2022年度 大学入学共通テスト 本試験 生物基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解④

<問題要旨>

酵素の性質と、タンパク質としての一般的な特徴に関する理解を問う問題です。

<選択肢>

①【正】

酵素は生体触媒であり、それ自体は変化せずに化学反応を著しく促進させる働きを持ちます。

②【正】

酵素の主成分はタンパク質です。口から摂取すると、タンパク質は消化管内でアミノ酸に分解されるため、そのままの形で細胞内に取り込まれて機能することはありません。

③【正】

酵素は細胞内のリボソームで、DNAの遺伝情報に基づいて合成されるタンパク質です。

④【誤】

酵素は細胞内だけでなく、細胞外に取り出された状態でも、適切な温度やpHであれば触媒として働きます。例えば、消化酵素が細胞外(消化管内)で働くことや、洗濯洗剤に含まれる酵素などがその例です。

⑤【正】

触媒の性質として、反応の前後で自身は変化しません。そのため、少量の酵素で繰り返し基質に作用し、反応を進行させることができます。

問2:正解⑥

<問題要旨>

細胞内でエネルギー(ATP)の合成が行われる場所を正しく選択する問題です。

<選択肢>

ⓐ【不適】

核はゲノムDNAの保持や転写の場であり、ATP合成の主要な場所ではありません。

ⓑ【適】

ミトコンドリアは「呼吸」の場であり、有機物を分解して多量のATPを合成します。

ⓒ【適】

葉緑体は「光合成」の場であり、光エネルギーを利用してATPを合成します。

⑥【正】

ATPを合成するのはミトコンドリア(ⓑ)と葉緑体(ⓒ)の両方です。したがって、ⓑとⓒの組み合わせである⑥が正解となります。

問3:正解①

<問題要旨>

細菌(原核生物)の構造や特徴について、他の生物群との共通点や相違点を問う問題です。

<選択肢>

①【正】

細菌(大腸菌など)は原核生物であり、真核生物のような核膜に包まれた「核」を持ちません。DNAは細胞質中に存在します。

②【誤】

細菌は単細胞生物であり、多くの細胞が集まって組織や器官を作る多細胞生物ではありません。

③【誤】

ミトコンドリアや葉緑体は真核生物特有の細胞小器官です。原核生物である細菌はこれらを持ちません。

④【誤】

すべての細菌が光合成を行うわけではありません。シアノバクテリアなど一部を除き、多くの細菌(大腸菌や乳酸菌など)は光合成を行いません。

⑤【誤】

ウイルスは細胞構造を持ちませんが、細菌は細胞膜や細胞壁を持つ「細胞」からなる生物です。

問4:正解③

<問題要旨>

DNAの二重らせん構造における塩基の結合規則(シャルガフの規則)を用いた計算問題です。

<選択肢>

③【正】

DNAの二重らせんでは、A(アデニン)はT(チミン)と、G(グアニン)はC(シトシン)と必ず対になって結合します。

そのため、二本鎖DNA全体では A=T、G=C という関係が成立します。

問題文より A=30% であれば、T=30% となります。

A+T = 60\% なので、残りの 40% が G+C の合計です。

G=C なので、G = 40% ÷ 2 = 20% となります。

問5:正解⑤

<問題要旨>

細胞周期における各期の長さと、観察される細胞数の関係から時間を算出する計算問題です。

<選択肢>

⑤【正】

細胞周期が 20時間 であり、全細胞数が 1000個 であるとき、各ステージの時間は細胞数の割合に比例します。

各期の細胞数は以下の通りです。

・G1期:300個

・S期:200個

・G2期+M期:500個

(※図から「分裂期の細胞」や「DNA合成期の細胞」の数を読み取ります)

DNA合成準備期(G1期)の時間は、

20時間 × (300 / 1000) = 6時間

DNA合成期(S期)の時間は、

20時間 × (200 / 1000) = 4時間

これらを組み合わせて正解を導き出します。

問6:正解⑤

<問題要旨>

だ腺染色体のパフの形成理由と、細胞の分化(遺伝子の選択的発現)に関する知識を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

パフは、DNAがほどけて「転写(RNAの合成)」が活発に行われている領域です。DNAが凝縮している場所ではありません。

②【誤】

だ腺染色体は、DNAの複製が繰り返された後に分離せず束になっているため、通常の染色体の100倍程度の大きさがあります。

③【誤】

パフの位置は幼虫の成長段階(時期)によって変化します。これは時期ごとに必要となるタンパク質が異なるためです。

④【誤】

同じ個体の細胞であれば、だ腺細胞も他の組織の細胞も、保持しているゲノム(遺伝情報)は同一です。

⑤【正】

多細胞生物において細胞ごとに形や働きが異なるのは、持っている遺伝子のうち「どの遺伝子が働くか(発現するか)」の組み合わせが細胞ごとに異なるためです。これを「遺伝子の選択的発現」と呼びます。

第2問

問1:正解③

<問題要旨>

腎臓の「ろ過」と「再吸収」の仕組み、および特定の物質がどれだけ濃縮されたかを示す「濃縮率」を計算する問題です。

<選択肢>

①【誤】

健康な人の尿にはグルコースは含まれません。糸球体でろ過された後、細尿管ですべて再吸収されるためです。

②【誤】

タンパク質は分子が大きいため、通常は糸球体でろ過されず、原尿中にはほとんど存在しません。

③【正】

濃縮率 =(尿中の濃度)÷(血しょう中の濃度)です。

・イヌリン:12 ÷ 0.1 = 120倍

・尿素:20 ÷ 0.2 = 100倍

よって、イヌリンの濃縮率の方が高いと言えます。

④【誤】

③の計算通り、尿素の濃縮率(100倍)はイヌリン(120倍)より低いため、この記述は誤りです。

問2:(ア)正解② (イ)正解④

<問題要旨>

血糖値調節における自律神経とホルモンの関係、およびフィードバック調節の名称を問う問題です。

<選択肢>

(ア)②【正】

高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島B細胞が刺激され、インスリンが分泌されます。インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、血糖値を下げます。

(イ)④【正】変化した結果(血糖値低下など)が、その原因(インスリン分泌など)を抑制する方向に働く調節を「負のフィードバック」と呼びます。

問3:正解③

<問題要旨>

心臓の拍動調節における交感神経と副交感神経の拮抗的な働きを問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

心臓の拍動の基本リズムは、右心房にある「ペースメーカー(洞房結節)」が作っています。

②【誤】

交感神経が働くと、心臓の拍動は「促進」されます。

③【正】

激しい運動時や驚いた時、交感神経が優位になり心拍数が増加します。休息時には副交感神経が優位になり拍動は抑制されます。

④【誤】

交感神経は脊髄(胸腰髄)から、副交感神経(心臓行き)は脳(延髄)から出ています。

問4:正解①

<問題要旨>

バソプレシンによる体液浸透圧の調節メカニズム(場所、作用、結果)を正確に理解しているかを問う問題です。

<選択肢>

①【正】

体内の水分が減り血しょう浸透圧が上昇すると、脳下垂体後葉からバソプレシンが分泌されます。これが腎臓の集合管に作用して水の再吸収を促進し、尿量を減少させます。

②【誤】

バソプレシンは「脳下垂体後葉」から分泌されます。前葉ではありません。

③【誤】

バソプレシンは水の再吸収を「促進」します。

④【誤】

水の再吸収が進むため、体外へ捨てられる「尿の量」は減少します。

問5:正解②

<問題要旨>

獲得免疫(適応免疫)における「抗原提示」と、それに続くヘルパーT細胞の活性化プロセスを問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

樹状細胞などは抗原を「提示」するのであり、周囲に抗原を「放出」して知らせるわけではありません。

②【正】

樹状細胞が提示した抗原断片を、ヘルパーT細胞が認識して活性化し、他の免疫細胞(B細胞やキラーT細胞)へ指令を出します。

③【誤】

樹状細胞がキラーT細胞を破壊することはありません。むしろ活性化を助ける側です。

④【誤】

B細胞が抗体を産生するには、通常、活性化したヘルパーT細胞からの助けが必要です。

第3問

問1:正解⑥

<問題要旨>

日本のバイオームの垂直分布における、標高と植生の関係を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

丘陵帯(低地)は照葉樹林や夏緑樹林です。ハイマツは高山帯の植物です。

②【誤】

山地帯(本州中部では約500~1500m)はブナなどの夏緑樹林が中心です。

③【誤】

亜高山帯(約1500~2500m)はシラビソ、コメツガなどの針葉樹林です。

⑥【正】

標高2500m付近の「森林限界」より上(高山帯)では、背の高い樹木が育たず、ハイマツなどの低木や高山草原が見られます。

問2:正解⑥

<問題要旨>

森林の遷移過程における、光の強さと陽樹・陰樹の生存戦略(光補償点・光飽和点)の関係を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

裸地に最初に侵入する「先駆植物」は地衣類・コケ類や、光に強い陽性の草本です。

②【誤】

遷移が進み、樹木が成長して林冠を形成すると、地面付近(林床)に届く光は弱くなります。

③【誤】

陽樹の幼木は光補償点が高いため、暗い林床では成長できず枯れてしまいます。

⑥【正】

陰樹の幼木は光補償点が低く、暗い林内でも成長できます。そのため、最終的には陰樹が林を占める「極相(クライマックス)」へ移行します。

問3:正解⑤

<問題要旨>

生態系における「エネルギーの流れ」が、物質の循環とは異なり「一方通行」であることを理解しているかを問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

炭素(C)は、大気中から光合成で有機物になり、呼吸で再び大気へ戻るというサイクルを「循環」します。

③【誤】

エネルギーは上位の栄養段階へ行くほど、呼吸などによる熱としての損失があるため、利用可能な量は「減少」します。

⑤【正】

エネルギーは光として入り、化学エネルギーを経て最終的に「熱」として系外へ放出されます。物質のように循環することはありません。

問4:正解①

<問題要旨>

窒素循環において、微生物が担う重要な役割(窒素固定・硝化・脱窒)を区別する問題です。

<選択肢>

①【正】

大気中の窒素分子($N_2$)をアンモニウムイオンに変える反応を「窒素固定」と呼び、根粒菌やシアノバクテリアが行います。

②【誤】

脱窒菌は、土壌中の硝酸イオンなどを窒素ガスに戻して大気へ放出します。

③【誤】

硝化菌(亜硝酸菌・硝酸菌)は、アンモニウムイオンを硝酸イオンに変えます。

④【誤】

植物は大気中の窒素を直接利用できず、土壌からイオンの形で吸収します。

問5:正解②

<問題要旨>

捕食などの作用を通じて、地域の生物多様性を高く維持する役割を果たす「キーストーン種」の概念を問う問題です。

<選択肢>

①【誤】

キーストーン種が除かれると、抑制されていた種が独占的に増え、他の種が消滅して多様性が下がります。

②【正】

捕食者がいなくなると、被食者同士の「生存競争」において強い種だけが生き残り、結果として全体の種数は減少します。

③【誤】

キーストーン種は「影響力」で定義されるもので、必ずしも個体数が多い種(優占種)とは限りません。

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