解答
解説
第1問
問1:正解3
<問題要旨>
1985年と2015年に発行された同一地域の地形図を比較し、主に住宅地として利用されている範囲(A〜D)のうち、図中Aに相当する場所の過去の土地利用や地形的特徴を読み取り、それに合致する選択肢を選ぶ問題である。地図をよく観察すると、台地上や谷底低地、水田地帯、既成の住宅地など、土地の標高や利用状況が時期によって変化している点がヒントとなる。
<選択肢>
①【誤】
「屋根や谷が入り組んだ傾斜地を造成してつくられた」と述べており、急峻な斜面や傾斜を持つ地形を大規模造成して住宅地とした事例を想定している。しかし、Aの位置を地形図で追うと、台地状の比較的なだらかな地形に区画整備が施された様子がうかがえ、急斜面を大規模に切り開いた形跡は乏しい。
②【誤】
「主に水田として利用されていた低地につくられた」とする見方だが、Aの区画は標高が比較的高めで、低地というよりも台地に位置している可能性が高い。低地であれば河川沿いの堆積平野や後背湿地などとの位置関係が明確に見られるはずだが、地形図の様子からはそうした特徴が見当たらない。
③【正】
「果樹園や水田として利用されていた台地上につくられた」とある。台地上にはかつて畑や果樹園、水田のための棚田状の土地利用が行われている例もあり、地形図を比較すると、かつて農地として使われていた区画が宅地化されたり、市街地として開発されたりしていることがうかがえる。この説明はAの位置・地形・過去の利用状況と一致しやすい。
④【誤】
「かつてから住宅地であった」との記述は、長年変わらず住宅が続く既成市街地を想定している。しかし、地形図比較を見ると、Aの区域は1985年当時はまだ宅地化が進んでいないか、一部が農地として利用されていたことがうかがえる。そのため、昔からずっと住宅地だったとするのは不適切である。
問2:正解1
<問題要旨>
自然堤防と後背湿地を含む低平地の地形断面や空中写真などをもとに、川沿い・旧河道沿いの微高地(自然堤防)と、その背後に広がる軟弱で水がたまりやすい低地(後背湿地)を判別し、それぞれどの地点に当てはまるかを考える問題である。自然堤防は標高がわずかに高く水はけがよい一方、後背湿地は標高が低く排水が悪いといった特性がある。
<選択肢>
①【正】
Fが川沿いの自然堤防にあたり水はけの良い微高地、Gがより標高が低い後背湿地である組合せを示している。自然堤防は氾濫時の堆積作用でわずかに高くなっているため、水が周囲へ流れ出しやすい一方、後背湿地は軟弱で水はけが悪い場所として特徴づけられる。この対応が地形断面図や空中写真の観察と一致する。
②【誤】
FとGのどちらも水はけが良い地形またはどちらも軟弱地形など、他の組合せを示していると考えられるが、実際にはFとGは標高に違いがあり、水がたまりやすさも異なる。よって両方が同じ地形特性という説明は不十分である。
③【誤】
Fが軟弱地盤、Gが水はけの良い地形という組合せを示す場合、水系や地形断面の観察から乖離してしまう。Fのほうがやや標高が高く、市街地が形成されやすい自然堤防に近い地形と推定されることが多いため、この選択は適さない。
④【誤】
FとGが逆転していたり、地図上の標高分布や河川形態を誤って把握した組合せを想定している可能性がある。しかし、問題文の図や断面図からは、Fがわずかに標高が高い部分、Gが低い部分に当たるため、この説明は適合しない。
問3:正解4
<問題要旨>
ある地域のX駅からY駅までの複数ルート(J、K、L)について、一般道のみを利用する経路、高速道路を利用する経路、鉄道を利用する経路などをGISで検索し、それぞれの移動距離や所要時間の特徴を比較する問題である。表には、出発時刻による所要時間の差や、ルートごとの距離が示されている。どの経路がどの交通手段・道路を利用しているかを読み取る点がポイント。
<選択肢>
①【誤】
Jが一般道のみ、Kが高速道路、Lが鉄道――といった割り当てをすると、示されている距離や所要時間の特徴(たとえば高速道路のほうが距離が長めでも所要時間が比較的短いなど)と矛盾が生じる場合がある。
②【誤】
Kが一般道、Lが高速道路、Jが鉄道――などの組合せを想定しているが、実際には高速道路を使うルートは所要時間が混雑時間帯とそうでない時間帯で比較的幅があるといった特徴が表の値と合わない場合がある。
③【誤】
一般道と高速道路のルート割り当てを逆にしていたり、鉄道を利用するルートの所要時間を誤って捉えていると考えられる選択肢。表に示された到達時間や距離が合わず、整合性を欠く。
④【正】
J、K、Lそれぞれが一般道・高速道路・鉄道の特徴に合致する組合せを示す。距離が似ていても所要時間に大きな差が出る場合は高速道路かどうかが影響し、鉄道利用の場合は距離はあまり関係なく所要時間が安定しやすいといった特徴が読み取れる。表の数値を照合すると、最も妥当な割り当てはこの選択肢になる。
問4:正解2
<問題要旨>
統計データの種類や性質によって、地図での表現方法(コロプレスマップ、ドットマップ、図形表現など)を使い分ける必要があることを理解する問題である。提示された図5は、ある県の人口分布を複数の地図表現で示したもので、そのうち表現方法として不適切・誤りがあるものを見抜くことが問われている。
<選択肢>
①【誤】
標高に応じてグラデーションをつけているわけではなく、人口の高位・中位・低位をエリアごとに塗り分けるコロプレスマップのような表現。広範囲を領域単位で表現しており、基本的には人口密度の変化を示す地図としては一応成立する。
②【正】
この地図は、塗り分け範囲が極端に分割されていたり、本来の人口分布を正しく表現しにくい方式(例えば、県全域を二分法で大まかに塗ってしまい、分布のムラがつかみにくい、あるいは行政区分に合わない不自然な区割りをしているなど)の可能性がある。問題文で「適当でない」と示す地図表現に該当する根拠が読み取れる場合、この地図は人口の地域差を誤解させる恐れがあるため不適切となる。
③【誤】
円や球などの図形の大きさで人口数を示す方法(図形表現)と考えられる。行政区域ごとに人口を表した円グラフやサイズマップは標準的な表現手法であり、人口数の比較が視覚的に把握しやすい。
④【誤】
1点=100人のように、一定の基準で複数の点を配置するドットマップ表現。人口分布の密集度を視覚的に示すには適切とされることが多く、分布状況を大まかにつかむのに有効な方法である。
問5:正解5
<問題要旨>
大雨に伴う災害時の避難場所を考える問題で、図6には山地や河川、等高線、水域や土砂災害・浸水被害のおそれのある区域が示されている。P〜Rの各地点の位置や標高、地盤などを踏まえ、災害リスク(浸水・土砂災害)を回避できる避難先を読み取る設問である。また、選択肢として示されたカ・キ・クはそれぞれの地点における注意点をまとめたもので、最も適切な組合せを選ぶ。
<選択肢>
①【誤】
P, Q, Rとカ, キ, クの対応を誤って割り当てると、周辺の地形や土砂災害リスク、浸水リスクとの位置関係が食い違う。例えば山地側に近い地点を「低地だから浸水に注意」とすると説明が合わなくなる場合などがある。
②【誤】
山から離れた地点を土砂災害リスクがあるかのように割り当てるなど、各地点の地形とリスクの組合せがずれている可能性がある。地図の標高や危険区域の区分を冷静に読み取ると、整合しなくなるケースが多い。
③【誤】
周囲より標高が高い地点を「浸水リスクが高い低地」とするなど、真逆のリスク評価を示している組合せ。地図上の等高線や危険区域の表示から判断すると、誤りが明らかになる。
④【誤】
一部は正しくリスクを判別していても、他の地点に関する記述が食い違っている場合がある。土砂災害と浸水被害は全く別の地形条件で発生しやすいので、複数地点の特徴をセットで正しく捉える必要がある。
⑤【正】
Pは山地から離れているが北側は浸水の恐れがある、Qは山に近く土砂災害リスクを考慮すべき、Rは周囲より標高が高く浸水リスク区域外だが崖崩れに留意、といった条件をうまく組み合わせた説明となる。実際の地形図に即して考えると、最も整合性が高いのがこの選択肢である。
⑥【誤】
どこかの地点について浸水リスクがあるのにそれが考慮されていなかったり、山側の土砂災害リスクを見落としていたりして、細部の説明が現地の地形と一致しない。
問6:正解2
<問題要旨>
大規模地震の際、公共交通機関が停止し、帰宅手段を失った人々が歩いて移動せざるを得ない事態を想定している。こうした状況で地理情報やGISを活用する具体的事例を取り上げ、どのように帰宅や避難を支援するか、その方策の是非を判断する問題である。
<選択肢>
①【誤】
「駅から一定距離内に位置する公もしくは民間の施設を特定し、一時滞在できる避難スペースを把握した」という趣旨は、防災計画上は有効ではあるが、問題文で問われているGIS活用事例と直接結びつかない可能性がある。あるいは単に“出発時刻ごとの検索”だけで終わっていて、帰宅困難者をいかに受け入れるかまで具体化していないと考えられる。
②【正】
「帰宅が困難になった人たちが滞在可能な施設を示すステッカーを作成し、建物の出入口に貼り付けた」というのは、GIS等であらかじめ避難可能な建物を洗い出し、歩行ルート上での受け入れ可能な拠点を一目でわかるように情報発信する取り組みと解釈できる。大規模災害時にはこうした可視化情報が重要となるため、有効な事例と言える。
③【誤】
「帰宅者の自宅までの徒歩での距離を計測し、遠距離のために帰宅が困難となる人数を推計した」のみでは、帰宅行動の支援策としてはやや不十分で、具体的な安全ルートや途中の避難施設の情報提示などがなければ、GIS活用としての着眼点が弱い。単なる人数把握に留まるため、この設問においてはやや不適切と考えられる。
④【誤】
「道路データと土砂災害の危険性がある区域データを重ね合わせ、危険ルートを把握した」という内容自体は、防災面で有用なGISの使い方である。しかし選択肢の記述では、帰宅困難者が出たときに滞在できる施設や支援施策を把握する方策が示されておらず、問題文の意図(帰宅支援や拠点活用)からはやや外れていると考えられる。
第2問
問7:正解4
<問題要旨>
タピオカミルクティーを構成する原材料(キャッサバ・サトウキビ・茶)の世界生産量上位国を表す円グラフを読み取り、それぞれA〜Cに当てはまる材料を正しく組み合わせる問題である。資料には中国やインド、ブラジル、タイ、ナイジェリアなど複数国の生産シェアが示されており、キャッサバ(キャッサバ粉の原料)やサトウキビ、茶の世界的な生産分布を把握する必要がある。
<選択肢>
①【誤】
A、B、Cの割り当てがキャッサバ・サトウキビ・茶の実際の生産シェアと整合しない可能性がある。たとえば、キャッサバの主産地として知られるナイジェリア・コンゴ民主共和国・ブラジルなどの比率を誤って割り当てているなど、円グラフの国別シェアとの不一致が見られる。
②【誤】
茶の世界生産で大きな比率を占めるのは中国やインド、ケニア、スリランカなどであり、サトウキビではブラジルやインドなどが主要生産国になる。これらを混同する形で誤った組み合わせにしていると、円グラフとの対応が食い違う。
③【誤】
キャッサバとサトウキビ、茶それぞれのグラフを取り違えている事例。円グラフが示す国・地域の分布が実際の生産実態と噛み合わないため、A〜Cの対応がずれてしまっている。
④【正】
キャッサバはナイジェリアやブラジルなどが生産上位国、サトウキビはブラジル・インド・中国などが上位国、茶は中国・インド・ケニアなどが上位を占める。資料中の円グラフの国別比率を照らし合わせると、Aがキャッサバ、Bがサトウキビ、Cが茶に正しく対応しているのはこの組み合わせである。
⑤【誤】
A・Bのうち一方をサトウキビや茶としたり、Cをキャッサバとしたりと、正しい割り当てから外れたパターン。グラフに示された国名や生産シェアを細かく比較すると、矛盾が生じる。
⑥【誤】
キャッサバの分布をアジア中心としてしまうなど、実際とは異なる想定をしている場合。この選択肢でも円グラフの内訳と合わず、ミスマッチが明らかになる。
問8:正解1
<問題要旨>
資料1の下線部(日本で世界中の様々なものを食べられるようになった背景)に関連して、実際に輸入される食べ物の事例を挙げ、その理由を考察する問題である。選択肢のなかから「不適当なもの(事例として成立しない・現実に合わないもの)」を選ぶ形式になっている。
<選択肢>
①【正】(=「不適当」)
「原産地を表示する制度により、地域ブランドを明示したフランス産チーズが高価値で輸入されるようになった」という趣旨だが、単に“原産地表示の導入”が理由で輸入が急増・高付加価値化するわけではない可能性がある。ブランド力のある農産物や加工品は以前から輸入されており、原産地表示だけで価格が跳ね上がるのはやや不自然とも考えられる。よって、ここでは「不適当な事例」として挙げられていると推測される。
②【誤】
「自由貿易協定の締結により、オーストラリア産の牛肉が低い関税で輸入されるようになった」とある。貿易自由化によって関税が下がり、輸入量が増えたり値段が下がったりするのは現実的な事例である。
③【誤】
「輸送技術の向上により、ニュージーランド産のカボチャが日本産カボチャの端境期(はざかいき)にあたる時期に輸入できるようになった」という内容は、実際に行われている季節的な輸入例としてよく知られている。
④【誤】
「養殖技術の確立により、ノルウェー産のサーモンを一年中輸入できるようになった」とある。鮭やサーモンを養殖し、鮮度を保ったまま冷蔵・空輸する技術が発達した結果、世界各地で流通させる事例は広く見られる。
問9:正解2
<問題要旨>
作物(キャッサバ・コーヒー・茶など)の栽培起源地域とヨーロッパへの伝播経路、さらに一人当たりの年間供給量を示した資料(FAOSTATなどに基づくデータ)をもとに、X〜Zがどの地域に相当するかを判断する問題である。アフリカ、中央・南アメリカ、東アジアなど作物ごとに起源地や現在の生産中心が異なるため、それを読み取り、資料中の伝播ルート(陸路・海路、大西洋貿易、イスラーム圏を経由など)と突き合わせて考える。
<選択肢>
①【誤】
X、Y、Zに割り当てられた地域が、作物の起源や年間供給量と食い違う。たとえばキャッサバがアフリカ起源とされるのに東アジアを当てはめるなど、データに合わない。
②【正】
Xはアフリカ、Yは東アジア、Zは中央・南アメリカ(またはその逆パターン)など、作物別の起源地・伝播ルート・供給量の特徴に即して正しく対応付けられている。実際には、キャッサバは中南米原産だがアフリカへも広く伝播しているなど複雑な歴史があるため、それぞれの資料を総合的に判断すると、この選択肢の組み合わせが最も整合性がある。
③【誤】
X、Y、Zを別の地域に割り当てているため、FAOSTATの数字(1人当たり年間供給量)や伝播経路の説明と辻褄が合わなくなる。
④【誤】
海路・大西洋・イスラーム地域を経由した伝播ルートの記述を取り違え、X〜Zに当てはめた地域区分が不適切になっている。
⑤【誤】
作物の起源地を逆に解釈したり、ヨーロッパ側に伝わった順序が資料と噛み合わない割り当て。
⑥【誤】
1人当たり供給量の多寡と実際の大陸別食文化が矛盾してしまい、伝播や生産量の記述に整合しない。
問10:正解3
<問題要旨>
茶は世界各地へと伝播し、多様な飲み方が存在する。資料3では、L〜Nの地域における茶の飲み方や類似飲料の写真・説明文(カ・キ・ク)が提示されている。具体的には、揚げ物を食べる際の飲み方や午後の社交的なティータイム、金属製器具を使った茶器など、それぞれ地理的文化的背景が異なる。これを地図上の位置と関連付けて考える問題である。
<選択肢>
①【誤】
L、M、Nに対する「カ・キ・ク」の割り振りが、写真の様子や飲み方の文化圏と合わない。たとえば、ヨーロッパ式のティータイムをアジア地域に当てはめてしまったり、南米式の飲み方(マテ茶)を東アジアに当てたりしており、地図との対応に齟齬が出る。
②【誤】
別の地域に当てはめようとするが、写真に写る食器の特徴やティータイムの様子、マテ茶の容器・ストローの形状などが合致せず、地図のL・M・Nの位置関係にも整合しない。
③【正】
Lが中国や香港など点心を食べる文化圏(揚げ物や点心と共にポットで茶を淹れる)、Mがイギリスのアフタヌーンティー文化(午後に社交の場でポットに茶葉と湯を入れて別の器に注ぐ)、Nが南米などのマテ茶文化(ひょうたん型容器やストローを使う)に相当する。地図の大陸位置、写真の飲み方・食器との対応関係から最も適切なのがこの選択肢である。
④【誤】
ヨーロッパ式をアジアに、マテ茶をアジアに、点心文化を南米に当てているなど、実際の地図位置と飲み方が食い違う。
⑤【誤】
LとMを逆にしたり、Nをアジアに当てたりして、写真との対応が崩れる事例。マテ茶特有の飲み方(ストローで飲む)を別地域に割り当てても不自然である。
⑥【誤】
写真・説明文の特徴(点心、社交の場でのティーセット、ストローを使う茶)と地理的位置を大幅に取り違えているため、正しい対応にならない。
問11:正解1
<問題要旨>
食文化の多様性を議論するなかで、チサキさんと先生の会話に登場する下線部a・bの具体例が示される。選択肢には「日本でインド・イタリア料理店が見られること」「郷土料理店が多言語対応すること」などのaの事例、さらに「アボカドやカニを巻いた寿司」「現地の牛乳からつくられたヨーグルト」といったbの事例が挙げられる。これらを「世界の様々な料理が伝播しローカライズされる」「地域特有の食材が生み出す新たな食文化」などの視点で分類し、最も適切な組み合わせを選ぶ問題である。
<選択肢>
①【正】
aに「日本でインド料理店・イタリア料理店が見られること」、bに「アボカドやカニ風味かまぼこを巻いた寿司」といった例を当てはめると、グローバルに多様な料理を楽しめる面と、その料理が地域で独自に進化した例が示される。会話文の流れ(世界の様々なものを口にできるようになった/その地域特有の食の変化)と合致しやすい。
②【誤】
aとbを逆に割り当ててしまったり、郷土料理に多言語対応をするのが「ローカル食材を使った新たな食文化」の例として扱われたりするなど、内容に齟齬が生じる。
③【誤】
「現地の牛乳からつくられたヨーグルト」をaに入れてしまうなど、会話の文脈ではaが“世界の様々な料理が広がっている”例であるのに対し、bが“地域特有の食材や調理法が生み出す派生”という観点なので、噛み合わない。
④【誤】
aに郷土料理店の多言語対応、bに寿司の派生など、一部は正しいが組合せの順番を違えて解釈しているため、全体としては当てはまりにくい。
問12:正解3
<問題要旨>
食文化に関する課題や解決策を検討するなかで、地域の伝統や持続可能な発展をいかに両立させるかが問われる問題である。選択肢には学校教育や国際協力、多国籍企業による農産物提供、輸出型プランテーション作物の転換などが挙げられ、どれが「各地域の食文化に配慮しつつ持続可能な発展につながる施策」としてふさわしいかを判断する。
<選択肢>
①【誤】
「学校教育のなかで、地産地消を通して食文化を学習し、地域の風土や伝統文化に対する理解を深める」のは、持続可能な視点でも有効なアプローチと考えられる。
②【誤】
「国際協力として食料援助を行う際に、井戸整備や現地の伝統的食生活に配慮した援助をする」というのも、現地の文化と持続可能性に目を向けたアプローチとして妥当である。
③【正】(=「適当でない」)
「多国籍企業である穀物メジャーが、農産物の生産・流通や種子・肥料開発などを手がけ、通年で安価な穀物を供給する」は、一見安定供給にはプラス面があるものの、現地の食文化や伝統的な農業形態を圧迫しかねない。生物多様性の損失や、地域の農家が企業依存になるリスクなども指摘され、必ずしも持続可能な発展と両立しない場合があるため「地域の食文化に十分配慮した策」とは言いにくい。
④【誤】
「輸出型のプランテーション作物が続けられてきた地域で、自給作物の栽培を進め、安定的に食料を確保する」は、過度なモノカルチャー依存から脱却し、地域での食料主権を回復する方策とも言える。持続的な発展を重視する観点からは評価されることが多い。
第3問
問13:正解5
<問題要旨>
インド亜大陸においては、地域によって雨季・乾季の時期や農作物の栽培状況が異なる。本問では、図1の月降水量グラフ(ア・イ・ウの月ごとの最大降水量と最小降水量)と、図2に示されたA〜Cの地点、さらにE州における農作物(小麦・米)の生産量の多寡を組み合わせて、地点Aに該当する月降水量の特徴とE州で多く生産される作物が何かを整合的に判断する問題である。モンスーンの到来時期やヒンドスタン平原・デカン高原の気候特性、作物カレンダーなどが手がかりとなる。
<選択肢>
①【誤】
Aに該当する月降水量を「ア」としたうえで、E州で小麦が多い等の組み合わせをしているが、アの降水ピーク(7月)や少雨期(12月)が、地図上のAの実際の気候とずれている可能性がある。またE州の位置と農作物の傾向(小麦・米のいずれが優勢か)との組み合わせも合わない。
②【誤】
Aの降水量パターンを「ア」ではなく「イ」や「ウ」に当てはめるなどの錯誤がある場合、最大降水月や雨量の大きさがAのモンスーン期と食い違う。さらにE州で優勢な作物(小麦が多いか、米が多いか)を取り違えているため、矛盾が生じる。
③【誤】
月降水量グラフの割り当ては一部正しいが、E州の農作物が米中心と設定したり、逆に小麦中心とするなど組み合わせで食い違いが生まれるケース。インド内陸部やパンジャーブ・ハリヤーナー州といった地域の農業特性を踏まえる必要がある。
④【誤】
Aに当てはめた月降水量グラフとE州の作物の対応が逆転していたり、降雨ピークの時期がモンスーン開始月と合わない場合が多い。資料の棒グラフ(ア・イ・ウ)を正しく見分けると、この選択肢は整合性に欠ける。
⑤【正】
Aの地点は図1で最も降水量が多い月が8月または7月付近に集中し、逆に12月ごろが少雨になるパターンと合致する。またE州(パンジャーブやハリヤーナーなどが想定される地域)では灌漑を利用しながら小麦生産が盛んで、北西インドの主要作物になっている。これらの要素を総合すると、Aに対応する月降水量グラフは「ウ」、E州の多産作物は小麦という組み合わせが最も適切である。
⑥【誤】
「ア」「イ」「ウ」の区別を誤認したり、E州で米が多産とするなど、地域やモンスーンの特徴から外れた想定をしているため、矛盾が出てくる。
問14:正解3
<問題要旨>
インドの農業生産量の推移や耕地面積、さらに灌漑面積の拡大などを示す資料(図3・図4)をもとに、高校生同士が「生産量が増加した主な要因は何か」、「州ごとに灌漑率や小麦収量に大きな差があるのはなぜか」と話し合う場面である。会話中の空欄「カ」と「キ」に適切な語句を当てはめる問題で、灌漑拡大や品種改良など“緑の革命”にかかわるポイントが話題となる。
<選択肢>
①【誤】
「カ」を「耕地面積」とし、「キ」を「改良した品種」などとすると、インドの生産拡大が“単に耕地を増やしたから”だと結論づけることになりやすい。しかし、資料をみると耕地面積の変化だけでなく灌漑率や品種の改良も関わっており、会話の文脈と整合しない可能性がある。
②【誤】
「カ」が「耕地面積」、「キ」が「在来の品種」とする場合、資料から読み取れる生産性の向上要因(高収量品種の導入・灌漑拡大)が反映されず、会話で言及される「高収量を実現する仕組み」と合わない。
③【正】
インドの生産量が増大した主因の一つが「灌漑面積の拡大(カ)」であり、州によっては高収量を支える「改良した品種(キ)」が普及しているため差が生まれる、という筋道が資料と会話文に合致する。1950年代以降の緑の革命では品種改良と灌漑インフラ整備が重要だったとされ、会話の流れとも対応する。
④【誤】
「カ=灌漑面積」「キ=在来の品種」とすると、かえって生産量増加や高収量との関係が矛盾を起こす。改良された品種(HYVなど)の導入こそが生産性向上の決め手となったため、会話の文脈とは合わない。
問15:正解4
<問題要旨>
南アジアの代表的な料理として、小麦粉を練って薄く伸ばし焼く「平焼きパン」(写真1)や、羊肉などを串に刺して炭火で焼く「串焼き」(写真2)が挙げられている。これらにカレーや各種スパイスが添えられる点が特徴で、そのスパイスの主な生産地が古くからどこに存在したかを読み取り、空欄「サ」「シ」に該当する地域を正しく組み合わせる問題である。
<選択肢>
①【誤】
「サ=東南アジア」「シ=サハラ以南アフリカ」という割り当て。東南アジアにも豊富なスパイスがあるが、問題文の文脈(植民地時代前から主にどこで生産されていたか、カレー文化の広がりなど)を考えると、南アジアや西アジアとの関連を軽視しているため不適切。
②【誤】
「サ=東南アジア」「シ=南アジア・東南アジア」のように同じ地域を繰り返す場合、写真の料理が主にインドやパキスタンなど南アジア圏で食べられてきた歴史やスパイスの産地を踏まえても、やや混乱が生じる。
③【誤】
「サ=西アジア」「シ=サハラ以南アフリカ」といった割り当て。確かに中東方面にも串焼き料理はあるものの、写真の説明ではカレーとの組み合わせも示唆されており、南アジア特有の食文化を主軸に考えるほうが自然である。
④【正】
「サ=西アジア」「シ=南アジア・東南アジア」という組み合わせが、カレー文化や串焼き料理が共有されてきた広がり方を踏まえた場合、最も妥当といえる。さらにコショウやターメリックなどの香辛料は古くから南アジア〜東南アジアにかけて広範に生産されてきたため、植民地時代以前からの歴史とも合致する。
問16:正解4
<問題要旨>
インドにおける2010年の1人当たり年間供給量(kg)と、1970年の値を100とした指数が示されており、J・K・Lはいずれかが「家禽の肉」「牛肉」「牛乳(乳製品含む)」に該当する。どれがどの食料品を指しているかをデータ(供給量の多寡・指数の増減)から読み取って、組み合わせを選ぶ問題である。インドにおける食習慣(宗教上の理由で牛肉が少ない地域がある等)や畜産事情(乳製品消費量の増加など)がヒントとなる。
<選択肢>
①【誤】
Jを家禽の肉、Kを牛肉、Lを牛乳とすると、資料における数値(J=49.8kg、K=1.8kg、L=1.5kg)や指数(J=215、K=1082、L=63)との整合が乏しい。たとえば鶏肉など家禽類がここまで多いかどうかや、牛肉が指数1082になるかなど、ギャップが出てしまう。
②【誤】
J・K・Lを逆に割り振った結果、インドでの実態(宗教的背景から牛肉の供給量が限られる一方、乳製品消費は比較的多い等)と合わなくなるケース。数値の意味をよく検討すると破綻をきたす。
③【誤】
KやLのどちらかを家禽の肉として当てはめているが、資料中の「1.8kg」「1.5kg」という数字に対して「家禽の肉が1.5kgしかないのか、あるいは牛乳が1.8kgなのか」など、どこかで不自然になる。
④【正】
J=49.8kgかつ指数215、K=1.8kgかつ指数1082、L=1.5kgかつ指数63というデータから判断すると、たとえば「牛乳はインドで日常的に使われるため1人当たりの供給量が比較的多くなりそう」「牛肉は宗教的理由で数値が小さいが、増加率が大きいこともあり得る」「家禽の肉は近年需要が急伸している」などの現状を考慮して組み合わせると、この選択肢が矛盾なく説明できる。
⑤【誤】
JとKを牛肉と家禽類で入れ替えたり、Lを牛乳以外とするなどすると、消費量や指数の増減パターンが合わない。
⑥【誤】
似たような割り当てに見えても、一部で牛肉・家禽肉・牛乳を取り違えており、インドの食文化・数値データとずれる。
問17:正解1
<問題要旨>
南アジアの気候や歴史の影響を受けた伝統的な衣服として、「サリー」(写真3)や「マドラスチェック」(写真4)の紹介がなされる。サリーは一枚の布を腰に巻きつけるように着付ける女性の伝統衣装であり、マドラスチェックはチェンナイ(旧マドラス)で職人が織った綿織物などを指す。選択肢では、空欄「タ」に通気性か保温性か、「チ」に綿織物か毛織物かを当てはめる問題である。
<選択肢>
①【正】
サリーは薄手の布をまとい、風通しを良くして涼しく過ごせる点が特徴(タ=通気性が高い)。一方マドラスチェックは主に綿織物として発達しており、現地の気候に合わせて汗を吸い取りやすく乾きやすい生地を使用(チ=綿織物)。この2点の組み合わせが南アジアの暑い気候に適しているため、最も妥当である。
②【誤】
「タ=通気性が高い」「チ=毛織物」を組み合わせると、マドラスチェックが毛織物という誤った設定になってしまう。インドの暑熱な気候条件からすれば毛織物は一般的ではなく、整合しづらい。
③【誤】
「タ=保温性が高い」「チ=綿織物」とすると、サリーが寒冷地向けの衣装になってしまい、南アジアの気候と矛盾する。
④【誤】
「タ=保温性が高い」「チ=毛織物」の組み合わせであれば、より寒冷地や高地向けの素材を想定する内容になる。写真3・4の説明やインドの高温多湿な平野部での着用文化と一致しない。
問18:正解4
<問題要旨>
経済成長が著しいインドでは、州ごとの経済格差が大きく、人口増加率や都市化率、失業率にも差が生じている。本問では図5・表2に示されたX州とY州の人口増加率や都市人口率、都市の失業率などを読み取り、その背景について述べた文章の下線部①〜④のうち「適当でないもの」を見抜く問題である。たとえば、工業や情報通信産業が発達している西部〜北部の大都市圏では人口集中や雇用機会の増大が顕著だが、東部や内陸部では農村人口の減少や経済発展の遅れが見られる場合が多い。
<選択肢>
①【誤】
「自動車産業や情報通信技術産業が伸びるなかで、西部〜デリー周辺にかけて経済発展が顕著な地域がみられる」というのは、グジャラート州やマハーラーシュトラ州、首都デリー近郊などで工業が進む現実に合致する。
②【誤】
「X州のように都市人口が集積し、雇用機会が豊富である」は、表2をみるとX州の都市化率や失業率の数値が全国平均よりも特徴的であるため、一部の先進州で進む都市集中を指している可能性があり、矛盾しない。
③【誤】
「東部や内陸部に経済発展の遅れがみられ、Y州では農村の人口が減少している」という内容は、表2の人口増加率や都市化率を考えると、Y州のように農村から都市へ人が流出している例と結び付けられ、妥当性がある。
④【正】(=「適当でないもの」)
「多くの地域で大都市化が進んでいるため、Y州では農村の人口がむしろ増え、都市部が減少している」などの記述を含むとすれば、資料から見えるY州の都市人口率や人口増加率の推移と反することになる。あるいは“都市の失業率”などから見ても、農村人口が自然に増えるとは限らず、むしろ労働を求めて都市流入が起きる例が多い。したがって、④が「背景説明として不適当」と判断される。
第4問
問19:正解1
<問題要旨>
東アジア・東南アジアにおけるコンテナ貨物取扱量上位10位までの港の分布と、その2000年と2018年の変化を読み取る問題である。図1中のA・Bはそれぞれいずれかの年に対応し、さらに凡例「ア」は上位1~5位の港、「イ」は6~10位の港を表している。問題文では「2018年の図」と「上位1~5位の港を示す記号」を正しく組み合わせる選択肢を選ぶよう求めている。
<選択肢>
①【正】
図Aが2018年の分布図であり、上位1~5位の港を示す記号が「ア」となっている組合せ。近年、中国沿岸部(上海・寧波周辺)やシンガポールなどの港がさらに上位を占め、アジアのコンテナ貨物取扱量が増大している点から、Aの分布・記号との対応が最も自然である。
②【誤】
図Aを2018年としながら、上位1~5位の港を「イ」に当てているため、凡例の位置関係や2018年時点のランキングとの対応がずれる可能性が高い。
③【誤】
図Bを2018年とし、上位1~5位の港を「ア」としている。もしBが2018年であれば、中国沿岸部の主要港湾がさらに増えているはずだが、AとBの比較からはBのほうが古いパターンを示していると推察される。
④【誤】
図Bを2018年とし、上位1~5位の港を「イ」とした組合せ。こちらも②・③同様に、ランキング上位を占める港の位置・数と整合しない。
問20:正解5
<問題要旨>
2017年における国間の旅行客移動(出入国)の大きさを示した図2を読み取り、「カ」「キ」「ク」のいずれかがイギリス・イタリア・オーストラリアのどれに該当するかを判断する問題である。矢印の太さは旅行者数の規模(50万人未満~300万人以上)を表しており、地理的な位置関係や言語・文化圏などもヒントとなる。
<選択肢>
①【誤】
「カ=イギリス、キ=イタリア、ク=オーストラリア」という割り当て。欧州間の移動規模に注目すると、イタリアとイギリスの間では相当数の往来が想定されるが、図中の矢印の太さや他国との流れが合わない場合がある。
②【誤】
「カ=イギリス、キ=オーストラリア、ク=イタリア」とする。オセアニアと欧州の距離などから読み取る移動人数の違いと、実際の渡航者数の矢印規模が合わなくなる可能性が高い。
③【誤】
「カ=イタリア、キ=イギリス、ク=オーストラリア」という割り当て。イギリスとイタリア間の往来などは多いが、オセアニアとの往来規模とも併せて検討すると、図の矢印パターンが一致しにくい。
④【誤】
「カ=イタリア、キ=オーストラリア、ク=イギリス」。オーストラリアは地理的に離れており、欧州との行き来規模は限定的な場合が多い。矢印の向き・太さを詳細に見ると、違和感が残る。
⑤【正】
「カ=オーストラリア、キ=イギリス、ク=イタリア」という組合せ。オーストラリアは人口が約2500万人規模であり、イギリスやイタリアとは異なる旅行者数の特徴がある。イタリアはEU域内移動や観光客の流動が大きく、イギリスも国際旅行者数が多い一方で、オーストラリアとの往来は相対的に少なめなど、図の矢印の太さに比較的合致しやすい。
⑥【誤】
「カ=オーストラリア、キ=イタリア、ク=イギリス」という割り当ては、イギリス~イタリア間の往来規模に合わず、矢印の太さ分布を説明しきれないと考えられる。
問21:正解3
<問題要旨>
日本国内に在留するブラジル国籍・ベトナム国籍の居住者数の推移を表す図3(J・K)や、都道府県別の分布を示す図4(M・N)を照合し、「JやKが示す居住者数の推移はどちらがブラジル人かベトナム人か」「MやNの地図はどちらがブラジル人分布かベトナム人分布か」を総合的に判定する問題である。それぞれの国の在留状況は経済的事情や技能実習生の受入れ状況などによって変動しており、特定地域への集住傾向も見られる。
<選択肢>
①【誤】
JとKの折れ線グラフ、MとNの地図を逆に対応づけていたり、ブラジル国籍者の大きな増減時期やベトナム国籍者の最近の急伸を取り違えている可能性がある。
②【誤】
グラフは正しく読み取っていても、都道府県別の分布図(M、N)でベトナム国籍が集中的に多い地域(工業地帯や都市部)と、ブラジル国籍が多い地域(自動車産業など)を混同し、整合性を欠くケース。
③【正】
Jの折れ線は過去に30万人超に達したブラジル国籍の在留者がやや減少し、近年やや横ばいまたはわずかに減少傾向。一方Kは大きく増加し、2018年にはJを上回る規模になっている。この特徴はベトナム国籍の在留者数が急増している現状に合致する。また、M・Nの都道府県別割合を比べると、中部地方など工業地帯にブラジル人が集住しており、首都圏や全国各地に技能実習や留学でベトナム人が多い地図と整合する。
④【誤】
グラフ・地図ともにブラジル国籍とベトナム国籍を反対に割り当てたり、一部しか合っていなかったりして、全体でみると不整合が生じる。
問22:正解2
<問題要旨>
図5は、1965年・1990年・2015年の各年における「一人当たり一次エネルギー消費量(横軸)」と「都市人口率(縦軸)」の変化を国別に示している。ここではアメリカ合衆国、サウジアラビア、中国、ドイツの4ヵ国の位置を①~④のプロットに対応づけ、どれがドイツに該当するかを判断する問題である。ドイツは先進工業国でありながら、近年は省エネや再生可能エネルギー利用の拡大を進めている点がヒントとなる。
<選択肢>
①【誤】
1965年・1990年・2015年を通じて一人当たりエネルギー消費量がかなり高く、都市人口率も高水準で推移している場合、アメリカ合衆国の特徴と見なせる可能性がある。ドイツより大きな消費量に位置づけられることが多いため、①は米国のプロットと考えられる。
②【正】
ドイツは欧州の先進国として都市人口率が高めだが、一人当たりエネルギー消費量は米国ほどではなく、欧州内では比較的高い方といえる。その値が1965年から2015年にかけて省エネ努力や産業構造の変化などによりある程度抑制されていると考えられる。このプロットが②に相当する。
③【誤】
劇的にエネルギー消費量が増加し、都市人口率も上昇している様子が顕著であれば急成長を続ける中国や石油輸出国などに該当する可能性があり、ドイツとは様相が異なる。
④【誤】
石油資源に頼るサウジアラビアなど、エネルギー消費量が大きく上昇するパターンが当てはまる場合があるが、ドイツは比較的早期から工業化しているため消費量推移は異なる。
問23:正解4
<問題要旨>
砂漠化のメカニズムと影響を図6の模式図で整理し、そこに至る要因(過放牧・過耕作・過伐採・大規模灌漑など)や、気候変動・乾ばつといった自然要因、さらに「P」という状態と「X」「Y」による悪影響の流れが示されている。下線部に該当する文言「サ(家族計画の推進による人口構造の変化)」「シ(市場経済の拡大による資源需要の増加)」のどちらがPの状態やXに該当するかを組み合わせて考える問題である。
<選択肢>
①【誤】
Pを「家族計画の推進」、Xを「塩類の集積」としているが、図6を見るとPはより大きな社会・経済的要因を背景に過度な開発や乱用が進む状況を表している可能性があり、単に人口政策だけを示すとは考えにくい。
②【誤】
Pに「家族計画」、Xに「土壌侵食の増加」とするなど、経済活動や過剰な需要が駆動力となる説明と乖離する。Pは政治的・経済的な不安定性や市場要因が関連している図示であり、「家族計画」とは結び付きにくい。
③【誤】
Pを「市場経済の拡大による資源需要の増加」としつつ、Xを「塩類の集積」としているパターン。しかし図からは、植生が減少して地力が落ちる等の過程がXに当たる可能性が高く、塩害の発生と直接結び付ける描写はY方向のようにも見受けられる。
④【正】
Pが「市場経済の拡大による資源需要の増加(シ)」、Xが「土壌侵食の増加」となる組み合わせ。図6では政治的・経済的な不安定や市場拡大が過放牧・過耕作・大規模灌漑を促し、植生減少から土壌流出などにつながるプロセスを示している。塩害や地下水位上昇(Y)とは別に、Xは土壌の侵食を指す例が多いため、この選択肢が最も整合的である。
問24:正解3
<問題要旨>
地球的課題に対処するために、先進国と発展途上国が互いの経済格差を是正しつつ、環境や社会の持続可能性を守るための取り組みを考える問題である。選択肢には、排出ガス規制や生物多様性保全、公平な貿易取引、食品ロス削減などが挙げられており、それぞれ「先進国と途上国の経済格差を是正しながら、持続的な社会をつくる」観点に照らして適切かを判断する。
<選択肢>
①【誤】
「市街地での自動車利用を制限し、排出ガスを抑制する」といった環境対策は先進都市部でも重要だが、直ちに発展途上国との経済格差是正につながるわけではないため、グローバルな視点での経済的格差の解消には直接結び付きにくい。
②【誤】
「自然環境を保全する取り組みを行い、生物多様性を守る」は重要施策だが、先進国・途上国間の経済格差を埋めることに結び付くかというと、やや間接的である。主に環境保護の観点に留まる可能性がある。
③【正】
「農産物や製品などの商取引が、生産者にとって公正な価格で行われるような仕組みをつくる」は、フェアトレードなどを通じて途上国の生産者にも適正な利益が還元されるようにする取り組みであり、先進国・途上国の格差是正と持続可能性に直結する施策といえる。
④【誤】
「廃棄される食品の量を減らすために、流通を効率的に管理するシステムをつくる」も非常に重要な取り組みだが、主に食品ロス削減による資源活用や環境負荷低減を狙った策であり、必ずしも先進国と途上国の経済格差解消に直結しない。
第5問
問25:正解3
<問題要旨>
京都府における1990~2015年の人口増減率と、2015年の京都市への通勤率の分布を示した図2を読み取り、どのような傾向が読み取れるかを問う問題である。宮津市など府北部の自治体では人口減少が顕著なところが多い一方、京都市への通勤率が高い自治体には増減率にも変化があり、そこから読み取れる選択肢を選ぶ。
<選択肢>
①【誤】
「宮津市とその隣接市町村ではすべての市町村が15%以上減少している」という断定は、地図をよく見ると必ずしも当てはまらない。15%以上減っている自治体も多いが、隣接市町村の一部には減少率がやや小さい例も含まれる。
②【誤】
「京都市への通勤率が10%以上の市町村はすべて人口が増加している」という表現は、地図を確認すると10%以上の通勤率でも減少している自治体が含まれている可能性があり、一律に増加というわけではないため誤り。
③【正】
「京都市への通勤率が3~10%の市町村の中に、人口が増加している市町村がある」という趣旨。地図からは、3~10%の通勤率を示すエリアの一部で微増~増加している自治体を確認でき、この文が最も正しい内容となっている。
④【誤】
「京都市への通勤率が3%未満の市町村の中に、人口が増加している市町村がある」との表記。3%未満の通勤率を示す地域は、概して比較的遠隔地であり、人口減少が顕著なところが多い。地図からは増加の自治体がほぼ見当たらないため、誤りといえる。
問26:正解2
<問題要旨>
宮津市の中心部はかつて城下町であったことが紹介され、江戸時代の絵図と現代の地形図を比較することで町の変化を読み取る問題である。図3には宮津城の本丸や大手橋付近、そして周辺の町割りが示されており、それを元に「江戸時代と現在のどの部分が継承され、あるいは変わっているか」を推測して正しい選択肢を選ぶ。
<選択肢>
①【誤】
「新浜から本町にかけての地区には、江戸時代は武家屋敷が広がっていた」という記述。実際に武家屋敷は城郭内周辺や内堀に近い場所に集中するケースが多いと考えられ、新浜付近は港町として機能していた可能性が高い。よって誤りの可能性がある。
②【正】
「体育館の北側にある船着き場は、近代以降の埋立地に立地している」という内容。江戸期の地図と現在の地形図を照らし合わせると、海岸線が埋め立てられた跡や岸壁が拡張された場所に公共施設が建設されていることが確認できる。この変化は妥当な推測として合致する。
③【誤】
「宮津駅から大手橋までの道は、江戸時代から城下町の主要道であった」とするもの。江戸時代の主要道は城郭周辺や本町筋などが中心だが、現在の鉄道駅周辺は近代以降に整備された可能性が高く、当時からの道とは限らない。
④【誤】
「宮津城の本丸の跡地には、市役所を含む官公庁が立地している」という表記。地図を見ると、現在の市役所など行政施設は必ずしも本丸跡に建っているわけではなく、城郭の位置とやや異なる場所に所在している。
問27:正解2
<問題要旨>
宮津湾と阿蘇海の間にある「天橋立」は、砂州が連なった観光地として有名である。図4には「A・B・C・D」の地点が記され、そこから天橋立を撮影した写真(①~④)が示されている。問題は「地点Aに該当する写真がどれか」を正しく選び、矢印の方向との対応を確認するものである。
<選択肢>
①【誤】
写真①は砂州の向こうに広がる海域を、比較的高所から斜めに見下ろしているように見える。これがA地点の方角かどうか、図4の地形と比較すると別の場所の可能性が高い。
②【正】
写真②は大きく広がる湾の奥に集落や海面が見え、その背後に山々が連なっている景観。地点A付近の方角から撮影すると、このような構図になると推察される。図4の地形関係や湾の広がり具合が合致するため、Aに対応する写真といえる。
③【誤】
写真③はより手前に人家や建物の屋根が映り、天橋立を横から見るような角度が想定される。これはAから見下ろす構図ではない可能性が高い。
④【誤】
写真④も構図が違い、海岸線や砂州の位置関係がA地点の視界と一致しない。別の地点からの撮影と考えられる。
問28:正解6
<問題要旨>
天橋立周辺の土産物店で売られていた「丹後ちりめん」について調査した内容が資料1にまとめられている。丹後ちりめんは緯糸や製織工程によって独特の風合いを持つ絹織物であり、かつては和服需要に支えられていたが、近年は洋服地やインテリア向け、海外市場進出も進む。この変化を支える要素として、選択肢には「乾いた/湿った」「安価/高価」「大量生産/ブランド化」などのキーワードが組み合わされている。
<選択肢>
①~⑤【誤】
いずれも組み合わせが「乾燥した気候で安価大量生産」あるいは「乾燥した気候で高価ブランド化」などになっており、資料にある丹後地方の気候(比較的湿度が高い日本海側)や製織の高付加価値化戦略などとは矛盾するケース。
⑥【正】
「湿った(適度な湿度があり絹織物の加工に向く)、高価、ブランド化」の組み合わせ。丹後ちりめんは絹素材で上質な和装・洋装の生地として売り出され、高級品としてのブランド化戦略も進められている。湿潤な気候は絹の織り作業で糸が切れにくいなど利点があるため、資料の内容と合致する。
⑦・⑧【誤】
「湿った×安価大量生産」や「湿った×高価大量生産」などの組合せであり、近年はブランド化路線や高付加価値製品への転換を図っていることから外れてしまう。
問29:正解4
<問題要旨>
宮津市北部の山間部にある集落での聞き取り調査(資料2)をもとに、廃校や伝統行事の継承、都市と農村の交流、移住者の増加などの状況をまとめ、そこから導かれる考察を問う問題。若年層流出や少子化が背景にあるほか、伝統文化や農村ツーリズムの取り組みが行われている様子が読み取れる。
<選択肢>
①【誤】
「小学校の廃校は、若年層の継続的な流出や少子化が背景にある」という主張は資料の内容とも整合性が高い。
②【誤】
「住民の高齢化により、伝統的な文化や技術の担い手が減少している」も、資料にある大刀振り神事の途絶などの状況を説明するうえで妥当。
③【誤】
「自然環境への関心の高まりによって、都市と農村の交流が進む」は、NPOや地元企業による棚田の保全や、ブナ林・湿地などを巡るツアーが行われている背景を示すもので、資料の内容と合っている。
④【正】(=「適当でないもの」)
「移住者の増加は、宮津市における人口の郊外化が背景にある」とするが、資料を見ると山間部への移住はむしろ農業・狩猟や古民家再生を目的とする例が多い。郊外化(都市近郊への住宅地拡大)とは性質が異なり、直接の背景としては不適切と言える。
問30:正解1
<問題要旨>
2018年の外国人延べ宿泊者数(図5)と、その2013年比(増加率)を都道府県別に示した地図を読み取り、大阪府と沖縄県のどちらに該当するかを考察する問題である。さらに空欄サには、東京都に次いで多い宿泊者数を示す府県名を入れ、空欄シには外国人旅行者の消費行動や観光の特徴を述べる文(FまたはG)を組み合わせる。
<選択肢>
①【正】
「大阪府 - F」とする組合せ。2018年の宿泊者数ランキングで東京都に次ぐのは大阪府であり、近年は温泉や農山漁村を訪れる体験型観光も行われているが、大阪の都市圏ではショッピングやテーマパークだけでなく、近郊の農村や漁村に体験型ツアーを設けるケースもある。この説明(F:温泉や農山漁村を訪ねて体験型観光を楽しむ)を大阪に対応させるのが最も自然と考えられる。
②【誤】
「大阪府 - G」や「沖縄県 - F」など逆の組合せは、沖縄県ではリゾート型観光が主流でショッピングやテーマパークもあるが、大阪府の状況とは合致しにくい。
③【誤】
「沖縄県 - F」を東京都に次ぐ多い宿泊者数と結び付けるのは、実際には沖縄県は訪問者数が伸びているものの、大阪との比較では大阪が上位。さらにFの内容が温泉や農山漁村観光という趣旨で、沖縄の観光実態とも一致しにくい。
④【誤】
「沖縄県 - G」や「大阪府 - F」のうち別の組み方をしているため、地図上の都道府県ランキングや外国人観光行動の特徴と食い違う。