解答
解説
第1問
問1:正解2
<解説>
ある生物が「真核細胞からなる単細胞生物」であるかどうかを見分けるとき、まず「細胞内に核を持つか」「多細胞ではなく単細胞か」を確認する必要がある。選択肢のうち、ゾウリムシは核をもち、1個の細胞で体ができているため「真核単細胞生物」である。また、酵母(酵母菌)も真核生物に属する単細胞の菌類である。一方、オオカナダモ(淡水中に生育する水草)は多細胞の植物なので単細胞生物ではなく、ネンジュモは原核生物(シアノバクテリア)なので真核生物ではない。よってゾウリムシと酵母菌の組合せが、真核単細胞生物として最も適切と考えられる。
問2:正解3
<解説>
同化・異化などの代謝に関する典型的な記述を区別するとき、次のポイントが重要となる。
- 光合成では二酸化炭素と水から有機物が合成されるため、窒素との組合せで有機物をつくるという説明は通常しない。
- 酵素の多くはタンパク質であり、炭水化物ではない。
- 同化とは「外部から取り込んだ物質を、生物に必要な物質へと合成する反応」である。
- 呼吸では有機物を分解し、その際に生じたエネルギーによってADPからATPが合成されるが、選択肢によってはATPとADPの関係が逆転して記述されている場合がある。
こうした点を踏まえると、「同化は、外界から取り入れた物質を生命活動に必要な物質に合成する反応である」という説明が、もっとも正しい内容と判断できる。
問3:正解4
<解説>
肝臓片を過酸化水素水に入れると酸素が発生することから、肝臓片に含まれる酵素(カタラーゼなど)が過酸化水素を分解している可能性が考えられる。ただし、過酸化水素自体がほかの物質(たとえば酸化マンガン(IV)など)によって分解されることでも酸素が発生する場合があるため、「酵素だけによる働きなのか」「肝臓自体が何か酸素を放出しているのか」を切り分けるには、次のような実験を比較するとよい。
- 可能性[1]「過酸化水素に何らかの触媒を加えると酸素が発生する」かどうか:たとえば酸化マンガン(IV)を過酸化水素水に加えてみる。酸化マンガン(IV)は触媒作用で過酸化水素を分解し酸素を発生させることが知られている。
- 可能性[2]「肝臓片そのものから酸素が放出されている」かどうか:たとえば肝臓片を水だけに入れてみる。もし過酸化水素なしでも酸素が出るなら、肝臓片が独自に酸素を出していると考えられる。
それぞれ別々の実験を行い、過酸化水素分解との関係と肝臓片単独での酸素発生の有無を確かめることで、肝臓片に含まれる酵素が過酸化水素分解を担っていることを検証できる。
問4:正解6
<解説>
植物細胞の外側には細胞膜よりさらに外側にある「細胞壁」が存在し、これは動物細胞には見られない特徴である。また、細胞質内部には核のほか、呼吸を行う細胞小器官の「ミトコンドリア」、光合成を行う細胞小器官の「葉緑体」が含まれる。したがって、文章中の「ア」に細胞壁、「イ」に核、「ウ」にミトコンドリア、「エ」に葉緑体を当てはめると、植物の細胞構造を正しく説明する内容になる。
問5:正解1
<解説>
同じ個体の細胞であれば、その細胞の種類や組織にかかわらず基本的に同一のゲノム(DNA上の遺伝情報)をもつと考えられる。つまり、ブロッコリーの花芽から取り出したDNAも、同じ個体の葉や根など別の部位から取り出したDNAも、含まれる遺伝情報としては一致する。一方、「根に関わる遺伝子だけが花芽には存在しない」といった説明は、実際のゲノムの働きからは誤りである。また、「DNAとRNAの塩基配列がまったく同じ」という説明も正しくない。
問6:正解4
<解説>
たとえば「300塩基対のDNA」を考えると、2本鎖なので塩基の総数は600個になる。全塩基のうちアデニンが20%であれば、アデニンとチミンの合計が40%となり、残りの60%はグアニンとシトシンで占められる。グアニンとシトシンは対になって同数なので、それぞれ全体の30%ずつになる。その結果、このDNA 2本鎖中のシトシン数は全体の30%に相当する。
また、この2本鎖DNAの片方(片鎖)が転写されてできるmRNAが、最初から最後まで全塩基がアミノ酸を指定しているとすれば、転写産物の塩基数を3つずつまとめてアミノ酸に対応させることになる。つまり、mRNAの塩基の総数を3で割った値がアミノ酸の総数になる。こうした考え方から、該当する選択肢が導かれる。
問7:正解2
<解説>
(問題文の詳細は提示されていませんが、たとえば遺伝子の発現調節や分裂様式、あるいは遺伝形質の伝わり方などに関する設問で、複数の選択肢が示される場合を想定するとよい。選択肢の中で「細胞核内の遺伝情報が細胞周期を通じて一定に保たれる」「相同染色体同士の分離によって減数分裂では染色体数が半減する」など、生物学の基本事項に合致した内容が『2番』として提示されているケースが考えられる。いずれにせよ、他の選択肢と比較してもっとも生物学的に正確な説明を選ぶことで、適切な答えを導ける。)
第2問
問8:正解3
<解説>
ヤナギの樹皮から得られる成分(サリシンなど)は、血液の凝固を抑制する作用があると知られている。血液が固まりにくくなるのは、血小板の働きが抑えられるためと考えられる。血小板は傷口をふさぐ初期段階で重要な役割を果たすが、その働きが低下すると血が止まりづらくなる。このことから、ヤナギ成分が影響を及ぼすのは血小板であると推測される。
問9:正解1
<解説>
ヒトの心臓には左右2つの心室があり、その間は心室中隔で仕切られている。もし心室中隔に大きな孔が開くと、本来は左心室から全身へ送り出されるはずの酸素を多く含む血液の一部が右心室に流れ込む可能性がある。その結果、いったん肺で酸素を受け取った血液が再び肺へ向かう経路が生じる。すなわち、肺から左心房に戻った血液の一部が、正常経路とは異なり再び肺に送り出されてしまう状況が想定される。
問10:正解4
<解説>
ヘモグロビンは酸素と結合する能力が、周囲の二酸化炭素(CO₂)の濃度やpHの変化によって変わる。一般に、CO₂濃度が高い(またはpHが低い)組織ではヘモグロビンの酸素解離が促進され、同じ酸素濃度でも結合率が低くなりやすい。一方、肺胞付近のCO₂濃度は低く、pHが高めなのでヘモグロビンはより酸素と結合しやすい。これら2種類の環境(活発に収縮している筋肉と肺胞)で測定した酸素解離曲線を比較すると、筋肉側の曲線は右寄り(酸素が外れやすい)、肺胞側の曲線は左寄り(酸素をつかみやすい)になり、2本の曲線が明確に分かれる図が示される。
問11:正解1
<解説>
上記の酸素解離曲線において、活発に収縮している筋肉では二酸化炭素が多く発生し、酸素が消費されるため、ヘモグロビンは酸素を離しやすい状態になっている。一方の肺胞では、吸い込んだ空気中の酸素が高濃度に存在し、かつ二酸化炭素の濃度が低い環境になっているため、ヘモグロビンは酸素を取り込みやすい。選択肢の中でも、筋肉側(右にシフトした曲線)と肺胞側(左にシフトした曲線)の差が正しく示される組合せを選ぶと、これらの性質が説明できる。
問12:正解8
<解説>
予防接種では、弱毒化あるいは無毒化した病原体などを接種し、体内のB細胞やT細胞が特定の抗原を認識して「記憶細胞」をつくることを狙っている。記憶細胞は同じ抗原が再び侵入した際に、速やかに増殖して抗体産生細胞に分化するため、二度目以降の反応がより早く・強力になる。一方、花粉症などのアレルギー反応は、免疫機構が何らかの理由で過剰に働き、異物(花粉など)に対して過敏に反応してしまう状態である。したがって、文章中の「抗原を認識すると○○となって残る」「同じ抗原を認識すると速やかに増殖する○○」「免疫が○○になる」という表現には、記憶細胞・B細胞・過剰になる、といった組合せが適合する。
問13:正解5
<解説>
抗体はB細胞が分化してできる抗体産生細胞によって産生される。産生された抗体は抗原(病原体や有害な微粒子など)と特異的に結合し、結合したものは最終的にマクロファージなどの貪食作用(食作用)によって取り除かれる。たとえばウイルス粒子に抗体がくっつくと、そのウイルス粒子はマクロファージの表面で認識されやすくなり、効率よく排除される。このように、抗原と結合した抗体は、生体防御において重要な標識としての役割を担っている。
第3問
問14:正解3
<解説>
生態系における窒素の循環では、まず窒素固定によって大気中の窒素ガス(N₂)がアンモニウムイオンなどの無機窒素化合物へと変換され、それを植物が取り込み、さらに動物や微生物へと受け渡されていく。その後、分解者が遺体や排出物中の有機窒素化合物を分解して再び無機窒素化合物を生成する。一方、脱窒という過程によって無機窒素化合物の一部が窒素ガスへ戻される。
文中では「I は大気中の窒素分子から無機窒素化合物をつくる」「U は微生物によって窒素ガスに変化させる現象」と説明されていることから、I が「窒素固定」、U が「脱窒」と判断できる。また、植物体内で合成される窒素化合物としてはタンパク質などが挙げられる。以上の点を総合し、ア(タンパク質)・イ(窒素固定に関わる微生物)・ウ(脱窒)という組合せが適切と考えられる。
問15:正解2
<解説>
生産者(植物など)は光合成によって太陽光エネルギーを有機物中に蓄える。消費者や分解者は有機物を取り込み、呼吸などによって化学エネルギーの一部を熱エネルギーとして放出する。重要なのは、この放出された熱エネルギーが「生態系を循環し続ける」わけではなく、最終的には拡散して外部へ逃げていく点である。従って、太陽から供給される光エネルギー以外に、熱エネルギーは再利用される仕組みはない。そのため「消費者や分解者が放出した熱が生態系内をめぐり続ける」という表現が含まれていれば、それは誤りと判断できる。
問16:正解6
<解説>
常緑樹(たとえばスダジイなど)は比較的温暖な地域に分布し、一枚の葉を長期間維持する傾向がある。そのため葉は厚く、寿命が長いとされる。一方、落葉樹(ミズナラなど)は寒冷な地域やはっきりした四季のある地域に分布し、一定の季節ごとに葉を落とすため、葉の寿命は比較的短くなり、葉は常緑樹ほど厚くはない(または薄い)。
文中では「長い季節に分布する常緑樹のほうが葉の寿命が長く、かつ葉が厚い」旨が述べられ、これに対応する具体例がスダジイ(常緑)とミズナラ(落葉)などであるため、対応した組み合わせが選ばれる。
問17:正解6
<解説>
図2では、A・Bそれぞれの曲線が“陽樹の葉”と“陰樹の葉”の特性を示している。陽樹の葉は強い光のもとで高い光合成速度を示し、ある程度の光強度を超えても光合成速度がさらに上昇する場合が多い。一方、陰樹の葉は弱い光でも効率よく光合成できるが、光が強くなると比較的早い段階で飽和点に達することがある。
問題文中で、図に示された2本の曲線の特徴をもとに「光の強さがAより弱いとき」「光の強さがBのとき」などにおける二酸化炭素の吸収や放出を比較すると、陰樹のほうが弱光での光合成効率が高い(CO₂吸収が早く立ち上がる)一方、強光下での伸びは陽樹ほど大きくないという性質が読み取れる。そうした差異に着目した記述が正答につながる。
問18:正解3
<解説>
森林の二次遷移の初期段階では、土壌中に蓄えられていた種子が発芽し、先に成長できる樹木(先駆種)が出現することが多い。問題文の実験1では、極相林から採取した土を室内でしばらく放置すると、主要な構成樹種(極相樹種)ではない芽ばえが数多く見られた。これは、土壌中に眠っていた先駆種の種子が条件変化に伴い発芽したと考えられる。
さらに、実験2で伐採跡地にこの土を戻して半年観察したところ、発芽した樹木種の多くが実験1で観察されたものと共通だった。よって、伐採跡地の樹木は「もともと土壌中にあった種子が発芽した」という可能性が高いと考えられる。