2025年度 大学入学共通テスト 追試験「生物基礎」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2025年度(令和7年度)大学入学共通テスト・追試験の「生物基礎」は、第1問から第3問までの全16項目、50点満点です。理科基礎は4科目のうち2科目を選び、あわせて60分で解答する形式なので、1科目あたりの目安は30分になります。配点は第1問17点・第2問17点・第3問16点で、選択問題はなく全問必答です。なお解答番号が101から始まっているのは、理科基礎の4科目が1冊の問題冊子(100点満点)にまとめられているためで、生物基礎に割り当てられた番号が101〜117というだけのことです。マークする位置さえ間違えなければ、解き方には何の影響もありません。
第1問は「生物の特徴と、遺伝子とその働き」。Aは乳酸菌・コウジカビ・酵母という発酵食品でおなじみの生物を題材に、原核細胞と真核細胞の構造の違い、同化と異化の区別、ミトコンドリアの働きを問います。Bはゲノムと遺伝子発現で、アミノ酸の数から遺伝子領域の塩基対数を求める計算(問5)と、mRNAの総数・タンパク質の総数という数値から転写・翻訳の実態を考察する問題(問6)が並びます。数値をそのまま読むのではなく、「遺伝子の数より多いか少ないか」を比べるのが要点です。
第2問は「ヒトのからだの調節と防御」。Aは血糖濃度の調節で、運動中のグラフから2種類のすい臓ホルモンを特定する問2が山場です。Bは高校生Zさんのインフルエンザとスズメバチによるアナフィラキシーという具体的な症例を追う構成で、自然免疫・樹状細胞の抗原提示・自律神経による心拍数の調節が続けて問われます。第3問は「生物の多様性と生態系」。Aは放棄された雑木林でササを刈り取る実験、Bは3地点の土壌動物を比べる探究活動で、最後の問4は仮説を検証する実験計画そのものを選ばせる問題です。
この回でつまずきやすいのは、図やグラフから読み取った数値をそのまま結論にしてしまうところです。第3問A問1では「個体の総数」「葉の総数」「花の総数」の3つのグラフが並びますが、選択肢は総数だけでなく「個体当たりの葉の数」や「どちらがより強く影響を受けるか」という割り算を要求してきます。棒の高さを見比べる前に、選択肢が何を比べろと言っているのかを確かめてください。
第1問(必答) A 発酵食品の微生物(乳酸菌・コウジカビ・酵母)と細胞のつくり・代謝
ヨーグルト、しょう油、パンという身近な発酵食品を入り口に、原核細胞と真核細胞の構造の違い、同化と異化の区別、ミトコンドリアの働きを問う3問です。第1問全体の配点は17点で、Aは各3点の計9点です。
問1:正解 ⑥(解答番号101/配点3)
<問題要旨>
表1には、三種類の細胞ア・イ・ウについて、細胞膜・細胞壁・ミトコンドリア・葉緑体の有無が+−で示されています。このうち乳酸菌とコウジカビに当たるものを選ぶ問題です。リード文には「乳酸菌には核が存在しなかったが、コウジカビには核が存在した」と書かれています。
<考え方>
原核細胞か真核細胞かは、膜で囲まれた細胞小器官をもつかどうかで決まります。表の4つの構造体のうち、ミトコンドリアと葉緑体だけが膜で囲まれた細胞小器官なので、この2つの有無で3つの細胞を振り分けられます。細胞膜と細胞壁は3つすべてに+なので手がかりになりません。
【表1の3つの列を振り分ける】 ア ミトコンドリア+、葉緑体+ → 葉緑体をもつ真核細胞=植物(または藻類)の細胞 イ ミトコンドリア+、葉緑体− → 葉緑体をもたない真核細胞で細胞壁あり=菌類の細胞 ウ ミトコンドリア−、葉緑体− → 膜で囲まれた細胞小器官をもたない=原核細胞 【乳酸菌とコウジカビを当てはめる】 乳酸菌は核をもたない(本文)=原核生物 → ウ コウジカビは核をもつ(本文)=真核生物、菌類なので細胞壁はあるが葉緑体はもたない → イ 【検算】乳酸菌は細菌、コウジカビはカビ(菌類)。菌類は従属栄養なので葉緑体をもたず、アは残る植物の細胞となって過不足なく3つが埋まる。 よって ⑥
細菌とカビを「どちらも微生物」とひとくくりにしないことが大切です。細菌は原核生物、カビ・キノコ・酵母は真核生物の菌類で、体のつくりは大きく違います。
問2:正解 ①(解答番号102/配点3)
<問題要旨>
図1には、光エネルギーを使って無機物から有機物をつくる過程Aと、有機物を分解して無機物にし化学エネルギーを取り出す過程Bが示されています。4つの記述のうち、A・Bのどちらか一方の過程だけに当てはまるものを選ぶ問題です。
<考え方>
図から、Aは光合成(同化)、Bは呼吸(異化)と読み取れます。そのうえで、選択肢は「片方だけに当てはまるか」を問うているので、両方に当てはまる記述を先に消していくのが速い解き方です。酵素・ATP・細胞質という3つは、代謝全般に共通する事柄だと気づけるかどうかが分かれ目になります。
【図1の読み取り】 A:光エネルギー + 無機物 → 有機物 …… 光合成(同化) B:有機物 → 無機物 + 化学エネルギー …… 呼吸(異化) 【選択肢の判定】 ① Bのみ 従属栄養生物は光合成を行わないが呼吸は行う。Aは独立栄養生物だけが行う ② 両方 光合成も呼吸も多数の酵素が段階的に働く反応である ③ 両方 光合成ではATPが同化に、呼吸ではATPが合成されてから各種の働きに使われる ④ 両方 細胞質とは細胞から核を除いた部分。葉緑体もミトコンドリアも細胞質に含まれる 【検算】②③④はいずれも「代謝である以上そうなる」性質であり、A・Bを区別する手がかりにならない。片方だけに当てはまるのは①だけ。 よって ①
④で迷った人は「細胞質」の定義を確認しておきましょう。細胞質は細胞から核を除いた部分全体を指し、細胞質基質のことだけではありません。
問3:正解 ③(解答番号103/配点3)
<問題要旨>
酸素がない条件で培養した酵母ではごく少数しか見られなかった細胞小器官Xが(図2)、酸素がある条件に移すと多数観察され(図3)、そのとき培養液中の酸素が消費されて減った、という観察結果です。Xの主な働きとして適当な記述ⓐ〜ⓒを過不足なく含むものを選びます。
<考え方>
まずXが何かを決めてから、記述を当てにいきます。「酸素があるときに増える」「そのとき酸素が消費される」という2つの条件を同時に満たす細胞小器官は、酸素を使って有機物を分解するミトコンドリアしかありません。あとは3つの記述をミトコンドリアの働きと照らすだけです。
【細胞小器官Xの特定】 酸素がある条件下で数が増える + そのとき酸素が消費される → 酸素を使って呼吸を行う細胞小器官 → ミトコンドリア 【記述の判定】 ⓐ 誤 光合成に関与するのは葉緑体。酵母は菌類で葉緑体をもたない ⓑ 誤 染色体の凝縮は核内で起こる現象で、ミトコンドリアは関与しない ⓒ 正 呼吸は有機物を分解する異化であり、ミトコンドリアの主な働きそのもの 適当なものはⓒのみ よって ③
パンやビールに使う酵母は、酸素がないときはアルコール発酵、酸素があるときは呼吸というように代謝を切り替えます。酸素があるほうがミトコンドリアが増えるのはそのためです。
第1問(必答) B ゲノムと遺伝子発現(ゲノムサイズの計算とmRNA・タンパク質の数からの考察)
タンパク質は遺伝子が発現してつくられる、という一文を受けて、ゲノムの基本事項(問4)、アミノ酸の数からゲノムの大きさを逆算する計算(問5)、大腸菌の実測値から転写・翻訳の実態を考える考察(問6)が並びます。Bの配点は3点+2点+3点の計8点です。
問4:正解 ④(解答番号104/配点3)
<問題要旨>
ゲノム・DNA・遺伝子発現についての4つの記述から、最も適当なものを1つ選ぶ問題です。DNAの量とゲノムの大きさの違い、ヌクレオチドの数え方、mRNAの塩基の割合、細胞ごとのタンパク質の違いという、基本事項が幅広く問われています。
<考え方>
4つとも「知っているかどうか」ではなく「定義どおりに数えられるか」で決まります。ゲノムは「その生物がもつ遺伝情報の1組」という意味なので細胞周期では変わりません。DNAは2本鎖、mRNAは1本鎖、という鎖の本数の違いが②と③を分ける鍵です。
① 誤 細胞周期のS期にDNA量は2倍になるが、ゲノムは遺伝情報の1組を指すので大きさは変化しない ② 誤 DNAは2本鎖。100万塩基対なら塩基は200万個あり、ヌクレオチドも200万個 ③ 誤 mRNAは1本鎖なので、二重らせんの相補性(A=T、G=C)から割合を求めることはできない。 アデニンが30%でも、残り70%がグアニン・シトシン・ウラシルにどう分かれるかは決まらない ④ 正 同一個体の細胞はどれも同じゲノムをもつが、発現する遺伝子は細胞の種類ごとに異なる。 その結果、存在するタンパク質の種類や量は細胞の種類によって異なる 【検算】③を「二重らせんならグアニン20%」と考えた場合、A30%・T30%でG+C=40%、G=C=20%と一応の数は出る。 しかしmRNAには相手の鎖が無く、そもそもTではなくUをもつので、この計算は適用できない。 よって ④
④は「同じゲノムをもつのに細胞が違う姿になる」=分化のしくみそのものです。第1問Bの残り2問もこの発想を数字で追う内容になっています。
問5:正解 ④(解答番号105/配点2)
<問題要旨>
ある原核生物について、1つのタンパク質をつくるアミノ酸が平均およそ270個、ゲノム中の遺伝子が2000個、全塩基配列に占める遺伝子領域の割合が90%、という3つの数値が与えられ、ゲノムの大きさ(塩基対数)を求めます。
<考え方>
手がかりは「アミノ酸1個は塩基3個(コドン)が指定する」という1点です。アミノ酸の数→1遺伝子の塩基対数→2000遺伝子分の塩基対数、と順に掛け算し、最後にそれが全体の90%であることを使って割り算で全体に戻します。最後が掛け算ではなく割り算になることに注意してください。
【1遺伝子あたりの塩基対数】 アミノ酸1個 = 塩基3個 270 × 3 = 810 塩基対 【遺伝子領域の合計】 810 × 2000 = 1620000 = 162万塩基対 【ゲノム全体に戻す】 遺伝子領域がゲノム全体の90%なので ゲノム = 162万 ÷ 0.9 = 180万塩基対 【検算】逆に180万 × 0.9 = 162万。これを2000で割ると810塩基対、3で割って270アミノ酸となり、与えられた数値に戻る。 よって ④
最後を「162万 × 0.9」としてしまうと約145万となり、選択肢③がそのまま用意されています。遺伝子領域は全体の一部なので、全体は必ず162万より大きくなる、と方向を先に決めておくと防げます。
問6:正解 ⑤(解答番号106/配点3)
<問題要旨>
大腸菌のゲノムには約4200個の遺伝子があり、条件Aで培養した細胞1つのmRNA総数は約8000、条件Bでは細胞1つのmRNA総数が約3000でタンパク質の総数は約300万でした。これらの結果から言える考察ⓓ〜ⓖの正しい組合せを選びます。
<考え方>
与えられた数値は、どれも「遺伝子の数4200」と比べるために置かれています。mRNAが遺伝子数より多ければ同じ遺伝子が何度も転写されたことになり、少なければ転写されていない遺伝子があることになります。タンパク質の数はmRNAの数と比べます。数値を単独で見ず、必ず2つを比べてください。
【比べる】 条件A:mRNA 約8000 > 遺伝子 約4200 …… 遺伝子1個あたり平均およそ2個のmRNA 条件B:mRNA 約3000 < 遺伝子 約4200 …… 転写されていない遺伝子がある 条件B:タンパク質 約300万 ÷ mRNA 約3000 = mRNA 1個あたり約1000個のタンパク質 【記述の判定】 ⓓ 誤 同じ大腸菌であり、培養条件でゲノムの遺伝子数(約4200)が変わることはない ⓔ 正 条件AでmRNAが遺伝子数を上回るので、同一のDNA領域が繰り返し転写されている ⓕ 誤 条件BのmRNAは約3000で遺伝子数4200より少なく、転写されていない遺伝子が存在する ⓖ 正 mRNA約3000から約300万個のタンパク質ができているので、同じタンパク質が多数存在する 適当なものはⓔとⓖ よって ⑤
ⓕは「全ての」「常に」という言い切りです。この種の選択肢は反例を1つ挙げれば落とせるので、まず反例を探す習慣をつけておくと速く解けます。
第2問(必答) A ホルモンによる血糖濃度の調節(運動時のグラフの読み取りと症例の解釈)
恒常性の調節を担う内分泌系の基本(問1)、運動中の血糖濃度とすい臓ホルモンのグラフから2種類のホルモンを特定する問題(問2)、血糖濃度が下がらない人の体内で何が起きているかを考える症例問題(問3)の3問です。第2問全体の配点は17点で、Aは2点+3点+3点の計8点です。
問1:正解 ②(解答番号107/配点2)
<問題要旨>
ホルモンについての5つの記述から、適当でないものを1つ選ぶ問題です。分泌と運搬、受容体、神経分泌、自律神経による分泌調節という、内分泌系の基本事項が並んでいます。
<考え方>
ホルモンの作用は「受容体をもつ細胞にだけ届く」という一点に戻ります。標的器官が違えば、そこにある受容体から先のしくみも違うため、同じホルモンでも引き起こされる応答は器官ごとに異なります。ここを崩している記述が答えです。
① 正 ホルモンは内分泌腺から血液中に分泌され、血流によって標的器官まで運ばれる ② 誤 同じホルモンでも標的器官が異なれば応答は異なる。 例えばアドレナリンは肝臓ではグリコーゲンの分解を促し、心臓では拍動を促進する ③ 正 ホルモンは標的細胞のもつ受容体に結合してはじめて作用する ④ 正 視床下部の神経分泌細胞のように、ホルモンを分泌する神経細胞がある ⑤ 正 副腎髄質からのアドレナリン分泌は交感神経の働きで促進される 適当でないものは② よって ②
「どの細胞に届くかは受容体が決める」「届いたあとに何が起こるかはその細胞の性質が決める」。この2段構えで覚えておくと、①③②をまとめて整理できます。
問2:正解 ①(解答番号108/配点3)
<問題要旨>
健康な人が60分間運動し、その直後60分間安静にしたときの、血糖濃度(左のグラフ)と、すい臓から分泌される2種類のホルモンA・Bの血中濃度(右のグラフ)が図1に示されています。ホルモンAまたはBに関する記述として最も適当なものを選びます。
<考え方>
すい臓から分泌され血糖濃度を調節するホルモンといえば、濃度を上げるグルカゴンと下げるインスリンの2つです。どちらがどちらかは、血糖濃度が動いた向きと、それに対してホルモン濃度が動いた向きを突き合わせれば決まります。左右のグラフの同じ時刻を縦に見比べてください。
【左のグラフ(血糖濃度)を読む】 0分 1.0 → 30分 約0.87 → 60分 約0.95 → 90分 1.0 → 120分 約0.95 運動中(0〜60分)に血糖濃度が低下し、安静後にほぼ元に戻る 【右のグラフ(ホルモン濃度)を同じ時刻で読む】 ホルモンA 1.0 → 30分 約1.45 → 60分 約1.48 血糖濃度が下がると増加 ホルモンB 1.0 → 30分 約0.20 → 60分 約0.27 血糖濃度が下がると減少 【どちらがどちらか】 血糖濃度が低下したときに分泌が増えるA = 血糖濃度を上げるホルモン = グルカゴン 血糖濃度が低下したときに分泌が減るB = 血糖濃度を下げるホルモン = インスリン 【選択肢の判定】 ① 正 グルカゴンは肝臓でグリコーゲンの分解を促し、グルコースを血液中に放出させる ② 誤 Aが増えているのはインスリン(B)が減っている時期であり、 Bが直接Aの分泌を抑えていることはこのグラフからは言えない ③ 誤 Bはインスリンで血糖濃度を下げる。アドレナリンは血糖濃度を上げるので逆の働き ④ 誤 運動時には心拍数が増えるが、インスリンの分泌を決めているのは血糖濃度であり、 心拍数の増加が分泌を抑えるという関係はグラフから読み取れない よって ①
「運動中は血糖が使われて減る→それを補うホルモンが増える」という筋道が見えれば、グラフを細かく読まなくてもAがグルカゴンだと決まります。次の問3はこのインスリンの側の話です。
問3:正解 ⑤(解答番号109/配点3)
<問題要旨>
血糖濃度を調節する働きが十分でないYさんについて、食後の血糖濃度は健康な人より高いのに、血液中のインスリン濃度は健康な人とほぼ同じだった、という測定結果が示されます。この状態を説明する文章の空欄ア・イに入る語句の組合せを選びます。
<考え方>
「インスリン濃度は正常なのに血糖濃度が下がらない」という条件が、そのまま答えを決めます。血液中にインスリンが正常量あるのなら、合成も分泌も行われているということです。すると残る障害の場所は、インスリンを受け取る側しかありません。
【空欄アを決める】 血液中のインスリン濃度が健康な人とほぼ同じ → インスリンの合成は正常 → 「合成」は不適 → インスリンの分泌も正常 → 「分泌」は不適 → 残るのは標的細胞での「受容」(受容体での受け取り)の障害 ア = 受容 【空欄イを決める】 インスリンの主な働きは、細胞へのグルコースの取り込みを促すこと その受容が働かない → グルコースの細胞への取り込みが不十分になる → 血糖濃度は高いままなのに、細胞はグルコースを使えない イ = 細胞への取り込み 【検算】文章の後半は「エネルギー源としてのグルコースの供給に支障をきたす」。 血液中にグルコースは余っているのだから、支障が出るのは細胞に入る段階である。「細胞での合成」では文意が通らない。 よって ⑤
インスリンが出ていないタイプと、出ているのに効かないタイプがあります。Yさんは後者で、血中インスリン濃度を測ることでこの2つを区別できる、というのがこの設問の要点です。
第2問(必答) B 感染とアナフィラキシー(高校生Zさんの症例から見る免疫と自律神経)
高校生Zさんが経験した2つの病気の記録を素材にした3問です。冬のインフルエンザから自然免疫(問4)と樹状細胞の働き(問5)を、夏のスズメバチによるアナフィラキシーから免疫反応・血管の状態・自律神経による心拍数の調節(問6)を問います。Bは各3点の計9点です。
問4:正解 ③(解答番号110/配点3)
<問題要旨>
Zさんの喉の腫れと発熱という記述を受けて、感染の初期段階に喉の腫れをもたらす体内の働きはどれかを5つの選択肢から選びます。
<考え方>
「感染の初期段階」という限定が答えを決めます。適応免疫(獲得免疫)は抗原を認識してから働きだすまでに数日かかるため、初期段階では間に合いません。初期段階に起こる腫れ・発赤・発熱は炎症であり、これは自然免疫の反応です。
① 誤 細胞性免疫は適応免疫。感染の初期段階では働きだしていない ② 誤 体液性免疫も適応免疫。抗体がつくられるまでに数日かかる ③ 正 感染部位でマクロファージや好中球が働き、血管が拡張して血液成分が集まる。 これが炎症で、腫れ・発赤・発熱として現れる。炎症は自然免疫の反応である ④ 誤 胸腺で成熟する免疫細胞はT細胞で、これは適応免疫を担う ⑤ 誤 粘液は病原体の侵入を物理的・化学的に防ぐ働きで、腫れをもたらすものではない よって ③
「初期段階=自然免疫」「数日後から=適応免疫」という時間軸を1本引いておくと、この種の設問は選択肢を読む前に方向が決まります。
問5:正解 ⑧(解答番号111/配点3)
<問題要旨>
Zさんの家族のうち母だけが早く回復したことについて考える文章の、空欄ウ〜オに入る語句の組合せを選びます。文章は「ウは病原体などの異物を取り込んで排除するだけでなく、エに移動することで特定のオの働きを直接活性化する」と述べています。
<考え方>
ウを決める手がかりは「取り込んで排除するだけでなく」という一文です。食作用に加えて、別の免疫細胞を直接活性化する働きをあわせもつ細胞を選びます。これは抗原提示を行う樹状細胞のことで、移動先と相手もそこから自動的に決まります。
【空欄ウ】 食作用を行い、さらに他の免疫細胞を直接活性化する細胞 好中球 …… 食作用は行うが、抗原提示による活性化は担わない 樹状細胞 …… 食作用に加え、取り込んだ抗原の情報を提示する ウ = 樹状細胞 【空欄エ】 樹状細胞は抗原を取り込んだあと、リンパ管を通ってリンパ節へ移動する 骨髄は免疫細胞がつくられる場所であって、抗原提示が行われる場所ではない エ = リンパ節 【空欄オ】 リンパ節で樹状細胞が抗原提示を行う相手はT細胞 B細胞が活性化されるのは、活性化されたヘルパーT細胞を介してであり「直接」ではない オ = T細胞 【検算】樹状細胞 → リンパ節 → T細胞、という流れは自然免疫と適応免疫をつなぐ橋にあたる。 この細胞の能力が高ければ適応免疫の立ち上がりが速くなり、母が早く回復したことの説明になる。 よって ⑧
樹状細胞は自然免疫の細胞でありながら、適応免疫の引き金を引く役でもあります。「異物を食べる」と「情報を伝える」の両方を担う点が、好中球との決定的な違いです。
問6:正解 ④(解答番号112/配点3)
<問題要旨>
スズメバチに刺されたZさんの症状と、治療開始後の経過を説明する文章の空欄カ〜クを埋めます。図2には治療開始からの経過時間に対する血圧(白丸・左軸)と心拍数(黒丸・右軸)の推移が示され、横軸上に時間帯Ⅰ(約1〜2時間)と時間帯Ⅱ(約2〜3時間)が矢印で示されています。
<考え方>
カとキは用語の意味から決まります。アナフィラキシーはアレルギーの一種で、抗原に対する過敏な免疫反応です。血圧が下がるのは血管が広がったときなので、キは拡張です。クだけが図の読み取りで、副交感神経は心拍数を下げる働きをもつので、心拍数が下がっている時間帯を探します。
【空欄カ】 アナフィラキシーはハチ毒を抗原とする急激なアレルギー反応であり、免疫反応の一種 免疫不全は免疫の働きが低下した状態で、刺し傷が赤く腫れる症状の説明にならない カ = 免疫反応 【空欄キ】 血圧は血管が細いほど高く、広がるほど低くなる Zさんは血圧が大幅に低下 → 多くの血管が広がった キ = 拡張 【空欄ク】図2の黒丸(心拍数、右軸)を時間帯ごとに追う 時間帯Ⅰ(約1時間〜約2時間) 黒丸は右軸でおよそ100回/分 → およそ110回/分 …… 上昇 時間帯Ⅱ(約2時間〜約3時間) 黒丸は右軸でおよそ110回/分 → およそ90回/分 …… 低下 副交感神経は心拍数を低下させる → 心拍数が下がっている時間帯を選ぶ ク = Ⅱ 【検算】時間帯Ⅰでは白丸(血圧)もまだ低い位置から上がり切っていない。 血圧が低いあいだは交感神経が働いて心拍数を上げ、血圧が回復してくると副交感神経が優位になって心拍数が落ち着く、という順序と矛盾しない。 よって ④
図2は白丸と黒丸で軸が違う点に注意が必要です。黒丸の心拍数は右側の軸(30〜150回/分)で読みます。軸を取り違えても上がり下がりの向きは変わらないので、この設問では「どちらに動いたか」だけを見れば十分です。
第3問(必答) A 里山の雑木林とササの刈り取り実験(林床の光環境と草本の反応)
放棄された雑木林にササが茂り林床が暗くなっている、という現状を受けた2問です。ササを刈り取る区と刈り取らない対照区を比べた実験結果の読み取り(問1、2つ選択で6点)と、林床の環境と植生の基本事項(問2、2点)で、第3問全体の配点は16点です。
問1:正解 ①・④(解答番号113・114/配点6)
<問題要旨>
ササより低い位置に一年中葉をつける林床の草本種Tについて、ササを毎年7月に刈り取る区と、刈り取らない対照区が設けられました。図1は刈り取り開始から7年後の3月と8月に種Tの直上で測った林床の光の強さ(刈り取り区の8月を1とした相対値)、図2は同じ年の4月に調べた種Tの個体の総数・葉の総数・花の総数を、区ごとに並べた棒グラフです。適当なものを2つ選びます。
<考え方>
2つのグラフが何を比べるためにあるかを分けて考えます。図1は「3月と8月」という季節の比較と「刈り取り区と対照区」というササの有無の比較の両方ができ、図2はササの有無が種Tに与える影響を示します。選択肢には総数の比較だけでなく、個体当たりの数や影響の大きさの比較を求めるものが混ざっているので、割り算が必要かどうかを先に見極めてください。
【図1の4本の棒を読む】 刈り取り区 3月 約6.8 8月 1 対照区 3月 約1.2 8月 約0.5 【図2の棒を読む】 個体の総数 刈り取り区 約115 対照区 約190 葉の総数 刈り取り区 約1670 対照区 約500 花の総数 刈り取り区 約380 対照区 約35 【選択肢の判定】 ① 正 夏緑樹が落葉している3月は、刈り取り区で6.8>1、対照区で1.2>0.5。 どちらの区でも8月より3月のほうが林床の光は強い ② 誤 3月(春)で比べると刈り取り区6.8に対し対照区1.2。ササの繁茂で大きく変わっている ③ 誤 明るいのは刈り取り区だが、個体の総数は約115で対照区の約190より少ない ④ 正 葉の総数は刈り取り区約1670に対し、ササが茂る対照区は約500。ササの繁茂により減少している ⑤ 誤 個体当たりの葉の数を出すと 刈り取り区 1670 ÷ 115 = 約14.5 対照区 500 ÷ 190 = 約2.6 刈り取りにより個体当たりの葉の数は増えている ⑥ 誤 ササが茂ったときの減り方を割合で比べると 葉 500 ÷ 1670 = 約0.30(約30%に減少) 花 35 ÷ 380 = 約0.09(約9%に減少) 花の総数のほうが強く影響を受けている 【検算】種Tは一年中葉をつける草本で、ササより低い位置にある。 ササを刈れば光が届いて個体当たりの葉と花が大きく増える一方、個体の総数はかえって減っており、 残った個体が大きく育ったと読める。①と④はこの筋道と矛盾しない。 よって ①・④
③を選びやすい設問です。「明るいほうが植物にとって有利」という思い込みで棒を見ずに答えると外します。個体の総数だけは対照区のほうが多い、というグラフの事実をそのまま受け取ってください。
問2:正解 ②(解答番号115/配点2)
<問題要旨>
林床の環境とそこに育つ植生についての5つの記述から、適当でないものを1つ選ぶ問題です。林冠と林床の光の違い、遷移と林床の明るさ、ギャップ、遷移に伴う植物種の交代が扱われています。
<考え方>
遷移の進行と林床の明るさの関係に戻ります。森林が発達するほど林冠が葉で覆われ林床は暗くなり、そこで育つのは弱い光でも生育できる陰生植物です。極相林で次の世代となる陰樹の幼木は、暗い林床で耐えられなければなりません。
① 正 林冠は直射日光を受け、林床には林冠を通り抜けたわずかな光しか届かない ② 誤 極相林を構成する陰樹の幼木は、暗い林床で生育できる陰生植物の性質をもつ。 陽生植物の性質をもつのは、明るい裸地に最初に侵入する先駆植物や陽樹である ③ 正 遷移が進んで高木層が発達するほど林冠が閉じ、林床に届く光は減る ④ 正 高木が倒れてギャップができると、そこから光が差し込み林床は明るくなる ⑤ 正 林床の光環境が変われば、そこで生育できる植物種も入れ替わる 適当でないものは② よって ②
陰樹は「幼木のうちは陰生植物、成木になれば林冠で強い光を受ける」と段階で分けて覚えると混乱しません。陽樹は幼木のうちから強い光を必要とするため、暗い林床では育ちません。
第3問(必答) B 土壌動物の調査(探究活動の結果の解釈と仮説を検証する実験計画)
高校生2人が里山の3地点で土壌動物を採集し、分類群ごとの個体数(表1)、分類群の数(図3)、各地点の環境(表2)をまとめた探究活動です。結果の解釈(問3、4点)と、立てた仮説を検証する調査計画(問4、4点)の2問で計8点です。
問3:正解 ③(解答番号116/配点4)
<問題要旨>
表1には地点X〜Zで採集された土壌動物の分類群ごとの個体数と合計が、図3には各地点の分類群の数が、表2には各地点の植生の特徴・優占する樹種・下層の植生・林床の光環境・落葉や落枝の層の厚さがまとめられています。これらの結果の解釈として最も適当な記述を選びます。
<考え方>
4つの記述はいずれも「どの表・どの図のどの数値を比べるか」が指定されているのと同じです。それぞれについて、比べるべき数値を書き出して大小を確かめれば機械的に決まります。割合を問うている③だけは割り算が必要です。
【使う数値を書き出す】 トビムシ ダニ カメムシ ミミズ クモ その他 合計 分類群の数 地点X 9 2 1 6 1 8 27 約12 地点Y 59 31 8 27 2 66 193 約22 地点Z 120 83 49 13 8 84 357 約28 地点X 人工林(ヒノキ) 下層ほとんどない 暗い 落葉・腐植層ほとんどない 地点Y 人工林(スギ) 下層少ない 暗い 落葉・腐植層厚い 地点Z 二次林(アカマツ)下層よく発達 明るい 落葉・腐植層厚い 【選択肢の判定】 ① 誤 その他の分類群の数 = 分類群の数 − 代表的な5つ 地点X 12 − 5 = 7 地点Y 22 − 5 = 17 地点Z 28 − 5 = 23 スギが優占するのは地点Yだが、最も多いのは地点Z ② 誤 落葉や落枝の層・腐植に富む層が厚いのは地点Y(193)と地点Z(357)。 ほとんどない地点Xは27で、厚いほうが個体数は多い ③ 正 カメムシ類の占める割合を求めると 二次林の地点Z 49 ÷ 357 = 約0.14(約14%) 人工林の地点X 1 ÷ 27 = 約0.04(約4%) 人工林の地点Y 8 ÷ 193 = 約0.04(約4%) 二次林のほうが割合が大きい ④ 誤 下層の植生が最もよく発達しているのは地点Zだが、ミミズ類は13。 下層が少ない地点Yの27より少ない よって ③
③は「個体数」ではなく「占める割合」を問うています。カメムシ類の個体数そのものは地点Zが49で最も多いので、割り算をしなくても同じ結論になりますが、割合を聞かれたら合計で割る手順は省かないでください。
問4:正解 ④(解答番号117/配点4)
<問題要旨>
「土壌動物の分類群の数は、林床の光環境の影響を受ける」という仮説を検証するため、地点X〜Zで環境を変化させる操作を行い、一定期間後に同じ面積の土壌から採集した分類群の数を比較する計画を立てます。最も適当な計画を選びます。
<考え方>
対照実験の原則に戻ります。調べたい要因(ここでは林床の光環境)だけを変え、それ以外の条件をそろえた2つの区を比べなければ、差が光によるものだと言えません。地点が違えば樹種も落葉層も下層植生も違うので、比較は同じ地点の中で行う必要があります。
【この仮説で変えてよい条件・そろえるべき条件】 変える条件 …… 林床の光環境だけ そろえる条件 …… 植生の種類、優占樹種、落葉や落枝の層・腐植に富む層の厚さ、土壌 など 【選択肢の判定】 ① 誤 地点Xで伐採した調査区と地点Yを比べている。 Xはヒノキ林で落葉・腐植層がほとんどなく、Yはスギ林で層が厚い。光以外の条件が違う ② 誤 変えているのは落葉や落枝の層・腐植に富む層であり、林床の光環境ではない。 この計画で差が出ても、光の影響かどうかは分からない ③ 誤 地点Yと地点Zという別の地点どうしの比較になっている。 さらに下層の植生を刈り取る操作は、すみかや食物も同時に変えてしまう ④ 正 同じ地点Zの中で、一部を覆って暗くした区と、覆わなかった区を比べている。 樹種も落葉・腐植層も土壌も同じで、違うのは林床の光環境だけ 【検算】④では覆いをしなかった場所がそのまま対照区になっており、 操作の前後ではなく同時期の2区を比べられるので、季節の影響も排除できる。 よって ④
「同じ場所を2つに分けて、片方だけに操作を加える」が対照実験の基本形です。第3問Aの問1で出てきた刈り取り区と対照区も、まさにこの形で設計されていました。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

