2025年度 大学入学共通テスト 本試験 生物基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問101:正解4

<解説>
設問では、気管の繊毛細胞と異物として出てくる細菌を比較している部分がポイントになる。繊毛細胞は核をもつ真核細胞であり、エネルギー産生の場としてミトコンドリアをもっている。一方、細菌は原核生物なので、ミトコンドリアのような膜で囲まれた細胞小器官をもたない。よって「繊毛細胞にはミトコンドリアが存在するが、細菌には存在しない」という内容が最も適切だと判断できる。

問102:正解7

<解説>
問題文では、分泌細胞Xが細胞周期のG₁期、基底細胞YがG₂期、基底細胞ZがM期の中期にあると示唆されている。

  • G₁期の細胞(分泌細胞X)は、まだDNAを複製していない段階なので、DNA量を仮に「1」とおける。
  • G₂期の細胞(基底細胞Y)は、すでにDNAを複製し終えた段階なので、複製前の2倍量となる。
  • M期の中期(基底細胞Z)も、染色体は分離中ではあるが、まだ細胞質が分裂する前なので、DNAは複製後の状態を保っている。
    したがって、YとZともにDNA量は複製後(2倍)の状態であり、組合せは「2・2」となる。
問103:正解2

<解説>
問題文では、あるタンパク質Aをコードする遺伝子が「13500塩基」からなり、正常個体ではそこから転写・翻訳されて「ある個数のアミノ酸」からなる完全なタンパク質ができるとある。このとき、3つの塩基のまとまり(コドン)で1つのアミノ酸を指定するため、13500塩基であれば4500コドン分のアミノ酸が連なる形になる。
一方、変異体では「3601番目の塩基から始まるコドン」がアミノ酸を指定しなくなる(終止コドン化)ため、途中で翻訳が打ち切られ、短いタンパク質しか合成されない。問題文中の選択肢で、正常個体が4500アミノ酸、変異体が1200アミノ酸となるものが最も妥当だとわかる。

問104および105:正解2および5

<解説>
タンポポの根の切断面近くの細胞が再び芽を形成できるのは、個体を構成するあらゆる遺伝情報をもともと保有し、必要に応じて細胞増殖や分化をやり直せる性質があるからだと考えられる。
選択肢を検討すると、

  • 「花の形成に必要な遺伝子をもっている」点は、植物の体細胞が原則としてすべての遺伝情報をもつことから適切。
  • 「葉緑体をつくる能力を失っていない」点は、根の細胞であっても新たに芽をつくれば葉を形成できる可能性があることから適切。
    したがって、これら2つが再生現象を支える妥当な根拠となる。
問106:正解3

<解説>
問題文では、新しく芽をつくるエネルギー源として「葉が光合成でつくった有機物を根が呼吸で分解し、そのときのエネルギーを使う」という仮説を検証しようとしている。
実験の組み合わせを見ると、

  • 光合成を行わない(遮光)条件であっても、外部から供給された有機物(グルコース)と酸素(呼吸に必要)があれば芽が形成できるかどうかを調べれば「根が呼吸によってエネルギーを得る」ことを確かめられる。
  • 逆に有機物がなければ芽ができないなどの結果が出れば、光合成産物がエネルギー源となる仮説が支持される。
    よって、「酸素を与え、遮光し、グルコースを加える」組合せが仮説検証に適切だとわかる。

第2問

問107:正解3

<解説>
運動を開始すると交感神経が活発になり、瞳孔や気管支の拡大、肝臓でのグリコーゲン分解の促進などが起こる。一方で、胃や腸のぜん動運動は抑制される傾向にある。そのため「胃や腸のぜん動運動が促進する」という記述は、交感神経が優位になる運動開始直後の生理的変化としては適切でない。

問108:正解2

<解説>
実験1のグラフから、負荷が大きいほど心拍数や呼吸数がより高くなることが読み取れる。また運動開始後、運動継続中には上昇した心拍・呼吸が維持され、運動終了後にはいずれも低下に向かう様子が示されている。
選択肢を照らし合わせると、

  • 「運動の負荷が大きいほど心拍数は増加していたことから、心拍数は運動の大きさを示す目安となる」
  • 「どの負荷でも、6分後(運動中)には血液中の酸素供給量が安静時より高い状態にある」
    この2つがグラフと合致しており、組合せとしては「a と c」が正しいと考えられる。
問109:正解3

<解説>
心拍や呼吸の調節は、延髄など中枢神経系の中でも特に自律神経の中枢が関わっている。意識的に完全に止めることは難しく、体温上昇による副腎髄質ホルモン分泌や、ホルモンによる調節は神経伝達より遅い場合が多いことなどもポイントとなる。延髄から自律神経を介して心臓や呼吸筋へ信号が伝わり、心拍数や呼吸数が制御されるという点が最も適切である。

問110:正解2

<解説>
T細胞の中でも、キラーT細胞はウイルスなどに感染した細胞を直接攻撃し破壊する役割を担う。一方、ヘルパーT細胞はB細胞を活性化するなど、抗体産生を助ける働きをもつ。よって、選択肢のうち「キラーT細胞は、病原体に感染した細胞を攻撃する」という記述が最も正しく、T細胞の特徴を適切に表している。

問111:正解6

<解説>
予防接種により免疫記憶が成立すると、病原体が侵入した際に免疫応答が早まり、病原体の増殖をより効率的に抑えられるようになる。選択肢を見比べると、

  • 「体内での病原体の増殖を抑えることができる」
  • 「予防接種をしていないときより早く免疫応答が起こるようになる」
    これらが予防接種の本質的な効果を正しく示しており、「f と g」の組合せが適切だとわかる。
問112:正解3

<解説>
3歳未満と7歳以上の年齢層でワクチン接種前後の抗体量を比較すると、7歳以上では接種前の時点からすでに高い抗体価が見られる場合がある。これは、過去に同じ病原体に感染したり、あるいは別の予防接種を受けたりして、免疫記憶が形成されている人が一定数含まれていることが理由として考えられる。選択肢のうち「7歳以上では接種前から病原体Bに対する免疫を保持している人の割合が3歳未満よりも多い」とする説明が最も妥当だといえる。

第3問

問113:正解1

<解説>
マッコウクジラのように食物連鎖の最上位に位置する動物は、栄養段階の下位に比べて生息数が少ない傾向にある。これは、食物連鎖を通して上位にいくほど獲得できるエネルギー量が減少し、結果として個体群の規模が大きくなりにくいためである。

問114:正解4

<解説>
海底のように低温・暗所で微生物の活動が制限される環境では、遺骸を分解する細菌・菌類の代謝が遅く、さらに遺骸を消費する生物の総量自体が少ない場合もある。これらが重なると、生物遺体の分解は著しく遅くなる。よって「微生物の代謝が遅い」ことと「遺体を消費する生物が少ない」ことが、直接的に分解を遅らせる主な要因となる。

問115:正解1

<解説>
死体が土中に埋められると、多様な分解者(微生物や小動物)がその有機物を分解し、得られる化学エネルギーを生命活動に利用する。分解の過程で生成された無機物や二酸化炭素なども、生態系内で再び利用される循環経路に組み込まれていく。したがって「埋められた死体の化学エネルギーは、ほかの生物に取り込まれ、生命活動に利用される」という内容が最も適切である。

問116:正解3

<解説>
赤道付近から高緯度へ向かうにつれ、気候が次第に乾燥化や寒冷化し、それに応じたバイオームが連続的に変化していく。熱帯多雨林とサバンナの間には雨季・乾季が明瞭な「熱帯(亜熱帯)季節林」が存在し、砂漠より高緯度の地中海性気候には硬葉樹林が分布、さらに冷涼な温帯にはブナなど落葉広葉樹の森が広がる。選択肢のうち「雨季と乾季が明瞭な地域(チークなど乾季落葉樹が優占)→冬の雨・夏の乾燥に適応した硬葉樹林→気候が冷涼でブナ類やカエデ類が優占する夏緑樹林」という流れがもっとも当てはまる。

問117:正解2

<解説>
日本列島は南北に長く、さらに標高によって気温が大きく変化するため、同じ樹種でも分布する標高帯が地域によって異なる。夏緑樹林(ブナやミズナラなどの落葉広葉樹林)は、九州や四国では比較的標高の高い山地帯に分布し、東北地方のように寒冷な地域では低地帯(丘陵帯)まで降りてくる場合がある。そのため「九州や四国では山地帯に、東北地方では山地帯のほか丘陵帯(低地帯)にも分布する」という記述が自然植生の分布状況として適切である。

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