2023年度 大学入学共通テスト 追試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2023年度(令和5年度)大学入学共通テスト 追試験「化学」の全問解説です。第1問が物質の状態、第2問が反応速度・平衡・電池・熱化学、第3問が無機、第4問が有機、第5問が高分子と、5つの大問がそれぞれ20点。すべて必答で100点満点です。各設問の見出しをタップすると、その問題の考え方と計算過程が開きます。まちがえた設問だけを選んで確認してください。
第1問 物質の状態(電気伝導性・超臨界流体・濃度・実在気体・溶解度)
理論化学の小問集合です。問3の質量モル濃度と問5 b の水和物の析出は、式を立てる前に「何が何 g あるのか」を書き出してしまうのが確実。問5 は溶解度曲線が3本重なっているので、まずどの線がどの物質かを矢印で確かめるところから始めます。
問1:正解 ④(配点3)
<問題要旨>
アセトン、1 mol/L グルコース水溶液、1 mol/L 酢酸水溶液、1 mol/L 塩酸、塩化ナトリウム(固体)のうち、常温・常圧で電気を最もよく通すものを選びます。
<考え方>
電気を通すのは「動けるイオンが多いもの」。非電解質か電解質か、強電解質か弱電解質か、そして固体か水溶液かの三段階でふるいにかけます。
ア アセトン 分子性の液体(非電解質)→ 通さない イ 1 mol/L グルコース水溶液 グルコースは非電解質 → 通さない ウ 1 mol/L 酢酸水溶液 酢酸は弱電解質 → 少ししか電離しない エ 1 mol/L 塩酸 塩化水素は強電解質 → ほぼ完全に電離 → イオンが最も多い オ 塩化ナトリウム(固体) イオンが結晶中で動けない → 通さない よって エ
問2:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
超臨界流体についての記述ア・イの正誤の組合せを選びます。
<考え方>
「超臨界流体」と「三重点」を取り違えさせる問題です。臨界点より高温・高圧では気体と液体の区別がつかなくなる、という定義をそのまま当てはめます。
ア 物質が超臨界流体になると、固体・液体・気体が 平衡状態で共存する → 誤り 三つの状態が共存するのは「三重点」 超臨界流体は気体と液体の区別が つかなくなった状態 イ 圧力と温度がともに臨界点より高い状態に ある物質は、超臨界流体である → 正しい(これが超臨界流体の定義) (誤,正)の組 → ③
問3:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
電解質 AB₂(式量200,A²⁺ と B⁻ に完全電離)と非電解質 C(分子量150)の混合物 0.50 g を水 100 g に溶かしたところ、全溶質粒子の質量モル濃度が 0.050 mol/kg でした。混合物中の AB₂ の含有率(質量パーセント)を求めます。
<考え方>
質量モル濃度は「溶質粒子の物質量 ÷ 溶媒の kg 数」。AB₂ は 1 mol から 3 mol の粒子(A²⁺ 1個 と B⁻ 2個)が生じることを忘れないのが最大のポイントです。
水は 100 g = 0.100 kg 全溶質粒子の物質量 0.050 mol/kg × 0.100 kg = 0.0050 mol AB₂ を x〔g〕とすると C は (0.50 − x)〔g〕 AB₂ … x/200 mol → 電離して 3 倍の粒子 → 3x/200 mol C … (0.50 − x)/150 mol(電離しない) 3x/200 + (0.50 − x)/150 = 0.0050 両辺を 600 倍 9x + 4(0.50 − x) = 3.0 9x + 2.0 − 4x = 3.0 5x = 1.0 x = 0.20 g 含有率 = 0.20/0.50 × 100 = 40 %
問4:正解 ①(配点3)
<問題要旨>
実在気体に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
実在気体が理想気体からずれる原因は「分子自身の体積」と「分子間力」の二つ。この二つの影響が小さくなる条件を考えます。
① 低温・高圧になるにつれて理想気体に近づく → 誤り 高圧 → 分子自身の体積の影響が大きくなる 低温 → 分子間力の影響が大きくなる 理想気体に近づくのは「高温・低圧」 ② 分子の極性はずれる原因の一つ → 正しい(極性が強いほど分子間力が大きい) ③ 分子自身の体積はずれる原因の一つ → 正しい ④ 理想気体とみなせるとき PV/T は物質によらない → 正しい(1 mol なら PV/T = R)
問5 a:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
図1の溶解度曲線を用いて、KCl(式量74.5)と KNO₃(式量101)の溶解と析出に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
まず図の矢印をたどって、どの線がどの物質かを確定させます。KCl の矢印は破線を、MgSO₄ の矢印は灰色の線をさしています。そのうえで各温度の溶解度を読み取り、選択肢を一つずつ数値で検算します。
図の読み取り(g/100 g 水)
0℃ 10℃ 22℃ 30℃
KCl(破線) 27.5 30.8 34.5 36.5
KNO₃(実線) 13.5 21 34 46
① 温度が低い方が K⁺ 濃度が小さい
→ どちらも溶解度は温度とともに増加
→ 正しい
② 30℃の飽和溶液を 10℃に下げたときの析出量
KCl 36.5 − 30.8 = 5.7 g
KNO₃ 46 − 21 = 25 g
→ KNO₃ の方が大きい
→ 「KCl の方が大きい」は誤り
③ 22℃では 2 本の曲線が交わり、溶解度は等しい
K⁺ の物質量
KCl 34.5/74.5 = 0.46 mol
KNO₃ 34.5/101 = 0.34 mol
→ KNO₃ の方が小さい → 正しい
④ 10℃で 25 g 加えたとき
KCl 溶解度 30.8 > 25 → 全部溶ける
KNO₃ 溶解度 21 < 25 → 一部残る
→ 正しい
問5 b:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
水 100 g にある量の MgSO₄ が溶けている水溶液 A を 14℃に冷却したところ、水和物が 12.3 g 析出し、そのうち水和水が 6.3 g でした。冷却前に溶けていた MgSO₄ の質量を求めます。
<考え方>
水和物が析出すると「溶質」だけでなく「溶媒の水」も一緒に減ります。ここを見落とすと答えが合いません。析出後に残った溶液が 14℃の飽和溶液であることを使います。
析出した水和物 12.3 g の内訳 MgSO₄(無水物)分 = 12.3 − 6.3 = 6.0 g 水和水 = 6.3 g 冷却前に溶けていた MgSO₄ を x〔g〕とすると、 14℃の飽和溶液に残るのは MgSO₄ … x − 6.0〔g〕 水 … 100 − 6.3 = 93.7〔g〕 図1 より 14℃の MgSO₄ の溶解度(灰色の線) 10℃で約28、20℃で約33 なので 14℃では約 30 g/100 g 水 (x − 6.0)/93.7 = 30/100 x − 6.0 = 28.1 x = 34.1 ≒ 34 g
第2問 反応の速さと平衡・電池・熱化学
問2の鉛蓄電池は「硫酸の減少量」と「流れた電子」を式(1)の係数で結ぶだけ。問4はカイロを題材にした熱化学で、加える量と引く量を取り違えないよう、はじめに符号を決めてから足し算します。
問1:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
反応 A+B ⇄ C+D のエネルギー変化の図をもとに、化学反応のしくみに関する記述のうち下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
活性化エネルギーは温度を変えても変わりません。温度を上げて反応が速くなる本当の理由は「活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子の割合が増えるから」です。
① 濃度が大きくなると衝突回数が増える → 正しい ② 活性化エネルギーを超えないと反応しない → 正しい ③ 正反応と逆反応の活性化エネルギーの差が 反応熱に等しいのは、同じ活性化状態 (遷移状態)を経由するから → 正しい(図の山が共通であることに対応) ④ 温度を上げると速くなるのは 「活性化エネルギーが小さくなるため」 → 誤り 活性化エネルギーは温度によらず一定。 速くなるのは、活性化エネルギー以上の エネルギーをもつ分子の割合が増えるため
問2:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
3.00 mol/L の硫酸 100 mL を用いた鉛蓄電池を放電させたところ、硫酸の濃度が 2.00 mol/L に低下しました。外部回路に流れた電気量を求めます(ファラデー定数 9.65×10⁴ C/mol)。
<考え方>
式(1)の係数を見ると、H₂SO₄ が 2 mol 消費されるあいだに電子が 2 mol 流れます。つまり H₂SO₄ の減少量と電子の物質量は 1:1 です。
H₂SO₄ の減少量
はじめ 3.00 mol/L × 0.100 L = 0.300 mol
あと 2.00 mol/L × 0.100 L = 0.200 mol
減少 0.100 mol
式(1) Pb + PbO₂ + 2H₂SO₄ → 2PbSO₄ + 2H₂O
負極 Pb → PbSO₄ で 2 mol の電子
正極 PbO₂ → PbSO₄ で 2 mol の電子を受け取る
→ 反応 1 回あたり 電子 2 mol,H₂SO₄ 2 mol
→ 電子と H₂SO₄ は 1:1
流れた電子 = 0.100 mol
電気量 = 0.100 × 9.65×10⁴
= 9.65×10³ C
問3:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
2価の酸 H₂A は一段階目で完全に電離し、二段階目 HA⁻ ⇄ H⁺ + A²⁻ が電離平衡になります。H₂A のモル濃度を c、二段階目の電離度を α として平衡定数 K を表します。
<考え方>
一段階目で生じた H⁺ が二段階目の H⁺ に上乗せされる、というのがこの問題の肝です。表をつくって各濃度を書き出します。
一段階目(完全電離)
H₂A → H⁺ + HA⁻
H⁺ … c,HA⁻ … c
二段階目(電離度 α)
HA⁻ ⇄ H⁺ + A²⁻
反応した HA⁻ … cα
平衡時の濃度
[HA⁻] = c − cα = c(1 − α)
[A²⁻] = cα
[H⁺] = c + cα = c(1 + α)
(一段階目の分を忘れない)
K = [H⁺][A²⁻]/[HA⁻]
= c(1+α) × cα / {c(1−α)}
= cα(1+α)/(1−α)
問4 a:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
5℃の C₇H₁₆(液)10.0 g(0.100 mol)と 5℃の O₂ から出発し、すべて反応して 25℃の CO₂ と H₂O(気)が生成するとき、暖をとるために利用できる熱量を求めます。
<考え方>
「反応熱から、温めるのに使われた熱と蒸発に使われた熱を引く」だけです。O₂ の物質量が式(5)の係数 11 倍になることに注意します。
物質量 C₇H₁₆ … 0.100 mol O₂ … 11 × 0.100 = 1.10 mol ① 25℃での反応熱 0.100 × 4.50×10³ = 450 kJ(+) ② 5℃ → 25℃ に温める熱 C₇H₁₆(液) 0.100 × 4.44 = 0.444 kJ(−) O₂ 1.10 × 0.600 = 0.660 kJ(−) ③ 25℃での蒸発熱 0.100 × 36.6 = 3.66 kJ(−) 利用できる熱量 450 − 0.444 − 0.660 − 3.66 = 445.2 ≒ 4.45×10² kJ
問4 b:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
直鎖状アルカンの生成熱は炭素数 n が大きくなると直線になります。表1(C₄〜C₇ の生成熱、CO₂ と H₂O(気) の生成熱)から、C₈H₁₈(気)の燃焼熱を求めます。
<考え方>
二段構えです。まず生成熱の表を直線とみて C₈H₁₈ の生成熱を外挿し、次に「(生成物の生成熱の和)−(反応物の生成熱の和)」で燃焼熱を出します。①の 2.09×10² は外挿した生成熱そのもので、途中で止めると引っかかります。
① C₈H₁₈ の生成熱を外挿する
n : 4 5 6 7
生成熱: 126 147 167 188
差 : 21 20 21
→ 1 増えるごとに約 20.7 kJ/mol
C₈H₁₈ … 188 + 20.7 ≒ 209 kJ/mol
② 燃焼の熱化学方程式
C₈H₁₈(気) + 25/2 O₂(気)
= 8CO₂(気) + 9H₂O(気) + Q kJ
Q =(生成物の生成熱の和)
−(反応物の生成熱の和)
生成物 8 × 394 + 9 × 242
= 3152 + 2178 = 5330
反応物 209 + 0(O₂ は単体なので 0)
Q = 5330 − 209 = 5121
≒ 5.12×10³ kJ/mol
第3問 無機物質(窒素・銅の化合物と硫酸銅の水和物)
問1〜問3は知識問題ですが、いずれも「似ているけれど違うもの」を突いてきます。銅(I)と銅(II)、亜硝酸ナトリウムと硝酸ナトリウムのような取り違えを狙う出題です。問4は水和水の数 x を実験値から決める定番の計算で、ここは確実に取りたいところ。
問1:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
窒素の単体および窒素化合物に関する記述のうち、正しいものを選びます。
<考え方>
「正しいものを選ぶ」形式なので、誤りの根拠をはっきり言えるかどうかで決めます。とくに④の配位結合は、電子対を出すのがどちらかを毎回確認する習慣が大事です。
① 大気圧下では液体の窒素は存在しない → 誤り 沸点 −196℃ で液体窒素として実在する ② 濃硝酸中で銀の表面は不動態となる → 誤り 不動態になるのは Fe,Ni,Al,Cr 銀は濃硝酸に溶けて NO₂ を発生する ③ 硝酸は、水と二酸化窒素を反応させると得られる → 正しい 3NO₂ + H₂O → 2HNO₃ + NO (オストワルト法の最終段階) ④ 配位結合は亜鉛イオンの非共有電子対が アンモニアに与えられて生じる → 誤り 逆で、NH₃ の窒素がもつ非共有電子対が Zn²⁺ に与えられて配位結合ができる
問2:正解 ③,⑤(配点4)
<問題要旨>
いずれも気体が発生する五つの反応のうち、酸化還元反応ではないものを二つ選びます(順序は問いません)。
<考え方>
すべての原子の酸化数を書き出す必要はありません。単体(酸化数0)が出入りしていないか、同じ元素の酸化数が前後で変わっていないかを見るだけで判別できます。
① Zn + 2NaOH + 2H₂O → Na₂[Zn(OH)₄] + H₂ Zn 0 → +2,H +1 → 0 → 酸化還元反応 ② Ca(ClO)₂·2H₂O + 4HCl → CaCl₂ + 4H₂O + 2Cl₂ Cl +1 → 0,Cl −1 → 0 → 酸化還元反応 ③ NH₄Cl + NaOH → NaCl + H₂O + NH₃ 酸化数の変化なし → 弱塩基の遊離(酸化還元ではない) ④ Cu + 2H₂SO₄ → CuSO₄ + 2H₂O + SO₂ Cu 0 → +2,S +6 → +4 → 酸化還元反応 ⑤ NaCl + H₂SO₄ → NaHSO₄ + HCl 酸化数の変化なし → 揮発性の酸の遊離(酸化還元ではない) よって ③ と ⑤
問3:正解 ③(配点4)
<問題要旨>
銅化合物に関する記述のうち、下線部に誤りを含むものを選びます。
<考え方>
銅は +1(赤色の Cu₂O)と +2(黒色の CuO、青色の Cu²⁺)で色も性質も違います。フェーリング液の還元で出るのがどちらかを覚えているかが決め手です。
① 酸化銅(II) CuO は希硫酸に溶ける → 正しい(塩基性酸化物) CuO + H₂SO₄ → CuSO₄ + H₂O ② タンパク質水溶液+NaOH+CuSO₄ で赤紫色 → 正しい(ビウレット反応) ③ フェーリング液にアルデヒドを加えて加熱すると 酸化銅(II)が生じる → 誤り 生じるのは酸化銅(I) Cu₂O の赤色沈殿 (Cu²⁺ が還元されて Cu⁺ になる) ④ 濃アンモニア水に水酸化銅(II)を溶かした水溶液 (シュワイツァー試薬)は銅アンモニアレーヨンの 製造に用いられる → 正しい
問4 a:正解 4.2(配点4)
<問題要旨>
一部の水和水を失った試料 A(CuSO₄·xH₂O)1.178 g を水に溶かし、BaCl₂ 水溶液を加えて BaSO₄(式量233)の白色沈殿 1.165 g を得ました。x を小数第1位まで求めます。
<考え方>
沈殿の質量から SO₄²⁻ の物質量が出ます。SO₄²⁻ と CuSO₄·xH₂O は 1:1 なので、試料の質量を割れば式量が求まり、そこから x が出ます。
BaSO₄ の物質量 1.165 / 233 = 0.005000 mol SO₄²⁻ も 0.005000 mol → CuSO₄·xH₂O も 0.005000 mol 試料 A の式量 1.178 / 0.005000 = 235.6 式量 = 160 + 18x なので 160 + 18x = 235.6 18x = 75.6 x = 4.2 (3 ≦ x ≦ 5 の範囲に入っており、問題文と矛盾しない) 解答番号16 は ④、解答番号17 は ②
問4 b:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
試料 A を溶かした水溶液 B の 10 mL から、実験Ⅱでは w〔mg〕の CuO(式量80)が得られ、別の 10 mL を用いた実験Ⅲでは、陽イオン交換樹脂に通した流出液の中和に c〔mol/L〕の NaOH が V〔mL〕必要でした。w、c、V の関係式を選びます。
<考え方>
二つの実験でそれぞれ Cu²⁺ の物質量を表し、等号で結びます。陽イオン交換樹脂では Cu²⁺ 1個が H⁺ 2個に置き換わる(電荷を合わせる)ことがポイントです。
実験Ⅱ(CuO の質量から) CuO w〔mg〕→ w/80〔mmol〕 Cu²⁺ もすべて CuO になったので Cu²⁺ = w/80〔mmol〕 実験Ⅲ(中和滴定から) 樹脂で Cu²⁺ 1 mol → H⁺ 2 mol に交換 中和 H⁺ = NaOH なので H⁺ = c × V〔mmol〕 Cu²⁺ = cV/2〔mmol〕 二つが等しいので w/80 = cV/2 2w = 80cV V = w/(40c)
第4問 有機化合物(アセチレン・アゾ染料・共重合体・エステル)
問3は「ベンゼン環の水素とそれ以外の水素」を数え上げる比の計算。問4 c は不斉炭素・シス−トランス異性体・酸化されないという三つの条件を順に当てはめて、選択肢を一つずつ落としていくのが最短ルートです。
問1:正解 ③(配点3)
<問題要旨>
アセチレンの反応に関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
アセチレンへの水付加は、いったんビニルアルコールができてすぐ異性化する、という二段構えを覚えているかどうかが問われます。
① C₂H₂ + Br₂ → CHBr=CHBr 1,2−ジブロモエチレン → 正しい ② C₂H₂ + CH₃COOH → CH₂=CH−OCOCH₃ 酢酸ビニル → 正しい ③ C₂H₂ + H₂O → 酢酸 → 誤り まずビニルアルコール CH₂=CH−OH が生じ、 ただちに異性化してアセトアルデヒド CH₃CHO になる ④ C₂H₂ + H₂ → C₂H₄ → C₂H₆ エチレンを経てエタン → 正しい
問2:正解 ②(配点3)
<問題要旨>
塩化ベンゼンジアゾニウムとナトリウムフェノキシドから p−ヒドロキシアゾベンゼンを合成するカップリングに関する記述のうち、正しいものを選びます。
<考え方>
反応式を実際に書いてしまえば、生成物が何かは一目でわかります。窒素が発生するのはジアゾニウム塩の加水分解の方で、カップリングでは発生しません。
カップリングの反応式 C₆H₅N₂Cl + C₆H₅ONa → HO−C₆H₄−N=N−C₆H₅ + NaCl ① 塩化ベンゼンジアゾニウムはアニリンと 硝酸ナトリウムから得られる → 誤り。正しくは亜硝酸ナトリウム NaNO₂ (と塩酸)を用いたジアゾ化 ② カップリングでは塩化ナトリウムが生成する → 正しい(上の式のとおり) ③ カップリングでは窒素が発生する → 誤り N₂ が出るのはジアゾニウム塩を温めて 加水分解しフェノールにするとき ④ p−ヒドロキシアゾベンゼンは無色である → 誤り アゾ基 −N=N− をもつ橙赤色の化合物 (アゾ染料の代表例)
問3:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
単量体 A(CH₂=CHC₆H₅)と単量体 B(CH₂=CHCN)の共重合体で、ベンゼン環に結合した水素原子の数と、それ以外の水素原子の総数の比が 5:4 でした。反応した A と B の物質量の比を求めます。
<考え方>
重合しても水素原子の数は変わりません(切れるのは C=C の π 結合だけ)。単量体1個あたりの水素を「ベンゼン環のもの」と「それ以外」に分けて数え、比の式を立てます。
単量体 A:CH₂=CH−C₆H₅(スチレン) ベンゼン環の H … 5 個 それ以外の H … 3 個(CH₂=CH−) 単量体 B:CH₂=CH−CN(アクリロニトリル) ベンゼン環の H … 0 個 それ以外の H … 3 個 A を a〔mol〕,B を b〔mol〕とすると ベンゼン環の H … 5a それ以外の H … 3a + 3b 5a :(3a + 3b)= 5 : 4 4 × 5a = 5 ×(3a + 3b) 20a = 15a + 15b 5a = 15b a : b = 3 : 1
問4 a:正解 ④(配点2)
<問題要旨>
エステルに関する記述のうち、誤りを含むものを選びます。
<考え方>
エステル化は可逆、けん化(塩基による加水分解)は不可逆。この対比が繰り返し問われます。
① サリチル酸 + 無水酢酸 → アセチルサリチル酸 → 正しい(アスピリンの合成) ② 濃硫酸を触媒とする酢酸 + エタノール → 酢酸エチル は可逆反応 → 正しい ③ ニトログリセリンはグリセリンと硝酸の エステルである → 正しい(名前に「ニトロ」とあるが ニトロ化合物ではなく硝酸エステル) ④ NaOH 水溶液を用いる酢酸エチルの 加水分解反応は可逆反応である → 誤り 生じたカルボン酸がただちに中和されて 酢酸ナトリウムになるため、逆向きには 進まない(けん化は不可逆)
問4 b:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
炭素・水素・酸素のみからなるエステル A 49.0 mg を完全に加水分解すると、カルボン酸 B と、分子式 C₁₀H₁₈O の1価アルコール C が 38.5 mg 得られました。B の示性式を選びます。
<考え方>
アルコール C の物質量から、エステル A の物質量が決まります。あとは「エステル + 水 → 酸 + アルコール」の質量保存を書くだけです。
アルコール C の分子量 C₁₀H₁₈O = 12×10 + 1.0×18 + 16 = 154 C の物質量 = 38.5/154 = 0.250 mmol B が1価カルボン酸だとすると、A のエステル結合は 1つなので A も 0.250 mmol A の分子量 = 49.0/0.250 = 196 加水分解 A + H₂O → B + C(質量保存) 196 + 18 = B の分子量 + 154 B の分子量 = 60 → CH₃COOH(酢酸,分子量60) (参考) CH₃CH₂COOH は 74 HOOC−COOH は 90(2価) HOOC−CH₂−COOH は 104(2価) いずれも合わない
問4 c:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
1価アルコール C(C₁₀H₁₈O)は不斉炭素原子をもち、シス−トランス異性体は存在しません。すべての二重結合に水素を付加させて得られたアルコールは、硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液と加熱しても酸化されませんでした。C の構造式を選びます。
<考え方>
条件が三つあるので、順に当てはめて選択肢を落とします。とくに「酸化されない=第三級アルコール」は、OH のついた炭素に H が付いていないことを見れば一目で判定できます。
条件① 酸化されない → 第三級アルコール OH のついた炭素が、炭素3つと結合している ② は OH の炭素に H がある(第二級)→ × 条件② 不斉炭素原子をもつ ③ は OH の炭素につく 4 つの基のうち −CH=C(CH₃)₂ が 2 つあり同じ → × 条件③ シス−トランス異性体が存在しない ④ は CH₃CH₂−CH=CH− の部分で、 二重結合の両端の炭素がそれぞれ 異なる 2 つの基をもつ → 幾何異性体あり → × 残った ① を確認する (CH₃)₂C=CH−CH₂−CH₂−C(CH₃)(OH)−CH=CH₂ ・OH の炭素は CH₃,OH,鎖,CH=CH₂ と結合 → 第三級アルコール(酸化されない)○ → 4 つの基がすべて異なる(不斉炭素)○ ・(CH₃)₂C= は同じ基が 2 つ → 幾何異性なし ・−CH=CH₂ は末端 → 幾何異性なし ○ 分子式も C₁₀H₁₈O で一致
第5問 高分子化合物(高吸水性樹脂と浸透圧)
高吸水性樹脂を題材に、架橋構造・浸透圧・ファントホッフの法則をつなげて問う総合問題です。問4 b は「切片から分子量を求める」タイプで、方眼紙に点を打って直線を延ばすか、2点から傾きと切片を計算するかのどちらかで解けます。
問1:正解 ④(配点4)
<問題要旨>
下線部(a)に関して、網目状の立体構造をもたない高分子を選びます。
<考え方>
網目状の立体構造をもつのは熱硬化性樹脂、もたない鎖状(線状)のものは熱可塑性樹脂、という対応で分けます。
① フェノール樹脂 … 熱硬化性 → 網目状 ② 尿素樹脂 … 熱硬化性 → 網目状 ③ アルキド樹脂 … 熱硬化性 → 網目状 ④ スチロール樹脂 (ポリスチレン) … 熱可塑性 → 鎖状 ポリスチレンはスチレンの付加重合でできる 直鎖状の高分子なので、網目状の立体構造を もたない → ④
問2:正解 ②(配点4)
<問題要旨>
下線部(b)に関して、アクリル酸ナトリウムに架橋構造をもたせるために共重合させるモノマーを選びます。
<考え方>
架橋するには、1分子が2か所で鎖につながる必要があります。つまり重合できる C=C を2つもつモノマーを探します。
架橋の条件 → 1 分子に付加重合できる C=C が 2 つある ① CH₂=CH−COOCH₃ C=C は 1 つ → 鎖に組み込まれるだけ ② CH₂=CH−COOCH₂CH₂OOC−CH=CH₂ 両端に C=C が 1 つずつ、合計 2 つ → 2 本の鎖をつなぐことができる ○ ③ HOOC−CH=CH−COONa 型(マレイン酸塩) C=C は 1 つ ④ CH₃OOC−CH=CH−COOCH₃ C=C は 1 つ よって ②
問3:正解 ①(配点4)
<問題要旨>
下線部(c)に関して、高吸水性樹脂を純水に浸した場合と NaCl 水溶液に浸した場合に起こる現象を比べます。
<考え方>
吸水の原動力は「樹脂の内側と外側のイオン濃度の差」です。外側にイオンを増やせば差が小さくなり、吸水も弱まります。
吸水のしくみ 樹脂内部 … −COO⁻ と Na⁺ でイオン濃度が高い 外側 … 純水ならイオンはほぼ 0 → 濃度差が大きい → 浸透圧が大きい → 水がよく吸収される NaCl 水溶液に浸すと 外側にも Na⁺ と Cl⁻ が存在する → 内側と外側のイオン濃度の差が小さくなる → 浸透圧が小さくなる → 吸収される水の量は少なくなる (架橋は共有結合なので切れず、樹脂が 溶けることもない → ④ は誤り)
問4 a:正解 2.5×10³ Pa(配点4)
<問題要旨>
300 K、質量濃度 C_w=0.342 g/L のスクロース(分子量342)水溶液の浸透圧 Π を、有効数字2桁で求めます(R=8.31×10³ Pa·L/(K·mol))。
<考え方>
式(1) にそのまま代入するだけですが、0.342 と 342 が 1000 倍の関係になっているのに気づくと暗算で片づきます。
Π = C_w RT / M C_w = 0.342 g/L M = 342 g/mol C_w/M = 0.342/342 = 1.00×10⁻³ mol/L Π = 1.00×10⁻³ × 8.31×10³ × 300 = 8.31 × 300 = 2493 Pa ≒ 2.5×10³ Pa 解答番号28 は ②、29 は ⑤、30 は ③
問4 b:正解 ⑤(配点4)
<問題要旨>
高分子溶液では式(3) Π/(C_w RT) = 1/M′ + AC_w が成り立ちます。表1・図2 の測定値から、この高分子の平均分子量 M′ を求めます。
<考え方>
求めたいのは C_w=0 に外挿したときの切片 1/M′ です。方眼紙に直線を引いてもよいですが、離れた2点から傾きを出して切片を計算する方が速く、読み取り誤差も小さくなります。
表1 の値(Π/(C_w RT),単位 ×10⁻⁵ mol/g)
C_w = 1.65 → 1.46
C_w = 2.97 → 1.54
C_w = 4.80 → 1.64
C_w = 7.66 → 1.81
両端の 2 点から傾き A を求める
A =(1.81 − 1.46)/(7.66 − 1.65)
= 0.35/6.01
= 0.0582
切片 1/M′ を求める
1/M′ = 1.46 − 0.0582 × 1.65
= 1.46 − 0.096
= 1.36(×10⁻⁵ mol/g)
M′ = 1/(1.36×10⁻⁵)
= 7.35×10⁴
≒ 7.3×10⁴
(中間の 2 点 (2.97, 1.54) と (4.80, 1.64) で
計算しても 1/M′ ≒ 1.38×10⁻⁵、
M′ ≒ 7.3×10⁴ となり一致する)
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

