2020年度 大学入試センター試験 本試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2020年度(令和2年度)大学入試センター試験 本試験「化学」の全問解説です。第1問〜第5問が必答、第6問と第7問はどちらか1問を選択して解答する形式で、100点満点。当サイトでは選択問題の第6問・第7問を両方とも解説しているため、このページに表示される配点の合計は104になります。各設問の見出しをタップすると、その問題の考え方と計算過程が開きます。まちがえた設問だけを選んで確認してください。
第1問 物質の構造と状態(ハロゲン・状態図・混合気体・蒸気圧・浸透圧・コロイド)
理論化学の小問集合で6問すべて4点。問2は状態図の「固体と液体の境界線がどちらに傾いているか」を見るだけ、問4は水銀柱の差を大気圧で比例配分するだけです。落とすと痛い大問なので、図の読み取りを一つずつ確かめていきます。
問1:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
F,Cl,Br,I に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
ハロゲンは「原子番号が大きいほど強くなる性質」と「小さいほど強くなる性質」が混在します。酸化力(電子を奪う力)は F が最強、という向きを間違えないことが要点です。
① 原子は7個の価電子をもつ → 正しい(17族) ② 陰イオンになると半径が大きくなる → 正しい(電子が増えて反発が大きくなる) ③ 単体の融点や沸点は原子番号が大きいほど高い → 正しい F₂ < Cl₂ < Br₂ < I₂ 分子量が大きいほどファンデルワールス力が強い ④ 単体の酸化作用は原子番号が大きいほど強い → 誤り 酸化力は F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂ で、 原子番号が「小さい」ほど強い ⑤ 水に対する単体の反応性は原子番号が 大きいほど低い → 正しい F₂ は水と激しく反応して O₂ を発生するが、 I₂ はほとんど反応しない
問2:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
図1の状態図(Aが三重点、Bが臨界点)に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
境界線の傾きがそのまま答えになります。三重点 A から上に伸びる固体と液体の境界線が、右上がりか左上がりかを図で確かめてください。
図1 の固液境界線を見る → A から上へ向かって「左に傾いて」いる → 傾きが負 → 水と同じタイプの状態図 ① 三重点Aでは固体・液体・気体が共存する → 正しい(三重点の定義) ② T_B より高温かつ P_B より高圧では 液体とも気体とも区別がつかない → 正しい(超臨界流体) ③ 液体の沸点は圧力が高くなると高くなる → 正しい(気液境界線 A→B は右上がり) ④ 固体が昇華する温度は圧力が高くなると高くなる → 正しい(固気境界線も右上がり) ⑤ 固体の融点は圧力が高くなると高くなる → 誤り 固液境界線が左に傾いているので、 圧力を上げると融点は「下がる」。 氷に圧力をかけると融けるのと同じ
問3:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
同じ物質量の H₂ と N₂ のみを密閉容器に入れ、温度 t〔℃〕で全圧が P〔Pa〕になりました。混合気体の密度 d〔g/L〕を表す式を選びます。
<考え方>
混合気体は「平均分子量をもつ1種類の気体」とみなせます。同じ物質量ずつなので平均分子量は単純平均です。
平均分子量
H₂ は 2.0、N₂ は 28
物質量が同じなので単純平均
M = (2.0 + 28)/2 = 15
気体の状態方程式
PV = (w/M)RT
密度 d = w/V なので
d = PM/(RT)
T = t + 273 を代入して
d = 15P/{R(t + 273)}
問4:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
一端を閉じたガラス管を水銀で満たして倒立させると水銀柱は 760 mm(実験Ⅰ)。上部に化合物 X の液体を注入して気液平衡に達すると 532 mm になりました(実験Ⅱ)。X の飽和蒸気圧を求めます。
<考え方>
水銀柱が押し下げられた分が、そのまま蒸気圧です。760 mm が大気圧 1.013×10⁵ Pa に対応するので、比例配分します。
水銀柱が下がった長さ
760 − 532 = 228 mm
この 228 mm 分の圧力が
化合物 X の飽和蒸気圧
760 mm ↔ 1.013×10⁵ Pa なので
蒸気圧 = 1.013×10⁵ × 228/760
= 1.013×10⁵ × 0.300
= 3.04×10⁴
≒ 3.0×10⁴ Pa
問5:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
U字管の半透膜で仕切り、左に純水、右に非電解質 Y を 0.020 g 溶かした水溶液 10 mL を入れました。ピストンで加圧して左右の液面を同じ高さにしたとき、右側の圧力は 1.0153×10⁵ Pa(大気圧は 1.0133×10⁵ Pa)。Y のモル質量を求めます。
<考え方>
「液面を同じ高さに戻すために必要な余分な圧力」が浸透圧です。二つの圧力の差をとるところが出発点になります。
浸透圧 Π Π = 1.0153×10⁵ − 1.0133×10⁵ = 0.0020×10⁵ = 2.0×10² Pa ファントホッフの法則 ΠV = (w/M)RT M = wRT/(ΠV) 代入する値 w = 0.020 g R = 8.3×10³ Pa·L/(K·mol) T = 27 + 273 = 300 K V = 10 mL = 0.010 L M = 0.020 × 8.3×10³ × 300 /(2.0×10² × 0.010) = 49.8 / 2.0 = 24.9 ≒ 2.5×10⁴ g/mol (分子の計算 0.020×8.3×10³×300 = 4.98×10⁴、 分母 2.0×10²×0.010 = 2.0)
問6:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
コロイドに関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
ゾルとゲルの向きを取り違えさせる問題です。ゾルは流動性のある状態、ゲルは固まった状態、と押さえます。
① ブラウン運動は熱運動する分散媒分子が コロイド粒子に不規則に衝突するため → 正しい ② チンダル現象はコロイド粒子による光の散乱 → 正しい ③ デンプンは分子量が大きく、1分子で コロイド粒子になる → 正しい(分子コロイド) ④ 寒天の粉末は温水に溶かすとゲルになり、 冷却するとゾルになる → 誤り 逆である。温水に溶かすと流動性のある 「ゾル」になり、冷却すると固まって 「ゲル」になる ⑤ 墨汁の膠は疎水コロイドを凝析しにくくする 保護コロイドである → 正しい
第2問 物質の変化と平衡(熱化学・反応速度・平衡移動・指示薬)
問1はグラフの頭打ちから反応式の係数比を読み取る問題で、そこから物質 A の化学式まで決まります。問5は「指示薬の変色域」を電離定数から自分で計算し、滴定曲線のジャンプがそれを含むかどうかで選ぶ、手応えのある設問です。
問1 a:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
スチールウール 1.68 g と酸素の物質量を変えて燃焼させたところ、酸素の物質量と水温上昇の関係が図1 になりました。生じた1種類の物質 A を選びます。
<考え方>
グラフが水平になったところが「鉄も酸素もちょうど使い切った点」です。そこでの物質量の比が、そのまま反応式の係数比になります。
鉄の物質量 1.68/56 = 0.030 mol 図1 より、酸素 0.020 mol で 温度上昇が頭打ちになる → ここで Fe と O₂ が過不足なく反応した 物質量の比 Fe : O₂ = 0.030 : 0.020 = 3 : 2 係数比が 3 : 2 になる反応式を探す 4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃ … 4 : 3 × 2Fe + O₂ → 2FeO … 2 : 1 × 3Fe + 2O₂ → Fe₃O₄ … 3 : 2 ○ よって A は Fe₃O₄
問1 b:正解 ⑦(配点3)
<問題要旨>
A の生成熱を求めます(水温を 1 K 上げるのに 4.48 kJ が必要、発生した熱はすべて水温上昇に使われたものとします)。
<考え方>
頭打ちになったときの温度上昇が、鉄をすべて反応させたときの発熱に対応します。生成した Fe₃O₄ の物質量で割れば 1 mol あたりの熱量になります。
頭打ちのときの温度上昇 図1 より 2.5 K 発生した熱量 2.5 × 4.48 = 11.2 kJ 生成した Fe₃O₄ の物質量 3Fe + 2O₂ → Fe₃O₄ より Fe 3 mol から Fe₃O₄ 1 mol 0.030/3 = 0.010 mol 生成熱 11.2/0.010 = 1120 kJ/mol
問2:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
3CuO(固) + 2Al(固) = 3Cu(固) + Al₂O₃(固) + Q〔kJ〕の Q を、CuO の生成熱 Q₁、Al₂O₃ の生成熱 Q₂ を用いて表します。
<考え方>
反応熱は「(生成物の生成熱の和)−(反応物の生成熱の和)」。単体の生成熱は 0 であることを使います。
反応熱の公式 Q =(生成物の生成熱の和) −(反応物の生成熱の和) 生成物側 3Cu(固) … 単体なので 0 Al₂O₃(固) … Q₂ 合計 Q₂ 反応物側 3CuO(固) … 3Q₁ 2Al(固) … 単体なので 0 合計 3Q₁ Q = Q₂ − 3Q₁ = −3Q₁ + Q₂
問3:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
v = k[A]ᵃ[B]ᵇ の反応で、図2([B] 一定で [A] を変える)と図3([A] 一定で [B] を変える)が与えられています。[A] と [B] をいずれも2倍にすると、C の生成速度は何倍になるかを求めます。
<考え方>
どちらも両対数グラフです。「横軸が10倍になったとき縦軸が何倍になるか」を読めば、指数 a と b がそのまま分かります。
〔a を読む(図2)〕 [A] = 0.1 → v = 1 [A] = 1 → v = 10 横軸10倍で縦軸10倍 → v ∝ [A]¹ よって a = 1 〔b を読む(図3)〕 [B] = 0.01 → v = 0.1 [B] = 0.1 → v = 10 横軸10倍で縦軸100倍 → v ∝ [B]² よって b = 2 〔両方2倍にする〕 v ∝ [A]¹[B]² 2¹ × 2² = 2 × 4 = 8 倍
問4 条件Ⅰ:正解 ①(配点3)
<問題要旨>
A(気) + B(気) = C(気) + Q〔kJ〕(Q > 0)の反応で、温度を下げたときの C の生成量の時間変化を表すグラフを選びます(破線がもとの条件)。
<考え方>
温度を変えると「平衡の位置」と「反応の速さ」の両方が動きます。二つを分けて考えるのがコツです。
〔最終的な生成量はどうなるか〕 Q > 0 なので正反応は発熱反応 → 温度を下げると平衡は発熱の向き (右、C が生成する向き)へ移動 → 最終的な C の生成量は「増える」 〔平衡に達するまでの時間はどうなるか〕 温度を下げると分子の運動が穏やかになり 反応速度は「遅くなる」 → 平衡に達するまで時間がかかる 実線は破線よりゆっくり立ち上がり、 最終的には破線より高い位置で一定になる → ①
問4 条件Ⅱ:正解 ④(配点3)
<問題要旨>
同じ反応で、触媒を加えたときの C の生成量の時間変化を表すグラフを選びます。
<考え方>
触媒は活性化エネルギーを下げて反応を速くしますが、平衡そのものは動かしません。「速さは変わる、到達点は変わらない」が答えの形になります。
〔最終的な生成量はどうなるか〕 触媒は正反応も逆反応も同じだけ速くする → 平衡定数は変わらない → 最終的な C の生成量は「変わらない」 〔平衡に達するまでの時間はどうなるか〕 活性化エネルギーが下がるので 反応速度は「速くなる」 → 早く平衡に達する 実線は破線より速く立ち上がり、 最終的には破線と同じ高さで一定になる → ④
問5:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
弱酸の色素分子 HA(K = 1.0×10⁻⁶ mol/L、HA は赤色・A⁻ は黄色)を指示薬に使います。[HA]/[A⁻] が10以上で赤色、0.1以下で黄色と見分けられるとき、この色素を指示薬として使える滴定曲線を図5のア〜エから選びます。
<考え方>
まず変色域を pH で計算してしまいます。そのうえで、滴定曲線の垂直に近い部分(pH ジャンプ)が変色域を「またいでいる」かどうかを見ます。またいでいないと、当量点の前後で色が変わりません。
〔変色域を求める〕 K = [H⁺][A⁻]/[HA] = 1.0×10⁻⁶ 変形すると [HA]/[A⁻] = [H⁺]/K 赤色と分かる条件 [HA]/[A⁻] ≧ 10 [H⁺] ≧ 10K = 1.0×10⁻⁵ pH ≦ 5 黄色と分かる条件 [HA]/[A⁻] ≦ 0.1 [H⁺] ≦ 0.1K = 1.0×10⁻⁷ pH ≧ 7 → 変色域は pH 5 〜 7 〔各曲線のジャンプの範囲を読む〕 ア pH 約9 → 3 … 5と7を両方またぐ ○ イ pH 約5.5 → 3 … 7 をまたがない × ウ pH 約6 → 10.5 … 5 をまたがない × エ pH 約3 → 8.5 … 5と7を両方またぐ ○ よって ア と エ
第3問 無機物質(無機材料・酸化物・金属イオンの分離・カルシウム・二次電池)
問3の金属イオンの系統分離は、試薬ごとに「何が沈み、何が溶けるか」を覚えていれば一本道です。問5は A·h(アンペア時)という見慣れない単位が出ますが、1 A·h = 3600 C と定義どおりに換算すれば普通の電気分解の計算になります。
問1:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
無機物質の性質とその利用に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
ニクロムがヘアドライヤーに使われる理由を考えます。電熱線は「電流を流すと発熱する」ことが役目なので、必要なのは電気抵抗が大きいことです。
① ニクロムは銅と比べて電気抵抗が小さく、 ヘアドライヤーなどに用いられる → 誤り ニクロムは電気抵抗が「大きい」。 だから電流を流すとよく発熱し、 電熱線(ドライヤー、トースター)に使われる。 電気抵抗が小さいのは導線に使う銅の方 ② アルミニウムは酸化被膜により内部が 保護されるので調理器具に用いられる → 正しい(緻密な酸化被膜。アルマイト) ③ 塩化コバルト(II)の無水物は吸湿により 色が変化するため水分の検出に用いられる → 正しい(青色 → 淡赤色) ④ ストロンチウムは炎色反応を示し、 その炭酸塩は花火に用いられる → 正しい(紅色)
問2:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
酸化物に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
酸化マンガン(IV)が過酸化水素水に加えられたとき、自分自身は変化しません。この立場を何と呼ぶかが問われています。
① Ag₂O は AgNO₃ 水溶液に NaOH 水溶液を 加えると得られる → 正しい AgOH ができてすぐ分解し、褐色の Ag₂O になる ② CuO は CuSO₄ 水溶液に NaOH 水溶液を加えて 加熱すると沈殿として得られる → 正しい Cu(OH)₂(青白色)→ 加熱 → CuO(黒色) ③ MnO₂ は過酸化水素水に加えると還元剤として はたらき、酸素が発生する → 誤り MnO₂ は「触媒」としてはたらく。 反応の前後で自身は変化しない。 2H₂O₂ → 2H₂O + O₂ ④ SiO₂ は塩酸には溶けないが、 フッ化水素酸には溶ける → 正しい
問3 a:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
Ag⁺,Al³⁺,Pb²⁺,Zn²⁺ を含む水溶液アに希塩酸を加えたところ、2種類の金属イオンを含む沈殿 A が得られました。沈殿 A に含まれる金属イオンの組合せを選びます。
<考え方>
塩化物イオンを加えて沈殿する陽イオンは限られています。Ag⁺、Pb²⁺、Hg₂²⁺ の三つが定番です。
希塩酸を加えると Cl⁻ が加わる 塩化物として沈殿するもの Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl↓(白色) Pb²⁺ + 2Cl⁻ → PbCl₂↓(白色) 沈殿しないもの Al³⁺,Zn²⁺ → 塩化物は水に溶けるのでろ液Bへ よって沈殿A に含まれるのは Ag⁺ と Pb²⁺
問3 b:正解 ①,②,④(配点3)
<問題要旨>
操作Ⅱとして最も適当なものを選び、さらに、ろ液Bから分離される沈殿E とろ液F の金属イオンをそれぞれ選びます。
<考え方>
ろ液Bには Al³⁺ と Zn²⁺ が入っています。どちらも両性金属なので NaOH では両方とも溶けてしまい分離できません。アンモニアなら錯イオンをつくるのは Zn²⁺ だけ、という差を使います。
〔操作Ⅱ〕 ろ液B には Al³⁺ と Zn²⁺ ② 過剰の NaOH 水溶液 Al(OH)₃ → [Al(OH)₄]⁻ 溶ける Zn(OH)₂ → [Zn(OH)₄]²⁻ 溶ける → 両方溶けて分離できない × ① 過剰のアンモニア水 Al³⁺ → Al(OH)₃↓ のまま(錯イオンをつくらない) Zn²⁺ → [Zn(NH₃)₄]²⁺ となって溶ける → 分離できる ○ (この操作は沈殿A の分離にも使える。 AgCl は [Ag(NH₃)₂]⁺ で溶け、 PbCl₂ は溶けずに残るため、 沈殿C=Pb,ろ液D=Ag に分かれる) 〔沈殿E〕Al³⁺(水酸化物として沈殿) 〔ろ液F〕Zn²⁺(錯イオンとして溶解)
問4:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
図2 は単体のカルシウムとカルシウム化合物 A〜D の相互関係です。化合物 A〜D に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
まず図の矢印をたどって A〜D を確定させます。Ca から水で始まる一本道なので、順に書き出せば決まります。
〔A〜D を決める〕 Ca + 2H₂O → Ca(OH)₂ → A = 水酸化カルシウム Ca(OH)₂ Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃ → B = 炭酸カルシウム CaCO₃ CaCO₃ + CO₂ + H₂O → Ca(HCO₃)₂ → C = 炭酸水素カルシウム Ca(HCO₃)₂ CaCO₃ →(加熱)→ CaO → D = 酸化カルシウム CaO (CaO + H₂O → Ca(OH)₂ で A に戻る。図と一致) ① 化合物A は水に少し溶けて、その水溶液は 弱い塩基性を示す → 誤り Ca(OH)₂ は溶解度こそ小さいが、 溶けた分は完全に電離する「強塩基」。 石灰水は強い塩基性を示す ② 化合物B は石灰石や大理石の主成分 → 正しい ③ 鍾乳洞では化合物C の水溶液から 化合物B が析出して鍾乳石が成長する → 正しい Ca(HCO₃)₂ → CaCO₃ + CO₂ + H₂O ④ 化合物D は生石灰と呼ばれ、水と反応して 発熱するため発熱剤に使われる → 正しい
問5:正解 ④(配点5)
<問題要旨>
ニッケル水素電池(放電時に Ni の酸化数が +3 → +2 に変化)で、完全に放電した状態で 6.7 kg の Ni(OH)₂ を用いたとき、1回の充電で蓄えられる最大の電気量〔A·h〕を求めます(Ni(OH)₂ の式量93、ファラデー定数 9.65×10⁴ C/mol)。
<考え方>
「Ni(OH)₂ の物質量 → 電子の物質量 → 電気量〔C〕→ A·h」と順に換算します。酸化数が1だけ変わるので、電子は Ni と 1:1 です。最後の 1 A·h = 3600 C を忘れないこと。
Ni(OH)₂ の物質量 6.7 kg = 6700 g 6700/93 = 72.0 mol 電子の物質量 充電時に Ni は +2 → +3 → Ni 1 個あたり電子 1 個 → 72.0 mol 電気量〔C〕 72.0 × 9.65×10⁴ = 6.95×10⁶ C A·h に換算する 1 A·h = 1 A × 3600 s = 3600 C 6.95×10⁶ / 3600 = 1.93×10³ ≒ 1.9×10³ A·h
第4問 有機化合物(炭化水素・元素分析・酸の強さ・鏡像異性体・エステル化)
問5 b は ¹⁸O を使った同位体トレーサー実験で、「エステル化でどちらの結合が新しくできるのか」を実験事実から決めます。教科書で結論だけ覚えている内容を、根拠から確かめさせる良問です。
問1:正解 ④(配点3)
<問題要旨>
炭化水素に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
一般式はアルカン CₙH₂ₙ₊₂、アルケンとシクロアルカン CₙH₂ₙ、アルキン CₙH₂ₙ₋₂。環を1つ作ると水素が2個減る、と覚えます。
① メタンの四つの共有結合の長さはすべて等しい → 正しい(正四面体形) ② 炭素原子間の結合距離はエタンの方が エテンより長い → 正しい 単結合 C−C の方が二重結合 C=C より長い ③ プロパンの三つの炭素原子は折れ線状に 結合している → 正しい(結合角は約109.5°) ④ 炭素数が n のシクロアルカンの一般式は CₙH₂ₙ₊₂ である → 誤り シクロアルカンは CₙH₂ₙ。 CₙH₂ₙ₊₂ は鎖状のアルカン
問2:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
分子式 C₉HₙO₂ の化合物 30 mg を完全燃焼させたところ、水 18 mg が生成しました。n の値を求めます。
<考え方>
生成した水の物質量から水素原子の物質量が分かります。化合物の分子量を n で表して、水素の物質量についての方程式を立てます。
生成した水 18 mg / 18 = 1.0 mmol → 水素原子は 2.0 mmol (H₂O 1 個に H が 2 個) 化合物の分子量を n で表す C₉HₙO₂ = 12×9 + 1.0×n + 16×2 = 108 + n + 32 = 140 + n 化合物の物質量 30/(140 + n) mmol 水素原子の物質量について式を立てる n × 30/(140 + n) = 2.0 30n = 2.0(140 + n) 30n = 280 + 2n 28n = 280 n = 10
問3:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
フェノール(ア)、ベンジルアルコール(イ)、安息香酸(ウ)を同じモル濃度の水溶液にしたとき、酸性の強い順に並べます。
<考え方>
官能基だけを見ます。カルボキシ基 > フェノール性ヒドロキシ基 > アルコール性ヒドロキシ基、という強さの序列がそのまま答えです。
官能基で比べる ウ 安息香酸 −COOH → カルボン酸。弱酸だが三者では最も強い ア フェノール −OH(ベンゼン環に直結) → フェノール性ヒドロキシ基。 炭酸より弱いが、弱い酸性を示す イ ベンジルアルコール −CH₂OH → アルコール性ヒドロキシ基。 中性で、酸としてはたらかない 酸性の強い順 ウ > ア > イ (この序列は「炭酸水素ナトリウム水溶液に 溶けるのはカルボン酸だけ」という 分離操作の根拠にもなる)
問4:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
鏡像異性体(光学異性体)が存在する化合物の分子式を選びます。
<考え方>
鏡像異性体があるのは不斉炭素原子をもつとき。「1個の炭素に4つの異なる原子・原子団が結合している」構造が書けるかどうかを、分子式ごとに試します。
① C₂HCl₃ CHCl=CCl₂ など。二重結合があり 不斉炭素はつくれない × ② C₂H₄Cl₂ CH₃−CHCl₂ … C に H,Cl,Cl,CH₃(Cl が重複) CH₂Cl−CH₂Cl … 左右対称 → 不斉炭素なし × ③ C₂H₄BrCl CH₃−CHBrCl と書ける 中央の炭素に結合しているのは CH₃,H,Br,Cl の4つ → すべて異なる=不斉炭素原子 ○ ④ C₃H₈O 1−プロパノール,2−プロパノール, エチルメチルエーテル 2−プロパノール CH₃−CH(OH)−CH₃ は 両側が同じ CH₃ なので不斉炭素ではない ×
問5 a:正解 ③(配点2)
<問題要旨>
酢酸エチルの合成(実験Ⅰ)に関する記述のうち、適当でないものを選びます。
<考え方>
分液ろうとで上下どちらの層になるかは密度で決まります。酢酸エチルは水より軽い液体です。
① 濃硫酸はエステル化の触媒としてはたらいた → 正しい(脱水剤も兼ねる) ② 炭酸水素ナトリウム水溶液を加えたとき 二酸化炭素が発生した → 正しい 未反応の酢酸や濃硫酸が中和され CO₂ が発生する ③ 酢酸エチルは図2 の下層として得られた → 適当でない 酢酸エチルの密度は約0.90 g/cm³ で 水(1.00)より小さい。 したがって「上層」になる ④ 得られた酢酸エチルは果実のような芳香の ある液体だった → 正しい(エステルに共通の性質)
問5 b:正解 ①(配点2)
<問題要旨>
実験Ⅱでエタノールの酸素を ¹⁸O に置き換えると、生成した酢酸エチルの分子量が実験Ⅰより2大きくなりました。新たに形成される結合(ア)と、生成した水の分子量(イ)を答えます。
<考え方>
分子量が2大きい=重い ¹⁸O が酢酸エチルの側に入った、ということです。ここからエステルの酸素がどちらの分子由来かが決まり、切れた結合と新しくできた結合が芋づる式に分かります。
〔実験結果の意味〕 酢酸エチルの分子量が2大きい → ¹⁸O(¹⁶O より2大きい)が 酢酸エチルに取り込まれた → エステルの酸素はエタノール由来 〔どの結合が切れ、どの結合ができたか〕 エタノール C₂H₅−¹⁸O−H → C₂H₅ と ¹⁸O の結合は切れていない → 結合Y(O−CH₂CH₃)はそのまま 酢酸 CH₃CO−OH の C−OH が切れ、 そこにエタノールの ¹⁸O がつながる → 新たにできるのは 結合X 〔生成した水〕 酢酸から外れた −OH(¹⁶O)と エタノールの H が結びつく → H₂¹⁶O → 分子量 18 よって(結合X,18)
第5問 高分子化合物(必答)
問1は単量体の構造式から高分子を特定する問題。官能基の数と位置を見れば、縮合重合か付加重合かがすぐ決まります。問2は等電点と pH の大小だけで電気泳動の向きが決まります。
問1 a:正解 ①(配点2)
<問題要旨>
ナイロン66 の合成に用いられる原料(単量体)2つの組合せを、ア〜カから選びます。
<考え方>
ナイロン66 は「炭素数6のジカルボン酸」と「炭素数6のジアミン」の縮合重合。名前の 66 が両方の炭素数を表しています。
ナイロン66 の原料 アジピン酸 HOOC−(CH₂)₄−COOH → 両端の COOH を含めて炭素数6 → ア ヘキサメチレンジアミン H₂N−(CH₂)₆−NH₂ → 炭素数6 → ウ 縮合重合してアミド結合 −CONH− をつくる よって ア と ウ (カ の p−フェニレンジアミンは芳香族なので アラミド繊維の原料。ナイロンではない)
問1 b:正解 ⑤(配点2)
<問題要旨>
合成ゴム(SBR)の合成に用いられる原料(単量体)2つの組合せを選びます。
<考え方>
SBR の名前がそのままヒントです。S はスチレン(Styrene)、B はブタジエン(Butadiene)、R はゴム(Rubber)。
SBR = スチレン・ブタジエンゴム スチレン C₆H₅−CH=CH₂ → オ 1,3−ブタジエン CH₂=CH−CH=CH₂ → イ この2つを共重合させてつくる (付加重合。二重結合が開いてつながる) よって イ と オ
問2:正解 ⑥(配点2)
<問題要旨>
アミノ酸A(グリシン、等電点6.0)とアミノ酸B(リシン、等電点9.7)について、A は pH 6.0 で主にどのイオンとして存在するか(ア)、B を pH 7.0 で電気泳動するとどうなるか(イ)を答えます。
<考え方>
等電点とは「正味の電荷が0になる pH」。溶液の pH が等電点より低ければ正に、高ければ負に帯電します。この大小関係だけで決まります。
〔ア〕 アミノ酸A の等電点は 6.0 溶液の pH も 6.0 で、等電点と一致 → 正味の電荷が 0 → 主に双性(両性)イオンとして存在する 〔イ〕 アミノ酸B の等電点は 9.7 溶液の pH は 7.0 pH 7.0 < 等電点 9.7 → 等電点より酸性側にある → B は正味「正」に帯電する(陽イオン) 陽イオンは陰極(マイナス側)に引かれる → 陰極側に移動する よって(双性(両性),陰極側に移動する)
第6問 高分子化合物〔選択問題〕(合成高分子)
第6問と第7問はどちらか1問を選んで解答します(各4点)。当サイトでは両方を解説しているため、このページの配点の合計は104になりますが、実際の満点は100点です。
問1:正解 ④(配点2)
<問題要旨>
高分子化合物に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
天然ゴムがよく伸びるのはシス形だから、というのが基本。トランス形のグタペルカは硬くて弾性に乏しい、という対比で覚えます。
① 高密度ポリエチレンは低密度のものに比べて 枝分かれが少なく、透明度が低い → 正しい 枝分かれが少ない → 結晶性が高い → 光が散乱して不透明になる ② フェノール樹脂はベンゼン環の間を メチレン基 −CH₂− で架橋した構造をもつ → 正しい ③ イオン交換樹脂がイオンを交換する反応は 可逆反応である → 正しい だから酸や塩基を流して再生できる ④ シス形のポリイソプレンは、トランス形の ものに比べて室温で硬く弾性に乏しい → 誤り 逆である。シス形(天然ゴム)は分子鎖が 丸まっていてよく伸び縮みする。 トランス形(グタペルカ)の方が 硬くて弾性に乏しい ⑤ ポリ乳酸は微生物によって分解される → 正しい(生分解性高分子)
問2:正解 ②(配点2)
<問題要旨>
アクリロニトリル単位(式量53.0)と塩化ビニル単位(式量62.5)からなる平均分子量 1.78×10⁴ の共重合体で、炭素原子と塩素原子の物質量の比が 3.5:1 でした。m の値を求めます。
<考え方>
炭素と塩素の個数を m, n で書き出して比の式を立て、n を m で表します。それを平均分子量の式に入れれば m が出ます。
〔原子の個数を数える〕 アクリロニトリル単位 −CH₂−CH(CN)− 炭素3個、塩素0個 塩化ビニル単位 −CH₂−CH(Cl)− 炭素2個、塩素1個 〔比の式を立てる〕 C : Cl = (3m + 2n) : n = 3.5 : 1 3m + 2n = 3.5n 3m = 1.5n n = 2m 〔平均分子量の式に入れる〕 53.0m + 62.5n = 1.78×10⁴ 53.0m + 62.5×2m = 1.78×10⁴ 53.0m + 125m = 1.78×10⁴ 178m = 1.78×10⁴ m = 100
第7問 天然高分子化合物〔選択問題〕(タンパク質・核酸・多糖)
第6問との選択問題です。問2はデキストリンの重合度から出発して、マルトースの物質量、そして Cu₂O の質量まで一直線にたどります。「マルトース1分子はグルコース2単位ぶん」でつまずかないことが大切です。
問1:正解 ②(配点2)
<問題要旨>
天然高分子化合物の構造に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
タンパク質の二次構造には、らせん状の α−ヘリックスと、ジグザグの鎖が並んだ β−シートの2種類があります。名前と形の対応を取り違えさせる問題です。
① 三次構造の形成にはジスルフィド結合 −S−S− が関与している → 正しい(システイン残基どうしが結合) ② ポリペプチド鎖は右巻きのらせん構造をとる ことがあり、この構造を β−シートという → 誤り らせん構造は α−ヘリックス。 β−シートは、鎖が並んで水素結合した ひだ状(ジグザグ)の構造 ③ 核酸は、糖部分の −OH とリン酸部分の −OH の 間で脱水縮合した直鎖状の高分子である → 正しい(ホスホジエステル結合) ④ RNA の糖部分はリボースであり、DNA の 糖部分とは構造が異なる → 正しい DNA はデオキシリボース。 リボースより酸素原子が1個少ない
問2:正解 ③(配点2)
<問題要旨>
平均分子量 8.1×10³ のデキストリン(C₆H₁₀O₅)ₙ(繰り返し単位の式量162)1.0×10⁻³ mol を β−アミラーゼで完全に加水分解するとマルトースのみが得られました。十分な量のフェーリング液に加えて加熱したとき生じる Cu₂O の質量を求めます。
<考え方>
「重合度 n を出す → グルコース単位の総量 → マルトースの物質量 → Cu₂O の物質量 → 質量」と順にたどります。マルトースはグルコース2個ぶんなので、ここで2で割るのを忘れないこと。
〔重合度 n を求める〕 n = 8.1×10³ / 162 = 50 〔グルコース単位の物質量〕 デキストリン 1 分子にグルコース単位が50個 1.0×10⁻³ × 50 = 0.050 mol 〔マルトースの物質量〕 マルトース 1 分子 = グルコース単位 2 個 0.050 / 2 = 0.025 mol 〔Cu₂O の物質量〕 マルトースは還元性を示す 還元性のある糖 1 mol あたり Cu₂O 1 mol → 0.025 mol 〔Cu₂O の質量〕 式量 = 64×2 + 16 = 144 0.025 × 144 = 3.6 g
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

