2020年度 大学入試センター試験 本試験 生物基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解5

<解説>
真核生物の細胞小器官に関する代表的な知識として、核にはDNAとタンパク質からなる染色体が含まれ、ミトコンドリアでは独自のDNAをもつうえに呼吸によって水が生成されます。また、葉緑体とミトコンドリアはいずれもATPを合成します。一方、葉緑体に含まれる主な色素はクロロフィル(葉緑素)であり、アントシアニン(アントシアニン)は花や果実などに含まれる色素として知られています。したがって、葉緑体に関してアントシアニンを主要色素として述べるのは誤りになります。

問2:正解2

<解説>
ミトコンドリアの大きさは、長さが数μm程度であることが多いとされています。教科書的には1μm前後から数μm程度の範囲に収まることが多く、極端に長いものでも10μmを超える例はまれです。顕微鏡観察や文献で示される標準的な値から判断すると、5μm前後が“細長いミトコンドリア”の大きさとして最も妥当だと考えられます。

問3:正解1

<解説>
ヒトを含む動物細胞の構成成分を質量比で見ると、まず水が最も多く、次いでタンパク質、炭水化物、脂質、核酸などが含まれています。具体的な比率は生物や細胞の種類によって異なるものの、水分が全体の半数以上を占め、それに続いてタンパク質が比較的多量に存在する点が一般的な特徴です。

問4:正解6

<解説>
生物学では、DNAからRNAへ、そしてタンパク質へと遺伝情報が一方向に流れていくとする考え方を「セントラルドグマ」と呼びます。これは、DNAの塩基配列が転写によってRNAに写し取られ、続いて翻訳によってアミノ酸配列(タンパク質)へと変換される、という分子生物学の中心的な概念です。

問5:正解3

<解説>
DNAの二重らせんを構成する一方の鎖が「A T G T A」という塩基配列のとき、もう一方の鎖は塩基の相補性(AとT、GとC)に基づいて「T A C A T」となります。さらに、このDNAを転写したRNAの塩基配列を考えると、RNAではチミン(T)の代わりにウラシル(U)が使われるため、「U A C A U」という配列が対応すると整理できます。

問6:正解2

<解説>
肺炎双球菌(S型菌とR型菌)を用いた歴史的な実験で、死んだS型菌の成分が生きたR型菌を病原性のS型へと変化させる現象が発見されました。これは「形質転換」と呼ばれ、後にエイブリーらの研究によって、形質転換を引き起こす物質がタンパク質ではなくDNAであることが示唆され、遺伝物質がDNAである決定的な手がかりとなりました。

問7:正解1

<解説>
生物学において、DNAがもつ情報は半保存的複製によって次世代に伝わり、転写・翻訳によって遺伝情報が具体的な機能(タンパク質)として発現します。たとえば、「DNAの複製は二本鎖の一方を鋳型として行われる」というように、基本的な分子生物学の原理を踏まえると、半保存的に複製されることが正しい選択肢と位置づけられます。

問8:正解6

<解説>
分子生物学では、遺伝情報が「DNA → RNA → タンパク質」の方向へと流れるという一連の流れを再確認する問題がしばしば出題されます。これも「セントラルドグマ」の考え方に基づくもので、RNAを逆にDNAへ戻す逆転写酵素などの例外もありますが、中心的枠組みとして扱われています。

問9:正解2

<解説>
遺伝子発現のプロセスでは、「DNAからRNAが合成される段階(転写)」と、「RNAからタンパク質が合成される段階(翻訳)」が分けて考えられます。問題文に示される選択肢のなかで、転写や翻訳に関する正確な説明や用語の組み合わせを見極めることで、適切なものが選ばれます。

問10:正解6

<解説>
近年の分子生物学では、人工的に合成したDNAを細胞に導入して機能を確かめる技術が飛躍的に進歩し、遺伝子の本体がDNAであることや、DNA→RNA→タンパク質への情報伝達のしくみが応用研究でも実証的に活用されています。この流れは、セントラルドグマや形質転換の実験など基礎的知見を積み上げてきた結果として実用化されてきたものです。

第2問

問11:正解5

<解説>
淡水魚と海水魚は、どちらも体液の塩類濃度をほぼ一定に保つ点は共通しています。しかし、淡水魚は水分を多く排出するため、体液よりも塩類濃度が低い尿を排出します。一方、海水魚の尿は体液の塩類濃度とほぼ同程度で、排出量も少なくなっています。これらの知見から、淡水魚の体液は淡水魚の尿よりも塩類濃度が高く、海水魚の体液は海水魚の尿とほぼ等しく、淡水魚の尿は海水魚の尿よりもさらに低いと整理できます。

問12:正解7

<解説>
硬骨魚類のえらには、塩類細胞と呼ばれる特殊な細胞があり、ここでエネルギー源(ATP)が多く使われています。塩類細胞は、淡水型(主に外界から体内へ塩類を取り込む)と海水型(主に体内から外界へ塩類を排出する)とで機能が切り替わります。サケなど河川と海を往来する魚では、成長に伴い淡水型から海水型へ変化しますが、この変化にはヒトの成長ホルモンと同様に脳下垂体から放出されるホルモンが深く関与しています。

問13:正解6

<解説>
淡水魚のコイと海水魚のカレイが同じ沼で釣れたという状況は、沼の塩類濃度が河口付近のやや塩分を含んだ“汽水”に近い環境だった可能性を示唆します。コイ(淡水魚)は、外界の塩類濃度が低くても体液塩類濃度を一定以上に保ち、カレイ(海水魚)は高い塩類濃度に適応しているものの、ある程度低めの塩類濃度にも対応できる性質があります。図示された体液の塩類濃度変化と外界の塩類濃度の関係から、0.9%程度の沼の塩類濃度なら両種が混在できることが読み取れます。

問14:正解8

<解説>
抗原を取り込んで情報を提示する役割をもつ「樹状細胞」などの食作用を担う細胞が、ヘルパーT細胞に抗原情報を伝えると、ヘルパーT細胞は活性化してさまざまな免疫応答を促進します。その後、別のリンパ球(キラーT細胞など)が感染細胞を直接破壊したり、B細胞を刺激して抗体を産生させたりすることで、効果的な免疫が働くようになります。さらに、一部の細胞は記憶細胞となって再侵入時にすばやく反応できるようになります。

問15:正解4

<解説>
B細胞が抗体産生細胞へ分化するには、B細胞自身だけでなく他のリンパ球(とくにヘルパーT細胞など)との相互作用が必要です。実験条件で、B細胞だけを残しても十分な抗体産生細胞が得られなかった一方、B細胞以外のリンパ球を加えると効率的に抗体産生細胞が生じる結果が示されています。このことから、B細胞以外のリンパ球にB細胞の分化を助ける細胞が含まれていると考えられます。

第3問

問16:正解1

<解説>
温帯のステップ(草原)ではイネ科の植物が優占します。たとえばユーラシア大陸内陸部の草原や北米プレーリーなどは、イネのなかまが広く分布する典型的なバイオームです。問題文の「ア」に当たる温帯のバイオームとしてステップを示唆している場合、主要構成種としてイネ科植物が代表的だと考えられます。

問17:正解2

<解説>
暖帯の硬葉樹林は、照葉樹林の一部としても扱われ、乾燥に強い常緑広葉樹が生育します。地中海性気候の硬葉樹林ではオリーブなどが有名ですが、暖かく比較的降雨の多い地域でも、革質の葉をもつ常緑樹が多数みられます。問題文では「イ」として暖帯の硬葉樹林の代表例を挙げているため、オリーブのような常緑広葉樹が最適と考えられます。

問18:正解6

<解説>
熱帯域の雨緑林は、雨季と乾季が明確に分かれる地域に広がる森林で、雨季になると葉を茂らせる落葉広葉樹が多く、チークはその代表例として知られています。ヒルギ類は沿岸のマングローブ林を形成する例が多いので、内陸の雨緑林を代表する樹種としてはチークがよく挙げられます。

問19:正解1

<解説>
図示されているのは、炭素(C)の移動を示す模式図と考えられます。大気中に二酸化炭素(CO₂)が存在し、それを生産者(光合成を行う植物など)が吸収して有機物を合成し、一次消費者や二次消費者がそれらを食物として取り込みます。その後、それぞれの生物が呼吸を行うことで再びCO₂を大気中に戻す流れが示されます。従って、二酸化炭素 → 生産者 → 二次消費者 → 呼吸の向きが正しい組み合わせになります。

問20:正解2

<解説>
生態系では物質は循環する一方、エネルギーは一方向に流れ、最終的には熱エネルギーになって生態系外に放散されます。光合成によって取り込まれた太陽の光エネルギーは、食物連鎖を通じて多様な生物へ分配されますが、各段階で熱として失われ、再利用されることはありません。このため、生態系のエネルギーの流れは循環ではなく、最終的に熱として放散し外へ出ていきます。

問21および22:正解6および7

<解説>
大気中の二酸化炭素(CO₂)は温室効果ガスの代表例ですが、ほかにもメタンやフロン類などが温室効果ガスとして挙げられます。メタンは牛などの家畜の腸内発酵や湿地の嫌気的分解などで放出され、フロン類は化学製品や冷媒などに利用されてきましたが、オゾン層破壊や地球温暖化との関連が指摘されています。したがって、「ケ」と「コ」の枠にはフロンとメタンが適切と考えられます。

問23:正解3

<解説>
大気中の二酸化炭素濃度は、長期的には増加傾向が続いていますが、地域によって季節変動の大きさが異なります。冷温帯地域(高緯度)ほど夏と冬の差が大きく、光合成が活発な季節とそうでない季節の差が顕著に出るため、二酸化炭素濃度の季節変動も大きくなります。一方、亜熱帯(低緯度)は季節差が小さくなり、全体の変動幅が小さめになります。また、高緯度では一年のうち植物が光合成を行う期間が相対的に短い点も、季節変動が大きくなる一因と考えられます。

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