−CH₂CH₂CH₃)を得る、という反応の流れが与えられます。ア CH₃CH₂OH、イ CH₃CH₂CH₂OH、ウ CH₃CH₂CH₂CH₂OH のうち、AとCの組合せを選びます。

<考え方>
エステルを加水分解の向きに切って、カルボン酸部分とアルコール部分に分ける、という基本操作に戻ります。カルボン酸Bが決まれば、それを酸化で与える第一級アルコールがAです。第一級アルコールの酸化は「アルデヒド → カルボン酸」と進み、炭素数は変わりません。

エステルD CH₃CH₂−CO−O−CH₂CH₂CH₃
【エステル結合で切る】
カルボン酸B = CH₃CH₂COOH(プロピオン酸、炭素数3)
アルコールC = CH₃CH₂CH₂OH(1-プロパノール)→ イ
【A を決める】
B は炭素数3のカルボン酸。炭素数を変えずに酸化でこれを与えるのは炭素数3の第一級アルコール
 CH₃CH₂CH₂OH → CH₃CH₂CHO → CH₃CH₂COOH
A = CH₃CH₂CH₂OH(1-プロパノール)→ イ
よって A = イ、C = イ → ⑤

「カルボン酸Bは C=O を含むアシル側(左)」「アルコールCは −O− の外側のアルコキシ側(右)」と切る位置を固定して覚えると、A と C を取り違えません。

問5:正解 ③,④(解答番号17・18/配点7)

<問題要旨>
図3は天然の飽和脂肪酸 CH₃(CH₂)ₙCOOH(n = 8, 10, 12, 14, 16, 18)の分子量と融点の関係、図4は炭素数18の脂肪酸(ステアリン酸・オレイン酸・リノール酸・リノレン酸)の炭化水素基中の二重結合の数と融点の関係を示すグラフです。aはこの2つのグラフから読み取れる記述として最も適当なものを選びます。bは4種の油脂ア〜エを加水分解して得られる脂肪酸A〜Fの含有率を示す円グラフと、6種の脂肪酸の炭素数・二重結合の数の表が与えられ、Aがリノレン酸・Cがオレイン酸であるときの脂肪酸Bを答えます。油脂アとイは常温で液体、油脂ウとエは常温で固体で、ウはエより融点が高いという情報が付きます。

<考え方>
aは選択肢を1つずつ目盛りの数値に当てて落とします。図4の融点は二重結合0個で約70 ℃、1個で約13 ℃、2個で約−5 ℃、3個で約−11 ℃ と読めるので、低下幅を引き算で比べます。bは「常温で液体の油脂に、融点の高い飽和脂肪酸が約半分も含まれることはない」という排除で決まります。表の6種のうちミリスチン酸・パルミチン酸・ステアリン酸はいずれも融点が高く、融点が低いのはリノール酸だけです。

【a 解答番号17】
図3の目盛りから 分子量 172 → 約31 ℃、200 → 約43 ℃、228 → 約54.5 ℃、256 → 約63 ℃、284 → 約70.5 ℃、312 → 約76 ℃
図4の目盛りから 二重結合 0個 → 約70 ℃、1個 → 約13 ℃、2個 → 約−5 ℃、3個 → 約−11 ℃
① 誤 172 → 200 は +12 K、200 → 228 は +11.5 K。n が2ずつ増えるときの上がり幅は約20 K ではない。
② 誤 CH₃(CH₂)₂₀COOH は炭素数22で分子量 340。312(約76 ℃)から先へ外挿すると約80 ℃で、約70 ℃(分子量 284 の値)ではない。
③ 正 低下幅は 0→1 が 70 − 13 = 約57 K、1→2 が 13 −(−5) = 約18 K、2→3 が (−5) −(−11) = 約6 K。0→1 が最も大きい。
④ 誤 C₁₇H₃₁COOH は二重結合2個のリノール酸で、融点は約−5 ℃。常温では液体。
よって ③

【b 解答番号18】
A = リノレン酸(C18、二重結合3)、C = オレイン酸(C18、二重結合1)
残る候補 ミリスチン酸(C14、0)・パルミチン酸(C16、0)・ステアリン酸(C18、0)・リノール酸(C18、2)
円グラフの油脂イ A 約7 %、B 約52 %、C 約23 %、D 約4 %、E 約11 %
油脂イは常温で液体。その約半分を占めるのが B である。
候補の融点 ミリスチン酸 約54 ℃、パルミチン酸 約63 ℃、ステアリン酸 約70 ℃、リノール酸 約−5 ℃
 → 融点の高い飽和脂肪酸が約半分を占めれば油脂イは常温で固体になってしまう。
 → 約半分を占めても常温で液体でいられるのはリノール酸だけ。
【整合の確認】常温で固体の油脂ウ・エでは B が 8〜13 % に減り、代わりに飽和脂肪酸にあたる D・E・F が増えている。油脂ウにだけ F があり、ウがエより融点が高いことと合う。
よって ④

bは「B の割合が最大の油脂はどれで、その油脂は液体か固体か」を先に見るのが速い解き方です。4つの円グラフをすべて読み解こうとすると時間を失います。

第4問(必答) 美術・工芸と化学(漆喰・銅の顔料・藍染めとアゾ染料)

配点20点。美術や工芸を題材に、漆喰(石灰)の化学と飽和水溶液の pH 計算、日本画で使う銅の顔料の熱分解による組成決定、藍染めに使うインジゴの還元と再酸化、そしてアゾ染料メチルオレンジの合成経路を扱います。無機・理論・有機が横断的に問われる大問です。

問1:正解 ③(解答番号19/配点2)

<問題要旨>
漆喰の調製と乾燥過程を説明する文章の空欄ア〜ウに当てはまる物質を9つの候補から選ぶ設問のうち、空欄アを答えます。アは「石灰石を高温で加熱して得られ、水 H₂O を加えると水酸化カルシウム Ca(OH)₂ になる物質」です。

<考え方>
石灰石を出発点とした石灰の系列 CaCO₃ → CaO → Ca(OH)₂ → CaCO₃ に戻ります。「高温で加熱」で CO₂ が抜けて生石灰 CaO ができ、これに水を加えると消石灰 Ca(OH)₂ になります。

石灰石の熱分解 CaCO₃ → CaO + CO₂
生石灰の消和  CaO + H₂O → Ca(OH)₂
「加熱して得られ、水を加えると Ca(OH)₂ になる」物質 = CaO
よって ③

候補に CaCO₃(②)も並んでいますが、これは加熱する前の石灰石です。問われているのは加熱して得られる物質であることを読み落とさないようにしましょう。

問1b:正解 ⑤,②(解答番号20・21/配点3)

<問題要旨>
同じ文章の空欄イとウを答えます。壁や天井に塗った漆喰が乾く過程で Ca(OH)₂ が空気中の イ と反応して ウ となり、顔料はこの ウ で覆われるため鮮やかな色彩を数百年以上保てる、という説明です。なお、この2つは両方とも正解の場合のみ得点になります。

<考え方>
消石灰が空気中で硬化する「気硬性」の反応 Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃ + H₂O に戻ります。空気中の成分で Ca(OH)₂ と常温で反応するのは CO₂ だけで、生じるのは水に難溶の CaCO₃ です。石灰水に CO₂ を通じると白濁する、あの反応と同じものです。

Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃ + H₂O
イ = CO₂ → ⑤
ウ = CaCO₃ → ②
【他の候補を落とす】
O₂(⑦)・N₂(⑧)は Ca(OH)₂ と常温では反応しない。
CaSO₄(④)は SO₂ や硫酸との反応で生じる物質で、空気中の成分からはできない。
CaCl₂(①)は塩酸との反応でできる塩。
よって イ = ⑤、ウ = ②

石灰石 → 生石灰 → 消石灰 → 石灰石という一巡になっているのが漆喰のおもしろさです。フレスコ画はこの CaCO₃ の被膜のなかに顔料を閉じ込めることで色を保っています。

問1c:正解 ⑤(解答番号22/配点3)

<問題要旨>
Ca(OH)₂ のみが H₂O に飽和した状態で溶けているとして、25 ℃ でのこの飽和水溶液の pH を求めます。溶解度積 Ksp = [Ca²⁺][OH⁻]² = (1/2)[OH⁻]³ = 5.00×10⁻⁶ (mol/L)³、水のイオン積 Kw = [H⁺][OH⁻] = 1.00×10⁻¹⁴ (mol/L)²、および log₁₀2 = 0.3、log₁₀5 = 0.7 が与えられています。

<考え方>
Ca(OH)₂ が完全に電離すると [OH⁻] = 2[Ca²⁺] なので、[Ca²⁺] = [OH⁻]/2 を代入して Ksp を [OH⁻] だけの式にする、という筋道です。設問の式がすでにその形((1/2)[OH⁻]³)になっているので、[OH⁻]³ を出して pOH を求め、pH = 14 − pOH とします。

Ca(OH)₂ → Ca²⁺ + 2OH⁻ より [Ca²⁺] = [OH⁻]/2
Ksp = [Ca²⁺][OH⁻]² = (1/2)[OH⁻]³ = 5.00×10⁻⁶ (mol/L)³
[OH⁻]³ = 2 × 5.00×10⁻⁶ = 1.00×10⁻⁵ (mol/L)³
[OH⁻] = (1.00×10⁻⁵)^(1/3) = 10^(−5/3) = 2.2×10⁻² mol/L
pOH = 5/3 = 1.67(log₁₀2 = 0.3 を用いれば pOH = 2 − 0.3 = 1.7)
pH = 14 − 1.67 = 12.3
よって ⑤

[Ca²⁺] = [OH⁻] と誤ると [OH⁻] = 1.7×10⁻² mol/L となり pH = 12.2(④)を選んでしまいます。2価の塩基では [OH⁻] が [Ca²⁺] の2倍になる、という1/2 の係数が山です。

問2:正解 ①(解答番号23/配点3)

<問題要旨>
藍銅鉱 Cu₃(CO₃)₂(OH)₂、孔雀石 Cu₂CO₃(OH)₂、酸化銅(Ⅱ) CuO のみを混ぜた顔料Xを加熱します。Cu₃(CO₃)₂(OH)₂ → 3CuO + H₂O + 2CO₂、Cu₂CO₃(OH)₂ → 2CuO + H₂O + CO₂ の反応が完了するまで加熱した結果、H₂O が 0.50 mol、CO₂ が 0.70 mol 生成し、CuO の物質量が 1.30 mol になりました。加熱前のXに含まれていた CuO の物質量を求めます。

<考え方>
「発生した気体の物質量から2種の炭酸塩の量を連立方程式で決め、そこから生じた CuO を差し引く」という手順です。H₂O は両方の反応から 1 mol ずつ出ますが、CO₂ は式(1)から 2 mol・式(2)から 1 mol と係数が違います。この差が2式を分ける手がかりになります。Xに含まれていた CuO は加熱しても変化しないので、最後に引き算するだけです。

Cu₃(CO₃)₂(OH)₂ を x mol、Cu₂CO₃(OH)₂ を y mol とする
H₂O x + y = 0.50 mol
CO₂ 2x + y = 0.70 mol
差をとって x = 0.20 mol、y = 0.50 − 0.20 = 0.30 mol
分解で生じた CuO = 3x + 2y = 3×0.20 + 2×0.30 = 0.60 + 0.60 = 1.20 mol
もとから含まれていた CuO = 1.30 mol − 1.20 mol = 0.10 mol
【検算】Xに含まれる Cu の総物質量 = 3×0.20 + 2×0.30 + 0.10 = 1.30 mol。加熱後の CuO 1.30 mol と一致する。
よって ①

「Xに含まれる CuO は加熱しても変化しない」という条件が、最後の引き算を可能にしています。Cu の総量が保存されることで検算できるのもこの設問の作りです。

問3:正解 ③,④,④(解答番号24・25・26/配点9)

<問題要旨>
藍染めを題材にした3枝です。aは Na₂S₂O₄ + 4NaOH → 2Na₂SO₃ + 2Na⁺ + 2H₂O + 2e⁻ と、インジゴ + 2e⁻ → ロイコインジゴ の2式が与えられ、1.0 mol/L の NaOH 水溶液 200 mL に x g のインジゴ(分子量 262)を加えて 0.20 mol/L の Na₂S₂O₄ 水溶液を滴下したときの滴下量 V (mL) を表すグラフを選びます。bは下線部の有機化合物が酸化も還元もされない記述を選びます。cは p-アミノベンゼンスルホン酸をベンゼンから3段階で合成する反応ア・イ・ウの組合せを、ベンゼンの一置換体の配向性に関する性質Ⅰ〜Ⅲを使って選びます。

<考え方>
aは「授受される電子の物質量が等しい」で量的関係を決めます。Na₂S₂O₄ は 1 mol で 2 mol の電子を出し、インジゴは 1 mol で 2 mol の電子を受け取るので、両者は 1 : 1 で反応します。bは各下線部の原子の酸化数が変わるかどうかで判定し、脱水縮合だけが起こる反応は酸化還元反応ではありません。cは目的物が p 体であることから、パラ配向でスルホ基を導入できる性質Ⅲ(アニリンのスルホン化)を最後に置く、と逆から組み立てます。

【a 解答番号24】
式(3) Na₂S₂O₄ 1 mol → e⁻ 2 mol
式(4) インジゴ 1 mol + e⁻ 2 mol → ロイコインジゴ
 → インジゴ : Na₂S₂O₄ = 1 : 1
インジゴ x g の物質量 = x ÷ 262 mol
必要な Na₂S₂O₄ 水溶液 = (x/262) mol ÷ 0.20 mol/L = x/52.4 L = 19.1x mL
 x = 0.010 g → V = 0.19 mL
 x = 0.020 g → V = 0.38 mL
 x = 0.050 g → V = 0.95 mL
 x = 0.10 g → V = 1.9 mL
原点を通る直線で、x = 0.10 g のとき V が約1.9 mL になるのは ③
 ① は x = 0.10 g で約3.8 mL、② は約3.1 mL、④ は約0.95 mL なので不適
【NaOH が足りるかの確認】x = 0.10 g でも必要な NaOH は 4 × (0.10/262) ≒ 1.5×10⁻³ mol。用いた NaOH は 1.0 mol/L × 0.200 L = 0.20 mol で十分に過剰。
よって ③

【b 解答番号25】
① されている (CH₃)₂CHOH は硫酸酸性の二クロム酸カリウムで酸化され、アセトン (CH₃)₂CO になる。
② されている マルトースは還元糖。フェーリング液の Cu²⁺ を還元して Cu₂O の赤色沈殿を生じる(マルトース自身は酸化される)。
③ されている C₆H₅NO₂ は Ni 触媒と H₂ でアニリン C₆H₅NH₂ に還元される(N の酸化数が下がる)。
④ されていない C₆H₅COOH とメタノールの反応は、濃硫酸を触媒とするエステル化(脱水縮合)。H₂O が取れるだけで炭素の酸化数は変わらない。
よって ④

【c 解答番号26】
目的物 H₂N−C₆H₄−SO₃H(−NH₂ と −SO₃H が p の位置)
性質Ⅲ アニリンをスルホン化すると p 位にスルホ基が入る
 → p 体をつくれるのはこの経路だけなので、スルホン化は最後(反応ウ)
それまでにアニリンを用意する経路
 ベンゼン −(ニトロ化)→ ニトロベンゼン(化合物X)−(還元)→ アニリン(化合物Y)−(スルホン化)→ p-アミノベンゼンスルホン酸
【他の順序を落とす】
先にスルホン化するとベンゼンスルホン酸になり、性質Ⅰよりニトロ基は m 位に入るので p 体にならない。
先にニトロ化してからスルホン化すると、性質Ⅱよりスルホ基は m 位に入るので p 体にならない。
よって ア = ニトロ化、イ = 還元、ウ = スルホン化 → ④

aは選択肢がすべて原点を通る直線なので、傾きだけが判定材料です。x = 0.10 g のときの値を1つ計算して当てるのが最短です。cは「パラ配向でスルホ基を入れられるのはアニリンのスルホン化だけ」という1点から逆算するのが速い解き方です。

第5問(新課程履修者は必答) 反応エンタルピー・平衡・電気分解

配点20点。新教育課程履修者が必答で解く問題です(旧教育課程履修者等は第6問との選択)。アルコール発酵の反応エンタルピー、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液の二段滴定、H₂ + I₂ ⇄ 2HI の平衡と反応速度、イオン交換膜法による海水の濃縮という4テーマで、いずれも量的な計算とグラフの読み取りが中心です。

問1:正解 ③(解答番号27/配点3)

<問題要旨>
グルコースのアルコール発酵 C₆H₁₂O₆(固) → 2C₂H₅OH(液) + 2CO₂(気) について、25 ℃、1.013×10⁵ Pa におけるエンタルピー変化 ΔH の値と、発熱反応・吸熱反応のどちらかの組合せを選びます。グルコースとエタノールの燃焼エンタルピーが、それぞれ −2803 kJ/mol、−1368 kJ/mol と負の値で与えられています。

<考え方>
ヘスの法則に戻ります。目的の反応は「グルコース 1 mol の燃焼」から「エタノール 2 mol の燃焼」を引いた形になります(どちらも最終的に CO₂ と H₂O になるため、差をとると発酵の式だけが残ります)。新課程の表記ではエンタルピー変化 ΔH を使い、ΔH < 0 が発熱反応です。燃焼エンタルピーが負の値で与えられていることに注意して、符号ごとそのまま代入します。この設問の ΔH = −67 kJ は、第6問問1の反応熱 Q = +67 kJ と同じ現象を逆の符号で表したものです。

グルコースの燃焼 C₆H₁₂O₆ + 6O₂ → 6CO₂ + 6H₂O  ΔH₁ = −2803 kJ/mol
エタノールの燃焼 C₂H₅OH + 3O₂ → 2CO₂ + 3H₂O  ΔH₂ = −1368 kJ/mol
求める反応 C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂
 =(グルコースの燃焼)− 2 ×(エタノールの燃焼)
ΔH = ΔH₁ − 2ΔH₂ = (−2803) − 2×(−1368) = −2803 + 2736 = −67 kJ
ΔH < 0 なので発熱反応
【検算】右辺の物質(エタノール 2 mol)を燃やすと 2×1368 = 2736 kJ しか得られないのに、左辺のグルコース 1 mol は 2803 kJ を出す。その差 67 kJ が、発酵の段階で先に放出された分にあたる。
よって ③

第6問問1は同じ反応を旧課程の熱化学方程式で問い、「反応熱 Q」は放出する熱量を正とするため Q = +67 kJ になります。ΔH と Q は符号の約束が逆で、どちらも同じ「発熱反応」を表しています。

問2:正解 ④(解答番号28/配点4)

<問題要旨>
pH 9.3 の NaHCO₃ と Na₂CO₃ の混合水溶液 100 mL に 1.00 mol/L の塩酸を滴下すると、0.50 mL で pH 8.3 になり、合計 6.00 mL で pH 4.0 になりました。pH 9.3 から 8.3 までは H⁺ + CO₃²⁻ → HCO₃⁻ だけが進み、pH 8.3 から 4.0 までは H⁺ + HCO₃⁻ → H₂O + CO₂ が進むとみなせます。滴下前の水溶液中の HCO₃⁻ の濃度を求めます。

<考え方>
二段滴定では「第1段の滴下量が CO₃²⁻ の物質量に、第2段の滴下量が『もとの HCO₃⁻ + 第1段で CO₃²⁻ から生じた HCO₃⁻』の合計に対応する」という関係に戻ります。求めたいのは もとの HCO₃⁻ なので、第2段から第1段を差し引きます。第2段に使った塩酸が 6.00 − 0.50 = 5.50 mL であることに注意します。

【第1段(pH 9.3 → 8.3):H⁺ + CO₃²⁻ → HCO₃⁻】
使った塩酸 0.50 mL
n(H⁺) = 1.00 mol/L × 0.50×10⁻³ L = 5.00×10⁻⁴ mol
 = もとの CO₃²⁻ の物質量 5.00×10⁻⁴ mol
【第2段(pH 8.3 → 4.0):H⁺ + HCO₃⁻ → H₂O + CO₂】
使った塩酸 6.00 − 0.50 = 5.50 mL
n(H⁺) = 1.00 mol/L × 5.50×10⁻³ L = 5.50×10⁻³ mol
 =(もとの HCO₃⁻)+(CO₃²⁻ から生じた HCO₃⁻ 5.00×10⁻⁴ mol)
もとの HCO₃⁻ = 5.50×10⁻³ − 5.00×10⁻⁴ = 5.00×10⁻³ mol
濃度 = 5.00×10⁻³ mol ÷ 0.100 L = 5.00×10⁻² mol/L
よって ④

第2段の体積を合計の 6.00 mL としてしまうと 6.00×10⁻² mol/L(⑥)、引き算を忘れると 5.50×10⁻² mol/L(⑤)になります。どちらも選択肢に用意されているので、体積の取り方と引き算を丁寧に進めてください。

問3:正解 ③,②(解答番号29・30/配点6)

<問題要旨>
同じ物質量の H₂ と I₂ を体積一定の容器に入れて一定温度に保ったときの HI の物質量の時間変化が図1で与えられ、平衡では HI が 0.8 mol になっています。平衡定数は64、正反応の速さは v₁ = k₁[H₂][I₂]、逆反応の速さは v₂ = k₂[HI]² です。条件Ⅰ(容器の体積を2倍にする)と条件Ⅱ(反応開始時の H₂ のモル濃度を3倍、I₂ のモル濃度を 1/3 倍にする)のそれぞれについて、図1に重ねて実線で示した HI の物質量の時間変化のグラフを、5つの候補から選びます。

<考え方>
判定に使うのは「平衡に達したときの HI の物質量(水平部分の高さ)」と「立ち上がりの傾き(初期の速さ)」の2つだけです。この反応は左右で気体の分子数が等しいので、平衡定数の式で体積が約分され、体積を変えても平衡の組成は変わりません。一方、初期の速さは v₁ = k₁[H₂][I₂] という積で決まるので、濃度の掛け算がどう変わるかを見ます。まず図1から仕込んだ物質量を確定させてから、条件ごとに平衡値と初期速度を計算します。

【仕込んだ量の確定】
平衡で HI = 0.8 mol。仕込みを H₂ = I₂ = a mol とすると、平衡では各 a − 0.4 mol
K = [HI]²/([H₂][I₂]) = 64 → 0.8/(a − 0.4) = 8 → a − 0.4 = 0.1 → a = 0.5 mol
容器の体積を V として [H₂]₀ = [I₂]₀ = 0.5/V(これを c とおく)
初期速度 v₁ = k₁c²

【条件Ⅰ:容器の体積を2倍 解答番号29】
物質量は変えずに体積 2V。H₂ + I₂ ⇄ 2HI は分子数が 2 → 2 で変化しないため、K の式で体積が約分され平衡の組成は動かない
 → 平衡の HI = 0.8 mol(水平部分の高さは元と同じ)
濃度は半分になるので v₁ = k₁(c/2)(c/2) = k₁c²/4
 → 初期速度は 1/4 で、立ち上がりは元のデータより遅い
判定 水平部分 0.8 mol・立ち上がりが元より遅い → ③
 ① 立ち上がりが元より速いので不適/⑤ 元のデータと重なるので不適/②④ 水平部分が約0.33 mol なので不適
よって ③

【条件Ⅱ:[H₂]₀ を3倍、[I₂]₀ を 1/3 倍 解答番号30】
体積は V のまま H₂ = 1.5 mol、I₂ = 0.5/3 = 0.167 mol
反応した H₂ を x mol とすると H₂ = 1.5 − x、I₂ = 0.167 − x、HI = 2x
(2x)² ÷ {(1.5 − x)(0.167 − x)} = 64
4x² = 64(0.25 − 1.667x + x²)
60x² − 106.7x + 16 = 0 → x = 0.165
 → 平衡の HI = 2x ≒ 0.33 mol(水平部分は約0.33 mol)
初期速度 v₁ = k₁(3c)(c/3) = k₁c²(元と同じ)
 → 立ち上がりの傾きは元のデータと一致する
判定 水平部分 約0.33 mol・立ち上がりが元のデータと重なる → ②
 ④ 水平部分は約0.33 mol だが立ち上がりが明らかに遅いので不適/①③⑤ 水平部分が 0.8 mol なので不適
よって ②

条件Ⅱは「濃度を3倍と 1/3 倍にすると積 [H₂][I₂] が変わらない」ため初期速度が変わりません。平衡値だけで選ぶと②と④のどちらでもよく見えてしまうので、立ち上がりまで必ず確認してください。

問4:正解 ②,⑥(解答番号31・32/配点7)

<問題要旨>
イオン交換膜法による海水の濃縮装置の模式図が与えられます。陽極では Cl⁻ が酸化されて減り、陰極では H₂O が還元されて OH⁻ が増え、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を交互に並べた電解槽が希釈室1・濃縮室・希釈室2 に分かれます。aは陰イオン交換膜が Cl⁻ を選択的に透過させる理由となる官能基Xを選びます。bは3室をそれぞれ体積 V (L)・モル濃度 x (mol/L) の NaCl 水溶液で満たし、濃縮室の NaCl の物質量を希釈室1の2倍にするのに必要な電気量 Q (C) を、ファラデー定数 F (C/mol) を用いた式で選びます。

<考え方>
aは「陰イオン交換樹脂の固定基は正電荷をもつ」という原則に戻ります。正電荷の固定基は Cl⁻ を対イオンとして保持し、同符号の Na⁺ は静電的に反発して細孔に入れません。bは「1価のイオンが n mol 移動すれば通過電気量は Q = nF」という関係と、図の矢印から各室の NaCl がいくら増減するかを読むのが筋道です。単位の面からも、Q が C になるのは xVF の形だけなので、xV/F の形は候補から外れます。

【a 解答番号31】
Cl⁻ を保持して Na⁺ を排除するには、固定基が正電荷をもつ必要がある
① −CH₃     電荷をもたず、イオンを交換できない → 不適
② −CH₂N⁺(CH₃)₃ 正電荷の第四級アンモニウム基。Cl⁻ を対イオンとして保持し、Na⁺ は反発して細孔に入れない → 適
③ −SO₃⁻     負電荷。Na⁺ を引き込む陽イオン交換基なので Cl⁻ は通さない → 不適
④ −NO₂     電荷をもたず交換基にならない → 不適
よって ②

【b 解答番号32】
各室のはじめの NaCl = x mol/L × V L = xV mol
図の矢印より
 希釈室1 → 濃縮室 陽イオン交換膜を通って Na⁺ が移動
 希釈室2 → 濃縮室 陰イオン交換膜を通って Cl⁻ が移動
1価のイオンが n mol 通過するときの電気量 Q = nF
このとき
 濃縮室 Na⁺ が n mol 入り、Cl⁻ も n mol 入る → NaCl = xV + n
 希釈室1 Na⁺ が n mol 出ていき、電気的中性を保つため陽極側へ Cl⁻ も n mol 抜ける → NaCl = xV − n
条件 xV + n = 2(xV − n)
 xV + n = 2xV − 2n
 3n = xV → n = xV/3
Q = nF = xVF/3
【単位の確認】xV は mol、F は C/mol なので xVF は C になる。①〜③の xV/F は mol ÷ (C/mol) = mol²/C で電気量にならない。
よって ⑥

bはまず単位で①〜③を落とし、④⑤⑥の3択にしてから考えると速いです。「濃縮室が増える量と希釈室1が減る量がどちらも n mol」という対応をつかめば、2倍の条件から n = xV/3 が出ます。

第6問(旧課程履修者の選択) 熱化学方程式・平衡・電気分解

配点20点。旧教育課程履修者等が第5問との選択で解く問題です。第5問の旧課程版で、問2〜問4は第5問と設問・図・選択肢まで同一の内容です。違うのは問1だけで、同じアルコール発酵を熱化学方程式の「反応熱 Q」で問うため、答えの符号が第5問問1と入れかわります。

問1:正解 ⑤(解答番号33/配点3)

<問題要旨>
グルコースのアルコール発酵の熱化学方程式 C₆H₁₂O₆(固) = 2C₂H₅OH(液) + 2CO₂(気) + Q (kJ) が与えられ、反応熱 Q の値と、発熱反応・吸熱反応のどちらかの組合せを選びます。グルコースとエタノールの燃焼熱は、それぞれ 2803 kJ/mol、1368 kJ/mol と、いずれも正の値で与えられています。

<考え方>
使う原理は第5問問1と同じヘスの法則ですが、符号の約束が逆であることに注意します。旧課程の熱化学方程式では、反応熱 Q は「右辺に足す放出熱」として書かれるため、放出する熱量を正とし、燃焼熱も正の値で与えられます。したがって Q =(グルコース 1 mol の燃焼熱)−(エタノール 2 mol の燃焼熱)と、正の値どうしの引き算になり、Q > 0 なら発熱反応です。第5問問1のエンタルピー変化 ΔH = −67 kJ とこの Q = +67 kJ は、同じ発熱反応を逆の符号で表したものです。

グルコースの燃焼熱 2803 kJ/mol(放出する熱量として正)
エタノールの燃焼熱 1368 kJ/mol(同じく正)
求める反応 C₆H₁₂O₆ = 2C₂H₅OH + 2CO₂ + Q
Q = 2803 kJ − 2 × 1368 kJ = 2803 − 2736 = +67 kJ
Q > 0 なので発熱反応
【第5問問1との対応】
 新課程(エンタルピー変化) ΔH = (−2803) − 2×(−1368) = −67 kJ → ΔH < 0 で発熱
 旧課程(反応熱)      Q = 2803 − 2×1368 = +67 kJ    → Q > 0 で発熱
 同じ反応・同じ「発熱」だが、符号の約束が逆なので数値の符号が入れかわる。
よって ⑤

選択肢には −67 と 67 の両方、発熱と吸熱の両方が並んでいます。「熱化学方程式の Q は右辺に足す放出熱なので正が発熱」「ΔH は系のエンタルピーの変化なので負が発熱」と、どちらの流儀で問われているかを最初に確認してから符号を決めてください。

問2:正解 ④(解答番号34/配点4)

<問題要旨>
第5問問2と同一の設問です。pH 9.3 の NaHCO₃ と Na₂CO₃ の混合水溶液 100 mL に 1.00 mol/L の塩酸を滴下し、0.50 mL で pH 8.3、合計 6.00 mL で pH 4.0 になったという結果から、滴下前の水溶液中の HCO₃⁻ のモル濃度を求めます。

<考え方>
炭酸塩の二段滴定では、第1段の滴下量が CO₃²⁻ の物質量に対応し、第2段の滴下量が「もとの HCO₃⁻ + 第1段で CO₃²⁻ から生じた HCO₃⁻」の合計に対応します。求めたいのは もとの HCO₃⁻ なので、第2段から第1段を差し引きます。第2段の滴下量が 5.50 mL(合計 6.00 mL から第1段の 0.50 mL を引いた値)であることが山です。

第1段 0.50 mL ぶんが CO₃²⁻ を HCO₃⁻ に変える
 n(CO₃²⁻) = 1.00 mol/L × 0.50×10⁻³ L = 5.00×10⁻⁴ mol
第2段 6.00 − 0.50 = 5.50 mL ぶんが、すべての HCO₃⁻ を H₂O と CO₂ に変える
 n(HCO₃⁻ の合計) = 1.00 mol/L × 5.50×10⁻³ L = 5.50×10⁻³ mol
もとの HCO₃⁻ = 5.50×10⁻³ − 5.00×10⁻⁴ = 5.00×10⁻³ mol
c(HCO₃⁻) = 5.00×10⁻³ mol ÷ 0.100 L = 5.00×10⁻² mol/L
【検算】もとの CO₃²⁻ 5.00×10⁻⁴ mol と HCO₃⁻ 5.00×10⁻³ mol をすべて H₂O と CO₂ に変えるのに要する H⁺ は、2×5.00×10⁻⁴ + 5.00×10⁻³ = 6.00×10⁻³ mol = 塩酸 6.00 mL。実測の総滴下量と一致する。
よって ④

答えの候補は 10⁻³ と 10⁻² の桁で並んでいます。最後に 0.100 L で割る操作を落とすと 5.00×10⁻³(①)を選んでしまうので、単位まで書いて進めましょう。

問3:正解 ③,②(解答番号35・36/配点6)

<問題要旨>
第5問問3と同一の設問です。体積一定の容器に同じ物質量の H₂ と I₂ を入れ、HI が 0.8 mol で平衡に達するまでの時間変化が図1で与えられます。平衡定数64、v₁ = k₁[H₂][I₂]、v₂ = k₂[HI]² のもとで、条件Ⅰ(容器の体積を2倍)と条件Ⅱ(反応開始時の H₂ のモル濃度を3倍・I₂ のモル濃度を 1/3 倍)の HI の物質量の時間変化のグラフを選びます。

<考え方>
見るべきは「水平になった高さ(平衡の HI の物質量)」と「立ち上がりの傾き(初期の速さ)」の2点です。気体の分子数が両辺で等しい反応なので、平衡定数の式から体積が消え、体積を変えても平衡組成は動きません。初期の速さは [H₂] と [I₂] の積で決まるので、濃度の掛け算の結果を比べます。

【前提の確定】
平衡の HI = 0.8 mol、K = 64 より 0.8/(a − 0.4) = 8 → a = 0.5 mol(H₂・I₂ を各0.5 mol 仕込み)
[H₂]₀ = [I₂]₀ = 0.5/V = c、初期速度 v₁ = k₁c²

【条件Ⅰ 解答番号35】
平衡 分子数が 2 → 2 で変わらないため K の式で体積が約分され、体積 2V でも平衡の HI は 0.8 mol のまま
速さ v₁ = k₁(c/2)(c/2) = k₁c²/4(1/4 に低下)→ 立ち上がりは元のデータより遅い
判定 水平部分 0.8 mol・立ち上がりが元より遅い → ③
 ① は立ち上がりが元より速い、⑤ は元と重なる、②④ は水平部分が約0.33 mol なので不適
よって ③

【条件Ⅱ 解答番号36】
仕込み H₂ = 1.5 mol、I₂ = 0.167 mol(体積は V のまま)
(2x)² ÷ {(1.5 − x)(0.167 − x)} = 64 → 60x² − 106.7x + 16 = 0 → x = 0.165
平衡の HI = 2x ≒ 0.33 mol
速さ v₁ = k₁(3c)(c/3) = k₁c²(元と同じ)→ 立ち上がりの傾きは元のデータと一致
判定 水平部分 約0.33 mol・立ち上がりが元と重なる → ②
 ④ は水平部分は約0.33 mol だが立ち上がりが遅いので不適、①③⑤ は水平部分が 0.8 mol なので不適
よって ②

平衡値だけを手がかりにすると②と④の区別がつきません。「濃度の積 [H₂][I₂] が変わらないので初期速度も変わらない」というもう一つの手がかりを必ず併用してください。

問4:正解 ②,⑥(解答番号37・38/配点7)

<問題要旨>
第5問問4と同一の設問です。イオン交換膜法で海水を濃縮する装置の模式図をもとに、aでは陰イオン交換膜が Cl⁻ を選択的に透過させる原因となる官能基Xを選び、bでは3室(それぞれ体積 V (L)・濃度 x (mol/L) の NaCl 水溶液で満たす)のうち濃縮室の NaCl の物質量を希釈室1の2倍にするのに必要な電気量 Q (C) を、ファラデー定数 F (C/mol) を用いた式で選びます。

<考え方>
aは固定基の電荷の符号で決まります。Cl⁻ を通す膜は正電荷の固定基をもち、Cl⁻ を対イオンとして受け渡す一方、同符号の Na⁺ は反発して細孔に入れません。bは「1価イオン n mol の移動で電気量 Q = nF」という関係と、図の矢印から読める各室の NaCl の増減を式にします。式の単位を確認すると候補が3つに絞れます。

【a 解答番号37】
Cl⁻ を保持して Na⁺ を排除するには、固定基が正電荷をもつ必要がある
① −CH₃     電荷をもたないので交換基にならない
② −CH₂N⁺(CH₃)₃ 正電荷の第四級アンモニウム基。Cl⁻ を保持し Na⁺ を反発する → 適
③ −SO₃⁻     負電荷なので陽イオン交換基(Na⁺ を通す側)になる
④ −NO₂     電荷をもたないので交換基にならない
よって ②

【b 解答番号38】
各室のはじめの NaCl = xV mol
1価のイオンが n mol 移動するとき Q = nF
図より 希釈室1 から Na⁺ が n mol、希釈室2 から Cl⁻ が n mol、いずれも濃縮室へ移動する
 濃縮室 NaCl = xV + n
 希釈室1 Na⁺ が n mol 抜け、電気的中性を保つため陽極側へ Cl⁻ も n mol 抜ける → NaCl = xV − n
条件 xV + n = 2(xV − n) → 3n = xV → n = xV/3
Q = nF = xVF/3
【単位の確認】mol × C/mol = C。①〜③の xV/F は mol²/C になるので電気量の式ではない。
よって ⑥

「濃縮室が増える分と希釈室1が減る分がどちらも n mol」という対応をつかむのが要点です。濃縮室を 2xV にする(増える量を xV とする)と読み違えると Q = xVF(④)を選んでしまいます。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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