2023年度 大学入学共通テスト 本試験 生物基礎 解答・解説

目次

解答

解説

第1問

問1:正解3

<解説>
原核細胞と真核細胞の比較として、ATP はどちらの細胞でも合成されることはよく知られている。一方、ATP を合成する主な場として知られるミトコンドリアは、真核細胞には存在するが、原核細胞には見られない。選択肢を吟味すると、これに合致するものが最も適切だと判断できる。

問2:正解5

<解説>
葉緑体をもつ藻類が動物細胞に取り込まれ、共生関係を長く続けると、取り込まれた藻類が光合成などによって新たに養分を動物細胞に供給するようになる。その結果、動物細胞側で利用できる栄養分が増えるため、細胞内で糖の量が増えるなどの変化が生じる。また、藻類が光合成を行うことで二酸化炭素の動きにも特徴的な傾向が現れる。提示されている選択肢のうち、こうした現象に最も当てはまる組合せを探すと、糖の増加などが示されているものが該当すると考えられる。

問3:正解4

<解説>
ヒトの体細胞の DNA は非常に大きな塩基対数をもつため、細胞周期のなかで効率よく複製を完了させるには、DNA の複数の領域でほぼ同時に複製が始まる必要がある。問題文では、1つの起点が担う塩基対の数を示し、ヒトの体細胞全体の塩基対数と照らし合わせて、全てを複製するために必要な複数の複製起点の数を見積もるような形になっている。提示された選択肢のなかで、この塩基対数をまかない得る数としてもっとも合理的な値を選ぶと、該当の数字に落ち着く。

問4:正解1

<解説>
問題文では、タンパク質 X とタンパク質 Y の発現タイミングが異なることが述べられている。例えば、タンパク質 X は分裂終了直後に発現が始まるが、DNA の複製が始まる時期には減少していく。一方、タンパク質 Y は DNA 複製の開始とともに発現し、分裂終了直後には急速に減少するといった特徴をもつ。これらの性質から、タンパク質 X のみが発現し、Y が発現していない細胞は、DNA 複製が始まる前の時期にいると考えられるため、その細胞周期の段階を判断できる。

問5:正解8

<解説>
グラフでは、細胞を複数の群に分け、それぞれの全 DNA 量(相対値)と物質 A の量(相対値)が示されている。物質 A は DNA の複製過程に取り込まれたり、細胞周期のある段階にも残存したりする性質をもち、群ごとに DNA 量や物質 A の量の特徴が異なる。たとえば、ある群は DNA 量が2倍化した状態でも物質 A を取り込み終えている可能性が示唆されるが、別の群はまだ増加途中など、細胞周期のどの段階かで差が出る。問題文の図を見比べると、DNA 量が2倍になった状態(複製後)でも、さらに分裂に向かう途中か、あるいは分裂期に相当するかが判断の分かれ目となる。提示の選択肢のうち、こうした2倍化後から分裂にかけての段階を含むものが該当すると考えられる。

第2問

問6:正解6

<解説>
実験1では、リトマスミルクを用いて脂肪の分解による酸性化を確認し、リパーゼの有無や熱処理の有無、そして胆汁粉末を加えるかどうかを比較している。リパーゼが存在すると脂肪が加水分解されて酸性の物質が生じやすくなるため、反応液の色の変化を観察できる。さらに、高温処理されたリパーゼは失活して働かなくなること、胆汁粉末を加えるとリパーゼによる脂肪の分解が促進されやすいことが実験結果から考えられる。問題文の結論1~3をそれぞれ確認すると、どの試験管の比較がどの結論を示すかが整理でき、最終的に最もよく説明する組合せが導き出せる。

問7:正解8

<解説>
実験2では、食用油に胆汁粉末を加えた場合と加えない場合で生じる層の違いを観察している。胆汁には脂肪を乳化するはたらきがあるため、油が細かい粒子状になって水中に分散し、層の構造が変化することがわかる。実験1・2の結果をあわせて考えると、「胆汁はリパーゼによる脂肪分解を乳化という形で助けている」という仮説を裏づける現象が起きていると判断できる。問題文では、さらにそれを確かめる追加の検証実験を提案しており、そのときに用いる層やリパーゼ溶液をどう組み合わせるかによって、反応液の色がより濃い赤色へ変化しやすくなることが予想される。提示された選択肢の中で、こうした変化を最も適切に説明できる組合せが選ばれている。

問8:正解0

<解説>
この小問は、実験結果などを基にした推論や、与えられた選択肢の中で特定の条件や操作の有無を比較していると考えられる。たとえば、実験条件における材料の組合せや操作手順の差異が色の変化や層構造の違いを生むかどうか、あるいはリパーゼや胆汁の役割がどの段階で顕著に働くかが焦点となっている可能性がある。問題文や選択肢を注意深く読み、どの操作・条件が該当するか検討すると、最終的に該当する選択肢が導かれる。

問9:正解4

<解説>
リトマスミルクや油、胆汁粉末などを用いた実験では、脂肪の乳化と分解の進行が色調や層構造の変化として現れる。乳化の程度が大きいほどリパーゼが作用しやすいため、反応液の酸性化がいっそう進む傾向がある。問題文の図や観察結果を比較すると、どの層をどの試験管に加えることで乳化状態がより進むか、またリパーゼの効果が最大化するかが整理できる。最終的には、層の名称や加える順番に着目したときにもっとも合理的な組合せが提示されている。

問10:正解2

<解説>
自然免疫に関する記述として、皮膚や粘膜の物理的防御、マクロファージや好中球などの貪食作用、ナチュラルキラー細胞による細胞の排除などが代表的に挙げられる。ここで注意が必要なのは、ナチュラルキラー細胞のはたらきであり、ウイルス感染細胞などを貪食(細胞を取りこんで分解)するわけではない点である。NK細胞は主に、感染細胞に直接働きかけ、アポトーシス(細胞死)を誘導する方法で排除を行う。問題文の選択肢の中で、この機構を誤って説明しているものが該当する。

問11:正解4

<解説>
獲得免疫(適応免疫)で抗体が産生される過程には、樹状細胞・ヘルパーT細胞・B細胞などが複雑に関わっている。特にヘルパーT細胞は、樹状細胞から抗原情報を提示されることで活性化し、B細胞をはじめとする他の免疫細胞のはたらきを助ける。これらの細胞間のやり取りはリンパ節などで集中的に行われることが知られており、提示された選択肢を照合すると、リンパ節内で樹状細胞とヘルパーT細胞がかかわる組合せが、抗体産生に至る経路として重要であると判断できる。

問12:正解6

<解説>
実験ではマウスを用いて、ウイルスを無毒化したものや無毒化していないもの、血清の有無などを組み合わせて注射し、それぞれが生存するかどうかを観察している。ここで、B細胞から産生される抗体の働きや、T細胞による感染細胞の排除など、獲得免疫の仕組みがどの段階で機能しているかが焦点となる。たとえば、無毒化したウイルスを先に注射しておくと、免疫系がそのウイルスに対する記憶や抗体を獲得しているため、後から無毒化していないウイルスを注射してもマウスが生存できる場合がある。マウスそれぞれの欠損要因(B細胞がない、好中球がない、など)を踏まえると、どの実験でどの免疫経路が働いたかを整理でき、それに基づいて最終的に成り立つ説明を示す選択肢が特定される。

第3問

問13:正解5

<解説>
水草は光エネルギーを利用して有機物を合成する(光合成)際、エネルギーの形態を光から化学へと変換しつつ、ATP を合成する。同化作用としては単糖などをさらに高分子(グリコーゲンなど)に合成する反応が挙げられる。問題文では「同化の一種である光合成」の過程において、光エネルギーが化学エネルギーに変換され(ア)、グルコースからグリコーゲンが合成される(イ)、さらに ATP が生成される(ウ)ことが示唆されている。これらを踏まえると、提示された組合せのうちもっとも当てはまるのが該当すると判断できる。

問14:正解1

<解説>
水槽内に入った魚の餌(有機窒素化合物)は、分解や酸化を経て最終的に水草が利用できる無機窒素化合物となる。一般的には、有機窒素がまずアンモニウムイオン(NH₄⁺)へ変化し、それがさらに硝化菌(硝化細菌)のはたらきで硝酸イオン(NO₃⁻)に変えられ、水草が吸収する形となる。問題文の選択肢を比較すると、この基本的な流れ「有機窒素 → アンモニウムイオン → 硝酸イオン → 水草」を簡潔に示したものが該当すると考えられる。

問15:正解1

<解説>
水槽の生態系から窒素分を取り除きたい場合、水草に取り込まれた窒素を丸ごと水槽外へ運び出す方法が有効と考えられる。問題文に示された操作のうち、「茂った水草を切り取って水槽から取り除く」ことで、植物体内に蓄えられた窒素を物理的に系外へ排出できる。ほかの操作(魚を入れる、光量を減らす)は、必ずしも窒素そのものを水槽外に出すことにつながらないため、最も直接的で確実な方法として該当すると判断できる。

問16:正解5

<解説>
図2に示されたバイオームは、気温や降水量によって大まかに区分されている。サバンナやステップなどと呼ばれる地域では、イネ科の草本が中心に分布しながらも、樹木がまったく存在しないわけではなく、点在しているところがしばしば見られる。問題文の選択肢を比べると、イネのなかまの草本が優占する一方で樹木が混在する特徴を示す記述が該当すると考えられる。

問17:正解3

<解説>
問題文では、バイオームCやバイオームEなどを調べ、植物が持つ葉緑体の活動指標(赤色光の吸収などに基づく季節変動)を季節ごとにグラフ化している。例えば、落葉樹が優占するバイオームであれば、冬季に落葉して光合成量が減り、夏季に葉が繁って光合成量が増えるため、その指標が大きく変動する。一方、常緑広葉樹や常緑針葉樹が優占するバイオームでは、年間を通じて比較的一定の値を示す。問題文の図3から読み取れる変化パターンを突き合わせると、冬季には低く、夏季にかけて高くなる曲線を示すものが該当すると判断できる。

問18:正解1

<解説>
北半球におけるバイオームGの指標変動が一例として提示され、バイオームC・Eでも同様に調べた場合の季節変化パターンを考察する問題である。常緑性が高い植物群落では、年間を通じて大きく葉を落とすことがないため、赤色光の吸収指標に極端な季節変化は出にくい。グラフとしては、ほぼ安定した値で推移する形が想定される。実際に提示された選択肢のグラフを比べると、年間を通じて大きく変動せず、なだらかな線を描くものが該当すると考えられる。

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