2025年度 大学入学共通テスト 本試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト 本試験「化学」の解説です。試験時間は60分、実際の満点は100点。解答番号は1〜40で、第1問〜第4問が必答(各20点)、第5問と第6問が選択(各20点)という構成です。この記事では第1問から第6問までのすべてを解説しているため、記事上の表示配点の合計は120点(全36項目)になります。
2025年度は新しい学習指導要領への移行措置がとられた年度です。問題冊子の指示では、新教育課程履修者は第1問〜第5問の5問を解答し、第6問は解答してはいけません。旧教育課程履修者等は第1問〜第4問が必答で、第5問または第6問のいずれか1問を選択して解答します。どちらの場合も解答するのは5問・100点です。
第1問は結晶の分類から始まり、実在気体、ヘンリーの法則、コロイド、そして海水からNaClと淡水を得る工程(減圧下での蒸発と逆浸透)まで、気体と溶液の分野を一通り使わせます。第2問は化学発光かどうかの判別、ニッケル・カドミウム電池の量計算、弱酸を希釈したときのpH変化のグラフ、ハーバー・ボッシュ法の平衡です。第3問は無機分野で、遷移元素の化合物、二酸化ケイ素と水ガラス、気体の発生と性質のあと、昆布・鉱石・地下水という三つの原料からヨウ素I₂を得る工程を追います。第4問は有機と高分子で、アクリル酸メチルとアニリンから生じた化合物の構造決定と、アセチレンからビニロンに至る合成経路が中心です。第5問と第6問は、原油の分留とそこに含まれるバナジウムを題材にした、素材も設問もほとんど同じ大問です。異なるのは問3cだけで、第5問は新課程の「生成エンタルピー」(負の値)、第6問は旧課程の「生成熱」(正の値)で問われるため、符号の向きが逆になり、同じ計算をしても選ぶ選択肢が変わります。
つまずきやすいのは、図やグラフから値を読み取る設問です。解答番号5は、沸点上昇度8 Kを引いた温度で蒸気圧曲線を読まなければならず、90℃のまま読むと選択肢を誤ります。解答番号11は、凡例のどの曲線が全圧1.0×10⁸ Paなのかを取り違えないことが要点です。解答番号6では、ファントホッフの法則に使う濃度が「溶質粒子の全濃度」であること、すなわちNaClが完全電離して2倍になることを落とすと答えが変わります。計算問題では、選択肢に「途中の値」や「換算を忘れた値」が必ず混ぜてあるので、最後に何を問われているかを式の上で確認してから選ぶことが大切です。
第1問(必答) 結晶・気体・溶液(イオン結晶の判別、実在気体、ヘンリーの法則、コロイド、海水の利用)
配点20点。結晶の分類、理想気体と実在気体のずれ、ヘンリーの法則、コロイドという基本事項を問う四つの小問のあと、問5で海水からNaClと淡水を得る二つの工業的工程(減圧下での蒸発と逆浸透)を、沸点上昇と浸透圧の計算で扱います。
問1:正解 ②(解答番号1/配点3)
<問題要旨>
四つの物質のうち、固体がイオン結晶であるものを選ぶ設問です。結晶を構成している粒子と、それを結びつけている結合の種類を区別できるかが問われています。
<考え方>
結晶は「何が」「どんな結合で」並んでいるかで、イオン結晶・分子結晶・共有結合の結晶・金属結晶の四つに分かれる。陽イオンと陰イオンが静電気力(イオン結合)で並んだものがイオン結晶なので、金属元素と非金属元素の組合せでできた物質を探せばよい。
① 誤 p-ジクロロベンゼン C₆H₄Cl₂ … 分子が分子間力で並んだ分子結晶 ② 正 酸化マグネシウム MgO … Mg²⁺ と O²⁻ が静電気力で並んだイオン結晶 ③ 誤 ダイヤモンド C … 炭素原子が共有結合で連なった共有結合の結晶 ④ 誤 アルミニウム Al … 自由電子が金属原子を結びつける金属結晶 よって ②
イオン結晶かどうかは「金属元素+非金属元素」という組合せで見分けるのが速い。MgOはイオンの価数がともに2で静電気力が強く、融点は約2800℃とNaClよりはるかに高い。
問2:正解 ①(解答番号2/配点3)
<問題要旨>
理想気体と実在気体についての三つの記述Ⅰ〜Ⅲの下線部について、正誤の組合せを選ぶ設問です。Ⅰは混合気体の分圧、Ⅱは高圧での体積のずれの理由、Ⅲは高温で理想気体に近づく理由を述べています。
<考え方>
分圧は「同温・同圧なら体積比=物質量比」から決まり、実在気体が理想気体からずれる原因は「分子自身の体積」と「分子間力」の二つに限られる。高圧では分子どうしが近づいて体積の効果が、低温では分子間力の効果が表に出る、という対応で判定する。
Ⅰ 正 同温・同圧の気体は体積比 = 物質量比 A:B = 1:2 で混合したので物質量比も 1:2 分圧は混合気体中の物質量に比例するから、分圧比も 1:2 Ⅱ 正 高圧では分子自身の体積が無視できなくなり、気体は理想気体より縮みにくい PV/(nRT) > 1 となり、実在気体の体積が理想気体の体積より大きくなる Ⅲ 正 高温では分子の熱運動のエネルギーが大きくなる それに比べて分子間力による引き合いの影響が相対的に小さくなり、理想気体に近づく よって ①
Ⅲを「誤」としたくなるのは、分子間力そのものの大きさは温度によって変わらないと考えるため。しかし小さくなるのは分子の運動エネルギーに対する分子間力の「影響」であり、低温・高圧ほど実在気体が理想気体からずれるという事実とも一致する。
問3:正解 ⑤(解答番号3/配点4)
<問題要旨>
19℃で、500 mLの水にCO₂が溶けた炭酸水と少量の気体のCO₂が入った密閉容器があります。蓋を緩めると炭酸水から0.060 molのCO₂が発生し、蓋を閉めたときの容器内のCO₂の圧力は1.0×10⁵ Paでした。蓋を緩める前の容器内のCO₂の圧力を求めます。
<考え方>
ヘンリーの法則は「一定温度で、一定量の水に溶ける気体の物質量はその気体の圧力に比例する」。発生した0.060 molは気相に出てきた量ではなく、炭酸水に溶けていた量の減り分である。そこで、緩める前と閉めた後の二つの状態の溶解量を圧力の比で結べばよい。
19℃、1.0×10⁵ Pa で水 1 L に溶ける CO₂ = 4.0×10⁻² mol 【蓋を閉めた後】圧力 1.0×10⁵ Pa、水 500 mL = 0.500 L n₂ = 4.0×10⁻² × 0.500 = 0.020 mol 【蓋を緩める前】圧力を P とすると、ヘンリーの法則より n₁ = 0.020 × P/(1.0×10⁵) mol 発生した CO₂ = 溶解量の減り分 だから n₁ − n₂ = 0.060 0.020 × P/(1.0×10⁵) − 0.020 = 0.060 P/(1.0×10⁵) = 0.080/0.020 = 4.0 P = 4.0×10⁵ Pa 【検算】P = 4.0×10⁵ Pa なら溶解量は 0.080 mol、閉めた後は 0.020 mol、差は 0.060 mol で一致。 よって ⑤
「水1 Lあたり」の値が与えられているので、500 mLでは半分にすること。また、炭酸水は容器から出ていないので水の量は変わらず、溶解量の比がそのまま圧力の比になる。
問4:正解 ②(解答番号4/配点3)
<問題要旨>
コロイドに関する五つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。塩析、コロイドの分類、電気泳動、ブラウン運動、チンダル現象という基本用語の定義が問われています。
<考え方>
コロイドの用語は「何が何に分散しているか」と「何が原因で起こる現象か」の二点で整理しておく。分散質と分散媒の状態の組合せで名前が決まるので、その定義に照らして一つずつ確かめればよい。
① 正 親水コロイドに多量の電解質を加えて沈殿させる操作を塩析という ② 誤 分散媒が液体で分散質も液体のコロイドは乳濁液(エマルション) 懸濁液(サスペンション)は分散質が固体の場合をいう ③ 正 電気泳動。負に帯電したコロイド粒子は陽極側へ、正なら陰極側へ移動する ④ 正 ブラウン運動。分散媒である水分子が不規則に衝突するために起こる ⑤ 正 チンダル現象。コロイド粒子が光を散乱するので光の通路が明るく見える よって ②
牛乳やマヨネーズが乳濁液、墨汁や絵の具が懸濁液。分散質が固体か液体かで呼び分ける、という一点で②は落とせる。
問5a:正解 ①(解答番号5/配点3)
<問題要旨>
濃縮した海水からNaClを得る装置(図1)で、容器B内を減圧してNaCl水溶液が90℃で沸騰するようにしています。容器BのNaCl水溶液の沸点上昇度を8 Kとして、図2の水の蒸気圧曲線から容器B内の圧力を求めます。
<考え方>
沸騰は「溶液の蒸気圧が外圧に等しくなる」ときに起こり、沸点上昇度は溶液の沸点が純水の沸点よりどれだけ高いかを表す。したがって同じ外圧のもとで純水は溶液より8 K低い温度で沸騰するので、その温度における純水の蒸気圧を図2から読めばよい。
NaCl 水溶液の沸点 90℃ 沸点上昇度 8 K 同じ圧力のもとでの純水の沸点 90 − 8 = 82℃ 図2の蒸気圧曲線を 82℃ で読む 80℃ と 85℃ の目盛りの間、5.0×10⁴ Pa の補助線をわずかに上回る位置 → 約 5.1×10⁴ Pa よって ①
②7.0×10⁴ Pa は曲線を90℃のまま読んだ値で、沸点上昇分を引き忘れたときに選んでしまう。求めるのは容器B内の圧力、すなわち「純水なら82℃で沸騰する圧力」であって、90℃での水の蒸気圧ではない。
問5b:正解 ①(解答番号6/配点4)
<問題要旨>
半透膜で仕切った筒の一方に0.50 mol/LのNaCl水溶液10 L、他方に水を入れ、水側を1.0×10⁵ Pa、NaCl水溶液側を3.1×10⁶ Paで押し続けます(図3)。27℃で平衡に達するまでに、NaCl水溶液から水側へ移動する水の体積を求めます。
<考え方>
逆浸透では、溶液側にかけた圧力と水側の圧力の差がその溶液の浸透圧と等しくなったところで水の移動が止まる。ファントホッフの法則 π = cRT の c は溶質粒子の全濃度なので、完全電離するNaClは2倍に数える。溶質の物質量は変わらず、体積だけが減ることに注目する。
【平衡での浸透圧】 π = 3.1×10⁶ − 1.0×10⁵ = 3.0×10⁶ Pa 【はじめの溶質粒子】NaCl は完全電離して Na⁺ と Cl⁻ になる 粒子の濃度 0.50 × 2 = 1.0 mol/L 粒子の物質量 1.0 × 10 = 10 mol(半透膜を通らないので変わらない) 【平衡での濃度】π = cRT より c = 3.0×10⁶/(8.3×10³ × 300) = 1.20 mol/L 【平衡での NaCl 水溶液の体積】 V = 10/1.20 = 8.3 L 【移動した水の体積】 10 − 8.3 = 1.7 L よって ①
③5.8 は電離を数えずに0.50 mol/Lのまま計算した値、⑤8.3 は移動した水ではなく残ったNaCl水溶液の体積そのもの。「粒子の数で数える」「問われているのは移動量であって残量ではない」の二点で切れる。
第2問(必答) 化学反応とエネルギー・平衡(化学発光、ニッケル・カドミウム電池、弱酸の希釈、ハーバー・ボッシュ法)
配点20点。化学発光かどうかの判別、電池の電極反応からの量計算、弱酸を希釈したときのpH変化のグラフ選択と続き、問4ではハーバー・ボッシュ法を題材に、平衡定数の関係式・平衡組成からの温度の読み取り・温度変化が速さと平衡に与える影響を三段構えで問います。
問1:正解 ③(解答番号7/配点3)
<問題要旨>
発光に関する四つの記述のうち、下線部が化学発光ではないものを選ぶ設問です。鑑識のルミノール反応、ケミカルライト、ネオンサイン、ホタルの光が並べられています。
<考え方>
化学発光は「化学反応で生じたエネルギーが光として放出される現象」。したがって、発光のもとが化学反応なのか、それとも放電や加熱などの物理的な励起なのかで仕分ければよい。
① 化学発光 ルミノールが血液中の成分のはたらきで酸化され、そのとき光を出す ② 化学発光 ケミカルライトは容器内の2液を混ぜたときの化学反応によって光る ③ 化学発光ではない ネオンサインは管内の気体の放電で原子が励起され、もとの状態に戻るときに光る ④ 化学発光 ホタルの発光は体内の酵素がはたらく反応によるもので、生物発光は化学発光の一種 よって ③
同じ「光る」でも、白熱電球は高温による熱放射、蛍光灯は放電と蛍光物質によるもので、いずれも化学発光ではない。反応が起こっているかどうかで区別する。
問2:正解 ②(解答番号8/配点3)
<問題要旨>
KOH水溶液を電解液とするニッケル・カドミウム電池について、放電時の負極と正極の反応式が与えられています。放電で負極の質量が1.7 g増加したとき、電極反応で消費された水H₂Oの質量を求めます。
<考え方>
電池の量計算は「流れた電子の物質量」を仲立ちにする。まず負極の質量変化から電子の物質量を求め、正極の反応式の係数比を使ってH₂Oの物質量に直せばよい。
【負極・式(1)】Cd + 2OH⁻ → Cd(OH)₂ + 2e⁻ 電極上で Cd が Cd(OH)₂ になるので、増えるのは OH 2個分 電子 2 mol あたり 17×2 = 34 g 増加する 質量増加 1.7 g より e⁻ = 1.7 × 2/34 = 0.10 mol 【正極・式(2)】NiO(OH) + H₂O + e⁻ → Ni(OH)₂ + OH⁻ H₂O と e⁻ の係数比は 1:1 だから H₂O = 0.10 mol 質量 = 0.10 × 18 = 1.8 g よって ②
負極の質量増加を「Cd(OH)₂の質量」と取り違えると値が合わない。増えたのはあくまで結びついたOH分であり、Cd(原子量112)はもとから電極上にある。
問3:正解 ④(解答番号9/配点4)
<問題要旨>
電離定数K_aの1価の弱酸HA 1 molを体積V₀の水に溶かしたときpHは4.0でした。さらに水を加えて希釈したときの、水溶液のpHと体積の関係を表すグラフを四つから選ぶ設問です。電離度αは1に比べて非常に小さいとしてよいとされています。
<考え方>
1−α ≒ 1 とみなせる弱酸では [H⁺] = √(K_a c) が成り立つ。濃度が 1/k になると [H⁺] は 1/√k 倍になるので、pHは (1/2)log k だけ上がる。つまりpHは体積の対数に対してゆっくり増える形になり、20倍に薄めても0.65しか上がらない。
弱酸の電離 [H⁺] = √(K_a c)、体積 V のとき c = 1/V 体積を V₀ から V にすると pH = 4.0 + (1/2)log(V/V₀) V = 5V₀ pH = 4.0 + 0.5×0.70 = 4.35 V = 10V₀ pH = 4.0 + 0.5×1.00 = 4.50 V = 20V₀ pH = 4.0 + 0.5×1.30 = 4.65 【グラフの判定】 ① 誤 5V₀ あたりで 7 に達し、そのまま一定になる(上がりすぎ) ② 誤 4.0 のまま変わらない(希釈の効果が出ていない) ③ 誤 20V₀ で 5.3 を超える(上がりすぎ) ④ 正 5V₀ で約 4.35、10V₀ で約 4.5、20V₀ で約 4.65 と読め、計算値と一致する よって ④
薄めるとpHが7に近づくのは、強酸をきわめて薄くしたときの話。弱酸では薄めるほど電離度αが大きくなるので[H⁺]の減り方がゆるやかになり、pHの上がり方は濃度変化の半分の対数分にとどまる。
問4a:正解 ⑤(解答番号10/配点3)
<問題要旨>
式(3) N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃ について、圧平衡定数K_pと濃度平衡定数K_cの関係を表す式を選ぶ設問です。気体定数をR、絶対温度をTとしています。
<考え方>
気体の状態方程式から [X] = n/V = p/(RT) なので、濃度を分圧に置き換えるだけで関係式が出る。一般には K_p = K_c(RT)^Δn で、Δnは(生成物の係数の和)−(反応物の係数の和)である。
K_p = K_c(RT)^Δn
Δn =(生成物の係数の和)−(反応物の係数の和)
式(3) N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃
Δn = 2 − (1 + 3) = −2
K_p = K_c(RT)⁻² = K_c/(RT)²
【検算】定義から確かめる
K_c = [NH₃]²/([N₂][H₂]³)、[X] = p_X/(RT) を代入すると
K_c = {p(NH₃)²/(RT)²}/{p(N₂)·p(H₂)³/(RT)⁴} = K_p·(RT)²
すなわち K_p = K_c/(RT)² ○
よって ⑤
係数の和が減る反応(気体の分子数が減る反応)ではΔnが負になり、K_pはK_cを(RT)の累乗で割る形になる。指数の符号を取り違えると③を選んでしまう。
問4b:正解 ③(解答番号11/配点4)
<問題要旨>
密閉容器にN₂ 2.0 molとH₂ 6.0 molを入れて反応させたところ、平衡でNH₃が3.0 mol生成し、全圧は1.0×10⁸ Paでした。図1はNH₃の体積百分率と温度の関係を全圧ごとに示したグラフで、ここからこのときの反応温度を読み取ります。
<考え方>
図1の縦軸はNH₃の体積百分率なので、まず平衡での各成分の物質量から体積百分率を計算する。気体では体積百分率=物質量の百分率だから、平衡の量的関係を表にして総物質量で割ればよい。求めた値を、全圧1.0×10⁸ Paの曲線上で探す。
【平衡での物質量】NH₃ が 3.0 mol 生成した N₂ 2.0 − 1.5 = 0.5 mol H₂ 6.0 − 4.5 = 1.5 mol NH₃ 3.0 mol 合計 0.5 + 1.5 + 3.0 = 5.0 mol 【NH₃ の体積百分率】 3.0/5.0 × 100 = 60 % 【図1の読み取り】 高圧ほど NH₃ の割合が大きいので、1.0×10⁸ Pa は5本のうちいちばん上の曲線 この曲線が 60 % の補助線と交わるのは、500℃ の目盛りのやや左 → およそ 490℃ よって ③
②420℃は、一つ下の6.0×10⁷ Paの曲線を60%で読んだときの値に近い。凡例は上から1.0×10⁸ Pa、6.0×10⁷ Pa…の順に並び、圧力が高いほどNH₃の割合が大きくなる(ルシャトリエの原理で、分子数の減る右へ平衡が動く)ので、曲線の上下関係は必ず確かめること。
問4c:正解 ④(解答番号12/配点3)
<問題要旨>
ある温度と圧力でのNH₃の体積百分率の時間変化が、図2に破線で示されています。この条件から温度だけを100 K上げたときの時間変化を、図2に重ねた実線として表した図を五つから選ぶ設問です。活性化エネルギーは温度によって変わらないとされています。
<考え方>
温度を上げると変わるのは「反応の速さ」と「平衡の位置」の二つで、これを別々に考える。速さはアレニウスの考え方から必ず大きくなり、平衡の位置はルシャトリエの原理で決まる。NH₃の生成は発熱反応なので、高温では平衡は左に移動する。
【速さ】温度が高いほど活性化エネルギーを超えるエネルギーをもつ分子の割合が増える → 反応速度が大きくなり、平衡に達するまでの時間は短くなる(立ち上がりが急になる) 【平衡】N₂ + 3H₂ → 2NH₃ は発熱反応 温度を上げると吸熱の向き(左)へ平衡が移動する → 到達する NH₃ の体積百分率は破線より小さくなる 【図の判定】 ① 誤 立ち上がりは急だが、到達値が破線より大きい ② 誤 立ち上がりは急だが、到達値が破線とほぼ同じ ③ 誤 立ち上がりが破線より遅く、到達値も大きい ④ 正 急に立ち上がり、破線より低い値で一定になる ⑤ 誤 到達値は低いが、立ち上がりが破線より遅い よって ④
「速くなる」と「収率が下がる」は同時に起こる。ハーバー・ボッシュ法で500℃前後という中途半端な温度が使われるのは、この二つの折り合いをつけるためである。
第3問(必答) 無機物質(遷移元素の化合物、二酸化ケイ素と水ガラス、気体の発生と性質、ヨウ素の製造)
配点20点。遷移元素の化合物の反応、二酸化ケイ素から水ガラスへの変化、四つの反応式から気体を決めてその性質を判定する設問のあと、問4では昆布の灰・チリの鉱石・日本の地下水という三つの原料からヨウ素I₂を得る工程を、酸化還元の考え方で追います。
問1:正解 ②(解答番号13/配点3)
<問題要旨>
遷移元素の化合物に関する四つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。銅(Ⅱ)イオンの沈殿、鉄(Ⅲ)イオンの検出、過マンガン酸カリウムの酸化剤としてのはたらき、酸化銀の錯イオン形成が並んでいます。
<考え方>
遷移元素の反応は、沈殿の色と錯イオンの生成、そして酸化数の変化という三点で覚えておく。とくに鉄イオンの検出は、Fe²⁺・Fe³⁺とヘキサシアニド鉄酸カリウムの「たすきがけ」の組合せで濃青色になる、という対応を正確に押さえる。
① 正 CuSO₄ + 2NaOH → Cu(OH)₂↓(青白色)+ Na₂SO₄ ② 誤 Fe³⁺ に K₃[Fe(CN)₆] を加えても沈殿は生じない 濃青色沈殿を与えるのは Fe²⁺ + K₃[Fe(CN)₆]、または Fe³⁺ + K₄[Fe(CN)₆] の組合せ 「青白色沈殿」という色も誤り ③ 正 中性・塩基性では MnO₄⁻ + 2H₂O + 3e⁻ → MnO₂ + 4OH⁻ Mn の酸化数は +7 → +4 となり、黒色の MnO₂ が生じる ④ 正 Ag₂O + 4NH₃ + H₂O → 2[Ag(NH₃)₂]⁺ + 2OH⁻(ジアンミン銀(Ⅰ)イオン) よって ②
Fe³⁺の検出にはチオシアン酸カリウムKSCN(血赤色)またはK₄[Fe(CN)₆](濃青色)を使う。なお酸性条件のKMnO₄はMn²⁺(ほぼ無色)まで還元される点も合わせて確認しておきたい。
問2:正解 ③(解答番号14/配点3)
<問題要旨>
SiO₂とNa₂CO₃を高温で反応させるとNa₂SiO₃が生じ、これに水を加えて加熱すると水ガラスになります。Na₂SiO₃と水ガラスに関する四つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。
<考え方>
ケイ素の化合物は SiO₂ → Na₂SiO₃(ケイ酸ナトリウム)→ 水ガラス → ケイ酸 H₂SiO₃ → シリカゲル という一本の流れで押さえる。どの段階で何を加え、何が得られるかを順に確かめればよい。
① 正 SiO₂ + 2NaOH → Na₂SiO₃ + H₂O(高温で融解させて反応する) ② 正 Na₂SiO₃ で Si の酸化数を x とすると (+1)×2 + x + (−2)×3 = 0 x = +4 ③ 誤 シリカゲルは、水ガラスから遊離させたケイ酸を加熱・乾燥させたもの 水ガラスそのものを乾燥させたものではない ④ 正 Na₂SiO₃ + 2HCl → H₂SiO₃(ケイ酸)+ 2NaCl よって ③
シリカゲルは表面に多数の −OH をもち、そこに水分子が水素結合するので乾燥剤として使われる。③は「一段飛ばした記述」なので、流れを順に追えば落とせる。
問3:正解 ②(解答番号15/配点3)
<問題要旨>
四つの化学反応式(2)〜(5)の空欄ア〜エには、生成した気体の化学式が入ります。その気体ア〜エに関する四つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。
<考え方>
まず各反応式の原子の数を合わせて気体を決める。銅と濃硝酸ならNO₂、希硝酸ならNO、ホタル石と濃硫酸ならHF、酸素の無声放電ならO₃である。そのうえで、捕集法は「水に溶けるか」「空気より重いか軽いか」の二点で判定する。
【空欄の決定】 ア Cu + 4HNO₃(濃) → Cu(NO₃)₂ + 2H₂O + 2NO₂ イ 3Cu + 8HNO₃(希) → 3Cu(NO₃)₂ + 4H₂O + 2NO ウ CaF₂ + H₂SO₄ → CaSO₄ + 2HF エ 3O₂ → 2O₃ 【記述の判定】 ① 正 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO 酸性の水溶液になる ② 誤 NO は水に溶けにくく、分子量30で空気(平均29)とほぼ同じ密度 下方置換ではなく水上置換で捕集する ③ 正 フッ化水素酸はガラス(SiO₂)を溶かすので、ポリエチレン製の容器に保存する ④ 正 2KI + O₃ + H₂O → I₂ + 2KOH + O₂ 遊離した I₂ がデンプンを青紫色にするので、湿ったヨウ化カリウムデンプン紙で検出できる よって ②
NO₂は赤褐色で水に溶け空気より重いので下方置換、NOは無色で水に溶けにくいので水上置換。濃硝酸と希硝酸でどちらが出るかを取り違えないこと。
問4a:正解 ③(解答番号16/配点3)
<問題要旨>
昆布の灰から得たNaIのろ液に、希硫酸と過酸化水素水を加えるとI₂が生じます(式(6))。この反応に関連する四つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。
<考え方>
式(6)で何が酸化され何が還元されたかを、酸化数の変化で確かめるのが出発点。I⁻をI₂にするには酸化剤が必要なので、代わりに使える物質かどうかは「酸化剤か還元剤か」で決まる。
【式(6)】2NaI + 2H₂SO₄ + H₂O₂ → 2NaHSO₄ + 2H₂O + I₂ I の酸化数 −1 → 0 (酸化された) H₂O₂ の O −1 → −2 (還元された) ① 正 H₂O₂ は電子を受け取っているので酸化剤としてはたらいている ② 正 I₂ は無極性分子なのでヘキサンによく溶け、ヘキサン層が赤紫色になる ③ 誤 SnCl₂ は Sn²⁺ → Sn⁴⁺ と変化する還元剤で、I⁻ を I₂ に酸化することはできない ④ 正 2NaI + Cl₂ → 2NaCl + I₂ ハロゲンの酸化力は Cl₂ > I₂ なので、この反応は進む よって ③
H₂O₂は相手によって酸化剤にも還元剤にもなるが、KMnO₄のような強い酸化剤と組むとき以外は酸化剤としてはたらく。③は「酸化剤の代わりに還元剤を入れる」という筋の通らない記述なので、酸化数を見れば即座に落とせる。
問4b:正解 ⑤(解答番号17/配点4)
<問題要旨>
式(7) 2NaIO₃ + a NaHSO₃ → b NaHSO₄ + c Na₂SO₄ + H₂O + I₂ の係数a〜cは未知です。この式に従って2 molのNaIO₃から1 molのI₂が生成するとき、消費されるNaHSO₃の物質量を求めます。
<考え方>
酸化還元反応の係数は「授受される電子の数が等しい」ことから決まる。Iは+5から0へ、Sは+4から+6へ変化するので、まず電子の数でaを決め、残るbとcはNaとSの原子の収支で確かめればよい。
【酸化数の変化】 I +5 → 0 NaIO₃ 2 mol が受け取る電子 2×5 = 10 mol S +4 → +6 NaHSO₃ 1 mol が出す電子 2 mol 【電子の数が等しい】 2a = 10 a = 5 【b と c の確認】 Na の収支 2 + 5 = b + 2c = 7 S の収支 5 = b + c → b = 3、c = 2 【検算】 H 左 5、右 3(NaHSO₄)+ 2(H₂O)= 5 ○ O 左 2×3 + 5×3 = 21、右 3×4 + 2×4 + 1 = 21 ○ よって ⑤
係数が問われているのはaだけなので、電子の数を合わせた時点で答えは出る。bとcまで求めるのは検算として有効で、原子の収支が合えば係数の決定は確実になる。
問4c:正解 ⑧・⓪・④(解答番号18・19・20/配点4)
<問題要旨>
式(8)(9)により、地下水2.50×10⁵ Lから25.4 kgのI₂が得られました。地下水に含まれていたNaIの濃度を有効数字2桁で □.□×10⁻□ mol/L の形に表し、三つの解答番号に数字を一つずつ入れます。NaIはすべてI₂になったものとします。
<考え方>
二つの式をつないで「NaI何molからI₂が1 molできるか」を先に押さえる。式(8)でNaI 2 molからCuI 2 mol、式(9)でCuI 2 molからI₂ 1 molなので、NaI 2 molがI₂ 1 molに対応する。あとはI₂の物質量から逆にたどればよい。
【I₂ の物質量】I₂ = 127×2 = 254 25.4 kg = 2.54×10⁴ g n(I₂) = 2.54×10⁴/254 = 1.00×10² mol 【NaI の物質量】 式(8) 2NaI → 2CuI 式(9) 2CuI → I₂ つないで 2NaI → I₂ n(NaI) = 2 × 1.00×10² = 2.00×10² mol 【濃度】 2.00×10²/(2.50×10⁵) = 8.0×10⁻⁴ mol/L 解答番号18 = 8、解答番号19 = 0、解答番号20 = 4 よって ⑧・⓪・④
式(8)だけを見るとNaIとCuIが1:1なので、そこで止めるとI₂が2倍になってしまう。式(9)でCuI 2 molからI₂が1 molしか出ないことまで含めて、NaI 2 mol → I₂ 1 mol とつなぐこと。
第4問(必答) 有機化合物と高分子(酸素を含む化合物の反応、付加生成物の構造決定、糖とタンパク質、アセチレンとビニロン)
配点20点。酸素を含む有機化合物の反応と天然高分子の知識問題のあと、問2でアクリル酸メチルとアニリンから生じた化合物の構造を三つの条件から決め、問4ではアセチレンを出発点に、日本初の合成繊維ビニロンの合成経路とアセタール化の量計算を扱います。
問1:正解 ②(解答番号21/配点3)
<問題要旨>
酸素を含む有機化合物の反応に関する五つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。エチレングリコールとナトリウム、フェノールと炭酸水素ナトリウム、エタノールの脱水、ヨードホルム反応、無水酢酸によるアセチル化が並んでいます。
<考え方>
酸の強弱がからむ記述は「強い酸は弱い酸を追い出す」という原則に戻す。フェノール類は炭酸より弱い酸なので、炭酸水素ナトリウムと反応してCO₂を発生させることはできない。
① 正 2C₂H₄(OH)₂ + 2Na → 2C₂H₄(OH)ONa + H₂ ヒドロキシ基は Na と反応して H₂ を発生する ② 誤 酸の強さは カルボン酸 > 炭酸 > フェノール フェノールは炭酸より弱い酸なので NaHCO₃ から CO₂ を追い出せない ③ 正 2C₂H₅OH → C₂H₅OC₂H₅ + H₂O(約130〜140℃での分子間脱水) ④ 正 アセトンは CH₃CO− をもつのでヨードホルム反応を示し、CHI₃ の黄色沈殿が生じる ⑤ 正 (CH₃CO)₂O + C₆H₅OH → CH₃COOC₆H₅ + CH₃COOH(アセチル化) よって ②
フェノールとNaOH水溶液は中和して溶けるが、NaHCO₃水溶液とは反応しない。この違いは、カルボン酸とフェノールを分離する操作の根拠にもなっている。
問2:正解 ⑤(解答番号22/配点4)
<問題要旨>
アクリル酸メチル(分子量86.0)とアニリン(分子量93.0)の反応で化合物Aが生成しました。Aは「エステル結合をもつ」「不斉炭素原子をもたない」「分子量は179.0である」という三条件をすべて満たします。六つの構造式からAを選びます。
<考え方>
まず分子量から反応の型を決める。179.0 = 86.0 + 93.0 なので、水などが脱離しない付加反応である。分子式の条件で候補を絞ってから、エステル結合の有無、不斉炭素原子の有無という順に落としていけばよい。
【条件Ⅲ】分子量 179.0 86.0 + 93.0 = 179.0 → 脱離するものが無い付加反応で生じた化合物 ① ② … C₁₀H₁₁NO₂ = 177.0 → 不適 ④ … C₉H₁₁NO = 149.0 → 不適 ③ ⑤ ⑥ … C₁₀H₁₃NO₂ = 179.0 → 残る 【条件Ⅰ】エステル結合 −COO− をもつ ③ はカルボキシル基 −COOH でエステルではない → 不適 ⑤ ⑥ が残る 【条件Ⅱ】不斉炭素原子をもたない ⑥ CH₃−CH(NH−C₆H₅)−COOCH₃ 中央の C に −CH₃、−NHC₆H₅、−COOCH₃、−H の4種が結合 → 不斉炭素原子をもつ 不適 ⑤ C₆H₅−NH−CH₂−CH₂−COOCH₃ どの炭素も、結合する4つの原子・原子団のうち2つ以上が同じ → 不斉炭素原子なし よって ⑤
アニリンの窒素は、C=Cのうちカルボニル基から遠いほうの炭素に付加する。⑥のようにカルボニル基の隣の炭素に付いた構造を考えると不斉炭素原子ができてしまい、条件Ⅱで落ちる。
問3:正解 ④(解答番号23/配点3)
<問題要旨>
天然に存在する化合物に関する四つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。タンパク質の二次構造、アミノ酸の結晶、グルコースの水溶液中の平衡、フルクトースとグルコースの関係が問われています。
<考え方>
異性体の用語は「原子のつながり方が違うか、立体的な配置だけが違うか」で分ける。つながり方が違えば構造異性体、つながり方が同じで空間配置だけ違えば立体異性体である。
① 正 ポリペプチド鎖の C=O と N−H の間の水素結合で α ヘリックスや β シートができる(二次構造) ② 正 アミノ酸は結晶中では −NH₃⁺ と −COO⁻ をあわせもつ双性イオンになっている ③ 正 水溶液中では α-グルコース・β-グルコース(環状2種)と鎖状構造の計3種が平衡状態で共存する ④ 誤 グルコースとフルクトースはともに C₆H₁₂O₆ だが、一方はアルデヒド基、他方はケトン基をもつ 原子のつながり方が違うので構造異性体であり、立体異性体ではない よって ④
グルコースとフルクトースのように分子式が同じで官能基が異なる関係は構造異性体。α-グルコースとβ-グルコースの関係こそが立体異性体にあたる。
問4a:正解 ⑤(解答番号24/配点3)
<問題要旨>
アセチレンに関する五つの記述のうち、誤りを含むものを選ぶ設問です。製法、燃焼、水の付加、HCNの付加、ポリアセチレンの構造が並んでいます。
<考え方>
アセチレンは三重結合をもつので付加反応が中心。付加や重合が起こると三重結合は二重結合や単結合に変わるので、生成物に三重結合が残るかどうかを確かめればよい。
① 正 CaC₂ + 2H₂O → C₂H₂ + Ca(OH)₂ ② 正 酸素アセチレン炎は約3000℃に達し、金属の切断・溶接に用いられる ③ 正 CH≡CH + H₂O → CH₃CHO(不安定なビニルアルコールを経てアセトアルデヒドになる) ④ 正 CH≡CH + HCN → CH₂=CH−CN アクリロニトリル(アクリル繊維の原料) ⑤ 誤 付加重合では三重結合の1本が開いて隣の単量体とつながる ポリアセチレンは二重結合と単結合が交互に並んだ構造で、三重結合はもたない よって ⑤
二重結合と単結合が交互に並んだ共役構造をもつため、ポリアセチレンはヨウ素などを加えると電気を通す(導電性高分子)。この性質も交互の二重結合に由来する。
問4b:正解 ⑥・①・⑨(解答番号25・26・27/配点3)
<問題要旨>
図1のビニロンの合成経路で、アセチレンに酢酸を付加させて得た酢酸ビニルは、反応アによって化合物Bになり、さらに反応イによってポリビニルアルコール(PVA)になります。反応ア・反応イ・化合物Bをそれぞれ選びます。
<考え方>
高分子の合成経路は「いつ重合するか」で決まる。酢酸ビニルはC=Cをもつ単量体なので先に付加重合させて高分子にし、そのあとエステル結合を加水分解(けん化)してヒドロキシ基に変えるとPVAが得られる。
酢酸ビニル CH₂=CH−OCOCH₃ 【反応ア】C=C をもつ単量体をつなげて高分子にする → 付加重合 ⑥ 【化合物B】付加重合で生じたポリ酢酸ビニル −[CH₂−CH(OCOCH₃)]ₙ− → ⑨ (⑦ ⑧ は主鎖に C=C が残った構造で、付加重合では生じない) 【反応イ】エステル結合を切ってヒドロキシ基に変える → 加水分解(けん化) ① −[CH₂−CH(OCOCH₃)]ₙ− + nNaOH → −[CH₂−CH(OH)]ₙ− + nCH₃COONa よって 解答番号25 = ⑥、解答番号26 = ①、解答番号27 = ⑨
先に加水分解してビニルアルコールを作り、それを重合させる経路は取れない。ビニルアルコール CH₂=CH−OH は不安定で、ただちにアセトアルデヒドに変わってしまうためである。
問4c:正解 ③(解答番号28/配点4)
<問題要旨>
PVA(繰り返し単位の式量44.0)88.0 gを、ブチルアルデヒド(分子量72.0)でアセタール化したところ、ポリビニルブチラールが120.4 g得られました。PVAのヒドロキシ基のうちアセタール化された割合を求めます。
<考え方>
アセタール化は「ヒドロキシ基2個とアルデヒド1分子から水1分子がとれて環ができる」反応。1回の反応あたりの質量の増え方が決まるので、増加量から反応が何回起こったかを出し、そこからヒドロキシ基の数に直せばよい。
【PVA の繰り返し単位】 88.0/44.0 = 2.00 mol(ヒドロキシ基も 2.00 mol) 【アセタール化 1 回あたりの質量変化】 +72.0(C₃H₇CHO が入る)− 18.0(H₂O がとれる)= +54.0 g 【質量の増加】 120.4 − 88.0 = 32.4 g 【反応した回数】 32.4/54.0 = 0.600 mol 【使われたヒドロキシ基】1 回の反応で OH 2 個が消える 0.600 × 2 = 1.200 mol 【割合】 1.200/2.00 × 100 = 60 % 【検算】x = 0.600、y = 2.00 − 1.200 = 0.80 として生成物の質量を出す 0.600×(44.0×2 − 18.0 + 72.0) + 0.80×44.0 = 0.600×142.0 + 35.2 = 85.2 + 35.2 = 120.4 g ○ よって ③
「反応した回数」と「使われたヒドロキシ基の数」を取り違えると30%(①)になる。1回の環づくりでヒドロキシ基が2個消えることを、最後に必ず確認すること。
第5問(選択) 原油の分留とバナジウムの化学(新課程:生成エンタルピーで問う)
配点20点。新教育課程履修者はこの第5問を解答します(旧教育課程履修者等は第6問との選択)。原油の分留塔の留出物、ナフサから作るナイロン6の合成経路、そして原油に含まれるバナジウムについて、酸化数・触媒・生成エンタルピーによる二経路の比較・EDTAを用いた定量まで扱う総合問題です。
問1:正解 ③(解答番号29/配点3)
<問題要旨>
図1の分留塔で、石油ガスと重油(残油)のほかに得られる留出物A〜Cの組合せを選ぶ設問です。図には各留出口の留出温度が示されています。
<考え方>
分留は沸点の違いで混合物を分ける操作なので、沸点の低い成分ほど塔の上まで上がって先に取り出される。炭化水素は炭素数が多いほど分子間力が大きく沸点が高い、という順に当てはめればよい。
【図1の留出温度】 〜30℃ 石油ガス 30〜180℃ 留出物A 180〜250℃ 留出物B 250〜350℃ 留出物C 350℃〜 重油(残油) 【沸点の低い順(炭素数の少ない順)】 石油ガス < ナフサ < 灯油 < 軽油 < 重油 【対応づけ】 A = ナフサ(粗製ガソリン) B = 灯油 C = 軽油 よって ③
ナフサは炭素数およそ5〜11、灯油は11〜13、軽油は14〜20が目安。「軽油」は名前に「軽」とあるが灯油より重い(沸点が高い)ので、名前の印象で順番を決めないこと。
問2:正解 ④(解答番号30/配点4)
<問題要旨>
図2の経路で、ベンゼンにPtまたはNiを触媒として高温・高圧で水素を反応させると化合物Dが得られ、Dを酸化するとシクロヘキサノンになります。さらにヒドロキシルアミンとの反応でε-カプロラクタムとなり、その開環重合で化合物Eが得られます。DとEの組合せを選びます。
<考え方>
ベンゼンの接触水素化は二重結合が3つとも飽和するところまで進み、シクロヘキサンになる。そのことは次の段階でシクロヘキサノンが生じることからも確かめられる。ε-カプロラクタムの開環重合で生じるのは、アミド結合が繰り返すナイロン6である。
【化合物D】C₆H₆ + 3H₂ → C₆H₁₂(シクロヘキサン) 環の炭素はすべて CH₂ → ④ ⑤ ⑥ の構造 (① ② ③ は C=C が残っており、水素化が途中で止まった構造) 【化合物E】ε-カプロラクタム(環内に −CO−NH− をもつ七員環)の開環重合 −[CO−(CH₂)₅−NH]ₙ− ナイロン6 → ① ④ (② ⑤ は −CO−(CH₂)₄−CO−NH−(CH₂)₆−NH− の繰り返しで、 アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの縮合重合で得られるナイロン66) 両方を満たすのは ④ よって ④
ナイロン6は単量体1種類の開環重合、ナイロン66は2種類の単量体の縮合重合。繰り返し単位のCH₂の数が5本続くか、4と6に分かれるかで見分けられる。
問3a:正解 ④(解答番号31/配点3)
<問題要旨>
下線部(a)について、原油中のバナジウムが存在する形であるオキシドバナジウムイオンVO²⁺の、V原子の酸化数を求める設問です。
<考え方>
酸化数の決め方の基本は「化合物中の酸素は−2」「多原子イオンでは酸化数の総和がイオンの電荷に等しい」の二つ。これを式にするだけで決まる。
VO²⁺ において、化合物中の O の酸化数は −2 V の酸化数を x とすると、イオン全体の電荷が +2 だから x + (−2) = +2 x = +4 よって ④
同じ文中のV₂O₅では 2x + (−2)×5 = 0 より+5で、バナジウムは+4と+5の両方の酸化数をとる。下線部(c)の還元は、この+5から単体の0への変化にあたる。
問3b:正解 ①(解答番号32/配点3)
<問題要旨>
下線部(b)について、V₂O₅を触媒としてナフタレンを酸化したときの生成物を、五つの構造式から選ぶ設問です。
<考え方>
ナフタレンは2つのベンゼン環が縮合した構造で、V₂O₅を触媒として空気酸化すると片方の環が壊れる。残った環には隣り合う位置に2つのカルボキシル基が残り、分子内で脱水して環状の酸無水物になる。
ナフタレン C₁₀H₈ の酸化(V₂O₅ 触媒、空気酸化) 片方の環の炭素が CO₂ として失われる → 残った環の o位(隣り合う位置)に −COOH が2つ残り、分子内脱水で酸無水物になる ① 正 無水フタル酸 ベンゼン環に五員環の酸無水物が縮合した構造 ② 誤 ベンゼン環に六員環のラクトンが縮合した構造。この酸化では生じない ③ 誤 カテコール(o-ジヒドロキシベンゼン)。酸化ではなくヒドロキシ基の導入 ④ 誤 ヒドロキノン(p-ジヒドロキシベンゼン)。同上 ⑤ 誤 無水マレイン酸。これは同じ V₂O₅ 触媒でベンゼンを酸化したときの生成物 よって ①
無水フタル酸はフタル酸エステルやアルキド樹脂の原料になる。⑤の無水マレイン酸と取り違えやすいが、ベンゼン環が残っているか(C₈か、C₄だけか)で区別できる。
問3c:正解 ①(解答番号33/配点4)
<問題要旨>
下線部(c)について、V₂O₅から単体のVを得る二つの経路(図3)が示されています。経路Ⅰは式(1)のみ、経路Ⅱは式(2)と式(3)の二段階です。表1の生成エンタルピーから、V₂O₅ 1 molあたりの反応エンタルピーΔH_ⅠとΔH_Ⅱを求め、大小関係を選びます。
<考え方>
ヘスの法則から、反応エンタルピーは「(生成物の生成エンタルピーの和)−(反応物の生成エンタルピーの和)」で求まる。単体の生成エンタルピーは0とされているので、Ca・H₂・Vの項はすべて落ちる。経路Ⅱは二段階なので、それぞれのΔHを出して足す。
ΔH = Σ(生成物の生成エンタルピー)− Σ(反応物の生成エンタルピー)
【経路Ⅰ】式(1) V₂O₅ + 5Ca → 2V + 5CaO
ΔH_Ⅰ = 5×(−636) − (−1550)
= −3180 + 1550 = −1630 kJ
【経路Ⅱ】
式(2) V₂O₅ + 2H₂ → V₂O₃ + 2H₂O(液)
ΔH₂ = {(−1220) + 2×(−286)} − (−1550)
= −1792 + 1550 = −242 kJ
式(3) V₂O₃ + 3Ca → 2V + 3CaO
ΔH₃ = 3×(−636) − (−1220)
= −1908 + 1220 = −688 kJ
ΔH_Ⅱ = (−242) + (−688) = −930 kJ
【大小関係】
ΔH_Ⅰ = −1630 < ΔH_Ⅱ = −930 < 0 kJ
よって ①
経路が違えばΔHも違う。始点のV₂O₅と終点のVは共通でも、経路Ⅰは酸素をすべてCaOに渡すのに対し、経路Ⅱは一部をH₂Oに渡すので、出入りする物質が同じではないためである。どちらも発熱(負)である点は、単体のCaが酸化される反応が含まれることから見当がつく。
問3d:正解 ③(解答番号34/配点3)
<問題要旨>
重油の燃焼灰1.00 gに含まれるバナジウムをすべてVO²⁺に変えて250 mLの水溶液とし、その10.0 mLに1.00×10⁻² mol/LのEDTA水溶液を4.00 mL加えたところ、すべてのVO²⁺が過不足なくVO−EDTAに変化しました。燃焼灰1.00 g中のVの質量を求めます。
<考え方>
VO²⁺とEDTAは1:1の物質量の比で反応するので、加えたEDTAの物質量がそのまま10.0 mL中のVO²⁺の物質量になる。はかり取ったのは250 mLのうちの10.0 mLなので、25倍して全体に直してから原子量をかける。
【EDTA の物質量】 1.00×10⁻² mol/L × 4.00×10⁻³ L = 4.00×10⁻⁵ mol 【10.0 mL 中の V】VO²⁺ と EDTA は 1:1 4.00×10⁻⁵ mol 【250 mL 全体の V】 4.00×10⁻⁵ × 250/10.0 = 4.00×10⁻⁵ × 25.0 = 1.00×10⁻³ mol 【質量】V = 51 1.00×10⁻³ × 51 = 5.10×10⁻² g 【検算】燃焼灰 1.00 g に対して 5.10×10⁻² g なので約 5.1 %。重油の燃焼灰に含まれる量として無理のない大きさ。 よって ③
②2.04×10⁻³ g は、250 mLへの換算(25倍)を忘れて10.0 mL分のまま質量にした値。「はかり取った10.0 mLは全体の1/25」という一行を式に残しておくと取りこぼさない。
第6問(選択) 原油の分留とバナジウムの化学(旧課程:生成熱で問う)
配点20点。旧教育課程履修者等が第5問との選択で解答する大問で、新教育課程履修者は解答してはいけません。題材も設問も第5問とほとんど同じで、異なるのは問3cだけです。第5問が新課程の「生成エンタルピー」(負の値)で問うのに対し、第6問は旧課程の「生成熱」(正の値)で問うため符号の向きが逆になり、同じ計算をしても選ぶ選択肢が変わります。
問1:正解 ③(解答番号35/配点3)
<問題要旨>
図1の分留塔で、石油ガスと重油(残油)のほかに得られる留出物A〜Cの組合せを選ぶ設問です。第5問問1と同一の内容です。
<考え方>
第5問問1と同じ考え方。分留では沸点の低い成分ほど塔の上まで上がって先に取り出されるので、留出温度の低い順にナフサ・灯油・軽油を当てはめればよい。
【図1の留出温度】 〜30℃ 石油ガス 30〜180℃ 留出物A 180〜250℃ 留出物B 250〜350℃ 留出物C 350℃〜 重油(残油) 【沸点の低い順】 石油ガス < ナフサ < 灯油 < 軽油 < 重油 【対応づけ】 A = ナフサ(粗製ガソリン) B = 灯油 C = 軽油 よって ③
問2:正解 ④(解答番号36/配点4)
<問題要旨>
ベンゼンに水素を反応させて得られる化合物Dと、ε-カプロラクタムの開環重合で得られる化合物Eの組合せを選ぶ設問です。第5問問2と同一の内容です。
<考え方>
第5問問2と同じ考え方。ベンゼンの接触水素化は3つの二重結合がすべて飽和してシクロヘキサンになるところまで進み、ε-カプロラクタムの開環重合で生じるのはナイロン6である。
【化合物D】C₆H₆ + 3H₂ → C₆H₁₂(シクロヘキサン) 環の炭素はすべて CH₂ → ④ ⑤ ⑥ の構造 【化合物E】ε-カプロラクタムの開環重合 −[CO−(CH₂)₅−NH]ₙ− ナイロン6 → ① ④ (② ⑤ はナイロン66で、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの縮合重合による) 両方を満たすのは ④ よって ④
問3a:正解 ④(解答番号37/配点3)
<問題要旨>
オキシドバナジウムイオンVO²⁺の、V原子の酸化数を求める設問です。第5問問3aと同一の内容です。
<考え方>
第5問問3aと同じ考え方。化合物中の酸素の酸化数を−2とし、多原子イオンでは酸化数の総和がイオンの電荷に等しいことを使う。
VO²⁺ において O の酸化数は −2 V の酸化数を x とすると x + (−2) = +2 x = +4 よって ④
問3b:正解 ①(解答番号38/配点3)
<問題要旨>
V₂O₅を触媒としてナフタレンを酸化したときの生成物を、五つの構造式から選ぶ設問です。第5問問3bと同一の内容です。
<考え方>
第5問問3bと同じ考え方。ナフタレンの片方の環が酸化で失われ、残った環の隣り合う位置に残った2つのカルボキシル基が分子内脱水して酸無水物になる。
ナフタレン C₁₀H₈ の V₂O₅ 触媒による空気酸化 片方の環が CO₂ として失われ、残った環の o位に −COOH が2つ → 分子内脱水して無水フタル酸 ① 正 無水フタル酸 ② 誤 ベンゼン環に六員環のラクトンが縮合した構造 ③ 誤 カテコール ④ 誤 ヒドロキノン ⑤ 誤 無水マレイン酸(ベンゼンを同じ触媒で酸化したときの生成物) よって ①
問3c:正解 ⑥(解答番号39/配点4)
<問題要旨>
V₂O₅から単体のVを得る二つの経路について、表1の生成熱からV₂O₅ 1 molあたりの反応熱Q_ⅠとQ_Ⅱを求め、大小関係を選ぶ設問です。第5問問3cと同じ内容ですが、こちらは旧課程の「生成熱」で問われており、表1の値はすべて正の値で示されています。
<考え方>
反応熱Qは「(生成物の生成熱の和)−(反応物の生成熱の和)」で求まる。ここが第5問問3cとの分かれ目で、生成熱Qは「放出する熱量」なので発熱反応では正、エンタルピー変化ΔHは「系がもつエネルギーの変化」なので発熱反応では負になる。同じ反応でも Q = −ΔH の関係で符号が逆になる。
Q = Σ(生成物の生成熱)− Σ(反応物の生成熱) 【経路Ⅰ】式(1) V₂O₅ + 5Ca → 2V + 5CaO Q_Ⅰ = 5×636 − 1550 = 3180 − 1550 = +1630 kJ 【経路Ⅱ】 式(2) V₂O₅ + 2H₂ → V₂O₃ + 2H₂O(液) Q₂ = (1220 + 2×286) − 1550 = 1792 − 1550 = +242 kJ 式(3) V₂O₃ + 3Ca → 2V + 3CaO Q₃ = 3×636 − 1220 = 1908 − 1220 = +688 kJ Q_Ⅱ = 242 + 688 = +930 kJ 【大小関係】どちらも発熱で正の値 0 kJ < Q_Ⅱ = 930 < Q_Ⅰ = 1630 よって ⑥
第5問問3c(解答番号33)はまったく同じ反応を生成エンタルピーで扱い、ΔH_Ⅰ = −1630 kJ、ΔH_Ⅱ = −930 kJ として①が正解になる。数値の絶対値は同じでも、符号が逆になることで不等号の向きが入れ替わる点が、新課程と旧課程の表記の違いそのものである。
問3d:正解 ③(解答番号40/配点3)
<問題要旨>
重油の燃焼灰1.00 gに含まれるバナジウムをすべてVO²⁺に変えて250 mLの水溶液とし、その10.0 mLに1.00×10⁻² mol/LのEDTA水溶液を4.00 mL加えると過不足なく反応しました。燃焼灰1.00 g中のVの質量を求めます。第5問問3dと同一の内容です。
<考え方>
第5問問3dと同じ考え方。VO²⁺とEDTAは1:1で反応するので加えたEDTAの物質量が10.0 mL中のVの物質量になり、それを25倍して250 mL全体に直してから原子量51をかける。
【EDTA の物質量】 1.00×10⁻² mol/L × 4.00×10⁻³ L = 4.00×10⁻⁵ mol 【10.0 mL 中の V】1:1 で反応するから 4.00×10⁻⁵ mol 【250 mL 全体の V】 4.00×10⁻⁵ × 250/10.0 = 1.00×10⁻³ mol 【質量】V = 51 1.00×10⁻³ × 51 = 5.10×10⁻² g よって ③
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

