2025年度 大学入学共通テスト 本試験「生物基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト・本試験の生物基礎です。採点項目は16、満点は50点。理科基礎は物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎の4科目が1冊の問題冊子にまとめられており、このうち2科目を選んで2科目あわせて60分で解きます。1科目あたりの目安は30分です。解答番号が1ではなく101から始まるのは、この4科目1冊という冊子の作りによるもので、生物基礎には解答番号101〜117が割り当てられています。大問は3つで、第1問16点・第2問18点・第3問16点、すべて必答です。
第1問は細胞の働きです。Aは気管の表面にある繊毛細胞・分泌細胞・基底細胞を題材に、原核細胞と真核細胞の違い、細胞周期とDNA量、遺伝子の塩基数とアミノ酸数の関係を続けて問います。Bはタンポポが根から芽を再生する現象で、分化した細胞が遺伝情報を保っていることを確認したあと、「芽をつくるエネルギーはどこから来るのか」という仮説を検証するための実験計画を読ませます。
第2問はヒトのからだの調節です。Aは自転車こぎ運動中の心拍数と呼吸数のグラフを読み、交感神経による調節と結びつけます。Bは免疫で、T細胞の役割分担、予防接種の原理、そして年齢別の接種前後の抗体量のグラフから「接種前にすでに記憶細胞を持っていた人がいる」ことを読み取らせる設問が置かれています。第3問は生態系とバイオームです。Aは座礁したクジラの死体をめぐる会話文から栄養段階・分解・物質とエネルギーの流れを、Bはアフリカからヨーロッパへ北上する線上のバイオームの並びと日本の自然植生を扱います。
つまずきやすいのは、図やグラフから「言えること」と「言えないこと」の線引きです。第2問の問2・問6、第3問の問2は、どれも図から直接読める事実と、その原因の説明とを分けて考える必要があります。また第1問の問5と第3問の問4は、3つの空欄それぞれに独立した根拠がある組合せ問題で、1か所の思い込みで丸ごと落としやすい形になっています。
第1問(必答) A 気管表面の細胞と繊毛運動タンパク質の遺伝子
気管の表面にある繊毛細胞・分泌細胞・基底細胞を描いた図1をもとに、原核細胞と真核細胞の違い、細胞周期とDNA量、遺伝子の塩基数とアミノ酸数の関係を順に確認します。第1問はA・Bあわせて16点です。
問1:正解 ④(解答番号101/配点2)
<問題要旨>
図1の繊毛細胞(下線部(a))と、粘液に捉えられる細菌(下線部(b))について、両者を比べた4つの記述から最も適当なものを選ばせます。真核細胞と原核細胞の違いをそのまま問う設問です。
<考え方>
細菌は原核生物で、核膜に包まれた核も、ミトコンドリアや葉緑体のような膜で仕切られた細胞小器官も持たない、という一点に戻れば全選択肢が片づきます。動物の細胞である繊毛細胞は真核細胞なのでミトコンドリアを持ち、葉緑体は持ちません。代謝については、同化も異化もすべての生物が行います。
① 誤 細菌も有機物を合成する同化を行う。異化しか行わない生物はいない ② 誤 細菌は原核生物で、核膜に包まれた核を持たない。DNAは細胞質中にある ③ 誤 葉緑体は膜で仕切られた細胞小器官で、原核生物である細菌は持たない ④ 正 ミトコンドリアは、真核細胞である繊毛細胞にはあり、原核細胞である細菌にはない よって ④
③④のような「AにはあってBにはない」という形の選択肢は、AとBの2か所を別々に確かめます。片方だけ見て判断すると、原核生物と真核生物の境目を取り違えやすくなります。
問2:正解 ⑦(解答番号102/配点3)
<問題要旨>
図1の分泌細胞XがG₁期、基底細胞YがG₂期、基底細胞ZがM期の中期にあるとき、分泌細胞Xに含まれるDNA量を1として、基底細胞Yと基底細胞ZのDNA量の組合せを7択から選ばせます。
<考え方>
細胞1個あたりのDNA量が変わるのは、S期に複製で2倍になるときと、M期の終わりに細胞質分裂で2つに分かれるときだけ、という原則で決まります。G₁期を1とすれば、S期を終えたG₂期は2、M期は細胞が分かれるまで2のままです。
【細胞1個あたりのDNA量(G₁期を1とする)】 G₁期 = 1 (複製前) S期 1 → 2 (複製が進む) G₂期 = 2 (複製済み) M期 前期〜中期 = 2 (複製された染色体がまだ1個の細胞の中にある) M期 後期 = 2 (両極へ移動中だが、まだ細胞は分かれていない) 分裂終了後 = 1 分泌細胞X(G₁期) = 1 … これを基準にする 基底細胞Y(G₂期) = 2 基底細胞Z(M期の中期)= 2 よって ⑦
M期の中期を「もう分裂し終えた状態」と考えて1や0.5としないことです。中期は複製された染色体が赤道面に並んだ段階で、2本の染色分体はまだ同じ1個の細胞の中にあります。
問3:正解 ②(解答番号103/配点3)
<問題要旨>
タンパク質Aの遺伝子にはアミノ酸配列を指定する塩基対が13500あり、正常な個体ではア個のアミノ酸からなるタンパク質ができます。変異体ではmRNAの3601番目の塩基から始まるコドンが、アミノ酸を指定せず翻訳が止まるコドンに変わっており、イ個のアミノ酸からなる不完全なタンパク質しかできません。ア・イの数値の組合せを5択から選ぶ設問です。
<考え方>
3つの塩基(コドン)が1つのアミノ酸を指定する、という遺伝暗号の基本だけで両方が出ます。アは13500を3で割るだけ。イは「3601番目の塩基が第何番目のコドンの先頭か」を数え、そのコドンの1つ手前までが翻訳されると考えます。
【ア:正常な個体】 アミノ酸配列を指定する塩基は 13500 3塩基で1アミノ酸を指定するので ア = 13500 ÷ 3 = 4500(個) 【イ:変異体】 第n番目のコドンが占めるのは、3n−2 番目 〜 3n 番目の塩基 3601番目が先頭になるのは 3n − 2 = 3601 3n = 3603 n = 1201 つまり第1201コドンが、翻訳の止まるコドンに変わっている このコドンはアミノ酸を指定しないので、つながるのは第1200コドンまで イ = 1200(個) 【検算】第1200コドンの末尾は 3×1200 = 3600 番目の塩基。その次の3601番目から第1201コドンが始まる よって ②
翻訳が止まるコドン自体をアミノ酸1個分と数えて1201個としないことです。このコドンはアミノ酸を指定せず、そこで翻訳が終わります。
第1問(必答) B タンポポの根からの芽の再生と実験計画
引き抜いても地中に残った根から芽をつくり直すタンポポの再生(図2)を題材に、分化した細胞が持っている遺伝情報と、再生に使うエネルギーの出どころを確かめる実験計画(図3)を読みます。
問4:正解 ②・⑤(解答番号104・105/配点4)
<問題要旨>
図2のように、引き抜いたタンポポの根が地中に残ると、切断端近くの細胞が増殖して新しい芽をつくり、やがて地上部が再生します。再生したタンポポは種子から育ったものと同様に花を咲かせ、次世代を残します。この再生現象から、切断前の根の細胞について何が言えるかを、7つの記述から2つ選ばせます(順序は問いません)。
<考え方>
分化した細胞も、受精卵と同じ一組の遺伝情報をすべて持っている、という原則が出発点です。そのうえで「再生後に実際に起きたこと」から逆算します。花が咲いた以上、根の細胞は花の形成に必要な遺伝子を持っていたことになり、緑色の地上部ができた以上、葉緑体をつくる能力も失われていなかったことになります。
① 誤 根の細胞は生きていて増殖もするので、エネルギーを消費する代謝を行っている ② 正 再生したタンポポが花を咲かせた → 根の細胞は花の形成に必要な遺伝子を持っていた ③ 誤 切断端近くの細胞が増殖している → DNAを複製する能力は失われていない ④ 誤 芽をつくって地上部を再生している → 他の細胞に分化する能力は失われていない ⑤ 正 再生した地上部は光合成を行う葉をつける → 葉緑体をつくる能力は失われていない ⑥ 誤 切断前の根は地中にあり葉緑体を持たない。この再生現象から酸素の発生は言えない ⑦ 誤 増殖しているのは体細胞分裂。減数分裂は生殖細胞をつくるときの分裂 よって ②・⑤
⑤と⑥の違いが分かれ目です。⑤は「将来つくれる能力を持っている」という話、⑥は「今その細胞が光合成している」という話で、光の届かない地中の根に⑥は当てはまりません。
問5:正解 ③(解答番号106/配点4)
<問題要旨>
「根は葉の光合成で生産された有機物を蓄えており、その有機物から呼吸によって取り出したエネルギーを使って芽をつくる」という仮説を立て、これを検証するための実験1〜3の流れが図3に示されています。実験1の「ウを除いた大気下」、実験2・3の「光をエする処理」、実験3の「オを含む水」に入る語句の組合せを、8択から選ぶ設問です。
<考え方>
仮説は「呼吸によってエネルギーを得ている」「その材料は葉の光合成でできた有機物である」という2つの主張に分かれます。実験1が前者を、実験2が後者を確かめ、実験3は不足した有機物を外から補って後者を裏から確かめる、という役割分担で読むと、3つの空欄がそれぞれ独立に決まります。図3はどの実験も「芽ができてしまったらその時点で仮説は支持されない」という形になっているので、埋めた語句がその向きと合うかを最後に確かめます。
【ウ:実験1 = 呼吸を止められる条件にする】 呼吸は酸素を使って有機物を分解し、エネルギーを取り出す反応 酸素を除けば呼吸ができず、仮説が正しいなら芽はできないはず 逆に芽ができてしまえば、呼吸のエネルギーで芽をつくるという主張は成り立たない ウ = O₂ (CO₂を除いても呼吸は止まらないので、実験1の条件として意味をなさない) 【エ:実験2 = 根の有機物の出どころが葉の光合成かを確かめる】 光を遮断すれば葉の光合成が止まり、根に蓄えられた有機物は消費されて減っていく それでも芽ができるなら、葉の光合成でできた有機物を使うという主張は成り立たない エ = 遮断 (照射では根の有機物が減らず、条件を変えたことにならない) 【オ:実験3 = 不足した有機物を補えば芽ができるかを確かめる】 実験2で芽ができなくなった原因が有機物の不足だと言うには、 有機物だけを外から与えて芽ができることを示せばよい 呼吸の基質になる有機物は オ = グルコース (リン酸は無機物で、呼吸の基質にはならない) ウ = O₂ エ = 遮断 オ = グルコース よって ③
3つの空欄はそれぞれ別の根拠で決まるので、1か所を間違えても残りは正しく埋められます。公式解答では、①・④・⑦のいずれかを選んだ場合に1点が与えられます。
第2問(必答) A 運動時の心拍数・呼吸数と自律神経による調節
負荷の異なる3条件で6分間ペダルをこがせ、心拍数と呼吸数を8分間測った実験1のグラフ(図1)を軸に、交感神経のはたらきとグラフの読み取りを問います。第2問はA・Bあわせて18点です。
問1:正解 ③(解答番号107/配点3)
<問題要旨>
実験1で運動の開始直後に活発になる自律神経系のはたらきによって起こるからだの調節として、適当でないものを4つから選ばせます。「適当でないもの」を選ぶ形である点に注意が必要です。
<考え方>
運動時に活発になるのは交感神経で、その基本は「からだを活動状態にする」方向です。瞳孔・心臓・気管支・肝臓には促進的に、消化管には抑制的にはたらく、という向きの違いを押さえれば1つに決まります。消化は活動を休んでいるときに進むはたらきで、こちらを促進するのは副交感神経です。
【交感神経がはたらく向き】 瞳孔 拡大 心臓(拍動) 促進 気管支 拡張 肝臓(グリコーゲンの分解)促進 → 血糖濃度を上げる 消化管のぜん動運動 抑制 ① 適当 瞳孔の拡大は交感神経のはたらき ② 適当 気管支の拡張は交感神経のはたらき。空気の通り道を広げて酸素を多く取り込む ③ 適当でない ぜん動運動を促進するのは副交感神経。交感神経はこれを抑制する ④ 適当 肝臓でのグリコーゲンの分解の促進は交感神経のはたらき。運動に使う糖を供給する よって ③
「運動している最中に消化が進むだろうか」と自分のからだで考えると向きを間違えません。交感神経と副交感神経は多くの器官で拮抗的にはたらき、消化管では副交感神経が促進側です。
問2:正解 ②(解答番号108/配点3)
<問題要旨>
実験1の結果(図1)から分かることとして適当な記述をⓐ〜ⓓから選び、その組合せを6択で答えさせます。図1は横軸が運動開始からの経過時間(0〜8分)、縦軸が心拍数と呼吸数で、負荷が大きい・中程度・小さいの3本の曲線が描かれています。運動は6分で終わり、その後は安静にしています。
<考え方>
グラフの設問は、値の高さ・傾き・時刻のどれを問われているかを分けて読みます。ⓐは3本の曲線の高さの順、ⓑは傾きが最大になる時刻、ⓒは6分の時点の値と運動前の値との比較、ⓓは6分以降の向きで、見るべき場所がそれぞれ違います。
ⓐ 適当 心拍数のグラフで3本の曲線の高さを比べると、負荷が大きい > 中程度 > 小さい の順 負荷の大きさに応じて心拍数が変わる → 心拍数は負荷の大きさを示す目安になる ⓑ 適当でない 上昇率はグラフの傾き。傾きが最も急なのは運動開始直後で、 4〜6分ではどの曲線もほぼ横ばいになっている。終了直前が最大ではない ⓒ 適当 6分(運動終了)の時点では、3条件とも心拍数・呼吸数が0分の値より高い 心拍数が多いほど送り出される血液の量が多く、呼吸数が多いほど血液に取り込まれる酸素が多い → からだに供給される血液中の酸素量は安静時より高い ⓓ 適当でない 6分を過ぎると3条件とも心拍数・呼吸数が急に下がっている。上昇し続けてはいない 適当なのは ⓐ と ⓒ よって ②
ⓑの「上昇率」を「値そのものの高さ」と読み替えないことです。値が最も高い時刻と、傾きが最も急な時刻は一致しません。
問3:正解 ③(解答番号109/配点3)
<問題要旨>
下線部(a)の「運動量に伴って心拍や呼吸を調節する仕組み」に関連して、心拍や呼吸の調節についての記述として最も適当なものを4つから選ばせます。
<考え方>
調節の経路を「どこが命令を出し、何を通って伝わるか」で整理すれば決まります。自律神経系は意識と無関係にはたらき、その中枢は間脳の視床下部と延髄。内分泌系はホルモンを血液で運ぶため、神経による調節よりも伝達が遅い、というのが基本の対比です。
【調節の2つの経路】 自律神経系 中枢(視床下部・延髄)→ 神経 → 器官 速い・意識的には調節できない 内分泌系 内分泌腺 → ホルモン → 血液 → 標的器官 遅い・持続的 ① 誤 息を止めるのは骨格筋を意識的に動かしているだけ。自律神経系のはたらきは意識的に調節できない ② 誤 副腎髄質が分泌するのはアドレナリンというホルモンで、血液によって心臓へ運ばれる。 自律神経を通じて信号が伝わるのではない ③ 正 延髄は脳の一部で中枢神経系に含まれ、心臓の拍動の中枢として自律神経を介して心拍を調節する ④ 誤 ホルモンは血液で運ばれるため、内分泌系による調節は自律神経系よりも遅い よって ③
②は副腎髄質と交感神経の関係が紛らわしい選択肢です。交感神経の刺激を受けて副腎髄質がアドレナリンを分泌する、という向きはありますが、分泌されたアドレナリンは血液に乗って心臓に届きます。
第2問(必答) B 免疫のしくみと予防接種
自然免疫と獲得免疫、エイズによるヘルパーT細胞の破壊、予防接種という流れの文章を読み、T細胞の役割分担、予防接種の原理、年齢別の抗体量のグラフ(図2)を扱います。
問4:正解 ②(解答番号110/配点3)
<問題要旨>
下線部(b)のT細胞について、そのはたらきに関する5つの記述から最も適当なものを選ばせます。キラーT細胞とヘルパーT細胞の役割の違いが問われます。
<考え方>
獲得免疫の中で、誰が誰を活性化し、誰が何を攻撃するのかという役割分担に戻れば決まります。ヘルパーT細胞が司令塔としてキラーT細胞とB細胞を活性化し、キラーT細胞は感染した細胞を直接攻撃し、抗体をつくるのはB細胞が分化した形質細胞です。
【獲得免疫の役割分担】 樹状細胞 抗原提示を行う ヘルパーT細胞 キラーT細胞・B細胞を活性化する(司令塔) キラーT細胞 病原体に感染した細胞を直接攻撃して排除する(細胞性免疫) B細胞 → 形質細胞 抗体を産生する(体液性免疫) ① 誤 向きが逆。ヘルパーT細胞がキラーT細胞を活性化する ② 正 キラーT細胞は、病原体に感染した細胞を直接攻撃する ③ 誤 B細胞を活性化するのはヘルパーT細胞 ④ 誤 食作用を行うのはマクロファージ・樹状細胞・好中球。ヘルパーT細胞は食作用をしない ⑤ 誤 抗体を産生するのは、B細胞が分化した形質細胞 よって ②
ヘルパーT細胞が壊されると、キラーT細胞もB細胞も十分にはたらけなくなります。エイズで様々な感染症にかかりやすくなるのは司令塔を失うからだ、という本文の流れとつながります。
問5:正解 ⑥(解答番号111/配点3)
<問題要旨>
下線部(c)の予防接種に関連して、ある病原体Aに対する予防接種についての記述ⓔ〜ⓖのうち適当なものを選び、それを過不足なく含む組合せを7択から答えさせます。
<考え方>
予防接種は、病原性をなくした抗原をあらかじめ体内に入れて記憶細胞をつくらせる操作だ、という定義に戻ります。記憶細胞があれば、本物の病原体が侵入したときに一次応答を経ずに二次応答が起こり、抗体が速く大量につくられて増殖を抑えられます。記憶細胞をつくるのも使うのも獲得免疫であって、自然免疫の細胞ではありません。
ⓔ 適当でない 二次応答を担うのは、予防接種によってつくられた記憶細胞(記憶B細胞・記憶T細胞)。 好中球は食作用で異物を処理する自然免疫の細胞で、二次応答の担い手ではない ⓕ 適当 記憶細胞があるので、侵入した病原体Aに対して速やかに大量の抗体がつくられ、 体内での増殖を防ぐことができる ⓖ 適当 予防接種をしていなければ一次応答から始まるが、接種済みなら記憶細胞から二次応答が始まるので、 免疫応答がより早く起こる 適当なのは ⓕ と ⓖ よって ⑥
ⓕとⓖは「増殖を防げる」「応答が早い」と言い方が違うだけで、どちらも二次応答という同じしくみの表と裏です。片方だけを選ぶと「過不足なく含む」組合せになりません。
問6:正解 ③(解答番号112/配点3)
<問題要旨>
毎年冬に流行する感染症の病原体Bの抗原を、3歳未満の集団と7歳以上13歳未満の集団に接種し、接種前・1回接種後・2回接種後の血液中の抗体量の平均を示したのが図2です(縦軸は3歳未満の接種前を1とした相対値、測定の時期は表1)。図2の結果の原因として、選択肢中の波線部の説明が最も適当なものを4つから選ばせます。
<考え方>
判定の対象は、図から読める事実(選択肢の前半)ではなく、その原因の説明(波線部)です。抗体をつくるのは獲得免疫であって自然免疫ではないこと、抗体は接種した抗原に特異的につくられることの2点で3つが落ち、残った1つを図の数値で確かめます。
【図2から読み取れる値(3歳未満の接種前を1とした相対値)】 接種前 1回接種後 2回接種後 3歳未満 1 約5 約8 7歳以上 約6 約17 約19 接種前 → 1回接種後 の増え方 3歳未満 約5 − 1 = 約4 7歳以上 約17 − 6 = 約11 → 7歳以上のほうが大きい ① 誤 抗体をつくるのは獲得免疫。自然免疫が強くなっても抗体量は増えない ② 誤 自然免疫は特定の抗原に対する抗体をつくらない。接種前に抗体があるのは、 過去に病原体Bに感染したか、予防接種を受けたことがあるため ③ 正 7歳以上は接種前の抗体量がすでに高く、そういう人にとっては1回目の接種が 2回目以降の抗原との出会いになる。記憶細胞による二次応答が起こるので増え方が大きい ④ 誤 抗体は接種した抗原に特異的につくられる。全ての抗原に対する抗体が増えるのではない よって ③
表1のとおり、どの測定も「1回目接種直前」「1回目接種4週間後」「2回目接種4週間後」と時期をそろえてあります。測定の時期がずれていたから差が出た、という説明は成り立たない作りです。
第3問(必答) A クジラの死体をめぐる会話と物質・エネルギーの流れ
座礁したマッコウクジラの骨格標本を見ながらの会話文を素材に、栄養段階の上位にいる動物の特徴、遺体の分解が遅くなる条件、そして埋める・燃やすという処理で物質とエネルギーがどうなるかを問います。第3問はA・Bあわせて16点です。
問1:正解 ①(解答番号113/配点3)
<問題要旨>
下線部(a)のマッコウクジラのように、海洋生態系で最上位の栄養段階に属する動物は、栄養段階が下位の動物と比べてどのような特徴を持つかを、4つの記述から選ばせます。
<考え方>
生態ピラミッドに戻ります。ある栄養段階が上の段階に渡せるエネルギーはごく一部なので、栄養段階が上がるほど生物量も個体数も小さくなる、というのが原則です。
【生態ピラミッド】 生産者 → 一次消費者 → 二次消費者 → … 上の段階へ渡るエネルギーは一部だけ → 上の段階ほど個体数・生物量は小さい ① 正 最上位の栄養段階に属する動物ほど、個体数は少ない ② 誤 キーストーン種はその生態系の上位の捕食者であることが多く、 最上位の動物はむしろ他の種の個体数を制限する側にあたる ③ 誤 最上位ということは、その動物を捕食する動物がいないということ ④ 誤 一般に、栄養段階が上位の動物ほど体サイズは大きい よって ①
この設問は「最上位だから必ず言えること」を選ぶ形です。エネルギーの流れから直接導ける①が、例外の余地なく成り立ちます。
問2:正解 ④(解答番号114/配点3)
<問題要旨>
下線部(b)の「深海の底では完全に分解されるまでに10年以上かかる」に関連して、生態系内で生物の遺体(遺骸)の分解が遅くなることに直接関係する理由として適当な記述をⓐ〜ⓒから選び、過不足なく含む組合せを7択から答えさせます。
<考え方>
分解の速さを決めるのは、分解する側の能力と量です。「1個体あたりどれだけ速く分解するか(代謝の速さ)」と「そういう生物がどれだけいるか(総量)」の2つがそろって分解速度になる、と分けて考えます。生産者の量は分解者に回る有機物の量を左右しますが、すでにある遺体が分解される速さそのものには直接は効きません。
分解の速さ = (分解する生物1個体あたりの分解の速さ)×(分解する生物の総量) ⓐ 適当 細菌・菌類の代謝が遅ければ、有機物を分解する反応そのものが遅くなる 深海は低温・高圧で代謝が進みにくい ⓑ 適当 遺体を消費する生物の総量が少なければ、同じ量の遺体を片づけるのに時間がかかる ⓒ 適当でない 光合成を行う生物の総量は、その生態系に供給される有機物の量を決める要因。 すでにある遺体が分解される速さには直接は関係しない 適当なのは ⓐ と ⓑ よって ④
ⓒは「深海には光が届かず生産者が少ない」という事実自体は正しいので迷いやすい選択肢です。設問が「分解が遅くなることに直接関係する理由」と限定していることを読み落とさないようにします。
問3:正解 ①(解答番号115/配点3)
<問題要旨>
下線部(c)の「死体は砂浜に埋められて」、下線部(d)の「死体を処分場で燃やす」という2つの処理について、それが行われた際に起こる現象の記述として最も適当なものを4つから選ばせます。
<考え方>
生態系の中で物質は循環するがエネルギーは循環しない、という原則で4つとも片づきます。炭素などはCO₂や無機塩類の形で大気や土壌に戻り、再び生産者に取り込まれますが、熱エネルギーとして出ていったぶんは二度と生物には利用されません。
【原則】 物質(炭素・窒素など) 生態系内を循環する エネルギー 光 → 化学エネルギー → 熱 と一方向に流れ、熱は生態系外へ出て戻らない ① 正 埋められた死体は分解者などに取り込まれ、有機物の化学エネルギーがその生物の生命活動に使われる ② 誤 燃焼で生じた熱エネルギーを、同化によって化学エネルギーに変換する生物はいない。 熱エネルギーは再利用されない ③ 誤 分解によって生じる無機物にはCO₂が含まれ、これは大気中へ放出される ④ 誤 燃焼で生じたCO₂は大気中で光合成に使われる。ほかの生物に利用されないわけではない よって ①
③と④はどちらも「無機物の行き先」を誤っています。埋めても燃やしても有機物は最終的にCO₂や水などの無機物になり、そのCO₂は大気を経て光合成に戻ります。
第3問(必答) B 世界のバイオームの並びと日本の自然植生
赤道域から極方向へ気候条件が変わるとバイオームが移り変わることを、図1の線A上の並びで確かめ、続いて南北に長く標高差も大きい日本列島の自然植生を問います。
問4:正解 ③(解答番号116/配点4)
<問題要旨>
下線部(e)に関連して、図1の線A(アフリカ西部の赤道付近からヨーロッパを通って北へ向かう線)上に現れる主なバイオームは、赤道付近から順に 熱帯多雨林 → ア → サバンナ → 砂漠 → イ → ウ → 針葉樹林 と並びます。ア〜ウの特徴としてⓓ〜ⓘのどの記述が当てはまるかを、組合せとして8択から選ばせます。
<考え方>
バイオームは年平均気温と年降水量で決まる、という原則に、与えられた並びの前後関係を重ねれば1つずつ確定します。アは熱帯多雨林とサバンナの間、イは砂漠より高緯度側、ウはイと針葉樹林の間という位置にあり、その位置がそのまま気候条件の手がかりになります。3つの空欄はそれぞれ別の根拠で決まるので、順に確かめます。
【ア:熱帯多雨林とサバンナの間】 熱帯多雨林(年中高温多雨)より乾燥するが、サバンナ(草原)ほど乾燥しない森林 → 雨緑樹林。雨季と乾季が明瞭で、乾季に落葉する ア = ⓓ (ⓔ「年間を通して湿潤で多様な常緑広葉樹」は熱帯多雨林そのものの説明。 熱帯多雨林とは別に並んでいるアには入らない) 【イ:砂漠より高緯度側】 線Aが砂漠(サハラ)を抜けた先は地中海沿岸 地中海沿岸は冬に雨が多く、夏は乾燥する → 硬葉樹林。オリーブなど、硬く小さい葉で夏の乾燥に耐える樹種が分布する イ = ⓖ (ⓕ「温暖・湿潤でカシ類など厚く光沢のある葉」は照葉樹林の説明で、日本の暖温帯などに分布する) 【ウ:イと針葉樹林の間】 硬葉樹林より寒く、針葉樹林より暖かい森林 → 夏緑樹林。冷涼で、ブナ類やカエデ類が冬に落葉する ウ = ⓗ (ⓘ「年降水量が少なくイネのなかまが優占する草原」はステップの説明で、森林ではない) ア = ⓓ イ = ⓖ ウ = ⓗ よって ③
ⓕの照葉樹林とⓖの硬葉樹林はどちらも常緑広葉樹の森林で紛らわしいので、「夏に乾く地中海型か、夏に雨が多い日本型か」で区別します。公式解答では、①・④・⑦のいずれかを選んだ場合に1点が与えられます。
問5:正解 ②(解答番号117/配点3)
<問題要旨>
下線部(f)について、日本列島は南北に長いため年平均気温の幅が大きく、標高差も著しいことを踏まえ、日本の自然植生(人間の手が加えられていない植生)についての記述として最も適当なものを4つから選ばせます。
<考え方>
緯度に沿った水平分布と、標高に沿った垂直分布が同じ気温の順で対応する、という枠組みで判定します。暖かいほうから、亜熱帯多雨林 → 照葉樹林 → 夏緑樹林 → 針葉樹林 の順に並び、緯度が上がることと標高が上がることは同じ向きにはたらきます。
【暖かいほうから寒いほうへ】 水平分布 沖縄・南西諸島(亜熱帯多雨林)→ 九州〜関東の低地(照葉樹林) → 東北・北海道南西部(夏緑樹林)→ 北海道東部・北部(針葉樹林) 垂直分布 丘陵帯(低地帯)→ 山地帯 → 亜高山帯 → 高山帯 ① 誤 北海道でも南西部の低地には夏緑樹林が分布し、高山帯は森林にならない。 「標高によらず優占する」とは言えない ② 正 九州・四国では低地が照葉樹林で、その上の山地帯が夏緑樹林。 東北はより寒いので、山地帯だけでなく丘陵帯(低地帯)にも夏緑樹林が分布する ③ 誤 照葉樹林は関東地方の平野部にも分布する。分布の北限はさらに北にある ④ 誤 亜熱帯多雨林は沖縄・南西諸島などに限られ、九州本土の丘陵帯は照葉樹林 よって ②
②が正しいことは、同じ夏緑樹林が「南では山の上、北では平地」に現れるという、垂直分布と水平分布の対応そのものです。緯度が上がったぶんだけ、同じバイオームが低い標高に降りてくると考えます。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

