2020年度 大学入試センター試験 本試験 国語 解答・解説

2020年度 大学入試センター試験 本試験「国語」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。

目次
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解答

解説

2020年度(令和2年度)大学入試センター試験本試験「国語」の全4大問・25設問について、解答と考え方をまとめました。試験時間80分・200点満点、各大問50点の配点です。

第1問は河野哲也『境界の現象学』からレジリエンス論、第2問は原民喜「翳」、第3問は中世王朝物語『小夜衣』、第4問は謝霊運の五言詩。センター試験としては最後の年度にあたり、第4問の問3では漢詩の内容を模式図から選ばせるという、共通テストを先取りしたような出題が見られました。

※ 著作権に配慮し、本文(問題文)の引用は行っていません。問題冊子をお手元にご用意のうえお読みください。

第1問 評論(河野哲也『境界の現象学』)

「レジリエンス」という概念を、回復力・サステナビリティ・脆弱性と比べながら整理し、最終的に福祉の基準として提案する評論。段落番号が振られており、構成を問う設問が出ます。配点50点。

問1 漢字(解答番号1〜5・各2点) 正解 ⑤①①④⑤

<問題要旨>
傍線部(ア)〜(オ)に相当する漢字を含むものを、各群の①〜⑤から一つずつ選ぶ。

<考え方>
(ア)ソクシン=促進 → ⑤ 催促
(イ)ケンコウ=健康 → ① 小康
(ウ)ケンゲン=権限 → ① 棄権
(エ)カタヨって=偏って → ④ 偏差値
(オ)ガンケン=頑健 → ⑤ 頑強

同音異字が並ぶ本格的な五択。(ウ)の「勢力圏」「検証」「嫌疑」「堅固」と「棄権」のように、音は同じでも字が違う選択肢が並びます。まず傍線部を漢字で書き出してから選択肢に当たること。頭の中で音のまま照合すると必ず取り違えます。

問2 傍線部A(解答番号6・8点) 正解 ②

<問題要旨>
「そこにある微妙な意味の違い」——レジリエンスと、回復力・サステナビリティとの違いを説明する。

<考え方>
本文の記述を二つ拾います。
・回復=あるベースラインや基準に戻ること。しかしレジリエンスには固定的な原型が想定されていない。
・「サステナブルな自然」と言うとき、唯一の均衡点が生態系にあるかのように期待されるが、それは自然のシステム本来の姿と合わない。

つまり両者が戻るべき基準・均衡状態を前提にするのに対し、レジリエンスは環境の変化に合わせて自らの姿を変えていく。正解は②。

⑤「原型復帰や均衡状態を目指すが、レジリエンスは自己を動的な状態に置いておくこと自体を目的とする」は、後半の「それ自体を目的とする」が本文と食い違います(本文は「目的を達成するのがレジリエンス」)。

問3 傍線部B(解答番号7・8点) 正解 ③

<問題要旨>
「ここでレジリエンスにとって重要な意味をもつのが、『脆弱性』である」とはどういうことか。

<考え方>
脆弱性は普通、レジリエンスの反対語と考えられています。しかし筆者は見方を変え、脆弱=変化や刺激に対する敏感さと捉え直す。敏感なセンサーを持つシステムは、環境の不規則な変化や悪化にいち早く気づける、というわけです。

具体例として挙がるのが、災害に強い施設・建築物を作るなら、障害者や高齢者、妊娠中の女性にとって避難しやすい作りにするのが最善だ、という話。正解は③。

④も「敏感なセンサー」まで正しいのですが、「均衡状態へと戻るための重要な役割」が致命的。均衡状態への復帰を目指さないのがレジリエンスでした(問2)。設問どうしが連動しているので、問2の理解がここで効いてきます。

問4 傍線部C(解答番号8・8点) 正解 ②

<問題要旨>
「それをミニマルな福祉の基準として提案できる」とはどういうことか。

<考え方>
傍線部の直後が答えそのものです——変転する世界を生きるには変化に適切に応じる能力が必要で、その柔軟な適応力を持てるようにすることが福祉の目的。福祉とはその人のニーズを充足することであり、他者から与えられるものを受け取るばかりでなく、自分自身でニーズを能動的に充足する力を持つ必要がある。

したがって②——個人がさまざまな環境に応じて自己の要求を充足してゆく能力を最小の基準とし、支援者にはその能力を身につけるための補助が求められる。

⑤「金銭的補償にとどまらず、多様な形で援助する」は支援者側の話に寄りすぎ。基準となるのは被支援者の「能力」であるという骨格を外さないこと。

問5 生徒の対話・空欄補充(解答番号9・8点) 正解 ②

<問題要旨>
三人の生徒が話し合う場面の空欄に入る、生徒Aの発言を選ぶ。

<考え方>
直前で生徒Cが「さまざまに変化する環境の中でどんなふうに目的に向かっていくか」が論じられていたと整理し、直後で生徒Bが「『動的』ってそういうことなのか」と納得します。

つまり空欄には、固定したやり方に戻すのではなく、状況に合わせて変えながら目的を達成した具体例が入る。②の「以前のやり方を踏襲したらうまくいかなかったが、新チームで話し合って現状に合うように工夫したら、目標に向けてまとまりが出てきた」がまさにそれです。

①は努力の積み重ねで優勝した話で「動的」の例になりません。空欄補充は前後の発言に挟まれた役割から決めるのが原則です。

問6(ⅰ) 表現(解答番号10・4点) 正解 ①

<問題要旨>
本文の表現に関する説明として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
①が正解。②段落の最初の二文は「〜としよう」で終わっており(港に停泊しているヨットで水を運ぶ/荒れた海で同じことをする)、どちらも仮定の状況を提示して読者に具体的に想像させる働きがあります。

③「⑥段落の『といったときには』は、直前の表現は本来好ましくないがあえて使用しているという筆者の態度を示す」は行き過ぎ。④「⑧段落の『あるとされ』は患者に対する敬意を示す」は、受身・伝聞の「〜とされる」を敬語と取り違えたもので、明らかな誤りです。

問6(ⅱ) 構成(解答番号11・4点) 正解 ④

<問題要旨>
本文の構成に関する説明として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
④は⑬段落を「一般的な理解を取り上げた後、筆者の立場から反論している」とします。しかし⑬段落は、これまでの議論を受けて「それをミニマルな福祉の基準として提案できる」と述べる箇所で、反論ではありません。適当でないのは④。

①(②段落で他者の言葉=ウォーカーの比喩、③段落で筆者の言葉による意味の明確化)、②(⑤⑥段落で類似概念との違い)、③(④・⑦・⑪段落で時系列に沿った概念の拡大)はいずれも本文の流れと一致します。段落番号が振られている年度は、構成問題が必ず出ると思って読むのが得策です。

第2問 小説(原民喜「翳」)

1944年に妻を喪った「私」が、御用聞きの少年「魚芳」こと川瀬成吉との十数年の交流を回想する。戦争が二人の生活をどう変えたかを、抑えた筆致で描いた小説。配点50点。

問1 語句の意味(解答番号12〜14・各3点) 正解 ①①④

<問題要旨>
傍線部(ア)〜(ウ)の本文中における意味として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
(ア)「興じ合っている」=① 互いに面白がっている
魚芳たちが「になえつつ」の姿勢を実演し、妻が笑いこけている場面。「興ず」は面白がること。⑤「相手とともに練習している」は軍事教練の文脈に引かれた誤りです。

(イ)「重宝がられる」=① 頼みやすく思われ使われる
「重宝がる」は便利だと思って使うこと。③「一目置かれて尊ばれる」は敬意の方向が違い、④「思いのままに利用される」は語感が悪すぎます。

(ウ)「晴れがましく」=④ 誇らしく堂々と
軍服姿で顧客の歯医者を訪れる場面。「晴れがまし」は表立って華やか・誇らしい意。②「人目を気にしつつ」は逆向きです。

問2 傍線部A(解答番号15・7点) 正解 ④

<問題要旨>
「そうした、暗い、望みのない明け暮れにも、私は凝と蹲ったまま、妻と一緒にすごした月日を回想することが多かった」とはどういうことか。

<考え方>
「そうした」が指す状況を押さえます——妻を喪い、その遺骨を郷里に納め、四十九日を迎えた頃。妻の義兄が台湾沖で沈んだ報せが届き、空襲警報のサイレンは頻々と鳴っている。つまり戦局の悪化に伴って災いが次々に降りかかる状況です。

そのただ中で「私」は蹲ったまま妻との月日を回想している。正解は④。

②「妻との思い出に逃避し安息を感じていた」は「安息」が本文にない情緒。①の「恐怖にかられた」も、この場面の静かな沈み込みとは質が違います。

問3 傍線部B(解答番号16・8点) 正解 ②

<問題要旨>
「何か笑いきれないものが、目に見えないところに残されているようでもあった」——「私」が推測した妻の心情。

<考え方>
魚芳と青年訓練所仲間が「になえつつ」の姿勢を実演してみせ、恰好がおかしいので妻は笑いこけている。しかしその可笑しさの底には、笑いきれないものが残る。

それは、彼らが演じているのが軍事教練の動作であり、二人とも来年入営するらしいという事実です。明るく振る舞ってはいても、以前の平穏な日々が終わりつつあることを妻は感じ取っている。正解は②。

①「帰れないのではと不安がっている」、④「軍務についたら苦労するのでは」はいずれも踏み込みすぎ。「笑い」と「笑いきれないもの」の落差を、戦争の影として説明できるかが問われています。

問4 傍線部C(解答番号17・8点) 正解 ⑤

<問題要旨>
「彼はかしこまったまま、台所のところの閾から一歩も内へ這入ろうとしないのであった」——魚芳はどのような態度で接しようとしているか。

<考え方>
軍服姿で台所の裏口に現れた魚芳は、きちんと立ったままニコニコしている。「私」が頻りに上がってゆっくりしていけと勧めても、閾から一歩も中に入らない。

兵長になったと嬉しげに応じながら、それでもかつて御用聞きと得意先だった間柄をわきまえて、客として上がり込むことをしないのです。正解は⑤。

①「兵長にふさわしくない行動だと気づき」、③「連絡を怠った後ろめたさ」はいずれも本文にない心理。「かしこまったまま」「閾から一歩も」という所作そのものが、彼の律儀な人柄を語っています。

問5 手紙をめぐる感情の動き(解答番号18・8点) 正解 ②

<問題要旨>
本文中に登場する手紙を読むことをきっかけとして、「私」の感情はどのように動いていったか。

<考え方>
10行目、差出人「川瀬丈吉」の封書。魚芳の父親の筆跡で、息子の死を知らせるものでした。84行目、その文面によれば彼は死ぬ一週間前に郷里に辿りついている——五月一日帰郷、五月八日永眠。

「私」は生前の魚芳との交流や人柄を思い返し、その死にやりきれなさを覚える。そして終戦後、郷里に死にに還って行くらしい疲れはてた青年の姿を汽車の中で何度も見かけ、そこに短い人生を終えた魚芳を重ねるのです。正解は②。

①③④⑤はいずれも手紙の内容か時期の対応がずれています。手紙の差出人・行数・内容の三点セットを照合すれば機械的に絞り込めます。

問6 表現(解答番号19・20・各5点) 正解 ③・⑥

<問題要旨>
本文の表現に関する説明として適当でないものを二つ選ぶ(順序は問わない)。

<考え方>
③が適当でない——「ブラブラと」「ニコニコ」「のそのそと」までは確かに擬態語ですが、90行目の「とぼとぼと」は、遠国から軍服を着て帰って来る男の姿を描く語です。「ユーモラスに描いている」という説明は、この語の哀切な調子とまったく合いません。

⑥が適当でない——妻の病状に関する記述を「『私』の生活が次第に厳しくなっていったことを表している」とまとめるのが誤り。これらの記述が示すのは生活の困窮ではなく、妻を喪うまでの時間の経過です。指摘された行数と本文の対応もずれています。

①(「魚芳」が人名と店名の両方を指す)②(時を示す表現で時点を行き来する)④(宿なし犬と鶫のエピソードが人柄を浮き彫りにする)⑤(「南風が吹き荒んで」が「午後」を修飾する)はいずれも妥当です。

第3問 古文(『小夜衣』)

山里で祖母の尼上と暮らす姫君の噂を聞いた宮が、偶然その山里を通りかかって庵に目をとめる場面。宮・宰相(女房)・尼上(老い人)・姫君・女房たちと人物が多く、敬語の方向を追えるかが勝負です。配点50点。

問1 語句の解釈(解答番号21〜23・各5点) 正解 ③②④

<問題要旨>
傍線部(ア)〜(ウ)の解釈として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
(ア)「ゆかしくおぼしめして」=③ 知りたくお思いになって
「ゆかし」は心が惹かれて見たい・知りたい・聞きたいの意。「おぼしめす」は尊敬語なので、主語は宮。①「いぶかしく」(不審に思う)、④「縁起が悪い」(=ゆゆし)は別語との混同を狙った選択肢です。

(イ)「やをら」=② 静かに
そっと、静かに。①「急いで」とは正反対で、ここは葦垣の隙から覗く場面ですから当然「静かに」。

(ウ)「重なれるあはひ」=④ 重なっている色合い
「あはひ」は物と物の間、とくに襲(かさね)の色目の配合。直後に「この世の人の染め出だしたるとも見えず、常の色とも見えぬさま」と色の話が続くのが決め手です。

問2 敬語の方向(解答番号24・5点) 正解 ①

<問題要旨>
波線部a〜dの敬語が、それぞれ誰に対する敬意を示しているかの組合せを選ぶ。

<考え方>
a「入れ奉る」=宮 謙譲語。仏の傍らの南面に御座を整えてお入れ申し上げる——その対象は宮。
b「ものし給ふ」=宰相 尊敬語。宮が宰相に「このあたりにいらっしゃると聞いて」と語りかける場面なので、主語である宰相への敬意。
c「わづらひ侍る」=宮 丁寧語。今度は宰相が宮に答える場面なので、聞き手である宮への敬意。
d「聞こえ給へば」=老い人 謙譲語。宰相が内へ入って尼上に宮の言葉を伝える場面なので、その対象である老い人への敬意。

正解は①。謙譲語は動作の受け手、丁寧語は聞き手——この原則を立て、各波線部が誰の発言の中にあるかを先に確定させれば、機械的に処理できます。

問3 傍線部A(解答番号25・7点) 正解 ③

<問題要旨>
「うらやましく見給へり」——宮は何に対してうらやましく思っているか。

<考え方>
宮が葦垣の隙から覗いた先は、仏の御前と見える一間。閼伽棚がささやかに置かれ、樒の花が青やかに散って、からからと音を立てている。

本文は続けます——「このかたは心にとどまることなれば」「この世にてもつれづれならず、後の世はまたいと頼もしきぞかし」。つまり仏事にいそしむ暮らしは現世でも退屈せず、来世も頼もしい。だからうらやましいのです。正解は③。

②「姫君と来世までも添い遂げようと決めている」、④「鳥の鳴き声や美しい花に囲まれた庵」はいずれも本文の根拠を外します。この時点で宮はまだ姫君を見ていません。

問4 傍線部B(解答番号26・6点) 正解 ⑤

<問題要旨>
尼上はどのような思いからこのように述べたのか。

<考え方>
尼上の言葉を追います——「さる者ありと御耳に入りて、老いの果てに、かかるめでたき御恵みをうけたまはるこそ、ながらへ侍る命も、今はうれしく、この世の面目とおぼえ侍れ」。宮のような高貴な方が自分のような者を気にとめてくださったことを、この上ない光栄だと言っている。

そして傍線部Bに続き、「かく弱々しき心地に」と重い病を理由に挙げる。つまり本来なら自ら出て直接ご挨拶申し上げるべきだが、それができない、という詫びです。正解は⑤。

③「宮から多大な援助をいただけることはもったいない」、④「元気なうちに仏道について教えを」はいずれも文脈にありません。

問5 傍線部C(解答番号27・7点) 正解 ②

<問題要旨>
「笑みゐたり」——この時の女房たちの心情を説明する。

<考え方>
夕月夜にさし出でた宮の姿を、女房たちが覗き見る場面。「山の端より月の光のかかやき出でたるやうなる御有様、目もおよばず」——その美しさに「世にはかかる人もおはしましけり」と皆でめでまどう。

そして決定的な一句が「げに、姫君に並べまほしく」。姫君と並べてみたい=二人を結びつけたいという期待から、思わず笑みがこぼれたのです。正解は②。

③「宮が噂以上の美しさであったことに圧倒され、姫君が宮を見たらきっと驚くだろう」は主体が姫君にすり替わっており、傍線部(笑んでいるのは女房たち)の説明になっていません。

問6 内容合致(解答番号28・8点) 正解 ⑤

<問題要旨>
この文章の内容に関する説明として最も適当なものを選ぶ。

<考え方>
⑤が本文の流れを正確になぞっています。
・宮は庵の仏前の様子を見て「あぢきなき世に、かくても住まままほしく」と思う(=この山里で暮らしたい)
・「この思はしからん人の住みたらん心細さ」を憐れに思い、袖を濡らす
・去り際に宰相へ「かまへて、かひあるさまに聞こえなし給へ」と言い残す(=必ず取り持ってほしい)
・「人々も名残多くおぼゆ」(=女房たちは余韻にひたる)

①は宮が最初に見たのを「美しい女性の姿」とする点が誤り(見たのは仏前の設え)。②「どのように対応すればよいか尋ねた」のは宰相ではなく宮が兵衛督を遣わしたのです。③「宰相を通じて自分の亡き後のことを宮に頼んだ」も本文になく、④は宮を「月のよう」と喩える主体がずれています。

第4問 漢文(謝霊運の五言詩・『文選』)

六朝時代の詩人謝霊運が、都で志を果たせず故郷に帰り、自分の住居を建てたときの様子を詠んだ五言詩。詩の設問としては珍しく、住居の配置を絵で選ぶ問題が出ました。配点50点。

問1 語の読み(解答番号29・30・各4点) 正解 ⑤③

<問題要旨>
波線部(ア)「倶」・(イ)「寡」のここでの読み方を選ぶ。

<考え方>
(ア)「倶」=⑤ ともに
「樵隠倶に山に在り」——きこりも隠者も、ともに山にいる。「倶」は「ともに」と読む副詞。冒頭の一句で、山にいる者には二種類あるという対比が立ちます。

(イ)「寡」=③ すくなくして
「寡欲不期労」=欲を寡(すく)なくして労を期せず。「寡」は少ない意(「衆寡」「寡黙」)。

いずれも基本字ですが、選択肢に「つぶさに」「がへんじて」など読み慣れない訓が混ざります。字の基本義から攻めるのが安全です。

問2 傍線部A(解答番号31・8点) 正解 ②

<問題要旨>
「由来事不同、不同非一事」の返り点の付け方と書き下し文の組合せを選ぶ。

<考え方>
書き下し文 由来 事は同じからず、同じからざるは一事に非ず
返り点 由来事不[レ]同、不[レ]同非[二]一事[一]

「不同」は「同じからず」と返読し、二度目の「不同」がそのまま次の「非」の主語になる——「同じくないのは一つのことではない」、つまり山に住む理由はさまざまだ、ということ。冒頭「樵隠俱在山」(きこりも隠者もともに山にいる)を受け、同じ山にいてもその事情は一様でない、と展開します。正解は②。

同じ語句が繰り返されたら、後ろのものは前を受け直す主語になっていないかを疑う——漢詩の頂真(しんてい)的な言い回しの定石です。

問3 傍線部B(解答番号32・8点) 正解 ②

<問題要旨>
「卜室倚北阜、啓扉面南江、激澗代汲井、挿槿当列墉」を模式図にしたとき、住居の設備と周辺の景物の配置として適当なものを選ぶ。

<考え方>
四句をそれぞれ図の要素に対応させます。
・卜室倚北阜=住居は北の丘に寄せて建てる → 山が奥(北)、家はその手前
・啓扉面南江=扉を開けば南の川に面する → 門は手前(南)側、その先に川
・激澗代汲井=谷川の激流が井戸を汲むのに代わる → 井戸はなく、引き水の樋がある
・挿槿当列墉=ムクゲを挿して並んだ土塀に代える → 土塀ではなく生垣

四条件すべてを満たすのは②。

「代」「当」はいずれも「〜の代わりとする」の意で、本来あるはずのもの(井戸・土塀)がないことを示します。この二字を読み落とすと、井戸のある①③や土塀の③④を選んでしまいます。

問4 空欄C(解答番号33・8点) 正解 ①

<問題要旨>
「群木既羅戸、衆山亦対[ C ]」の空欄に入る文字を選ぶ。

<考え方>
「群木既に戸に羅(つら)なり、衆山も亦た[C]に対す」——木々が戸口に立ち並び、山々もまた[C]に向かい合っている。

対句の構造から、上句の「戸」に対応する家屋の一部が入る。答えは①窓。

五言詩の対句では、同じ位置に同じ種類の語が来ます。「群木/衆山」(自然物)、「既/亦」(副詞)、「羅/対」(動詞)と並べば、最後は「戸/□」が同類語のはず。②「空」④「門」⑤「月」では家屋の一部という条件を満たしません。

問5 傍線部D(解答番号34・9点) 正解 ⑤

<問題要旨>
「靡迤趨下田、迢逓瞰高峰」の表現に関する説明として適当でないものを選ぶ。

<考え方>
この二句は、うねうねと連なって下方の田へ向かい、はるか遠くに高い峰を見おろす、という眺望の広がりを詠むもの。

⑤はこれを「田畑を耕作する世俗のいとなみが、作者にとって高い山々をながめやるように遠いものとなったことが強調されている」と読みます。しかしここで描かれているのは住居から見渡せる景色であって、世俗との心理的距離ではありません。適当でないのは⑤。

①③の「靡迤」「迢逓」(いずれも畳韻の連綿語)の音の効果、②④の「下田/高峰」の対句という説明はいずれも妥当です。

問6 傍線部E(解答番号35・9点) 正解 ④

<問題要旨>
「賞心不可忘、妙善冀能同」——作者がこの詩の結びに込めた心情を説明する。

<考え方>
注によれば「賞心」は美しい風景をめでる心、「妙善」はこの上ない幸福。「賞心忘るべからず、妙善能く同じからんことを冀(こひねが)ふ」——美しい景色をめでる心は忘れがたい、この上ない幸福をともにできることを願う。

直前の二句が鍵です。「唯だ蒋生の径を開き、永く求羊の蹤を懐ふ」——漢の蒋詡が自宅の庭に小道を作って親友の求仲・羊仲を招いた故事を踏まえ、自分もそうありたいと言っている。つまりこの景色を親しい友人とともにながめたい、どうか我が家へという呼びかけです。正解は④。

①「さまざまな見方を教わる」②「評価は一致しない」③「苦心が報われる」はいずれも「同(ともにする)」の意を取り損ねています。結びの解釈は、直前に引かれた故事の内容で決まる——漢詩を読むときの鉄則です。

※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

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