2026年度 大学入学共通テスト 本試験「化学」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2026年度 大学入学共通テスト 本試験「化学」の全設問解説です。試験時間60分・100点満点。第1問から第5問までの5大問すべてが必答で、配点は各大問20点。解答番号は1から33までで、全33項目を1つずつ解説します。
なお、この回は問題冊子とともに問題訂正が示されています。理科『化学』111ページ、第2問 問3 の上から4〜5行目が「ある一定の温度において」「N₂O₅の分解反応の反応速度式が」と訂正され、反応速度式 v = k[N₂O₅] の v が N₂O₅ の分解速度を表すことが明示されました。解答番号9 は、この訂正後の文で読みます。
内容は、第1問・第2問が理論化学、第3問が無機化学と物質の構成、第4問が有機化合物と高分子、第5問が「身のまわりに使われている化学物質」を題材にした総合問題です。第1問は結合と液性・コロイドの凝析・固体の溶解度・六方最密構造の断面と単元をまたぐ小問集合で、後半は「アルコールロケット」を題材に状態方程式と燃焼の量的関係をつなぎます。第2問はエンタルピー・電気分解・反応速度・緩衝液、第3問は酸化数・リン・水和物の組成・遷移元素・硫化物の沈殿と系統分離、第4問は芳香族の反応・構造決定・異性体・糖類・ペプチドとアミノ酸の滴定、第5問はクロムとケイ素、ポリイミドの単量体決定、香料エステルの構造決定とエステル化の平衡です。
つまずきやすいのは3か所です。第1問 問4は選択肢の6つの図がどれも似た形で、面 abcd の上に層Bの原子が乗るかどうかを原子の並びから決めなければなりません。第3問 問5a は溶解度積から [H⁺]² を出したあとに平方根を取る手順を落とすと、その値がそのまま選択肢①にあるため引っかかります。第5問 問2b はジアミンの −NH₂ がパラ位かメタ位かという微差で選択肢が分かれます。配点4点の問題が各大問に1〜2問ずつ置かれているので、知識で即答できる問題を素早く片づけて、計算と図の読み取りに時間を残す配分が有効です。
第1問(必答) 小問集合(結合と液性・コロイドの凝析・固体の溶解度・六方最密構造・気体の状態方程式)
理論化学の小問集合で配点20点。問1〜問4は結合と液性、コロイドの凝析、固体の溶解度、結晶格子の断面と単元をまたいで並び、問5は「アルコールロケット」を題材に気体の状態方程式と燃焼の量的関係をつなげます。問5a・問5b が各4点で、ここが得点の分かれ目です。
問1:正解 ②(解答番号1/配点3)
<問題要旨>
記述ア「二重結合をもつ」と記述イ「水に溶けた水溶液は弱い酸性を示す」の両方に当てはまる化合物を、臭化水素・二酸化炭素・エチレン(エテン)・過酸化水素の4つから選ぶ設問です。
<考え方>
構造と液性を別々に確かめ、両方を満たすものだけを残します。二重結合の有無は電子式を書けば決まり、液性は水に溶けたときに何が生じるかで決まります。片方だけを満たす選択肢がまぎれているので、必ず2条件を通すこと。
① 臭化水素 HBr H−Br の単結合だけで二重結合をもたない 水溶液は強酸 → ア・イ ともに不適 ② 二酸化炭素 CO₂ 電子式は O=C=O で二重結合を2つもつ → ア に適 CO₂ + H₂O ⇌ H₂CO₃ ⇌ H⁺ + HCO₃⁻ で弱い酸性 → イ に適 ③ エチレン(エテン)CH₂=CH₂ 二重結合はもつ(ア に適)が、水に溶けにくく酸性を示さない → イ が不適 ④ 過酸化水素 H₂O₂ H−O−O−H で、O−O も O−H もすべて単結合 → ア が不適 (弱い酸性は示すので イ だけを満たす) よって ②
④は「酸化剤にも還元剤にもなる」という性質から強い反応性を連想しやすいですが、O−O は単結合です。「両方に当てはまる」条件なので、片方だけ合う③・④を切れるかどうかが分かれ目になります。
問2:正解 ③(解答番号2/配点3)
<問題要旨>
粘土のコロイド粒子を含む溶液に直流電圧をかけて電気泳動を行うと、コロイド粒子は陽極側に移動しました。このコロイド溶液に、モル濃度がすべて同じ5種類の水溶液を加えたとき、最も少量でコロイド粒子を凝析させられるものを選ぶ設問です。
<考え方>
凝析はコロイド粒子の電荷を打ち消す反対符号のイオンによって起こり、そのイオンの価数が大きいほど少量で効きます。まず電気泳動の向きから粒子の電荷を決め、次に各水溶液が生じる反対符号のイオンの価数を比べます。
【粒子の電荷】 コロイド粒子は陽極側に移動した → 粒子は負に帯電(負のコロイド) 【効くのは陽イオン、価数が大きいほど少量で凝析】 ① 塩化カリウム KCl 陽イオン K⁺ 1価 ② 塩化カルシウム CaCl₂ 陽イオン Ca²⁺ 2価 ③ 塩化アルミニウム AlCl₃ 陽イオン Al³⁺ 3価 ← 最大 ④ 硫酸マグネシウム MgSO₄ 陽イオン Mg²⁺ 2価 ⑤ グルコース C₆H₁₂O₆ 非電解質でイオンを生じない → 凝析させられない よって ③
④は陰イオンが2価ですが、負のコロイドに効くのは陽イオンの側です。陰イオンの価数に目を奪われないこと。水酸化鉄(III)のような正のコロイドなら、逆に陰イオンの価数で比べます。
問3:正解 ③(解答番号3/配点3)
<問題要旨>
固体の溶解度に関連する4つの記述から、誤りを含むものを選ぶ設問です。溶解度の温度変化、水和物の溶解度の表し方、飽和溶液中の状態、再結晶が扱われています。
<考え方>
溶解度は「飽和溶液で溶解する速さと析出する速さが等しい」という溶解平衡の上に定義されます。平衡は止まっているのではなく、両向きの変化が同じ速さで進んでいる状態だ、という点に戻れば決まります。
① 正 固体の溶解度は、多くの物質で温度が高くなるほど大きくなる ② 正 水和水(結晶水)をもつ物質の溶解度は、水 100 g に溶ける無水物(無水塩)の 質量(g)の最大値で表す。これが溶解度の約束 ③ 誤 飽和溶液と溶質の固体が共存する状態は溶解平衡であり、 固体から溶け出す速さと溶液から析出する速さが等しいだけ。 イオンや分子の移動そのものは起きているので「移動することはない」は誤り ④ 正 温度による溶解度の差を利用して固体を析出させ、物質を精製する方法を 再結晶という よって ③
「平衡=変化が止まった状態」と覚えてしまうとこの選択肢を選べません。溶解平衡・電離平衡・気液平衡はいずれも両向きの変化が続く動的な平衡です。
問4:正解 ①(解答番号4/配点3)
<問題要旨>
層Aと層Bの2層の繰り返しでできる六方最密構造の結晶格子(図1)について、六角柱の4つの頂点 a、b、c、d を含む面を考え、その面に原子の中心が正しく配置された図を6つの選択肢から選ぶ設問です。図1には、層A・層Bを上から見た原子の配列も添えられています。
<考え方>
「面 abcd の上に中心がある原子だけを拾う」という一点で決まります。上から見た図で a と b は六角形の向かい合う頂点なので、線分 ab は六角形の中心を通ります。この線の上に中心がある原子を層A・層Bそれぞれで数えれば、選択肢は1つに絞れます。
【面 abcd はどこか】 上から見た層Aの図で、a は六角形の左の頂点、b は右の頂点=向かい合う2頂点 → 線分 ab は六角形の中心を通る。面 abcd はこの線を含む鉛直な長方形 (下面の d と c も同じく向かい合う2頂点) 【層A(上面と下面)の原子】 層Aは、六角形の6つの頂点と中心に原子の中心がある 線分 ab の上に中心があるのは a の原子・中心の原子・b の原子 の3個 六角形の1辺は原子2個分の長さなので、ab は原子4個分。 その上に2個分の間隔で3個が並ぶ、と数えても同じ → 上の辺に3個(a・中心・b)、下の辺に3個(d・中心・c) 【層B(中段)の原子】 層Bの原子は、層Aの原子3個がつくる三角形のくぼみに入る 上から見た層Bの図のとおり、六角柱の中にある層Bの原子は3個で、 その中心は線分 ab の上側に2個、下側に1個 ずれている → 面 abcd の上に中心がある層Bの原子は 0個 【断面に現れる原子】 上の辺に3個、下の辺に3個、中段には原子の中心がない よって ①
③や⑤は中段に原子を描いていますが、層Bの原子は層Aの原子のすきまに入るので、層Aの原子が並ぶ線の真上には来ません。⑥のように上下の辺を2個にしてしまうのは、a と b を隣り合う頂点と読み違えた場合です。上から見た図で a と b が向かい合っているかどうかを最初に確かめてください。
問5a:正解 ③(解答番号5/配点4)
<問題要旨>
上面を切り取ったスチール缶にプラスチック製のカップをかぶせた容器(内部の体積 249 mL)にエタノールを入れ、蒸発させてから点火してカップを飛ばす「アルコールロケット」の実験です(図2)。エタノールを入れる前の容器内部は 1.0×10⁵ Pa、27 ℃ の空気で満たされているとして、その空気中の O₂ と過不足なく反応するエタノールの物質量を求めます。空気は体積比で O₂ 20 %、N₂ 80 % とします。
<考え方>
気体の状態方程式 PV = nRT で容器内の空気の物質量を出し、体積比から O₂ の物質量を取り出して、式(1)の係数比で換算します。同温・同圧の混合気体では体積比=物質量比なので、20 % をそのまま物質量の割合として使えます。
【容器内の空気の物質量】 n = PV/(RT) = (1.0×10⁵ Pa × 0.249 L)/(8.3×10³ Pa·L/(K·mol) × 300 K) = 2.49×10⁴/(2.49×10⁶) = 1.00×10⁻² mol 【空気中の O₂ の物質量】 体積比 20 % = 物質量の割合 20 % n(O₂) = 1.00×10⁻² × 0.20 = 2.0×10⁻³ mol 【過不足なく反応するエタノールの物質量】 C₂H₅OH + 3 O₂ → 2 CO₂ + 3 H₂O より C₂H₅OH : O₂ = 1 : 3 n(C₂H₅OH) = 2.0×10⁻³ × (1/3) = 6.67×10⁻⁴ ≒ 6.7×10⁻⁴ mol よって ③
温度は 27 ℃ = 300 K、体積は 249 mL = 0.249 L に直してから代入します。気体定数が Pa·L/(K·mol) で与えられているので、体積を L に、圧力を Pa にそろえるのが安全です。O₂ の物質量 2.0×10⁻³ mol をそのまま答えると④を選んでしまいます。
問5b:正解 ②(解答番号6/配点4)
<問題要旨>
27 ℃ の空気で満たされた容器に、問5a で求めた量の液体エタノールを加えて点火します。カップが飛ぶ直前に内部の気体の温度が 3600 K になったとして、そのときの容器内部の圧力が大気圧の何倍になるかを求めます。気体の物質量の総和はエタノールを入れる前の 1.13 倍に増加し、燃焼の前後で容器内部の体積は変化しないものとされています。
<考え方>
体積が一定なので、状態方程式 PV = nRT から圧力は物質量と絶対温度の積に比例します。物質量の倍率と絶対温度の倍率をかけるだけで、圧力の倍率が出ます。熱が缶やカップにほとんど伝わらない(瞬時に起こる)という条件は、3600 K をそのまま使ってよい、という意味です。
【使う関係】 V 一定より P = (R/V)·nT → P ∝ nT 【エタノールを入れる前】 n₁ = 1.00×10⁻² mol、T₁ = 300 K、P₁ = 1.0×10⁵ Pa(大気圧) 【カップが飛ぶ直前】 n₂ = 1.13 n₁、T₂ = 3600 K 【圧力の倍率】 P₂/P₁ = (n₂/n₁)×(T₂/T₁) = 1.13 × (3600/300) = 1.13 × 12 = 13.56 ≒ 1.4×10¹ 倍 【検算】物質量の総和を直接数えても 1.13 倍になる N₂ 1.00×10⁻² × 0.80 = 8.0×10⁻³ mol(燃焼で変化しない) O₂ 2.0×10⁻³ mol はすべて消費されて 0 CO₂ 6.67×10⁻⁴ × 2 = 1.33×10⁻³ mol H₂O(水蒸気)6.67×10⁻⁴ × 3 = 2.00×10⁻³ mol 合計 = 8.0×10⁻³ + 1.33×10⁻³ + 2.00×10⁻³ = 1.13×10⁻² mol 1.13×10⁻²/1.00×10⁻² = 1.13 倍 … 与えられた値と一致 よって ②
温度の比は必ず絶対温度で取ります。27 ℃ をそのまま使って 3600/27 としてしまうと 1.5×10² となり、④を選ぶことになります。物質量の増加分(1.13倍)を掛け忘れると 12 倍で①に近づくので、2つの倍率を両方かけることを忘れないこと。
第2問(必答) 小問集合(反応エンタルピー・電気分解・反応速度式・緩衝液と電離平衡)
エンタルピー、電気分解、反応速度、緩衝液という理論化学の4テーマで配点20点。問2・問3が各4点の計算問題、問4は緩衝作用を電離平衡の言葉で説明させる3連問(a〜c)です。問3は問題訂正が示された設問で、訂正後の文で読むと反応速度が N₂O₅ の分解速度に確定します。
問1:正解 ③(解答番号7/配点3)
<問題要旨>
エンタルピーに関する4つの記述から、誤りを含むものを選ぶ設問です。反応エンタルピーの定義、生成物と反応物の差、溶解エンタルピーの符号、ヘスの法則による生成エンタルピーの求め方が扱われています。
<考え方>
符号の約束(発熱なら負、吸熱なら正)に戻れば決まります。反応エンタルピーは「生成物のエンタルピーの和」から「反応物のエンタルピーの和」を引いた差なので、発熱する変化では値が負になります。
① 正 一定圧力下で化学反応に伴って放出あるいは吸収する熱量が反応エンタルピー ② 正 反応エンタルピー =(生成物のエンタルピーの和)−(反応物のエンタルピーの和) ③ 誤 溶解のときに発熱した=系がエンタルピーを失った → 溶解エンタルピーは負の値。「正の値」が誤り ④ 正 ヘスの法則で求められる C(黒鉛) + O₂ → CO₂ ΔH₁(黒鉛の燃焼エンタルピー) CO + (1/2) O₂ → CO₂ ΔH₂(CO の燃焼エンタルピー) 上の式から下の式を引くと C(黒鉛) + (1/2) O₂ → CO ΔH = ΔH₁ − ΔH₂ これが CO の生成エンタルピー よって ③
NaOH の溶解のように発熱する溶解では溶解エンタルピーが負、硝酸アンモニウムのように吸熱する溶解では正になります。④の CO は、黒鉛から直接つくると CO₂ が混ざるため生成エンタルピーを直接測れず、ヘスの法則を使う代表例です。
問2:正解 ③(解答番号8/配点4)
<問題要旨>
硝酸銀 AgNO₃ と硝酸鉛(II) Pb(NO₃)₂ の混合水溶液を炭素電極で電気分解したところ、陰極に析出した金属として Ag が 108 mg、Pb が 207 mg 含まれていました。陰極に流れた電子がすべて Ag と Pb の析出に使われたとして、電気分解に用いた電気量を求めます。ファラデー定数は 9.65×10⁴ C/mol です。
<考え方>
「金属の物質量 × イオンの価数 = 必要な電子の物質量」で決まります。Ag⁺ は1価、Pb²⁺ は2価なので、同じ物質量が析出しても必要な電子の数が違います。2つを別々に出して足し、ファラデー定数を掛けます。
【Ag の析出】原子量 Ag = 108 Ag⁺ + e⁻ → Ag n(Ag) = 0.108 g ÷ 108 g/mol = 1.00×10⁻³ mol 必要な電子 = 1.00×10⁻³ × 1 = 1.00×10⁻³ mol 【Pb の析出】原子量 Pb = 207 Pb²⁺ + 2 e⁻ → Pb n(Pb) = 0.207 g ÷ 207 g/mol = 1.00×10⁻³ mol 必要な電子 = 1.00×10⁻³ × 2 = 2.00×10⁻³ mol 【電子の合計と電気量】 n(e⁻) = 1.00×10⁻³ + 2.00×10⁻³ = 3.00×10⁻³ mol Q = 3.00×10⁻³ mol × 9.65×10⁴ C/mol = 289.5 ≒ 290 C よって ③
108 mg、207 mg はそれぞれ原子量と同じ数値なので、物質量はどちらも 1.00×10⁻³ mol です。ここで Pb を1価としてしまうと電子は合計 2.00×10⁻³ mol となり、②の193 C を選ぶことになります。価数を掛けるのを忘れないこと。
問3:正解 ①(解答番号9/配点4)
<問題要旨>
気体の五酸化二窒素 N₂O₅ が 2 N₂O₅ → 4 NO₂ + O₂ のように分解する反応について、体積が一定の容器内で 10 分ごとに測った N₂O₅ のモル濃度、各区間の平均濃度、濃度変化が表1に与えられています。反応速度式が v = k[N₂O₅] と表されるとして、この温度での k の値を求める設問です。なお、問題冊子とともに示された問題訂正により、この問3の本文は「ある一定の温度において」「N₂O₅の分解反応の反応速度式が」と改められており、v は N₂O₅ の分解速度を表します。
<考え方>
反応速度は単位時間あたりの濃度変化の大きさ、すなわち v = −Δ[N₂O₅]/Δt で求めます。各区間でこの v を同じ区間の平均濃度で割れば k が出るので、いくつかの区間で計算して値がそろうことを確かめます。
【使う式】 v = −Δ[N₂O₅]/Δt v = k[N₂O₅](平均濃度を代入) → k = v ÷(平均濃度) 【0〜10 min】平均濃度 10.8×10⁻³、濃度変化 −3.2×10⁻³ v = 3.2×10⁻³/10 = 3.2×10⁻⁴ mol/(L·min) k = 3.2×10⁻⁴ ÷ (10.8×10⁻³) = 2.96×10⁻² /min 【10〜20 min】平均濃度 8.0×10⁻³、濃度変化 −2.4×10⁻³ k = 2.4×10⁻⁴ ÷ (8.0×10⁻³) = 3.00×10⁻² /min 【20〜30 min】平均濃度 5.9×10⁻³、濃度変化 −1.8×10⁻³ k = 1.8×10⁻⁴ ÷ (5.9×10⁻³) = 3.05×10⁻² /min 【30〜40 min】平均濃度 4.4×10⁻³、濃度変化 −1.2×10⁻³ k = 1.2×10⁻⁴ ÷ (4.4×10⁻³) = 2.73×10⁻² /min 【40〜50 min】平均濃度 3.3×10⁻³、濃度変化 −1.0×10⁻³ k = 1.0×10⁻⁴ ÷ (3.3×10⁻³) = 3.03×10⁻² /min どの区間でも k ≒ 3.0×10⁻² /min にそろう よって ①
k の単位が /min と示されていることも手がかりです。v = k[N₂O₅] の形なら、v の単位 mol/(L·min) を濃度 mol/L で割るので、k の単位は時間の逆数になり濃度は残りません。表の「平均濃度」と「濃度変化」がすでに与えられているので、割り算1回で終わります。
問4a:正解 ④(解答番号10/配点3)
<問題要旨>
電解質ア NH₄NO₃、イ NaHSO₄、ウ NaHCO₃ を水溶液にしたとき、酸性を示すものをすべて正しく選んでいる組合せを答える設問です。
<考え方>
塩の水溶液の液性は、もとの酸と塩基の強弱で決まります。強酸と弱塩基の塩なら酸性、弱酸と強塩基の塩なら塩基性。酸性塩は、残っている H が電離する向きと、加水分解の向きのどちらが優勢かで判断します。
ア NH₄NO₃ 強酸 HNO₃ と弱塩基 NH₃ からできた塩 NH₄⁺ + H₂O ⇌ NH₃ + H₃O⁺ の加水分解で酸性 → 当てはまる イ NaHSO₄ 強酸 H₂SO₄ の水素が1個残った酸性塩 HSO₄⁻ ⇌ H⁺ + SO₄²⁻ の電離がよく進み酸性 → 当てはまる ウ NaHCO₃ 弱酸 H₂CO₃ と強塩基 NaOH からできた酸性塩 HCO₃⁻ + H₂O ⇌ H₂CO₃ + OH⁻ の加水分解が電離より優勢で塩基性 → 当てはまらない 酸性を示すのは ア・イ よって ④
「酸性塩だから酸性」ではありません。NaHSO₄ と NaHCO₃ はどちらも酸性塩ですが液性は逆で、もとの酸が強酸か弱酸かで決まります。
問4b:正解 ②(解答番号11/配点3)
<問題要旨>
弱酸 HA とその塩 MA(M はアルカリ金属)を同じ濃度で含む混合水溶液に少量の H⁺ を加えたときの変化を説明する文章の、空欄エ・オに当てはまる語句の組合せを選びます。エは式(3) HA ⇌ H⁺ + A⁻ の平衡が移動する向き、オはそのときの [HA] と [A⁻] の増減です。
<考え方>
ルシャトリエの原理で決まります。H⁺ を加えることは右辺の物質を増やすことなので、平衡はそれを減らす向き、つまり左へ移動します。左へ移動すれば A⁻ が H⁺ と結びついて HA になるので、2つの濃度の増減も同時に決まります。
【式(3)】HA ⇌ H⁺ + A⁻ 少量の H⁺ を加える → 右辺の H⁺ が増える → ルシャトリエの原理により、H⁺ を減らす向き=左へ移動 (エ = 左側) 【左へ移動したときの各成分】 A⁻ + H⁺ → HA が進むので [HA] 増加 [A⁻] 減少 (オ = [HA]が増加し,[A⁻]が減少) 加えた H⁺ が HA に取り込まれるため [H⁺] の増加が抑えられ、pH はほぼ一定に保たれる よって ②
緩衝作用がはたらく前提は、HA と A⁻ がどちらも多量に存在していることです。設問の直前に「この混合水溶液中には H⁺ と比較して HA と A⁻ が多量に存在している」と書かれているのが、その前提の確認になっています。
問4c:正解 ②(解答番号12/配点3)
<問題要旨>
少量の酸や塩基を加えても緩衝作用を示し、pH がほとんど変化しない水溶液を4つから選ぶ設問です。いずれも 0.1 mol/L の溶液を決まった体積比で混合したものです。
<考え方>
緩衝液の条件は「弱酸とその塩」または「弱塩基とその塩」が共存することです。混合後に何が残るかを中和の量的関係で確かめ、弱酸(または弱塩基)が残っているものだけが該当します。
① 0.1 mol/L アンモニア水 : 0.1 mol/L 塩酸 = 1 : 1 物質量が等しく完全に中和して NH₄Cl だけになる 弱塩基 NH₃ が残らない → 緩衝液ではない ② 0.1 mol/L アンモニア水 : 0.1 mol/L 塩酸 = 2 : 1 NH₃ 2 に対し HCl 1 なので半分だけ中和される NH₃ と NH₄Cl が 1 : 1 で共存 → 弱塩基とその塩の緩衝液 → 該当 ③ 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 : 0.1 mol/L 塩酸 = 1 : 1 強塩基と強酸が完全に中和して NaCl だけ(中性) → 緩衝液ではない ④ 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 : 0.1 mol/L 酢酸水溶液 = 1 : 1 完全に中和して CH₃COONa だけになり、酢酸が残らない → 緩衝液ではない (酢酸を 2 : 1 で多くすれば酢酸/酢酸ナトリウムの緩衝液になる) よって ②
④の水溶液は加水分解によって塩基性を示しますが、塩基性であることと緩衝作用があることは別です。酸を加えたときに受け止める相手(この場合は酢酸イオンの相方である酢酸)が残っていないので、pH は大きく動きます。
第3問(必答) 小問集合(酸化数・リン・水和物の組成・遷移元素・硫化物の沈殿と系統分離)
無機化学と物質の構成の小問集合で配点20点。問1〜問4は酸化数、リンの単体と化合物、水和物の組成からの原子量決定、遷移元素の性質と、知識で決まる設問が並びます。問5は硫化水素による金属イオンの分離で、溶解度積の計算(a、4点)と系統分離の操作の組合せ(b、4点)の2問構成です。
問1:正解 ①(解答番号13/配点3)
<問題要旨>
水素原子の酸化数が水 H₂O とは異なる化合物を、NaH、NH₃、H₂O₂、HF の4つから選ぶ設問です。
<考え方>
化合物中の水素の酸化数は通常 +1 で、例外は金属水素化物の −1 だけです。結合相手が金属か非金属かで見分けられます。
H₂O の水素 O が −2、化合物全体で 0 なので H は +1 ① NaH Na(アルカリ金属)は +1 なので H は −1 … H₂O と異なる ② NH₃ N が −3 なので H は +1 … H₂O と同じ ③ H₂O₂ 過酸化物なので O は −1。2×(+1) + 2×(−1) = 0 で H は +1 … 同じ ④ HF F は −1 なので H は +1 … 同じ よって ①
H₂O₂ は酸素の酸化数が −2 ではなく −1 になる例ですが、水素は +1 のままです。「酸素が例外なら水素も例外」と考えないこと。水素が −1 になるのは NaH、CaH₂ のような金属水素化物です。
問2:正解 ②(解答番号14/配点3)
<問題要旨>
リンに関する5つの記述から、誤りを含むものを選ぶ設問です。生体内での存在、単体の保存方法、燃焼生成物、十酸化四リンの用途、リン酸の価数が扱われています。
<考え方>
黄リン(白リン)と赤リンの性質の違いが軸です。空気中で自然発火するため水中に保存するのは黄リンで、赤リンは常温の空気中で安定です。
① 正 リンは核酸(DNA・RNA)や ATP に含まれ、生体に必須の元素 ② 誤 空気中で自然発火するため水中に保存するのは黄リン(白リン) 赤リンは毒性が低く常温の空気中で安定で、マッチの側薬などに使われる ③ 正 黄リンも赤リンも乾燥空気中で燃焼すると十酸化四リン P₄O₁₀ を生じる ④ 正 P₄O₁₀ は吸湿性が強く乾燥剤に用いられる (水を加えて加熱するとリン酸 H₃PO₄ になる) ⑤ 正 リン酸 H₃PO₄ は H⁺ を3個放出できる3価の酸 よって ②
黄リンは猛毒で自然発火するため水中保存、赤リンは安定で毒性が低い、という対で覚えておくと即答できます。両者は同じ元素からなる単体なので互いに同素体です。
問3:正解 ①(解答番号15/配点3)
<問題要旨>
金属M(原子量 m)の硫酸塩が、組成式 MSO₄·7H₂O(式量 m + 222)の水和物をつくります。この水和物 2.46 g を加熱して無水物 MSO₄(式量 m + 96)にしたところ、質量が 1.20 g になりました。この金属Mの原子量 m を求める設問です。
<考え方>
加熱で失われるのは水和水だけなので、水和物と無水物の物質量は等しくなります。与えられた式量 m + 222 と m + 96 をそのまま使って物質量の等式を立て、m について解けば決まります。
【水和物と無水物の物質量は等しい】 MSO₄·7H₂O と MSO₄ は 1 : 1 で対応するので 2.46/(m + 222) = 1.20/(m + 96) 【m について解く】 2.46(m + 96) = 1.20(m + 222) 2.46 m + 236.16 = 1.20 m + 266.4 (2.46 − 1.20) m = 266.4 − 236.16 1.26 m = 30.24 m = 24.0 【検算】m = 24 として戻す 水和物の式量 = 24 + 222 = 246 → 2.46 g は 1.00×10⁻² mol 無水物の式量 = 24 + 96 = 120 → 1.00×10⁻² mol は 1.20 g … 一致 失われた水 = 2.46 − 1.20 = 1.26 g H₂O の分子量 = 1.0×2 + 16 = 18 → 1.26/18 = 7.0×10⁻² mol 水和物 1.00×10⁻² mol に対して水は 7 倍 … 7水和物と整合 よって ①
式量が m を含む形で与えられているので、原子量表を引かずに立式できます。使うのは「加熱で減った質量は水の質量」「水和物と無水物の物質量は等しい」の2点だけです。
問4:正解 ⑤(解答番号16/配点3)
<問題要旨>
遷移元素に関する5つの記述から、誤りを含むものを選ぶ設問です。典型元素との区分、周期表で現れ始める周期、金属元素かどうか、最外殻電子の数、錯イオンの配位数が扱われています。
<考え方>
遷移元素の区分と電子配置の特徴を確かめ、最後に錯イオンの配位数の実例で切ります。配位数は2・4・6と複数あることを具体例で言えるかどうかが決め手です。
① 正 周期表で典型元素以外が遷移元素、という区分のとおり ② 正 第1〜3周期には遷移元素がなく、Sc から始まる第4周期で初めて現れる ③ 正 第6周期までの遷移元素はすべて金属元素 ④ 正 第4周期の遷移元素では内側の殻の d に電子が入っていくため、 最外殻電子の数は1個または2個 ⑤ 誤 錯イオンの配位数は4だけではない 配位数 2 [Ag(NH₃)₂]⁺(直線形) 配位数 4 [Zn(NH₃)₄]²⁺(正四面体形)、[Cu(NH₃)₄]²⁺(正方形) 配位数 6 [Fe(CN)₆]³⁻、[Fe(CN)₆]⁴⁻(正八面体形) よって ⑤
「〜のみである」という言い切りは、反例を1つ挙げられれば落とせます。配位数は中心イオンごとに 2(Ag⁺)、4(Zn²⁺、Cu²⁺)、6(Fe³⁺、Fe²⁺)と押さえておくと、形(直線形・正四面体形・正方形・正八面体形)とセットで思い出せます。
問5a:正解 ③(解答番号17/配点4)
<問題要旨>
H₂S を通じた水溶液中の [S²⁻] と [H⁺] の関係が、電離定数 K を用いて [S²⁻] = K[H₂S]/[H⁺]² と与えられています。0.010 mol/L の Fe²⁺ を含む水溶液から FeS の沈殿を得たいとき、[H₂S] が 0.10 mol/L のもとで [H⁺] がいくらより小さい必要があるかを求めます。K = 1.0×10⁻²¹ (mol/L)²、FeS の溶解度積は 2.5×10⁻⁹ (mol/L)² です。
<考え方>
沈殿が生じる条件は「イオンの濃度の積が溶解度積を超えること」です。まず必要な [S²⁻] を溶解度積から出し、それを与えられた式に代入して [H⁺] の条件に書き換えます。最後に平方根を取ることを忘れないのが要点です。
【沈殿が生じる条件】 [Fe²⁺][S²⁻] > Ksp = 2.5×10⁻⁹ (mol/L)² [Fe²⁺] = 0.010 mol/L より [S²⁻] > 2.5×10⁻⁹/0.010 = 2.5×10⁻⁷ mol/L 【[S²⁻] を [H⁺] で表す】 [S²⁻] = K[H₂S]/[H⁺]² = (1.0×10⁻²¹ × 0.10)/[H⁺]² = 1.0×10⁻²²/[H⁺]² 【[H⁺] の条件に直す】 1.0×10⁻²²/[H⁺]² > 2.5×10⁻⁷ [H⁺]² < 1.0×10⁻²²/(2.5×10⁻⁷) = 4.0×10⁻¹⁶ [H⁺] < √(4.0×10⁻¹⁶) = 2.0×10⁻⁸ mol/L よって ③
平方根を取り忘れると、その値 4.0×10⁻¹⁶ がそのまま選択肢①にあるため引っかかります。得られた [H⁺] < 2.0×10⁻⁸ mol/L は中性より塩基性側という条件で、「FeS は塩基性にしないと沈殿しない」という系統分離の知識とも合致します。
問5b:正解 ④(解答番号18/配点4)
<問題要旨>
Ag⁺、K⁺、Zn²⁺、Fe³⁺ を含む酸性水溶液から4種類の金属イオンを分離する手順が図1に示されています。H₂S、水酸化ナトリウム NaOH 水溶液、アンモニア水を用い、操作Ⅰで沈殿とろ液に分け、沈殿を操作Ⅱで沈殿A(赤褐色)とろ液B(無色)に、ろ液を操作Ⅲで沈殿C(白色)とろ液D(無色)に分けます。操作Ⅰ〜Ⅲの組合せを選ぶ設問です。
<考え方>
図の枝分かれから、操作Ⅰは4種類を2種類ずつに分けなければならない、という条件が読み取れます。3つの試薬それぞれについて「何が沈殿し、何がろ液に残るか」を数え、2対2に分かれるものを操作Ⅰに決めてから、沈殿の色(赤褐色・白色)で残りを確定します。
【操作Ⅰを「何種類が沈殿するか」で絞る】 ・H₂S を通じる(もとの溶液は酸性) 酸性で沈殿するのは Ag₂S(黒色)だけ。Zn²⁺ は酸性では沈殿しない → 沈殿1種・ろ液3種。2対2にならない ・アンモニア水を過剰に加える Fe(OH)₃ は沈殿するが、Ag⁺ は [Ag(NH₃)₂]⁺、Zn²⁺ は [Zn(NH₃)₄]²⁺ となって溶ける → 沈殿1種・ろ液3種。2対2にならない ・NaOH 水溶液を過剰に加える Fe(OH)₃(赤褐色)が沈殿、Ag⁺ は Ag₂O として沈殿(過剰の NaOH に溶けない) Zn²⁺ は [Zn(OH)₄]²⁻ となって溶け、K⁺ もそのまま溶液中 → 沈殿2種(Fe・Ag)、ろ液2種(Zn・K)。2対2に分かれる ← 操作Ⅰ 【操作Ⅱ:沈殿(Fe(OH)₃ + Ag₂O)を分ける】 アンモニア水を過剰に加える Ag₂O は [Ag(NH₃)₂]⁺ となって溶ける → 無色のろ液B(Ag) Fe(OH)₃ は溶けずに残る → 赤褐色の沈殿A(Fe)… 色が一致 【操作Ⅲ:ろ液([Zn(OH)₄]²⁻ + K⁺)を分ける】 H₂S を通じる ろ液は過剰の NaOH で塩基性なので ZnS が沈殿 → 白色の沈殿C(Zn)… 色が一致 K⁺ は硫化物の沈殿をつくらない → 無色のろ液D(K) 【まとめ】 操作Ⅰ = NaOH 水溶液を過剰に加える 操作Ⅱ = アンモニア水を過剰に加える 操作Ⅲ = H₂S を通じる よって ④
H₂S による硫化物の沈殿は液性で変わります。Zn²⁺ は酸性では沈殿せず、中性〜塩基性で白色の ZnS になります。この手順で H₂S を最後に回せるのは、操作Ⅰのろ液が過剰の NaOH で塩基性になっているからです。Ag⁺ が過剰の NaOH には溶けず、過剰のアンモニア水には溶ける、という違いも操作Ⅰと操作Ⅱを決める鍵になります。
第4問(必答) 有機化合物と高分子(芳香族の反応・構造決定・異性体・糖類・ペプチドとアミノ酸の滴定)
有機化合物と高分子で配点20点。芳香族化合物の反応の正誤、4条件からの構造決定、C₄H₈ の異性体の数え上げ、糖類の正誤、グルタチオンの構造とグリシンの滴定曲線と並びます。9つの解答番号に20点が分かれており、問2と問4が各4点、問3と問5b は1〜2点ずつです。
問1:正解 ①(解答番号19/配点3)
<問題要旨>
芳香族化合物の4つの反応(反応物・試薬・条件・生成物が構造式で示されたもの)のうち、正しいものを選ぶ設問です。アルカリ融解、クロロベンゼンの加水分解、ナトリウムフェノキシドと CO₂ の反応、サリチル酸と無水酢酸の反応が並んでいます。
<考え方>
フェノールの工業的製法と、サリチル酸まわりの反応を思い出し、生成物の構造が合っているかを1つずつ確かめます。どの選択肢も「試薬と条件は正しいが、生成物の構造だけが違う」形で作られているので、生成物に注目します。
① 正 ベンゼンスルホン酸ナトリウム + NaOH(固)を高温で融解(アルカリ融解) → ナトリウムフェノキシド C₆H₅ONa スルホ基 −SO₃Na が −ONa に置き換わる。フェノールの製法として正しい ② 誤 クロロベンゼン + NaOH 水溶液を高温・高圧 → Cl が −ONa に置き換わってナトリウムフェノキシドになる 選択肢は Cl が残ったまま −ONa がついた形で、置換が起きていない ③ 誤 ナトリウムフェノキシド + CO₂ を高温・高圧(コルベ・シュミット反応) → サリチル酸ナトリウム(−ONa が残り、その隣に −COONa が入る) 選択肢は −ONa が消えて安息香酸ナトリウムになっていて誤り ④ 誤 サリチル酸 + 無水酢酸(濃硫酸) → フェノール性の −OH がアセチル化されてアセチルサリチル酸(アスピリン) 選択肢はサリチル酸メチルで、これはメタノールと反応させて −COOH を エステル化したときの生成物。無水酢酸では得られない よって ①
③は「−OH は残り、その隣(オルト位)に −COONa が入る」が要点です。④はサリチル酸に反応点が2つ(フェノール性 −OH とカルボキシ基 −COOH)あり、無水酢酸なら −OH 側、メタノールなら −COOH 側が反応する、という使い分けが問われています。
問2:正解 ⑤(解答番号20/配点4)
<問題要旨>
Ⅰ 分子式が C₆H₁₀O である、Ⅱ 臭素水を脱色する、Ⅲ 不斉炭素原子をもつ、Ⅳ ヨードホルム反応を示す、の4つの記述すべてに当てはまる化合物を、6つの構造式から選ぶ設問です。
<考え方>
条件を構造の特徴に言い換えてから当てはめます。Ⅱは炭素間の二重結合か三重結合をもつこと、Ⅲは4つの異なる基が結合した炭素をもつこと、Ⅳは CH₃CO− または CH₃CH(OH)− の部分構造をもつこと。Ⅰの分子式で2つ落とせるので、まず炭素数と水素数を数えます。
【条件の言い換え】 Ⅰ C₆H₁₀O(C 6個・H 10個・O 1個) Ⅱ 炭素間の二重結合または三重結合をもつ Ⅲ 4つの異なる基が結合した炭素(不斉炭素原子)をもつ Ⅳ CH₃CO− または CH₃CH(OH)− をもつ 【各選択肢】 ① CH₃−CO−CH₂−C≡C−CH₃ C 6、H = 3 + 2 + 3 = 8 → C₆H₈O … Ⅰ が不適 ② CH₃−CO−CH(CH₃)−C≡C−H C 6、H = 3 + 1 + 3 + 1 = 8 → C₆H₈O … Ⅰ が不適 ③ 環に C=C と −OH をもつ化合物(シクロヘキセノール) C₆H₁₀O(Ⅰ 適)、C=C をもつ(Ⅱ 適) −OH のついた炭素は、環をたどる向きで二重結合までの距離が違うので不斉炭素 (Ⅲ 適)。しかし CH₃CO− も CH₃CH(OH)− もない … Ⅳ が不適 ④ シクロヘキサノン C₆H₁₀O(Ⅰ 適)だが炭素間の不飽和結合をもたない … Ⅱ が不適 ⑤ CH₃−CH(OH)−CH₂−C≡C−CH₃ C 6、H = 3 + 1 + 1(OH) + 2 + 3 = 10 → C₆H₁₀O … Ⅰ 適 C≡C をもつ … Ⅱ 適 −OH のついた炭素に −OH、−H、−CH₃、−CH₂C≡CCH₃ の4種が結合 … Ⅲ 適 CH₃CH(OH)− をもつ … Ⅳ 適 → 4条件すべてに当てはまる ⑥ CH₃−CO−CH₂−CH₂−CH=CH₂ C₆H₁₀O(Ⅰ 適)、C=C をもつ(Ⅱ 適)、CH₃CO− をもつ(Ⅳ 適) しかし4つの異なる基が結合した炭素がない … Ⅲ が不適 よって ⑤
⑥はⅠ・Ⅱ・Ⅳを満たすので、不斉炭素の確認を飛ばすと選んでしまいます。不斉炭素の判定は、その炭素から出る4本の結合の先をすべて書き出して見比べるのが確実です。ヨードホルム反応を示すのは CH₃CO− をもつケトンと CH₃CH(OH)− をもつアルコール(およびアセトアルデヒド)です。
問3:正解 ③(解答番号21/配点2)
<問題要旨>
分子式 C₄H₈ をもつ化合物のうち、アルケンである構造異性体がいくつあるかを答える設問です(このあとの解答番号22 では、そのうち立体異性体がある構造異性体の数を答えます)。
<考え方>
C₄H₈ は飽和鎖状の C₄H₁₀ より水素が2個少ないので、不飽和度が1です。したがって二重結合が1つあるか、環が1つあるかのどちらか。ここで問われているのはアルケンだけなので、炭素骨格と二重結合の位置で数え上げます。
【不飽和度の確認】 飽和鎖状アルカン C₄H₁₀ より H が2個少ない → 二重結合1つ または 環1つ シクロブタンとメチルシクロプロパンはシクロアルカンなので、 「アルケンである構造異性体」からは除く 【炭素骨格と二重結合の位置で数える】 直鎖 C−C−C−C CH₂=CH−CH₂−CH₃ 1-ブテン CH₃−CH=CH−CH₃ 2-ブテン 枝分かれ(C 3個の鎖に CH₃ が1つついた骨格) CH₂=C(CH₃)−CH₃ 2-メチルプロペン(イソブテン) この骨格では、二重結合を端に置く形しかない アルケンである構造異性体は 3 個 よって ③
シクロブタンとメチルシクロプロパンを数に入れると5になります。設問が「アルケンである構造異性体」と限定していることを見落とさないこと。
問3:正解 ①(解答番号22/配点1)
<問題要旨>
解答番号21 で数えた C₄H₈ のアルケンの構造異性体のうち、立体異性体がある構造異性体がいくつあるかを答える設問です。
<考え方>
アルケンの立体異性体はシス−トランス異性体です。二重結合は回転できないため、二重結合の両端の炭素がそれぞれ「異なる2つの基」をもつときだけ、2通りの並び方が区別できます。3つの構造異性体を1つずつ確かめます。
【判定の条件】 C=C の両端の炭素が、どちらも「異なる2つの基」をもつこと 【1-ブテン】CH₂=CH−CH₂−CH₃ 左端の炭素につくのは H と H(同じ) → 立体異性体なし 【2-ブテン】CH₃−CH=CH−CH₃ 左端は CH₃ と H、右端も CH₃ と H(どちらも異なる2つ) → シス形とトランス形の2つがある … 立体異性体あり 【2-メチルプロペン】CH₂=C(CH₃)−CH₃ 左端の炭素につくのは H と H(同じ)、右端も CH₃ と CH₃(同じ) → 立体異性体なし 立体異性体があるのは 2-ブテン だけで 1 個 よって ①
C₄H₈ の異性体をすべて別に数えると、シス-2-ブテンとトランス-2-ブテンを分けて4種のアルケン+2種のシクロアルカンで6種になります。「構造異性体の数」と「立体異性体を含む異性体の数」は別なので、設問がどちらを聞いているか毎回確かめてください。
問4:正解 ④(解答番号23/配点4)
<問題要旨>
糖類に関する5つの記述のうち、下線部に誤りを含むものを選ぶ設問です。二糖の結合の名称、マルトースの生成、トレハロースが銀鏡反応を示さない理由、アミロースのヨウ素デンプン反応、もち米のデンプンの組成が扱われています。
<考え方>
デンプンを構成するのは α-グルコース、セルロースを構成するのは β-グルコース、という基本の区別で決まります。下線が引かれた部分だけを判定し、下線のない部分は正しいものとして読み進めます。
① 正 単糖2分子が脱水縮合してできた結合をグリコシド結合という ② 正 マルトース C₁₂H₂₂O₁₁(麦芽糖)は、デンプンをアミラーゼで加水分解して生じる ③ 正 トレハロース C₁₂H₂₂O₁₁ は2分子のグルコースが、還元性を示す部分どうしで 脱水縮合しているため還元性を示さず、銀鏡反応を示さない ④ 誤 アミロースは多数の α-グルコースが結合した直鎖で、らせん構造をとる 下線部の「β-グルコース」が誤り(β-グルコースからなるのはセルロース) らせんの内側に I₂ や I₃⁻ が取り込まれて青〜濃青色になる、という 説明のしかた自体は正しい ⑤ 正 もち米のデンプンは、ほぼ100 % がアミロペクチン よって ④
うるち米のデンプンはアミロースを2割ほど含み、もち米はほぼアミロペクチンだけ、という違いを押さえておくと⑤の判断が速くなります。アミロースが直鎖でらせん、アミロペクチンが枝分かれ、という対応も一緒に確認しておきましょう。
問5a:正解 ⑥(解答番号24/配点3)
<問題要旨>
グルタチオンと酸化型グルタチオンの構造式が与えられ、ア「アミド結合が三つある」、イ「水溶液は酸性を示す」、ウ「生成した酸化型グルタチオンの −S−S− 結合をジスルフィド結合という」のうち、正しいものをすべて正しく選んでいる組合せを答える設問です。
<考え方>
構造式の中の結合と官能基を数えるだけで決まります。アは −CO−NH− の個数、イは −COOH と −NH₂ の個数の差、ウは名称の確認です。構造式が与えられているので、記憶に頼らず図の上で数えます。
【グルタチオンの構造(与えられた構造式)】 HOOC−CH(NH₂)−CH₂−CH₂−CO−NH−CH(CH₂SH)−CO−NH−CH₂−COOH (グルタミン酸・システイン・グリシンがつながったトリペプチド) ア 誤 −CO−NH− は グルタミン酸とシステインの間に1つ システインとグリシンの間に1つ 合わせて 2つ。「三つ」ではない イ 正 −COOH が2つ(グルタミン酸側の端とグリシン側の端) −NH₂ が1つ 酸としてはたらく基が塩基としてはたらく基より多いので、水溶液は酸性 ウ 正 2つの −SH が酸化されてできた −S−S− をジスルフィド結合という 酸化型グルタチオンでは、2分子がこの結合でつながっている 正しいものは イ・ウ よって ⑥
アミノ酸が n 個つながったペプチドのアミド結合(ペプチド結合)は n − 1 個です。トリペプチドなら2個。−SH が酸化されて −S−S− になり、還元されると −SH に戻る、という往復がグルタチオンが還元剤としてはたらく仕組みです。
問5b:正解 ③(解答番号25/配点1)
<問題要旨>
グリシンの酸性水溶液に NaOH 水溶液を滴下したときの pH 変化が図1に与えられています。図1の点A(NaOH の滴下量 0 mL、pH は約1.7)で、グリシンが最も多く存在する構造を4つの構造式から選ぶ設問です。
<考え方>
アミノ酸は水溶液の pH によって、陽イオン・双性イオン・陰イオンのどれが多いかが変わります。強い酸性では、まわりに H⁺ が多いので −COOH は電離せず、−NH₂ は H⁺ を受け取って −NH₃⁺ になっていると考えます。
【点Aの条件】 NaOH の滴下量 0 mL、pH は約1.7(グラフの左端)= 強い酸性 【強い酸性でのグリシン】 −COOH まわりに H⁺ が多いので電離しない → −COOH のまま −NH₂ H⁺ を受け取る → −NH₃⁺ → 正の電荷だけをもつ陽イオン H₃N⁺−CH₂−COOH が最も多い よって ③
問5b:正解 ②(解答番号26/配点1)
<問題要旨>
図1の点B(NaOH の滴下量 10 mL、pH = 6)で、グリシンが最も多く存在する構造を選ぶ設問です。
<考え方>
滴下量 10 mL は、pH が急に立ち上がる1段目の中央、すなわち1段目の中和点です。ここでは −COOH の H⁺ が中和されきり、−NH₃⁺ はまだ H⁺ を放していないので、正と負を1つずつもつ双性イオンが最も多くなります。
【点Bの位置】 滴下量 10 mL で pH が急上昇する段の中央 = 1段目の中和点 (2段目の中和点は 20 mL 付近で、ちょうど 10 mL の2倍。 放出できる H⁺ が2つあるので中和点が2段になる) 【1段目の中和点でのグリシン】 −COOH は中和されて −COO⁻ になった −NH₃⁺ はまだ H⁺ を放していない → 双性イオン H₃N⁺−CH₂−COO⁻ が最も多い(この pH が等電点付近) よって ②
問5b:正解 ④(解答番号27/配点1)
<問題要旨>
図1の点C(NaOH の滴下量 約28 mL、pH は約12.3)で、グリシンが最も多く存在する構造を選ぶ設問です。
<考え方>
点Cは2段目の中和点(20 mL 付近)より後で、NaOH が余っている強い塩基性の領域です。ここでは −NH₃⁺ も OH⁻ に H⁺ を奪われるので、負の電荷だけをもつ陰イオンが最も多くなります。
【点Cの条件】 滴下量 約28 mL > 2段目の中和点(20 mL 付近)、pH は約12.3 = 強い塩基性 【強い塩基性でのグリシン】 −COO⁻ そのまま −NH₃⁺ OH⁻ に H⁺ を奪われて −NH₂ になる → 負の電荷だけをもつ陰イオン H₂N−CH₂−COO⁻ が最も多い よって ④
点A → 点B → 点C で、H₃N⁺−CH₂−COOH → H₃N⁺−CH₂−COO⁻ → H₂N−CH₂−COO⁻ と H⁺ が1つずつ外れていきます。滴下量 10 mL と 20 mL に中和点が2段現れるのは、放出できる H⁺ が2つあるからで、その中間(点B)が等電点付近になります。
第5問(必答) 身のまわりの化学物質(クロムとケイ素・ポリイミド・香料のエステル)
身のまわりに使われている化学物質を題材にした大問で配点20点。問1はクロムとケイ素の性質(無機物質)、問2は集積回路の絶縁保護膜に使われるポリイミドを例にしたイミド結合の形成と単量体の決定、問3は香料としてのエステルの構造決定とエステル化の平衡定数です。問2b と問3b が各4点です。
問1a:正解 ③(解答番号28/配点3)
<問題要旨>
酸化数が +6 のクロム(6価クロム)の化合物は酸化剤として多用されてきたが現在は使用が制限されている、という導入のあと、クロムおよびその化合物に関する4つの記述から誤りを含むものを選ぶ設問です。
<考え方>
クロム酸イオンと二クロム酸イオンが、どちらの条件でどちらに変わるかで決まります。酸を加えると縮合して二クロム酸イオン、塩基を加えるとクロム酸イオンに戻る、という向きを平衡の式で押さえておけば一発です。
① 正 クロムは空気中で緻密な酸化被膜をつくって不動態となる この性質を利用して、鉄さび防止のためのめっき(クロムめっき)に使われる ② 正 ステンレス鋼は鉄を主成分とする合金で、クロム(と多くはニッケル)を含む ③ 誤 変化の向きが逆 2 CrO₄²⁻ + 2 H⁺ ⇌ Cr₂O₇²⁻ + H₂O 酸を加えると CrO₄²⁻(黄色)→ Cr₂O₇²⁻(赤橙色) 塩基を加えると Cr₂O₇²⁻ → CrO₄²⁻ 選択肢は「塩基を加えると Cr₂O₇²⁻」「酸性にすると CrO₄²⁻」で逆になっている ④ 正 Pb²⁺ + CrO₄²⁻ → PbCrO₄ ↓(黄色) よって ③
色とセットで覚えると向きを間違えません。クロム酸イオンは黄色、二クロム酸イオンは赤橙色で、酸性にすると色が黄から赤橙へ濃くなります。PbCrO₄ の黄色沈殿は Pb²⁺ の検出に使われ、Ba²⁺ では BaCrO₄(黄色)、Ag⁺ では Ag₂CrO₄(赤褐色)が沈殿します。
問1b:正解 ④(解答番号29/配点3)
<問題要旨>
ケイ素が地殻中で酸素の次に多い元素であること、高純度のケイ素が半導体として集積回路や太陽電池に使われることを述べた文章のあと、ケイ素やその酸化物に関する4つの記述のうち、下線部に誤りを含むものを選ぶ設問です。
<考え方>
光ファイバーの材料が何か、という一点で決まります。単体の Si は半導体で光を通しませんが、光ファイバーに使うのは高純度の二酸化ケイ素 SiO₂(石英ガラス)です。
① 正 Si の結晶はダイヤモンドと同じく、正四面体構造をもつ共有結合の結晶 ② 正 アモルファスシリコンは Si 原子が不規則に配列した非晶質で、太陽電池などに使う ③ 正 SiO₂ + 6 HF → H₂SiF₆ + 2 H₂O Si 表面に生じた絶縁体の SiO₂ は、フッ化水素酸で溶かして H₂SiF₆ として除ける ④ 誤 通信用海底ケーブルの光ファイバーに用いられるのは高純度の SiO₂(石英ガラス) 下線部の「高純度の Si」が誤り。Si は半導体として集積回路や太陽電池に使う よって ④
同じ導入文の中で「高純度の Si は半導体として集積回路や太陽電池に用いられる」と書かれています。用途が重複する選択肢は、そこを手がかりに疑ってみるとよいです。
問2a:正解 ⑤(解答番号30/配点3)
<問題要旨>
集積回路の絶縁保護膜などに使われるポリイミドの話題から、イミド結合をもつ化合物Cを合成する2段階の反応(式(1))が示されます。無水フタル酸とアニリンが反応して化合物Bが生成し、Bが分子内脱水反応することでイミド結合が形成される、という流れで、中間体Bの構造式を6つから選ぶ設問です。
<考え方>
生成物Cの構造から逆にたどります。分子内脱水で水が1分子とれてイミド環になるのだから、Bはその水が取れる前の形、つまりアミド結合とカルボキシ基が隣り合った構造です。酸無水物にアミンが作用すると環が開き、一方が −CO−NH−、もう一方が −COOH になります。
【第1段階(酸無水物の開環)】 無水フタル酸の2つの C=O のうち一方に、アニリンの −NH₂ が結合する → その炭素は −CO−NH−C₆H₅(アミド)に、もう一方の炭素は −COOH になる B = ベンゼン環の隣り合う位置に −CO−NH−C₆H₅ と −COOH をもつ化合物 【第2段階(分子内脱水)】 −COOH の OH と −NH− の H から H₂O が1分子とれ、 C−N−C を含む五員環(イミド結合)ができて C になる 【選択肢の照合】 ① 2つの環がケトンでつながり、−NH₂ と −COOH が別々の環にある → 合わない ② 同じくケトン結合で、アミド結合をもたない → 合わない ③ エステル −CO−O− と酸アミド −CO−NH₂ で、窒素がベンゼン環につながっていない → 合わない ④ アミド結合はあるが、もう一方が −CHO(アルデヒド)で脱水してイミドにならない ⑤ −CO−NH−C₆H₅ と −COOH が隣り合う → 分子内脱水でCになる … 該当 ⑥ 両方がアニリンと結合した二アミドで、アニリン2分子が必要。 −COOH がないので分子内脱水で五員環のイミドにならない → 合わない よって ⑤
酸無水物とアミンの反応は「開環してアミド+カルボン酸」が基本形です。ここで一度カルボキシ基ができるからこそ、次の分子内脱水でイミド環が閉じます。この筋道が次の問2bで単量体を決める手がかりになります。
問2b:正解 ⑤(解答番号31/配点4)
<問題要旨>
代表的なポリイミドである化合物Aの構造式(繰り返し単位)が与えられ、式(1)と同じイミド結合をつくる反応でAを合成するとき、原料として用いる2つの化合物をア〜オから選ぶ設問です。アは無水フタル酸、イはベンゼン環に酸無水物の環が2つ縮環した化合物、ウはベンゼン環の両端に −NH₂ をもつジアミン、エとオは2つのベンゼン環が −O− でつながったジアミンです。
<考え方>
縮合重合で鎖を伸ばすには、酸無水物側とアミン側の両方が「反応点を2か所もつ」必要があります。この条件でアとウを整理したうえで、化合物Aの繰り返し単位に現れる骨格、とくに −NH₂ の置換位置(パラ位かメタ位か)を構造式で照合します。
【重合できる条件】 イミド結合を2か所つくって鎖を伸ばすには 酸無水物側 酸無水物の環が2つ(反応点が2か所) アミン側 −NH₂ が2つ ア 無水フタル酸 酸無水物の環が1つだけ → イミドが1個できたところで鎖が止まる(式(1)の化合物Cがその例)。不可 イ ベンゼン環に酸無水物の環が2つ縮環した化合物 → 酸無水物側の原料になる 【化合物Aの骨格と照合】 Aの中央:1つのベンゼン環に、イミド環が左右に2つ縮環している → イ の骨格と一致 Aの窒素に続く部分:−C₆H₄−O−C₆H₄− で、どちらの環でも 窒素がつく位置とエーテル酸素 −O− がつく位置は互いにパラ(向かい合う位置) ウ H₂N−C₆H₄−NH₂ エーテル酸素 −O− をもたない → Aの構造と合わない エ 2つの環が −O− でつながり、−NH₂ は −O− に対してパラ位 → Aと一致 オ 2つの環が −O− でつながるが、−NH₂ は −O− に対してメタ位 → Aと合わない 【まとめ】 原料は イ(酸無水物の環が2つ)と エ(パラ位に −NH₂ をもつジアミン) よって ⑤
エとオは分子式が同じで、−NH₂ の位置がパラかメタかだけが違います。化合物Aの構造式で、窒素から環をたどってエーテル酸素までが3つ先(パラ)か2つ先(メタ)かを指で追って確認してください。アのように反応点が1つの化合物を混ぜると鎖の成長が止まる、という点も縮合重合の基本です。
問3a:正解 ②(解答番号32/配点3)
<問題要旨>
香料として利用されているエステル6つのうち、Ⅰ 加水分解すると二つの化合物DとEが生成する、Ⅱ 化合物Dはアセトアルデヒドを酸化しても得られる、Ⅲ 化合物Eを酸化するとケトンが得られる、の3条件すべてを満たす構造式を選ぶ設問です。
<考え方>
エステルの加水分解はカルボン酸とアルコールに分かれる、という一点から始めます。Ⅱでカルボン酸側が、Ⅲでアルコール側が決まります。アセトアルデヒドの酸化生成物は酢酸、酸化してケトンになるアルコールは第二級アルコールです。
【D・E の正体】 Ⅰ エステル + H₂O → カルボン酸(D)+ アルコール(E) Ⅱ CH₃CHO を酸化すると CH₃COOH → D = 酢酸。つまり酢酸エステルに限られる Ⅲ 酸化してケトンになるのは第二級アルコール (第一級 → アルデヒド → カルボン酸、第三級 → 酸化されにくい) → E = 第二級アルコール 【各選択肢】 ① H−CO−O−CH(CH₃)−CH₂CH₃ カルボン酸側がギ酸 → Ⅱ が不適 ② CH₃−CO−O−CH(CH₃)−CH₂CH₂CH₃ D = 酢酸 … Ⅱ 適 E = 2-ペンタノール(−OH のついた炭素に H が1個の第二級アルコール) 酸化すると 2-ペンタノン(ケトン) … Ⅲ 適 → 3条件すべてを満たす ③ CH₃−CO−O−CH₂−CH(CH₃)−CH₂CH₃ E が第一級アルコール(2-メチル-1-ブタノール)→ 酸化でアルデヒド … Ⅲ が不適 ④ CH₃−CO−O−CH₂CH₂−CH(CH₃)−CH₃ E が第一級アルコール(3-メチル-1-ブタノール) … Ⅲ が不適 ⑤ CH₃−CH(CH₃)−CO−O−CH(CH₃)−CH₃ E は第二級アルコールだが、D が 2-メチルプロパン酸 … Ⅱ が不適 ⑥ CH₃−CH(CH₃)−CH₂−CO−O−CH₂CH₃ D が 3-メチルブタン酸、E がエタノール(第一級) … Ⅱ・Ⅲ とも不適 よって ②
③と④は酢酸エステルなのでⅡを満たし、Dの条件だけを見ると正解に見えます。エステルを「カルボン酸側」と「アルコール側」に切り分けて、アルコール側の −OH がついた炭素に水素が何個あるか(第一級なら2個、第二級なら1個、第三級なら0個)を必ず確かめてください。
問3b:正解 ⑧(解答番号33/配点4)
<問題要旨>
カルボン酸とアルコールから酸を触媒として脱水縮合するエステルの合成反応は可逆反応です。酢酸 4.0 mol とエタノール 5.0 mol を用いて式(2)の反応を平衡に達するまで行ったところ、酢酸エチルが 3.0 mol 生成しました。この反応の平衡定数 K を求める設問です。反応物と生成物の蒸発はないものとします。
<考え方>
平衡定数は平衡状態での濃度から求めます。まず物質量の増減を表にして平衡時の4つの物質量を出します。この反応は両辺の分子数が 2 対 2 で等しいので、濃度に直すときの体積が約分され、物質量の比だけで K が計算できます。
【物質量の変化】 CH₃COOH + C₂H₅OH ⇌ CH₃COOC₂H₅ + H₂O はじめ 4.0 5.0 0 0 [mol] 変化 −3.0 −3.0 +3.0 +3.0 平衡時 1.0 2.0 3.0 3.0 【平衡定数】 容器の体積を V (L) とすると K = ([CH₃COOC₂H₅]·[H₂O])/([CH₃COOH]·[C₂H₅OH]) = ((3.0/V)×(3.0/V))/((1.0/V)×(2.0/V)) 両辺の分子数が 2 対 2 で等しいので V は約分される = (3.0×3.0)/(1.0×2.0) = 9.0/2.0 = 4.5 【検算】K = 4.5 から生成量を逆算する 生成した酢酸エチルを x mol とすると x²/((4.0 − x)(5.0 − x)) = 4.5 x² = 4.5(20 − 9.0x + x²) 3.5x² − 40.5x + 90 = 0 x = (40.5 − √(40.5² − 4×3.5×90))/(2×3.5) = (40.5 − √(1640.25 − 1260))/7 = (40.5 − 19.5)/7 = 3.0 … 与えられた 3.0 mol と一致 よって ⑧
両辺の分子数が等しいので、物質量をそのまま代入しても同じ値になります。ただし N₂ + 3 H₂ ⇌ 2 NH₃ のように分子数が違う反応では体積が約分されないので、必ずモル濃度に直してから計算してください。
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

