2024年度 大学入学共通テスト 本試験 生物基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解5

<解説>
原核細胞・真核細胞いずれにも共通する性質としては、細胞内でエネルギーの受け渡しにATPを用いることや、細胞膜を介した物質の出入りなどが挙げられる。一方、ミトコンドリアや葉緑体は細胞小器官として真核細胞にのみ存在し、原核細胞には見られない。そのため、この選択肢が両者に共通しない点として最も適切となる。

問2:正解2

<解説>
ゲノムDNAには、タンパク質の設計図となる部分(転写されてRNAが合成され、翻訳を経てタンパク質がつくられる領域)だけでなく、実際には転写や翻訳が行われない部分(いわゆる非コード領域)も存在する。これは生物の多くのゲノムに共通する特徴であり、DNA配列の全てがタンパク質の情報として使われるわけではないことを示している。

問3:正解4

<解説>
肺炎双球菌を使った形質転換の実験では、加熱処理によりタンパク質やRNAのみが分解されても、形質転換(非病原性のR型菌が病原性のS型菌に変化)は起こり続ける。しかし、DNAを分解すると形質転換が起こらなくなる。すなわち、遺伝形質を伝える物質の本体がDNAであることがわかる。選択肢の中で、タンパク質分解酵素やRNA分解酵素で処理してもS型菌が検出され、DNA分解酵素で処理するとS型菌が検出されない組合せが該当する。

問4:正解1

<解説>
培養細胞に短時間の紫外線照射を行うと、その後一時的に細胞周期が停止する。細胞周期には、DNA合成(複製)に入る前にDNA損傷がないかチェックする段階(G1期)が存在する。紫外線によるDNA損傷があると、細胞はG1期で修復のために足止めされることが多い。図示された経過でも、DNA量の変化が一時的に見られなくなることから、DNAの複製開始前段階(G1期)で停止していると考えられる。

問5:正解4

<解説>
提示されたグラフや顕微鏡観察の模式図からは、化合物Zの添加後にDNA量の変化は正常に進むが、その後に細胞の分裂過程が滞っている様子が示唆される。染色体が凝縮された状態になっているにもかかわらず、次の段階へ進まずに留まっているように見えるため、最終的に染色体が子細胞に分配される段階(後期以降)が阻害されていると考えられる。これより、染色体の分配に障害を与えている可能性が高い。

第2問

問6:正解4

<解説>
血液の成分には、有形成分である赤血球・白血球・血小板と、液体成分である血漿が含まれる。酸素の運搬については、主に赤血球に含まれるヘモグロビンが重要な役割を果たす。赤血球の内部ではヘモグロビンが酸素と結合し、全身の組織へ効率よく酸素を届ける。一方、血漿中に最も多く含まれる成分は水とタンパク質であり、無機塩類が質量として最も多いわけではない。また、免疫や老廃物の運搬を担うのは主として白血球や血漿中の成分である。これらを踏まえると、血液による酸素運搬の主体がヘモグロビンであることが最も適切だと考えられる。

問7:正解5

<解説>
血管が傷ついた際には、まず血小板が傷口付近に集まり(一次止血)、その後フィブリン(繊維状の物質)が形成される。フィブリンが網状になって血小板や赤血球を絡めとり、最終的に傷口を塞ぐ塊(血ぺい)をつくることで出血が止まる。このように、血小板の凝集→フィブリンの形成→赤血球などを巻き込んだ塊の生成、という順序で止血の過程が進むと考えられる。

問8:正解3

<解説>
皮膚や血管が損傷した直後、傷口付近に侵入してくる病原体を排除するため、免疫系細胞が素早く働く。なかでもマクロファージは貪食(どんしょく)作用を持ち、細菌や異物を取り込み分解することで初期防御に大きく貢献する。ナチュラルキラー細胞は主にウイルスに感染した細胞などを直接攻撃し、抗体産生細胞(形質細胞)は侵入した病原体に対する抗体を放出するが、傷口に病原体が侵入した直後に最も早く働く細胞としてはマクロファージの貪食作用が重要だとされる。

問9:正解5

<解説>
人体の腹部は図のように大まかに上・中・下の三つの領域に区分されることがある。腎臓は一般に横隔膜より下、骨盤よりは上の背側寄りに位置するため、多くの場合は腹部の中央付近(いわゆる腰の高さ)に当たる領域に収まる。また、腎臓に接続する血管のうち、壁が厚い血管は動脈・壁が薄い血管は静脈であるのが通常だが、模型の大きさや加工の具合によっては一部が太く見える場合もある。本文の記述からは、腎臓モデルに接続された血管A・Bの特徴と腎臓のある位置(部位Y)を対応させることで答えを導くことができる。

問10:正解2

<解説>
健康なヒトの腎臓に流れ込む血液(腎動脈など)には、通常、水・無機塩類・尿素などが含まれている。いっぽう、血液中のグルコースやアミノ酸は腎臓でろ過された後、必要に応じて再吸収されるため、最終的に尿として排出されにくい。したがって、腎臓に流入している時点の血液には無機塩類や尿素が含まれるが、正常では高濃度のグルコースやアミノ酸は含まれていないか、含まれていても最終的に尿にはほとんど出てこない。

問11:正解3

<解説>
豚の腎臓はヒトの腎臓と構造がよく似ているとされる。腎臓を縦に切断し、内部にインクを注入した場合、主に血管が豊富に分布する皮質(外側の層)に染色が集中することが知られている。髄質(内側の層)の中心部付近は集合管やヘンレ係蹄などが分布しているが、血流量が比較的少ないため、インクの行き渡り方に差が生じやすい。問題文に示された模式図では、腎臓の外側部分に主にインクが分布している様子が描かれており、皮質へのインクの広がりを表す図が最も妥当なものとして考えられる。

第3問

問12:正解4

<解説>
日本列島の森林は、地域ごとに年平均気温などの気候条件によって分布が大きく左右される。標高が同じでも緯度が高くなるほど気温は下がりやすく、森林が成立する上限の標高も低くなる。たとえば北海道の森林限界が本州中部地方に比べて低い標高で見られるのは、北海道のほうが気温が低いことが背景にあると考えられる。

問13:正解5

<解説>
湖沼では、水深の違いに応じて生育する植物が異なり、湖岸付近の浅い部分には抽水植物や浮葉植物、より深い部分には沈水植物が生育することが多い。また、湖沼に土砂が堆積して陸地化が進むと、草地を経て最終的に森林へと移り変わる場合がある。一方、生産者として機能するのは基本的に光合成を行う植物プランクトンや水生植物であり、動物プランクトンは消費者である。よって、説明の中で「動物プランクトンが生産者」とされる部分が不適切となる。

問14:正解3

<解説>
山地の草原が長年にわたり維持されてきた地域では、定期的な火入れや刈り取りが重要な役割を担っている。資料を見ると、火入れと刈り取りを組み合わせた伝統的管理を行う地域では、植物の種類数が多いだけでなく、希少種も多く確認される。これは定期的な管理によって、ある種が過度に優占するのを防ぎ、多様な草本が生育できる環境を維持しているためと考えられる。

問15:正解2

<解説>
「外来生物」とは、本来その地域に生息していなかった生物が、人為的な要因で別の地域に移されて定着し、生態系に影響を与えるようになったものを指す。選択肢の中には、海外から持ち込まれた植物や動物が在来種と競合したり、生態系に影響を及ぼした例がいくつか挙げられている。一方、同じ河川で捕獲したサクラマスを再び元の川に放流する行為は、「外来」の定義に当てはまらず、在来種同士の競合にすぎないと考えられるため、外来生物が関わっていない事例となる。

問16:正解1

<解説>
外来生物を管理するには、まず侵入した地域の生態系をもとの状態に近づけることを目標にする。そのためには、完全な根絶が難しい場合でも、定期的な除去によって個体数や密度を低く保つことが有効とされる。特に水生植物のように急速に繁茂する種類の場合、こまめな管理や駆除を続けることで、生態系全体に対する影響を緩和しつつ在来の生物が生育できる環境を保つことが大切となる。

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