解答
解説
第1問
問1:正解5
<解説>
ヒトの細胞と大腸菌(原核生物)の細胞は、構造や大きさは大きく異なりますが、ともに細胞分裂によって数を増やす点は共通しています。他の選択肢にある「細胞壁をもつ」「ATPの構造が異なる」などは、いずれもヒトの細胞には当てはまらないか、あるいは両者に共通しません。そのため、「両者はともに細胞分裂で増殖する」という記述が最も適切だと考えられます。
問2:正解1
<解説>
細胞質基質(細胞質のうち、細胞小器官などを除いた部分)には、多様な酵素やタンパク質が含まれています。一方で「核はあらゆる生物の細胞に存在する」などの記述は、核を持たない原核生物(細菌など)の存在を考えると誤りになります。また、ミトコンドリアやリボソームに関する選択肢も事実と異なっているため、細胞質基質にタンパク質が含まれるという記述が正しいと判断できます。
問3:正解3
<解説>
葉緑体で行われる炭酸同化(光合成)では、クロロフィルなどの色素が光エネルギーを吸収し、デンプンのような有機物を合成します。シアノバクテリアは核を持たない原核生物ですが、同様に光合成を行うことが知られています。したがって、「光エネルギー」「有機物」「原核生物」の組合せが適切だと考えられます。
問4:正解6
<解説>
かつて遺伝子の所在が明らかになる過程で、染色体の主成分としてDNAとタンパク質が注目されてきました。テキスト中では「遺伝子が存在する場所」として染色体が示唆され、その主な構成物質がDNAとタンパク質であることが実験的に示されています。よって、染色体とタンパク質の組み合わせが最も適切と判断されます。
問5:正解2
<解説>
肺炎双球菌の形質転換実験において、病原性のある菌の抽出物をDNA分解酵素で処理すると、病原性をもたない菌に変化が起こらないことが示されました。これは、形質を伝える物質がDNAであることを示唆した重要な実験結果です。過去には核の存在や遺伝の法則性を示す研究もありましたが、「DNAが遺伝物質である」と直接示した研究としては、細菌の形質転換を用いた実験が大きな決め手の一つでした。
問6:正解6
<解説>
バクテリオファージ(ウイルスの一種)が細菌に感染する際、DNAだけが細胞内部に注入され、新たなファージ(子ファージ)が生成されることが示されました。これは、ファージの遺伝情報がDNAに由来することを明確に証明する実験として知られています。形質転換実験と並び、「遺伝子の本体はDNAである」という結論を補強した代表的な研究です。
問7:正解7
<解説>
DNAとRNAはいずれもヌクレオチドが連なった構造で、ヌクレオチドは「塩基」「糖」「リン酸」からできています。ただし、DNAの塩基にはチミンが含まれ、RNAではその代わりにウラシルが使われます。また、DNAの糖はデオキシリボース、RNAの糖はリボースである点が異なります。選択肢の中では、「塩基」「糖」「リボース」という組合せがRNAを表す上で適切であるため、それがDNAとの違いを示す手がかりとなります。
第2問
問8:正解2
<解説>
リンパ液は全身のリンパ管を通り、最終的には鎖骨下静脈付近で血液に合流します。このようにリンパ系と血管系がつながっているため、「リンパ液は、静脈で血液に合流する」という記述は生理学的に正しいと考えられます。他の選択肢には、血管の壁の厚みに関する誤りや、赤血球と白血球の数の多寡を取り違えた記述が含まれているため、これが最も適切な記述となります。
問9:正解4
<解説>
腎臓に入ってきた血しょうは、糸球体(ア)からボーマンのう(イ)へろ過されます。このとき生じる液体が「原尿」です。その後、原尿は細尿管(腎細管)を通過しつつ、周囲に存在する毛細血管(ウ)に必要な成分が再吸収され、不要な老廃物のみが尿として排出されます。糸球体→ボーマンのう→毛細血管という流れを示す選択肢が、実際の腎臓の構造やろ過・再吸収の過程に合致します。
問10:正解2
<解説>
健康なヒトでは、血しょう中に含まれるグルコースはボーマンのうで原尿中にろ過されても、そのほとんどが細尿管(腎細管)で再吸収されます。通常の血糖値であれば腎臓がグルコースをすべて回収できるからです。一方、血しょう中のタンパク質は大きいため糸球体をほとんど通過せず、原尿にはほぼ含まれません。
問11:正解1
<解説>
自律神経とホルモンによる体内環境の調節の中枢は、いずれも視床下部にあります。視床下部の指令を受けて交感神経が活性化すると、胃や腸の運動が抑制されるなどの変化が生じます。また、視床下部から分泌される放出ホルモンは脳下垂体前葉を刺激し、さらに副腎皮質刺激ホルモンなどの分泌を促進します。よって「視床下部 → 交感神経 → 脳下垂体前葉」の組合せが、各種調節経路と対応します。
問12:正解1
<解説>
興奮や緊張状態では、アドレナリンによって肝臓や筋肉中のグリコーゲンが分解され、血糖値を上げる方向に働きます。よってアドレナリンが“グリコーゲンの合成を促進する”というのは誤った説明です。一方、交感神経が活性化すれば心拍数は増加しますし、糖質コルチコイドはタンパク質などからの糖新生を促進します。また、チロキシンによって酸素消費や異化が活発化するのも正しい生理的知見です。
第3問
問13:正解4
<解説>
バイオーム(生物群系)は、気温と降水量を大きな要因として分布が決まります。草原バイオームは、一年を通じて比較的温暖ではあるものの、森林が成立するほどの降水量には届かない地域で優占します。おおむね、年平均気温が10℃以上で年降水量が約500mm前後の環境下では草原が成立しやすいため、この条件を示す選択肢が最も適切と考えられます。
問14:正解3
<解説>
日本の森林には、針葉樹林・夏緑樹林(落葉広葉樹林)・照葉樹林などがバイオームとして分布します。図の分布から、比較的高緯度や高標高に針葉樹林が多く残存している地域(自然植生の割合が高い地域)が「ア」に該当し、そこより南・低地では夏緑樹林が優占しやすい地域を「イ」、さらに温暖地帯で照葉樹林が多く分布し、自然植生の割合が低い地域を「ウ」と見なすと、図の説明と合致します。
問15:正解1
<解説>
遷移が進行して極相(クライマックス)に達した森林では、全体としては種組成が大きく変化しにくく、長期間にわたって比較的安定した状態を保ちます。よって、「極相となっている森林では、種の構成が全体として大きく変化しない」という点が、遷移に関する正しい説明といえます。
問16:正解3
<解説>
池などの水域でも、植物がその環境に影響を及ぼすことで、底質や水深・光環境が変化し、次第に異なる種類の植物が生育するようになります。これは生物が環境を変化させ、その変化によって後に続く生物が交代していく現象であり、生態系における遷移の典型的な例の一つです。「生物の作用によって池の環境が変化し、その環境変化に応じて植物種が交代する」という説明が最も的を射ています。
問17:正解7
<解説>
森林伐採跡地や農地など土壌が残っている場所から始まる遷移は「二次遷移」、噴火直後など裸地から始まる場合は「一次遷移」と呼ばれます。土壌がある状態で始まる二次遷移の方が、裸地(岩石や火山灰だけなど)から始まる一次遷移よりも進行が速い傾向にあります。したがって、森林伐採などで土壌が既に存在する場合(=二次遷移)は、噴火直後の裸地(=一次遷移)に比べ、遷移の進行が速いという対比が当てはまります。