2019年度 大学入試センター試験 本試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2019年度(平成31年度)大学入試センター試験 本試験「化学」の全問解説です。第1問〜第5問が必答、第6問と第7問はどちらか1問を選択して解答する形式で、100点満点。当サイトでは選択問題の第6問・第7問を両方とも解説しているため、このページに表示される配点の合計は105になります。各設問の見出しをタップすると、その問題の考え方と計算過程が開きます。まちがえた設問だけを選んで確認してください。
第1問 物質の構造と状態(結合・結晶格子・分子間力・分子量測定・溶解)
理論化学の小問集合です。問2のダイヤモンドの単位格子は「頂点・面心・内部」を分けて数えるだけ、問4は状態方程式に代入するだけ、問6はヘンリーの法則の二段掛け算。落とせない問題が並びます。
問1:正解 ①,②(配点2,2)
<問題要旨>
塩化カリウム・黒鉛・硝酸カリウム・ポリエチレン・ヨウ素のうち、a「共有結合をもたない物質」と b「固体状態で電気をよく通す物質」に当てはまるものをそれぞれ選びます。
<考え方>
a は「分子内にも多原子イオン内にも共有結合がないもの」を探します。b は固体で自由に動ける電子をもつものです。
〔a〕共有結合をもたない物質 ① 塩化カリウム KCl K⁺ と Cl⁻ のイオン結合だけ → 共有結合をもたない ○ ② 黒鉛 … C−C の共有結合をもつ ③ 硝酸カリウム KNO₃ … NO₃⁻ の内部が共有結合 ④ ポリエチレン … C−C,C−H の共有結合 ⑤ ヨウ素 I₂ … I−I の共有結合 〔b〕固体状態で電気をよく通す物質 ② 黒鉛 各炭素が3個の炭素と結合し、 余った電子が平面内を動ける → 固体のまま電気を通す ○ (KCl や KNO₃ は固体ではイオンが動けず、 水に溶かすか融解させないと通さない)
問2:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
ダイヤモンドの単位格子(頂点8か所、面心6か所、内部4か所に炭素原子)について、1辺 a〔cm〕、モル質量 M〔g/mol〕、アボガドロ定数 N_A〔/mol〕を用いて密度 d〔g/cm³〕を表します。
<考え方>
密度は「単位格子の質量 ÷ 単位格子の体積」。まず単位格子に含まれる原子の数を、頂点は1/8、面心は1/2、内部は1として数えます。
単位格子に含まれる炭素原子の数 頂点 8 × 1/8 = 1 面心 6 × 1/2 = 3 内部 4 × 1 = 4 合計 8 個 単位格子の質量 原子 1 個の質量 = M/N_A〔g〕 8 個で 8M/N_A〔g〕 単位格子の体積 a³〔cm³〕 密度 d = (8M/N_A)/a³ = 8M/(a³N_A)
問3:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
分子間にはたらく力に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
沸点が低い=分子どうしを引き止める力が弱い、という対応で読みます。①は結論と理由が逆になっています。
① Ne の沸点は Ar よりも低い。これは Ne−Ne 間のファンデルワールス力が Ar−Ar 間より「強い」ため → 誤り 沸点が低いのは力が「弱い」から。 分子量(原子量)が小さいほど ファンデルワールス力は弱くなる ② H₂S の沸点が F₂ より高いのは、H₂S が 極性分子で静電気的な引力がはたらくため → 正しい(F₂ は無極性分子) ③ 氷の密度が水より小さいのは、水素結合で すき間の多い構造になるため → 正しい ④ HF の沸点が HBr より高いのは水素結合 → 正しい
問4:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
内容積 500 mL の容器に揮発性の純物質 A の液体を入れ、87℃ で完全に蒸発させて容器内を A の蒸気で満たしました。冷却して得られた液体の質量が 1.4 g のとき、A の分子量を求めます。
<考え方>
冷却後の液体の質量が、そのまま「容器を満たしていた蒸気の質量」です。気体の状態方程式を分子量について解いた形に代入します。
気体の状態方程式 PV = nRT = (w/M)RT M = wRT/(PV) 代入する値 w = 1.4 g R = 8.3×10³ Pa·L/(K·mol) T = 87 + 273 = 360 K P = 1.0×10⁵ Pa V = 500 mL = 0.500 L M = 1.4 × 8.3×10³ × 360 /(1.0×10⁵ × 0.500) = 4.18×10⁶ / 5.0×10⁴ = 83.7 ≒ 84
問5:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
溶解に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
「似たものどうしがよく溶ける」が基本原則。極性分子は極性溶媒に、無極性分子は無極性溶媒に溶けます。
① 臭化ナトリウムは水和イオンとなって溶解 → 正しい ② 多くの水溶性の固体の溶解度は 水温が高いほど大きい → 正しい ③ 塩化水素を水に溶かすと H−Cl 結合が 切れて電離する → 正しい(HCl → H⁺ + Cl⁻) ④ エタノールは極性溶媒である水に溶ける → 正しい(−OH をもつ) ⑤ 四塩化炭素は無極性溶媒であるヘキサンに 溶けない → 誤り CCl₄ は正四面体形で無極性分子。 無極性のヘキサンにはよく溶ける
問6:正解 ⑥(配点4)
<問題要旨>
酸素は 1.0×10⁵ Pa のもとで 40℃の水 1.0 L に 1.0×10⁻³ mol 溶けます。2.0×10⁵ Pa の酸素が 40℃の水 10 L に接して溶解平衡にあるとき、溶けている酸素の質量を求めます。
<考え方>
ヘンリーの法則。溶ける気体の物質量は「圧力に比例」し、当然「水の量にも比例」します。二つの倍率をかけ算するだけです。
ヘンリーの法則より 溶ける物質量 ∝ 圧力 × 水の量 圧力が 2 倍 1.0×10⁵ → 2.0×10⁵ Pa 水の量が 10 倍 1.0 L → 10 L 溶けている酸素の物質量 = 1.0×10⁻³ × 2 × 10 = 2.0×10⁻² mol 質量(O₂ の分子量 32) = 2.0×10⁻² × 32 = 0.64 g
第2問 物質の変化と平衡(結合エネルギー・反応速度と平衡・溶解度積・電気分解・溶解熱)
問3の溶解度積は、グラフから K_sp の値を読み取ってしまえば、あとは5通りの掛け算で決着します。「同体積ずつ混合すると濃度が半分になる」を忘れないのが最大の注意点です。
問1:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
H₂O₂(構造式 H−O−O−H)1 mol が H₂ と O₂ から生成する反応のエネルギー図について、ア・イに当てはまる物質と、H₂O₂(気)中の O−H 結合1 mol あたりの結合エネルギーを求めます。
<考え方>
まず生成熱が正(発熱)なので、生成物 H₂O₂ の方がエネルギーが低い、と決まります。あとは図の最上段「2H+2O」を基準にして、両側に下りる高さを結合エネルギーで表します。
〔ア・イ〕 H₂ + O₂ = H₂O₂ + 136 kJ(発熱) → H₂O₂ の方がエネルギーが低い → ア=H₂(気)+O₂(気),イ=H₂O₂(気) → ④⑤⑥ に絞られる 〔O−H の結合エネルギー x〕 最上段 2H(気)+2O(気) からの下がり幅 H₂ + O₂ まで下りる = H₂ の結合 436 + O₂ の結合 498 = 934 kJ H₂O₂ まで下りる = O−H 2 本 + O−O 1 本 = 2x + 144 kJ この二つの差が生成熱 136 kJ 2x + 144 = 934 + 136 2x + 144 = 1070 2x = 926 x = 463 kJ/mol
問2:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
可逆反応 A ⇄ B で、正反応 v₁=k₁[A]、逆反応 v₂=k₂[B]。1.2 mol の A を水に溶かして 1.0 L としたとき、平衡状態での A のモル濃度を求めます(k₁=5.0 /s、k₂=1.0 /s)。
<考え方>
平衡状態とは「正反応と逆反応の速さが等しい」状態です。v₁=v₂ と物質量の保存の2式を連立します。
平衡の条件 v₁ = v₂ k₁[A] = k₂[B] 5.0[A] = 1.0[B] [B] = 5[A] 物質量の保存 はじめ A が 1.2 mol、体積 1.0 L なので [A] + [B] = 1.2 mol/L 代入する [A] + 5[A] = 1.2 6[A] = 1.2 [A] = 0.20 mol/L (このとき [B] = 1.0 mol/L、 平衡定数 K = [B]/[A] = k₁/k₂ = 5.0)
問3:正解 ②(配点5)
<問題要旨>
塩化銀の溶解度積を K_sp とし、[Ag⁺] と K_sp/[Ag⁺] の関係が図2 です。硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液を表2 のア〜オの濃度で同体積ずつ混合したとき、塩化銀の沈殿が生成するものをすべて選びます。
<考え方>
まず図2 から K_sp の値を読みます。曲線上の1点で(横軸)×(縦軸)を計算すればそれが K_sp です。あとは各混合液で [Ag⁺][Cl⁻] を計算し、K_sp を超えるかどうかを見るだけです。
〔K_sp を読む〕 曲線上の点、たとえば [Ag⁺] = 0.5×10⁻⁵ のとき K_sp/[Ag⁺] ≒ 3.6×10⁻⁵ K_sp = 0.5×10⁻⁵ × 3.6×10⁻⁵ = 1.8×10⁻¹⁰ ([Ag⁺]=0.8×10⁻⁵ で縦軸 2.26×10⁻⁵ → 積 1.8×10⁻¹⁰ となり一致する) 〔同体積ずつ混合 → 濃度は半分〕 単位はすべて ×10⁻⁵ mol/L 混合前 混合後 積(×10⁻¹⁰) ア 1.0, 1.0 → 0.5, 0.5 → 0.25 イ 2.0, 2.0 → 1.0, 1.0 → 1.00 ウ 3.0, 3.0 → 1.5, 1.5 → 2.25 エ 4.0, 2.0 → 2.0, 1.0 → 2.00 オ 5.0, 1.0 → 2.5, 0.5 → 1.25 K_sp = 1.8×10⁻¹⁰ を超えるのは ウ(2.25)と エ(2.00) よって ウ,エ
問4 a:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
粗銅板を陽極、純銅板を陰極として硫酸酸性の CuSO₄ 水溶液で電気分解しました。粗銅中の不純物 Zn,Au,Ag,Fe,Ni のうち、電気分解後にイオンとして水溶液中に存在するものをすべて選びます。
<考え方>
銅の電解精錬です。イオン化傾向が銅より大きい金属は陽極で溶けて水溶液中に残り、銅より小さい金属は溶けずに陽極泥として沈みます。
イオン化傾向 Zn > Fe > Ni > (Cu) > Ag > Au 銅よりイオン化傾向が大きい Zn,Fe,Ni → 陽極で酸化されてイオンになる → 陰極では銅より析出しにくいので そのまま水溶液中に残る ○ 銅よりイオン化傾向が小さい Ag,Au → 陽極で酸化されず、そのまま はがれ落ちて陽極泥になる × よって Zn,Fe,Ni
問4 b:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
この電気分解で陰極に 0.384 g の銅を析出させるには、0.965 A の電流を何秒間流せばよいかを求めます(ファラデー定数 9.65×10⁴ C/mol)。
<考え方>
「銅の質量 → 銅の物質量 → 電子の物質量 → 電気量 → 時間」と順にたどります。Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu なので電子は銅の2倍です。
銅の物質量 0.384/64 = 0.00600 mol 電子の物質量 Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu より 2 倍 0.00600 × 2 = 0.0120 mol 必要な電気量 0.0120 × 9.65×10⁴ = 1158 C 時間 Q = It より t = Q/I t = 1158/0.965 = 1200 s = 1.2×10³ 秒
問5:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
断熱容器に 25℃ の水 V〔mL〕を入れ、同温の NH₄NO₃ を m〔g〕溶解したときの水溶液の温度を表す式を選びます(水の密度 d、水溶液の比熱 c、NH₄NO₃ のモル質量 M)。
<考え方>
熱化学方程式の「− 26 kJ」が吸熱を意味するので、温度は下がります。まず符号で選択肢を半分に絞り、次に熱量と質量を式にします。
〔符号〕
NH₄NO₃(固) + aq = NH₄NO₃ aq − 26 kJ
→ 溶けるときに 26 kJ/mol の吸熱
→ 温度は下がる(25 − …の形)
→ ②④⑥ に絞られる
〔奪われる熱量 Q〕
NH₄NO₃ の物質量 = m/M〔mol〕
Q = 26 kJ/mol × (m/M)
= 26000 × m/M
= 2.6×10⁴ m/M〔J〕
〔温度が下がる分 ΔT〕
熱を奪われるのは「水溶液全体」
水の質量 = V × d = Vd〔g〕
水溶液の質量 = Vd + m〔g〕
Q = c × (Vd + m) × ΔT
ΔT = Q/{c(Vd + m)}
= 2.6×10⁴ m/{c(Vd + m)M}
〔答え〕
温度 = 25 − 2.6×10⁴ m/{c(Vd + m)M}
(分母を cVdM とする ④ は、溶かした
NH₄NO₃ の分の質量を忘れている)
第3問 無機物質(身のまわりの無機物質・典型金属・錯イオン・オストワルト法・沈殿反応)
問5は 11 本の試験管の沈殿量をグラフから選ぶ問題。「どちらが先になくなるか」が試験管4を境に入れかわるので、そこを頂点とする山型になります。実際に沈殿の質量まで計算すると、選択肢は一つに決まります。
問1:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
身のまわりの無機物質に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
銑鉄と鋼の違いは炭素の含有量です。溶鉱炉から出たばかりの銑鉄は炭素が多く、もろい。転炉で炭素を減らしたものが鋼です。
① アルゴンは反応性に乏しく、電球や放電管に 封入されている → 正しい(18族の貴ガス) ② 斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄は同素体 → 正しい ③ リンを乾燥空気中で燃やすと十酸化四リン → 正しい(4P + 5O₂ → P₄O₁₀) ④ ケイ砂や粘土を高温で焼き固めた固体材料は セラミックス(窯業製品) → 正しい ⑤ 銑鉄は鋼に比べて含まれる炭素の割合が低い → 誤り 銑鉄は炭素を約4%含み、かたくてもろい。 転炉で炭素を 0.02〜2% まで減らしたものが鋼。 銑鉄の方が炭素の割合は「高い」
問2:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
アルカリ金属 Li,Na とアルカリ土類金属 Ca,Ba の四つの元素に共通する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
「四つすべてに当てはまるか」を一つずつ確かめます。炭酸塩の溶解性は、アルカリ金属とアルカリ土類金属で大きく違うところです。
① 陽イオンになりやすい元素である → 正しい(1族・2族はいずれも陽性が強い) ② 単体は常温の水と反応する → 正しい Li,Na はもちろん、Ca,Ba も 常温の水と反応して水素を発生する ③ 炎色反応を示す → 正しい Li 赤、Na 黄、Ca 橙赤、Ba 黄緑 ④ 炭酸塩は水によく溶ける → 誤り Na₂CO₃ は溶けるが、 Li₂CO₃,CaCO₃,BaCO₃ は水に溶けにくい。 「四つに共通」とは言えない
問3:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
錯イオンに関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
配位数と立体構造の対応を覚えておきます。配位数2は直線形、配位数4は正四面体形(Cu²⁺ だけ正方形)、配位数6は正八面体形です。
① Cu(OH)₂ + 過剰のアンモニア水 → [Cu(NH₃)₄]²⁺ の深青色水溶液 → 正しい ② Ag₂O + 過剰のアンモニア水 → [Ag(NH₃)₂]⁺ の無色水溶液 → 正しい ③ [Fe(CN)₆]⁴⁻ に Fe³⁺ を加えると濃青色沈殿 → 正しい(ベルリン青) ④ [Zn(NH₃)₄]²⁺ の四つの配位子は正方形の配置 → 誤り Zn²⁺ の配位数4 は正四面体形。 正方形になるのは [Cu(NH₃)₄]²⁺ ⑤ [Fe(CN)₆]³⁻ の六つの配位子は正八面体形 → 正しい
問4 a:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
アンモニアから硝酸を製造するオストワルト法(図1)について、反応と物質に関する記述のうち正しいものを選びます。
<考え方>
反応IIIの 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO を書き出すと、同じ NO₂ の窒素が +5 と +2 に分かれることが見えます。これが自己酸化還元です。
各反応式 I 4NH₃ + 5O₂ → 4NO + 6H₂O(白金触媒) II 2NO + O₂ → 2NO₂ III 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO ① 触媒を利用するのは反応IIのみ → 誤り。触媒(白金)を使うのは反応I ② 反応IIIでは二酸化窒素の酸化と還元が起こる → 正しい NO₂ の N は +4。 一部は HNO₃ の +5 になり(酸化)、 一部は NO の +2 になる(還元)。 同じ物質が酸化も還元もされる自己酸化還元 ③ 一酸化窒素は水に溶けやすい → 誤り。水に溶けにくく、水上置換で捕集する ④ 二酸化窒素は無色の気体 → 誤り。赤褐色 ⑤ 硝酸は光や熱による分解が起こりにくい → 誤り。分解しやすいので褐色びんに保存する
問4 b:正解 ④(配点3)
<問題要旨>
オストワルト法の全反応と一酸化窒素の再利用が完全に進むとき、6 mol のアンモニアから生成する硝酸の物質量を求めます。
<考え方>
三つの反応式をつないで NO と NO₂ を消去すると、全体では NH₃ と HNO₃ が 1:1 になります。これを覚えておくと一瞬です。
三つの反応式を組み合わせる I 4NH₃ + 5O₂ → 4NO + 6H₂O II 2NO + O₂ → 2NO₂ III 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO NO を再利用して完全に進めると、 中間生成物の NO と NO₂ はすべて消える 全反応 NH₃ + 2O₂ → HNO₃ + H₂O → NH₃ と HNO₃ は 1:1 アンモニア 6 mol から 硝酸 6 mol
問5:正解 ①(配点5)
<問題要旨>
0.10 mol/L のクロム酸カリウム水溶液と 0.10 mol/L の硝酸銀水溶液を、表1 のように合計 12.0 mL になるよう混ぜた 11 本の試験管について、生じた沈殿の質量を表すグラフを選びます。
<考え方>
まず反応式から Ag⁺ と CrO₄²⁻ が 2:1 で反応することを押さえます。どちらが先になくなるかが途中で入れかわるので、その境目が山の頂点になります。実際に質量まで計算すると1つに決まります。
反応式 K₂CrO₄ + 2AgNO₃ → Ag₂CrO₄↓ + 2KNO₃ → CrO₄²⁻ : Ag⁺ = 1 : 2 試験管 n(K₂CrO₄ が n mL、AgNO₃ が (12−n) mL) CrO₄²⁻ = 1.0×10⁻⁴ × n〔mol〕 Ag⁺ = 1.0×10⁻⁴ × (12−n)〔mol〕 生じる Ag₂CrO₄ は少ない方で決まる CrO₄²⁻ 基準 … n ×10⁻⁴ Ag⁺ 基準 … (12−n)/2 ×10⁻⁴ 入れかわるのは n = (12−n)/2 → 2n = 12 − n → n = 4 Ag₂CrO₄ の式量 108×2 + 52 + 16×4 = 332 沈殿の質量〔g〕 n=1 → 1.0×10⁻⁴×332 = 0.033 n=2 → 0.066 n=3 → 0.100 n=4 → 0.133 ← 最大 n=5 → 3.5×10⁻⁴×332 = 0.116 n=6 → 0.100 n=7 → 0.083 n=8 → 0.066 n=9 → 0.050 n=10 → 0.033 n=11 → 0.017 試験管4 が頂点(0.133 g)で、 左は急に上がり右はゆるやかに下がる → ①
第4問 有機化合物(ベンゼン・アルコールとエーテル・還元反応・異性体・気体の捕集)
問2は「エーテルはナトリウムと反応しない」を使った定番の混合物計算。問4は環状エーテルの構造異性体からカルボニル化合物だけを数え上げる問題で、書き出しの丁寧さがそのまま得点になります。
問1:正解 ⑤(配点3)
<問題要旨>
ベンゼンに関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
ベンゼンと塩素の反応は、条件によって生成物が変わります。鉄触媒なら置換、紫外線なら付加。この対比が問われています。
① 常温・常圧で無色の液体である → 正しい ② 水に溶けにくい → 正しい(無極性分子) ③ 炭素原子間の結合距離はすべて等しい → 正しい(単結合と二重結合の中間の状態) ④ 二つの水素をメチル基に置き換えた化合物に 構造異性体が存在する → 正しい(キシレンの o−,m−,p− の3種) ⑤ 鉄粉を触媒にして塩素を反応させると ヘキサクロロシクロヘキサン C₆H₆Cl₆ が おもに生成する → 誤り 鉄粉(触媒)を用いると置換反応が起こり、 クロロベンゼン C₆H₅Cl ができる。 C₆H₆Cl₆ ができるのは紫外線を当てたとき (付加反応)
問2:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
同じ分子式 C₄H₁₀O(分子量74)をもつ 1−ブタノールとメチルプロピルエーテルの混合物 3.7 g に十分な量のナトリウムを加えたところ、0.015 mol の水素が発生しました。混合物中の 1−ブタノールの含有率を求めます。
<考え方>
ナトリウムと反応するのはヒドロキシ基だけで、エーテルは反応しません。つまり発生した水素の量が、そのままアルコールの量を教えてくれます。
ナトリウムとの反応 2R−OH + 2Na → 2R−ONa + H₂ → アルコール 2 mol から H₂ 1 mol (エーテルは反応しない) 1−ブタノールの物質量 H₂ が 0.015 mol なので 0.015 × 2 = 0.030 mol 1−ブタノールの質量 0.030 × 74 = 2.22 g 含有率 2.22/3.7 × 100 = 60 % (確認)混合物全体の物質量 3.7/74 = 0.050 mol うちアルコール 0.030 mol、 エーテル 0.020 mol
問3:正解 ①,③(配点4)
<問題要旨>
五つの芳香族化合物の中に、還元反応の反応物と生成物の関係にあるものが二組あります。それぞれの還元反応の生成物を二つ選びます(順序は問いません)。
<考え方>
還元とは「酸素が減る」または「水素が増える」変化です。五つを見比べて、その関係になっている組を探し、そのうち「あとの方(生成物)」を答えます。
五つの化合物 ① アニリン C₆H₅−NH₂ ② ベンズアルデヒド C₆H₅−CHO ③ ベンジルアルコール C₆H₅−CH₂OH ④ ニトロベンゼン C₆H₅−NO₂ ⑤ フェノール C₆H₅−OH 一組目 ④ ニトロベンゼン → ① アニリン (−NO₂ から酸素がとれて −NH₂ に) 実験室ではスズと塩酸で還元する → 生成物は ① 二組目 ② ベンズアルデヒド → ③ ベンジルアルコール (−CHO に水素が付いて −CH₂OH に) → 生成物は ③ よって ① と ③
問4:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
化合物 A(五員環の環状エーテル、テトラヒドロフラン C₄H₈O)の構造異性体のうち、カルボニル基をもつものはいくつあるかを求めます。
<考え方>
まず分子式を確定します。カルボニル基 C=O をもつ C₄H₈O は、アルデヒドかケトンのどちらかです。炭素骨格を枝分かれまで含めて書き出します。
化合物 A の分子式 環に C が 4 個、O が 1 個、H は各 C に 2 個ずつ → C₄H₈O 不飽和度 (2×4 + 2 − 8)/2 = 1 → C=O 1 個(または環1つ)が入る カルボニル基をもつ C₄H₈O アルデヒド(C₃H₇−CHO) ① ブタナール CH₃−CH₂−CH₂−CHO ② 2−メチルプロパナール (CH₃)₂CH−CHO ケトン ③ 2−ブタノン CH₃−CO−CH₂−CH₃ (3−ブタノンと呼ぶ位置は 2− と同じもの) 合計 3 個 (カルボン酸やエステルは O が 2 個必要なので C₄H₈O には当てはまらない)
問5:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
酢酸ナトリウムの無水物と水酸化ナトリウムの混合物を試験管中で加熱し、生成した化合物を捕集します。この化合物と装置A〜Cの組合せを選びます。
<考え方>
まず何ができるかを反応式で決め、次にその気体の性質(水に溶けるか、空気より重いか)から捕集法を選びます。
〔生成する化合物〕
CH₃COONa + NaOH
→ CH₄ + Na₂CO₃
(脱炭酸反応。ソーダ石灰を使う実験)
→ メタン CH₄
〔捕集法〕
メタンは
・水に溶けにくい
・空気より軽い(分子量16 < 29)
→ 水上置換で捕集する
装置A … 水上置換 ○
装置B … 氷水で冷やして液体を集める
(液体を捕集する装置)
装置C … 下方置換(空気より重い気体用)
よって(メタン,装置A)
第5問 高分子化合物(必答)
問1は分子量分布の「裾がどちらに伸びているか」で平均の位置が決まる、という一点を突いた問題。グラフの読み取りだけで答えが出ます。
問1:正解 ⑥(配点2)
<問題要旨>
平均分子量 M_A、M_B の合成高分子 A と B の分子量分布が図1 です。どちらも分子量 M の分子の数が最も多いとき、M_A、M_B、M の関係を選びます。
<考え方>
最も数が多いのが M(最頻値)です。平均は「裾が伸びている側に引っぱられる」ので、分布の左右の非対称に注目します。
合成高分子 A の分布 頂点は M(約5.2×10⁴) 裾は左(低分子側)に長く伸びている → 平均は M より小さい方へ引っぱられる → M_A < M 合成高分子 B の分布 頂点は同じく M 裾は右(高分子側)に長く伸びている → 平均は M より大きい方へ引っぱられる → M < M_B まとめると M_A < M < M_B
問2:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
高分子化合物に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
天然繊維は「植物繊維=セルロース」「動物繊維=タンパク質」で分かれます。木綿は植物からとる繊維です。
① アセテート繊維は、トリアセチルセルロースの 一部のエステル結合を加水分解してつくる → 正しい(半合成繊維) ② セロハンは、ビスコースから薄膜状に セルロースを再生させてつくる → 正しい(再生繊維の仲間) ③ 木綿(綿)の糸は、タンパク質からなる繊維を より合わせてつくられる → 誤り 木綿はワタの種子毛からとる植物繊維で、 主成分はセルロース。 タンパク質からなるのは絹や羊毛 ④ 天然ゴムは、ラテックスに酸を加えて 凝固させたものである → 正しい
第6問 高分子化合物〔選択問題〕(合成高分子とポリエステル)
第6問と第7問はどちらか1問を選んで解答します(各5点)。当サイトでは両方を解説しているため、このページの配点の合計は105になりますが、実際の満点は100点です。
問1:正解 ①(配点2)
<問題要旨>
ホルムアルデヒドを原料として用いない合成高分子を選びます。
<考え方>
ホルムアルデヒドは「熱硬化性樹脂の付加縮合」と「ビニロンのアセタール化」の二つの場面で登場します。それ以外を探します。
② 尿素樹脂 … 尿素+ホルムアルデヒド ④ フェノール樹脂 … フェノール+ホルムアルデヒド ⑤ メラミン樹脂 … メラミン+ホルムアルデヒド → いずれも付加縮合でホルムアルデヒドを使う ③ ビニロン → ポリビニルアルコールの −OH の一部を ホルムアルデヒドでアセタール化してつくる → 使う ① アクリル繊維 → アクリロニトリル CH₂=CH−CN の 付加重合でつくる → ホルムアルデヒドを使わない ○
問2:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
両端にカルボキシ基をもつ高分子 A(テレフタル酸とエチレングリコールの縮合重合で得た)1.00 g に、カルボキシ基が 1.2×10¹⁹ 個含まれていました。A の平均分子量を求めます。
<考え方>
「両端に」カルボキシ基があるので、A 1分子につきカルボキシ基は2個。ここから分子の個数がわかり、物質量、そして平均分子量に進めます。
A 1 分子あたりカルボキシ基は 2 個 A の分子の個数 1.2×10¹⁹ ÷ 2 = 6.0×10¹⁸ 個 A の物質量 6.0×10¹⁸ / (6.0×10²³) = 1.0×10⁻⁵ mol 平均分子量 = 質量 / 物質量 = 1.00 / (1.0×10⁻⁵) = 1.0×10⁵
第7問 天然高分子化合物〔選択問題〕(二糖類とジペプチド)
第6問との選択問題です。問2は成分元素の含有率のグラフから、ジペプチドを構成するアミノ酸を当てる問題。硫黄 S を含むのがシステインだけ、というところが最初の手がかりになります。
問1:正解 ⑤(配点2)
<問題要旨>
二糖類に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
代表的な二糖の加水分解生成物は覚えておきます。マルトースとセロビオースはグルコース2分子ですが、ラクトースとスクロースは違います。
① 二糖は単糖2分子が脱水縮合したもので、 C−O−C の構造をグリコシド結合という → 正しい ② スクロースとマルトースは互いに異性体 → 正しい(どちらも C₁₂H₂₂O₁₁) ③ スクロースを加水分解して得られる2種類の 単糖の等量混合物を転化糖という → 正しい(グルコース+フルクトース) ④ マルトースの水溶液は還元性を示す → 正しい ⑤ 1分子のラクトースを加水分解すると 2分子のグルコースになる → 誤り ラクトース(乳糖)はガラクトースと グルコースが結合したもの。 グルコース2分子になるのはマルトースと セロビオース
問2:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
ジペプチド A は、アスパラギン酸・システイン・チロシンのうち同種または異種のアミノ酸が脱水縮合したものです。図2 の成分元素の含有率から、A を構成しているアミノ酸の組合せを選びます。
<考え方>
まず S(硫黄)に注目します。3種のうち S をもつのはシステインだけ。A に S が含まれていれば、システインが入っていると確定します。あとは実際に分子式を書いて含有率を計算し、グラフと突き合わせます。
〔手がかり1:硫黄 S〕 S をもつのはシステインだけ 図2 より システイン単独 … S 約26 % ジペプチド A … S 約13.5 % → ほぼ半分 → システイン 1 分子+S をもたない アミノ酸 1 分子の組合せ → ② または ⑤ に絞られる 〔手がかり2:炭素 C で決める〕 ② アスパラギン酸+システイン 分子量 133 + 121 − 18 = 236 分子式 C₇H₁₂N₂O₅S C 12×7 = 84 → 84/236 = 35.6 % O 16×5 = 80 → 80/236 = 33.9 % N 14×2 = 28 → 28/236 = 11.9 % H 1.0×12 = 12 → 12/236 = 5.1 % S 32 → 32/236 = 13.6 % ⑤ システイン+チロシン 分子量 121 + 181 − 18 = 284 炭素は 3 + 9 = 12 個 C 144/284 = 50.7 % → 図2 の A(C 約35.5 %)と合わない 図2 のジペプチド A C 35.5,O 33.8,N 12.0,H 5.3,S 13.6 → ② の計算値と全項目で一致する
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

