2026年度 大学入学共通テスト 追試験「物理」の解答と解説です。全設問の正解と考え方を一問ずつ解説し、公式の解答PDFもあわせて掲載しています。大学受験の森が独自に作成した、無料で読める解説です。
解答
解説
2026年度(令和8年度)大学入学共通テスト追試験「物理」の全4大問・22設問について、解答と考え方をまとめました。100点満点・全問必答、試験時間60分。第1問から第4問まで配点は25点ずつで、選択問題はありません。
第1問は力学・原子・熱・波動・電磁気から1問ずつの小問集合、第2問はAが平板の上をすべる物体にはたらく動摩擦力、BがX線による結晶構造の解析、第3問は断熱変化と定圧変化を組み合わせた気体の状態変化、第4問はコイル(ソレノイド)を直流・電磁誘導・交流の順に扱い、最後は非接触型ICカードへの応用です。
計算そのものは重くありませんが、円板の重心の水平位置、X線の散乱角と格子面のなす角の違い、スペクトルの鋭い線の意味、コイルの巻き方と右ねじの法則など、図を正確に読むことを求める設問が各大問に置かれています。式を立てる前に、まず図で何が決まっているかを確かめる習慣が効きます。
第1問(必答) 小問集合(円板のつり合い・原子核崩壊・気体分子運動論・水滴の屈折・静電気力)
力学・原子・熱・波動・電磁気から1問ずつ出題される小問集合です。配点25点(各5点)。誘導はほとんどなく、どの法則に戻るかを自分で決めさせる形になっています。
問1:正解 ⑤(解答番号1/配点5)
<問題要旨>
中心Oに回転軸を通した一様な円板に、質量の等しいおもりAとBをOから等距離に取りつける。図1ではAとBが同じ高さ(水平線LL′より下)で静止していた。図2ではおもりBだけを鉛直上向きにずらしてOと同じ高さに付け替え、手をはなしたあとの円板の状態を選ぶ。
<考え方>
円板は一様で軸がOだから、円板自身の重力は軸のまわりに力のモーメントをつくらない。決めるのはおもり2個の重心の水平位置で、これがOの真下にくる向きで静止する。
【図1の配置】
Oを原点、右向きをx、上向きをyとする。
おもりまでの距離をr、LL′から下へ測った角をθとすると
A(−r cosθ, −r sinθ) B(+r cosθ, −r sinθ)
おもり2個の重心
G1 = ( (−r cosθ + r cosθ)/2 , −r sinθ )
= ( 0 , −r sinθ )
→ GはOの真下。だから静止していた。
【図2の配置】
Bを鉛直上向きにずらしても x座標は変わらない。
A(−r cosθ, −r sinθ) B(+r cosθ, 0)
重心
G2 = ( (−r cosθ + r cosθ)/2 , −r sinθ/2 )
= ( 0 , −r sinθ/2 )
→ 水平成分は 0 のまま。やはりOの真下。
【軸のまわりの力のモーメント】
モーメントの和 ∝ (重心のx座標)= 0
→ 円板は回転しない。
【検算】
重心の高さは −r sinθ/2 で、Oより下にある。
少し回すと重心が持ち上がるので安定なつり合い。
「Bを上げたのだからB側が下がる」は誤り。
効くのは高さではなく水平位置。
よって ⑤
問2:正解 ②(解答番号2/配点5)
<問題要旨>
陽子の数がZ、中性子の数がNの原子核がα崩壊し、生じた原子核がさらにβ崩壊して電子を放出した。最後にできた原子核の陽子の数と中性子の数の組合せを選ぶ。
<考え方>
α崩壊はヘリウム原子核(陽子2個・中性子2個)の放出、β崩壊(電子の放出)は中性子1個が陽子1個に変わる変化。2段階を順に数える。
【α崩壊】 ヘリウム原子核(陽子2個・中性子2個)が出ていく 陽子 Z → Z − 2 中性子 N → N − 2 【β崩壊(電子の放出)】 中性子 → 陽子 + 電子 陽子 (Z − 2) → (Z − 2) + 1 = Z − 1 中性子 (N − 2) → (N − 2) − 1 = N − 3 【検算】質量数 A = 陽子の数 + 中性子の数 はじめ Z + N α崩壊後 (Z−2)+(N−2) = Z + N − 4 … 質量数は4減る β崩壊後 (Z−1)+(N−3) = Z + N − 4 … 質量数は変わらない どちらも正しい。 よって ②
問3:正解 ③(解答番号3/配点5)
<問題要旨>
一辺Lの容器Aに質量mの単原子分子N個、一辺2Lの容器Bに質量5mの単原子分子N個が入っていて、温度は等しい。分子1個あたりの運動エネルギーの平均値の比(ウ)と、二乗平均速度の比(エ)を選ぶ。
<考え方>
単原子分子理想気体では、分子1個あたりの運動エネルギーの平均値は温度だけで決まる。体積も分子の質量も関係しない。速さの比は、そのエネルギーが等しいことから質量で決まる。
【ウ:運動エネルギーの平均値】 分子1個あたりの運動エネルギーの平均値は (1/2)m v² の平均 = (3/2)kT (kはボルツマン定数) 容器AとBは温度が等しい → 比は 1 倍 ウ = 1 【エ:二乗平均速度】 容器A: (1/2) m v_A² = (3/2)kT 容器B: (1/2)(5m) v_B² = (3/2)kT 2式の左辺が等しいので m v_A² = 5m v_B² v_B² / v_A² = 1/5 v_B / v_A = 1/√5 エ = 1/√5 【検算】 重い分子ほど遅い。質量が5倍なら速さは 1/√5 倍。 一辺 L と 2L(体積は8倍)は答えに使わない。 「体積が8倍だからエネルギーも変わる」は誤り。 よって ③
問4:正解 ③(解答番号4/配点5)
<問題要旨>
球形の水滴の点Aに入射角αで入り屈折角βで屈折した光が、点Bで反射し点Cで出射する。屈折率nをαとβで表す式(オ)と、γ=4β−2αの関係を使って赤色光と紫色光の反射角γを比べた結果(カ)を選ぶ。
<考え方>
オは空気から水へ入るときの屈折の法則そのもの。カは、入射角αが共通なので屈折角βの大小だけでγの大小が決まる、という一点で決まる。
【オ:屈折の法則】 空気側の角が α、水側の角が β だから sin α / sin β = n オ = sin α / sin β 【カ:赤色と紫色の比較】 同じ α に対して sin β = sin α / n 屈折率 n は 赤 < 紫 → sin β は 赤 > 紫 → β は 赤 > 紫 γ = 4β − 2α で α は共通だから γ は 赤 > 紫 カ = 大きい 【検算】 n が大きいほど強く曲がる(β が小さくなる)。 紫のほうが強く曲げられて γ が小さい。 虹で紫が内側、赤が外側に見えることと合う。 よって ③
問5:正解 ⑤(解答番号5/配点5)
<問題要旨>
真空中に固定した点電荷Q(Q>0)から距離Rの位置に電気量q(q>0)の荷電粒子を静かに置くと、静電気力だけを受けて遠ざかり、十分離れたときの運動エネルギーがKになった。Rをq、Q、K、k₀で表す式を選ぶ。
<考え方>
静電気力は保存力なので、はじめにもっていた静電気力による位置エネルギーがそのまま運動エネルギーに変わる。無限遠での位置エネルギーは0とする。
【エネルギー保存】 はじめ :運動エネルギー 0 , 位置エネルギー k₀Qq/R 十分離れたとき:運動エネルギー K , 位置エネルギー 0 0 + k₀Qq/R = K + 0 k₀Qq/R = K R = k₀Qq / K 【検算】次元でふるいにかける k₀Qq は [エネルギー]×[長さ] それを [エネルギー]の K で割ると [長さ] → R の次元と合う。 ①②③のように平方根をとると [長さ]の1/2乗になってしまい合わない。 ④⑥の係数 2 は、静電気力の位置エネルギーには 運動エネルギーの (1/2)mv² のような 1/2 がないので不要。 よって ⑤
第2問(必答) A 平板の上の物体にはたらく動摩擦力
なめらかな水平面上の平板Aと、その上をすべる物体Bを扱います。摩擦力の種類と向き、相対加速度、最後に一致する速度の3問。配点13点。
問1:正解 ⑥(解答番号6/配点5)
<問題要旨>
なめらかな水平面上の質量Mの平板Aの上に質量mの物体Bを置き、t=0でAに初速度V₀、Bに初速度v₀(0<V₀<v₀)を与える。AB間にはたらく摩擦力の種類(ア)と、Aが受ける向き(イ)・Bが受ける向き(ウ)の組合せを選ぶ。右向きが正。
<考え方>
v₀がV₀より大きいので、BはAに対して右へすべっている。すべっている間にはたらくのは動摩擦力で、向きは「相手に対する自分の速度」と逆向き。Aが受ける力は作用・反作用で決まる。
【ア:摩擦力の種類】 Aから見たBの速度 = v₀ − V₀ > 0 → 接触面はすべっている ア = 動 【ウ:物体Bが受ける摩擦力】 BはAに対して右(正)へすべる → Bが受ける動摩擦力はすべりと逆で左(負) ウ = 負 【イ:平板Aが受ける摩擦力】 作用・反作用の法則より、Bが受ける力と逆向き → Aが受ける摩擦力は右(正) イ = 正 【検算】 Aは正の力を受けて加速(V₀は増える) Bは負の力を受けて減速(v₀は減る) → 速度の差 v₀ − V₀ は減っていき、いつか 0 になる 問題文の「速度の差が減少し、ある時刻で同じになる」と合う。 静止摩擦力だとすると最初から同じ速度で動くことになり、 0<V₀<v₀ という設定と矛盾する。 よって ⑥
問2:正解 ④(解答番号7/配点4)
<問題要旨>
平板Aと物体Bの間にはたらく摩擦力の大きさをFとして、平板Aから見た物体Bの加速度(相対加速度)を表す式を選ぶ。
<考え方>
AとBそれぞれについて運動方程式を立てて加速度を求め、差をとる。水平面はなめらかなので、Aが水平方向に受ける力は摩擦力だけ。
【平板Aの運動方程式】(右向きを正、Aが受ける摩擦力は +F)
M a_A = +F
a_A = F / M
【物体Bの運動方程式】(Bが受ける摩擦力は −F)
m a_B = −F
a_B = − F / m
【Aから見たBの加速度】
a_B − a_A = − F/m − F/M
= − F ( 1/m + 1/M )
= − F (M + m) / (Mm)
【検算】
符号が負:相対速度 v₀ − V₀ > 0 を減らす向きで正しい。
Mを非常に大きくすると(Aが動かない)
−F(M+m)/(Mm) → −F/m
となり、地面から見たBの加速度に一致する。
③⑥のように分母がM+mだけの形は、
Mが大きいときに 0 に近づいてしまい合わない。
よって ④
問3:正解 ⑤(解答番号8/配点4)
<問題要旨>
平板Aと物体Bの速度が同じになったときの、AとBの速度を表す式を選ぶ。
<考え方>
水平面はなめらかで、A・Bをひとまとめにすると水平方向に外力がはたらかない。AB間の摩擦力は内力なので、水平方向の運動量が保存する。
【運動量保存】 はじめ : M V₀ + m v₀ 速度が同じ v のとき : (M + m) v M V₀ + m v₀ = (M + m) v v = ( M V₀ + m v₀ ) / ( M + m ) 【検算】 V₀ = v₀ のとき v = V₀ となり、すべらない場合と一致する。 v は V₀ と v₀ の加重平均だから V₀ < v < v₀ に入る。 ①の v₀ − V₀ や②の (V₀+v₀)/2 は質量の違いを無視していて不適。 ③の分子 M V₀ − m v₀ は符号が逆で、 V₀ = v₀ としても v = V₀ に戻らない。 よって ⑤
第2問(必答) B X線による結晶構造の解析とX線管
X線の基本的な性質、ブラッグ反射の条件から格子面の間隔を求める計算、X線管で発生するスペクトルの読み取りの3問です。配点12点。
問4:正解 ①(解答番号9/配点4)
<問題要旨>
X線に関する4つの文(a)〜(d)から、正しいものを二つ選んだ組合せを選ぶ。
<選択肢>
(a)【正】
X線の波長はおよそ10⁻¹²〜10⁻⁸ m で、可視光の約4×10⁻⁷〜8×10⁻⁷ m より短い。波長が短いぶんエネルギーが大きく、物質を透過する力も強い。問5で使っているX線も1.5×10⁻¹⁰ m である。
(b)【正】
X線は電磁波であり、電荷をもたない。電荷をもたない以上、電場から力を受けないので進路は曲がらない。
(c)【誤】
電荷をもたないので、磁場からも力(ローレンツ力)を受けない。磁場で曲げられるのは、荷電粒子の流れであるα線やβ線のほうである。
(d)【誤】
X線は電離作用をもつが、荷電粒子の流れではなく電磁波である。荷電粒子の流れなのはα線(ヘリウム原子核)やβ線(電子)。前半だけが正しい文にだまされない。
正解【①】
正しいのは(a)と(b)で、どちらも「X線は電荷をもたない電磁波である」という一点から出てくる。
問5:正解 ③(解答番号10/配点4)
<問題要旨>
波長λ=1.5×10⁻¹⁰ m のX線を結晶に当てると、反射X線が透過X線の進む向きと60°をなす向きに進んだ。隣りあう格子面で反射されるX線の経路差の式(エ)と、その経路差がλに等しいとしたときの格子面の間隔d(オ)を選ぶ。
<考え方>
経路差はブラッグの条件の 2d sinθ。ここでθは格子面と入射X線のなす角で、図2の60°は入射方向(=透過X線の向き)から反射X線が振れた角、つまり2θにあたる。
【エ:経路差】 隣りあう2枚の格子面で反射されたX線の行路の差は 経路差 = 2d sin θ (θ は格子面とX線のなす角) エ = 2d sin θ 【θ の読み取り】 反射の法則より、反射X線は入射方向から 2θ だけ振れる。 透過X線は入射方向のまま進む。 図2で両者のなす角が 60° だから 2θ = 60° θ = 30° 【オ:d の値】 2d sin θ = λ 2d sin 30° = 1.5×10⁻¹⁰ 2d × 0.50 = 1.5×10⁻¹⁰ d = 1.5×10⁻¹⁰ m オ = 1.5×10⁻¹⁰ 【検算】 sin 30° = 1/2 なので 2d sin30° = d。 経路差がそのまま d になり、d = λ となる。 60°をそのまま θ としてしまうと 2d sin60° = λ → d = 8.7×10⁻¹¹ となり②に落ちる。ここが最大の分かれ目。 原子の間隔として 10⁻¹⁰ m 程度は妥当な大きさである。 よって ③
問6:正解 ②(解答番号11/配点4)
<問題要旨>
X線管で、電圧Vで加速した熱電子を陽極に衝突させてX線を発生させる。図4のスペクトルで最も短い波長をλ₁、強さが最大となる波長をλ₂とするとき、電圧Vを大きくしたときのλ₁の変化(カ)とλ₂の変化(キ)を選ぶ。
<考え方>
λ₁は連続X線の短波長端で、電子の運動エネルギーeVがまるごと光子1個になったときの波長。λ₂は図4で鋭く立ち上がっている線、すなわち固有X線(特性X線)の波長で、陽極の物質だけで決まる。
【カ:λ₁(最も短い波長)】 電子の運動エネルギー eV が全部1個の光子になったとき 波長は最短になる。 eV = h c / λ₁ λ₁ = h c / (e V) V を大きくすると λ₁ は小さくなる カ = 小さくなり 【キ:λ₂(強さが最大となる波長)】 図4を見ると λ₂ は、なだらかな連続X線の山ではなく その上に鋭く立ち上がった線のところにある。 これは固有X線(特性X線)で、波長は陽極の原子の 内側の電子殻どうしのエネルギー差で決まる。 加速電圧 V はこのエネルギー差に関係しない。 キ = 変わらない 【検算】 V を上げると固有X線の「強さ」は増すが「波長」は動かない。 V で動くのは連続X線の短波長端 λ₁ のほうである。 図4に鋭い線が描かれていることが、 λ₂ を連続X線の山と読ませないための手がかりになっている。 よって ②
第3問(必答) シリンダー内の気体の状態変化(断熱変化と定圧変化)
断熱材で覆った鉛直シリンダーの気体を、おもりの着脱と断熱材の着脱で6つの状態(a)〜(f)へ移していきます。体積比、仕事と内部エネルギーの符号、ピストンの下がり幅、定圧の熱量、断熱膨張後の温度、そして全体のp−V図。配点25点。
問1:正解 ⑤(解答番号12/配点5)
<問題要旨>
断熱材で覆った鉛直なシリンダー(断面積S)に物質量nの単原子分子理想気体が入っている。図1(a)は圧力p₀・温度T₀。おもりをゆっくり載せると図1(b)(圧力p₁=2p₀、温度T₁)になった。(b)の体積は(a)の体積の何倍かを選ぶ。
<考え方>
どちらの状態でも理想気体の状態方程式 pV=nRT が成り立つ。2式を立てて割り算するだけでよい。
【状態方程式】
(a): p₀ V_a = n R T₀
V_a = n R T₀ / p₀
(b): 2p₀ V_b = n R T₁
V_b = n R T₁ / (2 p₀)
【比をとる】
V_b / V_a = { n R T₁ /(2p₀) } ÷ { n R T₀ / p₀ }
= T₁ / (2 T₀)
【検算】
断熱圧縮なので T₁ > T₀、かつ体積は減るはず。
単原子分子(γ = 5/3)で圧力が2倍になったときの温度は
T₁ = T₀ × 2^(2/5) ≒ 1.32 T₀
これを入れると V_b/V_a ≒ 0.66 で、確かに1より小さい。
①の 1/2 は「圧力が2倍だから体積は半分」という
温度変化を忘れた答えで、断熱変化では成り立たない。
よって ⑤
問2:正解 ⑦(解答番号13/配点4)
<問題要旨>
図1(a)の状態から図1(b)の状態までに、気体が外部にした仕事の符号(ア)と、気体の内部エネルギーの変化の符号(イ)を選ぶ。
<考え方>
シリンダーは断熱材で覆われ、ピストンも断熱材でできているので、この過程は断熱変化でQ=0。あとは熱力学第一法則で符号が決まる。
【ア:気体が外部にした仕事】 おもりを載せてピストンが下がった=気体は圧縮された。 体積が減るとき、気体が外部にする仕事 W は負。 ア = 負 【イ:内部エネルギーの変化】 断熱変化なので Q = 0。 熱力学第一法則 ΔU = Q − W より ΔU = 0 − (負の値) = 正 イ = 正 【検算】 単原子分子理想気体では ΔU = (3/2) n R ΔT。 ΔU > 0 は T₁ > T₀ と同じこと。 「断熱圧縮すると温度が上がる」という事実と一致する。 また問1で求めた V_b/V_a = T₁/(2T₀) に V_b < V_a を入れると T₁ < 2T₀、 断熱変化の式からは T₁ > T₀ が出る。矛盾はない。 よって ⑦
問3:正解 ④(解答番号14/配点4)
<問題要旨>
図1(b)の状態から断熱材を取り外すとピストンがゆっくり下がり、図1(c)で静止した。このとき温度はT₀で、ピストンははじめの高さからLだけ下にあった。Lを表す式を選ぶ。
<考え方>
(c)ではおもりが載ったままなので圧力は2p₀、温度はT₀に戻っている。Lは「(a)の体積と(c)の体積の差」を断面積Sで割った長さ。
【それぞれの体積】 (a): p₀ V_a = n R T₀ V_a = n R T₀ / p₀ (ピストンははじめの高さ) (c): 2p₀ V_c = n R T₀ V_c = n R T₀ / (2 p₀) 【高さの差】 はじめの高さからの下がり幅を L とすると S L = V_a − V_c = n R T₀ / p₀ − n R T₀ /(2 p₀) = n R T₀ /(2 p₀) L = n R T₀ / (2 p₀ S) 【検算】次元 n R T₀ は [エネルギー]=[力]×[長さ] p₀ S は [圧力]×[面積]=[力] よって n R T₀ /(p₀ S) は[長さ]。合う。 ①②③の n R p₀ /(S T₀) は次元が合わないのでこの時点で消せる。 よって ④
問4:正解 ③(解答番号15/配点4)
<問題要旨>
図1(c)の状態から断熱材を取りつけ直し、ヒーターで加熱するとピストンがゆっくり上がり、はじめの高さになったところで静止した(図2(d))。(c)から(d)までに気体に加えられた熱量Qを表す式を選ぶ。
<考え方>
おもりは載ったままでピストンは自由に動けるので、圧力2p₀を保ったままの定圧変化。単原子分子理想気体の定圧モル比熱は (5/2)R。
【(c) と (d) の状態】 (c): 圧力 2p₀ , 体積 n R T₀/(2p₀) , 温度 T₀ (d): 圧力 2p₀ , 体積 V_a = n R T₀/p₀(はじめの高さ) (d)の温度 T_d は 2 p₀ × n R T₀ / p₀ = n R T_d T_d = 2 T₀ 【定圧変化で加えた熱量】 ΔT = T_d − T₀ = T₀ Q = n C_p ΔT = n × (5/2)R × T₀ = (5/2) n R T₀ 【検算】第一法則で作り直す ΔU = (3/2) n R ΔT = (3/2) n R T₀ 気体がした仕事 W = 2p₀ ×( V_a − V_c ) = 2p₀ × n R T₀/(2p₀) = n R T₀ Q = ΔU + W = (3/2)nRT₀ + nRT₀ = (5/2) n R T₀ 一致する。定積の (3/2)nRT₀(②)は仕事の分を落とした答え。 よって ③
問5:正解 ⑥(解答番号16/配点4)
<問題要旨>
図2(d)の状態から、ピストンの位置がゆっくり変わるように手で支えながらおもりを取り除き、完全に取り除いたときに図2(e)で静止した。(e)での圧力p₂と大気圧p₀、温度T₂とT₀の大小関係を選ぶ。
<考え方>
ピストンは軽くなめらかなので、おもりがなくなれば気体の圧力は大気圧に等しくなる。断熱材はついているので(d)から(e)は断熱膨張。温度は「同じ圧力p₀で体積がV_aより大きいかどうか」で比べられる。
【ウ:圧力】 おもりを完全に取り除いた後のピストンのつり合いは p₂ S = p₀ S (ピストンは軽い) p₂ = p₀ ウ = = 【エ:温度】 (a): 圧力 p₀ , 体積 V_a , 温度 T₀ (d): 圧力 2p₀ , 体積 V_a (同じ体積で圧力は2倍) (d)を通る断熱線は(a)を通る断熱線より上側にあり、 断熱線どうしは交わらない。 だから圧力を p₀ まで下げたとき (e)の体積 V_e > V_a 状態方程式より T₂ = p₀ V_e /(n R) > p₀ V_a /(n R) = T₀ エ = > 【検算】数値でも確かめる 単原子分子は γ = 5/3。断熱変化で圧力が半分になると T₂ = 2T₀ × (1/2)^(2/5) ≒ 2T₀ × 0.76 ≒ 1.5 T₀ たしかに T₀ より高い。 「おもりを外したから元(a)に戻る」と考えて ⑤(=と=)を選ぶのがいちばん多い誤りだが、 (d)は(a)より高温なので元には戻らない。 よって ⑥
問6:正解 ①(解答番号17/配点4)
<問題要旨>
図1(a)から図2(f)までの一連の過程を、縦軸を圧力p、横軸を体積Vとしたp−V図に表したものを選ぶ。グラフ中の白丸が図1(a)の状態。
<考え方>
6つの状態の圧力と体積を順に書き出す。断熱変化は曲線、定圧変化は水平な直線になる。最後の(f)が(a)と同じ状態に戻る(圧力p₀・温度T₀)ことに気づくと、図が閉じるかどうかで一気にしぼれる。
【各状態】V₀ = n R T₀ / p₀ とおく (a) p₀ , V₀ ← 白丸 (b) 2p₀ , 約0.66V₀ ← 断熱圧縮(曲線で左上へ) (c) 2p₀ , 0.50V₀ ← 定圧冷却(水平に左へ) (d) 2p₀ , V₀ ← 定圧加熱(水平に右へ) (e) p₀ , 約1.5V₀ ← 断熱膨張(曲線で右下へ) (f) p₀ , V₀ ← 定圧冷却(水平に左へ)=(a)に戻る 【選択肢がどこで切れるか】 ・(f)が(a)に戻るので図形は閉じる。白丸は下の水平線の左端。 ・(a)→(b) と (d)→(e) は断熱変化なので直線ではない → 2本とも直線で結んだ ② は不適 ・(a)→(b) を水平+垂直で描いた ⑤ は断熱曲線になっていない → 不適 ・上の水平線は 0.50V₀ 〜 V₀ まで伸び、 断熱曲線の上端(約0.66V₀)より左へ少しはみ出す → そのはみ出しがない ④ は (b)→(c) が抜けている ・下の水平線は V₀ 〜 約1.5V₀ で、右端は断熱曲線の下端と一致する → 曲線の終点より右へはみ出している ⑥ は不適 ・③ は右の曲線が 2V₀ まで伸びている。 同じ気体なら圧力を2倍にするときと1/2にするときで 体積比は互いに逆数(約0.66倍 と 約1.5倍)になるはずで、 2倍まで広がるのは等温変化の形。左の曲線と釣り合わない → 不適 【検算】囲まれた面積 上の水平線(高い圧力)で左向きに動く区間と 下の水平線(低い圧力)で左向きに動く区間があり、 閉じた図形を時計回りにまわる。 気体が正味で外部に仕事をするサイクルになっており、 ヒーターで熱を加えた分と符号が合う。 よって ①
第4問(必答) コイル(ソレノイドの磁場・電磁誘導・交流)
1つのソレノイドを、直流を流す→磁束の変化で起電力を生じさせる→交流をつなぐ、という順に扱い、最後は非接触型ICカードの数値計算まで進みます。配点25点。
問1:正解 ③(解答番号18/配点5)
<問題要旨>
長さa、断面積S、巻数Nのコイル(ソレノイド)に、端子AからBに向かって大きさIの直流電流を流す。コイル内部に生じる磁場の強さ(ア)と向き(イ)の組合せを選ぶ。
<考え方>
十分に長いソレノイドの内部の磁場の強さは H = nI(nは単位長さあたりの巻数)で、断面積Sは入らない。向きは図1の巻き方を1巻きだけたどって右ねじの法則をあてる。
【ア:磁場の強さ】 単位長さあたりの巻数 n = N / a ソレノイド内部の磁場の強さ H = n I = (N/a) I ア = (N/a) I ①②の NI は「単位長さあたり」になっていないので不適。 ⑤⑥の (N/aS)I は断面積で割る理由がなく不適。 【イ:向き】 図1でAから入った電流を1巻きだけ指でたどると 右 → 手前 → 左 → 奥 → 右 と回りながら下へ進んでいる。 これは上から見て時計回り。 右ねじの法則:上から見て時計回りに電流が回る → コイル内部の磁場は下向き イ = 上から下 【検算】単位 磁場の強さ H の単位は A/m。 (N/a)I → [1/m]×[A]= A/m … 合う (N/aS)I → [1/m³]×[A]= A/m³ … 合わない ⑤⑥はこの時点で消せる。 よって ③
問2:正解 ①(解答番号19/配点5)
<問題要旨>
図2のようにコイルに抵抗器を接続する。コイル内部を上から下に貫く磁束が時間Δtの間にΔΦだけ変化するときの誘導起電力の式(ウ)と、Δt>0・ΔΦ>0のときに抵抗器を流れる電流の向き(エ)を選ぶ。
<考え方>
ファラデーの電磁誘導の法則は 起電力=−N ΔΦ/Δt。巻数Nがそのままかかるだけで、長さaや断面積Sで割ることはない。向きはレンツの法則と問1の結果を組み合わせる。
【ウ:誘導起電力】 1巻きあたりの起電力が −ΔΦ/Δt。N 巻きが直列につながるので V = − N ΔΦ / Δt ウ = − N ΔΦ / Δt ③〜⑥のように a や aS で割る形にはならない。 ΔΦ はすでに「コイルを貫く磁束」であって 磁束密度ではないから、面積や長さは掛け引きしない。 【エ:抵抗器を流れる電流の向き】 ΔΦ > 0 :下向きの磁束が増えている。 レンツの法則より、誘導電流はこの増加を打ち消す向き、 つまりコイル内部に上向きの磁束をつくる向きに流れる。 問1より「AからBへ流れる電流」は下向きの磁場をつくる。 いま必要なのはその逆だから、コイルの中では B → A の向き。 この電流はAから出て外側の抵抗器を通りBへ戻る。 抵抗器はAが上・Bが下の側についているので、 抵抗器の中では上から下へ流れる。 エ = (a) 【検算】 (b)(下から上)にすると、コイル内の電流は A → B となり 下向きの磁束をつくる。増えている下向きの磁束をさらに 増やすことになり、レンツの法則に反する。 よって ①
問3:正解 ⑥(解答番号20/配点5)
<問題要旨>
コイルに、時刻tでの電圧が V₀ sin ωt の交流電源を接続する。電圧Vとコイルを流れる電流Iの時間変化を示すグラフ(オ)と、電流の位相と電圧の位相の関係(カ)を選ぶ。
<考え方>
誘導起電力 V′ は −ΔI/Δt に比例し、V = −V′ だから V は ΔI/Δt に比例する。Vがsin型なら、Iは−cos型になる。グラフはt=0での電流の値で切り分けられる。
【電流の式を作る】 V′ ∝ − ΔI/Δt , V = − V′ だから V = L ΔI / Δt V₀ sin ωt = L ΔI / Δt これを満たすのは I = − ( V₀ / (ω L) ) cos ω t = I₀ sin( ω t − π/2 ) (I₀ = V₀ /(ωL)) 【カ:位相】 I の位相は V の位相より π/2 だけ遅れている カ = より π/2 だけ遅れる 【オ:グラフの選び方 ― t = 0 の電流を見る】 (a): t=0 で I = +I₀(cos 型) → 電圧より π/2 進んでいる → 不適 (c): t=0 で I = 0 で、電圧と同時に増え始める → 同位相 → 不適 (b): t=0 で I = −I₀ で、そこから増えていく → I = −I₀ cos ωt そのもの → 適する オ = (b) 【検算】 (b)では I が 0 を通って最も急に増えるのが t = T/4。 電圧 V₀ sin ωt が最大になるのも t = T/4。 V = L ΔI/Δt なので「電圧が最大のとき電流の傾きが最大」。 きちんと対応している。 よって ⑥
問4:正解 ④(解答番号21/配点5)
<問題要旨>
交流電源の電圧の最大値V₀とコイルを流れる電流の最大値I₀の間の比例関係について、自己インダクタンスLが大きいときの電流の流れ方(キ)と、角周波数の大きさと「抵抗に相当する量」の関係(ク)を選ぶ。
<考え方>
問3で得た I₀ = V₀/(ωL) を見ればよい。分母の ωL がコイルの抵抗にあたる量(リアクタンス)である。
【キ:L の効果】 I₀ = V₀ / (ω L) L が大きいほど分母が大きく、I₀ は小さくなる。 これは問題文の「L が大きいほど大きな誘導起電力が生じ、 電流の変化を打ち消す」という説明とも合う。 キ = 流れにくくなる 【ク:角周波数との関係】 オームの法則 V₀ = (抵抗に相当する量)× I₀ と見比べると 抵抗に相当する量(リアクタンス) X = ω L X は ω に比例する。 ク = 比例する 【検算】単位 X = ω L は [1/s]×[H]。 H(ヘンリー)= Ω·s なので ωL は Ω となり、 たしかに抵抗と同じ単位になる。 ω を大きくする=電流の変化が速い → 打ち消す誘導起電力が大きい → 電流は流れにくい 「反比例する」(⑥)は向きが逆。 よって ④
問5:正解 ④(解答番号22/配点5)
<問題要旨>
ICカードの内部に、一辺5.0cmの正方形で5回巻きのコイルがあり、ICチップは5.0V以上の起電力で作動する。コイルを貫く磁束の1秒あたりの変化の最低値(ケ)と、磁束密度が0から最大値まで2.0×10⁻⁸ sで一定の割合で変化するときに5.0Vを得るために必要な磁束密度の最大値(コ)を選ぶ。
<考え方>
どちらも 誘導起電力 = N × ΔΦ/Δt の式ひとつで片づく。ケはΔΦ/Δtを求めるだけ、コは磁束を「磁束密度×面積」に置き換えて逆算する。
【ケ:磁束の変化の割合】 誘導起電力 V = N ΔΦ / Δt , N = 5 5.0 = 5 × ( ΔΦ / Δt ) ΔΦ / Δt = 1.0 Wb/s ケ = 1.0 巻数 5 を忘れると 5.0(⑤⑥)、 5 を掛けてしまうと 0.2(①②)になる。 【コ:必要な磁束密度の最大値】 コイルの面積 S = (5.0×10⁻² m)² = 2.5×10⁻³ m² 磁束密度が 0 から B まで一定の割合で変わるので ΔΦ = S × B , Δt = 2.0×10⁻⁸ s V = N S B / Δt 5.0 = 5 × 2.5×10⁻³ × B / (2.0×10⁻⁸) 5.0 = 6.25×10⁵ × B B = 8.0×10⁻⁶ T コ = 8.0 【検算】逆から代入する ΔΦ = S B = 2.5×10⁻³ × 8.0×10⁻⁶ = 2.0×10⁻⁸ Wb ΔΦ/Δt = 2.0×10⁻⁸ ÷ 2.0×10⁻⁸ = 1.0 Wb/s … ケと一致 起電力 = N × 1.0 = 5 × 1.0 = 5.0 V … 条件を満たす よって ④
※ 本記事の解答・解説は当サイトが独立に作成したものです。公式の正解および配点は大学入試センターの発表をご確認ください。

